説明

移動側戸板の移動ガイド部材

【課題】取付容易性及び取付安定性を両立させながら、移動側戸板の円滑な開閉操作を確保する水平車輪を備えた移動ガイド部材を安価に提供する。
【解決手段】移動ガイド部材1は、ガイド本体2に水平車輪5と規制凸部4とを設けた構成で、水平車輪5は車軸をガイドレール8のフランジ間隔等分線Lに一致させ、半径方向の最大変形量がΔRである弾性を備えたタイヤを取り付け、前記タイヤの外径をガイドレール8の幅に等しくし、規制凸部4はガイドレール8のフランジ間隔等分線Lを挟んだ対称形状で、前記規制凸部4の幅を前記タイヤの外径より小さく、前記タイヤの外径からタイヤの最大変形量ΔRの2倍を差し引いた長さより大きくして、移動側戸板61に荷重が加わるとタイヤを弾性変形させ、前記タイヤの変形量が最大変形量ΔRに達する前に規制凸部4をガイドレール8に係合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対となるフランジに挟まれた開口を下向きにして建物開口部の上縁に取り付けたC型チャンネル構造のガイドレールに沿って折戸の移動側戸板を回転させながら案内する移動側戸板の移動ガイド部材に関する。
【0002】
本発明は、上下関係を逆にして、ガイドレールを建物開口部の下縁に取り付ける折戸や、ガイドレールを建物開口部の上縁及び下縁両方に取り付ける折戸にも実質同一に適用できるが、ガイドレールは建物開口部の上縁にのみ取り付けられる場合が多いため、ガイドレールを建物開口部の上縁に取り付けるものとして説明している。
【背景技術】
【0003】
対となるフランジに挟まれた開口を下向きにしてクローゼットや部屋の間仕切り等の建物開口部の上縁に取り付けたC型チャンネル構造のガイドレールに沿って折戸の移動側戸板を回転させながら案内する移動側戸板の移動ガイド部材は、輸送及び梱包効率を高めるため、一般的に施工現場で各移動側戸板に取り付ける。このため、移動ガイド部材を取り付けた移動側戸板を建物開口部に対して容易に取り付けること(以下、取付容易性)ができ、通常の開閉操作では移動側戸板が建物開口部から脱落しないように、移動ガイド部材がガイドレールのフランジに安定して係合していること(以下、取付安定性)が望まれる。しかし、取付容易性及び取付安定性は相反する要求になることから、両者の両立をどのように実現するかが問題となる。
【0004】
例えば特許文献1に見られる移動ガイド部材(戸板取付具)は、移動側戸板の上端面に旋回ピンを枢着する取付基礎ブロック(取付本体)と、ガイドレールの開口に下方から挿入する本体昇降部(凸部材)を、前記移動側戸板の裏面側で前記旋回ピンを軸に旋回させるガイド本体とから構成し、ガイドレールのフランジに係合させるガイド本体の本体昇降部を上方へ付勢して弾支している。これにより、ガイド本体の凸部(凸突起)を縮ませることでドライバー等の道具を要することなく、移動側戸板を建物開口部に対して容易に取り付けることができる。また、前記凸部の縮み代の範囲でガイドレールに対する凸部の挿入量が調整できることから、高さ調節を要することなく、ガイドレールのフランジに移動ガイド部材を安定して係合させることができる。このように、特許文献1の移動ガイド部材は、取付容易性及び取付安定性を両立させている。
【0005】
【特許文献1】特開2004-270380号公報(請求項1、[0020]〜[0021])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に見られる移動ガイド部材は、対となるフランジに挟まれた開口を有するC型チャンネル構造のガイドレールの前記開口に下方からガイド本体の凸部を挿入させ、ガイドレールのフランジに凸部を係合させていただけであったため、次のような問題があった。ガイドレールは、移動ガイド部材が位置する以外の広い範囲で開口が外部に開いており、新築時又は改築時の内装工事に伴う粉塵により前記開口から、前記ガイド本体の凸部とフランジとの間にゴミや埃が侵入し、溜まっていくことが少なくない。このゴミや埃は、ガイド本体の凸部に対する摺動抵抗となり、円滑な移動側戸板の開閉操作ができなくなってしまうことがあった。
【0007】
