説明

種抜き調味梅およびその製造方法

【課題】製品の取り扱いが簡単で随時簡便に食すことができて安価に提供され得る種抜き調味梅およびその製造方法が望まれている。
【解決手段】種抜き調味梅1は、種が抜き取られて調味料で味付けされた南高梅由来の調味付け梅干6の表皮3の表面に、馬鈴薯澱粉4がまぶされている。種抜き調味梅1の製造方法は、種が抜き取られて調味料で味付けされた調味付け梅干6の表面に馬鈴薯澱粉5をまぶして種抜き調味梅1を得るデンプン塗着工程を備えている。デンプン塗着工程の前に、調味付け梅干6を所定の水分量に調整する水分量調整工程を備えていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種を抜いた梅干を調味付けした種抜き調味梅およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、梅干から種を抜いたのち調味液で味付けした種抜き調味梅が市場に出回っている。この種抜き調味梅は種を抜く際に梅干の表皮に穴が開けられる。そのため、梅肉中に浸透していた調味液が穴を通って表皮に出てくる。それにより、前記の種抜き調味梅は表面が粘り気を持つために手で触ることがためらわれたり、あるいは密閉容器に入れて取り扱う必要があった。そのために、取り扱いが簡単で随時簡便に食されるスナック食品にはなり得なかったのである。
一方で、このような種抜き調味梅に用いる梅干としては中国産のものが多い。しかしながら、中国産梅干を主原料とする種抜き調味梅は、肉質の粘り気が小さいために味があっさりし過ぎる。また、中国産梅干は種のトゲが大きく鋭いことから、種抜き作業に多大な手間と注意を要してコストが余分にかかるという問題もある。他方で、南高梅の梅干を主原料とする種抜き調味梅は未だ知られていない。
【0003】
ところで、ベト付き感をなくして取り扱いやすくするために、種を取り除いた梅干または梅肉の表面を、デンプン類を含む被覆材を水で練って被覆し、加熱して固めた梅干被覆食品が、下記の特許文献1〜3に記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開昭56−127063号
【特許文献2】登録実用新案第3001560号公報
【特許文献3】特開2006−314225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記した特許文献1〜3に記載の梅干被覆食品は、梅干または梅肉の表面を被う被覆材がカプセル状となって一定の硬さを有しているので、一般の調味梅とは食感が異なってしまう。また、梅干または梅肉は調味付けされていないので、酸味が強すぎてそのままでは美味しく食することができない。更に、これらの梅干被覆食品では、デンプン類を含む被覆材に水を加えて練る工程と、練った被覆材を梅干などの表面に被覆する工程と、被覆した被覆材を加熱して固める工程を必要とすることから、多くの手間および時間とエネルギーコストがかかるという問題もあった。
【0006】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、製品の取り扱いが簡単で随時簡便に食すことができて安価に提供され得る種抜き調味梅およびその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る種抜き調味梅は、種が抜き取られて調味料で味付けされた梅干の表面に、デンプンがまぶされているものである。
【0008】
また、前記構成において、梅干の原料を南高梅としたものである。
【0009】
そして、前記した各構成において、デンプンを馬鈴薯澱粉としたものである。
【0010】
更に、本発明に係る種抜き調味梅の製造方法は、種が抜き取られて調味料で味付けされた梅干の表面にデンプンをまぶして種抜き調味梅を得るデンプン塗着工程を備えているものである。
【0011】
また、前記の製造方法において、デンプン塗着工程の前に、種が抜き取られて調味料で味付けされた梅干を所定の水分量に調整する水分量調整工程を備えているものである。
【0012】
本発明に用いる梅干は周知の白干しの梅干を用いることができる。例えば、熟した梅実を塩で下漬けしたのち冷暗所で1月余保存し、3〜4日程度土用干しを行なって得られる梅干である。かかる梅干は概ね、塩分が18〜23wt%、酸度が3〜5wt%、水分量が50〜65wt%である。
【0013】
本発明に用いる梅干の原料梅としては、梅干の原料として用い得るものであれば特に限定されないが、例えば白加賀、鶯宿(おうしゅく)、高田梅、皆平(かえだれ)、実生(みしょう)、南高梅などが挙げられる。中でも南高梅の梅干を原料にすると、種抜き調味梅の果肉にペクチン質を多く含み噛めば噛むほど粘り気が大きくなって旨みがでてくる点で好適である。
【0014】
梅干から種を抜く手段としては、梅干の皮や果肉を著しく傷つけないものであれば特に限定されない。例えば、手で持った突き棒や指で注意深く抜き出してよいし、突き棒を有する種抜き装置で機械的に押し出してもよい。
【0015】
本発明の調味付けに用いる調味液としては、通常の調味付け梅に使用される調味液で構わない。例えば、ベースとなる梅酢に、甘味成分としての還元水飴、砂糖、蜂蜜、または黒糖と、旨味成分としてのアミノ酸系調味料、および醸造酢などを加えて調合したものを用いることができる。
【0016】
調味漬けの態様としては特に限定されないが、例えば調味液中に種抜き梅干を浸漬させる態様、種抜き梅干の表面に調味液を刷毛塗りしたり吹き付ける態様が挙げられる。かかる態様のうち、調味液中に種抜き梅干を浸漬させる態様が、種抜き梅干に調味液の調味成分を確実に浸透させることができて好ましい。浸漬される調味液の温度は種抜き梅干を変質させない温度であれば特に限定されず、例えば常温でよい。
【0017】
ところで、調味液から引き上げられた調味漬け梅干は調味液を吸収して比較的高い水分量となっている。一方で市販の調味漬け梅干を用いる場合、調味漬け梅干が乾燥し過ぎている場合もある。これらの場合、そのまま後続のデンプン塗着工程に供すると、様々な不具合を生じるおそれがある。そこで、調味漬け梅干の水分量を20wt%以上30wt%以下の所定水分量に調整する工程を経るとよい。デンプン塗着工程前の調味漬け梅干の水分量が20%を下回ると、最終商品の弾力性が小さくなり硬すぎて特に老人は食することが困難になる。無論、デンプンの塗着は不能となる。調味漬け梅干の水分量が30%を上回ると、デンプンの付着量が過多となってデンプンの味そのものが強くなって不味くなり、デンプンがまぶされているにも拘わらず手で触れたときにベト付き感が残って不快感を与える。
【0018】
前記した水分量調整の態様としては、調味漬け梅干の乾燥または水分付与の態様がある。乾燥の態様としては特に限定されないが、例えば、天日干し、陰干し、または風乾などの自然乾燥、あるいは熱風乾燥、減圧乾燥、もしくはこれらの組み合わせが挙げられる。水分付与の態様としては、例えば調味液や水への浸漬・取り出し、あるいは調味液や水の吹き付けなどが挙げられる。水分付与量は好適な浸漬時間や吹き付け量を予め選定しておくことにより調整できる。
【0019】
本発明に用いるデンプンとしては、調味付け梅干の表面に付着して手にベト付き感を与えず、調味付け梅干の味を改変しないものであれば種類を問わない。このようなデンプンとしては、例えばトウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉などが挙げられる。特に、馬鈴薯澱粉>タピオカ澱粉>小麦澱粉の順に好適に使用できる。前記の馬鈴薯澱粉を用いると、手触り感が種々のデンプン中で最も良く、粒度も好ましい程度に比較的粗いことから梅干の表面の皺内に入り込みにくい。そのうえ、外観がよくなり食感も芳しくなる。
【0020】
本発明に用いるデンプンは平均粒径が30μm以上50μm以下のものが望ましい。平均粒径が30μmを下回るデンプンであると、調味付け梅干の表面の皺にデンプンの粉が入り込む量が多くなり、白い縞模様が表れて商品の見栄えが悪くなり食感もよくない。平均粒径が50μmを上回ると、調味付け梅干の表面に付着しにくいので表面のベト付き感を解消できないうえ、大粒のザラザラ感が残って食べにくくなる。
【0021】
デンプンをまぶす手段としては、調味付け梅干の表面全体にわたって万遍なく均等な量を付着し得る手段であれば、特に限定されない。例えば、調味付け梅干に手でまぶしてよく、あるいは調味付け梅干に噴射機でデンプンを吹き付けてよく、デンプンの粉中に調味付け梅干を投じて撹拌部材でまぶすようにしても構わない。
【0022】
