説明

移床式ろ過装置のろ材洗浄器

【課題】エアリフトポンプから排出された濁質とろ材との混合物を洗浄水で洗浄する場合、混合物の脈動を抑えることができ、ろ材の洗浄効率を上げると共に、ろ材の排出量を抑制することのできる移床式ろ過装置のろ材洗浄器を提供する。
【解決手段】ろ材洗浄器1を、エアリフトポンプ60から排出された混合物を貯留し順次一定量排出するスリット13を有する滞留部10と、混合物を下部から導入された移床式ろ過装置の処理水等と接触させて洗浄する洗浄部20と、滞留部10と洗浄部20を連結する滑走部30と、洗浄により分離された汚水を移送する分離移送部40と、分離移送部40から移送された汚水を移床式ろ過装置の外部に排出するための排出部50とで構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移床式ろ過装置の上部に設置され、エアリフトポンプから排出された濁質とろ材との混合物を移床式ろ過装置の処理水等で洗浄する移床式ろ過装置のろ材洗浄器に関する。
【背景技術】
【0002】
水処理設備のろ過装置として連続的にろ過を行う移床式ろ過装置は、下記特許文献1に開示されている。この移床式ろ過装置は、図11に示す通り、移床式ろ過装置100の内部のろ材が充填されているろ材層101に、原水を流してろ過処理するものである。即ち、ろ材が上部から下部へ緩やかに移動する中を原水が移動することで、原水中の濁質がろ材でろ過され、移床式ろ過装置100の下部に混在した濁質とろ材は、移床式ろ過装置100に設置されたエアリフトポンプ102の下端の入口105から内部に吸引されて上部まで運ばれ、移床式ろ過装置100の上部に設置されているろ材洗浄器103に投入され、洗浄されたろ材のみがろ材層101に戻され、濁質を含んだ汚水は排水として移床式ろ過装置100の外部に排出される。
【0003】
濁質とろ材との混合物を洗浄するろ材洗浄器103は、移床式ろ過装置100の上部に設置されているが、移床式ろ過装置100の水位より低い水位となるように一定の水位差が設けられている。この水位差によりろ材洗浄器103の下部から導入された移床式ろ過装置100の上部の処理水等は、図12に示すように、ろ材洗浄器103の内部を洗浄水の上昇流となって上昇する。一方濁質とろ材との混合物はエアリフトポンプ102内で激しく攪拌され、ろ材から濁質が剥離された状態となって、ろ材洗浄器103に投入される。ろ材洗浄器103に投入され沈降していく濁質とろ材との混合物は、洗浄部106で洗浄水の上昇流と向流接触することで濁質を含んだ汚水のみが上昇分離し、排出口107から移床式ろ過装置の外部へ排水として排出され、洗浄されたろ材は、ろ材洗浄器103の下部からろ材層に戻される。
【0004】
このろ材洗浄器103で、濁質とろ材との混合物を洗浄する場合、洗浄水の上昇流の流速を一定に保ち、且つ混合物中のろ材と上昇流を確実に接触させることが重要となる。しかしながら、移床式ろ過装置100の下部から濁質とろ材との混合物の運搬にエアリフトポンプ102を使用した場合、ろ材洗浄器103への濁質とろ材との混合物の投入は激しく脈動した状態となる。即ち、ろ材洗浄器103に、上部から間欠的に混合物が投入され、ろ材が塊となってろ材洗浄器103を落下するため、上昇流の流速が大きく変動し、洗浄効率が大きく低下することになる。更に、上昇流の流速が上昇したとき、ろ材が汚水に混入し排水として流出する割合が高くなるとの不具合点があった。
【0005】
下記特許文献2には、上記不具合点を解決する為に、上昇流の通過部分に複数のラビリンスを設けることが提案されている。しかし下部のラビリンスで分離された濁質が直上のラビリンスに移動しても上部から落下してくるろ材に巻き込まれて再び落下することが起る。更にラビリンスにより上昇流が一定速度で上昇できず濁質の除去効率が必ずしも高くなく、洗浄効率を上げる解決策とはなり得ていなかった。
【0006】
