説明

移動側構造体の位置決め装置および移動側構造体の位置調整および位置決めが自在なパイプ構造物

【課題】テーブルや机類、作業台等における天板支持構造部分などを移動可能に支持する移動側構造体の高さなどの位置を自在に調整でき、且つその位置を任意に位置決め自在な位置決め装置、および位置決め装置を応用して構築された移動側構造体の位置調整および位置決めが自在なパイプ構造物を提供する。
【解決手段】
位置調整板5を弾性部材9の作用に打ち勝つ力で傾動させて、その被位置決め要素8を、位置決め部材3の位置決め要素15から離脱させて移動側構造体12を移動可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パイプ材(又は棒材も含む。以下同じ。)を骨材に使用して組み立てるパイプ構造物であって、例えばテーブルや机類、作業台等における天板支持構造部分などを移動可能に支持する移動側構造体の高さなどの位置を自在に調整でき、且つその位置を任意に位置決め自在な位置決め装置、および前記の位置決め装置を応用して構築された移動側構造体の位置調整および位置決めが自在なパイプ構造物の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、テーブルや机類、作業台等の天板支持構造部分などを昇降可能な移動側構造体として構成し、同移動側構造体の高さ位置などを調整して、その位置を任意に位置決め自在な位置決め装置、および前記の位置決め装置を応用して構成された移動側構造体の位置調整および位置決めが自在なパイプ構造物に関する先行技術としては、およそ下記に示す特許文献1〜3を参照することができる。
先ず特許文献1に開示された「調節できる棚」は、棚(移動側構造体)の四隅に、同棚の四隅を支持する柱を貫通させる截頭円錐形の受け金具を取り付け、柱外周面には上下方向に間隔を開けて周方向溝を複数形成し、柱の外面と前記截頭円錐形受け金具の内面との間に円周を二分した部材を楔状に介在させ、前記楔状部材のリブを柱の円周方向溝へ引っ掛けて位置が固定される位置決め装置が開示されている。
【0003】
特許文献2に開示された「棚受け構造」は、2本の角パイプ状支柱の相対向する面にスリット形状の孔を上下方向に間隔を開けて複数設け、前記2本の支柱の相対向する面のスリット形状孔へ両端を差し入れて第1および第2の棚受け装置が設置され、これら第1および第2の棚受け装置の上に棚部材が支持された構成である。
更に特許文献3に開示された「ラック」は、四隅に立てた支柱と、同四隅の支柱の上下の端部を結合した横枠とでラックが構成され、前記ラックの一側面を形成する左右の支柱間に架け渡した支持レールが、搭載するべき装置を支持する構成である。前記支持レールは、支柱の上下方向に間隔を開けて設けた位置決め孔へ嵌め込み可能な位置決め用突起を備えた構成である。
【0004】
【特許文献1】特公昭50−25372号公報
【特許文献2】特開2001−178566号公報
【特許文献3】特開2006−202792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1〜3に開示された、位置を調整しその位置を位置決め可能な位置決め装置は、いずれも位置を調整したり、その位置を位置決めすることは可能と認められる。しかし、その具体的内容は、位置の調整等に際しては、支持した棚板や搭載するべき装置を一旦は撤去することが前提の構成である。いわゆる棚受け装置を支柱から分離する分解手順を踏み、改めて高さ位置を決めて支柱への取り付け手順を実行した後に、再び棚板や搭載するべき装置を元通りに載せ架けて支持させる手順や工程を実行することを条件とする構成である。いわゆるワンタッチ的操作により、位置の調整および位置の位置決めを簡単に行える構成ではない。
【0006】
