説明

移動防止手段

【課題】挿口管が挿口管の受口管に対する離脱方向と挿入方向のいずれかに受口管に対して相対移動しても、挿口管の受口管に対する相対移動を阻止することができる移動防止手段を提供すること。
【解決手段】挿口部1aの外周面1cに係止爪5aを係止させることで、挿口部1aと受口部2aとの離脱方向及び挿入方向の相対移動を防止する移動防止手段4であって、係止爪5aは、係止部5における挿口管1の管軸C方向の中央部のみに設けられているとともに、押圧部7は、係止爪5aの周方向の中央部、且つ挿口管1の管軸C方向の中央部を、管軸Cに向けて押圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿口部の外周面に係止爪を係止させることで、挿口部と受口部との離脱方向及び挿入方向の相対移動を防止する移動防止手段に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の移動防止手段は、挿口部の外周面に対向する本体の内周面に周方向に円弧状に延びる凹部が複数形成されているとともに、これら凹部内に挿口部の外周面に向けて鋭角に延びる係止爪を備え、これら係止爪を押しねじ(押圧ネジ)によって係止爪を挿口部の外周面に食い込ませることで、挿口部が受口部から離間しようとする離間方向に相対移動することで係止部を凹部内で傾動させ、この傾動によって係止爪を挿口部の外周面に食い込ませて挿口部の受口部からの離脱方向への相対移動を阻止している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−174654号公報(第6頁、第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の移動防止手段にあっては、係止爪は、係止部の図示右側(凹部内に配置時における挿口部の受口部への挿入方向側)に形成されているため、挿口部が受口部に対して挿入方向に相対移動すると、係止部が挿口部が受口部に対して離脱方向に相対移動するときとは逆方向に傾動し、係止爪が挿口部の外周面から抜け出てしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、挿口管が挿口管の受口管に対する離脱方向と挿入方向のいずれかに受口管に対して相対移動しても、挿口管の受口管に対する相対移動を阻止することができる移動防止手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の移動防止手段は、
挿口管の挿口部の周方向に沿って配置され、該挿口部の外周面に係止する係止爪が前記挿口部の前記外周面に沿って夫々形成された複数の係止部と、前記挿口部が挿入される受口管の受口部若しくは該受口部に支持されたカバー部に形成されるとともに、前記挿口部の外周面に向けて開口し前記係止部を内部に収納する凹部と、前記凹部内の前記係止部を前記挿口部の前記外周面に向けて押圧する押圧部と、を備え、前記挿口部の前記外周面に前記係止爪を係止させることで、前記挿口部と前記受口部との離脱方向及び挿入方向の相対移動を防止する移動防止手段であって、
前記係止爪は、前記係止部における前記挿口管の管軸方向の中央部のみに設けられているとともに、前記押圧部は、前記係止爪の周方向の中央部、且つ前記挿口管の管軸方向の中央部を、前記管軸に向けて押圧することを特徴としている。
この特徴によれば、挿口管が受口管に対して管軸方向に相対移動することで、係止部は、挿口管の受口管に対する離脱方向と挿入方向の双方に押圧部との当接部を回動中心として挿口管の相対移動方向に回動しながら、係止爪を係止爪が挿口部の外周面に対して与える係止力を挿口部の外周面の周方向に分散させつつ、挿口部の外周面に係止させることができるので、挿口管の受口管からの抜け出しばかりか、挿口管の受口管への過挿入を防止することができるとともに、挿口管が受口管に対して管軸方向に相対移動することにより係止爪が挿口管の内周面に与える影響を小さく抑えることができる。
【0007】
本発明の移動防止手段は、
前記凹部の周方向の両端部は、該凹部の周方向の中央部よりも前記管軸方向に長寸に形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、挿口管が受口管に対して離脱方向または挿入方向に移動することで生じる、係止部の周方向側の両端部に係止部の周方向側の中央部よりも挿口部の離脱方向または挿入方向への大きな回動幅を、凹部の周方向側の両端部で許容することができる。
【0008】
本発明の移動防止手段は、
少なくとも一つの前記係止部の前記係止爪は、他の係止部の係止爪とは前記管軸方向にずれた位置で前記挿口部の外周面を係止していることを特徴としている。
この特徴によれば、複数の係止爪が挿口部の外周面における全周に亘って同一直線上に配置されることがないので、係止爪から受ける係止力が挿口管の内周面に与える影響をより小さく抑えることができる。
【0009】
本発明の移動防止手段は、
前記一つの係止部の係止爪と前記他の係止部の係止爪との周方向の端部同士は、周方向において重複して前記挿口部の前記外周面を係止していることを特徴としている。
この特徴によれば、一つの係止部の係止爪と他の係止部の係止爪とが重複して挿口部の外周面を係止する箇所で係止力を増大させ、より挿口部と前記受口部との離脱方向及び挿入方向の相対移動を強力に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1における挿口管及び受口管を示す一部破断断面図である。
【図2】図1におけるA−A断面図である。
【図3】カバー部の内周面を示す平面図である。
【図4】(a)は、係止部を示す正面図であり、(b)は、係止部における係止爪の配置位置を示す平面図であり、(c)は、図4(a)における係止部のB−B断面図であり、(d)は、図4(a)における係止部のC−C断面図である。
【図5】(a)は、係止部が押圧ボルトによって挿口部の外周面に向けて押圧されている状態を示す断面図であり、(b)は、挿口管が受口管から離脱方向に移動した際の係止部を示す断面図であり、(c)は、挿口管が受口管の挿入方向に移動した際の係止部を示す断面図である。
【図6】実施例2におけるカバー部の断面図である。
【図7】実施例2におけるカバー部の内周面を示す平面図である。
【図8】実施例2における係止爪の配置を示す平面図である。
【図9】変形例としての挿口部と受口部とを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る移動防止手段を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0012】
実施例1に係る移動防止手段につき、図1から図5を参照して説明する。以下、図1の紙面左側及び図2の紙面手前側を挿口管の離脱方向とし、この離脱方向である図4(a)の紙面手前側を係止部の正面側として説明する。図1に示すように、本実施例における挿口管1と受口管2とは、例えば、地中に埋設される上水道用の流体管であって、受口管2の管軸C方向側の端部は、他の受口管2の箇所よりも拡径した受口部2aに形成されているとともに、挿口管1の管軸C方向側の端部は、受口部2aに挿入可能な挿口部1aに形成されている。尚、これら挿口管1と受口管2の内周面には、挿口管1及び受口管2内を流れる流体からの防錆を行う防錆処理として、モルタルや防錆塗料によってコーティング層10が形成されている。
【0013】
受口部2aの内周面には、周方向に亘ってシール部材3が水密的に取り付けられており、挿口部1aが受口部2a内に挿入されることで、このシール部材3が挿口部1aの外周面に水密に当接することによって挿口部1aと受口部2aとの間が水密に閉塞されている。また、受口部2aの先端部には、外周面の一部が周方向に沿って受口部2aの拡径方向側に膨出する膨出部2bに形成されている。尚、受口部2a内に挿入された挿口部1aの先端部1bは、受口部2aの内方に形成された奥端面2cから管軸C方向に所定の長さRだけ離間して配置されている。
【0014】
このように接続された挿口管1と受口管2との間には、挿口部1aと受口部2aとを被覆する本発明の移動防止手段4が取り付けられている。この移動防止手段4は、図1及び図2に示すように、分割構造のカバー部4a,4bを有している。これらカバー部4a,4bは、周方向側の両側端部に形成されたフランジ4c,4cをボルトナット4d,4dで緊締することで環状をなす略半円形状に形成されている。以下、これらカバー部4a,4bは同一構成につきカバー部4aのみについて説明する。
【0015】