また、移床式ろ過装置の水位とろ材洗浄器の水位の差が大きくなれば、上昇流が大きくなる。先に示した下記特許文献1のような上向流移床式ろ過装置の場合、処理水管が閉塞した場合にはろ過装置の水位が上昇し、ろ過装置外部にろ材が流出する不具合があった。
【0007】
別の視点では、上記洗浄部106の向流接触部分において、洗浄部内全体に亘る鉛直方向の大旋回流がしばしば発生する。この際、大旋回流の上向流部分においては上昇流が大きくなるため、ろ材が移床式ろ過装置の外部に流出してしまう不具合があった。
【0008】
更に、ろ材洗浄器は、移床式ろ過装置の上部の処理水等を洗浄水として使用して洗浄するので、洗浄効率を高めるためには多量の洗浄水が必要となり、ろ過効率が悪化する不具合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実公3042242
【特許文献2】特開2003−265906
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上述の不具合点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、エアリフトポンプから排出された濁質とろ材との混合物を移動床式ろ過装置の処理水等で洗浄する場合、混合物の脈動を抑えることができ、かつ、ろ材の洗浄効率を上げることのできる移床式ろ過装置のろ材洗浄器を提供することである。
【0011】
更に、混合物の洗浄時にろ材の流出を少なくすると共に、洗浄水の使用量を少なくし、ろ過効率の良い移床式ろ過装置のろ材洗浄器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る移床式ろ過装置のろ材洗浄器は、ろ材が充填されているろ材層に原水を通過させ濁質をろ過する移床式ろ過装置の上部に設置され、前記移床式ろ過装置に設置されているエアリフトポンプから排出された濁質とろ材との混合物を洗浄し、洗浄により分離された前記濁質を含む汚水を外部に排出すると共に洗浄された前記ろ材を前記ろ材層に戻す移床式ろ過装置のろ材洗浄器において、前記エアリフトポンプから排出された濁質とろ材との混合物を貯留し順次一定量排出するスリットを有する滞留部と、前記混合物と下部から導入され上部に向かう前記移床式ろ過装置の処理水等とを接触させ洗浄する洗浄部と、前記滞留部と前記洗浄部を連結する滑走部と、洗浄により分離された前記濁質を含む汚水を移送するとともにろ材を洗浄部に戻す分離移送部と、前記分離移送部から移送された前記汚水を前記移床式ろ過装置の外部に排出するための排出部とを備えたことを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の請求項2に係る移床式ろ過装置のろ材洗浄器は、請求項1に記載の移床式ろ過装置のろ材洗浄器において、前記洗浄部は、前記洗浄部の全幅の1/2以下の邪魔板を少なくとも1枚有し、前記洗浄部の上端から最上部の前記邪魔板までが100乃至300mmの距離にあり、且つ前記最上部の邪魔板が滑走部側に設置されていることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の請求項3に係る移床式ろ過装置のろ材洗浄器は、請求項1若しくは2に記載の移床式ろ過装置のろ材洗浄器において、前記洗浄部における前記処理水等の上昇流速が50乃至100m/hであることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の請求項4に係る移床式ろ過装置のろ材洗浄器は、請求項1乃至3のいずれかに記載の移床式ろ過装置のろ材洗浄器において、前記分離移送部における前記汚水の上昇流速が200乃至260m/hであることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の請求項5に係る移床式ろ過装置のろ材洗浄器は、請求項1乃至4のいずれかに記載の移床式ろ過装置のろ材洗浄器において、前記排出部の上部に前記移床式ろ過装置の処理水等を導入するための導水部を設置したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
