説明

穀類の液化糖化物の製造方法

【課題】穀類を膨化装置で膨化させ、次にこの膨化物を微粉砕し、得た粉状体に水を加えて麹菌または酵素処理を施し、所定時間発酵させることにより、なめらかな食感や喉越しの感覚の良好な液化糖化物を得られることを見出し、本発明に到達したものである。
【解決手段】穀類を膨化装置で膨化させ、次にこの膨化物を微粉砕し、得た粉状体に水を加え、麹菌または酵素処理を施し、所定時間発酵および液化糖化させることにより、液化糖化物を得るようにしたことを特徴とする穀類の液化糖化物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は穀類を膨化させた後、液化糖化(発酵含む)し、食感、食味(風味)において優れており、かつ製造工程が複雑ではなく、製造コストを低減した穀類の液化糖化物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
玄米を代表とする精白していない穀類には、外皮に由来する食物繊維、ミネラル、ビタミン、および機能性成分などの栄養素が豊富に含まれている。よってこれらを利用した外皮成分を含む食品が種々提案されている。
例えば、特開2004−194592号公報(特許文献1)には、玄米若しくは発芽玄米を液化糖化して玄米液化糖化物を得て、これを食品に加える玄米若しくは発芽玄米を使用した加工食品の製造方法が記載されている。そして前処理として加熱処理,粉砕処理,加水処理を行うことが示されている。
【0003】
特開2007−275017号公報(特許文献2)には、発芽玄米を蒸煮し麹菌を接種し発芽玄米麹を作製する発芽玄米麹作製工程と、該発芽玄米麹を粉砕する発芽玄米麹粉砕物作製工程と、該発芽玄米麹粉砕物に水および糖化酵素を添加し糖化する糖化工程とを行うことを特徴とする発芽玄米を用いた甘酒の製造方法が記載されている。
【0004】
特開2000−232870号公報(特許文献3)には、玄米と白米とを精選した後、炒って色相と香いを付与してから粉砕する工程と;前記分離された玄米と白米とを所定の比率で混合し、液化酵素を添加し酵素分解させて一次酵素分解液を得る工程と;前記一次酵素分解液、糖化酵素、タンパク質分解酵素、ペクチン分解酵素を添加した後、酵素分解させて、透明な二次酵素分解液を得る工程と;前記二次酵素分解液に乳化力及び制菌力を有する蔗糖脂肪酸エステルを添加し乳化均質させて、黄色又は白色の固有色相を有する液を製造する工程と;高温短時間殺菌した後、所定の容器に充填/包装する工程を含む米飲料の製造方法が記載されている。
【特許文献1】特開2004−194592号公報
【特許文献2】特開2007−275017号公報
【特許文献3】特開2000−232870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記従来の製造方法では、穀類(特に玄米)に含まれる不溶性成分由来のざらつきのある食感や喉越しの感覚は、粉砕や液化糖化(発酵含む)では改善できず、粒状のものが残った状態で飲食するか、もしくは漉過、遠心分離などで除去して食感や喉越しの感覚を改善していた。
【0006】
とりわけ、穀類(特に玄米)には堅い外皮が存在するため、そのままでは麹発酵ができず、殻粒の外皮を僅かにとう精し、麹菌を付けてこうじ室で発酵させたり、穀粒を発芽させて一度外皮を脆弱化した後、麹菌を付けてこうじ室で発酵するなどの手法を採用していた。また穀粒を粉砕して糊化した後、液化糖化(発酵)処理をするなどの手法も採用しているが、いずれも工程が複雑で製造コストが大きなものとなっていた。
しかも、穀粒(特に玄米)を白米、米麹などで混合しないと風味が増さないため、100%の穀粒の液化糖化物を製造できないという問題点があった。
【0007】
そこで本発明者は種々研究を重ねた結果、穀類を膨化装置で膨化させ、次にこの膨化物を微粉砕し、得た粉状体に水を加えて麹菌または酵素処理を施し、所定時間発酵させることにより、なめらかな食感や喉越しの感覚の良好な液化糖化物を得られることを見出し、本発明に到達したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわちこの発明の穀類の液化糖化物の製造方法は、穀類を膨化装置で膨化させ、次にこの膨化物を微粉砕し、得た粉状体に水を加え、麹菌または酵素処理を施し、所定時間発酵および液化糖化させることにより、液化糖化物を得るようにしたことを特徴とするものである。
【0009】
この発明の穀類の液化糖化物の製造方法において、前記穀類は、米、小麦、とうもろこし、大麦、燕麦、ライ麦、あわ、きび、こうりゃん、そば、アマランサスなどの穀類から選ばれたものであることをも特徴とするものである。
【0010】
この発明の穀類の液化糖化物の製造方法において、前記膨化物を微粉砕し、水を加えた後の穀類濃度は5%〜75%であることをも特徴とするものである。
【0011】
この発明の穀類の液化糖化物の製造方法は、穀類を膨化装置で膨化させ、次にこの膨化物を微粉砕し、得た粉状体に水を加え、麹菌または酵素処理を施し、さらに混ぜたものを5℃〜95℃で、1分〜30日間の発酵および液化糖化をさせることをも特徴とするものである。
【0012】
すなわちこの発明においては、穀類を穀粒のまま、あるいは予め粗粉砕した上で、エクストルーダーなどの膨化装置で膨化させ、ポン菓子状のものを作る。
このように膨化したことにより外皮成分および澱粉は膨張し、微粉砕しやすくかつ液化糖化しやすい状態にすることができるようになった。また熱変質で穀粒に風味を付与することができる。
この膨化したポン菓子状のものを微粉砕し、例えば水に懸濁させて麹菌あるいは酵素処理することでなめらかな食感や喉越しの感覚が良好で、食味(風味)の優れた液化糖化物を得ることができる。
しかも、製造工程が複雑ではないため製造コストを大幅に低減した穀類の液化糖化物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明に係る穀類の液化糖化物の製造方法の実施の形態を、玄米を例にとって示す。もちろん、玄米を例に示したが、玄米のかわりに発芽玄米、黒米、赤米、小麦、とうもろこし、大麦、燕麦、ライ麦、あわ、きび、こうりゃん、そば、アマランサスなど種々の膨化できる穀物にも対応できることはいうまでもない。
【実施例1】
【0014】
玄米粒を精選した後、穀物膨化製造機(エクストルーダー)で膨化処理を行い、玄米粒を膨らませた。得られた膨化玄米を粉砕機により微粉砕し、微粉砕した穀粉を得た。この微粉砕した穀粉に対し麹菌を含む水を液状から半固形状までの目的とする液化糖化物に合わせて、穀粉濃度10%〜50%になるように添加し混ぜた。この混ぜたものを30℃〜40℃で5時間〜12時間発酵させ、さらに55℃〜70℃で5時間〜24時間処理し、液化糖化させた。最後に、この液化糖化物を80℃以上で加熱殺菌し、目的の液化糖化物を得ることができた。
この液化糖化物は穀粉濃度により液状から半固形状となり、様々な食品に供することができるものとなった。
【実施例2】
【0015】
玄米粒を精選した後、穀物膨化製造機(エクストルーダー)で膨化処理を行い、玄米粒を膨らませた。得られた膨化玄米を粉砕機により微粉砕し、微粉砕した穀粉を得た。この微粉砕した穀粉に対しアミラーゼ、グルコアミラーゼおよびぺクチナーゼ水溶液を液状から半固形状までの目的とする液化糖化物に合わせて穀粉濃度10%〜50%になるように添加し混ぜた。この混ぜたものを45℃〜65℃で5時間〜24時間処理し、液化糖化させた。最後に、この液化糖化物を80℃以上で加熱殺菌し、目的の液化糖化物を得ることができた。
この液化糖化物は穀粉濃度により液状から半固形状となり、様々な食品に供することができるものとなった。
【実施例3】
【0016】
玄米粒を精選した後、穀物膨化製造機(エクストルーダー)で膨化処理を行い、玄米粒を膨らませた。得られた膨化玄米を粉砕機により微粉砕し、微粉砕した穀粉を得た。この微粉砕した穀粉に対し麹菌を含むアミラーゼ、グルコアミラーゼおよびぺクチナーゼ水溶液を液状から半固形状までの目的とする液化糖化物に合わせて、穀粉濃度10%〜50%になるように添加し混ぜた。この混ぜたものを30℃〜40℃で5〜12時間発酵させた後、さらに45℃〜65℃で5〜24時間処理し、液化糖化させた。最後に、この液化糖化物を80℃以上加熱殺菌し、目的の液化糖化物を得ることができた。
この液化糖化物は穀粉濃度により液状から半固形状となり、様々な食品に供することができるものとなった。
【0017】
上述のように玄米を膨化させた上、液化糖化させた後の本願発明の液化糖化物と、従来の玄米を膨化させないで液化糖化させた方法による液化糖化物の粒度を比較して、本願発明の有意性を確認した。
すなわち、前者(膨化物)と後者(非膨化物)のそれぞれ微粉砕した穀粉を同一条件で液化糖化し、そのときの粒度(メジアン径)を測定した。結果を表1に示す。
【表1】

結果として格段に粒度の小さい液化糖化物を得ることができ、種々の用途に向けて加工しやすく、飲料等とした場合に非常に飲みやすい液化糖化物を得ることができるようになった。
【0018】
また、追加酵素として前記実施例におけるアミラーゼ、グルコアミラーゼおよびぺクチナーゼのほか、プロテアーゼ、セルラーゼを使用した場合も、同等の液化糖化物を得ることができた。
さらに、エクストルーダーなどの膨化装置で膨化させる前に穀類を粗粉砕しておけば、膨化処理を迅速に行なうことができ、また膨化後の微粉砕をより効率的に行なうことができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
この発明の穀類の液化糖化物の製造方法を適用して得られた液化糖化物は、上述のようにそのまま米発酵飲料として飲用に供することができるほか、甘酒、味噌、醤油、アイスクリーム、ヨーグルト、ゼリー、スープなど、液状、流動物、ゲル状、半固形状等の様々な食品に利用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀類を膨化装置で膨化させ、次にこの膨化物を微粉砕し、得た粉状体に水を加え、麹菌または酵素処理を施し、所定時間発酵および液化糖化させることにより、液化糖化物を得るようにしたことを特徴とする穀類の液化糖化物の製造方法。
【請求項2】
穀類は、米、小麦、とうもろこし、大麦、燕麦、ライ麦、あわ、きび、こうりゃん、そば、アマランサスの穀類から選ばれたものであることを特徴とする請求項1に記載の穀類の液化糖化物の製造方法。
【請求項3】
膨化物を微粉砕し、水を加えた後の穀類濃度は5%〜75%であることを特徴とする請求項1または2に記載の穀類の液化糖化物の製造方法。
【請求項4】
穀類を膨化装置で膨化させ、次にこの膨化物を微粉砕し、得た粉状体に水を加え、麹菌または酵素処理を施し、さらに混ぜたものを5℃〜95℃で、1分〜30日間の発酵および液化糖化をさせることを特徴とする請求項1に記載の穀類の液化糖化物の製造方法。