図1及び図2に示すように、カバー部4aの内周面には、カバー部4aの周方向に沿って後述する係止部5を内部に収納配置するための凹部4eが挿口部1aの外周面1cに向けて複数(本実施例では3つ)開口している。尚、これら凹部4eは、全て管軸C方向で同一位置となるように形成されている(図3参照)。
【0016】
また、これら隣り合う凹部4e,4e同士は、周方向に所定間隔に設けられた仕切壁4fにより区画されているとともに。これら仕切壁4fには、隣り合う凹部4e,4eにかけてゴム体6が取り付けられている。
【0017】
更に、各凹部4eにおける周方向の中央部、且つ管軸C方向の中央部には、移動防止手段4の径方向を向く螺子孔4gが形成されており、これら螺子孔4gには、カバー部4aの外方から本発明における押圧部としての押圧ボルト7が螺挿されている。尚、図3に示すように、各凹部4eは、管軸C方向側の開口幅寸法が移動防止手段4の縮径方向に向けて漸次管軸C方向に長寸となるように開口している。特に、各凹部4eの周方向の両端部における管軸C方向側の開口幅寸法は、各凹部4eの周方向の中央部における管軸C方向側の開口幅寸法よりも管軸C方向に長寸に形成されている。
【0018】
また、カバー部4aの受口部2a側を向く端部からは、挿口管1の受口管2への挿入方向に向けて、先端が管軸C方向に向けて突出する突部4jを有する鈎部4hに形成されている。このため、カバー部4a,4bをボルトナット4dで緊締する際に、突部4jを膨出部2bよりも挿口管1の受口管2への挿入方向側に配置することで、膨出部2bがカバー部4a,4bと突部4jとに当接可能に配置される。つまり、膨出部2bがカバー部4a,4bと突部4jとの間で離脱不可能となることで、移動防止手段4が受口部2aに支持される。
【0019】
次に、係止部5について説明する。図4(a)、図4(b)、図4(c)及び図4(d)に示すように、係止部5は、移動防止手段4の各凹部4e内に収納され、挿口部1aの外周面1cに係止することで挿口部1aと受口部2aとの離脱方向及び挿入方向への相対移動を防止するための部材である。この係止部5は、挿口管1よりも短径である円形の一部である略円弧状に形成されており、係止部5の内周側における管軸C方向の中央部には、挿口部1aの外周面1cに係止するための係止爪5aが1条のみ係止部5の周方向の略全周に亘って形成されている。
【0020】
つまり、係止部5は、正面視で挿口部1aの外周面1cの曲率よりも僅かに大きな曲率を有する略円弧状に形成されており、係止部5の円弧中心を挿口管1の中心(管軸C)よりも僅かに係止部5側にずらして配置することで、係止爪5aが周方向に亘り比較的浅く挿口部1aの外周面1cに係止するようになっている。
【0021】
また、係止部5の外周側端部における周方向の中央部には、押圧ボルト7の先端部に当接して係止爪5aに反力を伝えるための当接部5bが形成されている。この当接部5bは、係止部5の周方向に向けて比較的小さい曲率の曲面5cを有しているとともに、係止部5から管軸C方向である挿口管1の受口管2からの挿入方向及び離脱方向に向けて突出形成されている。尚、係止部5の外周側端部における周方向の中央部以外の箇所は、図4(a)及び図4(d)に示すように、係止部5の側面視で略曲面形状に形成されている。更に尚、本実施例における曲面5cは、係止部5の周方向に向けて係止部5と同一の曲率で形成されているが、曲面5cの係止部5の周方向に向けての曲率は、係止部5の周方向の曲率と異なっていてもよく、また、曲率を有さない平坦面であってもよい。
【0022】
また、係止部5の周方向側の両側端面には、係止部5を凹部4e内に収納する際にゴム体6の一部を収納するための溝部5dが形成されている。このため、図2に示すように、各仕切壁4fにゴム体6が取り付けられた状態で各凹部4eに係止部5を収納することで、ゴム体6の一部が溝部5d内に弾性変形しながら配置される。そして、各ゴム体6は、それぞれ周方向で隣り合う係止部5,5にそれぞれ弾性変形しながら当接することでこの弾性力を利用して、各係止部5が凹部4e内から脱落することを防止するようになっている。
【0023】
尚、このとき、各係止部5は、凹部4e内に収納されることで当接部5bの曲面5cが螺子孔4gに対向配置されるとともに、押圧ボルト7の先端部が略全面に亘り曲面5cの管軸C方向の中央部に当接する。つまり、押圧ボルト7の先端部は、係止部5の周方向の中央部、且つ管軸C方向の中央部に当接する。
【0024】
更に尚、凹部4eは、全て管軸C方向で同一位置となるように形成されているため、各凹部4eに係止部5が収納されることで、全ての係止爪5aは、同一の円周面上に配置される。
【0025】
そして、前述のように構成されるとともに各凹部4e内に係止部5が収納された移動防止手段4は、図2及び図5(a)に示すように、カバー部4a,4bのフランジ4c,4cをボルトナット4d,4dで緊締した後、各押圧ボルト7を螺挿することで係止部5を挿口部1aの外周面1cに向けて押圧し、係止爪5aを挿口部1aの外周面1cに対して垂直に係止させる。
【0026】
尚、前述したように係止部5は、正面視で挿口部1aの外周面1cの曲率よりも僅かに大きな曲率を有しているため、係止爪5aの周方向の両端部は、周方向の中央部よりもより深く挿口部1aの外周面1cに係止するようになっている。
【0027】
この図5(a)に示す係止爪5aが挿口部1aの外周面1cに垂直に係止している状態から、挿口管1及び受口管2が地震等の外力あるいは流体による不平均力などにより、挿口部1aと受口部2aとに、管軸C方向に相対移動しようとする際の係止部5の傾動について説明する。
【0028】
図5(b)に示すように、挿口管1が受口管2からの離脱方向に向けて相対移動する場合には、先ず、特に図示しないが、移動防止手段4は、係止爪5aが挿口部1aの外周面1cに垂直に係止した状態のまま挿口部1aとともに離脱方向に向けて相対移動される。
【0029】
そして、膨出部2bが突部4jに当接することで(図1参照)移動防止手段4の離脱方向に向けての相対移動が規制されると、図5(b)に示すように、係止部5は、押圧ボルト7の先端部と当接している当接部5bの挿口部1aの離脱方向側端部を中心点8として図示時計回りに傾動を開始する。この係止部5の傾動により、係止爪5aが挿口部1aの外周面1cに向けてより深く係止され、挿口管1の受口管2からの離脱方向への相対移動が阻止される。
【0030】
また、図5(c)に示すように、挿口管1が受口管2の挿入方向に向けて相対移動する場合には、先ず、特に図示しないが、移動防止手段は、係止爪5aが挿口部1aの外周面1cに係止した状態のまま挿口部1aとともに挿口部1aとともに挿入方向に向けて相対移動される。
【0031】
そして、膨出部2bがカバー部4a,4bの内側面4kに当接することで(図1参照)移動防止手段4の挿入方向に向けての相対移動が規制されると、図5(c)に示すように、係止部5は、押圧ボルト7の先端部と当接している当接部5bの挿口部1aの挿入方向側端部を中心点9として図示反時計回りに傾動を開始する。この係止部5の傾動により、係止爪5aがより挿口部1aの外周面1cに向けて深く係止され、挿口管1の受口管2の挿入方向への相対移動が阻止される。
【0032】
特に、挿口管1が受口管2の挿入方向に向けて相対移動する場合には、挿口管1が受口管2の挿入方向に距離Rだけ相対移動する前に相対移動を阻止することによって、挿口部1aの先端部1bと受口部2a内の奥端面2cとが衝突して挿口部1a及び受口部2aが破損してしまうことを防止することができる。
【0033】
以上、本実施例1における移動防止手段4にあっては、係止爪5aは、係止部5における挿口管1の管軸C方向の中央部のみに設けられているとともに、押圧ボルト7は、係止爪5aの周方向の中央部、且つ挿口管1の管軸C方向の中央部を、管軸Cに向けて押圧するので、挿口管1が受口管2に対して管軸C方向に相対移動することで、係止部5は、挿口管1の受口管2に対する離脱方向と挿入方向の双方に押圧ボルト7との当接部を中心点8,9として挿口管1の相対移動方向に回動しながら、係止爪5aを係止爪5aが挿口部1aの外周面1cに対して与える係止力を挿口部1aの外周面1cの周方向に分散させつつ、挿口部1aの外周面1cに係止させることができるので、挿口管1の受口管2からの抜け出しばかりか、挿口管1の受口管2への過挿入を防止することができるとともに、挿口管1が受口管2に対して管軸C方向に相対移動することにより係止爪5aが挿口管1の内周面に与える影響を小さく抑えることができる。
【0034】
また、凹部4eの周方向の両端部は、凹部4eの周方向の中央部よりも管軸C方向に長寸に形成されているので、挿口管1が受口管2に対して離脱方向または挿入方向に移動することで生じる、係止部5の周方向側の両端部に係止部5の周方向側の中央部よりも挿口部1aの離脱方向または挿入方向への大きな回動幅を、凹部4eの周方向側の両端部で許容することができる。
【実施例2】
【0035】
次に、実施例2に係る移動防止手段につき、図6から図8を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成を省略する。以下、図6の紙面手前側を挿口管の離脱方向として説明する。
【0036】
図6に示すように、本実施例における係止部5’は、周方向側の両端部が、外周側端部から内周側に向けて係止部5の周方向の外方に向けて傾斜をなすテーパー部5eに形成されている。このため、係止部5の内周側における管軸C方向の略中央部に形成される係止爪5aは、実施例1よりも係止部の周方向に長寸に形成されている。また、図7に示すように、本実施例における凹部4eは、カバー部4a,4bの内周面にて隣り合う凹部4e,4e同士で管軸C方向にずれるように形成されている。
【0037】
このため、各凹部4eに係止部5’が収納されると、図8に示すように、係止爪5aが互い違いとなって配置されるようになっている。更に、各凹部4eに係止部5が収納された状態では、図6及び図8に示すように、隣り合う係止部5同士は、係止爪5aの周方向側の端部が周方向に重複して配置されている。つまり、本実施例における移動防止手段4では、隣り合う係止部5の係止爪5a同士が、周方向において重複して挿口部1aの外周面1cの同一箇所を係止するようになっている。
【0038】
尚、本実施例では、カバー部4a,4bの内周面にて隣り合う凹部4e,4e同士を管軸C方向にずれるように形成したが、全ての凹部4eが管軸C方向で同一位置でなければカバー部4a,4bの内周面に管軸C方向にずらして形成する凹部4eの数は特に制限しない。
【0039】
以上、本実施例2における移動防止手段4にあっては、少なくとも一つの係止部5の係止爪5aは、他の係止部5の係止爪5aとは管軸C方向にずれた位置で挿口部1aの外周面1cを係止しているので、複数の係止爪5aが挿口部1aの外周面1cにおける全周に亘って同一直線上に配置されることがないので、係止爪5aから受ける係止力が挿口管1の内周面に与える影響をより小さく抑えることができる。
【0040】
また、一つの係止部5の係止爪5aと他の係止部5の係止爪5aとの周方向の端部同士は、周方向において重複して挿口部1aの外周面1cを係止しているので、一つの係止部5の係止爪5aと他の係止部5の係止爪5aとが重複して挿口部1aの外周面1cを係止する箇所で係止力を増大させ、より挿口部1aと受口部2aとの離脱方向及び挿入方向の相対移動を強力に防止することができる。
【0041】
以上、本発明の実施例1,2を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0042】
例えば、前記実施例では、受口部2aと移動防止手段4とを別体として構成し、カバー部4a,4bをフランジ4c,4cで緊締することで膨出部2bをカバー部4a,4bと突部4jとの間で離脱可能とし、移動防止手段4を受口部2aに支持させたが、本発明の変形例として、図9に示すように、挿口部1aの外周面1cに向かって開口する凹部4eと、この凹部4e内に収納される係止部と、係止部5を挿口部1aの外周面1cに向けて押圧する押圧ボルト7を備える移動防止手段4’を受口部2aの先端部に一体に設けてもよい。このように移動防止手段4と受口部2aとを一体に構成することで、挿口管1と受口管2とに離脱方向及び挿入方向への相対移動が生じた直後から係止爪5aを挿口部1aの外周面1cに深く係止させ、挿口管1と受口管2との離脱方向及び挿入方向への相対移動を防止することができる。
【0043】
また、前記実施例では、カバー部4a,4bをフランジ4c,4cで緊締することで膨出部2bをカバー部4a,4bと突部4jとの間で離脱可能とし、移動防止手段4を受口部2aに支持させたが、前記実施例に替えて、特に図示しないが、受口部2aの先端部における内周面を挿口管1の挿入方向に向けて漸次縮径するテーパー面に形成するとともに、このテーパー面と受口部1aの外周面1cとの間にゴム材等により構成されたシール部材を配置し、移動防止手段を、受口部に向けて螺挿することでシール部材を挿入方向に向けて押圧し、テーパー面と外周面1cとの間を水密に密封させるための押輪として構成してもよい。
【0044】
また、前記実施例では、受口管2の管軸C方向の一方側の端部に形成された受口部2aに挿口管1の挿口部1aを挿入する例で説明したが、受口管2の管軸C方向の両側の端部を受口部として構成し、両受口部に挿口部1aを挿入可能としてもよい。この場合には、両受口部に移動防止手段を設ける。
【0045】
また、前記実施例では、挿口管1と受口管2とを上水道用の流体管として説明したが、挿口管1及び受口管2内を流れる流体は上水の他、石油等の水以外の液体でもよく、また、液体とガス等の混合物であってもよい。
【0046】
また、前記実施例では、係止部5を押圧ボルト7によって挿口部1aの外周面1bに向けて押圧することで係止爪5aを外周面1bに係止させたが、挿口管1の管径が十分に短寸である場合には、移動防止手段に螺子孔を形成せずに凹部内の外周側端面に当接部の曲面を当接させ、フランジ同士をボルトナットで緊締する力によって各カバー部が直接係止部を挿口部の外周面に向けて押圧することで係止爪を外周面に係止させてもよい。
【0047】
また、前記実施例では、係止部5の外周側端部における周方向の中央部、且つ挿口部1aの管軸C方向の中央部である当接部5bを押圧ボルト7によって挿口部1aの外周面1cに向けて押圧することで係止爪5aを外周面1cに係止させたが、当接部5bを押圧する押圧ボルト7とともに別段のボルトによって係止部5を挿口部1aの外周面1cに向けて押圧するようにしてもよい。この場合には、係止爪5aが挿口部1aの外周面1cに偏って係止しないよう、当接部5bを押圧する押圧ボルト7を中心に、係止部5の周方向に沿って等間隔に複数のボルトを配置することが望ましい。
【符号の説明】
【0048】
1 挿口管
1a 挿口部
1c 外周面
2 受口管
2a 受口部
4,4’ 移動防止手段
4a,4b カバー部
4e 凹部
5,5’ 係止部
5a 係止爪
5b 当接部
7 押圧ボルト(押圧部)
8,9 中心点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿口管の挿口部の周方向に沿って配置され、該挿口部の外周面に係止する係止爪が前記挿口部の前記外周面に沿って夫々形成された複数の係止部と、前記挿口部が挿入される受口管の受口部若しくは該受口部に支持されたカバー部に形成されるとともに、前記挿口部の外周面に向けて開口し前記係止部を内部に収納する凹部と、前記凹部内の前記係止部を前記挿口部の前記外周面に向けて押圧する押圧部と、を備え、前記挿口部の前記外周面に前記係止爪を係止させることで、前記挿口部と前記受口部との離脱方向及び挿入方向の相対移動を防止する移動防止手段であって、
前記係止爪は、前記係止部における前記挿口管の管軸方向の中央部のみに設けられているとともに、前記押圧部は、前記係止爪の周方向の中央部、且つ前記挿口管の管軸方向の中央部を、前記管軸に向けて押圧することを特徴とする移動防止手段。
【請求項2】
前記凹部の周方向の両端部は、該凹部の周方向の中央部よりも前記管軸方向に長寸に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の移動防止手段。
【請求項3】
少なくとも一つの前記係止部の前記係止爪は、他の係止部の係止爪とは前記管軸方向にずれた位置で前記挿口部の外周面を係止していることを特徴とする請求項1または2に記載の移動防止手段。
【請求項4】
前記一つの係止部の係止爪と前記他の係止部の係止爪との周方向の端部同士は、周方向において重複して前記挿口部の前記外周面を係止していることを特徴とする請求項3に記載の移動防止手段。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−36917(P2012−36917A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174820(P2010−174820)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000105556)コスモ工機株式会社 (270)
【Fターム(参考)】