説明

移動型捕虫器

【課題】飛来中の虫だけでなく栽培植物の葉の裏や枝内、栽培ポッドの陰等といった比較的下方の個所に潜む虫も捕獲することができ、また捕獲範囲を定位置外に拡げることのできる捕虫器を提供する。
【解決手段】下部の吸引口11Hから捕虫領域内の虫を吸引して上部の捕獲網5内に捕獲する捕虫器本体1と、走行枠体内で補虫器本体1を奥行き方向、幅方向のうちいずれか一方向内をスライド可能に支持するスライドレール機構70と、栽培棚8の上方を奥行き方向、幅方向のうち前記いずれか一方向に跨ぐと共に残りの他方向に沿って走行し得る走行枠体7と、スライドレール機構70に付属して捕虫器本体1の支持高さを上下方向に可変調節するジャッキ機構6を具備する。スライドレール機構70によって、捕虫器本体1のスライド位置を調節しながら、走行枠体7によって栽培面上を往復走行させることで、栽培面廻りに発生した虫を捕獲する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
植物栽培ハウス内等に設置して、羽アブラムシ、コナジラミ、ヤガ、アザミウマ、ハエなどの飛翔性の小虫を捕らえる捕虫器であって、特に移動して捕獲する移動型捕虫器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、昆虫に対して誘引させる光を発生する光源と、この光源によって誘引されてきた昆虫を反射し滑落させる反射板と、該反射板の下方に設けた昆虫殺傷捕獲手段とを具備する防虫器が開示されている(例えば、特許文献1参照)。ただし、この反射板は、忌避光を周囲に反射すると共に吸引されてきた昆虫を下方の昆虫殺傷捕獲手段へ滑落させるように傾斜させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−229997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし捕獲対象の虫の多くは栽培植物の葉の裏や枝内、栽培ポッドの陰等といった箇所に潜んでいるところ、上記従来の捕虫器では、反射板が上方を向いて拡がるため、光源の光が下方に届かなかった。また上方を向いた吸引口から下方に吸引するため、飛来中の虫しか捕獲することができなかった。また上記従来の捕虫器は、定位置に吊り下げるか立脚支持するものであり、誘引されて飛来してきた虫を設置された定位置でしか捕獲することができなかった。
【0005】
そこで本発明は、飛来中の虫だけでなく栽培植物の葉の裏や枝内、栽培ポッドの陰等といった比較的下方の個所に潜む虫も捕獲することができ、また捕獲範囲を定位置外に拡げることのできる捕虫器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明では下記(1)〜(6)の手段を講じている。
(1)本発明の移動型捕虫器は、奥行き方向及び幅方向に拡がる植物の栽培面の上方に、所定の捕虫領域11Aの捕虫器本体1を移動可能に備えるものであって、
それ自身の下部の吸引口11Hから平面視捕虫領域11A内の虫を吸引して上部の捕獲網5内に捕獲する捕虫器本体1と、
走行枠体内で補虫器本体1を奥行き方向、幅方向のうちいずれか一方向内をスライド可能に支持するスライドレール機構70と、
栽培棚8の上方を奥行き方向、幅方向のうち前記いずれか一方向に跨ぐと共に残りの他方向に沿って走行し得る走行枠体7と、
スライドレール機構70に付属して捕虫器本体1の支持高さを上下方向に可変調節するジャッキ機構6とを具備してなり、
スライドレール機構70によって、捕虫器本体1のスライド位置を調節しながら、走行枠体7によって栽培面上を往復走行させることで、栽培面廻りに発生した虫を捕獲することを特徴とする。
【0007】
なお後述する実施例1、2では、奥行き方向及び幅方向に拡がる栽培棚8の上方に、栽培棚8の栽培棚面80よりも小さい捕虫領域(11A)の捕虫器本体(1)を移動可能に備え、走行レール80Lに嵌入した走行枠体7によって栽培棚面80上をレール走行させることで、栽培棚面80内に載置された栽培ポッドP廻りに発生した虫を捕獲するものとしている。
【0008】
(2)前記移動型捕虫器において、スライドレール機構70は、捕虫器本体1の両側部を並走する一対のレール枠70Lと、各レール枠70Lの長さ方向に沿って設けられたレール溝70Hと、各レール枠70L内に収容されたスライド輪70Wと、前記スライド輪70Wを支承して前記レール溝70Hから突出した支承軸700とを具備し、
この支承軸700が、パンタグラフ型のジャッキ機構6を介して捕虫器本体1を吊り下げ支持してなることが好ましい。
【0009】
(3)或いは、前記(1)記載の移動型捕虫器において、スライドレール機構70は、捕虫器本体1の両側部を並走する一対のレール枠70Lと、各レール枠70Lの長さ方向に沿って設けられたレール溝70Hと、各レール枠70L内に収容されたスライド輪70Wと、前記スライド輪70Wを支承して前記レール溝70Hから突出した支承軸700とを具備し、
この支承軸700が捕虫器本体1を吊り下げ支持してなり、また前記一対のレール枠70L同士が、上連結枠71によって並行に繋がれ、この上連結枠71が、パンタグラフ型のジャッキ機構6を介して下方から走行枠体7に支持されることが好ましい。これは後述する実施例1とは異なる実施例2の形態に相当する。
【0010】
(4)前記(1)(2)又は(3)のいずれか記載の移動型捕虫器において、捕虫器本体1は、筒内部への吸引機構4を備えた縦型の筒体10と、筒体10の上部筒口に取り付けられ、頂部を網底とする捕獲網5と、筒体10の下部筒口周りに取り付けられ、吸引口11Hを中央に有して水平方向及び斜め下方向に拡がる吸引板11とを具備し、吸引板11によって規定された平面視補虫領域11A内に飛来または潜伏する虫を吸引機構4によって捕獲網5内に捕獲することが好ましい。
【0011】
(5)上記捕虫器本体1において、捕獲網5は、網底に向かって袋の両側部が外方に張り出した張り出し部52を有し、この張り出し部52内に捕獲した虫を集めて留め置くことができることが好ましい。
【0012】
(6)そして本発明の移動型捕虫器セットは、前記いずれかに記載の移動型捕虫器と、当該移動型捕虫器を栽培棚面に設置させるための移動台9とを備えた移動型捕虫器セットであって、移動台9は、自由移動車輪を備えた移動枠体90と、移動枠体90の上部にて、走行枠体7の走行輪を乗り上げて枠上の後端寄りの停め置き位置に停め置くことのできる一対の上部停め枠91と、栽培棚面80と前記停め枠91とに掛け渡して、走行枠体7の走行輪を亘らせることのできる一対の掛け渡しレール92とを具備してなり、
前記掛け渡しレール92は、前記停め枠91の枠方向に延伸配置されることで、栽培棚面80上に一端を掛け渡した掛け渡し状態となり得ると共に、前記停め枠91の枠方向と交差配置されることで、停め枠91の枠上に留め置かれた移動型捕虫器の落下を防止する収容状態となり得ることを特徴とする。
【0013】
本発明の移動型捕虫器は、上記構成によって、スライドレール機構70のスライド方向と平面視直交する走行枠体7の走行方向とによって、補虫領域栽11Aを移動させることで、培棚面80上のほぼ全域を容易に網羅することができ、虫の飛散退避や潜伏方向へ自由にかつ容易に移動可能となっている。特に吸引機構4、虫を誘引する波長の誘引光源21を具備するものであれば、虫の誘引効果と吸引効果とがあいまって効率的に捕虫することができる。さらにジャッキ機構6によって、植物の丈に合わせた吸引口11Hの高さとしたり、あるいは花や枝葉の吸引破損を防ぐような吸引口11Hの高さへと容易に調節保持したりすることができる。
【0014】
また上記(2)は後述する実施例1に相当し、ジャッキ機構6を捕虫器本体1と共にスライド移動させることで、スライド位置に応じたジャッキ機構6による高さ調節が容易となる。また上記(3)は実施例1とは異なる他の実施形態に相当し、ジャッキ機構6を走行枠体7の支持構成上に配置したことで、走行の安定性が向上する。上記ジャッキ機構6によって、捕虫器本体1の吸引口11Hの高さを容易に調節し任意の高さへ保持し得る。また上記吸引板11によって平面視における捕虫領域11Aが拡がり、規定される捕獲領域11Aを容易に把握することができる。また上記捕獲網5の張り出し部によって、下方から上方への吸引捕虫でありながら捕獲した虫を容易に落下させずに網袋内に保持することができる。
【0015】
また上記(6)は上記移動型捕虫器と移動型捕虫器の移動に供する移動台9とのセットに関する発明であって、移動台として、移動型捕虫器を異なる栽培棚面80上に移設したり栽培棚面80上から取り除いたりする際に、移動型捕虫器を容易に且つ安全に運搬し移動させることのできるものを提供するものである。このような移動型捕虫器セットであれば、複数の栽培棚で上記移動型捕虫器を使用することが容易となる。