本発明の目的は、移動側構造体の位置の調整等に際して、支持している天板や棚板、あるいは搭載している装置類を一旦撤去する必要は一切無く、というよりも移動側構造体で天板等を支持した状態のまま、いわゆるワンタッチ的操作により移動側構造体の位置の調整、および位置決めを自在に簡単に行える構成の位置決め装置、および同位置決め装置を利用した、移動側構造体の位置調整および位置決めが自在なパイプ構造物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した従来技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る移動側構造体の位置決め装置は、
大径のパイプ材1と、同パイプ材1の中空部内へ出入り可能に嵌め込まれた小径の棒材2とで構成された移動機構における前記大径のパイプ材1に、同パイプ材1と同方向に中空構造である位置決め部材3が固定されており、
前記位置決め部材3の中空部内へ移動可能に貫通された位置調整板5の基端部は、前記小径の棒材2を基礎にして構成された移動側構造体12に属する部材12Aへ傾動が可能に連結され、該位置調整板5にはその長手方向に間隔を開けて複数の被位置決め要素8…が設けられており、
前記位置決め部材3には、前記位置調整板5の移動を許容して位置決め部材3の内面に向かって押し付ける弾性部材9が設置され、更に前記弾性部材9に押された位置調整板5の前記被位置決め要素8を位置決めする位置決め要素15が前記内面側に設けられており、
前記位置調整板5を弾性部材9の作用に打ち勝つ力で傾動させて、その被位置決め要素8を、位置決め部材3の位置決め要素15から離脱させて移動側構造体12を移動可能にする構成であることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した移動側構造体の位置決め装置において、
位置調整板5の被位置決め要素8を、位置決め部材3の位置決め要素15から離脱させる傾動手段として傾動レバー6、回転カム16、ハンドル軸17が設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載した発明に係る移動側構造体の位置決め装置は、
間隔を開けて略平行に配置された少なくとも2本の大径のパイプ材1、1と、前記の各パイプ材1の中空部内へ出入り可能に嵌め込まれた小径の棒材2、2とで構成された移動機構における前記大径のパイプ材1に、同パイプ材1と同方向に中空構造である位置決め部材3が固定されており、
前記の各位置決め部材3の中空部内へ移動可能に貫通された位置調整板5の基端部は、前記小径の棒材2を基礎にして構成された移動側構造体12に属する部材12Aへ傾動が可能に連結され、該位置調整板5にはその長手方向に間隔を開けて複数の被位置決め要素8…が設けられており、
前記位置決め部材3には、前記位置調整板5の移動を許容して位置決め部材3の内面に向かって押し付ける弾性部材9が設置され、更に前記弾性部材9に押された位置調整板5の前記被位置決め要素8を位置決めする位置決め要素15が前記内面側に設けられており、
前記の各位置調整板5を、弾性部材9の作用に打ち勝つ力で傾動させて、その被位置決め要素8を、位置決め部材3の位置決め要素15から離脱させて移動側構造体12を移動可能にする構成であることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載した発明は、請求項3に記載した移動側構造体の位置決め装置において、
各位置調整板5の被位置決め要素8を、位置決め部材3の位置決め要素15から共通に離脱させる手段として、各位置調整板5の基端部に傾動用レバー6が設けられ、前記の各傾動用レバー6と共通に接触する回転カム16を備えたハンドル軸17が移動側構造体12に設置されており、前記のハンドル軸17を回転させることで各位置調整板5を傾動させ、その被位置決め要素8を、位置決め部材3の位置決め要素15から共通に離脱させる構成であることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載した発明は、請求項4に記載した移動側構造体の位置決め装置において、
