説明

移植機

【課題】移植機に取付けられたコンベヤに、予備苗の通過を可能とする倒伏位置と、予備苗の移動を阻止する起立位置とに切換え可能なストッパを設ける。
【解決手段】移植機に取付けられたコンベヤ13を構成するフレーム28、28の前端には、連結部材29を介してストッパ40が取付けられている。ストッパ40は、コンベヤ13へ予備苗14を載せる際には倒伏位置とされ、予備苗14の載置が完了した後には起立位置へ切換えることで、予備苗14をスムースに補給でき、且つ予備苗14の移動を阻止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用田植機等の移植機に係り、詳しくは移植機における予備苗を搬送するコンベヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、予備苗を移植機に補給する搬送手段として、複数の回転ローラを設けたコンベヤを、走行機体の両側方に配設したものが公知となっている(特許文献1)。前記コンベヤでは、コンベヤを予備苗の搬送手段として用いる他に、コンベヤを予備苗台として用いることも可能とされている。コンベヤを予備苗台として用いる場合には、前方のコンベヤを折り畳み、コンベヤの中間部上面へ重ねることによって予備苗を載置することができる。
【0003】
【特許文献1】特開2005−176680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記コンベヤを予備苗の搬送手段、或いは予備苗台として用いる場合では、作業中の移植機の振動又は急停止等により、コンベヤの前端上面へ載置された予備苗が落下する場合があった。また、予備苗が落下することを防止するために、コンベヤ前端部にストッパを取付ける方策もとられていたが、該ストッパは予備苗をコンベヤ上へ補給する際には、返って邪魔となる場合があった。
【0005】
そこで、本発明は、コンベヤ前端部に切替え可能なストッパを設けることで、コンベヤを予備苗台として用いる場合、予備苗が落下することを防止すると共に、搬送手段として用いる場合、ストッパが予備苗の搬送の邪魔にならないようにした移植機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、請求項1に係る本発明は、走行機体(1)の後方に植付装置(2)を連結し、前記走行機体の側方に、該走行機体の前方から前記植付装置(2)に予備苗(14)を搬送し得るコンベヤ(13)を配置し、かつ該コンベヤ上に予備苗を載置して予備苗台としても用い得る移植機において、
前記コンベヤ(13)の供給側端に、予備苗(14)を供給可能な倒伏位置と、予備苗(14)の該コンベヤからの落下を阻止し得る起立位置とに切換え可能なストッパ(40)を設けた、
ことを特徴とする移植機にある。
【0007】
請求項2に係る本発明は、前記コンベヤ(13)は、
前記走行機体(1)に固定されている固定コンベヤ部(19)と、
該固定コンベヤ部(19)の前端部に回動自在に連結され、前記固定コンベヤ部と面一の転動面を構成する第1の位置(Y1)と、前記固定コンベヤ部(19)と所定高さ離れて平行でかつ前記転動面の裏面に予備苗(14)を載置する載置面を構成する第2の位置(X1)に切換え可能な可動コンベヤ部(21)と、を有し、
前記ストッパ(40)は、前記可動コンベヤ部(21)の先端側に配置されたL字状からなる、
請求項1記載の移植機にある。
【0008】
請求項3に係る本発明は、前記ストッパ(40)は、前記転動面と載置面との中間位置(45)に付勢されてなる、
請求項2記載の移植機にある。
【0009】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するものであるが、これにより特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る本発明によると、コンベヤを予備苗搬送として用いる場合、ストッパを倒伏位置にして、供給側端からコンベヤに予備苗を供給して搬送する際に上記ストッパが邪魔になることはなく、またコンベヤを予備苗台として用いる場合、ストッパを起立位置として、予備苗がコンベヤ供給側端から落下することを防止できる。
【0011】
請求項2に係る本発明によると、可動コンベヤ部を第1の位置にして、固定コンベヤ部と面一の転動面として用いる場合、L字状のストッパを転動面に対して倒伏位置として、予備苗の供給、搬送を支障なく行うことができ、可動コンベヤ部を第2の位置にして、載置面を予備苗台として用いる場合、上記ストッパを載置面に対して起立位置として、載置面からの予備苗の落下を防止できる。
【0012】
請求項3に係る本発明によると、ストッパが中間位置に付勢されているので、可動コンベヤ部を第1の位置にて用いる場合、可動コンベヤ部の転動面に予備苗を供給する際、ストッパは、予備苗に押されて自動的に倒伏位置となり、また可動コンベヤ部を第2の位置にて用いる場合、可動コンベヤ部の載置面に予備苗を載置する際、ストッパは、予備苗に押されて自動的に起立位置となり、ストッパの切換え忘れ等により予備苗落下等を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に基づき本発明の好ましい実施の形態を説明する。図1、図2において、移植機は、走行機体1の後方に植付装置2が昇降自在に連結されており、植付装置2の上部に設けられた苗載せ台3にマット状の苗を載置して、走行機体1を走行させながら植付装置2を作動させることによって、圃場に苗を植え付けることができる。
【0014】
走行機体1は、前方に搭載されたエンジンを覆うボンネット4を有しており、ボンネット4の左右側方にはフロントステップ6、6が張出していると共に、ボンネット4の後方には、座席7を備えた運転席8が設けられている(図2参照)。運転席8の前方にはステアリングハンドル5が立設され、また、運転席8の床面は、フロントステップ6から繋がるステップ9によって形成されている。座席7の下方を覆う機体カバー11の左右両側後方には、前記ステップ9より一段高く平坦に形成された苗供給用ステップ12、12が設けられている。
【0015】
ボンネット4の左右側方である機体側部(フロントステップ6の外側位置)には、苗載せ台3に予備苗14を補給するためのコンベヤ13、13が取り付けられている。予備苗14はマット苗16が苗皿17上に載置されている。
【0016】
左右のコンベヤ13、13は、それぞれ走行機体1側から上方に向かって突出するステー20を介して固定された固定コンベヤ19と、該固定コンベヤ19の前端に連結されて走行機体1の前方へ延出する可動コンベヤ21と、固定コンベヤ19の後端に連結されて走行機体1の後方へ延出する後コンベヤ22とから構成されている。
【0017】
上記コンベヤ13は、各コンベヤ19、21、22が側面視で一直線状に展開される第1の位置Y1(図1及び図3参照)と、可動コンベヤ21が固定コンベヤ19の上方で予備苗を収容できる空間を残して平行に折曲げられた第2の位置X1(図1及び図4参照)との2態様を有する折畳み構造となっている。この場合に、第1の位置Y1の上面は、予備苗14を搬送する転動面とされ、第2の位置X2の上面、すなわち第1に位置にあった可動コンベヤ21の転動面に対する裏面側は、予備苗14を搭載する載置面とされる。
【0018】
コンベヤ13は前高後低の傾斜姿勢となっており、可動コンベヤ21の前端は畦から予備苗を供給し易い高さとなっている。また、後コンベヤ22は、後端が植付装置2の苗載せ台3に近接するように、苗供給用ステップ12の上方近傍に位置している。
【0019】
これらコンベヤ13では、可動コンベヤ21の後端側に設けられた可動コンベヤブラケット23と、固定コンベヤ19の前端側に設けられた固定コンベヤ前ブラケット24とが、ピン結合により回動自在とされており、同様に、後コンベヤ22の前端側に設けられた後コンベヤブラケット26と、固定コンベヤ19の後端側に設けられた固定コンベヤ後ブラケット27とが、ピン結合により回動自在とされている。
【0020】
各コンベヤ19、21、22は、図5(a)及び(b)に可動コンベヤ21の予備苗の供給側端である前端部を拡大した側面図と平面図を示すとおり、それぞれ上下及び左右対称な形状である。
【0021】
各コンベヤ19、21、22は、一対のフレーム28、28と、フレーム28、28の間に亘る複数のローラ軸31、連結部材29と、本発明に係るストッパ40により構成される。
【0022】
フレーム28の長手方向を通る中心線C−C上には、ローラ軸31が挿入される際の透孔となるローラ取付孔32と、連結部材29、及びストッパ40を取付ける連結部材取付孔33とが複数設けられている。また、フレーム28の側面には、重量軽減のための肉抜き34が形成されている。
【0023】
ローラ軸31は、図5(b)に対称軸D−Dを境界として片側を示すとおり、両端側を細径とする丸棒であり、中央の大径部分が苗箱17に接するローラ31aをなし、両端部がフレーム28のローラ取付孔32に回動自在に挿入される軸部31bとなっている。但し、この場合に軸部31bに対してローラ31aを回動自在として、軸部31bをローラ取付孔32へ嵌合する構造とすることもできる。
【0024】
連結部材29は、ローラ31aが有する直径よりも小さな径を有するパイプ材等であり、両端部にはフレーム28への取付け用のフランジ29aが固着されている(図2及び図5参照)。この連結部材29は、フレーム28に形成された連結部材取付孔33より挿入されたボルトナット42、42aによって固定されている。
【0025】
これらローラ軸31は、予備苗14を少なくとも2箇所で支持できる間隔を有してフレーム28の長手方向に並列して配列されており、また、連結部材29はフレーム28の前後端、及びローラ軸31の間に取付けられている。
【0026】
続いて、本発明に係るストッパ40について説明する。ストッパ40は、フレーム28の間で、予備苗の供給側端である可動コンベヤ21の前端に、連結部材29を介して取付けられている。
【0027】
ストッパ40は、図5(a)に示すとおり、直角に折曲した略々同じ長さの平板部片42a,42bからなる断面L字形状の板部材42を有しており、該板部材42の両端部における内角側には矩形状の台座41,41が固着されている。これら台座41には丸孔41aが形成されており、該丸孔には、ゴム製のブッシュ43がその外周面に形成された凹溝43aが嵌合することにより装着されている。該ブッシュ43には軸孔43bが形成されている。前記フレーム28には、ボルト42がナット42bにより取付けられており、該ナット42bの先端部に前記ブッシュ43の軸孔43bが嵌挿している。これにより、ストッパ40は、ボルト42により回転自在に支持されると共に、前記ブッシュ43の摩擦力により、所定回転位置に保持される。
【0028】
このように、ボルト先端42aに被嵌されたブッシュ43により、ストッパ40はボルト42を中心として回動することができ、ストッパ40の片側である平板部片40aの先縁が連結部材29へ当接した倒伏位置(図5(a)の実線)と、ストッパ40の他側である平板部片40bが連結部材29へ当接する起立位置40´(図5(a)の仮想線)の間を揺動することができる。
【0029】
上述の実施例では、ストッパ40の構造として断面形状が略L形を例に説明したが、断面形状を略T形とすることもできる。T形のストッパとするには、L形ストッパ40の平板部片40bどうしを重ね合わせることによって形成することができる(図7参照)。
【0030】
さらに、ストッパ40の他の実施例として、図6(a)、(b)に示すように、上述のストッパ40に対して、連結部材29へ巻き回したバネ44により付勢することで、ストッパ40の平板部片40a、40bが連結部材29へ当接しない中間位置45で保持する構造とすることができる。
【0031】
バネ44は、一端44aをストッパ40の平板部片40aの内面へ当接させてボルト先端42aへ巻き廻した後、中間部44bを連結部材29の周壁へ当接しながらUターンさせて、再びボルト先端42aへ巻き廻し、バネ44の他端44cをストッパ40の平板部片40bの内面へ当接するように配置されている。これにより、図6(a)に実線で示すように、ストッパ40は、バネ44の付勢を受けて連結部材29から等しく離間した中間位置45で保持されている。
【0032】
次に、以上のように構成されたコンベヤ13を有する移植機の作用について説明する。
【0033】
圃場で植付作業を行う移植機では、植付が進行して苗載せ台3に載置された予備苗14が少なくなると、畦まで自走して、待機するトラック等から予備苗の補充を受ける必要がある。この場合に、移植機とトラック等までの距離が離れている場合には、コンベヤ13の固定コンベヤ19と可動コンベヤ21を第1の位置Y1とすることで、トラック等へコンベヤ13の前端を近づけることができ、予備苗14の供給を受け易くすることができる。
【0034】
トラック等に搭載されている予備苗は、可動コンベヤ21の前端である供給側端より可動コンベヤ21の転動面13aへ載せられると、コンベヤ13が有する傾斜に従って後方へ滑りながら移行して、順次に転動面13a上に蓄積されてゆく。この際に、可動コンベヤ13の前端にあるストッパ40は、図5(a)、又は図7(a)に示される倒伏位置とすることにより、予備苗14の搭載に邪魔となることはない。次に、コンベヤ13上への予備苗の搭載が完了すると、ストッパ40を起立位置(図5中の仮想線)へ回動操作することで、予備苗14が前方へ移動することを阻止でき、移植機を急停止等させても、コンベヤ13上から予備苗14が落下することを防ぐことができる。
【0035】
また、この場合のストッパ40にバネ44を付勢させた場合では、図6の実線で示す中間位置45にあるストッパ40は、可動コンベヤ13の前端に載せられた予備苗14の端部が接触することで、バネ力に抗して倒伏位置となり、予備苗14が通過するとバネ44の付勢力によって元の中間位置45に復帰することができる。また逆に、コンベヤ13の転動面に搭載された予備苗14がコンベヤ13の前方へ移動しようとする場合には、ストッパ40の平板部片40aを予備苗14の端部で押し上げることにより、ストッパ40を起立位置とすることとなり、予備苗14が前方へ移行することを阻止できる。
【0036】
続いて、コンベヤ13の可動コンベヤ21を予備苗台として使用する場合の作用について説明する。
【0037】
圃場が狭小であり、且つ移植機を畦へ近づけることができる場合では、可動コンベヤ21の前方を持上げ、固定コンベヤ19上へ折り畳んだ第2の位置X1とすることで、移植機をコンパクトにして回行性を確保することができる。
【0038】
第2の位置X1にある移植機では、固定コンベヤ13と予備苗台へ予備苗14を載置することができる。固定コンベヤ13の転動面へは、可動コンベヤ21と連結されていた位置より予備苗14を載せることにより、予備苗14はコンベヤ13が有する傾斜に従って後方へ滑りながら移動してゆき、順次に転動面13a上に蓄積される。同様に、折り畳まれて予備苗台とされた可動コンベヤ21の載置面、すなわち前記転動面の裏面側へは、可動コンベヤ21の折り曲げ位置から予備苗14を搭載することができる。ただし、本可動コンベヤ21を予備苗台として使用するには、予めストッパ40を載置面側へ起立位置とする必要がある(図5及び図7)。しかし、図6に示すバネ44を付勢させたストッパ40とする場合では、中間位置45にあるストッパ40は、予備苗14が接触することで自動的に起立位置となり、予備苗14が後方へ移動することを止めることができるので、ストッパ40の操作は不要となる。
【0039】
以上のように、コンベヤ13にストッパ40を設けることによれば、コンベヤを予備苗搬送、及び予備苗台のいずれとして用いる場合であっても、予備苗14がコンベヤ13の供給側端から落下することを防止でき、また、予備苗の供給、搬送を支障なく行うことができる。さらに、ストッパ40にバネ44を付勢することで、ストッパの切換え忘れ等により予備苗落下を防止することができる。
【0040】
最後に、上記に示した本発明による実施例は、移植機に使用することができるコンベヤの最良の形態を一実施例として記載したものであり、本発明の思想は広く圃場にて使用される作業機へ転用可能であることを付記する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係るコンベヤを採用した移植機の側面図である。
【図2】本発明に係るコンベヤを採用した移植機の平面図である。
【図3】本発明に係るコンベヤが展開された第1の位置の側面図である。
【図4】本発明に係るコンベヤが折曲げられた第2の位置の側面図である。
【図5】(a)は可動コンベヤの先端を拡大した側面図、(b)は可動コンベヤの先端を拡大した平面図である。
【図6】(a)は可動コンベヤの先端を拡大した側面図、(b)は可動コンベヤの先端を拡大した平面図である。
【図7】(a)は可動コンベヤの先端を拡大した側面図、(b)は可動コンベヤの先端を拡大した平面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 走行機体
2 植付装置
13 コンベヤ
14 予備苗
19 固定コンベヤ
21 可動コンベヤ
22 後コンベヤ
28 フレーム
29 連結部材
31 ローラ軸
40 ストッパ
42a ボルト先端
43 ブッシュ
44 バネ
Y1 第1の位置
X1 第2の位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の後方に植付装置を連結し、前記走行機体の側方に、該走行機体の前方から前記植付装置に予備苗を搬送し得るコンベヤを配置し、かつ該コンベヤ上に予備苗を載置して予備苗台としても用い得る移植機において、
前記コンベヤの供給側端に、予備苗を供給可能な倒伏位置と、予備苗の該コンベヤからの落下を阻止し得る起立位置とに切換え可能なストッパを設けた、
ことを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記コンベヤは、
前記走行機体に固定されている固定コンベヤ部と、
該固定コンベヤ部の前端部に回動自在に連結され、前記固定コンベヤ部と面一の転動面を構成する第1の位置と、前記固定コンベヤ部と所定高さ離れて平行でかつ前記転動面の裏面に予備苗を載置する載置面を構成する第2の位置に切換え可能な可動コンベヤ部と、を有し、
前記ストッパは、前記可動コンベヤ部の先端側に配置されたL字状からなる、
請求項1記載の移植機。
【請求項3】
前記ストッパは、前記転動面と載置面との中間位置に付勢されてなる、
請求項2記載の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−159425(P2007−159425A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−356420(P2005−356420)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】