【発明の効果】
【0016】
上記手段により、下部の吸引口から上方へ吸引することで飛来中の虫だけでなく栽培植物の葉の裏や枝内、栽培ポッドの陰等といった比較的下方の個所に潜む虫も捕獲することができ、またスライド及び走行によって平面視一方向及び他方向に相互移動することができ、捕獲範囲を定位置外に拡げることのできる捕虫器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例1の移動型捕虫器の側面図である。
【図2】本発明の実施例1の移動型捕虫器の平面図である。
【図3】本発明の実施例1の移動型捕虫器の底面図である。
【図4】本発明の実施例1の移動型捕虫器の正面図である。
【図5】本発明の実施例1の捕虫器の使用状態を示す平面説明図である。
【図6】本発明の実施例2の移動型捕虫器の側面図である。
【図7】本発明の実施例1の移動型捕虫器の平面図である。
【図8】本発明の実施例2の移動型捕虫器の底面図である。
【図9a】本発明の実施例2の移動型捕虫器の移動状態を示す正面図である。
【図9b】本発明の実施例2の移動型捕虫器の移動状態を示す正面図である。
【図10a】本発明の実施例2の捕虫器の上昇状態を示す平面説明図である。
【図10b】本発明の実施例2の捕虫器の下降状態を示す平面説明図である。
【図11】実施例2の移動型捕虫器の底面図。
【図12】実施例2の移動型捕虫器を移動台に載置する途中の状態を示す平面図。
【図13】実施例2の移動型捕虫器を移動台に載置した後の状態を示す平面図。
【図14】実施例2の移動型捕虫器を移動台に載置する途中の状態を示す側面図。
【図15】実施例2の移動型捕虫器を移動台に載置した後の状態を示す側面図。
【図16】図15のα矢視図。
【図17a】掛け渡しレールの斜視図。
【図17b】掛け渡しレールの斜視図。
【図18】図15の移動台のみのβ拡大矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(本発明の移動型捕虫器の基本構成)
以下、本発明の形態例を本発明の実施例として示す各図と共に説明する。図1〜4は実施例1の移動型捕虫器の側面図、平面図、底面図、及び正面図であり、図5はその使用状態説明図である。本発明の移動型捕虫器はその基本構成として、下部の吸引口11Hから吸引した虫を上部の捕獲網5内に捕獲する捕虫器本体1と、捕虫器本体1を、平面視似て互いに直交する幅方向、奥行き方向のいずれか一方向(例えば奥行き方向)へスライド可能に支持するスライドレール機構70と、スライドレール機構70を支持すると共に前記平面視幅方向、奥行き方向の残りの他方向(例えば幅方向)へ走行し得る走行枠体7と、そしてスライドレール機構70に取り付けられることで、捕虫器本体11の支持位置を高さ方向の任意の位置へ可変させて保持するジャッキ機構6とを備える。
【0019】
(捕虫器本体1)
捕虫器本体1は、植物栽培ポッドPの上方から虫を吸引捕獲し得る所定の平面捕獲領域を有しており、栽培棚の棚面上に配置された複数の植物栽培ポッドに群がり或いは潜んでいる虫を吸引捕獲する。この捕虫器本体1は、スライドレール機構70、及びスライドレール機構70を支える走行枠体7によって、栽培棚8の上方に移動可能に支持される。また捕虫器本体1は、上下方向のジャッキ機構6を介してスライドレール機構70又は走行枠体7に支持されており、ジャッキ機構6によって植物栽培ポッドPとの上下方向の離間距離を調節することができる。
【0020】
具体的には捕虫器本体1は、筒内部への吸引機構4を備えた縦型の筒体10と、筒体10の上部筒口に取り付けられ、頂部を網底とする捕獲網5と、筒体10の下部筒口周りに取り付けられ、吸引口11Hを中央に有して水平方向及び斜め下方向に拡がる吸引板11とを具備し、吸引板11によって規定された平面視補虫領域11A内に飛来または潜伏する虫を吸引機構4によって捕獲網5内に捕獲する。吸引口11H内には断面台形状の剛性網体からなる防護網3が設けられる。防護網3は上部を底部とする部分円錐状に設けられ、防護網3の下部には虫を誘引する環状蛍光管からなる誘引光源21がホルダーによって固定される。また実施例の吸引機構4は、下方から上方へ吸引気流を発生させる回転羽根41と、回転羽根を駆動させる回転モーター40とから構成される。
【0021】
(捕獲網5)捕獲網5は、網底に向かって袋の両側部が外方に張り出した張り出し部52を有し、個の張り出し部52内に捕獲した虫を集めて留め置くものとしている。頂部の網底が筒体10へ取り付けられる下部の網口よりも大きく形成され、網底側の下半部、好ましくは袋高さの底部略三分の一から先が、網底へ向かって袋の左右縫合縁が直線的に斜めへ張り出し、角部が鋭角状に袋綴じされた袋部からなる張り出し部52となっている。
【0022】
<ジャッキ機構6について>
ジャッキ機構は、油圧ジャッキ、空気圧ジャッキのほか、機械式ジャッキを用いることができる。中でも電気配線や圧力配管が不要な点で、パンタグラフジャッキ、ウォームギヤジャッキをはじめとするねじジャッキ、ラック駆動ジャッキといった機械式ジャッキを用いることが好ましい。また、垂直に歯合されたウォームギヤを介してウォームホイルを軸周りに回転させることで、ウォームホイルと同軸のスクリューに推力を与えるウォームギヤジャッキを使用することができる。
【0023】
実施例1のジャッキ機構6は、パンタグラフ型のジャッキからなり、スライドレール機構70の支承軸700に四方枠状に構成された枠上部61が吊り下げられ、捕虫器本体1の吸引板11の上面に枠下部61が固定される。補虫領域11Aを奥行き方向、幅方向のうち前記いずれか一方向内における所定のスライド位置に調節したまま、走行枠体7によって前記残りの他方向に走行させる。ジャッキ機構6によって植物栽培ポッドPとの上下方向の離間距離を調節することができる。
【0024】
(走行枠体7)
走行枠体7は、走行枠体は前後左右の平面視4隅に4本の走行脚部を有し、このうち2本ずつの走行脚部が栽培棚の奥行き方向両端付近に立脚し、それぞれが幅方向に沿って走行可能となっている。そして栽培棚8の上を、奥行き方向、幅方向のうち短い側の一辺の方向に跨ぐと共に長い側の一辺の方向に沿って走行し得る。或いは他の形態として、幅方向よりも奥行き方向に長い栽培棚の上部を幅方向に跨ぐと共に奥行き方向に沿って走行し得るものでもよい。
【0025】
実施例では、奥行き方向よりも幅方向に長い栽培棚の上部を奥行き方向に跨ぐと共に幅方向に沿って走行し得る。具体的には走行レール80Lの縦片に嵌入して走る走行輪74Wと、走行輪74Wを軸支してその上部及び両側部を覆う走行枠74と、奥行き方向に並ぶ2対の走行枠74同士を略水平につなぐ下連結枠73とによって、走行枠体7の下部が構成される。また幅方向に略水平に並走する一対のスライドレール機構70によって、走行枠体7の上部が構成される。そしてこの走行枠体7の上部と下部とが、各走行枠74の天面から上方へ鉛直に伸びる縦連結材72によって繋がれる。走行輪74Wは幅方向中央が縮径し、輪周面が凹状に形成されており、この凹状の輪周面に走行レール80Lが嵌り込んだレール走輪可能となっている。
【0026】
なお他の実施形態として、露地栽培の場合にも走行枠体7を走行させることで使用することができる。この場合、走行レール80Lとして例えば円管を地面に固定し、車輪のリム部が露出した走行輪74Wの輪周面の凹状部を前記円管に嵌入してレール走輪させるものとなる。
【0027】
縦連結枠72は、スライドレール機構70のレール枠70Lの両端部に設けられた端部枠材70Eの下面に固定され、当該下面から鉛直下方に伸びて四脚で立設する。
【0028】
走行枠体7の下部は、走行レール80上を略水平に並走する下連結枠73とそれぞれの下部の走行輪74Wとによって剛性が確保される一方、走行枠体7の上部は、走行レール80と平面視にて直交して略水平に並走するレール枠70Lとそれぞれの下部から支承軸700を介して吊設された四方枠状の枠上部61とによって合成が確保される。そして走行枠体7の上部を構成するスライドレール機構70によって、捕虫器本体1の補虫領域11Aを奥行き方向、幅方向のうち前記いずれか一方向内で所定の位置に調節したまま、走行枠体7の下部を構成する走行輪74Wによって前記残りの他方向に走行させる。
【0029】
(スライドレール機構70)
スライドレール機構70は、捕虫器本体を幅方向にスライド可能に支持する。スライドレール機構は、略水平かつ幅方向に並行に配置した2本のレール枠70L内に、それぞれ複数個のスライド輪70Wが転動可能に収容される。レール枠70Lは長尺板体が矩形に曲げ加工された矩形枠からなり、下面中央に長さ方向に沿うレール溝70Hが形成される。またレール枠70Lの両端には下方から断面略コ字状の端部枠材70Eが、縦方向に貫通する端部ボルト70Bによって固定されており、スライド輪70Wが脱落せず、かつ枠上部が補強された構成になっている。
【0030】
他の実施形態として、スライドレール機構70は、捕虫器本体1の両側部を並走する一対のレール枠70Lと、各レール枠70Lの長さ方向に沿って設けられたレール溝70Hと、各レール枠70L内に収容されたスライド輪70Wと、前記スライド輪70Wを支承して前記レール溝70Hから突出した支承軸700とを具備し、
この支承軸700が捕虫器本体1を吊り下げ支持してなり、また前記一対のレール枠70L同士が、上連結枠71によって並行に繋がれ、この上連結枠71が、パンタグラフ型のジャッキ機構6を介して下方から走行枠体7に支持されるものとしてもよい。
【0031】
(栽培棚8)
栽培棚8は、幅方向、奥行き方向に拡がる栽培棚面80を有し、栽培ポッドを複数行、複数列並べることができる。栽培棚面80上の両幅端辺近傍には、幅方向に沿って凸状の走行レール80Lが立設され、この走行レール80L上を走行輪が走行し得るものとなっている。栽培棚の幅方向に伸びる両辺の端部外側には作業用通路が設けられ、奥行き方向の両外方から手入れを行うことができる。
【0032】
(走行レール80L)
走行レール80Lは具体的には、板状の縦片と板状の横片とが直交してなる断面L型アングルからなり、横片の下面が栽培棚面80に当接して固定され、縦片が栽培棚面80上に直立形成される。
【0033】
(使用方法例)
上記移動型捕虫器は例えば、図5に示すように、作業通路を隔てて設置された第一の栽培棚8の栽培棚面80上を、吸引板11によって規定される捕虫領域11Aが順に図示(A)(B)(C)(D)の位置へ、平面視方形経路上を移動するように使用し、続けて隣にある第二の栽培棚8´の栽培棚面80上に移設させた後、捕虫領域11Aが順に図示(A)´(B)´(C)´(D)´の位置へ移動するように使用する。具体的には、スライドレール機構70によって捕虫器本体1のスライド位置を奥行き方向一方寄りに配置し(図(A))、この際、ジャッキ機構6を調整して、吸引板11の吸引面が栽培植物と接触しない程度の近接位置まで下げておく。次いでそのスライド位置のまま走行輪74Wの転動によって走行レール80L上を一端側から他端側へ幅方向に走行移動させる(図(B))。次いで幅方向多端側にてスライドレール機構70によって捕虫器本体1のスライド位置を奥行き方向他方寄りにスライドさせて配置し(図(C))、そのスライド位置のまま走行輪74Wの転動によって走行レール80L上を他端側から一端側へ幅方向に走行移動させる(図(D))。このとき、吸引機構4は移動中すべて吸引作動したままである。次いで隣の栽培棚8´上に移設したのち、同様にスライド移動及び走行させる。これによって捕虫領域を端から順に方形経路を通って動かして、栽培棚面80上の必要捕虫領域を順に網羅することができる。
【0034】
或いは上記使用方法例のほか、吸引板11によって規定される捕虫領域11Aが順に図示(A)(C)(B)(D)の位置へ、平面視八の時経路を移動するように使用し、続けて隣の第二の栽培棚8´の栽培棚面80上に移設したのち、同じく順に図示(A)´(C)´(B)´(D)´の位置へ、平面視八の時経路を移動するように使用することもできる。斜めに移動させることで虫の飛散退避方向を効率的に追いかけて捕虫することができる。
【0035】
実施例2の移動型捕虫器は、上下移動枠が、その中央下部に接続されたジャッキ機構を介して固定枠に支承される。このジャッキ機構がパンタグラフ状に変形することで、スライド用レールに吊り下げられた捕虫部の吸引口が上下に移動調節される。
前記いずれか記載の移動型捕虫器と、当該移動型捕虫器を栽培棚面に設置させるための移動台9とを備えた移動型捕虫器セットを構成することもできる。移動台9は、自由移動車輪95Wを備えた移動枠体90と、移動枠体90の上部にて、走行枠体7の走行輪を乗り上げて片端寄りの停め置き方向に停め置くことのできる傾斜した一対の上部停め枠91と、栽培棚面80と前記停め枠91とに掛け渡して、走行枠体7の走行輪を亘らせることのできる一対の掛け渡しレール92とを具備してなり、掛け渡しレール92は栽培棚面80上に一端を掛け渡された状態から、前記停め枠91の前記停め置き方向と逆端付近に係止した係止状態となるものであり、前記係止状態にて移動型捕虫器は停め枠91の片端寄りに留め置かれるとともに、係止した掛け渡しレール92によって逆端側への移動が制限される。
【0036】
移動枠体90は前方にて幅方向に亘る前枠90Lと、両側方にて前後方向に亘る側枠と、後方にて幅方向に亘る後枠とが連なった四辺形の水平枠体の四隅から鉛直下方へ脚部が延伸される。脚部の下部は伸棒95が収容突出し、止め具95Pによって伸棒95の突出量が保持される。伸棒95の下端には自由移動車輪95Wが設けられる。また前枠90Lの幅方向略中央部には、枠の両側部から2枚の固定板94が立設され、側枠の上部には、前端付近に固定配置された挟み込み部93を挟んで止め枠91が傾斜固定される。
止め枠91は、移動型捕虫器の走行輪74Wの幅方向配置に合わせた位置に並行してレール上に配置された立て板を有し、この立て板に、走行車輪74Wが嵌まりこんで止め枠91上を走行可能となっている。立て板の前端部91Eは、止め枠の下部と側枠の上部との間に挟みこまれた挟み込み部93によって、側枠よりも上方へ浮いた位置に固定され、立て板の後端が側枠の上部に接して固定される。これにより、前端が上方へ、後端が下方へ傾斜して配置される。前端91E付近には、上辺部にスリット状の切り欠き91Dが設けられる。
【0037】
掛け渡しレール92は折曲部で折れ曲がって一体形成された断面L字状のアングルからなり、一端部付近の折曲部に沿って、停め枠91へ係止するための細幅の係止孔92Hが設けられ、他端部の折曲部に沿って、走行レール80Lに嵌合するための細幅の係止切り欠き92Dが設けられる。他端部にはまた、断面L字状の折曲方向の内面に補強板92Pが固定され、他端部の端面にて略三角形状がされる。また中間部には方形断面の中間補強棒が補強用に固着される(図17a、b参照)。
【0038】
本発明は上述の実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜構成の代替、変更、配置変更、置換、一部構成の抽出が可能である。例えばジャッキ機構6の位置は幅方向と奥行き方向を入れ替えて使用してもよく。走行枠体7の下部と上部の間に設置してもよい。また一対ではなく片側にのみ一つ使用してもよく、4輪位置に複数個使用してもよい。或いは縦枠材72を2枠材の挿通構造とし、2枠材それぞれの対応位置に複数の係止穴及びこれに係止する係止穴を備えた高さ調節機構を備えたものとしてもよい。その他、パンタグラフジャッキとは異なるジャッキ機構を使用する、或いは走行枠体7の枠構成を変更するなど、適宜の変更が可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 捕虫器本体
10 筒体
11 吸引板
11A 捕虫領域
11H 吸引口
4 吸引機構
5 捕獲網
52 張り出し部
6 ジャッキ機構
7 走行枠体
70 スライドレール機構
70L レール枠
70H レール溝
70W スライド輪
700 支承軸
8 栽培棚
80 栽培棚面
9 移動台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
奥行き方向及び幅方向に拡がる植物の栽培面の上方に、所定の捕虫領域(11A)の捕虫器本体(1)を移動可能に備える移動型捕虫器であって、それ自身の下部の吸引口(11H)から平面視捕虫領域(11A)内の虫を吸引して上部の捕獲網(5)内に捕獲する捕虫器本体(1)と、走行枠体内で補虫器本体(1)を奥行き方向、幅方向のうちいずれか一方向内をスライド可能に支持するスライドレール機構(70)と、栽培棚(8)の上方を奥行き方向、幅方向のうち前記いずれか一方向に跨ぐと共に残りの他方向に沿って走行し得る走行枠体(7)と、スライドレール機構(70)に付属して捕虫器本体(1)の支持高さを上下方向に可変調節するジャッキ機構(6)とを具備してなり、スライドレール機構(70)によって、捕虫器本体(1)のスライド位置を調節しながら、走行枠体(7)によって栽培面上を往復走行させることで、栽培面廻りに発生した虫を捕獲することを特徴とする移動型捕虫器。
【請求項2】
スライドレール機構(70)は、捕虫器本体(1)の両側部を並走する一対のレール枠(70L)と、各レール枠(70L)の長さ方向に沿って設けられたレール溝(70H)と、各レール枠(70L)内に収容されたスライド輪(70W)と、前記スライド輪(70W)を支承して前記レール溝(70H)から突出した支承軸(70)とを具備し、この支承軸(70)が、パンタグラフ型のジャッキ機構(6)を介して捕虫器本体(1)を吊り下げ支持してなる請求項1記載の移動型捕虫器。
【請求項3】
スライドレール機構(70)は、捕虫器本体(1)の両側部を並走する一対のレール枠(70L)と、各レール枠(70L)の長さ方向に沿って設けられたレール溝(70H)と、各レール枠(70L)内に収容されたスライド輪(70W)と、前記スライド輪(70W)を支承して前記レール溝(70H)から突出した支承軸(70)とを具備し、
この支承軸(70)が捕虫器本体(1)を吊り下げ支持してなり、また前記一対のレール枠(70L)同士が、上連結枠(71)によって並行に繋がれ、この上連結枠(71)が、パンタグラフ型のジャッキ機構(6)を介して下方から走行枠体(7)に支持される請求項1記載の移動型捕虫器。
【請求項4】
捕虫器本体(1)は、筒内部への吸引機構(4)を備えた縦型の筒体(10)と、筒体(10)の上部筒口に取り付けられた捕獲網(5)と、筒体(10)の下部筒口周りに取り付けられ、吸引口(11H)を中央に有して水平方向及び斜め下方向に拡がる吸引板(11)とを具備し、吸引板(11)によって規定された平面視補虫領域(11A)内に飛来または潜伏する虫を吸引機構(4)によって捕獲網(5)内に捕獲する請求項1、2、又は3のいずれか記載の移動型捕虫器。
【請求項5】
捕獲網(5)は、網底に向かって袋の両側部が外方に張り出した張り出し部(52)を有する請求項1、2、3、又は4のいずれか記載の移動型捕虫器。
【請求項6】
栽培棚(8)の栽培棚面(80)よりも小さい捕虫領域(11A)の捕虫器本体(1)を移動可能に備え、走行枠体(7)によって栽培棚面(80)上を往復走行させることで、栽培棚面(80)内に載置された栽培ポッド(P)廻りに発生した虫を捕獲する請求項1,2,3,4又は5のいずれかに記載の移動型捕虫器と、当該移動型捕虫器を栽培棚面に設置させるための移動台(9)とを備えた移動型捕虫器セットであって、
前記移動台(9)は、自由移動車輪を備えた移動枠体(90)と、移動枠体(90)の上部にて、走行枠体(7)の走行輪を乗り上げて枠体の上部に停め置くことのできる一対の停め枠(91)と、栽培棚面(80)と前記停め枠(91)とに掛け渡して、走行枠体(7)の走行輪を亘らせることのできる一対の掛け渡しレール(92)とを具備してなり、
前記掛け渡しレール(92)は、前記停め枠(91)の枠方向に延伸配置されることで、栽培棚面(80)上に一端を掛け渡した掛け渡し状態となり得ると共に、前記停め枠(91)の枠方向と交差配置されることで収容状態となり得るものであり、前記収納状態では、掛け渡しレール(92)が停め枠(91)の枠体よりも上方へ突出して係止することで、留め置かれた移動型捕虫器の停め枠(91)からの落下を防止することを特徴とする移動型捕虫器セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10a】
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【図10b】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17a】
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【図17b】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−160794(P2011−160794A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126671(P2010−126671)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(592181783)エヌビイテイ株式会社 (7)
【Fターム(参考)】