デンプンをまぶした種抜き調味梅は、そのまま球状の形で商品としてよいし、圧潰機や手で潰して平らな商品としても構わない。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る種抜き調味梅によれば、調味付けされた梅干の表面のベト付き感が、まぶされたデンプンにより解消されるので、取扱いが簡単になって随時簡便に食することができる。加えて、デンプンをまぶすという簡単かつ安価な手段で提供され得る。
【0024】
また、南高梅由来の梅干を原料とするものでは、果肉にペクチン質を多く含み噛むほどに粘りが出て旨くなる種抜き調味梅を得ることができる。
【0025】
そして、まぶし用のデンプンとして馬鈴薯澱粉を用いたものでは、手触り感、外観、および食感のよい種抜き調味梅を得ることができる。
【0026】
更に、本発明に係る種抜き調味梅の製造方法によれば、調味付けされた梅干の表面にデンプンがまぶされるという、簡単かつ安価な工程により種抜き調味梅を得ることができる。
【0027】
また、前記の製造方法において水分量調整工程を備えているものでは、調味付けされた梅干が所定の水分量に調整されるので、梅干の表面にベト付き感をなくせる量のデンプンを確実に付着させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
引き続き、本発明の最良の実施形態を実施例によって詳しく説明する。
【実施例1】
【0029】
この実施例に係る種抜き調味梅は、下記の、(1)水洗い工程、(2)脱塩・脱酸・殺菌工程、(3)種抜き工程、(4)調味液浸漬工程、(5)水分量調整工程、(6)デンプン塗着工程、ならびに(7)圧潰および包装工程を順に経て製造される。以下、各工程について順次詳しく説明する。
(1)水洗い工程。
まず農家より買い入れた梅干(南高梅を原料とする白干し;塩分20wt%、酸度3.5wt%、水分63wt%)400kgを合成樹脂製の蒸篭100枚に分配して載置し水洗いする。
【0030】
(2)脱塩・脱酸・殺菌工程。
2.3KL容量の埋設タンク内に貯留した65℃〜70℃の温水1500L中に、100枚の蒸篭に載せた梅干400kgを浸漬して20分間程度保持する。埋設タンク内の温水は蒸気管ヒータにより温度制御されている。この温水浸漬は脱塩・脱酸・熱殺菌を目的とするものであり、原材料の梅干の特徴、塩分や酸度に応じて浸漬時間が調整される。そうして、所定の浸漬時間経過後に梅干入りの蒸篭を埋設タンクから取り出し、乾燥ハウス内で天日干しする。この天日干しは、その日の天候により異なるがほぼ1日半行なわれる。
【0031】
(3)種抜き工程。
前記の天日干しを終えた梅干は種抜き機を用いて種抜きされる。ここで用いた種抜き機は特許第3896363号に係る浜地鐵工所社製のものであり、梅干を載置するシリコーンゴム製の載置板と、載置板の円形貫通孔を通過するように上下駆動する突き棒とを備えている。この種抜き機では、円形貫通孔を跨いで載置板上に梅干を載置し、上方から突き棒を押し下げて梅干を貫通させることにより、種を円形貫通孔から下方に抜き出すようになっている。梅干の大小及び乾燥状態により差異はあるが、種を抜かれた後の種抜き梅干の果肉および表皮の重量は元の重量の約60wt%である。このようにして得られた種抜き梅干は元の蒸篭上に並べて収容される。
【0032】
(4)調味液浸漬工程。
この調味液浸漬工程では、まず、上記の脱塩・脱酸・殺菌工程で用いた埋設タンクに下記の原材料を配合して一次浸漬用の調味液を2000リットル調製する。
・梅酢;28重量部
・還元水飴;52重量部
・砂糖;9.5重量部
・蜂蜜;2.8重量部
・黒糖;1.9重量部
・イノシン酸系調味料;0.8重量部
・醸造酢;4.7重量部
【0033】
埋設タンク中の調味液の液温を70℃前後に調整したのちは液温調整を行わず、上記の種抜き梅干を調味液に浸漬し約2日間保持したのちに取り出した。一次浸漬で使用済みの調味液は電気透析機で脱塩し、更に真空蒸発釜で約3倍に濃縮して濃縮液とした。この濃縮液を主原料とし、上記した原材料を適宜加えて、塩度3wt%、酸度5wt%、および糖度40度の二次浸漬用の調味液を調製した。この二次浸漬用の調味液に、一次浸漬済みの種抜き梅干を浸漬して5日間程度保存した(本漬け)。調味液の温度は浸漬前に40℃程度に加温したのち、そのまま放置した。このようにして得られた調味付け梅干は、塩分が4.5wt%、酸度が2.5〜3wt%、糖度が45〜50度、水分量が60wt%である。
