説明

移植機

【課題】回転体に保持されて回転してくる苗を受取って圃場の畝に植付ける植付部を支持した移植機において、植付部による苗の植付深さを調整する調整手段を設けるにあたり、構造の複雑化や、重量増を最小限に抑えた移植機を提供する。
【解決手段】植付部6による苗の植付深さを調整する調整手段を有する移植機において、植付部6に動力を伝動する植付側伝動機構11を走行機体3側に上下揺動可能に支持することにより走行部1,2に対する植付部6の相対高さを変更する支持機構を設け、該支持機構によって前記調整手段を構成し、植付側伝動機構11に伝動された動力を取出して回転体4側に伝動する回転体側伝動機構12を設け、該回転体側伝動機構12に植付側伝動機構11の上下揺動を許容する融通手段59を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、畝に苗を植付ける移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
畝の両側方に配される左右一対の走行部によって走行機体を支持し、走行機体に回転駆動可能に回転体を支持し、回転体の回転軸回りに苗を保持する保持部を複数設け、保持部に保持されて回転してくる苗を受取って圃場の畝に植付ける植付部を走行機体側に支持した移植機が従来公知であるが、これを改良したものとして、植付部による苗の植付深さを調整する調整手段を有し、汎用性を向上させた特許文献1に示す移植機が開発され、公知になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−225006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記文献の移植機は、走行部に対する植付部の相対高さを変更するために、走行部に対して走行機体を昇降駆動させる昇降装置を設け、該昇降装置によって植付深さを調整する調整手段を構成しており、調整手段の構成が大掛かり且つ複雑になり、重量も増加して、製造コストを低く抑えることが困難になる。
本発明は、畝の両側方に配される左右一対の走行部によって支持された走行機体側に、回転体に保持されて回転してくる苗を受取って圃場の畝に植付ける植付部を支持した移植機において、植付部による苗の植付深さを調整する調整手段を設けるにあたり、構造の複雑化や、重量増を最小限に抑えた移植機を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明の移植機は、畝Uの両側方に配される左右一対の走行部1,2によって走行機体3を支持し、走行機体3に回転駆動可能に回転体4を支持し、回転体4の回転軸回りに苗Nを保持する保持部31を複数設け、保持部31に保持されて回転してくる苗Nを受取って圃場の畝Uに植付ける植付部6を走行機体3側に支持し、植付部6による苗Nの植付深さを調整する調整手段を有する移植機において、植付部6に動力を伝動する植付側伝動機構11を走行機体3側に上下揺動可能に支持することにより走行部1,2に対する植付部6の相対高さを変更する支持機構38を設け、該支持機構38によって前記調整手段を構成し、植付側伝動機構11に伝動された動力を取出して回転体4側に伝動する回転体側伝動機構12を設け、該回転体側伝動機構12に植付側伝動機構11の上下揺動を許容する融通手段59を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の上記構成によれば、走行部に対して走行機体を昇降駆動させる昇降装置を設けること無く、走行部に対する植付部の相対高さを変更して植付部の植付深さを調整することが可能であるとともに、融通機構によって、上下揺動する植付側伝動機構側の動力を回転体側にスムーズに伝動することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の移植機を適用した歩行型兼用の乗用移植機の側面図である。
【図2】本発明の移植機を適用した歩行型兼用の乗用移植機の平面図である。
【図3】植付側伝動機構及びターンテーブル側伝動機構の構成を示す透視側面図である。
【図4】植付体を含む植付装置の要部構成を示す側面図である。
