説明

移植機

【課題】運転座席との間の狭いスペースにおいても、回動範囲を大きく取ることができる苗搬送台を備えた移植機を提供する。
【解決手段】走行機体2の側方には、前後に長く延設された苗搬送台7が走行機体2に対して機体左右方向に回動自在に取付けられている。苗搬送台7は、回動支点Rが苗搬送台7の走行機体側に位置しているため、回動支点Rを中心として走行機体側に大きく膨らむことなく回動すると共に、回動支点Rが支持フレーム11に支持される固定苗搬送台71よりも機体後方側に位置しているため、その後端部に比して前端部を大きく回動させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用型田植機等の移植機に係り、詳しくは、走行機体の前方側から後方側に苗を搬送する苗搬送台に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、走行機体の後部に昇降リンクを介して植付部を連結し、圃場を走行しながら苗を植付ける乗用型田植機などの移植機が広く知られている。このような移植機において、植付作業中に苗載せ台に載置された苗の数が少なくなると、作業者は走行機体を畦に対して垂直につけ、畦際にいる補助者から苗を受取って苗載せ台へと補給していた。
【0003】
従来、このような苗の補給作業を軽減する目的で、走行機体の側方に多数の回転ローラを支承した矩形の枠を複数個ヒンジ結合し、ローラコンベアの作用をなす苗搬送台を取付けたものが案出されている(特許文献1参照)。これにより、作業者は、苗搬送台上を自走してきた苗をリヤステップ上にて受取り、効率的に苗載せ台へと移載することができる。
【0004】
また、上記特許文献1記載の苗搬送台は、畦際のトラックから容易に苗を供給することができるように、上下方向に揺動可能に構成されていると共に、機体水平方向にも回動可能に構成されており、畦際のトラックに対して田植機を厳密に位置決めして駐車せずとも苗搬送装置に苗を供給することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−17771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、上記特許文献1の理由とは別に、苗搬送台の下方に設けられている施肥タンクへ肥料を補給する際に苗搬送台が作業の邪魔になるといった理由や、成形されていない圃場において移植機を畦に対して垂直に付けることが困難であるといった理由から、苗搬送台を左右に回動させたいという要望がある。
【0007】
このような場合、トラック上において苗搬送台の供給位置を調整するよりも苗搬送台を大きく回動させる必要があるが、苗搬送装置は機体前後方向に長く延設され、その後方側は作業者が運転操作を行う運転操作部の側方に位置しているため、苗搬送台を大きく回動させると、その後端部が運転操作部まで回動してしまう虞があった。
【0008】
そこで、本発明は、このような運転座席との間の狭い空間においても、苗搬送台の回動範囲を大きく取ることができる移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前後の走行輪(4f,4r)に支持された走行機体(2)と、前記走行機体(2)に固設された支持フレーム(11)と、前記支持フレーム(11)に支持される支持苗搬送台(71)、前記支持苗搬送台(71)から機体前方側に延びる前部苗搬送台(72)及び前記支持苗搬送台(71)から機体後方側に延びる後部苗搬送台(73)を有し、前記走行機体(2)の側方で機体前後方向に長く延びた苗搬送台(2)と、を備え、前記苗搬送台(2)に機体前方側から供給された苗を機体後方側へと搬送可能な移植機(1)において、
前記支持苗搬送台(71)よりも機体後方側にて前記苗搬送台(7)の回動支点(R)を形成する回動支点部(13)を備え、
前記回動支点(R)を中心に前記苗搬送台(7)を機体左右方向に回動自在に構成した、ことを特徴とする。
【0010】
また、具体的には、前記支持苗搬送台(71)が取付けられると共に、該支持苗搬送台(71)から前記後部苗搬送台(73)に亘り前記苗搬送台(7)に沿って前後に延設された苗搬送台ステー(20)を備え、
前記回動支点部(13)は、前記苗搬送台ステー(20)を前記支持フレーム(11)に回動自在に支持して前記苗搬送台(7)の回動支点(R)を形成する、ことを特徴とする。
【0011】
更に、詳細には、前記苗搬送台ステー(20)は、前記苗搬送台(7)に沿って前後に延設する延設部(20a)と、該延設部(20a)から機体外方に延びて前記支持苗搬送台(71)を走行機体側から片持ち状に支持するステー部(20b)と、を備えている、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記走行機体(2)の前方側に形成されたボンネット(9)と、
前記ボンネット(9)の側方かつ前記苗搬送台(7)の下方に設けられた施肥タンク(8)と、を備え、
前記施肥タンク(8)の供給口(8a)よりも機体後方側に前記苗搬送台(7)の回動支点(R)を設けた、ことを特徴とする。
【0013】
更に、本発明は、前記苗搬送台(7)を、前記走行機体(2)に対して平行な標準位置(図2参照)と、前記標準位置から機体内方側に回動した内方位置(図6参照)と、前記標準位置から機体外方側に回動し、平面視で前記苗搬送台(7)の機体内方側の内側縁(7i)と前記施肥タンク(8)の前縁(8f)とが交差する第1外方位置(図7参照)と、前記外方位置から更に機体外方側へと回動し、平面視で前記苗搬送台(7)の内側縁(7i)と前記施肥タンク(8)の機体外方側の外側縁(8l)とが交差する第2外方位置(図8参照)と、に位置決めする位置決め部(14)を備えたことを特徴とする。
【0014】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によると、回動支点部を支持苗搬送台よりも後方側に設けたことにより、苗搬送台の後端部に比して畦側の前端部を大きく回動させることができる。そのため、補助者が苗を供給する畦側の回動範囲を大きくすることが出来ると共に、運転操作部との干渉する虞があり回動許容範囲の小さい後端部の回動量については小さくすることができる。また、後端部の回動範囲を小さくすることができるため、苗搬送台の前方側に回動範囲を大きくしてもその後端部を作業者の作業範囲以内で回動させることができる。
【0016】
請求項2に係る発明によると、支持苗搬送台を取付ける苗搬送台ステーを該支持苗搬送台から後部苗搬送台に亘って延設し、この苗搬送台ステーを支持フレームに回動自在に支持して苗搬送台の回動支点を形成することにより、複数の支持フレームを設けずとも簡単な構成により苗搬送台の回動支点を支持苗搬送台よりも後方側に形成することができる。
【0017】
請求項3に係る発明によると、苗搬送台ステーにより、苗搬送台を走行機体側から片持ち状に支持することにより、回動支点を走行機体側に形成することができ、苗搬送台を、回動支点を中心として機体側に大きく膨らむことなく回動することができる。それにより、作業者が運転操作を行う運転操作部との間の狭いスペースにおいても、苗搬送台の回動範囲を大きく設定することができる。

【0018】
請求項4に係る発明によると、苗搬送台の回動支点を該苗搬送台の下方に設けられた施肥タンクの供給口よりも後方側に形成したことにより、施肥タンクに肥料を補給する際に、苗搬送台を作業の邪魔にならない位置に回動させることができる。
【0019】
請求項5に係る発明によると、圃場形状や、作業状況に応じて、苗搬送台を、標準位置、内方位置、第1外方位置及び第2外方位置に位置決めすることができ、苗搬送装置の汎用性を向上させることができると共に、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る乗用田植機の側面図。
【図2】本発明の実施形態に係る乗用型田植機の苗搬送台が標準位置にある状態を示す平面図。
【図3】本発明の実施形態に係る乗用型田植機の苗搬送台の斜視図。
【図4】本発明の実施形態に係る乗用型田植機の苗搬送台の斜視図。
【図5】本発明の実施形態に係る乗用型田植機の苗搬送台の取付部を示す要部拡大図。
【図6】本発明の実施形態に係る乗用型田植機の苗搬送台が内方位置にある状態を示す平面図。
【図7】本発明の実施形態に係る乗用型田植機の苗搬送台が第1外方位置にある状態を示す平面図。
【図8】本発明の実施形態に係る乗用型田植機の苗搬送台が第2外方位置にある状態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る乗用型田植機について図面に基づいて説明をする。図1及び図2に示すように、8条植えの乗用型田植機1は、前後の走行輪(前輪、後輪)4f,4rに支持された走行機体2を有しており、該走行機体2の前方には、ボンネット9に覆われたエンジンが搭載されている。エンジン(ボンネット9)の左右側方には、ペースト肥料を貯留する施肥タンク8が、走行機体2の機体フレーム2aから側方に延設された施肥フレーム8cによって取付けられていると共に、詳しくは後述する苗搬送台7が走行機体2に沿って前後に延設されている。
【0022】
また、上記エンジンの後方側には、ステアリングハンドル6a、運転座席6bなどからなる運転操作部5が設けられており、運転座席6bの前方には運転操作部5の床面を形成するフロアステップ10bが設けられている。該フロアステップ10bは、その前縁がボンネット9の左右側方に設けられたフロントステップ10aの後縁と接続していると共に、その左右側縁がワイドステップ10cと接続しており、これらフロントステップ10aもしくはワイドステップ10cを通って機体前方及び側方のどちらからでも作業者が上記運転操作部5に乗り込むことが出来るように構成されている。
【0023】
一方、走行機体2の後方には昇降リンク3cを介して圃場に苗を植付ける植付部3が昇降自在に取付けられており、該植付部3は、苗を載置する苗載せ台3aと、該苗載せ台3aから苗を掻きとって圃場に植付ける植付装置3bとから構成されている。苗載せ台3aは上記走行機体2の後端部に臨んで機体後方側に傾斜して設けられており、その上端部は運転座席6bの背もたれ部の上端部と略々同じ位置に位置している。
【0024】
また、上記苗載せ台3aと対向する走行機体2の後端部には、段差部10f及び傾斜部10gを介して上記フロアステップ10b及びワイドステップ10cよりも一段高く形成されたリヤステップ10d及び後部ワイドステップ10eが設けられており、作業者がこれらリヤステップ10dや後部ワイドステップ10e上に立って、苗載せ台3aに苗を補給することができるようになっている。
【0025】
ついで、苗搬送台7について詳しく説明をする。図1及び図2に示すように、走行機体2(ボンネット9)の左右両側方には、施肥タンク8と平面視で上下に重なる形で苗搬送台7が配設されており、その前端部は走行機体2の前方に位置していると共に、後端部は運転座席6b(運転操作部5)の側方に位置している。
【0026】
上記苗搬送台7は、それぞれ側枠間に複数のローラ78を回転自在に支持した矩形の枠体である前部苗搬送台72、固定(支持)苗搬送台71及び後部苗搬送台73をヒンジ結合して構成されており、前部苗搬送台72は前部ヒンジ76により固定苗搬送台71の前方側に、後部苗搬送台73は後部ヒンジ77により固定苗搬送台71の後方側に連結されている(図3参照)。
【0027】
なお、苗搬送台7は、走行機体の前方側から後方側へと苗を給送する際には、これら前部苗搬送台72及び後部苗搬送台73を固定苗搬送台71に対して前後に伸展させた伸展姿勢、即ち、前部苗搬送台72が固定苗搬送台71から機体前方側に延び、後部苗搬送台73が固定苗搬送台71から機体後方側に延びた状態で使用され、本実施形態において、単に苗搬送台7と言う場合、伸展姿勢の苗搬送台7のことを意味する。
【0028】
ついで、上記苗搬送台7の取付け構造について説明をする。ステアリングハンドル6aの側方において、走行機体2の機体フレーム2aにはボルトによって支持フレーム11が固設されており、図4及び図5に示すように、該支持フレーム11の機体外側には略コ字状のフレームブラケット16が溶接されている。
【0029】
上記フレームブラケット16の上板16aと下板16bとの間には支点パイプ15が支持されており、該支点パイプ15には固定苗搬送台71が取付けられる苗搬送台ステー20の後端部に形成された軸部がベアリングを介して回転自在に差し込まれていると共に、留具31によって抜止めされている。そして、これらフレームブラケット16、支点パイプ15及び苗搬送台ステー20の軸部によって苗搬送台7の回動支点Rを形成する回動支点部13が構成されており、苗搬送台7は該軸部の中心を回動支点(回動中心)Rとして機体左右方向に回動自在に支持フレーム11(走行機体2)に支持されている。言い換えれば、回動支点部13は、苗搬送台ステー20を支持フレーム11に回動自在に支持することによって苗搬送台7の回動支点Rを形成している。
【0030】
また、上記フレームブラケット16の上面16aには回動支点Rを中心に同芯状に湾曲した長孔17が穿設されていると共に、苗搬送台ステー20の後端部に溶接されたステーブラケット21には長孔17に嵌挿される案内ピン29が取付けられており、この案内ピン29が長孔17に当接することによって、苗搬送台7の回動範囲が規制されている。
【0031】
更に、フレームブラケット16の上面16aには、長孔17の他に4つののロック孔18・・・が回動支点Rを中心とする円周上に穿孔されており、ロックピン22が各ロック孔18に嵌挿されることにより、苗搬送台7は標準位置(図2位置)、内方位置(図6位置)、第1外方位置(図7位置)及び第2外方位置(図8位置)の各位置に位置決めされるように構成されている。該ロックピン22は、その中途部に一体に取付けられた座板23aとフレームブラケット16の上板16aとの間にコイルスプリング24が縮設されており、ロック孔18側に常に付勢されていると共に、座板23aには一対のプレート部材23b,23bが取付けられている。
【0032】
上記プレート部材23bは、機体外方端がステーブラケット21の切起し部27と苗搬送台ステー20に設けられた耳部28とにより支承された畦側操作レバー25に取付けられており、該畦側操作レバー25を中心として上下に回動してロックピン22をロック孔18に抜き差しできるように構成されていると共に、これら一対のプレート23b,23bのうち、機体前方側のプレートは走行機体側に延設されて運転座席側からロックピン22を操作する運転側操作レバー26となっている。そして、これら畦側操作レバー25、運転側操作レバー26、ロックピン22、ロック孔18及びコイルスプリング24によって苗搬送台7の位置決め部14が形成されている。
【0033】
上記支持フレーム11、苗搬送台ステー20、回動支点部13及び位置決め部14により、苗搬送台7を走行機体2に取付ける苗搬送台取付部12が形成されており、苗搬送台7は上述したように該苗搬送台取付部12を介して機体左右方向に回動自在に走行機体2に取付けられている。
【0034】
ついで、苗搬送台7の回動支点Rの配置について説明をする。図2、図4及び図5に示すように、支持フレーム11は、支点パイプ15が取付けられたフレームブラケット16を機体外側に向けて取付けていると共に、該支点パイプ15に軸部を嵌挿して回動支点Rを形成する苗搬送台ステー20は、苗搬送台7の走行機体側の側縁である内側縁7iと上下に重なる位置にて、外側縁7iに沿って前後に延設された延設部20aと、該延設部20aから機体外側に延びるステー部20bと、を有している。
【0035】
上記ステー部20bには、固定苗搬送台71の底面が固設されており、固定苗搬送台71(苗搬送台7)は、ステー部20b(苗搬送台ステー20)によって走行機体側から片持ち状に支持されている。そのため、回動支点Rは、苗搬送台7が走行機体2(機体中心X)に対して平行な標準位置において、苗搬送台7の幅方向の中心Yよりも走行機体側に位置している(図2参照)。
【0036】
また、上記苗搬送台ステー20の延設部20aは、固定苗搬送台71の前方側から後部苗搬送台73の前部に亘って苗搬送台7の内側縁7iに沿って延設されており、苗搬送台ステー20の後端部に形成される回動支点Rは後部苗搬送台73の前部側方に位置している。即ち、苗搬送台7の回動支点Rは、標準位置の苗搬送台7の走行機体側でかつ、走行機体2に支持される(苗搬送台7を支持する)固定苗載台71よりも機体後方側に配設されている(苗搬送台7の先端と回動中心Rとの距離A>苗搬送台7の後端と回動中心Rとの距離B)。
【0037】
そのため、苗搬送台7は、支持フレーム11が苗搬送台7の内側縁7iよりも走行機体側(機体内側)で立設していることとも相俟って、苗搬送台7の機体外側に回動支点が配置されているものに比して走行機体側に膨らまずに回動すると共に、補助者が苗を供給する畦側の前部が大きく、作業者が苗を受取る後部が小さく回動する。なお、苗搬送台7の回動範囲は、運転座席6bの背もたれの側方に位置する後端部から、リヤステップ10d及び後部ワイドステップ10e上の作業者が苗を受取れる範囲内に設定される。
【0038】
また、上記回動支点Rの下方には施肥タンク8の後端部が位置しており、該回動支点Rは、施肥タンク8の前方側に設けられた供給口8aよりも機体後方側に位置している。
【0039】
次に、本発明に係る苗搬送台が取付けられた乗用型田植機の作用について説明をする。作業者は固定苗載台71に対して折畳んだ前部苗搬送台72及び後部苗搬送台73上に苗(予備苗)を積み込むと、フロントステップ10aを通って運転操作部5に乗り込み、走行機体2によって圃場を走行すると共に植付装置3bによって苗載せ台3aから苗を掻きとって植付けてゆく。また、この植付け作業と同時に、植付装置3bの下方に設けられたノズル8bから施肥タンク8に貯留されたペースト肥料を供給し、圃場に移植された苗に対して施肥を行う。
【0040】
作業者は、苗載せ台3aに載置された苗が少なくなると、まず、前部苗搬送台72及び後部苗搬送台73上に載置された苗を苗載せ台3aに補充するが、それでも苗が足りなくなると、図1及び図2に示すように、これら前部苗搬送台72及び後部苗搬送台73を固定苗搬送台71に対して伸展させた伸展姿勢にして、苗補給のために畦に対して走行機体2をつける。
【0041】
整地された矩形の圃場の場合、作業者は畦際のトラックに対して垂直に走行機体2を停止させると共に、補助者は標準位置の苗搬送台7の前端部からマット苗を供給する。苗搬送台7に供給された苗は、傾斜に沿ってローラ78上を走行機体後方側に自走して行き、苗搬送台7の後端部で後部端板75に当接して停止する。そして、作業者はリヤステップ10dもしくは後部ワイドステップ10e上でこの搬送された苗を受取り、苗載せ台3aに補充して植付作業を再開する。
【0042】
なお、マット苗が載置されていたスクレーパや苗箱は、支持フレーム11の走行機体側に取付けられたシュータ(空箱入れ)32に入れられ、植付け作業後に回収される。
【0043】
一方、補助者が三角圃場の頂点部にいる場合や、畦側のトラックに対して走行機体2がずれて停車していた場合、補助者は、畦側操作レバー25の把持部25bを時計周りに回動させロックピン22をロック孔18から抜くと共に、苗搬送台7の内側縁7iに対して走行機体側にオフセットしている苗搬送台ステー20の把持部20cを掴んで苗搬送台7を標準位置(図2参照)から機体中心線Xに近づく方向(走行機体内側)に回動させ、内方位置とする(図6参照)。
【0044】
この内方位置は、苗搬送台7の先端部が走行機体中心側に位置するため、補助者は圃場、特に三角圃場などの成形されていない圃場の角部からでも容易に苗を苗搬送台7に供給することができると共に、図6の2点鎖線で示すように、左右の苗搬送台7の両方を内方位置とすることによって、1人の補助者によって左右の苗搬送台7に苗を供給することができ、作業効率の向上を図ることができる。
【0045】
また、三角圃場などにおいて補助者が角部の機体外側にいる場合など、畦際の補助者(トラック)に対して苗搬送台7の先端部が走行機体内側にある際には、補助者は内方位置の際と同様に畦側操作レバー25によって苗搬送台7のロックを解除すると共に、苗搬送台ステー20を握って苗搬送台7を標準位置から機体中心Xから離れる方向(走行機体外側)に回動させ、第1外方位置とする(図7参照)。
【0046】
この第1外方位置は、標準位置から内方位置と略々同じだけ機体外方側に回動した位置であり、機体外側にいる補助者は容易に苗搬送台7に苗を供給することが出来ると共に、機体後端部が運転操作部5側に大きく突き出して作業者の運転座席6bからリヤステップ10dへの移動を阻害することもない。
【0047】
更に、走行機体2を畦に対して平行に付けて、側方から苗を供給したい場合には、補助者は、畦側操作レバー25によって苗搬送台7のロックを解除すると共に、苗搬送台ステー20を掴んで苗搬送台7を第1外方位置(図2参照)から更に走行機体外側に回動させた第2外方位置とする(図8参照)。このように、第2外方位置においては、苗搬送台7の前端が第1外方位置の時よりもより機体外側に回動して機体側方に向いているため、走行機体2の側方からでも補助者は苗搬送台7に容易に苗を供給することができる。また、苗搬送台7の後端部も、リヤステップ10dの正面に位置しており、運転座席6bと干渉することがないと共に、作業者はリヤステップ10d上において容易に苗を受取ることができるため、作業効率が向上する。
【0048】
更に、この第2外方位置では、苗搬送台7が平面視でその内側縁7iと施肥タンク8の機体外方側の側縁である外側縁8lとが交差するまで回動し、施肥タンク8の供給口8aの半分以上が上方に開放されており、施肥タンク8の前縁8fと苗搬送台7の内側縁7iとが平面視で交差して施肥タンク8の供給口8aの半分以上が苗搬送台7と上下に重なっている第1外方位置に比して、容易に回動して開いた供給口8aに上方からバケツなどでペースト肥料を供給することができる。また、苗搬送台7の苗の供給と施肥タンク8へのペースト肥料の補給を同時に行うこともできる。
【0049】
上述したように、苗搬送台7の回動支点Rを、標準位置の苗搬送台7の走行機体側かつ、固定苗搬送台71よりも機体後方側に設けたことによって、苗搬送台7を走行機体側に大きく膨らませることなく回動させることができると共に、運転操作部5と干渉する虞のある苗搬送台7の後端部の回動量を小さくすることができ、運転操作部5との間の狭いスペースにおいても、苗搬送台7の前端部の回動範囲を大きく設定することができる。
【0050】
それにより、苗搬送台7を内方位置よりも多く機体外側に回動させることができ、より多くの圃場形状に苗搬送台7の位置を合わせることができると共に、回動支点Rが施肥タンク8の供給口8aよりも機体後方側にあるため、苗搬送台7を側方に移動させて供給口上方の肥料補給の際の作業スペースを広く取ることが出来る。
【0051】
また、固定苗搬送台71を取付ける苗搬送台ステー20を該固定苗搬送台71から後部苗搬送台73に亘って延設し、この苗搬送台ステー20を支持フレーム11に回動自在に支持して苗搬送台7の回動支点Rを形成することにより、複数の支持フレームを設けずとも簡単な構成により苗搬送台7の回動支点Rを固定苗搬送台71よりも後方側に形成することができる。
【0052】
更に、苗搬送台7を走行機体2の両側方に取付けたことにより個々の苗搬送台の回動量を少なくすることができる。また、苗搬送台7の後端部の回動範囲が前端部に比して小さいため、苗搬送台7の前方側に回動範囲を大きくしてもその後端部を作業者の作業範囲以内で回動させることができる。
【0053】
なお、本実施形態において、苗搬送台7の重量を回動支点Rを介して支持フレーム11で支持させるように構成してが、苗搬送台7の支持フレームを2つ設け、1つの支持フレームによって苗搬送台7の固定苗搬送台71をローラなどで支持すると共に、他方の支持フレームによって固定苗搬送台71よりも後方側に苗搬送台7の回動支点Rを形成し、苗搬送台7の重量の支持を重心に近い位置で行い、回動支点だけを後方側に形成しても良い。
【0054】
また、例えば、苗搬送台ステー20のステー部20bを延ばして延設部20aを苗搬送台7よりも走行機体2側で延設させ、苗搬送台7の回動支点Rを内側縁7iよりも走行機体側に設けて、苗搬送台7の回動時の走行機体側への膨らみをより押さえるように構成しても良い。更に、前部苗搬送台72及び後部苗搬送台73をヒンジによって固定苗搬送台71に対して連結して苗搬送台7を形成したが、嵌め込み式や、スライド式など、どのような連結形式で苗搬送台7を形成しても良いと共に、苗搬送台7に薬剤散布機を取付けて苗の搬送と同時に消毒を行うように構成しても良い。
【符号の説明】
【0055】
1 移植機(乗用型田植機)
2 走行機体
3 植付部
4f 走行輪(前輪)
4r 走行輪(後輪)
7 苗搬送台
71 支持苗搬送台(固定苗搬送台)
72 前部苗搬送台
73 後部苗搬送台
7i 内側縁
8 施肥タンク
8f 前縁
8l 外側縁
9 ボンネット
13 回動支点部
14 位置決め部
20 苗搬送台ステー

R 回動支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後の走行輪に支持された走行機体と、前記走行機体に固設された支持フレームと、前記支持フレームに支持される支持苗搬送台、前記支持苗搬送台から機体前方側に延びる前部苗搬送台及び前記支持苗搬送台から機体後方側に延びる後部苗搬送台を有し、前記走行機体の側方で機体前後方向に長く延びた苗搬送台と、を備え、前記苗搬送台に機体前方側から供給された苗を機体後方側へと搬送可能な移植機において、
前記支持苗搬送台よりも機体後方側にて前記苗搬送台の回動支点を形成する回動支点部を備え、
前記回動支点を中心に前記苗搬送台を機体左右方向に回動自在に構成した、
ことを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記支持苗搬送台が取付けられると共に、該支持苗搬送台から前記後部苗搬送台に亘り前記苗搬送台に沿って前後に延設された苗搬送台ステーを備え、
前記回動支点部は、前記苗搬送台ステーを前記支持フレームに回動自在に支持して前記苗搬送台の回動支点を形成してなる、
請求項1記載の移植機。
【請求項3】
前記苗搬送台ステーは、前記苗搬送台に沿って前後に延設する延設部と、該延設部から機体外方に延びて前記支持苗搬送台を走行機体側から片持ち状に支持するステー部と、を備えた、
請求項2記載の移植機。
【請求項4】
前記走行機体の前方側に形成されたボンネットと、
前記ボンネットの側方かつ前記苗搬送台の下方に設けられた施肥タンクと、を備え、
前記施肥タンクの供給口よりも機体後方側に前記苗搬送台の回動支点を設けた、
請求項1乃至3のいずれか1項記載の移植機。
【請求項5】
前記苗搬送台を、前記走行機体に対して平行な標準位置と、前記標準位置から機体内方側に回動した内方位置と、前記標準位置から機体外方側に回動し、平面視で前記苗搬送台の機体内側の内側縁と前記施肥タンクの前縁とが交差する第1外方位置と、前記外方位置から更に機体外方側へと回動し、平面視で前記苗搬送台の内側縁と前記施肥タンクの機体外側の外側縁とが交差する第2外方位置と、に位置決めする位置決め部を、備えた、
請求項4記載の移植機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate