説明

移植機

【課題】トレイに載置された予備苗14を植付作業機2に供給した後の空のトレイを回収する簡単な構成の収納部を備えた移植機を提供することを課題としている。
【解決手段】トレイに載置された予備苗14を植付作業機2に供給した後の空のトレイ27の収納部28を、収納部28における空のトレイ27を投入する投入口33の向きが、走行機体1上の作業者向きと、走行機体1外の作業補助者向きとに変更可能となるように取り付けた。走行機体1の側部に設けた、走行機体1上に畦際から、トレイに載置された予備苗14を補給する予備苗移送装置13を、可動苗載せ台21,22と固定苗載せ台19とから構成し、可動苗載せ台21,22と固定苗載せ台19とが側面視で一直線状に展開される展開姿勢Aと、可動苗載せ台21,22を固定苗載せ台19側に折り畳んだ折畳み姿勢Bとに姿勢切換可能な折畳み式とし、収納部28を固定苗載せ台19の前端部分に取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予備苗移送装置を備えた乗用田植機等の移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
運転席を備えた走行機体の後方に植付作業機を連結し、走行機体の側部に、走行機体上に畦際から、トレイに載置された予備苗を補給する予備苗移送装置を設け、予備苗を植付作業機に供給した後の空のトレイの収納部を設け、該収納部が空のトレイを投入する投入部を備えた移植機が公知となっている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−73516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記収納部は投入部とストック部とが分離した構成となっており、収納部が大型化し、機構が複雑であり、また走行機体上の作業者及び走行機体外の作業補助者によるトレイの収納と回収を円滑に行うことが困難であるという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための本発明の移植機は、運転席8を備えた走行機体1の後方に植付作業機2を連結し、走行機体1の側部に、走行機体1上に畦際から、トレイに載置された予備苗14を補給する予備苗移送装置13を設け、予備苗14を植付作業機2に供給した後の空のトレイ27の収納部28を設け、該収納部28が空のトレイ27を投入する投入口33を備えた移植機において、投入口33の向きが、走行機体1上の作業者向きと、走行機体1外の作業補助者向きとに変更可能となるように、収納部28を取り付けたことを第1の特徴としている。
【0005】
予備苗移送装置13が、走行機体1側に支持される固定苗載せ台19と、該固定苗載せ台19に連結される可動苗載せ台21,22とからなり、可動苗載せ台21,22と固定苗載せ台19とが側面視で一直線状に展開される展開姿勢Aと、可動苗載せ台21,22を固定苗載せ台19側に折り畳んだ折畳み姿勢Bとに姿勢切換可能な折畳み式であり、収納部28が固定苗載せ台19の前端部分に取り付けられたことを第2の特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
以上のように構成される本発明の構造によると、投入口を作業者向きとすることによって、予備苗を植付作業機に供給した後、作業者は空のトレイを収納部に容易に収納することができ、投入口を作業補助者向きとすることによって、収納部に収納された空のトレイを、作業補助者が容易に取り出すことができる。これにより収納部を簡単に構成することができるとともに、予備苗の供給作業を容易に行うことができるという効果がある。
【0007】
予備苗移送装置を、走行機体側に支持される固定苗載せ台と、該固定苗載せ台に連結される可動苗載せ台とから構成し、可動苗載せ台と固定苗載せ台とが側面視で一直線状に展開される展開姿勢と、可動苗載せ台を固定苗載せ台側に折り畳んだ折畳み姿勢とに姿勢切換可能な折畳み式とした場合に、収納部を固定苗載せ台の前端部分に取り付けることによって、収納部が予備苗移送装置の折り畳み作業の妨げにならず、且つ走行機体の前端の近傍に取り付けられ、作業者及び作業補助者は、空のトレイの収納や回収作業を容易に行うことができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は本発明を採用した移植機である乗用田植機の側面図である。該乗用田植機は従来同様、走行機体1の後方に植付作業機2が上下昇降自在に連結されている。植付作業機2に設けられた苗載せ台3にマット苗を載置し、走行機体1を走行させながら植付作業機2の植付部5を作動させることによって、植付部5が苗載せ台3のマット苗から苗を掻き取り、圃場に植え付け、苗の植付作業を行う。
【0009】
走行機体1の前方にはボンネット4が設けられている。ボンネット4の後方には、左右の中央に位置する座席7を備えた運転席8が設けられている。座席7の前方にはステアリングハンドル10が設けられている。ボンネット4の左右側方にはフロントステップ6が設けられている。運転席ステップ9は運転席8の床面を構成し、座席7の前方から側方に広がる。
【0010】
座席7の下方をカバーする機体カバー11には、上記運転席ステップ9より一段高く平坦な苗供給用ステップ12が座席7の左右両側に位置して形成されている。作業者はフロントステップ6と苗供給用ステップ12との間を運転席ステップ9を通過して自由に移動することができる。フロントステップ6と運転席ステップ9と苗供給用ステップ12とによって、走行機体1の側部(座席7より側方)に、作業者が走行機体1の側部前方から後方に移動する移動通路を形成している。
【0011】
ボンネット4の左右側方の機体側部(フロントステップ6の外側位置)には、苗載せ台3に補給する予備のマット苗(予備苗)14を畦際から移送する予備苗移送装置13が取り付けられている。予備苗14は、スクレーパ18を内装する苗箱17をトレイとして、スクレーパ18の上に載置されて苗箱17に収容されている。
【0012】
左右の各予備苗移送装置13はそれぞれ、走行機体1側に固定される固定苗台19と、固定苗台19の前方に位置する第1苗台21と、固定苗台19の後方に位置する第2苗台22とから構成されている。各苗台19,21,22は、それぞれ左右の側板23が連結部材によって連結され、左右の側板23の間にローラが回転自在に取り付けられた構造となっている。
【0013】
第1苗台21と第2苗台22は、固定苗台19に対して回動可能に連結されている。固定苗台19が走行機体1側から立設されるステー24に固定されることによって、両予備苗移送装置13が、走行機体1に取り付け支持されている。
【0014】
予備苗移送装置13は、図1に示されるように、各苗台19,21,22が側面視で一直線状に展開される展開姿勢Aと、図2に示されるように、第1苗台21及び第2苗台22が固定苗台19の上方に折畳まれた折畳み状態となる折畳み姿勢Bとに姿勢切換可能な折畳み式となっている。
【0015】
展開姿勢Aの予備苗移送装置13は前高後低の傾斜姿勢となっている。展開姿勢Aにおいて第1苗台21は、前端が走行機体1の前端より前方に突出する。第2苗台22は、後端が植付作業機2の苗載せ台3に近接するように、苗供給用ステップ12の上方近傍に位置する。
【0016】
展開姿勢Aの予備苗載せ台13において、第1苗台21の前端から予備苗14をローラの上に載置すると、予備苗14を収容する苗箱17がローラに接し、予備苗載せ台13の傾斜によって、予備苗14が第2苗台22の後端に向かって自重により順次移動する。
【0017】
予備苗移送装置13は、展開姿勢Aでローラコンベア状となり、第1苗台21の前端を畦際に位置させ、畦際から第1苗台21に予備苗14を補給することで、予備苗載せ台13に複数の予備苗14を連続的に補給することができる。予備苗移送装置13は、前後長さいっぱいに複数の予備苗14を予め載置してストックすることができる。
【0018】
走行機体1上の作業者は苗供給用ステップ12に立ち、第2苗台22の後端側の予備苗14を苗載せ台3に載せることによって苗載せ台3への苗の補給を容易に行うことができる。
【0019】
第2苗台22の最後端の予備苗14からの苗載せ台3への苗の補給後は、空となった予備苗14のトレイ(スクレーパ18を内装した苗箱17を第2苗台22から下ろすと、前方の予備苗14が自重によりローラ上を移動し、苗載せ台3への次の補給候補となり、苗載せ台3に順次連続的に苗を補給することができる。
【0020】
第2苗台22の高さは、苗供給用ステップ12に立つ作業者が、最後端の予備苗14を容易にとることができるように、運転席8内のステアリングハンドル10の高さ位置程度に、ある程度高く設定されている。これにより作業者はほとんど屈むことなく容易に予備苗14を取り、苗載せ台3に補給することが可能となっている。また畦際からの予備苗14の補給も容易となり、作業者の作業姿勢が良くなり疲労が少なくなる。
【0021】
なお第2苗台22の後端が上記のように比較的高位置となっているため、相対的に第1苗台21の前端の位置が高くなっている。このため予備苗移送装置13が展開姿勢Aであり、第1苗台21の下方に施肥用の肥料タンクが配置されている場合でも、肥料タンクに上面側の供給口からペースト肥料等の肥料を容易に供給することができる。その他トラック等から直接予備苗14を第1苗台21の前端から予備苗移送装置13に補給することも可能となる。
【0022】
本予備苗移送装置13は、第1苗台21のみを、固定苗台19の上方に折り畳んだ状態に展開することもできる。第1苗台21のみを折畳み状態とすることによって、固定苗台19の前端から予備苗14を予備苗移送装置13に供給することができる。畦際から走行機体1までが比較的近い場合、予備苗14の補給を容易に行うことができる。
【0023】
なお折畳み状態の第1苗台21の上部(展開状態での第1苗台21の下部)に予備苗14を載置し、第1苗台21を通常の補助苗載せ台として使用することもできる。第1苗台21を折畳み状態とすると、ボンネット4の前方に予備苗移送装置13が突出しないため、走行機体1の回行性は高い。
【0024】
運転席8に対する乗降時には、予備苗移送装置13を折畳み姿勢Bとしたり、第2苗台22のみを、固定苗台19の上方に折り畳んだ状態とすることによって、少なくとも第2苗台22を折畳み状態とすることが望ましい。固定苗台19がボンネット4の側方に位置しており、第2苗台22を折畳み状態とすると、運転席8の側方の空間に予備苗移送装置13が突出しないため作業者の乗降は容易となる。
【0025】
固定苗台19の前端には、取付ブラケット26を介して上記空のトレイ27を収納する収納ボックス28が取り付けられている。該収納ボックス28は、図3(a)に示されるように、平面視で略U字状をなす投入口フレーム29と、図3(c)に示されるように側面視で略U字状をなす支持フレーム31と、ブラケット32とからなる。
【0026】
投入口フレーム29は両端がブラケット32に固定されている。支持フレーム31はブラケット32と投入口フレーム29とに固定され、図3(a),(b)に示されるように、ブラケット32と投入口フレーム29とに亘って、前後に配置されている。投入口フレーム29とブラケット32により開口した投入口33が形成されている。投入口33は、図1に示されるように、空のトレイ27(苗箱17)を縦向きにして前後方向に投入することができるように、苗箱17の幅より若干大きい前後長を備えている。
【0027】
上記取付ブラケット26は、図4に示されるように、2段に屈曲又は湾曲したベース板34からなる。該ベース板34の上端部分には、固定苗台19への取り付け用の取付孔36が複数設けられている。ベース板34の下端部分に、ボルト37を介して収納ボックス28のブラケット32が回動可能に軸支されている。
【0028】
ただしベース板34とブラケットとの間には、ボルト37に外嵌されてサラバネ38が設けられている。上記ボルト37はロックナット39によって固定されている。サラバネ38によってブラケット32を回動させる際の回動抵抗が与えられる。ブラケット32を回動させる場合は、この回動抵抗に抗してブラケット32の回動操作を行う必要がある。ブラケット32を回動操作しない状態では、ブラケット32は上記回動抵抗によって所定の位置(回動角度)に位置決めされている。
【0029】
なおブラケット32には、上記ボルト37の上方位置にピン41が取り付けられている。該ピン41はベース板34に設けられた長孔42に挿入されている。長孔42はブラケット32を回動させた場合のピン41の回動軌跡に沿って形成されている。ブラケット32の回動時にはピン41は長孔42に沿って移動し、ブラケット32の回動をガイドする。
【0030】
固定苗台19の側板23には連結部材やローラを支持するための孔が複数設けられている。ベース板34の所定の取付孔36にボルト43を挿入し、該ボルト43を固定苗台19の側板23の孔を利用して側板23側に固定することによって、該ボルト43により取付ブラケット26が固定苗台19の側方に固定され、投入口33が上方側を向いた状態で収納ボックス28が固定苗台19に取り付けられる。
【0031】
収納ボックス28は上記ボルト37を支点に回動が可能となる。収納ボックス28を回動させることによって、図1に示されるように、投入口33が走行機体1上の作業者側、つまり斜め上方の座席7側を向く収納姿勢Yと、図2,図5に示されるように、投入口33が走行機体1の前方に位置する作業補助者側、つまり前方斜め上方を向く回収姿勢Xとの間で姿勢変更が可能となる。
【0032】
図1に示されるように、収納ボックス28を収納姿勢Yとして、投入口33から空のトレイ27を投入すると、空のトレイ27は、苗箱17の下端が支持フレーム31に支持されて、収納ボックス28内に収納される。空のトレイ27の端部は、投入口33より突出する。これにより走行機体1上の作業者は、苗載せ台3への予備苗14の補給に際して、空のトレイ27を第2苗台22から容易に下ろすことができる。
【0033】
一方図2,図5に示されるように、収納ボックス28を回収姿勢Xとすることによって、収納ボックス28に収納された空のトレイ27を、走行機体1の前方に位置する作業補助者が、走行機体1の前方から容易に回収することができる。これにより予備苗14の補給作業を容易且つ円滑に行うことができる。
【0034】
上記のように固定苗台19の前端部分に収納ボックス28が取り付けられているため、収納ボックス28は運転席8と走行機体1の前端との間に位置し、作業者と走行機体1の前方に位置している作業補助者との間に配置される。このため空のトレイ27の収納及び回収を前後から容易に行うことができる。
【0035】
また予備苗移送装置13を折畳み姿勢Bに切り換える際に、収納ボックス28は固定状態のままとなるため、収納ボックス28が予備苗移送装置13の折畳み作業を妨げることはない。
【0036】
なお図6に示されるように、収納ボックス28は、固定苗台19の側板23の孔を利用することによって、固定苗台19の前後様々な位置に取り付けることができる。収納ボックス28(取付ブラケット26)の取り付けに際して、取付ブラケット26の所定の取付孔36を側板23の孔に合わせて選択して使用する必要がある。
【0037】
本実施形態においては、予備苗14のトレイとしてスクレーパ18が収容された苗箱17を使用した例について説明したが、例えばトレイとして苗箱17のみや、スクレーパ18のみを使用する場合もある。この場合は、収納ボックス28に苗箱17のみやスクレーパ18のみを収納する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】予備苗移送装置が展開姿勢、収納ボックスが収納姿勢となった乗用田植機の側面図である。
【図2】予備苗移送装置が折畳み姿勢、収納ボックスが回収姿勢となった乗用田植機の側面図である。
【図3】(a)は収納ボックスの平面図、(b)は収納ボックスの正面図、(c)は収納ボックスの側面図である。
【図4】(a)は、取付ブラケットと収納ボックスのブラケットとを示す側面図、(b)は、取付ブラケットと収納ボックスのブラケットとを示す正面図である。
【図5】予備苗移送装置が展開姿勢、収納ボックスが回収姿勢となった乗用田植機の側面図である。
【図6】収納ボックスの取り付け状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 走行機体
2 植付作業機
8 運転席
13 予備苗移送装置
14 予備苗
19 固定苗台(固定苗載せ台)
21 可動苗台(可動苗載せ台)
22 可動苗台(可動苗載せ台)
27 空のトレイ
28 収納部
33 投入口
A 展開姿勢
B 折畳み姿勢

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席(8)を備えた走行機体(1)の後方に植付作業機(2)を連結し、走行機体(1)の側部に、走行機体(1)上に畦際から、トレイに載置された予備苗(14)を補給する予備苗移送装置(13)を設け、予備苗(14)を植付作業機(2)に供給した後の空のトレイ(27)の収納部(28)を設け、該収納部(28)が空のトレイ(27)を投入する投入口(33)を備えた移植機において、投入口(33)の向きが、走行機体(1)上の作業者向きと、走行機体(1)外の作業補助者向きとに変更可能となるように、収納部(28)を取り付けた移植機。
【請求項2】
予備苗移送装置(13)が、走行機体(1)側に支持される固定苗載せ台(19)と、該固定苗載せ台(19)に連結される可動苗載せ台(21),(22)とからなり、可動苗載せ台(21),(22)と固定苗載せ台(19)とが側面視で一直線状に展開される展開姿勢(A)と、可動苗載せ台(21),(22)を固定苗載せ台(19)側に折り畳んだ折畳み姿勢(B)とに姿勢切換可能な折畳み式であり、収納部(28)が固定苗載せ台(19)の前端部分に取り付けられた請求項1の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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