【0034】
(5)水分量調整工程。
調味液浸漬工程を終えた調味付け梅干は、天候の良い日に乾燥ハウス内で1〜2日程天日干しされて水分量が調整される。これにより、平均23wt%の水分量の調味付け梅干が得られた。調味付け梅干の表面は適度の粘性を有している。
【0035】
(6)デンプン塗着工程。
次に、幅200cm、奥行き80cm、深さ15cmで上面が開口した矩形箱状の容器に7分目位まで馬鈴薯澱粉を入れておく。この馬鈴薯澱粉は粒形が卵型の単粒子で平均粒径41μmである美幌地方農産加工農協連製の一般白:ビホロ馬鈴しょでん粉を用いた。前記の馬鈴薯澱粉中に、水分量調整工程を終えた調味付け梅干を投入し、馬鈴薯澱粉を調味付け梅干の表面に手でまぶして種抜き調味梅とした。
【0036】
(7)圧潰および包装工程。
上記のように得られた種抜き調味梅は、ベルトコンベア上に載せられ、ベルトコンベアの搬送方向下流側端部に配置された円筒状ロールの上下対に搬送される。搬送された種抜き調味梅はロール上下対間で加圧(荷重3kg)されて平たく潰された後、手作業でポリ袋に詰められて種抜き調味梅の最終商品となる。前記のように平たくされた種抜き調味梅の例を図1および図2に示す。各図において、符号の1は種抜き調味梅、2は果肉、3は表皮、4は馬鈴薯澱粉、5は果肉2中に残る種抜き跡、6は果肉2および表皮3から成る調味付け梅干である。前記のように種抜き調味梅1を圧して平たくすると、馬鈴薯澱粉4が表皮3にいっそう密着して離脱しにくくなる。
【0037】
上記したように、本実施例の種抜き調味梅は、まぶされた馬鈴薯澱粉により梅干表面のベト付き感が解消されるので、取扱いが簡単になって随時簡便に食すことができる。加えて、馬鈴薯澱粉により吸湿性を防いで、長期保存に大きな役割を果たすことができる。また、南高梅由来の梅干を原料としているので、種抜き調味梅の果肉にペクチン質を多く含むこととなり噛むほどに粘りが出て旨くなる。また、馬鈴薯澱粉を使用しているので、種抜き調味梅の手触り感、外観、および食感がよい。更には、デンプン塗着工程の前に、調味付け梅干が所定の水分量に調整されるので、梅干表面のベト付き感をなくす量のデンプンを確実に付着させることができるという効果がある。
【0038】
尚、馬鈴薯澱粉に人口甘味料(アスパルテーム;味の素社の登録商標)を適量加えた粉を調味付け梅干にまぶしたものも試作したが、上記実施例のように馬鈴薯澱粉だけのものと比べて、種抜き調味梅の表面のベトツキ感は変わらず良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係る種抜き調味梅の外観図である。
【図2】前記種抜き調味梅の図1におけるA−A線矢視断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 種抜き調味梅
2 果肉
3 表皮
4 馬鈴薯澱粉(デンプン)
5 種抜き跡
6 調味付け梅干

【特許請求の範囲】
【請求項1】
種が抜き取られて調味料で味付けされた梅干の表面に、デンプンがまぶされていることを特徴とする種抜き調味梅。
【請求項2】
梅干の原料が南高梅である請求項1に記載の種抜き調味梅。
【請求項3】
デンプンが馬鈴薯澱粉である請求項1または請求項2に記載の種抜き調味梅。
【請求項4】
種が抜き取られて調味料で味付けされた梅干の表面にデンプンをまぶして種抜き調味梅を得るデンプン塗着工程を備えていることを特徴とする種抜き調味梅の製造方法。
【請求項5】
デンプン塗着工程の前に、種が抜き取られて調味料で味付けされた梅干を所定の水分量に調整する水分量調整工程を備えている請求項4に記載の種抜き調味梅の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−50164(P2009−50164A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217027(P2007−217027)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(399073768)梅吉食品株式会社 (1)
【Fターム(参考)】