【図5】(A),(B)は植付体の構成を示す平面図及び側面図であり、(C)は植付駆動時の植付体の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1及び図2は、本発明の移植機を適用した歩行型兼用の乗用移植機の側面図及び平面図である。歩行型兼用の乗用移植機は、左右一対の前輪(走行部,車輪)1,1及び後輪(走行部,車輪)2,2と、これら4つの車輪1,2に支持された機体フレーム3aに各種機器を搭載することにより構成される走行機体3と、機体フレーム3aの前端部上方側に回転自在に支持されて苗N(図5参照)を保持する円盤状のターンテーブル(回転体)4と、走行機体3における前輪1と後輪2の間に配置されてターンテーブル4からの苗Nを受取って圃場に植付ける植付装置(植付部)6と、機体フレーム3aの後端部に固定設定されたエンジン7と、後輪2に動力を伝動する走行伝動機構8と、後輪2への動力を取出す動力取出機構9と、動力取出機構9によって取出した動力を植付装置6に伝動する植付側伝動機構11と、植付側伝動機構11に伝動された動力を取出してターンテーブル4側に伝動するターンテーブル側伝動機構(回転体側伝動機構)12とを備えている。
【0009】
上記左右一対の前輪1,1は圃場の形成された畝Uの左右側方にそれぞれ配置されるとともに、左右一対の後輪2,2も同様に圃場の形成された畝Uの左右側方にそれぞれ配置され、本乗用移植機は、畝Uを跨いだ状態で、畝Uの形成方向に沿って直進走行するように構成されている。
【0010】
上記走行機体3は、機体フレーム3aの前端部が、上下方向の左右一対の支柱14を介して前輪1に支持される一方で、機体フレーム3aの後部が、上下方向の左右一対の駆動ケース16を介して後輪2に支持されている。支柱14の機体フレーム3aへの取付固定位置は、複数段階で上下方向に変更調整可能であって、該変更調整によって、前輪1に対する走行機体の相対高さを変更可能である。
【0011】
この走行機体3の側方(図示する例では右側方)には、苗Nを載置する前後方向の苗載せ台17が配設されている他、走行機体3のターンテーブル4前方及び側方にも、ステー18,19を介して苗Nを載置する補助苗載せ台21、22が設置されている。
【0012】
また、走行機体3は、平面視で前輪1と後輪2の間に運転席23が設置されている。運転席23は、座席24と、座席24の前方且つターンテーブル4の下方に形成されて座席24に着座したオペレータの足が置かれる床面26と、座席24近傍に配置されて前後進切換等の走行変速を行う走行レバー27と、床面26に配置されて走行・走行停止操作を行う操作ペダル28等とを備えている。
【0013】
さらに、走行機体3の後端部からは、後方に向って平面視逆U字状をなして両端側が走行機体3に取付固定されたハンドル29が延設されている。以上により、本乗用型移植機は、走行機体3の後方に起立した作業者が、ハンドル29を把持して操向操作を行うことによって、歩行型の移植機としても利用可能である。
【0014】
上記ターンテーブル4は、平面視円形をなす円盤状に形成されて、中心Oの支点に回転駆動される。このターンテーブル4の上面側には、ターンテーブル4の回転軸回りに等ピッチで満遍なく複数(図示する例では、8つ)の円筒状のカップ(保持部)31が設けられている。ターンテーブル4の後端部の真下側に植付装置6(具体的には、後述する植付体32)が位置し、該後端部が苗Nを供給する供給位置Pになる。
【0015】
そして、供給位置Pに位置している現在のカップ31の位置に、次のカップ31が位置する回動量分(1ピッチ分)、ターンテーブル4が回転駆動される毎に、供給位置Pに回動されてくる上記次のカップ31内に収容された苗Nが下方の植付装置6側に落下供給される。
【0016】
カップ32からの苗Nの落下供給手段について具体的に説明すると、運転席23のオペレータが、苗載せ台17や補助苗載せ台21,22等の苗Nをカップ内に移送して収容可能なようにカップ31の上方側は常時開放される一方で、カップ31の底側は開閉自在な底蓋33によって閉じられている。この底蓋33は、引張スプリング等の弾性部材34によって開方向に付勢されているが、ターンテーブル4の外縁側に沿う平断面視C字形をなす円弧面状の当接壁36との当接によって閉状態で保持される。
【0017】
この当接壁36は、供給位置P部分が切欠かれて開放されており、ターンテーブル4が正転方向に1ピッチ分回動されてカップ31が供給位置Pまで回動されてくると、当接壁36と底蓋33の当接が解除され、弾性部材34の弾性力によって底蓋33が開作動し、該カップ31の底が抜けて内部の苗Nが下方に落下供給される。さらにターンテーブル4を正転方向に回動させると、該カップ31の底蓋33が再び当接壁36に当接し、底蓋33が閉作動して、カップ31の底が閉塞される。このようにして、ターンテーブル4による苗Nの落下供給を行われる。
【0018】
上記植付装置6は、走行機体3側の後輪2側から前方に延設された支持部材37と、支持部材37等を上下揺動可能に支持する支持機構38(図3参照)と、支持部材37側に支持されて畝Uの左右両側部にそれぞれ接地される左右一対の接地輪39と、支持部材37に上下揺動自在に支持された前後方向の昇降リンク41と、昇降リンク41に設置された上述の植付体32とを備えている。
