説明

移植機の植付作業機

【課題】圃場面にシートを被膜し、このシートの上から植付作業を行う移植機の植付作業機において、被膜作業中及び被膜作業後のシートのズレや捲れ等をより確実に防止可能な移植機の植付作業機を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、複数の植付部9を備え、繰出されるシート19を圃場面M側に押圧する押えローラを最外端の植付部9のさらに外側に配置して端部押えローラ13とし、シート19端部19aが端部押えローラ13によって圃場面M側に押圧された状態で、圃場面Mにシート19を被膜する移植機の植付作業機において、前記端部押えローラ13の下端が圃場面Mよりも下方に位置した状態で該端部押えローラ13の上下高さを固定させることが可能な固定手段32を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移植機の植付作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
植付作業の際、圃場面にシートを被膜し、このシートの上から植付作業を行なう手法が従来公知であり、このような植付作業を行うにあたり、複数の植付部を備え、繰出されるシートを圃場面側に押圧する押えローラを最外端の植付部のさらに外側に配置して端部押えローラとし、シート端部が端部押えローラによって圃場面側に押圧された状態で、圃場面にシートを被膜し、被膜作業時におけるシートのめくれ等を効率的に防止する特許文献1,2に示す移植機の植付作業機が開発され、公知になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−143826号公報
【特許文献2】特許第3822124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1の移植機の植付作業機による圃場面へのシート被膜では、圃場の土質や水深によっては、被膜された後、シートがその場で上手く位置決めされずに、ズレや捲れ等が生じる場合がある。
【0005】
これに対して、特許文献2の移植機の植付作業機による圃場面へのシート被膜では、端部押えローラの周面に形成された爪によって、シートの端部側に所定間隔毎に複数の孔を穿設し、この複数の孔によって該シートをその場に位置決めするが、該複数の孔は、シートの端部に間欠的に穿設されるため、圃場の土質や水深によっては、この複数の孔によっても、シートをその場に上手く位置決めさせることができず、ズレや捲れ等が生じる場合がある他、被膜されたシートに孔が穿設されるため、圃場面をシートで被膜するという観点から不都合が生じる場合がある。
【0006】
本発明は、圃場面にシートを被膜し、このシートの上から植付作業を行う移植機の植付作業機において、被膜作業中及び被膜作業後のシートのズレや捲れ等をより確実に防止可能な移植機の植付作業機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するため、第1に、複数の植付部9を備え、繰出されるシート19を圃場面M側に押圧する押えローラを最外端の植付部9のさらに外側に配置して端部押えローラ13とし、シート19端部19aが端部押えローラ13によって圃場面M側に押圧された状態で、圃場面Mにシート19を被膜する移植機の植付作業機において、前記端部押えローラ13の下端が圃場面Mよりも下方に位置した状態で該端部押えローラ13の上下高さを固定させることが可能な固定手段32を設けたことを特徴としている。
【0008】
第2に、左右方向一方側に向って押えローラ13の径を次第に小さくするテーパ面13aを端部押えローラ13に形成し、端部押えローラ13の径が最大となる頂部13bが植付条間の中央部に位置するように該押えローラ13を配置したことを特徴としている。
【0009】
第3に、前記端部押えローラ13が左右対称な形状になるように該端部押えローラ13の左右にテーパ面13aを形成したことを特徴としている。
【0010】
第4に、左右の最外端の植付部9の外側に前記端部押えローラ13をそれぞれ設け、該左右の端部押えローラ13の間における平面視植付部9の側方位置に条間押えローラ14を配置し、端部押ローラ13及び条間押えローラ14によってシート19を押圧することを特徴としている。
【0011】
第5に、前記条間押えローラ14及び複数の端部押えローラ13を単一の回動軸28を介して上下回動可能に支持し、条間押えローラ14及び複数の端部押えローラ13をそれぞれ下方側に付勢する付勢手段47,58を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の構成によれば、前記端部押えローラの下端が圃場面よりも下方に位置した状態で該端部押えローラの上下高さを固定することにより、該端部押えローラによって、圃場面に被膜されたシートの端部に下方に窪んだ溝が連続的に形成され、該溝がシートを圃場面により確実に位置決めする機能を発揮するため、めくれ等が効率的に防止され、安定的に圃場面をシートによって被膜できる他、前記溝に溜めた水等が重しの代わりとなり、さらに安定的にシートが圃場面に位置決めされる。
【0013】
また、左右方向一方側に向って押えローラの径を次第に小さくするテーパ面を端部押えローラに形成し、端部押えローラの径が最大となる頂部が植付条間の中央部に位置するように該押えローラを配置すれば、該テーパ面によって、シート端部への溝形成をより効率的に行うことが可能になる。
【0014】
また、前記端部押えローラが左右対称な形状になるように該端部押えローラの左右にテーパ面を形成することにより、シートの1つの端部に対して、往路と復路のそれぞれにおいて、端部押えローラにより同一形状の溝を凹設できるため、1つの溝を端部押えローラによる2度の押圧によって確実に形成できる。
【0015】
さらに、左右の最外端の植付部の外側に前記端部押えローラをそれぞれ設け、該左右の端部押えローラの間における平面視植付部の側方位置に条間押えローラを配置し、端部押ローラ及び条間押えローラによってシートを押圧すれば、シートが圃場面により密着した状態で被膜されるので、平らなシートの上から、安定した植付姿勢の苗等を、効率的に植付けることができる。
【0016】
なお、前記条間押えローラ及び複数の端部押えローラを単一の回動軸を介して上下回動可能に支持し、条間押えローラ及び複数の端部押えローラをそれぞれ下方側に付勢する付勢手段を設ければ、単一の回動軸によって、条間押えローラ及び複数の端部押えローラが支持されるため、構造を簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を適用した乗用田植機の側面図である。
【図2】本発明を適用した乗用田植機の平面図である。
【図3】植付作業機の要部側面図である。
【図4】植付作業機の要部背面図である。
【図5】端部押えローラの構成を示す背面図である。
【図6】端部押えローラの溝形成固定状態時の側面図である。
【図7】端部押えローラの収納固定状態時の側面図である。
【図8】端部押えローラの上下揺動状態時の側面図である。
【図9】条間押えローラの収納固定状態時の側面図である。
【図10】条間押えローラの上下揺動状態時の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1,図2は本発明を適用した乗用田植機の側面図及び平面図である。図示する乗用田植機は、マルチ移植機の一種であり、左右一対の前輪1,1及び後輪2,2によって支持された走行機体3の後端部に昇降リンク4を介して植付作業機6が連結されることにより構成されている。
【0019】
上記植付作業機6は、上記昇降リンク4にローリング可能に支持されて左右方向に延びる角材状の横フレーム7(図3参照)と、該横フレーム7側から前方斜め上方側に急傾斜してこの横フレーム7に支持された苗載せ台8と、該苗載せ台8の下方に配置された植付部9と、植付部9の前側に支持されたセンサローラ11と、該センサローラ11の前方側に配置された左右方向のシートケース12と、植付部9側に支持された押えローラ13,14とを備えている。
【0020】
植付部9は、横フレーム7から後方に一体的に延設された前後方向のプランタケース16側面にプランタアーム17を介して支持された植付爪18を備えている(図4参照)。プランタケース16は、左右方向に複数並列配置され、この各プランタケース16の両側面又は片側面に上述の植付爪18が支持されており、この各植付爪18は、苗載せ台8の背面側に載置された苗Nを掻取って圃場に植付けるように構成されている。ちなみに、図示する例では、3つのプランタケース16が並列配置され、各プランタケース16の左右両側面側にそれぞれ植付爪18が支持されており、この植付作業機6によって、6条分の苗Nを一気に圃場に植付けることが可能である。
【0021】
シートケース12には、遮光性を有する再生紙等から構成されるシート19が巻付けられた円柱状のシートロール21が左右方向に向けられた状態で軸回りに回転自在に架設支持されており、押えローラ13,14は、シートケース12に支持されたシートロール21から繰出されるシート19を圃場面M(図3参照)側に押圧するように構成されている。
【0022】
センサローラ11は、土圧感知によって、植付作業機6が予め設定された所定高さに位置していることを検出する検出手段として機能しており、該所定高さが植付爪18による植付作業が可能な「植付高さ」になる他、このセンサローラ11の高さを、植付部9(さらに具体的にはプランタケース16)に対して、変更することにより、植付部9の対地高さが変わり、植付爪18による苗Nの植付深さを調整することが可能になる。
【0023】
上記走行機体3は、ボンネット22の後方にオペレータが乗込む操縦部23が設置され、該ボンネット22及び操縦部23の左右両側方には、それぞれ予備のシートロール21を支持ずるロール支持装置24が設置されている。
【0024】
該構成の乗用田植機では、センサローラ11によって、植付作業機6を予め設定された植付高さに昇降させ、植付爪18が植付駆動され且つシートケース12に支持されたシートロール21からシート19が繰出される状態で、車体を前進走行させる。この前進走行に伴って、シートケース12側から繰出されたシート19が押えローラ13,14によって圃場面M側に押圧され、圃場面Mへの被膜作業が順次行われていくとともに、圃場面Mを被膜されたシート19の上から植付爪18による苗Nの植付作業6を順次行う。
【0025】
また、繰出されたシート19は、植付部9よりも繰出し下流側箇所において、植付作業機6の横幅略全体に亘り形成された左右方向のシートカッタ26によって、切断可能であり、このシートカッタ26は、横フレーム7側に上下揺動可能に支持された前後方向のカッタアーム27の後端側に取付けられている。
【0026】
次に、図3乃至10に基づきセンサローラ11及び押えローラ13,14の構成について説明する。
図3、図4は、植付作業機の要部側面図及び要部背面図である。本乗用田植機では、押えローラ13,14として、左右の各最外端に配置された植付爪18のさらに外側方に配置された端部押えローラ13と、この左右一対の端部押えローラ13,13の間に配置された条間押えローラ14とを備えている。
【0027】
端部押えローラ13は、繰出されるシート19の左右の端部19a,19aに接当するように配置構成されている。具体的には、シート19の左右一方側端部19aが、左右一方側の最外端の植付爪18による現在の植付条列と、該植付条列に隣接する植付完了側の植付条列との間(植付条間)に位置している一方で、シート19の左右他方側端部19aが、左右他方側の最外端の植付爪18による現在の植付条列と、該植付条列に隣接する植付予定側の植付条列との間(植付条間)に位置している。そして、本乗用田植機では、往路6条分と復路6条分で、合計12条分の植付条列に対して、シート被膜作業及び苗Nの植付作業を行った場合に、往路側シート19と復路側シート19とは、端部抑えローラの左右幅1〜1.5個分程度ラップするとともに、このラップ部分L(図5参照)が端部押えローラ13によって順次押圧される。
【0028】
条間押えローラ14は、並列されたプランタケース16の間に配置され、左右の端部押えローラ13,13の間において平面視で対応する植付爪18の側方に位置しており、シート19上面における植付条列の間(植付条間)を回転しながら押圧するように構成されている。
【0029】
この複数の端部押えローラ13,13及び条間押えローラ14,14は、左右方向に形成された単一の回動軸28を介して、植付作業機6の下端側に支持されている。この回動軸28は、全プランタケース16間に架渡されるようにして、各プランタケース16の下端側に軸回りに回動可能に支持されている。
【0030】
上述の複数の押えローラ13,14は、回動軸28の軸回りに上下揺動自在な状態で該回動軸28に支持された前後方向の支持アーム29,31の後端(先端)側に取付支持され、該支持アーム29,31は押えローラ13,14毎に各別に設けられている。この各支持アーム13,14は、後述する切換機構(固定手段)32,33によって、上下に揺動させることが可能な揺動状態と、所定位置で固定された固定状態とに切換えられる。
【0031】
回動軸28からは前方斜め上方に向って該回動軸28と一体で前後揺動する操作レバー34が一体的に突設されており、この操作レバー34の前後揺動操作によって回動軸28を軸回りに上下回動させることにより、支持アーム29,31を介した押えローラ13,14の変位範囲を、その変位量を変えずに、回動軸28の軸回り(主に上下方向)に変更調整できる。ちなみに、操作レバー34は、レバーガイド35に複数段階で位置決め係止可能であり、この操作レバー34の係止によって、回動軸38も所定回動位置で係止される。
【0032】
センサローラ11は前後一対で設けられ、この前後のセンサローラ11,11が上下傾斜する前後方向の連結アーム36によって連結されている。この連結アーム36は、連動機構37を介して横フレーム7側及び回動軸28と連結され、該連動機構37は、回動軸28が軸回りに回動されると、それに連動して、センサローラ11の植付部9に対する相対的な上下高さを変更するように構成されている。すなわち、押えローラ13,14の回動軸28を介した上述の上下位置調整に伴い、センサローラ11の上下位置も変更調整される。
【0033】
図5は、端部押えローラの構成を示す背面図であり、図6は、端部押えローラの溝形成固定状態時の側面図であり、図7は、端部押えローラの収納固定状態時の側面図であり、図8は、端部押えローラの上下揺動状態時の側面図である。左右の各端部押えローラ13は、左右方向中央部から左右方向外側に向って次第に径が小さくなるテーパ面13aを左右にそれぞれに形成することにより、該左右方向中央部が頂部13bとなる左右対称な算盤の珠形状に成形されている。そして、この頂部13bが、平面視で、上述した植付条間の左右方向中央部(言換えると、ラップ部分L左右中央部)に位置するように、端部押えローラ13が配置構成されている。
【0034】
上述の支持アーム29は、先端部に平面視後方側開放されたU字状の枠部29aが一体的に形成され、この枠部29aの左右両側部の間に、左右方向の支持軸38を介して、側面視円形をなす上述の押えローラ13の中心部を回転自在に軸支している。
【0035】
この支持アーム29毎に設けられた前記切換機構32は、回動軸28と一体で上下揺動するように回動軸28から後方に延出された方形板状の位置決め片39と、位置決め片39の延出端部と支持アーム29の枠部29aとを連結する連結プレート41とを備えている。ちなみに、位置決め片39と支持アーム29とを連結プレート41によって連結するにあたっては、支持アーム29を位置決め片39よりも上方に揺動させた状態で、両者を連結する。
【0036】
連結プレート41の位置決め片39寄り箇所と、押えローラ13寄り箇所とには、それぞれ連結孔42、43が穿設されている。連結プレート41の位置決め片39寄りの連結孔である基端側連結孔42には、位置決め片39から連結プレート41側に一体的に突設された連結ピンである基端側連結ピン44が挿通連結される一方で、連結プレート41の押えローラ13寄り箇所の連結孔である先端側連結孔43には、支持アーム29の枠部29aから連結プレート41側に一体的に突出された連結ピンである先端側連結ピン46が挿通されている。
【0037】
基端側連結孔42は、円弧状の可動部42aと、可動部42aにおける押えローラ13から離間した側の端部から一体的に延設される固定部42bとからなる。先端側連結孔43は、位置決め片39から近い側の近接側固定部43aと、位置決め片39から遠い側の離間側固定部43bと、近接固定部43aと離間側固定部43bとを連接する連接部43cとから構成されている。この基端側連結ピン44と先端側連結ピン46とは引張スプリング(付勢手段)47によって連結されている。
【0038】