上記構成を備えた本発明の請求項1に係る移床式ろ過装置のろ材洗浄器は、エアリフトポンプから排出された濁質とろ材との混合物がスリットを有する滞留部に貯留され、順次一定量が滑走部を経由して洗浄部に排出されるので、滞留部において貯留された濁質とろ材との混合物を順次分散して次工程に排出させることができ、また、洗浄部においてエアリフトポンプの脈動の影響を軽減し、移床式ろ過装置の処理水等の上昇流速を一定に保つことができるので、混合物と上昇流とを確実に向流接触させ、ろ材の洗浄効率を上げることができる。
【0018】
更に、請求項2に係る移床式ろ過装置のろ材洗浄器は、洗浄部に、洗浄部の全幅の1/2以下の邪魔板が少なくとも1枚形成されていて、洗浄部の上端から最上部の邪魔板までが100乃至300mmの距離にあり、且つ前記最上部の邪魔板が滑走部側に設置されているので、濁質とろ材とを効率良く分離することができる。また、従来の洗浄部のように邪魔板がない場合には、洗浄部内の上昇流が乱流状態となり局所的に上昇流速が速くなり、これが洗浄部の長辺に平行かつ鉛直方向の大旋回流となってろ材の流出の原因となる不具合があったが、邪魔板を設置することにより邪魔板上部に邪魔板と直行する方向の小旋回流が形成され、前記大旋回流の発生を妨げるので、ろ材の流出を抑制することができる。
【0019】
更に、請求項3に係る移床式ろ過装置のろ材洗浄器は、洗浄部における洗浄水の上昇流速を50乃至100m/hに設定しているので、洗浄部におけるろ材の流失量を最小にして、最大の洗浄効率を確保することができる。
【0020】
更に、請求項4に係る移床式ろ過装置のろ材洗浄器は、分離移送部における汚水の上昇流速を200乃至260m/hに設定しているので、分離移送部でのろ材の流失量を最小にして、最大の洗浄効率を確保することができる。
【0021】
更に、請求項5に係る移床式ろ過装置のろ材洗浄器は、汚水の排出部の上部に導水部が設置されているので、洗浄部と移床式ろ過装置との水位差が一定の範囲を超えた場合には、洗浄部の上部に移床式ろ過装置の処理水等が導入され水位差が一定の範囲に維持されるので、洗浄水の上昇流速が速くなるのを防止し、ろ材が多量に流失するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るろ材洗浄器が装着されている移床式ろ過装置の概略説明図
【図2】本発明に係るろ材洗浄器の概略説明図で、(1)は上から見た概略図、(2)は横から見た概略図
【図3】本発明の別の実施形態に係るろ材洗浄器の概略説明図で、(1)は上から見た概略図、(2)は横から見た概略図
【図4】図2(2)の破線部の拡大で、滞留部のスリット幅についての説明図
【図5】洗浄部に邪魔板を設置、または設置しない場合における(1)洗浄部内部での混合物の流れについての説明図、(2)邪魔板の設置位置または設置しないときの濁質の除去効率及び流失ろ材との関係を示すグラフ
【図6】邪魔板を設置するときの洗浄部上端からの距離と邪魔板の幅についての説明図
【図7】洗浄部に邪魔板を設置したときの洗浄部上端から最上部邪魔板までの長さと濁質の除去効率及び流失ろ材との関係を示すグラフ
【図8】洗浄部に邪魔板を設置する枚数と混合物の流れについての説明図、
【図9】洗浄部流速と濁質の除去効率及び流失ろ材との関係を示すグラフ
【図10】分離移送部流速と濁質の除去効率及び流失ろ材との関係を示すグラフ
【図11】移床式ろ過装置の概略説明図
【図12】従来例のろ材洗浄器の概略説明図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に図面を参照して、この発明の実施の形態を例示して説明する。ただし、この発明の範囲は、特に限定的記載がない限り、この実施の形態に記載されている内容に限定する趣旨のものではない。
【0024】
図1は、本発明に係るろ材洗浄器が装着されている移床式ろ過装置の概略説明図であり、図2、図3は、本発明の実施形態に係るろ材洗浄器の概略説明図であり、(1)は上から見た説明図であり、(2)は横から見た説明図である。
【0025】
本発明に係るろ材洗浄器1は、移床式ろ過装置100の上部に設置される。本発明の実施の形態の移床式ろ過装置100は、図1に示す通り、内部のろ材が充填されているろ材層101に、原水を上向きに流してろ過処理する上向移床式ろ過装置100を用いている。しかし、本発明に係る移床式ろ過装置は、上向移床式ろ過装置100に限定されるものではなく、原水をろ材層に対し横向きに流しろ過処理する横流移床式ろ過装置も含まれることは言うまでもない。移床式ろ過装置100は、ろ材が上部から下部へ緩やかに移動する中を原水が下から上に移動することで、原水中の濁質がろ材でろ過され、移床式ろ過装置100の下部に混在した濁質とろ材は、内部に設置されたエアリフトポンプ60の下端の入口105から内部に吸引されて上部まで運ばれ、移床式ろ過装置100の上部に設置されているろ材洗浄器1に投入され、ろ材洗浄器1にて洗浄されたろ材のみがろ材洗浄器1よりろ材層101に戻され、濁質を含んだ汚水は排水として移床式ろ過装置100の外部に排出されるようになっている。
【0026】
ろ材洗浄器1は、図2、図3に示す通り、滞留部10と、洗浄部20と、滑走部30と、分離移送部40と、排出部50とを備えている。ろ材洗浄器1の外形は、図2に示す角型でも、また図3に示す円筒形でも、それ以外のどのような他の形状であっても良い。
【0027】
滞留部10は、ろ材洗浄器1の上部で、エアリフトポンプ接続口61の位置に配設されている。底面12は傾斜面になっていて、中央にスリット13が形成されている。このスリット13は、エアリフトポンプ接続口61から排出されてくる濁質とろ材との混合物の量に合わせて後述する滑走部30に排出する混合物の落下速度を調整できるようにスリット幅cが可変となっていて、図4に示す幅cは、3〜10mmが好適であり、更には、5〜8mmがより好適である。
【0028】
この滞留部10は、エアリフトポンプ接続口61から間欠に排出された濁質とろ材との混合物を受け止め一時貯留するので、エアリフトポンプ60の脈動を緩和できるようになっている。更に、底面12にスリット13が形成されているので、後述する洗浄部20への混合物の落下速度を平均化すると共に、混合物を洗浄部20の全幅一杯まで拡散することができるようになっている。即ち、エアリフトポンプ接続口61は円筒配管であることが多く、そのままろ材洗浄器1に投入させると混合物が塊となって洗浄部20を移動していくことになるが、滞留部10で一時貯留することで、混合物を一定量ずつ分散させて落下させることができるようになっている。
【0029】
滑走部30は、滞留部10と後述する洗浄部20とを連結し、上部の滞水部31と下部の滑走路部32とから構成され、滞留部10で貯留された混合物を洗浄部20まで円滑に移送させることができるように一定長さを有し、底面33は傾斜面で形成されている。この底面33の傾斜面の角度αは、25〜50度が好適であり、更には30〜40度がより好適である。
【0030】
滞水部31が形成されていることで、滞留部10で減衰されたエアリフトポンプ60の脈動の影響を完全に消滅できるようになっている。また、滑走路部32が一定の長さで形成されることで、混合物の粒径や形状の影響による滑走速度の違いを利用し、滞留部10で分散された混合物の分散を更に進めることができるようになっている。
【0031】
洗浄部20は、滑走部30からの混合物が流入するように、滑走部30の下方に配設され、底部21からは、移床式ろ過装置の上部の処理水等(上向移床式ろ過装置では処理水となるが、横流移床式ろ過装置では、滞留水となる。)が水位差により上昇流の洗浄水として導入されるようになっている。洗浄部20の下部には、邪魔板23が設置されている。邪魔板23は少なくとも1枚設置されていれば良く、複数枚設置されている場合の最上段の邪魔板23は、図5(1)に示す混合物の流れ、及び(2)に示す邪魔板位置と濁質除去効率及びろ材流出率との関係より、滑走部側Aの位置に設置されていることが重要であり、図6に示す洗浄部20の上端24から最上段の邪魔板23までの距離eは、図7に示す洗浄部上部から最上部邪魔板までの長さと濁質除去効率及びろ材流出率との関係より、100〜300mmが好適であり、更には200〜250mmがより好適である。また、邪魔板23の幅bは、洗浄部の全幅aの1/2以下であることが好適である。尚、邪魔板23が複数枚設置されている場合、2段目は対面側B、3段目は滑走部側Aと、交互に設置されていても、すべてが同一の滑走部側Aに設置されていても良い。
【0032】
邪魔板23が設置されていると、図8に示すように洗浄部20が上下に仕切られたようになり、安定した小旋回流が発生し、ろ材と濁質との分離を促進すると共に、洗浄部20の長辺22に平行かつ鉛直方向の大旋回流の発生を妨げるので、ろ材の流出を抑制することができるようになっている。尚、邪魔板23を複数枚設置した場合、濁質が下部から上部に移動するのは僅かであるのに対し、洗浄部20が大きくなり、設備の製作費が上昇するとの不利益の方が大きくなるので、通常は邪魔板23を1枚設置すれば良い。
【0033】
洗浄部20は、滑走部30から落下した混合物と、底部21から導入された洗浄水の上昇流とを向流接触させ、ろ材から分離した濁質を含む汚水を洗浄部20の上方に配設されている後述する分離移送部40に移送すると共に、濁質が分離した洗浄されたろ材をそのまま落下させて移床式ろ過装置100のろ材層101に戻す機能を有するので、洗浄部20内の上昇流の流速の管理が重要であり、図9に示す洗浄部流速と濁質除去効率及びろ材流出率との関係より、洗浄水の上昇流速は50〜100m/hrが好適であり、更には60〜90m/hrがより好適である
【0034】
分離移送部40は、洗浄部20の上方に配設され、分離移送部40の幅dは可変となっている。
【0035】
分離移送部40は、洗浄部20からの濁質を含む汚水を後述する排出部50に移送する流路としての機能を有し、更には洗浄部20より巻き上がってしまったろ材を再び洗浄部20に戻す効果もある。汚水に混入している洗浄されたろ材は、可能な限りろ材層101に戻すことが重要であり、分離移送部40の幅dを調整することで、汚水の上昇流を制御し、洗浄されたろ材の流失を防止できるようなっている。図10に示す分離移送部流速と濁質除去効率及びろ材流出率との関係より、分離移送部40内での汚水の上昇流速は、200〜260m/hrが好適である。
【0036】
排出部50は、分離移送部40と並列に配設され、その間には堰板51が設置されている。更に、排出部50の上方には移床式ろ過装置の処理水等をろ材洗浄器1に上方から導入することができる導水路52が設置されている。尚、導水路52は、図2等では開口部を形成しているが、移床式ろ過装置100との境界53を低くし、越流により導入できるようにしても良い。
【0037】
堰板51が設置されていることで、ろ材洗浄器1内の水位が一定に保たれ、移床式ろ過装置100の水位が一定の場合、堰板51の設置高さにより一定の排水がろ材洗浄器1から排出されるようになっている。更に、導水路52が設置されていることで、移床式ろ過装置100の水位が何らかの原因で上昇した場合、導水路52よりろ材洗浄器1に上方から移床式ろ過装置100の処理水等が導入されるので、移床式ろ過装置100とろ材洗浄器1との水位差が大きくなるのを防止し、分離移送部40での汚水の上昇流速を速めるのを防止し、ろ材が汚水に混入して流失するのを防止することができるようになっている。
【0038】
上述の通り、エアリフトポンプ接続口61から排出された濁質とろ材との混合物は、滞留部10と滑走部30を経由して洗浄部20に移送されるので、エアリフトポンプ60の脈動の影響を受けることなく洗浄部20で洗浄水の上昇流と向流接触させることが可能となり、ろ材の流失を少なくして洗浄効率を上げることが可能となる。
【0039】
しかも、洗浄部20には、全幅の1/2以下の邪魔板が少なくとも1枚滑走部側Aに配設されているので、洗浄部20が上下に仕切られ小旋回流が発生し、ろ材と濁質との分離を促進すると共に、洗浄部20の長辺22に平行かつ鉛直方向の大旋回流の発生を妨げるので、洗浄効率を上げると共にろ材の流出を抑制することが可能となる。
【0040】
更に、滞留部におけるスリット13の幅cを3〜10mmに設定し、洗浄部における洗浄水の上昇流速を50乃至100m/hに設定し、分離移送部における汚水の上昇流速を200乃至260m/hに設定する等により、洗浄効率を上げ単位ろ材当りの洗浄水量を30%程度削減することが可能となる。
【符号の説明】
【0041】
1 ろ材洗浄器
10 滞留部
12,33 底面
13 スリット
20 洗浄部
21 底部
22 長辺
23 邪魔板
24 上端
30 滑走部
31 滞水部
32 滑走路部
40 分離移送部
50 排出部
51 堰板
52 導水路
53 境界
60 エアリフトポンプ
61 エアリフトポンプ接続口
100 移床式ろ過装置
101 ろ材層
105 入口
A 滑走部側
B 対面側
a 洗浄部の全幅
b 邪魔板の幅
c スリット 幅
d 分離移送部の幅
e 洗浄部の上端から最上段の邪魔板までの距離
α 滑走部底面の傾斜角


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ材が充填されているろ材層に原水を通過させ濁質をろ過する移床式ろ過装置の上部に設置され、前記移床式ろ過装置に設置されているエアリフトポンプから排出された濁質とろ材との混合物を洗浄し、洗浄により分離された前記濁質を含む汚水を外部に排出すると共に洗浄された前記ろ材を前記ろ材層に戻す移床式ろ過装置のろ材洗浄器において、
前記エアリフトポンプから排出された濁質とろ材との混合物を貯留し順次一定量排出するスリットを有する滞留部と、前記混合物を下部から導入され上部に向かう前記移床式ろ過装置の処理水等と接触させ洗浄する洗浄部と、前記滞留部と前記洗浄部を連結する滑走部と、洗浄により分離された前記濁質を含む汚水を移送する分離移送部と、前記分離移送部から移送された前記汚水を前記移床式ろ過装置の外部に排出するための排出部とを備えたことを特徴とする移床式ろ過装置のろ材洗浄器。
【請求項2】
前記洗浄部は、前記洗浄部の全幅の1/2以下の邪魔板を少なくとも1枚有し、前記洗浄部の上端から最上部の前記邪魔板までが100乃至300mmの距離にあり、且つ前記最上部の邪魔板が滑走部側に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の移床式ろ過装置のろ材洗浄器。
【請求項3】
前記洗浄部における前記処理水等の上昇流速が50乃至100m/hであることを特徴とする請求項1若しくは2に記載の移床式ろ過装置のろ材洗浄器。
【請求項4】
前記分離移送部における前記汚水の上昇流速が200乃至260m/hであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の移床式ろ過装置のろ材洗浄器。
【請求項5】
前記排出部の上部に前記移床式ろ過装置の処理水等を導入するための導水部を設置したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の移床式ろ過装置のろ材洗浄器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−166119(P2012−166119A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27005(P2011−27005)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000193508)水道機工株式会社 (50)