この点、特許文献1が開示される以前から見られる水平車輪を用いた移動ガイド部材であれば、前記水平車輪がガイドレール内を走行できる限り、移動側戸板の開閉操作を悪化させることが少ない。しかし、この水平車輪を用いた旧来の移動ガイド部材は、移動側戸板に大きな荷重が加わった際に水平車輪の車軸を破損させる虞があり、車軸の剛性を高めるために高価な材料を用いたり、大型化する必要があり、製造コストを増加させる問題がある。そこで、取付容易性及び取付安定性を両立させながら、移動側戸板の円滑な開閉操作を確保する水平車輪を備えた移動ガイド部材を安価に提供することを目的として、移動ガイド部材の構造を検討した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
検討の結果、対となるフランジに挟まれた開口を下向きにして建物開口部の上縁に取り付けたC型チャンネル構造のガイドレールに沿って折戸の移動側戸板を回転させながら案内する移動側戸板の移動ガイド部材において、移動ガイド部材は、取り付けた移動側戸板に対して水平回動自在なガイド本体に、ガイドレールの開口に下方から挿入して、前記ガイドレールのフランジに常態として係合する水平車輪と、前記ガイドレールのフランジに常態として係合しない規制凸部とを設けた構成で、水平車輪は車軸をガイドレールのフランジ間隔等分線に一致させ、半径方向の最大変形量がΔRである弾性を備えたタイヤを取り付け、前記タイヤの外径をガイドレールのフランジ間隔に等しくし、規制凸部はガイドレールのフランジ間隔等分線を挟んだ対称形状で、前記規制凸部の幅を前記タイヤの外径より小さく、前記タイヤの外径からタイヤの最大変形量ΔRの2倍を差し引いた長さより大きくして、移動側戸板に荷重が加わるとタイヤを弾性変形させ、前記タイヤの変形量が最大変形量ΔRに達する前に規制凸部をガイドレールのフランジに係合させる移動側戸板の移動ガイド部材を開発した。
【0009】
ここで、「ガイドレールの開口に下方から挿入して、前記ガイドレールのフランジに」水平車輪又は規制凸部が係合する又は係合しないとは、開口からガイドレールの内部に挿入した水平車輪又は規制凸部が前記内部側から各フランジに水平方向から係合することを意味する。この場合、各フランジの縁部に補強用のリブを設けていれば、ガイドレールの開口は前記リブに挟まれた範囲となり、水平車輪又は規制凸部は前記リブに係合する。また、「タイヤの外径をガイドレールのフランジ間隔に等しく」するとは、水平車輪のがたつきを抑えるためにタイヤの外径をフランジの内側の間隔相当にすることを意味する。この場合、各フランジの縁部に補強用のリブを設けていれば、タイヤの外径はリブ間隔、すなわちリブの内側の間隔相当にする。現実には、水平車輪が回転する必要があることから、フランジ間隔又はリブ間隔に対し、タイヤの外径は0.1mm〜0.2mm程度小さくなる。そして、「フランジ間隔等分線」とは、対となるフランジの内側の間隔を等分するガイドレールの延在方向軸線を意味する。
【0010】
本発明の移動ガイド部材は、常態として水平車輪をガイドレールのフランジに係合させて移動側戸板を案内する。これにより、ガイドレールに侵入するゴミや埃の影響を受けることなく、移動側戸板の円滑な開閉操作を確保する。しかし、移動側戸板に荷重が加わると、水平車輪に取り付けたタイヤが弾性変形し、前記タイヤが最大変形量ΔRまで変形する前に規制凸部をガイドレールのフランジに係合させて車軸に負荷が加わらないようにし、水平車輪の破損を防止している。これら水平車輪と規制凸部とは、いずれもガイドレールの開口に下方から挿入するだけなので、取付容易性がある。そして、ガイド本体は、水平車輪及び規制凸部を一体にガイドレールに向けて付勢して弾性支持することにより、ガイドレールから水平車輪及び規制凸部が抜け出す虞をなくし、取付安定性を確保できる。ここで、移動ガイド部材は、移動側戸板に対する水平回動を、取付基礎ブロックとの軸着関係により実現しているので、水平車輪及び規制凸部を一体にガイドレールに向けて付勢して弾性支持する構造に特化できる。
【0011】
水平車輪及び規制凸部は、それぞれ少なくとも1基ずつガイド本体に設ければよいが、移動側戸板がこじれる場合を想定すれば、ガイド本体は、ガイドレールの延在方向の離れた位置関係にある2基一対の規制凸部と、前記規制凸部のガイドレールの延在方向外側に2基一対の水平車輪とを設けるとよい。ガイドレールの延在方向の離れた位置関係にある2基一対の規制凸部が、移動側戸板のこじれに対していずれかがガイドレールのフランジに係合するので、水平車輪を保護しやすい。この場合、ガイドレールがフランジの縁部にリブを有する構成であれば、前記リブに上方、すなわちガイドレールの内部から下方に向けて係合する脱落防止部材を規制凸部間に設けるとよい。また、ガイドレールの延在方向の離れた位置関係にある2基一対の規制凸部に対してガイドレールの延在方向外側に2基一対の水平車輪を設けることにより、水平車輪の間隔が拡がり、ガイドレールに対するガイド本体の直進安定性が向上する。
【0012】
本発明は、水平車輪をガイド本体に支持する車輪取付部が弾性変形しても構わない。この場合、移動ガイド部材は、取り付けた移動側戸板に対して水平回動自在なガイド本体に、ガイドレールの開口に下方から挿入して、前記ガイドレールのフランジに常態として係合する水平車輪と、前記ガイドレールのフランジに常態として係合しない規制凸部とを設けた構成で、ガイドレールのフランジに向けた水平方向の最大変形量がΔRである弾性を備えた車輪取付部をガイド本体から突出し、水平車輪は前記車輪取付部に支持されており、水平車輪は車軸をガイドレールのフランジ間隔等分線に一致させ、前記水平車輪の外径をガイドレールのフランジ間隔に等しくし、規制凸部はガイドレールのフランジ間隔等分線を挟んだ対称形状で、前記規制凸部の幅を前記水平車輪の外径より小さく、前記水平車輪の外径から車輪取付部の最大変形量ΔRの2倍を差し引いた長さより大きくして、移動側戸板に荷重が加わると車輪取付部を弾性変形させ、前記車輪取付部の変形量が最大変形量ΔRに達する前に規制凸部をガイドレールのフランジに係合させる構成となる。
【0013】
この移動ガイド部材も、ガイド本体は、水平車輪及び規制凸部を一体にガイドレールに向けて付勢して弾性支持するとよい。また、ガイド本体は、幅狭状又は薄板状の可撓部を介して接続する車輪取付部を突出させ、前記車輪取付部は前記可撓部を弾性変形させる構成がよい。このほか、ガイド本体は、ガイドレールの延在方向の離れた位置関係にある2基一対の規制凸部と、前記規制凸部のガイドレールの延在方向外側に2基一対の水平車輪とを設ける構成が好ましい。この場合、ガイドレールがフランジ端にリブを有する構成であれば、前記リブの垂直方向に係合する脱落防止部材を規制凸部間に設けることが好ましい点も同様である。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、水平車輪による移動側戸板の円滑な開閉操作を実現しながら、移動側戸板に負荷が加わった場合でも、規制凸部が前記水平車輪の破損を防止できる。これは、水平車輪として安価な部材が利用できることを意味し、小型な移動ガイド部材を安価にする効果をもたらす。また、具体的な移動ガイド部材として、ガイドレールの延在方向の離れた位置関係にある2基一対の規制凸部と、前記規制凸部のガイドレールの延在方向外側に2基一対の水平車輪とを設ける構成にした場合、2基一対の規制凸部による確実な水平車輪の保護が図れ、離れた位置関係にある2基一対の水平車輪により、ガイドレールに対するガイド本体の直進安定性が向上するほか、ガイドレールのリブの垂直方向に係合する脱落防止部材を前記規制凸部間に追加し、移動ガイド部材の取付安定性を高める効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。図1は移動ガイド部材1を取り付けた移動側戸板61を用いたアウターセット形の折戸6の側面図、図2は折戸6を閉じた状態を表した平面図、図3は折戸6を開いた状態の上端面側を表した平面図、図4は折戸6を開いた状態の下端面側を表した平面図、図5は移動側戸板61に取り付けた移動ガイド部材1の側面図、図6は図5中A−A断面図、図7は移動ガイド部材1の分解斜視図、図8は移動ガイド部材1の移動側戸板61に対する取付関係を表した分解斜視図、図9はガイドレール8に移動ガイド部材1の本体昇降部21を挿入する直前の状態を表した断面図、図10はガイドレール8に移動ガイド部材1の本体昇降部21を挿入し終えた状態を表した断面図であり、そして図11は別例の移動ガイド部材1の移動側戸板61に対する取付関係を表した分解斜視図である。説明の便宜上、図1は破断線下が固定側戸板62,破断線上が移動側戸板61を表わしている。
【0016】
本例は、図1〜図4に見られるように、屈曲関係で連結した移動側戸板61及び固定側戸板62からなるアウターセット形の折戸6を建物開口部7に設けている。本例のガイドレール8は、対となるフランジ81,81に挟まれた開口82を下向きにして建物開口部7の上縁に取り付けられ、建物開口部7の下縁は床面71のままとしている。ガイドレールは、建物開口部7の上縁に取り付ける前記ガイドレール8に代えて又は前記ガイドレール8と共に、建物開口部7の下縁にも設けることができるが、本例のように、ガイドレール8を建物開口部7の上縁のみとし、床面71をそのままとすることにより、床面71に段差を設けずに済む利点が得られる。
【0017】
固定側戸板62は、本発明の移動ガイド部材1から水平車輪5を除いた構成の旋回ガイド部材621を裏面側に取り付け、ガイドレール8に締着した固着補助具622により前記旋回ガイド部材621を拘束し、建物開口部7の側縁下端に固着した旋回受具623で軸支させて、旋回のみ可能にしている。固着補助具622は、旋回ガイド部材621を介して固定側戸板62、更には折戸6全体の傾倒を防止する役割を有している。本例の旋回ガイド部材621は、移動ガイド部材1から水平車輪5を除いた構成と同じなので、例えば旋回ガイド部材621に代えて移動ガイド部材1を位置固定で用いてもよい。
【0018】
移動側戸板61は、裏面側に移動ガイド部材1を取り付け、前記移動ガイド部材1が有する規制凸部4及び水平車輪5をガイドレール8の開口82に下方から挿入し、前記規制凸部4及び水平車輪5をガイドレール8に沿って移動させながら旋回可能にしている。すなわち、本例の折戸6は、旋回受具623が移動側戸板61及び固定側戸板62を一体に支持しながら、固定側戸板62を旋回ガイド部材621に従って旋回させ、移動側戸板61を移動ガイド部材1に従ってガイドレール8に案内させながら旋回させることにより、開閉する構成である。
【0019】
移動ガイド部材1は、図5〜図8に見られるように、移動側戸板61に取り付ける取付基礎ブロック3に対し、ガイドレール8の開口82に下方から挿入する水平車輪5及び規制凸部4を有するガイド本体2を水平旋回自在に軸着して構成される。具体的には、移動ガイド部材1は、ガイド本体2の旋回ピン28を取付基礎ブロック3に軸着することにより、取付基礎ブロック3に対してガイド本体2を旋回自在とする。このように、取付基礎ブロック3は移動側戸板61に対する移動ガイド部材1の水平旋回軸を形成する部分である。ガイドレール8の開口82に下方から水平車輪5及び規制凸部4を挿入するガイド本体2は前記ガイドレール8に対して向きが固定されていることから、取付基礎ブロック3を取り付けた移動側戸板61は、前記ガイド本体2に対して相対的に旋回する。
【0020】
取付基礎ブロック3は、旋回ピン28が貫通する深さの旋回軸孔31を穿孔した樹脂製ブロック体からなり、移動側戸板61の上端面角部に嵌合する。この取付基礎ブロック3には、ガイド本体2の本体受け部22から水平に折り曲げた旋回板27から垂下した旋回ピン28を軸着する。旋回ピン28は、取付基礎ブロック3に穿孔した旋回軸孔31より深い位置(正確には旋回軸孔31及び抜止板32の厚みの合計より深い位置)に貫通させた係止ピン281の両端を半径方向に突出させている。移動ガイド部材1は、移動側戸板61の上端面角部に嵌合した取付基礎ブロック3に対し、旋回板27及びガイド本体2が一体に旋回する。
【0021】
本例の取付基礎ブロック3は、未だ中空状態にある移動側戸板61の上端面角部に嵌合させた後、前記移動側戸板61内にウレタン樹脂を注入発泡させることにより、前記移動側戸板61と接着一体化する。また、本例の取付基礎ブロック3は、移動側戸板61を構成する鋼鈑が形成する突き合わせフランジに設けた切欠611を、前記突き合わせフランジを差し込む取付基礎ブロック3の差し込み溝33に係合突起331をそれぞれ設け、前記切欠611に前記係合突起331を係合させて、移動側戸板61の上端面から取付基礎ブロック3が抜け出すことを防止している。このほか、図示は省略するが、移動側戸板61の上端面を塞ぐ型材612(図8参照)に突片を設け、前記突片により取付基礎ブロック3を押さえ込ませると、取付基礎ブロック3の抜け止めがより確実になる。
【0022】
取付基礎ブロック3に穿孔した旋回軸孔31は、半径方向に凹んだ一対のキー溝311,311を刻設し、旋回軸孔31及びキー溝311を合わせた断面形状に等しい挿通孔321を設けた金属製の抜止板32を下端に嵌め込んでいる。抜止板32は、キー溝311を通じて差し込まれる旋回ピン28の係止ピン281を係合させて、前記旋回ピン28の抜け止めを図る。この抜止板32は、係合する旋回ピン28の係止ピン281との擦れ合いによる磨耗や、旋回ピン28に引き抜き荷重が掛かった際の係止ピン281による破損がないため、係止ピン281を安定して係合させておくことができる。移動ガイド部材1は、旋回軸孔31に旋回ピン28を抜止状態で差し込むだけで、移動側戸板61の上端面に取り付けることができる。
【0023】
ここで、移動側戸板61を建物開口部7に取り付ける前は、旋回ピン28を旋回軸孔31に抜き差し自在としながら、移動側戸板61を建物開口部7に取り付けた後は、旋回ピン28を旋回軸孔31に対して抜止状態にある必要がある。本例は、旋回軸孔31に刻設したキー溝311と旋回ピン28から突出する係止ピン281との水平面内における位置関係を特定している。すなわち、本例のキー溝311と係止ピン281とは、ガイド本体2と移動側戸板61との開度が135度になる位置関係で一致させて、旋回ピン28を旋回軸孔31に差し込み、移動側戸板61の開閉操作に従う旋回ピン28の通常旋回範囲でキー溝311と係止ピン281とが一致しないようにすることで、抜け止めを図っている。本例は、移動側戸板61が約90度の開度を有するように、前記旋回ピン28の通常旋回範囲を0度〜90度としている。
【0024】
ガイド本体2は、上記旋回板27を一体に設けた金属製外形箱型の本体受け部22と、この本体受け部22へ昇降自在に収納した樹脂ブロックの本体昇降部21とから構成される(図6参照)。本体受け部22は、コイルスプリング23を係止する支持突起221を底面から切り起こし、本体昇降部21の昇降方向を規制する平行レール223,223と、本体昇降部21の逸脱を防止する拘束ピン24の差込孔222とを、それぞれ側面に一体成形している。
【0025】
本体昇降部21は、本体受け部22の支持突起221に下端を係止させたコイルスプリング23を遊嵌させるスプリング孔26を底面から上方に向けて穿孔し、本体受け部22の平行レール223,223に規制されるレール溝213を側面に、本体受け部22の側面縁部に被せるガイドフランジ211,211を側面縁部にそれぞれ設け(図6参照)、本体受け部22の差込孔222から拘束ピン24を挿通させる上下方向の長孔からなる拘束溝212を側面間にわたって貫設している。この本体昇降部21は、前記コイルスプリング23により上向きに付勢された状態で弾支されている。前記弾支による本体昇降部21の昇降方向は、本体受け部22の平行レール223にレール溝213を係合させて規制され、本体昇降部21の昇降範囲は本体受け部22から差し込んだ拘束ピン24を拘束溝212に挿通させて規制されている。
【0026】
本発明の特徴である規制凸部4,4及び水平車輪5,5は、本体昇降部21の上面に、それぞれガイドレール8の延在方向の離れた位置関係で2基一対設けられている。具体的には、2基一対の規制凸部4,4が本体昇降部21の上面から上向きに突設され、2基一対の水平車輪5,5は前記各規制凸部4のガイドレールの延在方向外側へ水平に張り出した車輪取付部51,51に軸着されている。これから、規制凸部4,4及び水平車輪5,5は、本体昇降部21と一体に本体受け部22に対して弾支されていることになる。車輪取付部51は規制凸部4と一体の樹脂製であり、金属製の車軸512を有する。水平車輪5は、前記車軸512に樹脂製のホイール52を軸着し、前記ホイール52にゴム製のタイヤ53を嵌めて構成される。
【0027】
本例は、車輪取付部51が幅狭状かつ薄板状の可撓部511を介して規制凸部4から張り出している。移動側戸板61に負荷が加わった場合、前記車輪取付部51が可撓部511により水平方向に弾性変形して、水平車輪5に加わる力をガイドレール8のリブ83から逃がし、代わって規制凸部4をガイドレール8のリブ83に係合させて、水平車輪5の破損を防止する。このため、本例は水平車輪5の車軸512をガイドレール8のフランジ間隔等分線Lに一致させると共に、規制凸部4を前記フランジ間隔等分線Lを挟んだ対称な直方体形状にし、可撓部511による車輪取付部51の水平方向の最大変形量をΔR(図3中一方向(図面上側)の最大変形量ΔRのみ図示)とし、規制凸部4の幅を水平車輪5の外径より小さく、前記水平車輪5の外径から車輪取付部51の最大変形量ΔRの2倍を差し引いた長さより大きくして、車輪取付部51の変形量が最大変形量ΔRに達する前に規制凸部4をガイドレール8のフランジ81の縁部に設けたリブ83に係合させる。
【0028】
本例は、車輪取付部51が弾性変形するため、水平車輪5のタイヤ53に弾性は要求されない。しかし、例えば可撓部を設けていない又は可撓部による弾性が十分でない場合、水平車輪5は半径方向の最大変形量がΔRである弾性を備えたタイヤ53をホイール52に嵌める構成とし、上述同様、水平車輪5の車軸512をガイドレール8のフランジ間隔等分線Lに一致させ、規制凸部4の幅を前記タイヤ53の外径より小さく、前記タイヤ53の外径からタイヤ53の最大変形量ΔRの2倍を差し引いた長さより大きくすれば、タイヤ53の変形量が最大変形量ΔRに達する前に規制凸部4をガイドレール8のフランジ81の縁部に設けたリブ83に係合させることができる。本発明は、車輪取付部51又は水平車輪5のタイヤ53のいずれかを弾性変形させればよいため、本例の構成又は前記タイヤ53による構成のいずれかを用いればよいが、両者を組み合せて用いれば、ガイドレール8のフランジ81の縁部に設けたリブ83に対する規制凸部4の係合がより確実となる。
【0029】
このほか、本例の移動ガイド部材1は、前記規制凸部4,4の間に、ガイドレール8の内部から下方に向けてリブ83に係合する脱落防止部材25を配している。脱落防止部材25は、移動片251及び係合片252からなる断面上下反転L字状金属片である。この脱落防止部材25は、移動片251を規制凸部4,4間から本体昇降部21内に差し込み、係合片252を規制凸部4,4間から水平に突出させている。移動片251は、本体昇降部21を貫通させた付勢ピン253を螺合により一体化させているので、この付勢ピン253を付勢に抗して押し込むことにより、ガイドレール8のフランジ81から係合片252を遠ざけることができる。
【0030】
移動ガイド部材1を取り付けた移動側戸板61は、固定側戸板62に対して折り畳んだ状態とし、前記固定側戸板62と共に建物開口部7下縁(本例では床面71)に傾けて置いた状態から引き起こし、固定側戸板62の下端面を旋回受具623に軸支させてから、ガイド本体2をガイドレール8直下へ持ってくる。ここで、コイルスプリング23により本体昇降部21は弾支されているので、このままでは規制凸部4,4及び水平車輪5,5がガイドレール8の側面に当たり、規制凸部4,4及び水平車輪5,5をガイドレール8の開口82に下方から挿入できない。そこで、図9に見られるように、本体昇降部21を作業者の手によって押し下げて規制凸部4,4及び水平車輪5,5をガイドレール8直下に持っていき、図10に見られるように、本体昇降部21の押し下げをやめると、本体昇降部21が上昇して規制凸部4,4及び水平車輪5,5をガイドレール8の開口82に下方から挿入できる。
【0031】
本体昇降部21は、規制凸部4を除く上面をガイドレール8のフランジ81の縁部に設けたリブ83に下方から当接させることにより、規制凸部4及び水平車輪5のガイドレール8に対する挿入量を制限する。これにより、リブ83の高さ方向の厚みが薄くても、前記リブ83に対して水平車輪5を確実にガイドレール8に係合させることができる。そして、水平車輪5より規制凸部4を高さ方向に突出させておくと規制凸部4も確実にガイドレール8の開口82に下方から挿入でき、車輪取付部51を弾性変形させた際、規制凸部4をガイドレール8のフランジ81の縁部に設けたリブ83に係合させることができる。