ハンドル軸17の中間部又は端部に回転用ハンドル21が設置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載した発明に係る移動側構造体の位置調整および位置決めが自在なパイプ構造物10又は11は、
間隔を開けて略平行に配置された少なくとも2本の大径のパイプ材1、1と、前記の各パイプ材1の中空部内へ出入り可能に嵌め込まれた小径の棒材2、2とで構成された移動機構における前記大径のパイプ材1を固定側支柱として固定側構造体が構築され、前記大径パイプ材1の中空部へ出入り可能に嵌め込まれた小径の棒材2を移動側支柱として移動側構造体12が構築されていること、
前記固定側支柱である大径のパイプ材1に、同パイプ材1と同方向に中空構造である位置決め部材3が固定されていること、
前記位置決め部材3の中空部内へ移動可能に貫通された位置調整板5の基端部が、前記小径の棒材2を移動側支柱として構築された移動側構造体12に属する部材12Aへ傾動が可能に連結され、該位置調整板5にはその長手方向に間隔を開けて複数の被位置決め要素8…が設けられていること、
前記位置決め部材3には、前記位置調整板5の移動を許容して位置決め部材3の内面に向かって押し付ける弾性部材9が設置され、更に前記弾性部材9に押された位置調整板5の前記被位置決め要素8を位置決めする位置決め要素15が前記内面側に設けられていること、
前記位置調整板5を、弾性部材9の作用に打ち勝つ力で傾動させて、その被位置決め要素8を、位置決め部材3の位置決め要素15から離脱させて移動側構造体12を移動可能にする構成であることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載した発明は、請求項6に記載した移動側構造体の高さ調整および位置決めが自在なパイプ構造物10又は11において、
複数の位置調整板5の被位置決め要素8を、位置決め部材3の位置決め要素15から共通に離脱させる手段として、各位置調整板5の基端部に傾動用レバー6が設けられ、前記の各傾動用レバー6と共通に接触する回転カム16を備えたハンドル軸17が移動側構造体12に設置されており、前記のハンドル軸17を回転させることで各位置調整板5を傾動させ、その被位置決め要素8を位置決め部材3の位置決め要素15から離脱させて移動側構造体12の位置調整および位置決めを可能にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜5に係る発明の移動側構造体の位置決め装置は、位置調整板5を弾性部材9の作用に打ち勝つ力で傾動させて、その被位置決め要素8を、位置決め部材3の位置決め要素15から離脱させることで移動側構造体12は移動可能となり、位置調整を自在にできる。逆に前記位置調整板5への作用力を解消すると、位置調整板5は直ちに復元動作し、その被位置決め要素8は位置決め部材3の位置決め要素15に拘束されて位置決め状態となる。つまり、位置調整板5を一定角度傾動させるワンタッチ的操作により、移動側構造体12の位置の調整、および所定位置への位置決めを自在に簡単に行えるのである。
請求項2〜5のように、位置調整板5が、大径のパイプ材1と、前記パイプ材1の中空部内へ出入り可能に嵌め込まれた小径の棒材2とで構成される移動機構が複数とされ、それぞれに位置調整板5が設置された構成であっても、各位置調整板5の基端部の傾動用レバー6へ共通に接触する回転カム16を備えたハンドル軸17を回転させることにより、やはりワンタッチ的操作として移動側構造体12の位置の調整、および所定位置への位置決めを自在に簡単に行えるのである。
【0015】
したがって、請求項5、6に係る発明のように、上記移動側構造体の位置決め装置を応用して構成されたパイプ構造物10又は11においても、その移動側構造体12の位置の調整、および決められた位置への位置決めは、やはりワンタッチ的操作により自在に簡単に行えるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
大径のパイプ材1と、同パイプ材1の中空部内へ出入り可能に嵌め込まれた小径の棒材2とで構成された移動機構における前記大径のパイプ材1に、同パイプ材1と同方向に中空構造である位置決め部材3が固定される。
前記位置決め部材3の中空部内へ移動可能に貫通された位置調整板5の基端部は、前記小径の棒材2を基礎にして構成された移動側構造体12に属する部材12Aへ傾動が可能に連結され、該位置調整板5には、その長手方向に間隔を開けて複数の被位置決め要素8が設けられる。
前記位置決め部材3には、前記位置調整板5の移動を許容して位置決め部材3の一つの内面に向かって押し付ける弾性部材9が設置され、更に前記弾性部材9に押された位置調整板5の被位置決め要素8を位置決めする位置決め要素15が前記の内面側に設けられる。
前記位置調整板5を弾性部材9の作用に打ち勝つ力で傾動させ、その被位置決め要素8を、位置決め部材3の位置決め要素15から離脱させて移動側構造体12を移動可能にする構成である。
そのために前記位置調整板5の被位置決め要素8を、位置決め部材3の位置決め要素15から離脱させる傾動手段として、傾動用レバー6、回転カム16、ハンドル軸17が設けられる。
【0017】
次に、間隔を開けて略平行に配置された少なくとも2本の大径のパイプ材1、1と、前記の各パイプ材1の中空部内へ出入り可能に嵌め込まれた小径の棒材2とで構成された移動機構における前記大径のパイプ材1を固定側支柱として固定側構造体が構築され、前記大径パイプ材1の中空部へ出入り可能に嵌め込まれた小径の棒材2を移動側支柱として移動側構造体12が構築される。
前記固定側支柱である大径のパイプ材1に、同パイプ材1と同方向に中空構造である位置決め部材3を固定する。
前記位置決め部材3の中空部内へ移動可能に貫通された位置調整板5の基端部が、前記小径の棒材2を移動側支柱として構築した移動側構造体12に属する部材12Aへ傾動が可能に連結され、該位置調整板5の長手方向に間隔を開けて複数の被位置決め要素8…が設けられる。
前記位置決め部材3に、前記位置調整板5の移動を許容して位置決め部材3の一つの内面に向かって押し付ける弾性部材9が設置され、更に前記弾性部材9に押された位置調整板5の前記被位置決め要素8を位置決めする位置決め要素15が前記内面側に設けられる。
前記位置調整板5を、弾性部材9の作用に打ち勝つ力で傾動させ、その被位置決め要素8を、位置決め部材3の位置決め要素15から離脱させて移動側構造体12を移動可能とする構成である。
なお、複数の位置調整板5、5の被位置決め要素8を、位置決め部材3の位置決め要素15から共通に離脱させる手段として、各位置調整板5の基端部に傾動用レバー6を設け、前記の各傾動用レバー6と共通に接触する回転カム16を備えたハンドル軸17が移動側構造体12に設置され、前記ハンドル軸17を回転させることで各位置調整板5が等しく傾動され、その被位置決め要素8を位置決め部材3の位置決め要素15から離脱させて移動側構造体12は移動可能となり、移動側構造体12の位置調整および位置決めが可能となる。
【実施例1】
【0018】
以下に、本発明を図示した実施例に基づいて説明する。
先ず図1〜図6に示した実施例1は、請求項1〜5に記載した発明に係る移動側構造体の位置決め装置であって、傾動用レバー6と共通に接触する回転カム16を備えたハンドル軸17の中間部に回転用ハンドルレバー21を備えた実施例を示している。
即ち、大径のパイプ材1と、同パイプ材1の中空部内へ出入り可能に嵌め込まれた小径の棒材2(ただし、この棒材2は通例パイプ材で可。以下同じ。)とで構成された移動機構における前記大径のパイプ材1に、同パイプ材1と同方向に中空構造である金属製で筒状の位置決め部材3がクランプ構造の取付具4により固定されている。
なお、図1および図2は、図6に示すようなパイプ構造物10を構成する四隅の柱のうち、短辺の両側に直立する2本の平行な柱を構成する大径のパイプ材1と小径の棒材2とによる移動機構の実施例を示している。いうなれば、大径のパイプ材1が固定側支柱で、小径の棒材2が移動側支柱に該当する。移動側支柱である小径の棒材2は、これを基礎とする移動側構造体12の構築に利用され、同移動側構造体12の上部枠に天板部12Dを支持する構成とされている。図示した上部枠は、短辺を1本のパイプ材12Aで形成され、長手辺は上下2本のパイプ材12B、12Cでダブルパイプ構造に構築されている。
【0019】
上記位置決め部材3の中空部内に、適度な耐座屈剛性を有する帯鋼板状の位置調整板5が上下方向へ移動可能に貫通されている。この位置調整板5の基端部(上端部)は、上記小径の棒材2を基礎にして構築された移動側構造体12の上記上部枠を構成する短辺のパイプ材12Aへ傾動が可能に連結されている。より具体的な構成は図2に示したとおり、位置調整板5の上端はほぼ直角に屈曲されて傾動用レバー6に形成され、同傾動用レバー6の支点部が回転用クランプ7により前記パイプ材12Aへ連結されている。したがって、傾動用レバー6を上方へ持ち上げると、位置調整板5はパイプ材12Aを中心として回転し傾動する。位置調整板5には、その長手方向にほぼ一定の間隔を開けて被位置決め要素である孔8が複数設けられている。
【0020】
他方、上記の位置決め部材3には、上記位置調整板5が上下方向へ移動することを許容しつつ位置決め部材3の一つの内面、即ち図4の右側内面に向かって押し付ける弾性部材が、図示例の場合には板バネ9として設置されている。但し、弾性部材としてはプラスチックバネその他を選択して使用可能である。一方、位置決め部材3において、前記板バネ9に押された位置調整板5の前記被位置決め要素たる孔8へ嵌め込まれて位置決めする位置決め要素としての突起15が前記内面側に設けられている。
したがって、例えば図5Bのように上記傾動用レバー6を上向き(反時計回り方向)に回転させると、位置調整板5は弾性部材たる板バネ9の押し作用に打ち勝って、例えば図4に実線と2点鎖線とで表したように一定の角度傾動し、突起15の高さ以上に傾動すると、その被位置決め要素たる孔8が位置決め部材3の突起15から離脱し、小径の棒材2、ひいては該小径の棒材2を基礎にして構築された移動側構造体12は自由に移動できることになり、図の上下方向へ移動させることができ、位置の調整ができる。
勿論、上記傾動用レバー6を上向きに回転させる作用(力)を解消させると、位置調整板5は板バネ9の押し作用により位置決め部材3の内面へ密接する位置にまで復元動作し、丁度位置が整合した孔8へ突起15へ嵌って位置決め状態になる(図5Aを参照)。
つまり、傾動用レバー6を回転させる(又は図示例の場合は上向きに変位させる)ワンタッチ的な操作のみによって、移動側支柱である小径の棒材2を、ひいては同小径の棒材2を基礎にして構築された移動側構造体12の位置を自由に調整すること、および調整した位置を位置決めすることが自在に簡単に行えるのである。
【0021】
なお、図1に示す実施例の場合は、左右2本の平行な配置とされた大径のパイプ材1と小径の棒材2とによる移動機構の各々に、また、図6に示す実施例の場合は四隅の支柱として配置された4本の大径のパイプ材1と小径の棒材2とによる移動機構の各々に、傾動用レバー6と位置調整板5、および板バネ9と突起15を備えた位置決め部材3から成る位置決め装置が設置されているが、この限りではない。
小径の棒材2を基礎にして構築された移動側構造体12の自重量、および同移動側構造体12へ載荷される積載物の重量が小さく、単一の位置決め装置で移動側構造体12および載荷された積載物を位置決めして支持できる設計荷重条件の場合には、単一の位置決め装置のみを、いずれか一の移動機構へ設置した構成で実施することができる(請求項1に係る発明)。
【0022】
一方、請求項3〜5に記載した発明のように、より具体的に言えば、図1および図6に記載しているように、間隔を開けて略平行に配置された2本あるいは4本の支柱を構成する大径のパイプ材1と、前記パイプ材1の中空部内へ出入り可能に嵌め込まれた小径の棒材2とで構成された移動機構のそれぞれに、上記構成の位置決め装置を個別に設置して実施することも好ましい。
もっとも、このような実施例においては、各位置決め装置の位置調整板5を、合一に等しい動作で又は共通する動作として傾動させ、その被位置決め要素である孔8を、位置決め部材3の位置決め要素たる突起15から同時に離脱させることにより、移動側構造体12を移動可能とすることができ、もって移動側構造体12の位置の調整が可能となる。
【0023】
そこで、図1と図2および図6に示した実施例のように、上記小径の棒材2を基礎として構築された移動側構造体12の上部枠が平面視を長方形に形成されている場合には、その短辺方向に隣接する配置とされた2本の大径のパイプ材1、および同パイプ材1の中空部内へ出入り可能に嵌め込まれた小径の棒材2とで構成された移動機構を一組又は一対と定め、各々の移動機構毎に、上記位置決め装置を共通に動作させる構成を以下のように設けて実施される。
即ち、各位置決め装置の位置調整板5、5の基端部に設けた傾動用レバー6、6と、図1あるいは図6のように共通に接触する2個の回転カム16、16を共回りする構成で備えたハンドル軸17が、移動側構造体12の上部枠を構成する長手方向に位置するダブルパイプ12B、12Cのうち、下位のパイプ材12Cの端部に回転用ジョイント18を取り付け、同回転用ジョイント18へ回転可能に設置されている(図1を参照)。
したがって、上記のハンドル軸17を必要な回転角だけ正転方向へ回転させると、共回りする各回転カム16、16が各々に接触する上記二つの傾動用レバー6、6を同一角度上向きに回転させ、ひいては各々に従属する位置調整板5、5を等しく一定方向へ傾動させて、その被位置決め要素たる孔8を、位置決め部材3の位置決め要素たる突起15から同時に離脱させ、移動側構造体12を移動可能にする(図5Bを参照)。
よって、前記操作により、移動側構造体12の高さ位置の調整を自在に行うことができる。そして、位置を調整した後に、前記前記ハンドル軸17を元位置に復元させる(又は傾動用レバー6、6を上向きに回転させる力を解消する)と、位置決め部材3の板バネ9の作用力により、位置調整板5の孔8へ突起15が嵌り込み、再び位置決め状態となる(図5Aを参照)。
【実施例2】
【0024】
上記図1と図2および図6に示した実施例1の場合は、ハンドル軸17の回転を、同ハンドル軸17の中間部位に取付け固定した回転用ハンドルレバー21で行う構成である。
一方、図7と図8に示した実施例2の場合は、ハンドル軸17に格別の回転用ハンドルは設置されていない。その代わりに、同ハンドル軸17の一端部17aは、可動側構造体12の上部枠を構成する長辺方向のダブルパイプ材12B、12Cの位置よりも外方へ少し長く突き出された構成とされている。
つまり、この実施例2の場合は、パイプ材12B、12Cの位置よりも外方へ少し長く突き出されたハンドル軸17の端部17aを、作業者が直接手で握り回転させるか、あるいは必要に応じて前記端部17aへ図示を省略したハンドルを装着して回転することにより、移動側構造体12の高さ位置の調整を行うのである。
【実施例3】
【0025】
次に、請求項6、7に記載した発明に係るパイプ構造物は、具体的には図6に示したパイプ構造物10および図8に例示したパイプ構造物11の実施例のとおり、四隅に支柱として配置された4本の柱がそれぞれ、上記大径のパイプ材1と、同パイプ材1の中空部内へ出入り可能に嵌め込まれた小径の棒材2とによる移動機構として構成されている。前記大径のパイプ材1を固定側支柱として固定側構造体が構築され、各支柱(大径のパイプ材1)の下端に車輪20を取り付けて、例えば移動式ワゴンテーブルとして構成されている。一方、前記大径パイプ材1の中空部へ出入り可能に嵌め込まれた小径の棒材2は移動側支柱とされ、該小径の棒材2基礎として移動側構造体12が構築され、その上部枠の上に、一例として天板部12Dが支持されている。
そして、上記大径パイプ材1を基礎とする固定側構造体および小径の棒材2を基礎とする移動側構造体12の構成を前提として、各大径の各パイプ材1と、同パイプ材1の中空部内へ出入り可能に嵌め込まれた小径の棒材2とで構成する移動機構にそれぞれ、上記構成の位置決め装置が設置されている。
【0026】
勿論、本実施例3のパイプ構造物10および11の場合も、上記複数の位置決め装置を適切に操作する手段として、各位置決め装置の位置調整板5の基端部に設けた傾動用レバー6と共通に接触する回転カム16を備えたハンドル軸17が設置され、同ハンドル軸17を回転することで、移動側構造体12で支持した天板部12Dの位置の調整が行われ、調整した所定の位置を位置決めが、ワンタッチ的操作で自在に簡単に行われるのである。
【実施例4】
【0027】
もっとも、本発明のパイプ構造物は、図6に示したパイプ構造物10、および図8に例示したパイプ構造物11のように、移動側構造体12が上下方向へ移動して上下方向に高さ位置の調整が行われる構成に限らない。大径の各パイプ材1と、同パイプ材1の中空部内へ出入り可能に嵌め込まれた小径の棒材2とで構成する移動機構を斜め上向き方向に配置し、或いは水平方向に配置したパイプ構造物を組み立てることにより、移動側構造体12を斜め上向き方向に、或いは水平方向に移動させて、その位置の調整と位置決めを行う構成として全く同様に実施でき、同様の作用効果を得ることができる。
【0028】
以上に本発明を図示した実施例1〜4とともに説明したが、もとより本発明は各実施例に限定されるものではない。本発明の目的と要旨を逸脱しない範囲で、当業者が必要に応じて行う設計変更や応用・変形を包含するものであることを念のため申し添える。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の位置決め装置の実施例1を示す斜視図である。
【図2】同位置決め装置の構成要素を拡大して詳示した説明用の斜視図である。
【図3】位置調整板と位置決め部材の関係する構造を示した斜視図である。
【図4】位置調整板と位置決め部材の関係する構造を示した断面図である。
【図5】A図は位置決め装置の位置決め状態を示した断面図、B図は位置決め状態を解除し移動可能状態にした断面図である。
【図6】実施例1の位置決め装置を適用した実施例1のパイプ構造物を示す斜視図である。
【図7】本発明の位置決め装置の実施例2を示す斜視図である。
【図8】実施例2の位置決め装置を適用した実施例3のパイプ構造物を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
1 大径のパイプ材
2 小径の棒材(又はパイプ材)
3 位置決め部材
5 位置調整板
12 移動側構造体
12A 移動側構造体の部材(パイプ材)
8 被位置決め要素(孔)
9 弾性部材(板バネ)
15 位置決め要素(突起)
6 傾動用レバー
16 回転カム
17 ハンドル軸
21 回転用ハンドル(レバー)
10、11 パイプ構造物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大径のパイプ材と、同パイプ材の中空部内へ出入り可能に嵌め込まれた小径の棒材とで構成された移動機構における前記大径のパイプ材に、同パイプ材と同方向に中空構造である位置決め部材が固定されており、
前記位置決め部材の中空部内へ移動可能に貫通された位置調整板の基端部は、前記小径の棒材を基礎にして構成された移動側構造体に属する部材へ傾動が可能に連結されており、該位置調整板にはその長手方向に間隔を開けて複数の被位置決め要素が設けられており、
前記位置決め部材には、前記位置調整板の移動を許容して位置決め部材の内面に向かって押し付ける弾性部材が設置されており、更に前記弾性部材に押された位置調整板の前記被位置決め要素を位置決めする位置決め要素が前記内面側に設けられており、
前記位置調整板を弾性部材の作用に打ち勝つ力で傾動させて、その被位置決め要素を、位置決め部材の位置決め要素から離脱させて移動側構造体を移動可能にする構成であることを特徴とする、移動側構造体の位置決め装置。
【請求項2】
位置調整板の被位置決め要素を、位置決め部材の位置決め要素から離脱させる傾動手段が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載した移動側構造体の位置決め装置。
【請求項3】
間隔を開けて略平行に配置された少なくとも2本の大径のパイプ材と、前記の各パイプ材の中空部内へ出入り可能に嵌め込まれた小径の棒材とで構成された移動機構における前記大径のパイプ材に、同パイプ材と同方向に中空構造である位置決め部材が固定されており、
前記の各位置決め部材の中空部内へ移動可能に貫通された位置調整板の基端部は、前記小径の棒材を基礎にして構成された移動側構造体に属する部材へ傾動が可能に連結されており、該位置調整板にはその長手方向に間隔を開けて複数の被位置決め要素が設けられており、
前記位置決め部材には、前記位置調整板の移動を許容して位置決め部材の内面に向かって押し付ける弾性部材が設置されており、更に前記弾性部材に押された位置調整板の前記被位置決め要素を位置決めする位置決め要素が前記内面側に設けられており、
前記の各位置調整板を、弾性部材の作用に打ち勝つ力で傾動させて、その被位置決め要素を、位置決め部材の位置決め要素から離脱させて移動側構造体を移動可能にする構成であることを特徴とする、移動側構造体の位置決め装置。
【請求項4】
各位置調整板の被位置決め要素を、位置決め部材の位置決め要素から共通に離脱させる手段として、各位置調整板の基端部に傾動用レバーが設けられ、前記の各傾動用レバーと共通に接触する回転カムを備えたハンドル軸が移動側構造体に設置されており、前記のハンドル軸を回転させることで各位置調整板を傾動させ、その被位置決め要素を、位置決め部材の位置決め要素から共通に離脱させる構成であることを特徴とする、請求項3に記載した移動側構造体の位置決め装置。
【請求項5】
ハンドル軸の中間部又は端部に回転用ハンドルが設置されていることを特徴とする、請求項4に記載した移動側構造体の位置決め装置。
【請求項6】
間隔を開けて略平行に配置された少なくとも2本の大径のパイプ材と、前記の各パイプ材の中空部内へ出入り可能に嵌め込まれた小径の棒材とで構成された移動機構における前記大径のパイプ材を固定側支柱として固定側構造体が構築され、前記大径パイプ材の中空部へ出入り可能に嵌め込まれた小径の棒材を移動側支柱として移動側構造体が構築されていること、
前記固定側支柱である大径のパイプ材に、同パイプ材と同方向に中空構造である位置決め部材が固定されていること、
前記位置決め部材の中空部内へ移動可能に貫通された位置調整板の基端部が、前記小径の棒材を移動側支柱として構築した移動側構造体に属する部材へ傾動が可能に連結されており、該位置調整板にはその長手方向に間隔を開けて複数の被位置決め要素が設けられていること、
前記位置決め部材には、前記位置調整板の移動を許容して位置決め部材の内面に向かって押し付ける弾性部材が設置されており、更に前記弾性部材に押された位置調整板の前記被位置決め要素を位置決めする位置決め要素が前記内面側に設けられていること、
前記位置調整板を、弾性部材の作用に打ち勝つ力で傾動させて、その被位置決め要素を、位置決め部材の位置決め要素から離脱させて移動側構造体を移動可能にする構成であることを特徴とする、移動側構造体の位置調整および位置決めが自在なパイプ構造物。
【請求項7】
複数の位置調整板の被位置決め要素を、位置決め部材の位置決め要素から共通に離脱させる手段として、各位置調整板の基端部に傾動用レバーが設けられ、前記の各傾動用レバーと共通に接触する回転カムを備えたハンドル軸が移動側構造体に設置されており、前記のハンドル軸を回転させることで各位置調整板を傾動させ、その被位置決め要素を位置決め部材の位置決め要素から離脱させて移動側構造体を移動可能にすることを特徴とする、請求項6に記載した移動側構造体の位置調整および位置決めが自在なパイプ構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−39152(P2009−39152A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204037(P2007−204037)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(000245830)矢崎化工株式会社 (47)
【Fターム(参考)】