説明

移送装置

【課題】大量の切り粉が投入されても切り粉が絡まない移送装置を提供すること。
【解決手段】切り粉が混ざった洗浄液から切り粉と洗浄液を分離して切り粉を移送する移送装置において、チェーンコンベアの2本のチェーンに渡るようにチェーンの移動方向と平行に装着された複数の押さえ板と、後端の前記押さえ板に固着され、切り粉を押して移動させる掻き板を備えた切り粉移送器を設けた。大量の切り粉が投入されても切り粉が絡まずに排出できるので、手間がかからず、装置の稼働率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移送装置に関するものであり、特に、工作機械等から排出される洗浄液と切り粉とを分離し、切り粉を排出する移送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、旋盤等の工作機械から排出される洗浄液と切り粉とを分離し、洗浄液を濾過する濾過装置として各種の濾過装置が提案されている。下記の特許文献1には、本願の出願人が先に出願した濾過装置が記載されている。
【0003】
図4は、特許文献1に記載されている従来の移送装置を含む濾過装置の構成を示す正面図、平面図である。廃液槽20の開口部21と反対側の端部は斜め上方に延長されており、上端部にはチェーンコンベア26の軸を駆動するモーター24が装着されている。チェーンコンベア26は廃液槽20の長手方向の側面に沿って、開口部21の下部に設けられたチェーン折り返しのための円板29と上端部のモーター24によって駆動される歯車23との間に装着され、2本のチェーンの間には所定の間隔で、切り粉排出口25から切り粉収納箱に切り粉を掻き出すための、断面がL字状の金属板27が装着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−137353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来の濾過装置の切り粉の移送装置においては、切り粉を断面がL字状の金属板で掻き出していたが、特に切り粉が大量に投入された場合に、長い切り粉が金属板に絡まり、そのまま運転を続けると切り粉が後から投入された切り粉と絡みついて増大し、ドラムフィルターの回転がロックしたり、ドラムフィルターが破損する恐れがあった。従って、濾過装置を停止して絡まった切り粉を手で取り除く作業が必要になり、手間がかかると共に装置の稼働率が低下するという問題点があった。
【0006】
本発明は上記したような従来の課題を解決し、大量の切り粉が投入されても切り粉が絡まない移送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の移送装置は、切り粉が混ざった洗浄液から切り粉と洗浄液を分離して前記切り粉を移送する移送装置において、チェーンコンベアの2本のチェーンに渡るようにチェーンの移動方向と平行に装着された複数の押さえ板と、後端の前記押さえ板に固着され、前記切り粉を押して移動させる掻き板を備えた切り粉移送器を設けたことを主要な特徴とする。
【0008】
また、前記した移送装置において、前記押さえ板は前記チェーンコンベアの2本のチェーンの駒の間隔とほぼ同じ幅を備え、前記チェーンコンベアの2本のチェーンに渡る軸を中心として回動可能に固着され、かつ隣接する押さえ板と勘合している点にも特徴がある。
【0009】
また、前記した移送装置において、前記押さえ板は前記チェーンコンベアの2本のチェーンの駒の間隔とほぼ同じ幅を備え、それぞれが前記チェーンコンベアの2本のチェーンの各駒に固着されている点にも特徴がある。
【発明の効果】
【0010】
本発明の移送装置は上記したような構成によって、以下のような効果を奏する。(1)大量の切り粉が投入されても切り粉が絡まずに排出できるので、手間がかからず、装置の稼働率が向上する。
【0011】
(2)掻き板に絡まった切り粉が歯車の上部で脱落し、歯車の軸に絡まることを防止できる。
【0012】
(3)1つの切り粉移送器によって移送できる切り粉の量が増える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は本発明の移送装置を含む濾過装置の構成を示す正面図である。
【図2】図2は本発明の移送装置の実施例1のチェーンコンベアの構成を示す平面図および断面図である。
【図3】図3は本発明の移送装置の実施例2のチェーンコンベアの構成を示す平面図および断面図である。
【図4】図4は従来の移送装置を含む濾過装置の構成を示す正面図、平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下実施例について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明の移送装置を含む濾過装置の構成を示す正面図である。この濾過装置は大きく、廃液槽20と濾過された洗浄液が溜まる濾過液槽10に分けられる。廃液槽20は濾過液槽10の内部に配置されている。廃液槽20の一端の上部には図示しない旋盤等の工作機械から切り粉(金属片)40が混ざった使用済みの洗浄液(廃液)が流入する開口部21が設けられている。
【0016】
廃液槽20の中央には、軸が水平になるように設置され、チェーンコンベア36の2本のチェーンと歯車によって係合して回転する円筒形状のドラムフィルター22が配置されている。ドラムフィルター22はドラム外部から内部へ廃液17を濾過して廃液槽20の側面の開口部から濾過液槽10に流出させるようになっている。
【0017】
ドラムフィルター22は円筒形状の側面全体に細かい金網製又は布製のフィルターを備え、洗浄液の中で回転し、更にフィルターの内側から洗浄液を噴射することによってフィルターの目詰まりを防止している。切り粉40は廃液槽20の底部に残るので、この切り粉40をチェーンコンベア35に取り付けられた切り粉移送器30によって掻き出すことによって切り粉40と洗浄液17が分離される。
【0018】
廃液槽20の開口部21と反対側の端部は斜め上方に延長されており、上端部にはチェーンコンベア35の軸を駆動するモーター24が装着されている。本発明の移送装置を構成するチェーンコンベアの2本のチェーン35は廃液槽20の長手方向の側面に沿って、開口部21の下部に設けられたチェーン折り返しのための円板29と上端部のモーター24によって駆動される歯車23との間に装着されている。
【0019】
2本のチェーン35の間には、所定の間隔で切り粉排出口25から切り粉収納箱に切り粉40を掻き出すための切り粉移送器30が装着されている。切り粉移送器30の長さは装着間隔よりも短く、隣接する切り粉移送器30の間には隙間が空いている。チェーン35は廃液槽20の底面と一定の距離を保って底面と平行に移動し、切り粉移送器30の掻き板31によって底面に溜まった切り粉40が移送される。
【0020】
濾過液槽10は廃液槽20の側面の開口部から流出した濾過液を溜める容器であり、濾過液槽10には水位計、濾過液を図示しない工作機械へ送出するための複数のポンプ、ストレーナ(フィルタ)および圧力計を介してフィルター洗浄用の濾過液をドラムフィルター22へ送出するためのポンプを備えている。キャスター14は濾過装置全体を移動させるための脚輪である。
【0021】
図2は本発明の移送装置の実施例1のチェーンコンベアの構成を示す平面図および断面図である。切り粉移送器30は所定の間隔(実施例ではチェーンの駒12個分の間隔)でチェーンコンベアの2本のチェーン35に渡るように装着されている。、切り粉移送器30は、切り粉を押さえる複数の金属製の押さえ板32を備え、最後部の押さえ板32には、移動方向とほぼ直角に、切り粉40を押して移動させる金属製の掻き板31が溶接、ネジ止めなどによって固着されている。
【0022】
複数(実施例では6枚)の押さえ板32はチェーンコンベアの2本のチェーン35の駒の間隔とほぼ同じ幅であり、チェーンコンベアの2本のチェーン35に渡る(貫通している)軸33を中心として回動可能に固着され、かつ隣接する押さえ板と蝶つがい状に勘合している。なお、押さえ板32の枚数は任意である。
【0023】
このような切り粉移送器30を所定の間隔でチェーンコンベア35に装着することによって、掻き板31によって押圧された切り粉40が押さえ板32と廃液槽20の底部に挟まれた空間内に収まり、掻き板31によって押圧された切り粉40がチェーンコンベア35の上部にまで盛り上がりって掻き板31に絡まったり、掻き板31とドラムフィルター22の間に挟まってフィルター22が損傷することを防止できる。
【0024】
また、掻き板31に絡まった切り粉40が歯車23の上部で脱落し、歯車23の軸に絡まることも防止できる。更に、1つの切り粉移送器30によって移送できる切り粉の量が増える。
【実施例2】
【0025】
図3は本発明の移送装置の実施例2のチェーンコンベアの構成を示す平面図および断面図である。実施例1においては、複数の押さえ板32が蝶つがい状に勘合している例を開示したが、この場合には隣接する押さえ板32との隙間に切り粉が絡まる可能性があり、絡まった切り粉は手で取り除く必要がある。図3に示す実施例2は、隣接する押さえ板との隙間に切り粉40が絡み難くしたものである。
【0026】
実施例2の切り粉移送器30の押さえ板36はチェーンコンベアの2本のチェーン35の駒の間隔とほぼ同じ幅を備え、それぞれがチェーンコンベアの2本のチェーンの各駒に溶接、ネジ止めあるいは一体形成されるなどして固着されている。
【0027】
チェーンコンベアの2本のチェーン35は切り粉40を掻く位置においては歯車23によって牽引されるので、ほぼ直線状になり、隣接する押さえ板36との隙間は僅かとなり、かつ実施例1のような貫通する軸33が無いので、切り粉が絡み難い。
【0028】
また、実施例2においては、押さえ板36はチェーン35の複数の軸を含む平面よりも外側に、前記平面と平行に固着されている。従って、チェーン35が歯車23および円板29と勘合している間はチェーン35が円弧状になるので、隣接する押さえ板36との隙間が広がり、隙間に絡んでいた切り粉が外側に脱落し易くなる。
【0029】
以上実施例を説明したが、本発明の移送装置には以下のような変形例も考えられる。実施例においては濾過機能を備えた濾過装置について開示したが、本発明は濾過機能の有無にかかわらず実施可能である。また本発明は水系の洗浄液に限らず、任意の洗浄液、冷却液、潤滑液を使用する装置に適用可能である。
【0030】
実施例2においては、押さえ板36はチェーン35の複数の軸を含む平面よりも外側に、前記平面と平行に固着されている例を開示したが、押さえ板36はチェーン35の複数の軸を含む平面内に、固着されるようにしてもよい。
【0031】
実施例1あるいは2において、図3(b)、(c)に示すように、各押さえ板32の後端が後の押さえ板の先端の外側にうろこ状に重なり、後部の板の前端を覆うように、押さえ板の後端を延長すると共に、外側に段差状に曲げる(45)か、あるいはチェーン35の複数の軸を含む平面に対して後部ほど離れるように傾斜して固着(46)してもよい。また先頭の押さえ板の前端を円筒状に丸めてもよい。丸めることにより前端への絡まりが減少する。
また、各押さえ板32の下面に弾力性のある薄い金属製あるいは樹脂製の板をうろこ状に重ねて貼ってもよい。板は押さえ板32の後端の隙間を覆うことができる長さ以上の長さとし、後部の板の前端も覆うことが好ましい。板は後端を除く各押さえ板32に装着してもよいが、長い板を任意枚数ごとに1枚装着してもよい。このようにすれば押さえ板32の隙間に切り粉が絡まることを減少させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、工作機械等から排出される洗浄液と切り粉とを分離し、洗浄液を濾過する濾過装置に適用できる。
【符号の説明】
【0033】
10…濾過液槽
14…キャスター
17…濾過液
20…廃液槽
21…開口部
22…ドラムフィルター
23…歯車
25…切り粉排出口
28…抑止板
30…切り粉移送器
35…チェーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切り粉が混ざった洗浄液から切り粉と洗浄液を分離して前記切り粉を移送する移送装置において、
チェーンコンベアの2本のチェーンに渡るようにチェーンの移動方向と平行に装着された複数の押さえ板と、後端の前記押さえ板に固着され、前記切り粉を押して移動させる掻き板を備えた切り粉移送器を設けたことを特徴とする移送装置。
【請求項2】
前記押さえ板は前記チェーンコンベアの2本のチェーンの駒の間隔とほぼ同じ幅を備え、前記チェーンコンベアの2本のチェーンに渡る軸を中心として回動可能に固着され、かつ隣接する押さえ板と勘合していることを特徴とする請求項1に記載の移送装置。
【請求項3】
前記押さえ板は前記チェーンコンベアの2本のチェーンの駒の間隔とほぼ同じ幅を備え、それぞれが前記チェーンコンベアの2本のチェーンの各駒に固着されていることを特徴とする請求項1に記載の移送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−206199(P2012−206199A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72966(P2011−72966)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(593222001)株式会社田中製作所 (4)
【Fターム(参考)】