【0032】
本体昇降部21の規制凸部4及び水平車輪5をガイドレール8に挿入できれば、建物開口部7に対する移動側戸板61及び固定側戸板62の取付が完了する。本例は、移動側戸板61及び固定側戸板62の取付安定性を確保するため、ガイドレール8に挿入した規制凸部4,4の間に脱落防止部材25を設けている。本例の脱落防止部材25は、圧縮バネによりガイドレール8のフランジ81に向けて付勢されて本体昇降部21の前面から突出する付勢ピン253を移動片251に固着している。脱落防止部材25の係合片252は、上面が前記付勢ピン253の付勢方向に下り勾配で傾斜しているため、規制凸部4及び水平車輪5をガイドレール8の開口82に下方から挿入する際、ガイドレール8のフランジ81の縁部に設けたリブ83に押されて逃げながら、ガイドレール8の内部に差し込むことができる。そして、前記リブ83を通過した係合片252は、付勢ピン253の付勢によりガイドレール8のフランジ81に向けて移動する移動片251に従って、前記フランジ81に向けて移動し、リブ83に上方から係合する(図10中右方向)。こうして、脱落防止部材25をガイドレール8のフランジ81の縁部に設けたリブ83に係合させた移動側戸板61は、通常の開閉操作に際してガイドレール8から外れる虞がなくなる。この係合片252は、付勢に抗して付勢ピン253を押し込む(図9参照)ことにより、容易にリブ83との係合を解除できる。
【0033】
本発明の移動ガイド部材1は、移動側戸板61の上端面又は下端面(ガイドレール8を建物開口部7の下縁に取り付けた場合)に枢着できればよく、移動側戸板61の上端面又は下端面に嵌合する取付基礎ブロックは必須ではない。例えば、図11に見られるように、木製中実の移動側戸板61に木ネジ291を用いて固着した取付補助具29に対し、留めネジ292によりガイド本体2を枢着しても構わない。この結果、ネジ止め等を不要にして取付作業を容易にする上述の例(図1以下参照)の利点は失われるが、移動側戸板61に取付基礎ブロック3を嵌合させる加工が不要になる利点を新たに得ることができる。また、前記取付補助具29を用いることにより、移動側戸板61に直接軸孔を穿設しなくてよくなる利点も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】移動ガイド部材を取り付けた移動側戸板を用いたアウターセット形の折戸の側面図である。
【図2】折戸を閉じた状態を表した平面図である。
【図3】折戸を開いた状態の上端面側を表した平面図である。
【図4】折戸を開いた状態の下端面側を表した平面図である。
【図5】移動側戸板に取り付けた移動ガイド部材の側面図である。
【図6】図5中A−A断面図である。
【図7】移動ガイド部材の分解斜視図である。
【図8】移動ガイド部材の移動側戸板61に対する取付関係を表した分解斜視図である。
【図9】ガイドレールに移動ガイド部材の本体昇降部を挿入する直前の状態を表した断面図である。
【図10】ガイドレールに移動ガイド部材の本体昇降部を挿入し終えた状態を表した断面図である。
【図11】別例の移動ガイド部材の移動側戸板に対する取付関係を表した分解斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1 移動ガイド部材
2 ガイド本体
21 本体昇降部
22 本体受け部
23 コイルスプリング
24 拘束ピン
25 脱落防止部材
26 スプリング孔
27 旋回板
28 旋回ピン
29 取付補助具
3 取付基礎ブロック
31 旋回軸孔
32 抜止板
33 差し込み溝
4 規制凸部
5 水平車輪
51 車輪取付部
52 ホイール
53 タイヤ
6 アウターセット形の折戸
61 移動側戸板
62 固定側戸板
7 建物開口部
71 床面
8 ガイドレール
81 フランジ
82 開口
83 リブ
L ガイドレールのフランジ間隔等分線
