説明

移動電荷量及び移動度測定用セル及び液体現像剤

【課題】 高濃度な着色剤からなる荷電粒子の電荷量及び移動度の測定を可能にした移動電荷量及び移動度測定用セルを提供する。
【解決手段】 水晶振動子を応用して荷電粒子の移動の状態を電流と質量変化により同時計測を可能とする。QCMマスセンサー1とQCMコントローラ2を使用する。荷電粒子を分散させた液体の測定サンプル7をセルに導入して電極3、8間に満たし、電界を印加し、セル内の荷電粒子が電極に流れ込む電流値と電極表面上の振動変化による質量変化の時間依存性を同時に測定し、その結果を用いて補正することで、充電電荷量、バルク抵抗を流れる電流値と実際の荷電粒子の移動による電流値を区別し、精度良い電荷量Qの測定値を得る。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液体中の荷電粒子の電気特性を測定可能なセルとその装置による評価対象とする現像剤に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】泳動電着電流の測定においては、本願発明者の知るところでは、簡便に荷電粒子の重量あたりの電荷量Q/mを同時計測できる測定装置は存在しない。マルバーン社、ゼータサイザー等の光学系システム構成のドップラー効果を利用した移動度の測定(移動度より電荷量を計算が可能)では、着色剤からなる荷電粒子の測定を行うことは、測定系のS/Nの低下を招き測定は原理的に困難であった。
【0003】そこで本発明は、高濃度な着色剤からなる荷電粒子の電荷量及び移動度の測定を可能にした移動電荷量及び移動度測定用セルを提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に係る液体中の荷電粒子の移動電荷量及び移動度測定用セルは、上記目的を達成するために、水晶マイクロバランス(QCM)のセル本体と、該セル本体の内部に配設され、水晶振動子である水晶板の一面に振動数及び電流測定用電極を形成し、該水晶振動子の振動数及び電流測定用電極を振動数計測装置に接続するとともに、上記電流測定用電極に対向電極を配置し、これら電極間に電場を形成し、荷電粒子により運ばれた電荷と質量変化を同時に測定可能としてなることを特徴とする。
【0005】同請求項2に係るものは、上記目的を達成するために上記荷電粒子に着色剤を含有した非透過性液体を測定することが可能なことを特徴とする。
【0006】同請求項3に係る液体現像剤は、上記目的を達成するために、着色剤を含む荷電粒子であるトナーが高濃度に分散された100mPa・s以上の高粘度液体現像剤において、請求項1または2の移動電荷量及び移動度測定用セルにより測定される電荷量Q/mが5〜100uC/gであることを特徴とする。
【0007】同請求項4に係る液体現像剤は、上記目的を達成するために、絶縁性液体中に着色剤を含む荷電粒子であるトナーが高濃度に分散された100mPa・s以上の高粘度液体現像剤であって、請求項1または2の移動電荷量及び移動度測定用セルにより測定される電荷量Q/mが電界依存性において閾値をもつことを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態及び実施例】以下本発明の実施の形態及び実施例を図面を参照して説明する。図1は本発明に係る移動電荷量及び移動度測定用セルの一実施形態を示す断面図で、図中1はQCMマスセンサー(波線部分)、2はQCMコントローラ、2aは発振回路、2bは水晶振動子、3は対向電極、4は高圧電源、5は微少電流計、6は電極間距離の調整機構、7は測定サンプル、8は電流測定用電極である。
【0009】本実施形態は、CVD装置等の蒸着モニターとして用いられている水晶振動子(クリスタル)を応用し、荷電粒子の移動の状態を電流と質量変化により同時計測を可能とするもので、電気化学的水晶振動子としては、北斗電工(株)製のQCMマスセンサー1とQCMコントローラ2を使用し、対向電極3に高圧電源4を接続し、電流測定用電極8に微少電流計5を接続し、電極3、8間に電界を生じさせることができるようにしている。電界の調整は、電極3、8間の距離を調整機構6により調整することによって行う。
【0010】そして、荷電粒子を分散させた液体の測定サンプル7をセルに導入して電極3、8間に満たし、電界を印加し、セル内の荷電粒子が電極に流れ込む電流値と電極表面上の振動変化による質量変化の時間依存性を同時に測定する。
【0011】そして電圧印加時の充電電荷量を除去するために、同時に測定している質量変化の測定結果を用いて補正する。図2は、上記測定における電流と質量変化の時間依存性を示す図である。まず電圧を印加した時から、電流、振動変化量を測定する。振動変化により生じる質量変化の測定を開始してから最初に起こる変極点の時間をτa、次に質量変化が飽和した変極点の時間をτbとして示してある。時間τaは、セル中の荷電粒子が移動して電極8に到達し始めた開始時間であり、時間τbは、ほとんどの荷電粒子の移動が終了した時間である。そして、これら電極に到達した荷電粒子の移動時間である、時間τa、τb間の電流値を積分し、電荷の移動による電荷量Qを算出する。この時、液体のバルク抵抗である時間τbのときの電流値を定常電流として、上記積分値から差し引く。
【0012】これらの処理を行うことにより、充電電荷量、バルク抵抗を流れる電流値と実際の荷電粒子の移動による電流値を区別することが可能になり、精度良い電荷量Qの測定ができる。また、光学的測定法と異なり、質量変化による移動計測を利用しているので、着色剤を含有した液体中の荷電粒子の移動質量の計測もできる。
【0013】さらに高粘性現像剤の場合、対向電極3の電極面に塗布後、セル内を荷電粒子に分散させている液体を静かに充填した後、上記と同等の測定をすることにより、質量変化の変極点が顕著に現れるようになる。これは、荷電粒子がセルに一様分布した状態より、対向電極3近傍に分布し、分布幅が狭くなるためである。測定上の精度が上がるので、この方法が好ましい。
【0014】
【実施例1】上記測定機を用い、下記の条件で測定を行った。
測定サンプル:高絶縁性液体中に分散した着色剤含有樹脂電極間距離:1mm印加電圧:8kVここでは、シリコーンオイル0.1St中に高電荷量の高分子処理カーボンブラックを樹脂に分散させ、固形分の重量パーセント10wt%程度のサンプルを用いた。測定の結果は、図2に示す典型な波形と同等のものとなり、電荷量Qは電流値より算出し、電極に到達した荷電粒子の質量mからQ/mを計算すると、10uC/g程度の値となった。
【0015】
【実施例2】上記の測定装置を用いて着色剤からなる荷電粒子を液体に分散させた液体現像剤を測定して電荷量はQ/mを算出した。上記の方法により、帯電制御剤などで修飾し、質量あたりの電荷量Q/mの異なる液体現像剤を作成した。ここでの作成条件は、シリコーンオイル0.1St中に、着色剤を含む固形分の重量パーセントは20wt%とした。Q/mの測定条件は以下に示す通りである。
測定サンプル:高絶縁性液体中に分散した着色剤含有樹脂電極間距離:1mm印加電圧:8kV
【0016】電子写真プロセスを用いた画像形成装置により画像特性を比較した結果を下記の表1に示す。
【表1】