【0019】
接地輪39の畝Uへの接地によって、苗Nの植付深さが最適化されるように、支持部材37が畝Uに対して所定高さに昇降される。すなわち、支持機構38は、畝Uの高さに応じて植付装置6による苗Nの植付深さを調整する調整手段となる。
【0020】
また、接地輪39と畝Uとの接地を確実にするため、支持部材37は、支持部材37前端側と走行機体3とを連結する上下方向の付勢部材42によって下方揺動側に弾性的に付勢されている。この付勢部材42の走行機体3への取付位置は、上下方向に調整することが可能であり、この上下方向の調節によっても植付装置6による苗Nの植付深さが変更可能である。
【0021】
昇降リンク41は基端側(後端側)が支持部材37に支持され、先端側に植付体32が設置されている。該昇降リンク41を上方位置(具体的には最上方位置)に揺動することにより、植付体32が供給位置Pに位置するカップ31の真下近傍に位置して苗Nを受取る受取り位置Xに移動する一方で、昇降リンク41を下方位置(具体的には最下方位置)に揺動することにより、植付体32が畝U内に頂部から挿入されて畝U内に苗Nを植付ける植付位置Yに移動する。
【0022】
すなわち、植付体32が受取り位置Xに移動した際に、ターンテーブル4のカップ31が供給位置Pに回動し、該カップ31の底蓋33が開作動するように、ターンテーブル4と植付装置6とが同期されている。さらに付け加えると、植付装置6は、植付体32が受取り位置Xから植付位置Yに移動して再び受取り位置に戻るまでが一周期となり、この一周期の間に、ターンテーブル4が1ピッチ分回動するように、ターンテーブル4と植付装置6とが構成されている。なお、植付体32の詳細については後述する。
【0023】
上記走行伝動機構8によって、エンジン動力が、走行機体3の後端部から左右側方にそれぞれ突出する左右一対の走行駆動軸43,43に伝動される。この各走行駆動軸43,43の動力は、上述の駆動ケース16,16を介して、対応する各後輪2,2に伝動され、車体を前進又は後進側に走行駆動させる。
【0024】
上記動力取出機構9は、走行駆動軸43,43と平行に向い合う入力軸44に、該走行駆動軸43の動力をチェーン伝動又はベルト伝動(図示する例ではチェーン伝動)するように構成されている。
【0025】
図3は、植付側伝動機構及びターンテーブル側伝動機構の構成を示す透視側面図である。上記植付側伝動機構11は、図1及び図3に示すように、上述の入力軸44と平行な状態で入力軸44の前方に配置された植付駆動軸46と、一方向クラッチ(図示しない)を介して入力軸44に取付けられた駆動プーリ47と、植付駆動軸46と一体回転する従動プーリ48と、該駆動プーリ47及び従動プーリ48に掛け回される伝動ベルト49と、伝動ベルト49のテンションを維持する前後一対のテンションプーリ51,52とを備えている。
【0026】
車体を前進走行させる正転方向に入力軸44が回転駆動させている際には、入力軸44の動力が駆動プーリ47に伝動される一方で、車体を後進走行させる逆転方向に入力軸44が回転駆動させている際には、入力軸44から駆動プーリ47へのエンジン動力の伝動が遮断されるように上記一方向クラッチが構成されている。すなわち、ターンテーブル4及び植付装置6は、前進走行時のみ、駆動される。なお、車体の前進走行時にも、ターンテーブル4及び植付装置6へのエンジン動力の伝動を遮断できるように、クラッチ機構を設けてもよい。
【0027】
該構成の植付伝動機構11は、入力軸44から前方突出して入力軸44の軸回りに上下揺動され且つ上述した支持機構38を構成する伝動ケース内に支持され、駆動プーリ47の動力によって、植付駆動軸46が正転方向に回転駆動される。
【0028】
以上により、植付側伝動機構11を構成する上記各部材は、該伝動ケース38と一体で、入力軸44の軸回りに上下回動自在に支持される。すなわち、この伝動ケース38は、支持部材37及び植付伝動機構11を入力軸33の軸回りに上下揺動可能に支持して植付装置6の植付深さを調整する上述の支持機構を構成している。ちなみに、この伝動ケース38を含む植付伝導機構11は、走行機体3の一方側側部(図示する例では右側部)に配置されている。
【0029】
この植付駆動軸46の回転動力は、カム機構やクランク機構等によって、上述の昇降リンク41を上下揺動駆動させる動力や、植付体32を後述するように植付駆動させる動力等に変換されるが、具体的な構成は、上記引用文献1にも記載されているように従来公知の技術であるため、詳細は割愛する。ちなみに、この植付駆動軸46が一回転分回転駆動されることにより、植付装置6が一周期分駆動される。
【0030】
上記ターンテーブル側伝動機構12は、上述の植付駆動軸46の動力を取出すためのものであって、植付駆動軸46と一体回転する駆動スプロケット53と、植付駆動軸46の前方に配置されて植付駆動軸46と平行に左右方向の延びるターンテーブル駆動軸(回転体駆動軸)54と、ターンテーブル駆動軸54と一体回転する従動スプロケット56と、駆動スプロケット63及び従動スプロケット56に掛け回される伝動チェーン57とを備えている。
【0031】
このターンテーブル側伝動機構12は、走行機体3の左右側部における植付伝動機構11と同じ側に配置され、ターンテーブル4側から後方斜め下方に延設された状態で走行機体3に固定されたチェーンケース58内に設置されている。
【0032】
また、伝動ケース38の上述の植付深さ調整作動に伴って、植付駆動軸46に取付けられた駆動スプロケット53も上下動し、これによって伝動チェーン57の軌道も変化する。そして、本乗用移植機では、植付伝動機構11及び支持部材37の上下揺動を許容し、この伝動チェーン57の軌道変化による弛みを防止し、植付伝動軸46からターンテーブル駆動軸54にスムーズに動力を伝動させるため、ターンテーブル側伝動機構12に融通機構(融通手段)59を設けている。
【0033】
該融通機構59は、チェーンケース58内に設けられた前後方向の支持アーム61と、支持アーム61の前端部と後端部にそれぞれ設けられた前後一対の中継スプロケット62,63とを備え、この前後一対の中継スプロケット62,63に上記伝動チェーン57が掛け回されている。支持アーム61は、前後方向中心を支点に上下揺動可能にチェーンケース58内に支持されており、この支持アーム61は、引張スプリング等の弾性部材64によって、上記一対の中継スプロケット62,63を介して伝動チェーン57に緊張力を付加しており、この弾性部材64による付勢力によって、伝動チェーン57が弛むことが防止され、駆動スプロケット53から従動スプロケット56に効率的にエンジン動力が伝動される。
【0034】
ターンテーブル駆動軸54の動力は、ベベルギヤ機構66を介して、ターンテーブル4の中心Oに配置されて該ターンテーブル4と一体回転する上下方向の回転軸67に伝動され、ターンテーブル4を正転方向に回転駆動させる。
【0035】
また、上述したように、植付装置6の一周期分の駆動によって、ターンテーブル4を1ピッチ分回動させるためには、植付駆動軸46の回転数を、回転軸67の回転数にターンテーブル4に設けたカップ31の個数を乗じた値にする必要があり、該回転数となるように、植付駆動軸46から回転軸67への変速比を設定する。例えば、図示する例では、8個のカップ31がターンテーブル4に設けられているため、植付駆動軸46から回転軸67への減速比が8になる。
【0036】
さらに、畝Uに苗Nを植付ける間隔は、走行駆動軸43から植付駆動軸46への減速比によって定まり、減速比は大きくすれば上記間隔が広がり、小さくすれば上記間隔が狭まる。
【0037】
次に、植付体32の構成を図4及び5に基づいて説明する。
図4は、植付体を含む植付装置の要部構成を示す側面図であり、図5(A),(B)は植付体の構成を示す平面図及び側面図であり、(C)は植付駆動時の植付体の側面図である。植付体32は、上リンク68及び下リンク69からなる上述の昇降リンク41の先端部に支持された支持体71と、支持体71から上方に向って周囲が拡大する筒状に成形された導入部72と、前後一対の植付爪73,73と、該前後一対の植付爪73、73を支持体71に開閉自在に支持する開閉機構74とを備えている。
【0038】
一対の植付爪73,73は、平断面視で、下方に向って径が次第に縮小する半円弧状をなすとともに、互いの内面側が向き合った状態で前後対称な形状に成形されている。この一体の植付爪73,73における互いの対向端部73a,73a同士を当接させると、該一対の植付爪73,73は、下方に向って径が小さく円錐状をなし、下方が閉塞されて内周側に苗Nを収容可能な閉じ姿勢に切換えられる一方で、この一対の植付爪73,73における互いの対向端部73a,73a同士を離間させると、側面視逆V字状をなし、下方が開放されて内部に収容していた苗Nを落下させる開き姿勢に切換えられる。
【0039】
この植付体32の開閉作動(開き姿勢から閉じ姿勢への切換又は閉じ姿勢から開き姿勢への切換)は、開閉機構74の一部を構成する開閉アーム76の前後揺動によって操作され、この開閉アーム76の前後揺動は、昇降リンク41に沿って一体的に上下揺動するとともに自身の軸方向に往復移動する前後方向の開閉ロッド77によって行われる他、植付体32は、昇降リンク41の作用によって若干の前後揺動をしながらも、上下方向を向いた状態で保持される。
【0040】
また、この開閉ロッド77は、図示しないクランク機構やカム機構等を介し、植付駆動軸46の回転動力によって、往復作動し、植付位置Y又は植付位置Y近傍に植付体31が位置する際には、前後一対の植付爪73,73を開き姿勢に切換える一方で、それ以外の位置に植付体31が位置する際には、前後一対の植付爪73,73を閉じ姿勢で保持するように構成されている。
【0041】
植付体32の作動を具体的に説明すると、受取り位置Xに上方移動された植付体32は、供給位置Pの真下側において、ターンテーブル4から落下してくる苗Nを閉じ姿勢の前後一対の植付爪73,73の内周側に受止めて収容する。続いて、受取り位置Xから植付位置Yに下方移動された植付体32は、圃場の畝Uに挿入され、閉じ姿勢から開き姿勢に切換作動(植付駆動)される。この前後一対の植付爪73,73の閉じ姿勢から開き姿勢への切換えによって圃場の土が掻き分けられることにより畝Uに植付穴が穿設され、この植付穴に苗Nが落下供給されることにより、苗Nが畝Uに植付けられる。そして、植付体32は、開き姿勢から閉じ姿勢に切換えられながら、再び植付位置Yから受取り位置Xに上方移動され、以下この作動を繰り返す。ちなみに、苗Uは、根元に土が付着しており、根元部分が下方に向けられた姿勢で、常時保持される。
【0042】
なお、この一対の植付爪73,73は、強度等を考慮して鉄等の金属製部材によって構成されるが、このため、閉じ姿勢に、対向端部73a,73a同時が当接する際に互い衝撃音が発生する虞があるが、この衝撃音の発生を防止するため、各植付爪73には、ゴム等の弾性変形可能な合成樹脂よりなる緩衝部材78が設置されている。
【0043】
緩衝部材78は、植付爪73の内周面に沿って植付爪73内の固定される半円弧面状に形成されており、緩衝部材78の周面の各終端部から左右両側方にリブ状の当接部78a,78aがそれぞれ一体的に延設され、この左右の当接部78a,78aによって上述の対向端部73aが上下方向に沿ってカバーされている。前後一対の植付爪73,73が閉じ姿勢に切換えられる際、互いの緩衝部材78の当接部78a同士が当接することにより、対応端部73a同士が直接当接することが防止され、衝撃音の発生が抑制される。
【0044】
ちなみに、植付爪73,73の閉じ姿勢時、前後一対の植付爪73,73内の苗Nは、互いに当接して上下が開放された円筒状をなす前後一対の緩衝部材78,78の内周側に位置し、安定した姿勢で保持される。
【0045】
また、本乗用移植機で植付けられる苗Nとしては、畝Uに植付け可能であって、根元に土が付着した様々な苗(例えば、煙草の苗)が想定される。
【符号の説明】
【0046】
1 前輪(走行部,車輪)
2 後輪(走行部,車輪)
3 走行機体
4 ターンテーブル(回転体)
6 植付装置(植付部)
11 植付側伝動機構
12 ターンテーブル側伝動機構(回転体側伝動機構)
31 カップ(保持部)
38 支持機構(調整手段)
59 融通機構(融通手段)
N 苗
U 畝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
畝(U)の両側方に配される左右一対の走行部(1),(2)によって走行機体(3)を支持し、走行機体(3)に回転駆動可能に回転体(4)を支持し、回転体(4)の回転軸回りに苗(N)を保持する保持部(31)を複数設け、保持部(31)に保持されて回転してくる苗(N)を受取って圃場の畝(U)に植付ける植付部(6)を走行機体(3)側に支持し、植付部(6)による苗(N)の植付深さを調整する調整手段を有する移植機において、植付部(6)に動力を伝動する植付側伝動機構(11)を走行機体(3)側に上下揺動可能に支持することにより走行部(1),(2)に対する植付部(6)の相対高さを変更する支持機構(38)を設け、該支持機構(38)によって前記調整手段を構成し、植付側伝動機構(11)に伝動された動力を取出して回転体(4)側に伝動する回転体側伝動機構(12)を設け、該回転体側伝動機構(12)に植付側伝動機構(11)の上下揺動を許容する融通手段(59)を設けた移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−234637(P2011−234637A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106826(P2010−106826)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】