ΔR ガイドレールの幅方向の最大変形量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対となるフランジに挟まれた開口を下向きにして建物開口部の上縁に取り付けたC型チャンネル構造のガイドレールに沿って折戸の移動側戸板を回転させながら案内する移動側戸板の移動ガイド部材において、移動ガイド部材は、取り付けた移動側戸板に対して水平回動自在なガイド本体に、ガイドレールの開口に下方から挿入して、前記ガイドレールのフランジに常態として係合する水平車輪と、前記ガイドレールのフランジに常態として係合しない規制凸部とを設けた構成で、水平車輪は車軸をガイドレールのフランジ間隔等分線に一致させ、半径方向の最大変形量がΔRである弾性を備えたタイヤを取り付け、前記タイヤの外径をガイドレールのフランジ間隔に等しくし、規制凸部はガイドレールのフランジ間隔等分線を挟んだ対称形状で、前記規制凸部の幅を前記タイヤの外径より小さく、前記タイヤの外径からタイヤの最大変形量ΔRの2倍を差し引いた長さより大きくして、移動側戸板に荷重が加わるとタイヤを弾性変形させ、前記タイヤの変形量が最大変形量ΔRに達する前に規制凸部をガイドレールのフランジに係合させることを特徴とする移動側戸板の移動ガイド部材。
【請求項2】
ガイド本体は、水平車輪及び規制凸部を一体にガイドレールに向けて付勢して弾性支持している請求項1記載の移動側戸板の移動ガイド部材。
【請求項3】
ガイド本体は、ガイドレールの延在方向の離れた位置関係にある2基一対の規制凸部と、前記規制凸部のガイドレールの延在方向外側に2基一対の水平車輪とを設けた請求項1又は2いずれか記載の移動側戸板の移動ガイド部材。
【請求項4】
対となるフランジに挟まれた開口を下向きにして建物開口部の上縁に取り付けたC型チャンネル構造のガイドレールに沿って折戸の移動側戸板を回転させながら案内する移動側戸板の移動ガイド部材において、移動ガイド部材は、取り付けた移動側戸板に対して水平回動自在なガイド本体に、ガイドレールの開口に下方から挿入して、前記ガイドレールのフランジに常態として係合する水平車輪と、前記ガイドレールのフランジに常態として係合しない規制凸部とを設けた構成で、ガイドレールのフランジに向けた水平方向の最大変形量がΔRである弾性を備えた車輪取付部をガイド本体から突出し、水平車輪は前記車輪取付部に支持されており、水平車輪は車軸をガイドレールのフランジ間隔等分線に一致させ、前記水平車輪の外径をガイドレールのフランジ間隔に等しくし、規制凸部はガイドレールのフランジ間隔等分線を挟んだ対称形状で、前記規制凸部の幅を前記水平車輪の外径より小さく、前記水平車輪の外径から車輪取付部の最大変形量ΔRの2倍を差し引いた長さより大きくして、移動側戸板に荷重が加わると車輪取付部を弾性変形させ、前記車輪取付部の変形量が最大変形量ΔRに達する前に規制凸部をガイドレールのフランジに係合させることを特徴とする移動側戸板の移動ガイド部材。
【請求項5】
ガイド本体は、水平車輪及び規制凸部を一体にガイドレールに向けて付勢して弾性支持している請求項4記載の移動側戸板の移動ガイド部材。
【請求項6】
ガイド本体は、幅狭状又は薄板状の可撓部を介して接続する車輪取付部を突出させており、前記車輪取付部は前記可撓部を弾性変形させる請求項4又は5いずれか記載の移動側戸板の移動ガイド部材。
【請求項7】
ガイド本体は、ガイドレールの延在方向の離れた位置関係にある2基一対の規制凸部と、前記規制凸部のガイドレールの延在方向外側に2基一対の水平車輪とを設けた請求項4〜6いずれか記載の移動側戸板の移動ガイド部材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2007−332712(P2007−332712A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167539(P2006−167539)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(000103404)オーエム機器株式会社 (30)
【Fターム(参考)】