この結果から、Q/mが10uC/g以上の現像剤において画像濃度が高く、地肌汚れが小さいことが確認できた。
【0017】また上記高粘性現像剤a-4の電界依存性の測定結果を図3に示す。図から明らかなように、ある電界においてQ/mが急峻に変化し閾値を有する現像剤であった。この特性を持った現像剤は、ある電界を超えないと移動しない現像剤であり、最適な電界を設定すると2値的な振る舞いをするため安定な現像を実施することが可能である。
【0018】すなわち、上述の測定機により、電流測定用電極8に流れ込む電流とこの電極に到着した荷電粒子の質量変化から、電界による荷電粒子の移動の様子を電荷量と移動度の観点から簡便に測定することが可能となる。また、測定原理に光学系を使用していないことから、着色剤を含有した荷電粒子の測定も可能である。さらに上記の測定機を用い、絶縁性液体中に着色剤を含む荷電粒子であるトナーが高濃度に分散された100mPa・s以上の高粘度液体現像剤の測定を実施し、画像特性と重量あたりの電荷量Q/mの関係を見出すことにより良好な画像特性を得られるようになる。
【0019】なお以上に示した実施形態及びいくつかの実施例は、本発明を具体的に説明するためのものであるが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0020】
【発明の効果】請求項1に係る移動電荷量及び移動度測定用セルは、以上説明してきたようなものなので、簡便に電荷量と荷電粒子の移動量を同時に測定することが可能になるという効果がある。
【0021】請求項2に係る移動電荷量及び移動度測定用セルは、以上説明してきたようなものなので、光学式では測定が困難な荷電粒子の移動が質量変化により測定することが可能になるという効果がある。
【0022】請求項3に係る液体現像剤は、以上説明してきたようなものなので、画像特性に良好なQ/mの値が得られるという効果がある。
【0023】請求項4に係る液体現像剤は、以上説明してきたようなものなので、最適な現像電界を設定でき、地肌汚れのない画像特性を実現することが可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る移動電荷量及び移動度測定用セルの一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1の装置による測定における電流(A)と質量変化(B)の時間依存性を示す図である。
【図3】図1の装置による高粘性現像剤の電界依存性の測定結果を示す図である。
【符号の説明】
1 QCMマスセンサー
2 QCMコントローラ
2a 発振回路
2b 水晶振動子
3 対向電極
4 高圧電源
5 微少電流計
6 電極間距離の調整機構
7 測定サンプル
8 電流測定用電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】 水晶マイクロバランス(QCM)のセル本体と、該セル本体の内部に配設され、水晶振動子である水晶板の一面に振動数及び電流測定用電極を形成し、該水晶振動子の振動数及び電流測定用電極を振動数計測装置に接続するとともに、上記電流測定用電極に対向電極を配置し、これら電極間に電場を形成し、荷電粒子により運ばれた電荷と質量変化を同時に測定可能としてなることを特徴とする液体中の荷電粒子の移動電荷量及び移動度測定用セル。
【請求項2】 上記荷電粒子に着色剤を含有した非透過性液体を測定することが可能なことを特徴とする液体中の荷電粒子の移動電荷量及び移動度測定用セル。
【請求項3】 着色剤を含む荷電粒子であるトナーが高濃度に分散された100mPa・s以上の高粘度液体現像剤において、請求項1または2の移動電荷量及び移動度測定用セルにより測定される電荷量Q/mが5〜100uC/gであることを特徴とする液体現像剤。
【請求項4】 絶縁性液体中に着色剤を含む荷電粒子であるトナーが高濃度に分散された100mPa・s以上の高粘度液体現像剤であって、請求項1または2の移動電荷量及び移動度測定用セルにより測定される電荷量Q/mが電界依存性において閾値をもつことを特徴とする液体現像剤。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate