説明

移植機

【課題】乗用型田植機等の植付作業機に備える植付装置を保護するバンパーを、植付作業機を非接地姿勢に支持するスタンドとして兼用できるように構成すると共に、バンパーが植付装置を保護するガード姿勢から植付作業機のスタンドとして作用するスタンド姿勢への姿勢変更、またはその逆の姿勢変更を簡単な操作で行えるようにする。
【解決手段】バンパー16を、平面視で前方に開口する略コの字状に形成すると共に、その左右開口端を植付作業機3に上下回動自在に装着し、バンパー16を上向きに回動させたガード姿勢Aでは、バンパー16は植付装置11を保護し、バンパー16を下向きに回動させたスタンド姿勢Bでは、バンパー16は植付作業機3を非接地姿勢に支持するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用型田植機等の移植機において、機体後部に連結される植付作業機に関し、更に詳しくは、植付作業機を保護するバンパーの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用型田植機等の移植機においては、エプロン上を左右往復動する苗載せ台と、この苗載せ台から苗を掻取って圃場に移植する植付装置と、圃場面を整地する整地フロートを備えた植付作業機を機体後部に昇降自在に連結すると共に、前記エプロンの左右両端部近傍に、上端から下端側に向けて後方から回り込んで前方へ延びる接地部を形成した棒状スタンドを植付作業機側の支持部材を介して回動自在に支持し、当該棒状スタンドを、その接地部が下降位置で接地して植付作業機を非接地姿勢に保持するスタンド姿勢と、略水平位置でエプロンの左右両端部の外側近傍に位置するガード姿勢と、立上げ位置でエプロンの左右両端部の上方に位置する格納姿勢とに三段階の姿勢変更を行えるように構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実公平6−2497号公報(第2−3頁、図1、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上述した特許文献1の如く植付作業機を非接地姿勢に保持する棒状スタンドがエプロンの左右両端部をガードするバンパーとしてのエプロンガードを兼ねるものでは、当該棒状スタンドが植付作業機を非接地姿勢に保持するスタンド姿勢からエプロンの左右両端部をガードするガード姿勢への姿勢変更、または逆に前記ガード姿勢からスタンド姿勢へと姿勢変更する際は、左右の棒状スタンドをそれぞれ姿勢変更しなければならず面倒であった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、エプロン上を左右往復動する苗載せ台と、該苗載せ台から苗を掻取って圃場に移植する植付装置と、圃場面を整地する整地フロートを備えた植付作業機において、植付装置を保護するバンパーを設けるにあたり、このバンパーを、平面視で前方に開口する略コの字状に形成すると共に、その左右開口端を植付作業機に上下回動自在に装着し、バンパーを上向きに回動させたガード姿勢では、バンパーは植付装置を保護し、バンパーを下向きに回動させたスタンド姿勢では、バンパーは植付作業機を非接地姿勢に支持するように構成したことを第1の特徴としている。
そして、前記バンパーが、ガード姿勢時における障害物との接触による変位によって植付作業機後方の障害物を検知する障害物検知体として作用するように構成したことを第2の特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明によれば、植付装置を保護するバンパーを設けるにあたり、このバンパーを、平面視で前方に開口する略コの字状に形成すると共に、その左右開口端を植付作業機に上下回動自在に装着し、バンパーを上向きに回動させたガード姿勢では、バンパーは植付装置を保護し、バンパーを下向きに回動させたスタンド姿勢では、バンパーは植付作業機を非接地姿勢に支持するように構成したことによって、前記バンパーにより植付装置を保護するだけでなく、バンパーを上向きに回動させたガード姿勢からバンパーを下向きに回動させたスタンド姿勢への姿勢変更、または逆に前記スタンド姿勢からガード姿勢への姿勢変更をバンパーの下向きの回動、あるいは上向きの回動操作のみで簡単に行えるようになる。即ち、従来のように左右の棒状スタンドをそれぞれガード姿勢からスタンド姿勢、またはスタンド姿勢からガード姿勢に姿勢変更するといった煩わしさを解消することができる。
そして、請求項2の発明によれば、前記バンパーが、ガード姿勢時における障害物との接触による変位によって植付作業機後方の障害物を検知する障害物検知体として作用するように構成したことによって、極めて簡単な構造により、畦畔での移植作業や車庫等への格納時に植付作業機の後方に存在する障害物を容易に検出して、植付装置や整地フロートが障害物との衝突によって損傷することを未然に防止できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、移植機である乗用型田植機の走行機体1の後部に備える昇降リンク機構2を介して連結した植付作業機3の側面図であって、昇降リンク機構2の後部には、リンクホルダ4が取り付けてあり、このリンクホルダ4に備える図示しないローリング軸を介して、植付作業機3をローリング自在に支持する角パイプ状の植付フレーム5を横設している。そして、植付フレーム5に立設した左右一対の苗載台支持フレーム6L,6Rによって、植付け用のマット苗を載置する苗載せ台7を前高後低状の傾斜姿勢で左右に往復移動自在に支持している。
【0007】
また、走行機体1側の図示しない植付PTO軸から出力される植付動力は、植付フレーム5の左右略中間部に設けた入力ケース8を介して左右に分岐された後、植付フレーム5の左右方向に所定間隔を存して後方に延設した複数の植付伝動ケース9に伝達され、更にこの植付伝動ケース9内の図示しないチェン伝動機構を介して、当該植付伝動ケース9の後端部に組付けた植付装置(ロータリケース)11に備える移植杆12,12が回転駆動するようになっている。即ち、植付装置11には、自らの回転に伴って移植杆12,12を所定の軌跡に沿って回転運動させることができる図示しない遊星ギヤ機構を内装しており、それによって苗載せ台7上に載置したマット苗から一株分の苗を掻取って連続的に圃場に移植することができるようになっている。
【0008】
そして、植付伝動ケース9上部の前後方向略中間位置には、苗載せ台7に載置したマット苗の下部を受けるエプロン13を横設してあり、苗載せ台7は、図示しない横送り装置を介してエプロン13上を左右往復動するようになっている。また、植付伝動ケース9の下方には、圃場面を整地する整地フロート14を上下揺動自在に設けている。
【0009】
また、図2は、植付作業機3の要部平面図であって、植付フレーム5の左右両端には、支持ステー15L,15Rが固設してあり、この支持ステー15L,15Rを介してエプロン13の左右両端部と各植付装置11とを一体的に保護することができるバンパー16を設けている。
【0010】
更に詳しくは、上述したバンパー16を設けるにあたり、このバンパー16を、平面視で前方に開口する略コの字状に形成すると共に、その左右開口端(基端部)を植付フレーム5の左右両端に固設した支持ステー15L,15Rに支持して、当該バンパー16を図1に実線と二点鎖線で示す如く上下回動自在に装着している。
【0011】
図3は、バンパー16を上向きに回動させた略水平姿勢状態、即ちバンパー16がエプロン13の左右両端部と植付装置11とを一体的に保護するガード姿勢Aにある時の当該バンパー16の左右開口端を示す側面図であって、この側面図に基づいてバンパー16の植付作業機3への装着構造を説明する。
【0012】
丸パイプからなるバンパー16の左右開口端は、支持ステー15L,15Rの外端部に設けた角パイプからなる支持部材15aに内嵌した状態で支持されており、バンパー16の開口端近傍に穿設した長孔16aと、この長孔16aに対応して支持部材15aに穿設した回動支点孔Hとに挿通する連結ピン17を介して、当該バンパー16を上下回動自在に装着している。
【0013】
そして、支持部材15aの上部に固設した板材18に設けたピン19と、図3におけるバンパー16の開口端近傍の下側に固設したピン21との間には、引張スプリング22を掛止してあり、この引張スプリング22が、バンパー16を上下回動させる際に回動支点である連結ピン17を支点越えすると、バンパー16を上向きに回動させた略水平姿勢状態にしたガード姿勢A(図1〜図3、図6参照)、またはバンパー16を下向きに回動させた略垂直姿勢状態にしたスタンド姿勢B(図1、図4、図5参照)に付勢する。
【0014】
また、バンパー16の開口端近傍には、圧縮スプリング23を内装してある。この圧縮スプリング23は、上述した連結ピン17と該連結ピン17よりもバンパー16の先端側に固設した位置決めピン24の間に設けてあり、詳細は後述するように、バンパー16を植付作業機3を非接地姿勢に保持するスタンドとして作用させる際や、植付作業機3の後方にある障害物を検知すべく障害物検知体として兼用する際の衝撃吸収手段として設けている。尚、圧縮スプリング23は、上述した引張スプリング22の付勢力の影響を受けないバネ強さに設定してある。
【0015】
そして、図4は、略水平姿勢状態のガード姿勢Aにあるバンパー16を下向きに回動させた略垂直姿勢状態のスタンド姿勢B、即ちバンパー16が植付作業機3を非接地姿勢に支持するスタンドとして作用する時の当該バンパー16の左右開口端を示す側面図であって、この時、バンパー16は、その回動支点である連結ピン17を支点越えする引張スプリング22の付勢力により、支持ステー15L,15Rを構成する支持部材15aに設けた切欠き部Cと当接し、バンパー16のスタンド姿勢(略垂直姿勢状態)Bが保持される。
【0016】
更に、図5は、上述の如くスタンド姿勢Bとなったバンパー16に植付作業機3の全荷重が掛かった時の当該バンパー16の左右開口端を示す側面図であって、その際、バンパー16が受ける植付作業機3の荷重は、先ず圧縮スプリング23を介して緩衝される。そして、バンパー16の開口端(図中上端)は、植付作業機3の荷重を受けながら支持ステー15L,15Rを構成する支持部材15aの上部に穿設した孔H1に徐々に挿通し、圧縮スプリング23が略全圧縮、且つバンパー16の開口端近傍に穿設した長孔16aの下側が連結ピン17と当接した状態で、バンパー16は、植付作業機3を非接地姿勢に支持するスタンドとして作用するようになっている。
【0017】
尚、バンパー16には、スタンドとして作用する際の接地部Sを設けている。この接地部Sは、側面視でバンパー16がスタンド姿勢Bの時は地面に安定して接地するように水平状態となり、一方側面視でバンパー16がガード姿勢Aの時は垂直状態となるようにバンパー16の左右両側に直線部を形成したものである。
【0018】
また、バンパー16が略水平姿勢状態Aの時は、このバンパー16を植付作業機3の後方に存在する障害物を検知するための障害物検知体として兼用することができるように構成している。
【0019】
更に詳しく説明すると、バンパー16をスタンドとして作用する際の左右両側の接地部Sと、この左右両側の接地部Sを結ぶ後側の接地部S´は、バンパー16がガード姿勢Aの時は、その終端(後端)の左右両側に側面視で垂直な直線部(接地部S)を形成すると共に、植付作業機3の左右方向に向く直線部(接地部S´)を形成している。即ち、バンパー16がガード姿勢Aにある時は、植付作業機3に備える植付装置11及び整地フロート14は、バンパー16の左右両側の直線部(接地部S)と、植付作業機3の左右方向に向く直線部(接地部S´)によって囲まれている。
【0020】
したがって、コンクリート畦畔を備える圃場等の高畦圃場で乗用型田植機による移植作業を行なう場合や乗用型田植機を車庫等に格納する際、植付作業機3(植付装置11)の後方に障害物が存在する状態で走行機体1を後進させた時は、先ず略水平姿勢状態のガード姿勢Aにあるバンパー16の左右両側の直線部(接地部S)、または植付作業機3の左右方向に向く直線部(接地部S´)が障害物と接触するため、上下左右の広範囲に亘ってカバーすることができる。
【0021】
この時、障害物とバンパー16の接触が軽微なものであれば、上述した圧縮スプリング23を介してバンパー16の衝撃が吸収されるが、例えば図6に示すように、圧縮スプリング23の所定の圧縮量を超えるほどの障害物とバンパー16の接触(衝突)が起こった時は、バンパー16の開口端(図中左端)を検出する検出スイッチ31を設け、この検出スイッチ31の検出に基づいて図示しない警報ブザー等に警報が出力されるように構成すれば、植付装置11や整地フロート14が障害物との衝突によって損傷することを未然に防止できる。尚、検出スイッチ31は、バンパー16の支持ステー15L,15Rを構成する支持部材15aの前側に内装している。
【0022】
以上説明したように、エプロン13上を左右往復動する苗載せ台7と、該苗載せ台7から苗を掻取って圃場に移植する植付装置11と、圃場面を整地する整地フロート14を備えた植付作業機3において、植付装置11を保護するバンパー16を設けるにあたり、このバンパー16を、平面視で前方に開口する略コの字状に形成すると共に、その左右開口端を植付作業機3に上下回動自在に装着し、バンパー16を上向きに回動させたガード姿勢Aでは、バンパー16は植付装置11を保護し、バンパー16を下向きに回動させたスタンド姿勢Bでは、バンパー16は植付作業機3を非接地姿勢に支持するように構成したことによって、前記バンパー16により植付装置11を保護するだけでなく、バンパー16を上向きに回動させたガード姿勢Aからバンパーを下向きに回動させたスタンド姿勢Bへの姿勢変更、または逆に前記スタンド姿勢Bからガード姿勢Aへの姿勢変更をバンパー16の下向きの回動、あるいは上向きの回動操作のみで簡単に行えるようになる。即ち、従来のように左右の棒状スタンドをそれぞれガード姿勢からスタンド姿勢、またはスタンド姿勢からガード姿勢に姿勢変更するといった煩わしさを解消することができる。
【0023】
そして、上述したバンパー16が、ガード姿勢A時における障害物との接触による変位によって植付作業機3後方の障害物を検知する障害物検知体として作用するように構成したことによって、極めて簡単な構造により、畦畔での移植作業や車庫等への格納時に植付作業機3の後方に存在する障害物を容易に検出して、植付装置11や整地フロート14が障害物との衝突によって損傷することを未然に防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】植付作業機の側面図。
【図2】植付作業機の要部平面図。
【図3】バンパーの植付作業機への装着構造を示す側面図(略水平姿勢状態)。
【図4】バンパーを略垂直姿勢に下方回動した状態を示す側面図。
【図5】バンパーがスタンドとして作用した状態を示す側面図。
【図6】バンパーが障害物検知体として作用した状態を示す側面図。
【符号の説明】
【0025】
3 植付作業機
7 苗載せ台
11 植付装置
13 エプロン
14 整地フロート
16 バンパー
A ガード姿勢(略水平姿勢状態)
B スタンド姿勢(略垂直姿勢状態)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エプロン(13)上を左右往復動する苗載せ台(7)と、該苗載せ台(7)から苗を掻取って圃場に移植する植付装置(11)と、圃場面を整地する整地フロート(14)を備えた植付作業機(3)において、植付装置(11)を保護するバンパー(16)を設けるにあたり、このバンパー(16)を、平面視で前方に開口する略コの字状に形成すると共に、その左右開口端を植付作業機(3)に上下回動自在に装着し、バンパー(16)を上向きに回動させたガード姿勢(A)では、バンパー(16)は植付装置(11)を保護し、バンパー(16)を下向きに回動させたスタンド姿勢(B)では、バンパー(16)は植付作業機(3)を非接地姿勢に支持するように構成したことを特徴とする植付作業機。
【請求項2】
前記バンパー(16)が、ガード姿勢(A)時における障害物との接触による変位によって植付作業機(3)後方の障害物を検知する障害物検知体として作用するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の植付作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−142166(P2009−142166A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320608(P2007−320608)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】