説明

穀物原液の連続製造法、穀物原液及びその連続製造装置

【課題】 穀物を原料とした飲料を製造する従来の製造法は、バッチ式によるため、各別の工程を経ているため、飲料を製造する時間と手間がかかるばかりでなく、原料の溶解・α化によりしばしば処理液の粘性が高くなり、飲料の製造を困難にするなどの不都合を解消し、処理液が高粘度となることを未然に防止し乍ら、酵素処理により常に流動性の処理液を得ることにより、フローライン方式による連続製造を可能にした飲料、その他に用いられる穀物原液の連続製造法を提供する。
【解決手段】 穀物の少なくとも1種を原料とし、該原料と温水と液化酵素として少なくともアミラーゼとを粉砕機5に同時に投入し、該粉砕機5にて得られる混合液中の該原料の粉砕・分散・溶解・α化・液化の各処理を一挙に行い、得られる流動性の処理液を得て、これを粉砕機5に接続する通液管7を通し、その前方に設けた加熱装置6により加熱し、該処理液中の酵素の失活させること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料、糖化液製造用原料などとして用いられる穀物原液の連続製造法、穀物原液及びその連続製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、穀物を原料とする飲料の製造法に関する発明は、例えば、下記の特許文献1〜3に開示されている。特許文献1として引用の特開平5-137545号公報には、玄米を平均粒径1000μm以下に細かく粉砕した玄米の水分散液を調製する工程と、これにプロテアーゼ、セルラーゼ及びペクチナーゼを添加混合し、pH5.0、温度55℃で1時間酵素分解する工程と、80〜100℃で15〜60分間加熱し、α化した膨化米粉液を得る工程と、次いで、これにアミラーゼを混合し、酵素分解する工程とから成る水に不溶性の物質が極めて少ない玄米の水溶性組成物から成る飲料の製造法の発明が開示されている。
特許文献2として引用の特開2003-219847号公報には、生米に水を加える工程と、これを115〜125℃に1〜6分間加熱する工程と、次いで、45〜50℃に冷却後、アミラーゼを加えてホモジナイザーにより混合して1〜10分間、糖化を行う工程と、次いで、45℃以上に加熱して酵素を失活させる工程とから成る米の糖化液の製造法の発明が開示されている。
特許文献3として引用の特開2003-250485号公報には、生米に水を加え、115〜125℃に加熱する工程と、これを45〜50℃に冷却後、アミラーゼを加えてホモジナイザーにより混合して糖化を行う工程と、次いで、95℃以上に加熱して酵素を失活させる工程とから成る米糖化液の製造法の発明が開示されている。
【特許文献1】特開平5-137545号公報
【特許文献2】特開2003-219847号公報
【特許文献3】特開2003-250485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1〜3に記載の発明は、いずれも原料穀物からこれにアミラーゼにより酵素分解してその飲料や糖化液を製造するまでには、夫々不連続な各別の処理工程を経る必要があるので、相当の時間がかかり、且つ多くの人手と煩わしい労力を要し非能率であり、生産コストを増大するなどの不都合を伴う。
本発明は、穀物を原料とし、これを飲料などとして用いられる穀物原液に製造までの工程を簡易化し、極めて短時間で済み、高能率に生産される穀物原液の連続製造法と穀物原液及び連続製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、請求項1に記載の通り、穀粒又は穀粉から成る穀物の少なくとも1種を原料とし、該原料と温水と液化酵素として少なくともアミラーゼを粉砕機に投入し、該粉砕機内に得られる混合液中の該原料の粉砕・分散・溶解・α化・液化の各処理を一挙に行い、得られる流動性の処理液を該粉砕機に接続せしめた通液管内を流れてその前方に設けた加熱装置により該処理液中の酵素の失活処理を行うことを特徴とする穀物原液の連続製造法に存する。
更に本発明は、請求項2に記載の通り、該穀物の少なくとも1種を原料とし、該原料と温水と液化酵素として少なくともアミラーゼとpH調整液とを粉砕機に投入したことを特徴とする請求項1に記載の穀物原液の連続製造法に存する。
更に本発明は、請求項3に記載の通り、原料穀物に対し約4〜30倍容量の50℃〜95℃の温水と、該粉砕機の温度は50℃〜95℃であり、該原料と温水の総液量に対し約0.001%〜1%のアミラーゼ単独又はアミラーゼとセルラーゼ、プロテアーゼ及びペクチナーゼから選択した少なくとも1種とから成る複数種の液化酵素と必要に応じpH調整液とを粉砕機に投入し、pH5〜8の混合液中の該原料の粉砕・溶解・α化・液化の各処理を短時間に一挙に行い、流動性の処理液とし、これを該粉砕機から該通液管を介して該加熱装置に輸送し、約90℃〜150℃で瞬時に酵素の失活処理を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の穀物原液の連続製造法に存する。
更に本発明は、請求項4に記載の通り、少なくとも1種の穀粉を原料とし、該原料と温水と液化酵素として少なくともアミラーゼを撹拌機に同時に投入し、該撹拌機内に得られる混合液中の該原料の分散・溶解・α化・液化の各処理を一挙に行い、得られる流動性の処理液を、該撹拌機に接続せしめた通液管内を流れてその前方に設けた加熱装置により該処理液中の酵素の失活処理を行うことを特徴とする穀物原液の連続製造法に存する。
更に本発明は、請求項5に記載の通り、請求項1〜4のいずれか1つに記載の穀物原液の連続製造法により製造された穀物原液に存する。
更に本発明は、請求項6に記載の通り、穀物供給ホッパーの穀物と温水タンクの温水と酵素液タンクの液化酵素が投入される粉砕機又は撹拌機を設けると共に、該粉砕機と加熱装置とを通液管で接続したことを特徴とする穀物原液の連続製造装置に存する。
【発明の効果】
【0005】
請求項1に係る発明によれば、原料である穀物と温水と該液化酵素を粉砕機に投入するので、粉砕機の作動により、これらの投入物の混合液中の該原料の粉砕処理、温水による溶解、α化、液化酵素による液化の各処理が一挙に行われるので、得られる処理液は高粘度となることなく、常に、通液管で輸送可能な低粘度の流動性の処理液が得られる。その結果、該処理液は、該粉砕機から該粉砕機に接続した通液管内に流出でき、且つ該通液管内を流れ該加熱装置に輸送される間にもα化・液化が行われて更に低粘度の処理液となり乍ら、その前方の該加熱装置により該処理液中の酵素の失活が終了し、飲料などに適した安定した穀物原液を原料投入から短時間で高能率に連続製造することができる。
請求項2に係る発明によれば、必要に応じ、pH調整液を該粉砕機に投入し、該混合液のpHの調整を行うことにより、高能率なα化処理及び液化処理を行うことができる。
請求項3に係る発明によれば、粘度1万mPa・S以下の流動性の処理液が得られ、上記の穀物原液を迅速且つ安定良好に連続製造することができる。
請求項4に係る発明によれば、穀粉を原料とした場合には、該撹拌機により混合液中の該原料の分散・溶解・α化・液化の各処理を一挙に行い、流動性の処理液が得られるので、これを通液管に通し、その間、α化・液化が進行し乍ら、該加熱装置に達し、処理液中の酵素失活を行うことができ、短時間に高能率に穀物原液の連続製造法が可能となる。
請求項5に係る発明によれば、高能率且つ安価な各種の用途に適した穀物原液が得られる。
請求項6に係る発明によれば、上記の高能率な穀物原料の連続製造を可能にする。即ち、粉砕機内で穀物原料の粉砕・分散・溶解・α化・液化又は分散・溶解・α化・液化を一挙に短時間に行うことができると共に、更に、得られた流動性の処理液が導管内を流れる間もα化・液化が進行し、更に粘度を低下せしめることができ、加熱装置による加熱により酵素失活が瞬時に行われ、安定良好に、飲料などとして用いられる穀物原液を高能率に連続製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の穀物原液の連続製造法の実施形態の1例を、添付図面に基づいて以下詳述する。
図1は、本発明の穀物原液の連続製造法を実施する連続製造装置の1例の工程系統図である。図面で、1は穀物供給ホッパー、2は温水タンク、3はアミラーゼを主とした液化酵素液タンク、4はpH調整液タンクを示す。本発明によれば、該ホッパー1と温水タンク2と液化酵素液タンク3とから夫々の供給用導管を介し粒状又は粉状の穀物と温水と液化酵素を粉砕機5に同時に投入する。該粉砕機5は、これらの投入前に稼動しておくことが好ましい。これにより、これらの投入と同時にこれらの混合が行われると共にその混合液中の原料穀物の粉砕と分散と温水による粉砕物の溶解・α化と液化酵素によるα化澱粉の液化の各処理を行うことができる。該粉砕機5内の該混合液のpHは、必ずしも調整する必要はなく、必要に応じ調整し、pH約5〜8の範囲で良好なα化と酵素による液化処理を行う。従って、必要に応じ、pH調整液タンクからpH調整剤を前記の投入作業と同時に該粉砕機5に投入し、混合液のpHを所望の値に調整する。
投入される温水の温度は、穀物の溶解・α化処理と酵素処理に適した温度を考慮して一般に、約50℃〜95℃の範囲、好ましくは約60〜85℃の範囲が好ましい。また、投入される穀物と温水の配合容量比は、穀物に対し約4〜30倍の温水の範囲が一般である。液化酵素は、該穀物と温水の総量に対し、一般に、約0.001%〜1%、好ましくは約0.05%〜0.5%添加する。粉砕機5により、粒状の穀物、即ち、穀粒は、平均粒径約3mm以下に粉砕することが好ましい。穀粉の場合は、分散ばかりでなく、粉砕機により更に微粉砕するようにしてもよい。かくして、該混合液中の該原料の粉砕・溶解・α化・液化の好ましい各処理を一挙に行うことができ、粘度数10〜数100mPa・Sの低粘度の流動性の極めて良い処理液を得ることができる。砕粉からかかる処理液を得るまでに要する時間は温水の温度が約50℃〜95℃の場合は、約5分間〜数秒間、好ましい温度約60〜85℃の場合は数分間の短時間で済む。従って、粉砕機の負荷は少なくて済み、良好な粉砕・分散の作動を円滑に行うことができるばかりでなく、後記するように、該処理液を通液管内を流通可能とし、前方の加熱装置へ輸送することができ、ポンプにより該処理液を該通液管を通り輸送する場合には、ポンプの負荷も軽く、円滑に該加熱装置に輸送せしめることができる。多くの試験の結果、該処理液の粘度が1万mPa・S未満であれば、通液管内を流れ該加熱装置まで容易に流すことができる。かくして、本発明のフロー方式による穀物原液の連続製造法を実現することができることが判った。
【0007】
而して、本発明は、上記のように得られた流動性の処理液をフローライン方式で該処理液中の酵素を失活させるべく、図示のように、該粉砕機5と加熱装置6とを所望の長さの通液管7を接続し、該粉砕機5から得られた該処理液を該通液管7内に流出せしめ、該加熱装置6に輸送できるようにした。該通液管7内を通る間でもα化と液化が行われ、その粘度が更に低下し液化が更に進行し乍ら、該加熱装置6に送られる。かくして、該加熱装置6で90℃〜150℃、好ましくは120℃〜140℃の温度で該処理液中の酵素の失活を数秒の短時間で行い、目的とする低粘度の穀物原液を製造することができる。尚、該加熱装置6は、必要に応じ、該通液管7の下流側の外周にその長さ方向に沿い設けるようにしてもよい。かくして、本発明によれば、該粉砕機5への穀物原料などの投入から穀物原液の連続製造まで約5分程度の短時間で済む。酵素失活処理を済ませた穀物原液は、該加熱装置6から該加熱装置6に接続された配管8を通り、貯蔵タンク、その他の所望の場所へポンプにより送るようにする。例えば、該加熱装置から図示しないが、殺菌工程に送られ、次いで、缶、パックなどの充填装置などに送られる。該配管7や8に必要に応じ介在させた輸送用ポンプ(図示しない)により所望の速度で処理液や穀物原液を輸送する場合にも、低粘度のため負荷が小さく、円滑良好に作動できる。
かくして得られた穀物原液は、固形分を約3〜20%含む乳状の液体であり、僅かに甘い、風味のよい製品として得られた。穀物原液が僅かに甘味を有することは、上記の一挙処理において、α化澱粉の糖化が僅かに行われているからであると推察される。
【0008】
このように、所定量の穀物とこれに対する所定量の温水と、穀物と温水との総量に対する液化酵素の所定量を投入すれば、上記の流動性の処理液が自動的に得られ、従って、また、低粘度の飲料などに適した穀物原液が自動的に得られるので、かかる夫々の投入量を確保するため、穀物供給ホッパー1、温水タンク2、液化酵素液タンク3、更にはpH調整液タンク4には、夫々の供給用導管に流量調節弁1a,2a,3a,4aを設けておくことにより、上記の穀物原液の連続製造法を繰り返かことにより、常に所望の均質の流動性処理液を次々と得られ、従って、所望の均質の穀物原液の大量生産が可能となる。尚、該粉砕機5への液化酵素の投入は、必ずしも液化酵素液タンク3を介して液状で投入する必要はなく、液化酵素自体を直接投入するようにしても良い。
【0009】
穀物、即ち、穀類としては、玄米、白米などの米類、オーツ麦、大麦、小麦、ライ麦、はと麦などの麦類、大豆、小豆などの豆類、とうもろこしなどのもろこし類、ひえ類、あわ類、きび類などの少なくとも1種又は複数種を選択して原料として用いられる。
【0010】
液化酵素としては、アミラーゼ単独又はアミラーゼを主体とし、これにセルラーゼ、ペクチナーゼ及びプロテアーゼから選択した少なくとも1種の酵素を併用した複数の酵素として用いられる。その添加量は、前記したように、穀物と温水の総液量に対し約0.001%〜1%、好ましくは約0.05%〜0.5%である。
【0011】
必要に応じ添加されるpH調整液としては、pH調整剤としては、通常使用されるアルカリ水溶液、重曹水溶液、酸水溶液などであり、これらを選択し、水に溶解したものが使用される。そのpH調整液の投入量は極めて少量であるから、投入される所定の温度の温水の温度低下をもたらすことがない。
【0012】
該原料を粉砕する粉砕機としては、カッターミル式粉砕機、ハンマーミル式粉砕機、グラインダー式粉砕機、ボールミル式粉砕機、ホモジナイザーなど、穀粒又は穀粉を粉砕又は磨砕するものを少なくとも1台使用する。
穀物の種類や複数種の穀物によっては、粉砕機により、一度に所望の平均粒径、例えば、1mm程度に粉砕し難い場合には、図示のように、該粉砕機5と該加熱装置6とを接続する通液管7に該粉砕機5の後に適当な距離を存して、仮想線で示す追加の粉砕機5′を介在させ、粉砕機5では粗粉砕し、粉砕機5′では微粉砕する2段階で粉砕するようにすることが好ましい。かくして、追加の粉砕機5′により、先行の粉砕機5から流出してくる処理液中の分散している粗粒子を更に微粉砕し、分散・溶解・α化を促進するようにすることができる。
【0013】
該加熱装置6としては、インジェクション加熱装置、インヒュージョン加熱装置、プレート加熱装置など加熱装置を選択使用する。
【0014】
このように、上記の本発明の連続製造装置によりフローライン方式で数分程度の極めて短時間で高能率に連続製造される穀物原液は、飲料として利用できるばかりでなく、各種の調味料と混合して各種の飲料の加工に利用でき、更には、各種食品加工工程において、添加して風味、食感を改善することに利用でき、更には、糖製造の工業用原料として利用し有効である。
尚、該穀物原液を、必要に応じ、ホモジナイズ処理、例えば50MP以上のホモジナイズ処理を行い、更に風味、食感を向上させた後、殺菌工程処理し、瓶詰め、パック処理などして飲料製品とするようにしても良い。
【0015】
更に本発明によれば、穀物の粉砕物を原料とする場合、その平均粒径が更に粉砕する必要がない場合は、例えば、平均粒径約3mm以下である場合は、粉砕機に代え撹拌機を用いることができる。その連続製造装置は、図1に示す連続製造装置の工程系統図における粉砕機を撹拌機(図示しない)に代えて構成したものである。撹拌機としては、インペラ方式(プロペラ型、パドル型、タービン型)、パウブレンダー方式などの撹拌機を選択使用できる。
以下に、この装置を用いた穀物原液の連続製造法の1例を以下に詳述する。
少なくとも1種の穀粉を原料とし、該原料と温水と液化酵素として少なくともアミラーゼを前記の実施形態例と同じ夫々所定の割合で撹拌機に同時に投入し、該撹拌機内に得られる混合液を撹拌することにより該混合液中の該原料の分散・溶解・α化・液化の各処理を一挙に行い、得られる流動性の処理液を、該撹拌機に接続せしめた通液管7を通しその前方に設けた加熱装置6に輸送し、該加熱装置6により該処理液中の酵素の失活処理を行い穀物原液を連続製造する。かくして、原料の分散・溶解と同様に、その分散・溶解した澱粉質のα化と同時に液化が行われるので、常に、混合液の粘度が高粘度となることが防止されると共に、低粘度の流動性の処理液が得られるので、粉砕機5を使用した場合と同様に、撹拌機にかかる負荷が少なく、連続運転を可能とし、更に、引き続き該処理液を通液管7を通し円滑に輸送でき、フローラインによる穀物原液の連続製造ができる。また、処理液をポンプに輸送する場合にも、高粘度によりポンプにかかる負荷を増大し、輸送を困難にすることなく、円滑な作動をもたらす。
【0016】
実施例1
穀物として玄米を原料とし、玄米に対し6倍量の75℃の温水と該玄米と該温水の総重量に対し0.2%のアミラーゼとを粉砕機の作動下に、同時に投入し、得られる混合液中の該粒状原料の粉砕・分散・溶解・α化・液化を一挙に行った。投入から液化終了まで約5分間であった。得られた処理液の粘度は約100mPa・Sであった。また、該処理液に含まれる固形分は約12%、得られた低粘度の流動性の処理液を引き続き該粉砕機から、ポンプにより、該粉砕機に接続されている通液管を通しその前方に設けた蒸気インジェクション式加熱装置に輸送し、120℃〜140℃の高温で加熱し、5秒間で酵素を失活させた。加熱装置から導出した得られた穀物原液は、所望の貯蔵タンクに一時的に貯蔵し、或いは直ちに瞬間殺菌機に送り、殺菌し、次いで充填機に導き、所望の容器に充填密封して容器入りの穀物原液の製品を得た。該穀物原液の粘度は20mPa・S、固形分は12%で、乳状の滑らかで且つほんのり甘味のある飲料に適していた。
因みに、アミラーゼを添加せずに得られた処理液の粘度は1万mPa・Sを超えたペースト状の高粘度を示し、ポンプによる通液管を通し加熱装置への輸送は不可能であった。
【0017】
実施例2
図1に示す連続製造装置を使用し、穀物原料として玄米とオーツ麦を穀物供給ホッパーより該粉砕機に投入し、同時に、温水タンクと液化酵素タンクよりこの混合穀物の原料に対し 倍量の80℃の温水と該原料と温水の総重量に対し0.4%のアミラーゼと0.2%のセルラーゼとpH調整液タンクよりpH調整液とを投入し、これらの投入と同時に、粉砕機として用いた磨砕機の作動により、該磨砕機内のpH6.8の該原料の粉砕・分散・溶解・α化・液化を行いつつ、得られた流動性の処理液を該粉砕機に接続の通液管を通し、ポンプにより加熱装置に輸送し、130℃、5秒間で酵素を失活処理した。投入から失活までは約5分間であった。得られた穀物原液の粘度は15mPa・Sの液状であり、固形分10%、且つほんのり甘味を有し、且つ而も栄養価の高い飲料に適したものであった。
【0018】
実施例3
実施例1の穀物原料として用いた玄米に変え、平均粒径1mmの玄米粉を原料として実施例1の玄米と同じ量を投入し、粉砕機に代え、撹拌機を用いた以外は、温水の温度投入量、アミラーゼの投入量等は、実施例1と同じで、原料の分散・溶解・α化、液化を一挙に行い、流動性の処理液を得たものを実施例1と同様に通液管を通し、その先方の加熱装置に導入し、酵素の失活処理を行い、穀物原液を得た。該穀物原液の粘度は20mPa・S、固形分12%を有する乳濁した液状であり、ほんのり甘味を有し、舌触りの良い飲料に適する製品が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の穀物原液の連続製造法を実施するための連続製造装置の1例の工程系統図。
【符号の説明】
【0020】
1 穀物供給ホッパー
2 温水タンク
3 液化酵素液タンク
4 pH調整液タンク
5 粉砕機
6 加熱装置
7 通液管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粒又は穀粉から成る穀物の少なくとも1種を原料とし、該原料と温水と液化酵素として少なくともアミラーゼを粉砕機に投入し、該粉砕機内に得られる混合液中の該原料の粉砕・分散・溶解・α化・液化の各処理を一挙に行い、得られる流動性の処理液を、該粉砕機に接続せしめた通液管内を流れてその前方に設けた加熱装置により該処理液中の酵素の失活処理を行うことを特徴とする穀物原液の連続製造法。
【請求項2】
該穀物の少なくとも1種を原料とし、該原料と温水と液化酵素として少なくともアミラーゼとpH調整液とを粉砕機に投入したことを特徴とする請求項1に記載の穀物原液の連続製造法。
【請求項3】
原料穀物に対し約4〜30倍容量の50℃〜95℃の温水と、該粉砕機の温度は50℃〜95℃であり、該原料と温水の総液量に対し約0.001%〜1%のアミラーゼ単独又はアミラーゼとセルラーゼ、プロテアーゼ及びペクチナーゼから選択した少なくとも1種とから成る複数種の液化酵素と必要に応じpH調整液とを粉砕機に投入し、pH5〜8の混合液中の該原料の粉砕・溶解・α化・液化の各処理を短時間に一挙に行い、流動性の処理液とし、これを該粉砕機から該通液管を介して該加熱装置に輸送し、約90℃〜150℃で瞬時に酵素の失活処理を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の穀物原液の連続製造法。
【請求項4】
少なくとも1種の穀粉を原料とし、該原料と温水と液化酵素として少なくともアミラーゼを撹拌機に投入し、該撹拌機内に得られる混合液中の該原料の分散・溶解・α化・液化の各処理を一挙に行い、得られる流動性の処理液を、該撹拌機に接続せしめた通液管内を流れてその前方に設けた加熱装置により該処理液中の酵素の失活処理を行うことを特徴とする穀物原液の連続製造法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の穀物原液の連続製造法により製造された穀物原液。
【請求項6】
穀物供給ホッパーの穀物と温水タンクの温水と酵素液タンクの液化酵素が投入される粉砕機又は撹拌機を設けると共に、該粉砕機と加熱装置とを通液管で接続したことを特徴とする穀物原液の連続製造装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−207359(P2009−207359A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50367(P2008−50367)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(390022231)マルサンアイ株式会社 (5)
【Fターム(参考)】