説明

移動局位置モニタリングシステム

【目的】 移動局の位置を基地局にて常時監視し把握すること。
【構成】 移動局2のGPS受信手段20による位置に関するデータと移動局2に付与された固有のIDデータとからなるデータが基地局1に送信されることにより基地局1で移動局2の位置を知ることができる。ここで、移動局2が建物4内に入ると通信衛星50を補足できなくなったりして位置に関するデータが不完全なものとなる。この場合には、その位置に関する不完全なデータに替えて建物4内に設置されたエリア局の位置に関するデータが移動局2のIDデータに付加されて基地局1に送信される。これにより、移動局2の位置を常時監視し把握することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、子供等の移動体を移動局としてその位置を迷子センター等の基地局で常時監視し把握する移動局位置モニタリングシステムに関するもので、移動局としては子供等に限定されるものでなく、時間経過に伴い位置を移動するものを対象としている。
【0002】
【従来の技術】従来、AVM方式(Automatic Vehicle Monitoring System )と呼ばれる移動局位置モニタリングシステムが知られている。このAVM方式は、電波を利用して、運行中の車両等の移動局の位置及び活動状況(実車、空車または作業中等)を自動的に運行管理センター等の基地局に収集し、その基地局において常時把握できるシステムである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、近年、大型のテーマパーク等の出現で、小さな子供らの迷子が増加している。このような、広い範囲の中で迷子を捜し出す方法としては、放送で呼びかけるしかないのが現状であり、一旦、子供が迷子となると捜し出すことは容易でなかった。また、最近、携帯型のGPS(Global Positioning System )受信機が発売されている。このGPS受信機を用いても、携帯している自分の位置が判るのみであり、迷子の子供を捜す手助けにはならない。更に、GPS受信機が建物内等の通信衛星からの電波が届かないところにあると、測位することもできないという問題があった。ここで、上述のような迷子の子供を移動局とした上記AVM方式の適用が考えられるが建物内等に入ってしまうと測位することができないという同様な問題を有していた。
【0004】そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたもので、子供らの移動局の位置を基地局にて常時監視し把握すると共に迷子となった場合には直ちに捜し出すことができる移動局位置モニタリングシステムの提供を課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明にかかる移動局位置モニタリングシステムは、移動局は、自局の位置を演算する測位手段と、前記移動局の各々に付与された固有のID(Identification)等の識別データに前記測位手段で演算完了のときの位置に関する完全なデータまたは前記測位手段で演算不能のときの位置に関する不完全なデータを付加したデータを生成する移動局データ生成手段と、前記移動局データ生成手段で生成されたデータを前記基地局に向けて送信する移動局データ送信手段とを具備し、前記測位手段により前記移動局の位置が演算できないエリアに設置されたエリア局は、前記移動局データ送信手段により前記移動局から送信された前記移動局の位置に関する不完全なデータが付加されたデータのみを受信するエリア局データ受信手段と、前記エリア局データ受信手段で受信されたデータのうち前記移動局の位置に関する不完全なデータに替えてエリア内に前記移動局があることを示す位置に関するデータを付加したデータを生成するエリア局データ生成手段と、前記エリア局データ生成手段で生成されたデータを前記基地局に送信するエリア局データ送信手段とを具備し、前記基地局は、前記移動局データ送信手段または前記エリア局データ送信手段から送信されたデータを受信する基地局データ受信手段と表示制御手段とを具備しており、前記基地局で前記基地局データ受信手段で受信されたデータから前記移動局を特定し、その位置を表示手段に表示するものである。
【0006】
【作用】本発明においては、移動局に付与された固有の識別データと移動局の位置に関するデータとからなり移動局から送信されるデータのうち、移動局の位置に関するデータが演算完了のときの完全なデータであると移動局から直接基地局に送信される。一方、移動局の位置が演算できないエリア内にあり、移動局から送信されるデータのうち移動局の位置に関するデータが演算不能のときの不完全なデータであると上記エリア内に設置されたエリア局で移動局の位置に関する不完全なデータに替えてそのエリア内に移動局があることを示す位置に関するデータが付加したデータが生成されエリア局から基地局に送信される。これらデータは共に基地局で受信され、移動局の識別データに位置に関する完全なデータが付加されているため、基地局ではその移動局が特定されその位置が表示される。
【0007】
【実施例】以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。
【0008】図1は本発明の一実施例にかかる移動局位置モニタリングシステムを示す概略図である。なお、本実施例では、移動局が遊園地等の入場者の帽子に組込まれて携帯され、その移動局からの通信を受信して移動局の位置を常時監視し把握する管理棟を基地局として園内の入場者の管理を行う場合について述べる。
【0009】図1において、1は基地局、2は携帯され基地局1と通信を行う移動局、3は移動局2に通信衛星50の電波が届かないエリアとしての建物4内に移動局2があるときその移動局2からの送信を受信し基地局1に送信するエリア局である。図2は本発明の一実施例にかかる移動局位置モニタリングシステムを示す全体構成図である。
【0010】基地局1は、無線または光通信等を行う基地局データ受信手段を構成する受信手段10、受信手段10に接続され受信手段10にて受信したデータを解析して表示する表示制御手段を構成するコントローラ11及びコントローラ11に接続される表示手段12からなる。移動局2は、無線または光通信等を行う移動局データ送信手段を構成する送信手段21、移動局2の位置を演算する測位手段を構成するGPS受信手段20及びGPS受信手段20にて得られた移動局2の位置に関するデータに移動局2に付与された識別データとして、各移動局2に固有のIDデータを付加したデータを生成する移動局データ生成手段を構成するコントローラ22からなる。エリア局3は、建物4内のようにGPS電波の届かないところに設置される。このエリア局3は、移動局2からの通信を受信するエリア局データ受信手段を構成する受信手段30、その受信したデータのうち移動局2の位置に関する不完全なデータに替えて建物4内に移動局2があることを示す旨の信号を付加して基地局1に送信するためのデータを生成するエリア局データ生成手段を構成するコントローラ32、コントローラ32により生成されたデータを基地局1の受信手段10に送信するエリア局データ送信手段を構成する送信手段31からなる。
【0011】ここで、通常は、移動局2側において、GPS受信手段20は複数の通信衛星50からの電波を受信し、移動局2の現在位置を演算する。上記複数の通信衛星50は、測位用の周波数を出力している人工衛星で、それら衛星の位置から移動局位置を測定するものであり、公知のように、測位データを得るには3台以上の衛星が使用される。本実施例の移動局2は、図1及び図2R>2に示すように、3台の通信衛星50の電波を受信し、それら電波の伝搬時間から各通信衛星50と移動局2との距離を求めるものである。各通信衛星50は地球を周回する決められた軌道を運行しており、その軌道上の各通信衛星50の位置と距離から地球上の移動局2の位置を演算して、その位置を特定するもので、その検出誤差は通常、100m程度である。このようにして、移動局2はGPS受信手段20により緯度・経度データ、即ち、位置に関するデータを得る。
【0012】移動局2のGPS受信手段20に接続されたコントローラ22により、GPS受信手段20にて得られた位置に関するデータに移動局2に固有のIDデータを付加したデータが生成される。この移動局2に固有のIDデータが付加された位置に関するデータが送信手段21から一定時間間隔毎に送信される。このとき、移動局2の送信手段21から送信されたデータが良好な受信状態にて基地局1の受信手段10にて受信されると、移動局2の位置が基地局1のコントローラ11によるIDデータの認識により表示手段12の画面上に表示される。
【0013】一方、移動局2が建物4内に入ると、移動局2のGPS受信手段20は、通信衛星50を補捉することができなくなり、更に、送信手段21から送信されるデータも基地局1の受信手段10に届き難くなる。この事態に対処するため、建物4内にエリア局3が設置される。このエリア局3は、基地局1に配設される受信手段10と同等で、その受信範囲が建物4内の所定のエリア内に限られる受信手段30(必要に応じて1つの建物4内に複数個設置)を有している。したがって、移動局2が建物4内に入ると、移動局2の送信手段21から送信されたデータは一旦、エリア局3の受信手段30により受信される。そして、エリア局3のコントローラ32により移動局2が建物4内にある旨を示すデータ、即ち、移動局2のIDデータに移動局2が建物4にあることを示す位置に関するデータが付加されたデータが生成される。このデータがエリア局3の送信手段31から送信される。このエリア局3の送信手段31から送信されるデータは基地局1の受信手段10にて良好に受信されるため、基地局1のコントローラにより建物4内にある移動局2を特定しその位置が表示手段12の画面上に表示される。
【0014】次に、本実施例で使用されている移動局2のコントローラ22の処理手順を示す図3のフローチャートに基づいて説明する。
