説明

移植機

【課題】薬剤散布装置を備える予備苗給送装置において、最後部の苗箱(4番苗箱)を抜き取る際に、この状態で散布装置は停止しているが、不用意に抜き取ると散布装置から薬剤が散布されてしまい、2番苗箱・3番苗箱上に薬剤が溜まることを防止する。
【解決手段】予備苗給送装置22の終端部に、終端の予備苗Aを前方側から先に持ち上げて取り出すように案内する苗箱持上げ案内機構30を設けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、走行機体に、植付部の苗載せ台に向けて予備苗を供給する予備苗給送装置を配設した田植機等の移植機に関し、詳しくは、該予備苗給送装置に薬剤散布装置を付設した移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、予備苗給送装置に予備苗の流れに沿って予備苗の存在を検知する複数(4個)の苗検出スイッチを配し、これらの苗検出スイッチからの検出信号(ON/OFF)に基づいて該予備苗給送装置に付設した薬剤散布装置における散布量の制御並びに該予備苗給送装置上の給送装置における給送速度の制御をなすことは行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−17850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術によれば、予備苗給送装置に順次給送された苗箱(4箱)の最後部の苗箱(4番苗箱)を抜き取る際に、該4番苗箱の後端部(搬送下流側端;苗載せ台側)から持ち上げると、その最後部(4番目)の苗検出スイッチがOFFとなり、散布装置の駆動再開となる構成となっており、後続の苗箱の移動がないにも係わらず、散布装置から薬剤が散布されてしまい、2番苗箱・3番苗箱上に薬剤が溜まる事態が引き起こされることがある。
【0005】
そこで、本発明は、最後部の苗箱を抜き取る場合において、所定の手順を誘導することにより、散布装置の駆動再開による2番苗箱・3番苗箱上に薬剤が溜まることのない手段を講じた移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、苗載せ台(7)から苗を掻きとり移植する植付作業機(9)と、機体前方から後方へ予備苗(A)を搬送する予備苗給送装置(22)と、該予備苗給送装置(22)に取付けられ、搬送されてくる予備苗(A)に薬剤を散布する薬剤散布装置(23)とを備え、
前記予備苗給送装置(22)の搬送経路で予備苗(A)の位置を検出する複数の苗位置検出手段(SW1〜SW4)を配し、終端の予備苗の苗位置検出手段(SW4)と該終端の予備苗より1つ前の予備苗の位置を検出する苗位置検出手段(SW3)との同時検出により前記薬剤散布装置(23)での予備苗への薬剤の散布を停止する移植機(1)において、
前記予備苗給送装置(22)の終端部に、前記終端の予備苗を前方側から先に持ち上げて取り出すように案内する苗箱持上げ案内機構(30)を設けてなる、
ことを特徴とする移植機。
【0007】
請求項2に係る発明は、苗箱持上げ案内機構(30)は、予備苗給送装置(22)の終端部のフレーム(27a)間の上方に主たる面(31a)を水平配置される固定ブラケット(31)と、該固定ブラケット(31)の下面に摺接し、該固定ブラケット(31)の前縁より前方向に延設されるとともに前後に位置調整可能な可動ブラケット(32)と、前記可動ブラケット(32)の下面に固設され苗箱(B)の後端に当接するストッパ(35)とからなり、
前記可動ブラケット(32)の下面は前記苗箱(B)の上面に位置するとともに、該苗箱(B)の上面との間に終端の予備苗の苗位置検出手段(SW4)が検出状態を持続する隙間を存する、
ことを特徴とする請求項1に記載の移植機。
【0008】
請求項3に係る発明は、可動ブラケット(32)の前縁の中央部において、平面視で苗箱(B)の後端面との間に作業者の手が入る前後間隔を保持する凹部(32a)を形成してなることを特徴とする請求項2に記載の移植機。
【0009】
なお、括弧内の符合は図面を参照するためのものであって、特許請求の範囲に記載の構成を何ら限定するものではない。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によると、最後部の苗箱を抜き取る場合、苗箱の後部は当該苗箱持上げ案内機構に案内され、苗箱の前方から先に持ち上げられるようになるので、持ち上げた際には終端の予備苗の苗位置検出手段(SW4)はONを持続し、薬剤散布装置での薬剤の停止を確実に維持することができ、2番苗箱・3番等の上流側苗箱上への薬剤の溜まりを防止することができる。
