説明

積層コイル

【課題】一定の電子部品をも含むようにして構成する形式の回転駆動装置に適用する場合に、その回転駆動装置における一層の薄型化を図りつつ、内部の電子部品収容スペースを十分に確保することが可能な積層コイルを実現する。
【解決手段】複数の各コイル層110〜140は、自層の中心から放射方向に延長した複数の仮想半直線で区切られた複数の部分領域S1〜S6のうちの一部または全部の各該当する部分領域ごとに前記平面コイルを埋設して構成し、当該複数のコイル層を既定の順序で積層し他層との相対位置を固定して積層コイル100を構成し、複数のコイル層のうち既定の複数のコイル層は、自層の複数の部分領域S1〜S6のうちの特定の部分領域S2,S3に平面コイルを埋設せず且つ他層に設けられた電子部品14,15との干渉を回避するためのキャビティ131,141を形成した干渉回避用コイル層130,140とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁樹脂に平面コイルを埋設して構成したコイル層を複数積層した積層コイルに関し、特に、この積層コイルを適用した回転駆動装置の更なる薄型化を図ることができるようにした、積層コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁樹脂に平面空心コイルを該絶縁樹脂の仮想中心軸の周りに軸対称に複数配してコイル層を形成し、該コイル層を複数積層して構成した積層コイルが知られている。そして、積層コイルに電子部品を実装する際、図3に示したように、積層コイルの上層のコイル層に実装する技術がある(特許文献1の図5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】台湾特許公開公報第201103234号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年、モーターの駆動回路を構成するICや受動素子等の電子部品をも含むようにしてモーターを構成する技術が普及しはじめている。このような技術を適用したモーターでは電子部品の収容のために一定の実装用スペースを確保する必要があるが、それでもなお一層の薄型化が要求される傾向にある。
上記の特許文献1記載の技術では、図3に示したように、複数層(例えば4層)のコイル層310、320、330、340の相互間を、絶縁層315、325、335で絶縁して積層コイルを構成している。そして、最上層のコイル層340の上面に、電子部品たるモーターの駆動回路350を実装している。従って、図3のようなコイル層を適用してモーターを構成すると、電子部品350の厚みの分だけ、当該モーターのステーターとローターとの間隙が必要となり、このため昨今のようなモーターの更なる薄型化を求めようとする要請には十分に応えきれない。
【0005】
本発明は、上述のような状況に鑑みてなされたものであり、一定の電子部品をも含むようにして構成する形式の回転駆動装置に適用する場合に、その回転駆動装置における一層の薄型化を図りつつ、内部の電子部品収容スペースを十分に確保することが可能な積層コイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の技術課題を解決するために、ここに、次のような技術を提案する。
(1)絶縁樹脂に平面コイルを埋設して構成したコイル層を複数積層し相互に固定した積層コ
イルであって、
該積層コイルの中の各コイル層の中で最も底部に位置し、複数の平面コイル或いは引回し線が配されている基底コイル層と、
前記積層コイルの中の各コイル層の中で前記基底コイル層の上層に位置し、電子部品を電気的に接続する配線が配されている配線用コイル層と、
前記積層コイルの中の各コイル層の中で前記配線用コイル層の上層に位置し、前記電子部品との干渉を回避するためのキャビティを有する干渉回避用コイル層と、
を備えることを特徴とする積層コイル。
上記(1)の積層コイルは、これを回転駆動装置に適用したときに、干渉回避用コイル層によって、電子部品との干渉を回避した適切な電子部品実装スペースを確保することができる。
【0007】
(2)上記(1)の積層コイルであって、
前記配線用コイル層と前記干渉回避用コイル層との間にスペーサを介挿させたことを特
徴とする積層コイル。
上記(2)積層コイルは、(1)の積層コイルにおいて特に、スペーサの形状および寸法を適切に選択することによって、電子部品実装スペースの形状および寸法の調整が容易にできる。
【発明の効果】
【0008】
一定の電子部品をも含むようにして構成する形式の回転駆動装置に適用する場合に、その回転駆動装置における一層の薄型化を図りつつ、内部の電子部品収容スペースを十分に確保することが可能な積層コイルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態としての積層コイルを用いた回転駆動装置を表す図である。
【図2】図1の回転駆動装置における積層コイルの構成を、各コイル層毎に説明するための図である。
【図3】従来の積層コイルを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態につき詳述することによって本発明を明らかにする。
図1は、本発明の実施の形態としての積層コイルを用いた回転駆動装置を表す図である。
図1の回転駆動装置10は、例えば、携帯電話の振動音告知用として使用されるバイブレータである。
【0011】
また、図2は、図1の回転駆動装置における積層コイルの構成を、各コイル層毎に説明するための図である。
回転駆動装置10は積層コイル100への通電によって生じる磁力でマグネットロータ13が回転するように構成されている。
積層コイル100は、絶縁樹脂に平面コイルを埋設して構成したコイル層を複数積層し相互に接着剤等により固定したものである。
【0012】
積層コイル100の複数のコイル層の積層順における最も底部に位置するコイル層である基底コイル層110の直上に位置する配線用コイル層120の中心部に、この配線用コイル層120の主面に垂直に主軸11が固定してある。
この実施の形態では、主軸11を固定するために、配線用コイル層120は、樹脂製の基板120aに主軸固定用ランド部12が設けられ、この主軸固定用ランド部12に主軸11が接合されている。
【0013】
この主軸11に、積層コイル100の上面に面対向するようにマグネットロータ13が回転自在に嵌装されている。
本実施の形態では、マグネットロータ13は、その既定の部位に不図示の重錘が貼着されているため、主軸11の周りでの質量の分布がアンバランスである。このため回転駆動装置10は、回転に伴って振動を生じ、携帯電話の振動音告知用のバイブレータとして機能する。
【0014】
積層コイル100における複数の各コイル層は、絶縁樹脂層に平面コイルを埋設して構成し、当該複数のコイル層を既定の順序で積層し他層との相対位置を固定してある。
図示の例では、積層コイル100の複数のコイル層のうち、上述のように、最も底部に位置するコイル層は、基底コイル層110である。
そして、この基底コイル層110から、順次上方に、配線用コイル層120、および、2層の各干渉回避用コイル層130、140が積層されている。
【0015】
既述のように、配線用コイル層120は、樹脂製の基板120aに主軸固定用ランド部12が設けられ、この主軸固定用ランド部12に主軸11が接合されている。このため、回転駆動装置10の主軸11を、積層コイルの配線用コイル層120自体や電子部品14、15、基底コイル層110、および、干渉回避用コイル層130、140等との干渉を最小限にしつつ、十分な強度をもって配置することができる。
【0016】
尚、図1を参照して明らかなとおり、干渉回避用コイル層140は、マグネットロータ13に面対向する積層順位置に積層してある。このため、電子部品14、15をマグネットロータ13に臨む適切な位置に配置することができる。
図2(a)、および、図2(b)は、干渉回避用コイル層140、および、干渉回避用コイル層130をそれぞれ表す図である。
【0017】
また、図2(c)は、配線用コイル層120を表す図である。
さらに、図2(d)は、全コイル型の基底コイル層110を例示する図である。
図2(d)の基底コイル層110について代表的に表したように、積層コイル100の複数の各コイル層は、自層の中心から放射方向に延長した複数の仮想半直線(一点鎖線で図示)で区切られた複数の部分領域(S1〜S6)のうちの一部または全部の各該当する部分領域ごとに平面コイルを絶縁樹脂層に埋設して構成されている。
【0018】
図示の基底コイル層110は、上述の複数の部分領域S1〜S6に各対応して、絶縁樹脂層111に平面コイル110−1〜110−6が埋設されて構成されている。
尚、この基底コイル層110では、上述の各コイル層に対応して電気配線である引き回し線が付帯している。一方、基底コイル層は、複数の部分領域S1〜S6の全てに平面コイルが埋設されるに替えて、一部ないし全部の部分領域S1〜S6に引き回し線を配設した構成を採り得る。
【0019】
上述のような基底コイル層110を回転駆動装置10に適用することによって、効率良く磁力を得て、回転駆動装置のトルクを十分な水準のものとすることができる。
一方、配線用コイル層120は、上述の複数の部分領域S1〜S6のうちの特定の部分領域S2〜S3に集積回路14やコンデンサ15等の電子部品の取り付けおよび配線に用いる配線用導体部121を有する。
【0020】
この実施の形態では、配線用導体部121は、集積回路14を載置するための集積回路実装用パッド122や、コンデンサ15等を載置するための受動素子実装用パッド123、および、これら集積回路実装用パッド123と受動素子実装用パッド122との間や、これらと平面コイルとを結ぶ導体部124を含んでいる。
そして特定の部分領域S2〜S3以外の部分領域S1、S4〜S6において、平面コイル120−1〜120−4が絶縁樹脂層125に埋設されて構成されている。
【0021】
上述のような配線用コイル層120を持つ積層コイル100を回転駆動装置10に適用することによって、回転駆動装置10内の電子部品を実装するに際して、その作業性が向上し、省スペース化にも寄与させ得る。
尚、配線用コイル層120における配線用導体部121は、既述の基板120aに、平面コイル120−1〜120−4や主軸固定用ランド部12と共に、鍍金によって形成することができる。図1では、配線用コイル層120における基板120aは、配線用コイル層120の上面からは凹所を成すような形状となっているが、これは通常のことであるため、図2(c)ではこのような形状の点は省略している。
【0022】
また一方、複数層(本例では2層)の干渉回避用コイル層130、140は、上述の複数の部分領域S1〜S6のうちの特定の部分領域S2〜S3には平面コイルを埋設せず、且つ、他層に設けられた既定サイズの電子部品との干渉を回避するためのキャビティ131、141が形成してある。図示の例では、キャビティ131、141は、電子部品である集積回路14やコンデンサ15との干渉を回避するに必要十分な形状および寸法を持つように形成されている。
【0023】
そして干渉回避用コイル層130では、特定の部分領域S2〜S3以外の部分領域S1、S4〜S6において、平面コイル130−1〜130−4が絶縁樹脂層132に埋設されて構成されている。
同様に、干渉回避用コイル層140では、特定の部分領域S2〜S3以外の部分領域S1、S4〜S6において、平面コイル140−1〜140−4が絶縁樹脂層142に埋設されて構成されている。
【0024】
上述のような干渉回避用コイル層130、140を持つ積層コイル100は、これを回転駆動装置10に適用したときに、電子部品14、15との干渉を回避した適切な電子部品実装スペースを確保することができる。
また、キャビティ131、141の位置が合致するように且つ電子部品14、15の厚み寸法に相応する深さの電子部品収容部を形成する層数だけ積層することによって、内面側が適切な形状および寸法を成すような電子部品実装スペースを確保することができる。
【0025】
尚、この実施の形態における積層コイル100の、配線用コイル層120と干渉回避用コイル層130との間には、樹脂層150が配されている。この樹脂層150は、干渉回避用コイル層130、140のキャビティ131、141によって形成される回転駆動装置10の厚み方向(主軸方向)の電子部品実装スペースを拡大するためのスペーサとして機能する。
【0026】
この結果、本実施の形態における上述の電子部品実装スペースは、干渉回避用コイル層130、140に設けられたキャビティ131、141の内面の形状および寸法によって規定される、面方向の広がりを持つ。この面方向とは、主軸方向に直交する面の面内方向である。この面方向の広がり方次第によって、実装可能な一または複数の電子部品の面内方向のサイズが略決まる。
【0027】
そして、スペーサである樹脂層150の形状および寸法を適切に選択することによって、電子部品実装スペースの形状および寸法の調整が容易にできる。
また、キャビティ131、141を有する干渉回避用コイル層130、140の積層数分の厚み寸法(主軸方向の幅)に、さらに、樹脂層150の厚み寸法を加えた寸法により、上述の電子部品実装スペースの高さ方向(主軸方向)の大きさが規定される。
【0028】
従って、本実施の形態では、干渉回避用コイル層130、140に設けるキャビティ131、141の内面の形状および寸法を適宜に選択した上、干渉回避用コイル層自体の厚み寸法を適宜に選択し、さらに、それらの積層数を適宜に選択することによって、必要十分な電子部品実装スペースを確保することができる。
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施の形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施の形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。
【符号の説明】
【0029】
10…………………………………………………………回転駆動装置
11…………………………………………………………主軸
12…………………………………………………………主軸固定用ランド部
13…………………………………………………………マグネットロータ
14…………………………………………………………集積回路
15…………………………………………………………コンデンサ
100………………………………………………………積層コイル
110………………………………………………………基底コイル層
110−1〜110−6…………………………………平面コイル
111………………………………………………………絶縁樹脂層
120………………………………………………………配線用コイル層
120−1〜120−4…………………………………平面コイル
120a……………………………………………………基板
121………………………………………………………配線用導体部
122………………………………………………………集積回路実装用パッド
123………………………………………………………受動素子実装用パッド
124………………………………………………………導体部
125………………………………………………………絶縁樹脂層
130、140……………………………………………干渉回避用コイル層
130−1〜130−4、140−1〜140−4…平面コイル
131、141……………………………………………キャビティ
132、142……………………………………………絶縁樹脂層
150………………………………………………………樹脂層
310、320、330、340………………………コイル層
315、325、335…………………………………絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁樹脂に平面コイルを埋設して構成したコイル層を複数積層し相互に固定した積層コ
イルであって、
該積層コイルの中の各コイル層の中で最も底部に位置し、複数の平面コイル或いは引き回し線が配されている基底コイル層と、
前記積層コイルの中の各コイル層の中で前記基底コイル層の上層に位置し、電子部品を電気的に接続する配線が配されている配線用コイル層と、
前記積層コイルの中の各コイル層の中で前記配線用コイル層の上層に位置し、前記電子部品との干渉を回避するためのキャビティを有する干渉回避用コイル層と、
を備えることを特徴とする積層コイル。
【請求項2】
請求項1記載の積層コイルであって、
前記配線用コイル層と前記干渉回避用コイル層との間にスペーサを介挿させたことを特
徴とする積層コイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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