説明

穀稈搬送装置

【課題】穀稈が無理な姿勢とならないように搬送することで、穀稈の搬送乱れや稈こぼれを防止することが可能なコンバインの穀稈搬送装置を提供する。
【解決手段】コンバイン1の掻込み搬送装置30は、右側下穂先搬送体34及び右側上穂先搬送体35からなる右側穂先搬送体33と案内板50とによって形成される搬送通路Mにより刈取穀稈を搬送するように構成されている。該案内板50には、右側上穂先搬送体35の爪35aの先端部35cの通過軌跡に沿うように溝状に形成された凹部50Aが設けられている。これにより、爪35aの先端部35cが案内板50の凹部50Aを通過するため爪35aの中腹部分で穀稈を係止して、穀稈を案内板50と略々平行に保ったまま搬送することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばコンバイン等の作業車輌に搭載される穀稈搬送装置に係り、詳しくは、搬送爪によって刈取穀稈を係止して搬送する穂先搬送体を備えた穀稈搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインには、機体前方側に、刈刃、引起し装置及び各種の搬送体を有する前処理部が配設されており、該前処理部は、引起し装置によって引起した穀稈を刈刃によって刈取り、この刈取られた穀稈は各種の搬送体によって機体後方側に備えられた脱穀装置へ搬送されるように構成されている。このような前処理部の搬送体は、株元搬送体及び穂先搬送体などで構成されており、該穂先搬送体は、それぞれ穀稈を係止する搬送爪を有する主穂先搬送体及び副穂先搬送体を備えている。
【0003】
また、このようなコンバインの前処理部には、上記穂先搬送体に沿って配置され、穀稈を案内する案内板が設けられたものが案出されており(例えば特許文献1参照)、搬送される穀稈が不揃いとなってしまうことの防止を図っている。
【0004】
【特許文献1】実公平6−47235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1のような穀稈搬送装置では、穂先搬送体の搬送爪の先端と案内板との間に隙間ができてしまい、この隙間から穀稈がこぼれてしまう虞があった。そのため、案内板にガイドプレートを設け、即ち、穀稈の搬送方向と直角となる上方視においてガイドプレートと搬送爪とがオーバラップするように配置し、該搬送爪と案内板との間に隙間がなくなるようにすることが考えられる。
【0006】
しかしながら、搬送される穀稈は、ガイドプレートの端部において線接触となり、応力が集中するため、該ガイドプレートの端部で湾曲し、穀稈が折れたり切れたりしてしまうことによる搬送乱れや稈こぼれを生じるという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、穀稈が無理な姿勢とならないように搬送することで、穀稈の搬送乱れや稈こぼれを防止することが可能なコンバインの穀稈搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る本発明は(例えば図1乃至図4参照)、それぞれ穀稈を係止する搬送爪(例えば34a,35a)を有する下穂先搬送体(34)及び上穂先搬送体(35)からなる穂先搬送体(33)を備え、
前記穂先搬送体(33)が搬送通路(M)に沿って刈取穀稈の穂先側を前記搬送爪(例えば34a,35a)によって係止して搬送する穀稈搬送装置(30)において、
前記穂先搬送体(33)に対向して配置され、刈取穀稈を前記搬送通路(M)に沿って案内する案内板(50)を備え、
前記案内板(50)に前記上穂先搬送体(35)の前記搬送爪(35a)の先端部(35c)が通過する凹部(50A)を設けてなる、
ことを特徴とする穀稈搬送装置(30)にある。
【0009】
請求項2に係る本発明は(例えば図4参照)、前記凹部(50A)は、前記搬送爪(35a)の上方側の空間(50a)が、下方側の空間(50b)よりも広く形成されてなる、
ことを特徴とする請求項1記載の穀稈搬送装置(30)にある。
【0010】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る本発明によると、案内板に上穂先搬送体の搬送爪の先端部が通過する凹部を設けているので、例えばガイドプレートを備えた場合に比して、穀稈に応力が集中する部分をなくすことができ、穀稈を無理な姿勢にすることなく搬送することができて、搬送乱れや稈こぼれを防止することができる。
【0012】
請求項2に係る本発明によると、凹部は、搬送爪の上方側の空間が、下方側の空間よりも広く形成されているので、穀稈の穂先側の搬送スペースを充分に確保することができ、穀稈を無理な姿勢にすることなく搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に関する実施の形態を図1乃至図4に沿って説明する。
【0014】
図1に示すように、コンバイン1は、進行方向左右のクローラ走行装置2,2に支持された走行機体3に、該走行機体3に対して昇降自在に接続されている前処理部11等を備えて構成される。走行機体3は、左右幅方向の左側に穀稈の脱穀を行うための脱穀装置5が配設され、該脱穀装置5の左側方には、前処理部11にて刈取られた穀稈を搬送する脱穀フィードチェーン6が配設されている。脱穀装置5にて脱穀された穀粒は、揚上搬送されて、走行機体3の右側に配設されたグレンタンク8に一時的に貯留され、該グレンタンク8には、内部に貯留した穀粒を排出するためのオーガ9が配設されている。
【0015】
また、走行機体3の右側前方、即ちグレンタンク8の前方には、運転席7aや操作パネル7b等が設けられる運転部7が配設されており、さらに走行機体3の後部には、穀粒が脱穀された排藁を処理する排藁処理装置10が配設されている。また、前処理部11から走行機体3にかけての左側方には、格納姿勢及び作業姿勢をとり得るように構成され、未刈り側から倒伏してきた穀稈を左側又は前方側に案内するナローガイド55が配設されている。
【0016】
上記前処理部11は、走行機体3の略々全幅にわたって穀稈を分草する複数の分草デバイダ12を有しており、該分草デバイダ12は、機体前方に延びる分草フレーム51にそれぞれ取付けられている。また、分草デバイダ12のそれぞれの後方には、分草された穀稈を引起す複数の引起し装置13が前方から後方に向けて上昇する傾斜状に設けられている。さらに、前処理部11の両側面には、それぞれ保守・整備のために簡単に着脱することを可能としたサイドカバー52が配設されている。
【0017】
前処理部11は、図2及び図3に示すように、その作動基端側を伝動軸ケース21に固着され、かつ走行機体3の前方斜め下方に向けて延出する縦伝動ケース22に接続されている。該縦伝動ケース22は、その中間部に連結された図示を省略している油圧シリンダの伸縮に基づき昇降可能に前処理部11を支持している。この縦伝動ケース22の下端部、即ち前処理部11との接続部側では、機体左右方向に延設され、かつ該縦伝動ケース22と略々T字状に直交する横伝動ケース23が一体的に連結されている。
【0018】
上記引起し装置13は、図2に示すように、爪付きチェーン13aと引起しケース13bとを有し、該爪付きチェーン13aには所定間隔で複数本の爪13cが取付けられ、これらの爪13cが引起しケース13b内を上方に回動して穀稈を引起す。この爪付きチェーン13aを駆動する動力は、伝動軸ケース21内の駆動軸から縦伝動ケース22内及び横伝動ケース23内の駆動軸を介し、該横伝動ケース23から機体前方側の上方向へ傾斜状に延びる引起し伝動ケース25によって伝達されている。また、引起し装置13は、この引起し伝動ケース25によって上端部が支持されている。
【0019】
上記引起し装置13の後方で、かつ横伝動ケース23の前方下部には、地面に近接して穀稈の株元を切断する刈刃53が設けられ、この刈刃53により切断された穀稈は、掻込み搬送装置30によって略々直立状態で掻込まれて後方に搬送される。
【0020】
掻込み搬送装置(穀稈搬送装置)30は、図2及び図3に示すように、右側掻込み搬送ベルト(図示せず)、右側株元搬送チェーン31、右側掻込みスターホイル32、及び右側穂先搬送体(穂先搬送体)33などを有する右側掻込み搬送装置30rと、中央掻込み搬送ベルト(図示せず)、中央掻込みスターホイル36、左側掻込み搬送ベルト37、左側株元搬送チェーン38、左側掻込みスターホイル39、及び左側穂先搬送体40などを有する左側掻込み搬送装置30lとで構成されている。また、上記右側穂先搬送体33は、右側下穂先搬送体34及び右側上穂先搬送体35によって構成されており、左側穂先搬送体40は、左側下穂先搬送体41及び左側上穂先搬送体42によって構成されている。
【0021】
そして、右側掻込みスターホイル32などにより掻き込まれた右側の穀稈は、詳しくは後述する案内板50との間に形成される搬送通路Mに導かれると共に、右側株元搬送チェーン31、右側下穂先搬送体34、及び右側上穂先搬送体35によって搬送される。また、左側掻込みスターホイル39などにより掻き込まれた左側の穀稈は、案内板50との間に形成される搬送通路Nに導かれると共に、左側株元搬送チェーン38、左側下穂先搬送体41、及び左側上穂先搬送体42によって搬送される。
【0022】
さらに、上記掻込み搬送装置30の後方には、上記伝動軸ケース21に連結されると共に該伝動軸ケース21を中心として上下に揺動自在な扱深搬送装置45が設けられており、該掻込み搬送装置30から引継がれた穀稈は、この扱深搬送装置45における株元扱深搬送体46により株元側が挟持され、穂先扱深搬送体47により穂先側が挟持されて搬送される。また、この扱深搬送装置45により、穀稈はその長さが感知され、予め設定しておいた扱深さに自動的に調節され、脱穀フィードチェーン6により、上述の脱穀装置5に向けて搬送されるように構成されている。
【0023】
次に、本発明の要部である右側穂先搬送体33及び案内板50について、図4に沿って説明する。
【0024】
右側穂先搬送体33は、横伝動ケース23(図3参照)に接続され、該横伝動ケース23からベベルギヤを介して動力が伝達される下穂先搬送駆動軸(図示せず)を下穂先搬送伝動ケース56内に備えており、また該下穂先搬送駆動軸にオフセットして配置されると共にスプロケットとチェーンからなる伝動機構によって動力が伝達される上穂先搬送駆動軸(図示せず)を上穂先搬送伝動ケース57内に備えている。
【0025】
上記下穂先搬送駆動軸の上方部分には、該下穂先搬送駆動軸と一体に回転するように固着された下駆動スプロケット(図示せず)が配置されており、該下駆動スプロケットには、下従動スプロケット(図示せず)との間に所定間隔で複数本の爪34aが取付けられた爪付きチェーン34bが巻掛けられている。即ち、右側下穂先搬送体34は、これら下駆動スプロケット、下従動スプロケット、及び爪付きチェーン34bによって構成されている。
【0026】
また、上記上穂先搬送駆動軸の上端部分には、該上穂先搬送駆動軸と一体に回転するように固着された上駆動スプロケット(図示せず)が配置されており、該上駆動スプロケットには、上従動スプロケット(図示せず)との間に所定間隔で複数本の爪(搬送爪)35aが取付けられた爪付きチェーン35bが巻掛けられている。即ち、右側上穂先搬送体35は、これら上駆動スプロケット、上従動スプロケット、及び爪付きチェーン35bによって構成されている。
【0027】
案内板50は、図3に示すように、中央寄りの引起し装置13の背面側に配置されており、後方側となるにしたがって中央側に寄るように形成され、上方視で三角形状となるように構成されている。また、案内板50は、左側の側面が左側穂先搬送体40に対向して配置されており、該左側穂先搬送体40との間に搬送通路Nを形成している。さらに、案内板50は、右側の側面が右側穂先搬送体33に対向して配置されており、該右側穂先搬送体33との間に搬送通路Mを形成している。
【0028】
また、案内板50は、図4に示すように、右側上穂先搬送体35の爪35aと近接する部分に該爪35aの先端部35cが、案内板50に接触しないで通過するための凹部50Aが形成されている。該凹部50Aは、爪35aの先端部35cの通過軌跡に沿うように溝状に形成されている。また、凹部50Aは、爪35aの先端部35cよりも下方側の空間50bよりも上方側の空間50aの方が広くなるように形成されている。
【0029】
次に、本発明に係るコンバイン1の作用について説明する。
【0030】
4条刈りのコンバイン1は、図2及び図3に示すように、複数の引起し装置13によって穀稈を引起し、刈刃53によって穀稈を刈取る。刈取られた穀稈のうちの右側の穀稈は、右側掻込みスターホイル32などからなる右側掻込み搬送装置30rに掻き込まれ、搬送通路Mに導かれると共に、右側株元搬送チェーン31、右側穂先搬送体33によって扱深搬送装置45へ搬送される。
【0031】
また、刈取られた穀稈のうちの左側の穀稈は、中央掻込みスターホイル36、左側掻込みスターホイル39などにより、左側掻込み搬送装置30lに掻き込まれる。そして、これらの穀稈は、搬送通路N導かれると共に、左側株元搬送チェーン38、左側穂先搬送体40によって扱深搬送装置45へ搬送される。
【0032】
扱深搬送装置45では、上記掻込み搬送装置30から引継がれた穀稈が、株元扱深搬送体46により株元側が挟持され、穂先扱深搬送体47により穂先側が挟持されて搬送される。また、この扱深搬送装置45により、穀稈はその長さが感知され、予め設定しておいた扱深さに自動的に調節される。その後、穀稈は、該扱深搬送装置45から脱穀フィードチェーン6に引き継がれて、上述の脱穀装置5に向けて搬送される。
【0033】
このとき、右側穂先搬送体33と案内版50との間に形成された搬送通路Mを搬送される穀稈は、図4に示すように、右側上穂先搬送体35の爪35aの先端部35cが案内板50の凹部50A(に逃げる)を通過するため爪35aの中腹部分で穀稈を係止して、穀稈を案内板50と略々平行に保ったまま搬送することができる。これにより、穀稈に応力が集中する部分をなくすことができ、穀稈を無理な姿勢にすることなく搬送することができて、搬送乱れや稈こぼれを防止することができる。また、凹部50Aは、爪35aの上方側の空間50aが、下方側の空間50bよりも広く形成されているので、穀稈の穂先側の搬送スペースを充分に確保することができ、穀稈を無理な姿勢にすることなく搬送することができる。
【0034】
なお、本実施の形態では、案内板50の凹部50Aが、右側穂先搬送体33に対向する面にのみ形成されるように説明したが、これに限らず、左側穂先搬送体40に対向する面にのみ形成されていても、また右側穂先搬送体33に対向する面及び左側穂先搬送体40に対向する面の両側に形成されていても本発明を適用することができるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施の形態に係るコンバインを示す斜視図。
【図2】コンバインの前方部分を示す側面図。
【図3】コンバインの前方部分を示す平面図。
【図4】案内板と右側穂先搬送体を示す斜視図。
【符号の説明】
【0036】
30 穀稈搬送装置(掻込み搬送装置)
33 穂先搬送体
34 下穂先搬送体
34a 搬送爪
35 上穂先搬送体
35a 搬送爪
35c 先端部
50 案内板
50A 凹部
50a 上方側の空間
50b 下方側の空間
M 搬送通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ穀稈を係止する搬送爪を有する下穂先搬送体及び上穂先搬送体からなる穂先搬送体を備え、
前記穂先搬送体が搬送通路に沿って刈取穀稈の穂先側を前記搬送爪によって係止して搬送する穀稈搬送装置において、
前記穂先搬送体に対向して配置され、刈取穀稈を前記搬送通路に沿って案内する案内板を備え、
前記案内板に前記上穂先搬送体の前記搬送爪の先端部が通過する凹部を設けてなる、
ことを特徴とする穀稈搬送装置。
【請求項2】
前記凹部は、前記搬送爪の上方側の空間が、下方側の空間よりも広く形成されてなる、
ことを特徴とする請求項1記載の穀稈搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−98980(P2010−98980A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−271897(P2008−271897)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】