説明

移動用ガス絶縁開閉装置及びその現地運用方法

【課題】台車枠上に、運搬規制の高さ寸法内で各機器を搭載して製作でき、現地に輸送後はブッシングの十分な絶縁距離を確保して使用できる移動用GIS及びその運用方法を提供する。
【解決手段】運搬車両1で牽引して移動する台車枠2に、複数の昇降手段4を設け、また台車枠2の上面に回転テーブル5を回転可能に取り付ける。回転テーブル5の上面に、搭載する相分離型のGIS10は、台車枠10の進行方向と平行に設置する相分離型の横型遮断器CBと、各遮断器CBの一方の接続口に電気的に直列接続する断路器DSと、遮断器CB及び断路器DSの他方の接続口にとなる台車枠2の進行方向の前と後にそれぞれ設ける接続母線BSと、前後の各接続母線BSに取り付けるブッシングBgとを有して構成する。そして、各ブッシングBgのうち、中央に位置するものを略水平に取り付け、また両側に位置するものを下方に所定の角度傾斜させて取り付けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動用ガス絶縁開閉装置及びその現地運用方法に係り、特にトラックやトレーラ等の運搬車両の台車枠上に変電所機器を搭載して使用するた移動用ガス絶縁開閉装置及びその現地運用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、発変電所に据え付けた変電機器が地震や落雷等の災害によって、電力系統が使用不能となったときは、緊急用として準備してある移動用変電設備を、必要とする災害現地まで輸送し、送配電回線とケーブルを用いて接続する等の必要な処置を施し、電力系統を復旧することが行われる。
【0003】
従来の移動用の設備は、運搬車両で牽引して移動する台車枠上に、変電設備である油絶縁又はガス絶縁構造の変圧器と、ガス絶縁開閉装置(以下「GIS」と略称する。)とを、これらの配置を考慮して載置して直結することにより、移動用変電所を構成しており、そのままの状態で使用することが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
移動用変電所は、小規模の変電所の代替用としては使用できるが、更に高電圧大容量化しようとすると、全体寸法が著しく大きくなって製作できない問題が生ずる。これを改善するため、別々の台車枠上に変圧器部分とGIS部分を別々に搭載して構成し、これらを別々の運搬車両で牽引して、現地輸送後に組み合せて使用することも考えられる。
【0005】
ところで、GIS部分は図3の単線結線図に示すように、遮断点の両端に変流器CTを有する遮断器CBの一端側に、開閉点の両端に接地開閉器ESを配置した断路器DSを、電気的に直列接続している。そして、これら直列接続構成の遮断器CB及び断路器DSの他端側の接続母線BSに、それぞれ引込端子として用いるブッシングBgを取り付ける各機器の配置構成となっており、変圧器部分に比べて配置構造が複雑となっている。
【0006】
【特許文献1】特開平11−215625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
GISは、発変電所に設置して使用することを前提にし、配置する各機器を設計・製作するものである。したがって、GISを構成する各機器の幅及び高さは、寸法制限の少ない据付基礎面に設置する構造となっている。
【0008】
このため、据付基礎面に設置する形式のGISを、通常の各機器のままで台車枠上に搭載して移動用GISを構成しようとすると、各機器の配置を工夫しても運搬規制寸法、特に高さ寸法的に搭載が難しくなるので、製作できるのは低電圧の小型の移動用GISに限られてしまうことになる。
【0009】
それ故、より高電圧用のGISを構成する各機器を、台車枠上に適切に配置して移動用GISを構成するには、運搬規制の寸法内に各機器を配置して搭載すると共に、しかも使用時を考慮して移動用GISを製作する必要がある。
【0010】
また、運用環境や機器の定格によっては、送変電系統からGISへの引き込み方式を、ケーブルからブッシングに変更せざるを得ない場合もある。このため、長大なブッシングを使用して運搬規制を受ける移動用GISを構成するには、更に製作が難しくなるし、運送時の安全管理や許認可取得等容易に行えない問題がある。
【0011】
本発明の目的は、台車枠上に運搬規制の高さ寸法内で各機器を搭載してブッシングを用いる高電圧用の移動用GISを製作でき、しかも使用する現地まで容易に輸送できて、現地輸送後は十分な絶縁距離を確保して使用できる移動用GIS及びその現地運用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の移動用GISは、運搬車両で牽引して移動する台車枠に、複数の昇降手段を設けると共に、前記台車枠の上面に回転テーブルを回転可能に取り付け、前記回転テーブルの上面に、前記台車枠の進行方向と平行に設置する相分離型の横型遮断器と、前記各遮断器の一方の接続口に電気的に直列接続する断路器と、前記遮断器及び断路器の他方の接続口にとなる前記台車枠の進行方向の前と後にそれぞれ設ける接続母線と、前後の前記各接続母線に取り付けるブッシングとを有する相分離型のガス絶縁開閉装置を載置して構成し、前記各ブッシングのうち中央に位置するブッシングは略水平に取り付けると共に、両側に位置するブッシングは下方に所定の角度傾斜させて取り付けたことを特徴としている。
【0013】
好ましくは、前記各ブッシングはポリマー樹脂製碍管を用いて構成したことを特徴としている。
【0014】
また、本発明の移動用ガス絶縁開閉装置の現地運用方法は、移動可能な台車枠に複数の昇降手段を設けると共に、台車枠の上面に回転テーブルを回転可能に取り付け、前記回転テーブル上に台車枠の進行方向と平行に相分離型のガス絶縁開閉装置を載置し、前記ガス絶縁開閉装置は、台車枠の進行方向の前後に設ける接続母線にそれぞれ取り付けるブッシングのうち、中央に位置するブッシングは略水平に取り付け、かつ両側に位置するブッシングは下方に所定の角度傾斜させて取り付けた状態で現地に輸送し、使用場所において前記昇降手段により台車枠を定められた高さに上昇させて固定した後、前記回転テーブルを回転させてガス絶縁開閉装置を、前記台車枠に対して略直角となる状態まで回転させ、前記各ブッシングをケーブルと接続して運用を開始することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明のようにすれば、複数の昇降手段を有する台車枠に、回転可能な回転テーブルを設け、この回転テーブル上にブッシングを用いた高電圧のGISを搭載することにより、より大型の移動用GISを容易に製作できる。
【0016】
しかも、移動用GISは、運搬規制を受けない寸法内で輸送し、使用する場所で昇降手段により台車枠を上昇させ、また回転テーブル上のGIS全体を回転させ、ブッシングの絶縁距離を確保することにより、移動用GISとして支障なく運用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の移動用GISは、運搬車両で牽引して移動する台車枠に、複数の昇降手段を設けると共に、前記台車枠の上面に回転テーブルを回転可能に取り付け、回転テーブルの上面に相分離型のGISを載置する。相分離型のGISは、台車枠の進行方向と平行に設置する相分離型の横型遮断器と、各遮断器の一方の接続口に電気的に直列接続する断路器と、遮断器及び断路器の他方の接続口にとなる台車枠の進行方向の前と後にそれぞれ設ける接続母線と、前後の各接続母線に取り付けるブッシングとを有して構成する。そして、各ブッシングのうち中央に位置するブッシングは略水平に取り付けると共に、両側に位置するブッシングは下方に所定の角度傾斜させて取り付けている。
【0018】
本発明の移動用GISは、使用する現地まで台車枠で移動させてから、使用場所において前記昇降手段により台車枠を定められた高さに上昇させて固定した後、前記回転テーブルを回転させてガス絶縁開閉装置を、前記台車枠に対して略直角となる状態まで回転させ、前記各ブッシングをケーブルと接続して運用を開始する。
【実施例1】
【0019】
以下、本発明の移動用GISについて、図1に示す実施例を用いて説明する。トレーラその他の運搬車両1には、牽引接続部3の部分で台車枠2を分離可能に連結している。移動可能な台車枠2は、現地等で必要に応じて運搬車両1から牽引接続部2を電気的又は機械的に切離される。
【0020】
台車枠2には、この両側に複数個の油圧ジャッキ等の昇降手段4を取り付けており、またこの上面の中央部に回転テーブル5を取り付けている。この回転テーブル5の上面には、SFガス等の不燃性の絶縁ガスを封入した相分離型のGIS10を搭載し、縮小軽量化できる配置にして移動用GISを構成しており、後述する如く現地で使用する際に、GIS10を回転テーブル5と共に回転させて使用する。
【0021】
相分離型のGIS10を構成する主要機器である三相分の横型遮断器CBは、回転テーブル5の上面に台車枠2の進行方向と平行となるように設置している。また、これら横型遮断器CBの一方の接続口には、電気的に直列接続する断路器DSを設けている。横型遮断器CB及び断路器DSは、台車枠2の回転テーブル5にGIS10を載置状態で運搬する際に、損傷することなくそのまま現地で使用できるように、支持架台等を用いて回転テーブル5の上面に載置して固定する。
【0022】
各相の横型遮断器CBは、この他方の接続口に台車枠2の進行方向側の前方に突出するように接続母線BSを設けえおり、また各相の断路器DSも同様に、この他方の接続口に台車枠2の進行方向と逆の後方に突出するように接続母線BSを設けている。
【0023】
そして、台車枠2でGISを運搬する際及び現地での運用の際を考慮して、前後の各接続母線BSには、それぞれブッシングBgを取り付けている。即ち、各相のブッシングBgのうち、前後の双方とも中央に位置するブッシングBgは、接続母線BSに略水平に取り付け、図1(a)に示す如く運搬時に事前申請を必要としない輸送制限高さ寸法T内に収まるようにしている。
【0024】
また、同様に前後で両側に位置するブッシングBgは、取り付け面を下方に所定の角度傾斜させた接続母線BSに取り付けて、地面側に伸びるようにしている。これにより、両側のブッシングBgを、図1(b)に示す如く輸送制限幅寸法W内に収めると共に、隣接する相のブッシングBgとの絶縁距離を確保し、支障なく使用できるようにしている。
【0025】
前後の各接続母線BSに取り付ける各相のブッシングBgは、磁器製の碍管に替えてポリマー樹脂製碍管を採用することができる。ポリマー樹脂製碍管を用いたブッシングBgは、耐震性及び防爆性を格段に向上するから、ブッシングBgを接続母線BSに取り付けた状態のまま運送しても何ら問題が生ずることがなくなる。
【0026】
次に、本発明の移動用ガス絶縁開閉装置を、現地まで輸送して使用する現地運用方法について説明する。上記のように台車枠2に設ける回転テーブル5の上面に載置したGIS10は、この状態のまま緊急時に運搬車両1により牽引し、災害があった現地まで輸送する。
【0027】
現地到着後、使用場所において図2(a)及び(b)に示すように台車枠2に設けた昇降手段4を動作させ、輸送制限高さ寸法内に収めるために不足していたブッシングBgの対地絶縁距離を、十分に確保できるように予め定めた高さ寸法分まで台車枠2を上昇させて固定する。
【0028】
その後、矢印で示すように回転テーブル5と共にGIS10を、台車枠1に対して略直角となる状態まで回転させ、電力系統に連なるケーブルを各ブッシングBgに接続し、またその他の所要の接続を行い、GIS10の運用を開始する。
【0029】
上記したGIS10の運用は、昇降手段4を動作させて台車枠2を上昇させて固定してから、回転テーブルと共にGIS10を、台車枠1に対して略直角となる状態まで回転させるものであるが、台車枠2の上昇で全体の重心が上がって不安定となる恐れがあるときには、次のようにすることができる。即ち、逆に定められた使用場所に固定後、回転テーブルと共にGIS10を台車枠1に対して略直角となる状態まで回転させてから、昇降手段4を動作させて台車枠2やGIS10全体を上昇させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】(a)は本発明の一実施例である移動用ガス絶縁開閉装置を示す正面図、(b)は(a)を後方から見た側面図である。
【図2】(a)は本発明の移動用ガス絶縁開閉装置の使用状態を示す平面図、(b)は側面図である。
【図3】ガス絶縁開閉装置の単線結線図である。
【符号の説明】
【0031】
2…台車枠、4…昇降手段、5…回転テーブル、10…ガス絶縁開閉装置、CB…遮断器、DS…断路器、BS…接続母線、Bg…ブッシング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な台車枠上に、ガス絶縁開閉装置を搭載した移動用ガス絶縁開閉装置であって、前記台車枠に複数の昇降手段を設けると共に、前記台車枠の上面に回転テーブルを回転可能に取り付け、前記回転テーブルの上面に、前記台車枠の進行方向と平行に設置する相分離型の横型遮断器と、前記各遮断器の一方の接続口に電気的に直列接続する断路器と、前記遮断器及び断路器の他方の接続口にとなる前記台車枠の進行方向の前と後にそれぞれ設ける接続母線と、前後の前記各接続母線に取り付けるブッシングとを有する相分離型のガス絶縁開閉装置を載置して構成し、前記各ブッシングのうち中央に位置するブッシングは略水平に取り付けると共に、両側に位置するブッシングは下方に所定の角度傾斜させて取り付けたことを特徴とする移動用ガス絶縁開閉装置。
【請求項2】
請求項1において、前記各ブッシングはポリマー樹脂製碍管を用いて構成したことを特徴とする移動用ガス絶縁開閉装置。
【請求項3】
移動可能な台車枠に複数の昇降手段を設けると共に、台車枠の上面に回転テーブルを回転可能に取り付け、前記回転テーブル上に台車枠の進行方向と平行に相分離型のガス絶縁開閉装置を載置し、前記ガス絶縁開閉装置は、台車枠の進行方向の前後に設ける接続母線にそれぞれ取り付けるブッシングのうち、中央に位置するブッシングは略水平に取り付け、かつ両側に位置するブッシングは下方に所定の角度傾斜させて取り付けた状態で現地に輸送し、使用場所において前記昇降手段により台車枠を定められた高さに上昇させて固定した後、前記回転テーブルを回転させてガス絶縁開閉装置を、前記台車枠に対して略直角となる状態まで回転させ、前記各ブッシングをケーブルと接続して運用を開始することを特徴とする移動用ガス絶縁開閉装置の現地運用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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