【0011】
請求項2に係る発明によると、可動ブラケットの位置調整により苗箱への張出し長さの調整、ストッパの位置調整などが自由となり、作業状況に合わせた設定ができ、更にはストッパにより苗箱の後方へのずれを防止でき、苗箱の取出しが容易となる。
【0012】
請求項3に係る発明によると、最後部の予備苗における苗を抜き取った後の苗箱を取り出す際に、当該凹部の形成する空間へ手を入れることが可能となり、
両手で苗箱が把持できるようになり、苗箱の取出しが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る移植機の全体側面図。
【図2】本発明に係る移植機の全体平面図。
【図3】予備苗給送装置の全体側面図。
【図4】予備苗給送装置の後端の拡大平面図。
【図5】図4の側面図。
【図6】薬剤散布装置の正面視による構造図。
【図7】予備苗給送装置の薬剤散布装置部分を含む一部側面図。
【図8】図7の薬剤散布装置部分を除く平面図。
【図9】予備苗給送装置の薬剤散布装置部分の作動状態図。
【図10】制御部の入出力を示すブロック図。
【図11】スイッチSW1〜SW4の作用図
【図12】予備苗給送装置の薬剤散布装置部分の他の態様図。
【図13】図12の横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明において、予備苗Aは苗箱Bと該苗箱Bに収容される多数の苗C(いわゆるマット苗)との一体をいうが、両者を区別する必要のない場合には予備苗Aで一括して表記する。図1、図2はそれぞれ、本発明が適用される移植機としての乗用田植機の側面及び平面の全体構成を示し、本乗用田植機1は、前輪2及び後輪3に支持された走行機体5を有し、その後方には昇降リンク6を介して、苗載せ台7を備えた植付作業機9が設けられている。走行機体5の前方中央部には、ボンネット10に覆われたエンジンが搭載されており、その両側にはフロントステップ11が形成されている。また、ボンネット10の後方には、ステアリングハンドル12等を有する運転操作部13が配設されており、該運転操作部13の床面はフロントステップ11から繋がるメインステップ15によって覆われている。運転操作部13の後方では機体カバー16上に運転席17が配設されており、該機体カバー16には左右両側に前記メインステップ15よりも一段高く且つ平坦に構成した苗供給用ステップ19が設けてある。そして、走行機体2の両側の上方には、機体フレーム20の側部から上方へ延設された支持杆21に緩傾斜状に支持され、予備苗Aを前方から後方へ搬送するとともに薬剤散布機能を備えた予備苗供給装置22が配設されており、作業者は上記苗供給用ステップ19に立ち、補助者が畦際から予備苗供給装置22に供給し殺虫消毒処理された予備苗Aを受け取って、前記した植付作業機9の苗載せ台7に載置するものである。薬剤散布機能は予備苗供給装置22に付設された薬剤散布装置22によりなされる。
【0015】
走行機体2の両側上方に配される左右の予備苗給送装置22は、それぞれ、上記支持杆21に固定された固定苗台25と、該固定苗台25の前後に連続して接続された2つの可動苗台26,27(前部可動苗台26、後部可動苗台27)とから構成され、固定苗台25の前部には前記薬剤散布装置23が取り付けられ、該薬剤散布装置23により殺虫や病気の予防のための薬剤を散布する。
【0016】
上記予備苗給送装置22及び薬剤散布装置23について説明をする。予備苗給送装置22の固定苗台25及び可動苗台26,27は、それぞれ左右一対の横フレーム25a,26a,27aと、これらの横フレームに直交し、剛結する縦フレーム25b,26b,27bと、対向する横フレーム25a,26a,27a間に回転動自在に掛け渡される多数の転動ローラ29よりなるローラコンベアであり、機体前方側の前部可動苗台26は、その後端に設けられたブラケット26cが固定苗台25の前端に設けられたフロントブラケット25cとピンaを介して回動自在に連結することによって取り付けられている。また、機体後方側の後部可動苗台27は、その前端に設けられたブラケット27cが固定苗台25の後端に設けられたリヤブラケット25eとピンbを介して回動自在に連結することによって取り付けられている。これら前後の可動苗台26,27を固定苗台25に対して回動自在に連結したため、予備苗給送装置22は、可動苗台26,27を固定苗台25に対して前後に伸張させた伸張位置(図1及び図2の位置)と、固定苗台25の上方に所定間隔を空けて配置した収納位置とに変更可能となっている。
【0017】
図3〜図5に示すように、本予備苗給送装置22の後部(後部可動苗台27)に苗箱持上げ案内機構30が配される。すなわち、該苗箱持上げ案内機構30は、後部可動苗台27の両横フレーム27aの後端の内側に固定され、後部可動苗台27のフレーム27a間の上方に主たる面を水平配置される固定ブラケット31と、該固定ブラケット31の下面に摺接する可動ブラケット32と、固定ブラケット31と可動ブラケット32とを固定する蝶ボルト33と、可動ブラケット32の下面に固設されるストッパ35との主要部からなる。
【0018】
固定ブラケット31は、水平面板31aと該水平面板31aより直角に折り曲げられる鉛直面板31bとから一体に形成され、鉛直面板31bの基部は後部可動苗台27の両横フレーム27aの内側に取付けボルトをもって固定される取付け板36に固設される。これにより、水平面板31aは後部可動苗台27の両横フレーム27a間に、かつ横フレーム27aの上面より所定間隔の上方に配されるものである。また、水平面板31aの前縁は中央部分に幅広の凹部31cが形成され、その両側は張出部(フランジ)31dとなっている。
【0019】
可動ブラケット32は平板体をなし、固定ブラケット31の水平面板31aと同幅をなすとともに、該固定ブラケット31の水平面板31aの下面に当接を保って配される。更に可動ブラケット32は固定ブラケット31の水平面板31aの前縁形状と対応して、その前縁は中央部分に幅広の凹部32aが形成され、その両側は張出部32bとなっている。凹部32aは凹部31cに入り込む形状を採る。
【0020】
可動ブラケット32の摺動性につき、固定ブラケット31の両張出部31dに中心軸を軸対称として長孔31eが長手方向に形成され、これに対応して可動ブラケット32の張出部32bにボルト挿通孔32cが形成され、これらの孔31e,32cにわたって蝶ボルト33が装着される。すなわち、蝶ボルト33のナット(別体)を可動ブラケット32の下面に当てがい、蝶ボルト33本体を固定ブラケット31の上面より螺合締め付けて固定するものである。これにより、可動ブラケット32は固定ブラケット31の水平面板31aの下面に前後方向に位置調整可能となる。
【0021】
更にまた、可動ブラケット32の両側の張出部32bの下面に、苗箱Bの後端面に一定の当接面を保って当接されるストッパ35が固設されるものである。なお、ストッパ35は苗箱Bの後端面と一定の当接面を保って当接される面を主たる面とし、折り曲げ部は剛性を高めるためのものであって適宜省略できる。更には、本態様のストッパ35と同一機能を発揮できるものであれば他の態様の採用を除外するものではない。
【0022】
本苗箱持上げ案内機構30において、その定配置状態では、可動ブラケット32が蝶ボルト33により固定ブラケット31に固定され、ストッパ35が苗箱Bの後端面に当接するとき、可動ブラケット32の張出部32bの下面は苗箱Bの枠体の上面より若干の隙間(イ)を有し、また、可動ブラケット32の凹部32aは平面視において苗箱Bの後端面と作業者の手が入る余裕空間(ロ)を形成する。そして、この状態でスイッチSW4がON状態を採ることは勿論であるが(後述)、苗箱Bの枠体の上面が可動ブラケット32の張出部32bの下面に当接する間、すなわち隙間(イ)内での変位はスイッチSW4はON状態を持続するものである。
【0023】
次に薬剤散布装置23について説明する。図6に示すように、本薬剤散布装置23は、フレーム40、薬剤貯留部41、薬剤散布部42、薬剤排出部43及び制御ボックス45を備えてなる。フレーム40は左右一対をなし、固定苗台25の横フレーム25aにそれぞれ立設され、その対面部間で上方より順次、薬剤貯留部41、薬剤散布部42、薬剤排出部42が、また薬剤貯留部41に相並んで制御ボックス45が支持されている。薬剤貯留部41は、薬剤を貯留するホッパ46と、ホッパ46の上部開口46aを開閉自在に覆蓋する蓋体46bとを備え、ホッパ46に貯留した薬剤が容量断面を縮小した排出口46aを介して薬剤散布部42に供給される。
【0024】
薬剤散布部42は、ホッパ46の下部開口(排出口46c)に対向して配置される散布ローラ47と、該散布ローラ47に一体的に配される散布ローラ軸49と、該散布ローラ軸49を回転させる散布モータ50とを備える。散布ローラ47は、外周面に薬剤の大きさに対応した溝を多数有し、この溝にホッパ46から排出される薬剤を入り込ませるとともに、溝に入り込ませた薬剤を散布モータ50の回転駆動に応じて薬剤排出部43まで回転搬送する。
【0025】
薬剤排出部43は、薬剤散布部42から供給される薬剤を案内排出する排出ガイド51と、予備苗Cを分草する分草棒52と、薬剤の飛散を防止する飛散防止板53とを備える。排出ガイド51は、下方に至るにつれ左右幅の広がるガイド板からなり、薬剤を予備苗Cの株元に向けて落下排出する案内をなす。分草棒52は、左右のフレーム40間に架設される棒材からなり、予備苗Cの葉部を前後に分草することにより、予備苗Cの株元部が露出し、排出ガイド51から落下する薬剤を確実に予備苗Cの株元部に散布する。飛散防止板53は、固定苗台25の横フレーム25aに立設され、その板面を薬剤の散布位置Pの左右両側に配してなり、排出ガイド51から落下する薬剤が予備苗給送装置22の左右外方に飛散することを防止する。
【0026】
制御ボックス45は、ホッパ46の一側方に設けられ、該制御ボックス45の正面には、メインスイッチ55及び散布量調整ダイヤル56が設けられており、また、制御ボックス45の内部には、制御部57(図10)が内装されている。すなわち、メインスイッチ55は本予備苗給送装置22全体の始動・停止を指示し、散布量調整ダイヤル56は薬剤散布部42における薬剤の散布量を指示し、制御部57はマイコンを主体とし、入力信号(具体的にはメインスイッチ55の入・切信号、散布量調整ダイヤル56の回転変位量、更には後記するスイッチSW1〜SW4のON/OFF信号)と出力信号(具体的には、薬剤散布部42における散布モータ50のON/OFF及び回転量、後記する等速搬送装置60のON/OFF)との対応を採る。これらの機能は後で詳述される。なお、一方のフレーム40の上部側部にはストッパ58が取り付けられる。
【0027】
上記した薬剤散布装置23による薬剤の散布のタイミングは、予備苗給送装置22に配された給送駆動手段及び各種検知手段の作動に連動してなされる。また、苗箱持上げ案内機構30の機能についても、これら給送駆動手段及び検知手段の作動に関係付けられる。以下、本実施形態におけるその具体的構成(特徴的構成)について述べる。
【0028】
図3、図7〜図9に示されるように、給送駆動手段としての等速搬送装置60は薬剤散布装置23が取り付けられる固定苗台25の前方に配され、予備苗Aを載置している苗箱Bやスクレーパを順次強制的に等速搬送する。この等速搬送装置60は、複数の搬送ローラ61が一体的に取り付けられた前後一対の搬送ローラ軸62と、これら前後の搬送ローラ61に巻着する一対の搬送ベルト63と、後側の搬送ローラ軸62を駆動させる駆動モータ65とから構成されている。
【0029】
本実施形態の搬送ローラ61は、図8に示されるように、各搬送ローラ軸62の左右において、2個一対で相並んだ状態で一体に取り付けられており、したがって搬送ベルト63も左右につき2本が相並んだ状態で配され、本等速搬送装置60においては4本の搬送ベルト63が配されるものである。なお、1個の搬送ローラ及び1本の搬送ベルトは従来の規格のものであり、また、搬送ローラ軸62間の距離も従来規格に準じる。これにより、搬送ベルト63による把持力が増大し、上載物との滑りが減少し、苗箱Bひいては予備苗Aを確実に一定速度で搬送できるものである。
【0030】
また、本実施形態の駆動モータ65は、モータ軸65aに取り付けられる主動プーリ66と搬送ローラ軸62に取り付けられる従動プーリ67との間にチェーン69が巻き掛けられてなり、駆動モータ65の本体部を覆うようにカバー70が装着されるものである。該カバー70は成形性が良く、滑り性を保持する素材(例えばビニール素材)が推奨され、駆動モータ65の本体部にはめ込みクランプ固定した構成を採る。駆動モータ65の駆動は、モータ軸65aから主動プーリ66、チェーン69、従動プーリ67を介して搬送ローラ軸62に伝えられ、搬送ベルト63を回転動させる。また、該カバー70は駆動モータ65への外部からの不要物の付着を防止し、モータの作動性を向上させる。
【0031】
次に、本実施形態の検知手段としての予備苗検出スイッチSW1〜SW4が、図3に示すように予備苗給送装置22に沿って所定の位置関係を保って配される。詳しくは、第1の予備苗検出スイッチ(以下単に「スイッチ」という)SW1は、固定苗台25の前端に設けられ、等速搬送装置60の搬送始端位置における予備苗Aの存在を検出し、第2のスイッチSW2は、薬剤散布位置Pにおける予備苗Aの存在を検出し、第3のスイッチSW3は、後部可動苗台27の前端部における予備苗Aの存在を検出し、第4のスイッチSW4は、予備苗給送装置22の最終端における予備苗Aの存在を検出している。そして、薬剤散布装置23の取付け位置は、第3のスイッチSW3が検出する予備苗Aが、後から2番目の位置にある予備苗Aとなる位置とされる。また、これら苗検出スイッチSW1〜SW4は、本実施形態では接触式の検知スイッチを採るが、光学式、磁気式などの非接触式の検知スイッチでもよい。
【0032】
これらの苗検出スイッチSW1〜SW4は、上記制御ボックス45内の制御部57のマイコンと接続しているとともに、散布モータ50及びコンベア駆動モータ65は、制御ボックス45内の同じく制御部57からの信号を受けて作動するリレーと接続しており、これによって、薬剤散布装置23は、等速搬送装置60と連動して、等速で搬送されてくる予備苗に規定量の薬剤を均一に散布するものである。
【0033】
図10はこれらの苗検出スイッチSW1〜SW4からの検出信号、及び前記した薬剤散布装置23のメインスイッチ55の入切信号、散布量調整ダイヤル56からの設定値信号を入力値とし、所定の処理プログラムをもって散布モータ50及びコンベア駆動モータ65への出力処理をなす制御部57を主体とする本実施形態の制御系を示す。すなわち、制御部57の出力処理は、苗検出スイッチSW1〜SW4による予備苗Aの位置検出に基づく薬剤散布装置23(散布モータ50)の駆動をON/OFF制御する薬剤散布制御と、苗検知スイッチSW1〜SW4による予備苗Aの位置検出に基づく等速搬送装置60(コンベア駆動モータ65)の駆動をON/OFF制御する等速搬送制御と、散布量調整ダイヤル56の設定値に応じて薬剤散布装置23(散布モータ50)の駆動速度を変更する散布量調整制御とが含まれる。
【0034】
予備苗Aの位置検出にもとづく薬剤散布装置23及び等速搬送装置60の駆動制御のパターンは、図11に示される。すなわち、予備苗Aが予備苗給送装置22の前部より流され、スイッチSW1がONとなって等速搬送装置60のコンベア駆動モータ65が駆動され、予備苗Aの進行とともに次にスイッチSW2がONとなって薬剤散布装置23の散布モータ50が駆動され、薬剤の散布が開始される。予備苗Aが順次流れ、スイッチSW3とスイッチSW4が共にONとなるとき、薬剤散布装置23の散布モータ50及び等速搬送装置60のコンベア駆動モータ65の駆動が停止される。これにより、予備苗給送装置22において予備苗Aの流れが止まり、後続の予備苗Aを薬剤散布位置Pの手前で待機させることができるものであり、結果として、薬剤散布装置23及び等速搬送装置60の無駄な駆動を防止する。
【0035】
予備苗給送装置22の終端に予備苗Aが到達し、この最後部の予備苗Aに続く後続の予備苗Aが該最後部予備苗Aの前端に当接して停止するとき、上記したとおり、予備苗給送装置22の駆動及び薬剤散布装置23による薬剤の散布は停止されることとなるが、作業者は最後部の予備苗Aからマット苗Cを抜き取って植付作業機9の苗載せ台7に載置する。次いで、当該最後部の苗箱Bを予備苗給送装置22から取り外す作業を行う。作業者は苗箱Bの両端を把持することになるが、苗箱持上げ案内機構30の上面の可動ブラケット32の中央部32aの余裕空間(ロ)より一方の手を差し入れて該苗箱Bの後端部を把持する。次いで、苗箱Bの持上げに際し、該苗箱Bの後端部は苗箱持上げ案内機構30の可動ブラケット32の張出部32bにより隙間(イ)を許容して持上げが拘束された状態となっており、苗箱Bは前端部の持上げが優先され、これに伴い苗箱Bの後端部は可動ブラケット32の張出部32bから外れ、当該最後部の苗箱Bは予備苗給送装置22から取り外される。この苗箱Bの後端部が可動ブラケット32の張出部32bから外れるまでの間、上記したSW4はON状態を持続するので薬剤の散布は停止されたままであり、この後SW4がOFFになると予備苗給送装置22の駆動及び薬剤散布装置23による薬剤の散布が再開される。
【0036】
上記のように、乗用田植機1を構成したことによって、予備苗給送装置22の駆動及び薬剤散布装置23による薬剤の散布の停止された予備苗給送装置22の終端の苗箱B(予備苗Aの場合も同様)を該予備苗給送装置22から取り外す際に、苗箱Bは前端部側から先に持ち上げられて取り外されるので、予備苗給送装置22の駆動及び薬剤散布装置23による薬剤の散布の停止が維持され、不測の薬剤散布装置23による薬剤の散布を防止することができる。
【0037】
更に、本苗箱持上げ案内機構30はその上面の可動ブラケット32の中央部32aと苗箱Bの後端との間に余裕空間ロが存するので、作業者が苗箱Bの両端を把持する際にこの空間ロより手を差し入れることができ、該苗箱Bの持上げが容易になされる。
【0038】
更に、本苗箱持上げ案内機構30の可動ブラケット32のストッパ35により、最後部の予備苗Aを確実に停止させることができ、後方へのずれを防止でき、苗箱の取出しが容易となる。
【0039】
図12、図13に薬剤散布装置23の他の態様を示す。先に述べた同等の部材については同一の符号が付されている。この態様では、分草棒52の下方で、フレーム40の各下部内面に飛散防止板70が固設される。すなわち、飛散防止板70は取付け部70aとその下部の幅広のガイド板70bとの一体形成体からなり、取付け部70aをフレーム40の内面に当接させて取付けボルト71により固定し、ガイド板70bは分草棒52の可及的直下から斜め下方に、かつその下端部を苗箱Bの枠体近傍でかつ枠体の内方まで導いて配される。
【0040】
これにより、通常の散布位置Pへの薬剤の散布ではそのまま予備苗Cの株元部まで散布されるが、分草棒52で跳ねた薬剤の全てについても、該飛散防止板70の幅広に形成されてガイド板70bに当り、かつ苗箱Bにまで導かれ苗箱B内に返されるので、苗箱B外へのこぼれがない。
【符号の説明】
【0041】
A 予備苗
B 苗箱
1 移植機(乗用田植機)
7 苗載せ台
9 植付作業機
22 予備苗給送装置
23 薬剤散布装置
31 固定ブラケット
32 可動ブラケット
32a 前縁の凹部
35 ストッパ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗載せ台から苗を掻きとり移植する植付作業機と、機体前方から後方へ予備苗を搬送する予備苗給送装置と、該予備苗給送装置に取付けられ、搬送されてくる予備苗に薬剤を散布する薬剤散布装置とを備え、
前記予備苗給送装置の搬送経路で予備苗の位置を検出する複数の苗位置検出手段を配し、終端の予備苗の苗位置検出手段と該終端の予備苗より1つ前の予備苗の位置を検出する苗位置検出手段との同時検出により前記薬剤散布装置での予備苗への薬剤の散布を停止する移植機において、
前記予備苗給送装置の終端部に、前記終端の予備苗を前方側から先に持ち上げて取り出すように案内する苗箱持上げ案内機構を設けてなる、
ことを特徴とする移植機。
【請求項2】
苗箱持上げ案内機構は、予備苗給送装置の終端部のフレーム間の上方に主たる面を水平配置される固定ブラケットと、該固定ブラケットの下面に摺接し、該固定ブラケットの前縁より前方向に延設されるとともに前後に位置調整可能な可動ブラケットと、前記可動ブラケットの下面に固設され苗箱の後端に当接するストッパとからなり、
前記可動ブラケットの下面は前記苗箱の上面に位置するとともに、該苗箱の上面との間に終端の予備苗の苗位置検出手段が検出状態を持続する隙間を存する、
ことを特徴とする請求項1に記載の移植機。
【請求項3】
可動ブラケットの前縁の中央部において、平面視で苗箱の後端面との間に作業者の手が入る前後間隔を保持する凹部を形成してなる、
ことを特徴とする請求項2に記載の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−200162(P2012−200162A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65054(P2011−65054)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】