この基端側連結ピン44を基端側連結孔42の固定部42bに嵌め込み且つ先端側連結ピン46を先端側連結孔43の近接側固定部43aに嵌め込むことにより、支持アーム29が回動軸28に対して下方揺動位置で固定又は略固定される溝形成固定状態に切換えられる(図6参照)。この溝形成固定状態時、端部押えローラ13の下端が圃場面Mよりも下方(さらに具体的には、圃場の均された表面高さよりも下方側)に位置した状態で、該端部押えローラ13の上下高さが固定又は略固定され、上述した植付条間の中央部に位置するシート19,19同士のラップ部分Lは、該端部押えローラ13によって圃場面M側に押圧され、圃場の土と共にV字状に下方に窪むため、車体走行に伴って、該箇所には、背面視楔状の溝48が前後方向に連続的に形成される。この溝形成の際、各連結ピン44,46は、引張スプリング47の弾性力によって、対応する連結孔42,43の上記所定箇所に位置決めされ、連結孔42,43内での移動が規制された状態になる。
【0039】
また、前記基端側連結ピン44を基端側連結孔42の固定部42bに嵌め込み且つ先端側連結ピン46を先端側連結孔43の離間側固定部43bに嵌め込むことにより、支持アーム29が回動軸28に対して上方揺動位置で固定又は略固定される収納固定状態に切換えられる(図7参照)。この収納固定状態時、押えローラ13は、圃場面Mから離間し、植付部9の側面に沿うように収容される。この収容時、各連結ピン44,46は、引張スプリング47の弾性力によって、対応する連結孔42,43の上記所定箇所に位置決めされ、連結孔42,43内での移動が規制された状態になる。
【0040】
さらに、前記基端側連結ピン44を基端側連結孔42の可動部42aに位置させ且つ先端側連結ピン46を先端側連結孔43の離間側固定部43bに嵌め込むことにより、支持アーム29が回動軸28に対して上下揺動可能な上下揺動状態に切換えられる(図8参照)。この上下揺動状態時、支持アーム29は、基端側連結ピン44が可動部42aを移動する範囲内で、回動軸28の軸回りに上下揺動自在な状態になる。この上下揺動時、引張スプリング47の弾性力によって、支持アーム29は下方揺動側に付勢(言換えると、端部押えローラ13が下方側に付勢)され、端部押えローラ13がシート19を圃場面M側に押圧する状態になる。ちなみに、端部押えローラ13が左右にテーパ面13a,13aを有して背面視頂部13b側に尖った形状に成形され、この尖った部分が圃場面Mに食込むので、柔らかい圃場であれば、上述の溝形成固定状態に切換えること無く且つ引張スプリング47の弾性力も強くすること無く(同一の引張スプリング47で)、この上下揺動状態への切換えにより、楔状の溝48を連続的に凹設することが可能である。
【0041】
なお、基端側連結孔42における可動部42aと固定部42bとの間を、基端側連結ピン44が移動可能であるとともに、先端側連結孔43における近接側固定部43aと離間側固定部43bとの間を、先端側連結ピン43が連接部43cを経由して移動可能であるため、各端部押えローラ13の切換機構32による状態切換を、連結ピン44,46を連結孔42,43に挿通させた状態のまま行なうことが可能であるため、利便性が高い。
【0042】
図9は、条間押えローラの収納固定状態時の側面図であり、図10は、条間押えローラの上下揺動状態時の側面図である。各条間押えローラ14は、側面視円形をなす円柱状に成形されており、支持アーム31は、枠部31aを備えて上述の支持アーム29と略同一に構成され、該支持アーム31及び上述の支持軸38と略同一構成の支持軸49(図4参照)とによって、回転自在に支持されている。
【0043】
この条間押えローラ14側の切換機構33は、端部押えローラ13側の切換機構32の近似した構成を有しており、具体的には、位置決め片51と、一対の連結孔53,54が穿設された連結プレート52と、位置決め片51側の連結ピン56と、押えローラ14側の連結ピン57と、両連結ピン56,57を連結する引張スプリング58とから構成され、以下異なる点を説明すると、連結プレート52における先端側連結孔54が離間側固定部のみから構成され、基端側連結孔53を構成する可動部53aと固定部53bの内で該可動部53aを連結プレート52方向に直線的に形成している。
【0044】
該構成の切換機構33では、前記基端側連結ピン56を基端側連結孔53の固定部53bに嵌め込むことにより、支持アーム31が回動軸28に対して上方揺動位置で固定又は略固定される収納固定状態に切換えられる(図9参照)。
【0045】
また、前記基端側連結ピン56を基端側連結孔53の可動部53aに位置させることにより、上下揺動状態に切換えられる(図10参照)。この上下揺動状態時、該支持アーム31は、基端側連結ピン56が可動部53aを移動する範囲内で、回動軸28の軸回りに上下揺動自在な状態になり、この上下揺動時、引張スプリング58の弾性力によって、支持アーム31は下方揺動側付勢(言換えると、条間押えローラ14が下方側に付勢)され、条間押えローラ14がシート19を圃場面M側に押圧する状態になる。
【0046】
以上のように構成される本乗用田植機では、植付作業機6の左右両端側で回転作動する端部押えローラ13,13によって該シート19の左右の各端部19aにV字状の溝48を形成するとともに、端部押えローラ13,13の間で回転作動する条間押えローラ14,14とによって該シート19の植付条間箇所を押圧しながら、シート19を圃場面Mに密着させ且つシート19表面の凹凸形成を抑制した状態で、圃場面Mにシート19を被膜するため、良好な被膜作業を行うことが可能であるとともに、シート19両端部19a,19aのV字状の溝48によって被膜されたシート19の圃場面Mからの捲れ等を効果的に防止できる。
【0047】
また、各溝48に水等を溜めれば、シート19を圃場面Mに係止する重しの代わりになり、シート19の捲れ等がより確実に防止される。
【0048】
また、車体走行時における往路と復路において、1つの溝38を、左右対称形状な端部押えローラ13,13によって、2度押圧するため、V字状の溝38をより確実に形成せしめることが可能である。
【0049】
さらに、複数の押えローラ13,14毎に設けられた切換機構32,33によって状態切換を各別に行うことが可能であるため、圃場の様々な条件に適応させて、シート19の被膜作業を行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0050】
9 植付部
13 端部押えローラ
13a テーパ面
13b 頂部
14 条間押えローラ
19 シート
19a 端部
28 回動軸
32 切換機構(固定手段)
47 引張スプリング(付勢手段)
58 引張スプリング(付勢手段)
M 圃場面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の植付部(9)を備え、繰出されるシート(19)を圃場面(M)側に押圧する押えローラを最外端の植付部(9)のさらに外側に配置して端部押えローラ(13)とし、シート(19)端部(19a)が端部押えローラ(13)によって圃場面(M)側に押圧された状態で、圃場面(M)にシート(19)を被膜する移植機の植付作業機において、前記端部押えローラ(13)の下端が圃場面(M)よりも下方に位置した状態で該端部押えローラ(13)の上下高さを固定させることが可能な固定手段(32)を設けた移植機の植付作業機。
【請求項2】
左右方向一方側に向って押えローラ(13)の径を次第に小さくするテーパ面(13a)を端部押えローラ(13)に形成し、端部押えローラ(13)の径が最大となる頂部(13b)が植付条間の中央部に位置するように該押えローラ(13)を配置した請求項1に記載の移植機の植付作業機。
【請求項3】
前記端部押えローラ(13)が左右対称な形状になるように該端部押えローラ(13)の左右にテーパ面(13a)を形成した請求項2に記載の移植機の植付作業機。
【請求項4】
左右の最外端の植付部(9)の外側に前記端部押えローラ(13)をそれぞれ設け、該左右の端部押えローラ(13)の間における平面視植付部(9)の側方位置に条間押えローラ(14)を配置し、端部押ローラ(13)及び条間押えローラ(14)によってシート(19)を押圧する請求項1乃至3の何れか一に記載の移植機の植付作業機。
【請求項5】
前記条間押えローラ(14)及び複数の端部押えローラ(13)を単一の回動軸(28)を介して上下回動可能に支持し、条間押えローラ(14)及び複数の端部押えローラ(13)をそれぞれ下方側に付勢する付勢手段(47),(58)を設けた請求項4に記載の移植機の植付作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−193791(P2011−193791A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63744(P2010−63744)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】