【0015】まず、ステップS11で初期化し、ステップS12に移行し、GPS受信手段20からの測位データである移動局2の位置に関するデータを読込む。次にステップS13に移行して、ステップS12にて読込まれた測位データが完全な移動局2の位置を表すデータであり、移動局2の現在の位置はGPSによる測位演算が可能であるか否かが判定される。ステップS13で、測位演算可能でGPS受信手段20による測位データが完全であると、ステップS14に移行し、ステップS12で読込まれた測位データに移動局2に付与された固有のIDデータが付加される。一方、ステップS13で、GPS受信手段20による測位データが不完全なデータであり測位不能と判定されるとステップS15に移行し、その不完全なデータに移動局2のIDデータが付加される。ステップS14またはステップS15における処理ののち、ステップS16に移行し、ステップS14またはステップS15におけるデータの送信処理が実行され、ステップS12に戻り以下、同様の処理が繰返される。
【0016】次に、本実施例で使用されているエリア局3のコントローラ32の処理手順を示す図4のフローチャートに基づいて説明する。
【0017】まず、ステップS21で初期化し、ステップS22に移行し、受信手段30で受信データが有るか否かが判定される。ステップS22では、受信データが有るまで待ってステップS23に移行し、受信データに測位不能な移動局2の不完全なデータが有るか否かが判定される。ステップS23では、受信データに測位データの不完全なデータが有るまで待ってステップS24に移行し、その位置に関する不完全なデータに替えて移動局2が建物4内のエリア局の位置に関するデータが付加される。これにより、移動局2のIDデータとエリア局の位置に関するデータとからなるデータが生成される。次にステップS25に移行して、ステップS24で生成されたデータの送信処理が実行され、ステップS22に戻り以下、同様の処理が繰返される。
【0018】次に、本実施例で使用されている基地局1のコントローラ11の処理手順を図5のフローチャートに基づいて説明する。
【0019】まず、ステップS31で初期化し、ステップS32に移行し、受信手段10で受信データが有るか否かが判定される。ステップS32では、受信データが有るまで待ってステップS33に移行し、その受信データを表示手段12の画面上に表示する表示処理が実行され、ステップS32に戻り以下、同様の処理が繰返される。
【0020】このように、本発明の実施例の移動局位置モニタリングシステムは、複数の移動局2とそれら複数の移動局2と通信を行う基地局1とを有する移動局位置モニタリングシステムにおいて、移動局2に配設され、移動局2の位置を演算する測位手段を構成するGPS受信手段20と、移動局2に配設され、移動局2の各々に付与された固有のIDデータに測位手段を構成するGPS受信手段20の位置に関するデータを付加したデータを生成する移動局データ生成手段を構成するコントローラ22と、移動局2に配設され、移動局データ生成手段を構成するコントローラ22で生成されたデータを基地局1に向けて送信する移動局データ送信手段を構成する送信手段21と、測位手段を構成するGPS受信手段20により移動局2の位置が演算できないエリアに設置されたエリア局3に配設され、移動局データ送信手段を構成する送信手段21から送信された移動局2に関するデータを受信するエリア局データ受信手段を構成する受信手段30と、エリア局3に配設され、エリア局データ受信手段を構成する受信手段30で受信されたデータのうち、移動局2の位置に関するデータに替えて前記エリア内に移動局2があることを示す位置に関するデータを付加したデータを生成するエリア局データ生成手段を構成するコントローラ32と、エリア局3に配設され、エリア局データ生成手段を構成するコントローラ32で生成されたデータを基地局1に送信するエリア局データ送信手段を構成する送信手段31と、基地局1に配設され、移動局データ送信手段を構成する送信手段21またはエリア局データ送信手段を構成する送信手段31から送信されたデータを受信する基地局データ受信手段を構成する受信手段10と、基地局1に配設され、基地局データ受信手段を構成する受信手段10で受信されたデータから移動局2を特定し、その位置を表示手段12に表示する表示制御手段を構成するコントローラ11とを具備するものである。
【0021】したがって、移動局2は、通信衛星50の電波を受信し、その通信衛星50の電波から緯度・経度の測位データを入力し、GPS受信手段20で演算された現在位置に関するデータに移動局2に付与された固有のIDデータが付加されたデータが基地局1に向けて送信される。ここで、移動局2が建物4内等にあってGPS受信手段20により通信衛星50を補足できなくなると現在位置に関するデータが不完全となる。このようなデータが移動局2から送信されると建物4内のエリア局3が受信する。すると、そのデータのうち移動局2の位置に関する不完全なデータに替えてエリア局3の位置に関するデータが付加され基地局1に向けて送信される。したがって、基地局1で受信されるデータには、移動局2を特定するIDデータとその位置に関するデータとが完全に揃っており移動局2の位置が判ることとなる。
【0022】故に、遊園地等では、園内の入場者に対してアトラクション等の混み具合や通路等の密集度等を一目で知ることができる。これにより、建物に対する入場制限を行うタイミングがより的確に判断でき安全な運営が可能であり、また、人気のないアトラクションが判ることにより効率良い運営が可能となる。
【0023】ところで、上記実施例では建物内に設置された固定の基地局を想定して述べたが、図6に示すような上記基地局の機能を簡略化し小型化して携帯型の基地局を構成することもできる。
【0024】図6は本発明の一実施例にかかる移動局位置モニタリングシステムの基地局を小型化した携帯表示装置1Aとした事例を示す外観図である。
【0025】これによれば、迷子(移動局)が発生したときは、従来の場内放送に頼らずに上記携帯型の基地局である携帯表示装置1Aに配設されたキーから予め判っている迷子(移動局)のIDを入力する。すると、携帯表示装置1Aの画面12aには迷子(移動局)との距離とその方向とが表示され、直ちに迷子(移動局)を見つけだすことができる。
【0026】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の移動局位置モニタリングシステムによれば、移動局は、測位手段と、移動局の各々に付与された固有の識別データに測位手段で演算されたデータを付加したデータを生成する移動局データ生成手段と、その生成されたデータを基地局に向けて送信する移動局データ送信手段とを具備し、また、エリア局は、移動局からのデータを受信するエリア局データ受信手段と、エリア内に移動局があることを示す位置に関するデータを付加したデータを生成するエリア局データ生成手段と、エリア局データ生成手段で生成されたデータを基地局に送信するエリア局データ送信手段とを具備し、そして、基地局は、移動局データ送信手段またはエリア局データ送信手段から送信されたデータを受信する基地局データ受信手段及びそれを表示する表示手段と、基地局データ受信手段で受信されたデータから移動局を特定しその位置を表示する表示制御手段とを具備しており、移動局の位置に関するデータが測位可・不可にかかわらずその識別データに付加されたデータが生成されるため、基地局ではそのデータを受信し表示するだけで移動局毎の監視が確実となるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の一実施例にかかる移動局位置モニタリングシステムを示す概略図である。
【図2】図2は本発明の一実施例にかかる移動局位置モニタリングシステムを示す全体構成図である。
【図3】図3は本発明の一実施例にかかる移動局位置モニタリングシステムの移動局の制御を示すフローチャートである。
【図4】図4は本発明の一実施例にかかる移動局位置モニタリングシステムのエリア局の制御を示すフローチャートである。
【図5】図5は本発明の一実施例にかかる移動局位置モニタリングシステムの基地局の制御を示すフローチャートである。
【図6】図6は本発明の一実施例にかかる移動局位置モニタリングシステムの基地局を小型化した携帯表示装置とした事例を示す外観図である。
【符号の説明】
1 基地局
2 移動局
3 エリア局
10 受信手段
11 コントローラ
12 表示手段
20 GPS受信手段
21 送信手段
22 コントローラ
30 受信手段
31 送信手段
32 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の移動局と前記移動局と通信を行う基地局とを有する移動局位置モニタリングシステムにおいて、自局の位置を演算する測位手段と、前記移動局の各々に付与された固有の識別データに前記測位手段の位置に関するデータを付加したデータを生成する移動局データ生成手段と、前記移動局データ生成手段で生成されたデータを前記基地局に送信する移動局データ送信手段とを有する移動局と、前記移動局データ送信手段から送信された前記移動局に関するデータを受信するエリア局データ受信手段と、前記エリア局データ受信手段で受信されたデータのうち、前記移動局の位置に関するデータに替えてエリア内に前記移動局があることを示す位置に関するデータを付加したデータを生成するエリア局データ生成手段と、前記エリア局データ生成手段で生成されたデータを前記基地局に送信するエリア局データ送信手段とを有し、前記測位手段で前記移動局の位置が演算できない前記エリアに設けられたエリア局と、前記移動局データ送信手段または前記エリア局データ送信手段から送信されたデータを受信する基地局データ受信手段と、前記基地局データ受信手段で受信されたデータから前記移動局を特定し、その位置を表示する表示制御手段とを有する基地局とを具備することを特徴とする移動局位置モニタリングシステム。

【図1】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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