説明

積層フィルムの切断方法、切断装置および光学表示装置の製造方法

【課題】積層フィルムの切断時の不良発生を抑制し、歩留まりよく切断することができる切断方法及び切断装置を提供することを課題としている。
【解決手段】周縁部に刃を有する円形カッターによって積層フィルムを切断する積層フィルムの切断方法において、前記円形カッターを回転手段により刃先周速Vrで切断方向に対して正転方向に回転させながら切断方向に走行速度Vcで走行させて前記積層フィルムを切断するとともに、前記走行速度Vcから刃先周速Vrを引いた相対切断速度Vを70m/min以上150m/min以下とすることを特徴とする積層フィルムの切断方法などを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルム、例えば、偏光フィルムなどの光学フィルムのように、粘着層を介して複数の層が積層された積層フィルムの切断方法、装置および光学表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光フィルム、位相差フィルム等に代表される光学フィルムは、液晶ディスプレイ装置等の光学部品として有用である。
該光学フィルムとしては、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)フィルムをヨウ素染色し延伸したPVA偏光子の両面に、粘着層を介して表面保護フィルムを積層し、さらに一面側に粘着層を介して離型フィルムを設けた積層構造の偏光フィルムなどが挙げられる。
【0003】
このような偏光フィルムは、一般に、長尺状フィルムをロール状に巻回した状態から繰り出されて、偏光フィルムを貼り付ける液晶セルのサイズに応じた寸法になるように切断して用いられる。
この偏光フィルムの切断方法としては、偏光フィルムを離型フィルムごと枚葉体に切断する方法、いわゆるフルカットでの切断や、或いは、積層された離型フィルムのみを残して切断することで、PVA偏光子が枚葉体となった後も、離型フィルムによって連接され、ロール搬送可能な状態とする、いわゆるハーフカットで切断する方法が採用されている。
このような偏光フィルムを切断するには下記特許文献1や特許文献2に記載されているような回転式の円形カッターを使用する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−260865号公報
【特許文献2】特開2008−63059号公報
【0005】
特許文献1及び特許文献2では、円形カッターを回転しないように固定して切断装置に装着して積層フィルムの切断方向に走行させながら切断する方法が記載されている。
また、特許文献1には円形カッターを自由に回転できるフリーの状態で切断装置に装着し、該円形カッターを切断方向に沿って走行させながら積層フィルムを切断する方法も記載されている。
各特許文献には、いずれの方法においても、切断時のカット屑の発生を抑制できると記載されている。
【0006】
しかしながら、前記偏光フィルムなどの光学フィルムは、極めて薄い複数のフィルム層が粘着層を介して積層されており、このような積層フィルムを切断する場合には、切断面にケバ立ちや、表面保護フィルムの浮き、あるいは偏光フィルムにおいて加熱や冷却によって偏光子に裂け目ができるいわゆるクラックなどの不良が発生することがある。
このような光学フィルムの切断時における不良の発生については、特許文献1または特許文献2に記載のいずれの切断方法においても十分に抑制することができなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、積層フィルムの切断時の不良発生を抑制し、歩留まりよく積層フィルムを切断加工することができる切断方法、切断装置及び光学表示装置の製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
積層フィルムの切断方法にかかる本発明は、周縁部に刃を有する円形カッターによって積層フィルムを切断する積層フィルムの切断方法において、
前記円形カッターを回転手段により刃先周速Vrで切断方向に対して正転方向に回転させながら切断方向に走行速度Vcで走行させて前記積層フィルムを切断するとともに、
前記走行速度Vcから刃先周速Vrを引いた相対切断速度Vを−50m/min以上30m/min以下とすることを特徴としている。
尚、ここでいう切断方向に対して正転方向に回転させる方向とは、走行方向に対する円形カッターの前端部が積層フィルムの表面から深さ方向に入っていくような回転方向をいう。
【0009】
また、本発明にかかる積層フィルムの切断方法において、前記積層フィルムが、偏光子層と、該偏光子層の少なくとも一面側に粘着層を介して離型フィルム層とを有する偏光フィルムであることが好ましい。
【0010】
また、積層フィルムの切断装置にかかる本発明は、周縁部に刃を有する円形カッターを有する切断手段を備えた積層フィルムの切断装置において、前記円形カッターを刃先周速Vrで切断方向に対して正転方向に回転させる回転手段と、前記円形カッターを切断方向に走行速度Vcで走行させる走行手段と、前記円形カッターの走行速度Vcから刃先周速Vrを引いた切断手段の相対切断速度Vが−50m/min以上30m/min以下になるように制御する制御手段とを備えたことを特徴としている。
【0011】
また、光学表示装置の製造方法にかかる本発明は、積層フィルムを切断し、当該切断された積層フィルムを光学表示ユニットに貼り合わせて光学表示装置を製造する方法であって、前記切断方法を用いて、積層フィルムを切断する工程を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、積層フィルムを切断する際に、ケバや浮き等の不良が発生することを抑制しつつも簡便なる方法で実施可能な積層フィルムの切断方法、切断装置および光学表示装置の製造方法が提供され得る。
【0013】
また、本発明によって切断される積層フィルムとして偏光子層と、該偏光子層の少なくとも一面側に粘着層を介して離型フィルム層とを有する偏光フィルムを採用し、本発明の方法で切断した場合には、偏光子に裂けが生じるクラックの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)(b)一実施形態の積層フィルムの切断装置の全体構成を示す概略図。
【図2】切断装置の切断手段を示す上面図。
【図3】切断される積層フィルムの積層構成を示す拡大断面図。
【図4】円形カッターの回転方向及び走行方向を示す拡大断面図。
【図5】円形カッターの切断状態を示す拡大断面図。
【図6】円形カッターの切断状態を示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に図1〜図6を参照しつつ本実施形態の積層フィルムの切断方法及び製造装置について具体的に説明する。
【0016】
図1(a)(b)は、本実施形態の積層フィルム切断装置1の全体構成を示す概略図である。
該フィルム切断装置1は、積層フィルムを切断する切断手段10を備えている。さらに、本実施形態の切断装置1は、積層フィルムのロール原反2gから積層フィルムを繰り出し前記切断手段10に移送するフィルム移送手段20と、前記切断手段10によって切断された後の積層フィルムを回収する図1(a)に示すようなフィルム回収手段30または、図1(b)に示すような切断後の積層フィルムを巻き取るフィルム巻取り手段40とを備えている。
【0017】
前記切断手段10には、図2に示すように、円形カッター11と、該円形カッター11を回転させる回転手段13及び、該円形カッター11を積層フィルムの切断方向沿いに走行させる走行手段14とが備えられている。さらに、本実施形態の切断手段10には図1に示すように前記円形カッター11の下面に配置された台座15が備えられている。
【0018】
円形カッター11には、図4及び図5に示すように、その周縁部の先端部が研磨されて刃11aが設けられている。
【0019】
前記円形カッター11としては、通常の光学フィルムの切断に用いられるカッターであれば特に限定されるものではないが、例えば、鉄、鉄合金、鋼、ステンレス鋼のような金属製や、窒化チタン、炭化チタン、炭化タングステンやセラミック製等が挙げられ、それらにダイヤモンドライクカーボン等などの表面処理を施したもの等が挙げられる。
【0020】
また、前記円形カッター11の径や刃先の厚み、先端の角度なども切断する積層フィルムの幅などに応じて適宜選択可能であるが、例えば、該円形カッター11の厚みは、0.1mm以上1.0mm以下、好ましくは、0.1mm以上0.5mm以下に形成されていることが好ましい。
尚、ここでいう円形カッター11の厚みとは円形カッター11の一番厚い部分の厚みをいう。円形カッター11の刃11aの先端部の角度としては10°以上40°以下、好ましくは15°以上30°以下に形成されていることが好ましい。刃11aの先端部の角度が40°より鋭角の場合、積層フィルムの切断不良がより生じにくいという利点がある。
10°よりも鈍角の場合、刃の耐久性が高く、磨耗による刃の交換回数を減らすことができるという利点がある。
さらに円形カッター11の直径は、40mm以上120mm以下に形成されていることが好ましい。
【0021】
前記回転手段13は、モーター13aと、2つのプーリー13d、13eに巻き架けられたプーリーベルト13bと、前記円形カッター11が取り付けられた回転軸13cとを備えている。
前記モーター13aは、前記2つのプーリーのうちの一つのプーリー13dと接続されており、他方のプーリー13eは、前記回転軸13cと接続されている。
円形カッター11はその中心軸が回転軸13cに固定された状態で取り付けられており、前記モーター13aが回転すると、プーリーベルト13bによって回転軸13cに回転駆動が伝わり、円形カッター11が回転するようになっている。
【0022】
前記走行手段14には、上面の長手方向の中央部に溝14bが形成されたレール部材14aと、該レール部材14aの長手方向の両端側に設けられた2個のプーリー14d、14eと、該プーリー14d、14eに巻き架けられたプーリーベルト14fと前記一方のプーリー14dに接続されたモーター14gとが備えられている。
前記レール部材14aは、移送されてくる積層フィルムの上方において、該積層フィルムの幅方向と、レール部材14aの長手方向とが平行になるように配置されている。
【0023】
前記レール部材14aの溝14bには、該溝14bに沿ってスライド可能な、可動部材が嵌合されており、該可動部材の上部には支持アーム14cが固定されている。
該支持アーム14cの上面には、前記回転手段13が取り付けられ、且つ、該支持アーム14cの一端部側には、前記プーリーベルト14fが固定されている。
【0024】
前記モーター14gが回転すると、該モーター14gに接続されたプーリー14dによってプーリーベルト14fが回転する。このとき前記支持アーム14cはプーリーベルト14fに固定されているため、プーリーベルト14fが回転する方向に支持アーム14cには力がかかる。
一方、支持アーム14cの下側は、前記可動部材を介してレール部材14aに移動自在に取り付けられているため、前記支持アーム14cはプーリーベルト14fの回転によって、溝14bに沿って積層フィルムの幅方向に走行される。
【0025】
そして、該支持アーム14cの上側には、切断手段13が取り付けられているため、支持アーム14cと共に回転軸13c及び該回転軸13cに取り付けられている前記円形カッター11は、積層フィルムの幅方向に走行されることとなる。
【0026】
すなわち、前記各モーター13a,14gを同時に駆動させることで、前記円形カッター11を回転させつつ、積層フィルムの切断方向に走行させることができる。
【0027】
また、前記各モーター13a,14gはそれぞれ制御手段(図示せず)と接続されており、各々回転数及び回転方向を適宜制御できるように構成されている。
つまり、前記各モーター13a,14gの回転数や回転方向を制御することで、前記円形カッター11の回転速度や回転方向、及び円形カッター11の走行方向や走行速度を制御することができる。
【0028】
前記フィルム回収手段30は、切断された積層フィルムを吸着する吸着手段30aと、該吸着手段30aを積層フィルムの幅方向及び上下方向に移動させるスライド部材(図示せず)と、吸着手段30a によって吸着された積層フィルムを収納する収納部30bを備えている。
フィルム回収手段30は後述するような、フルカット方式で積層フィルムを切断する場合に使用される。
【0029】
前記フィルム巻取り手段40は、後述するようなハーフカット方式で積層フィルムを切断する場合に使用され、切断された積層フィルムを巻き取るロールを備えている。
【0030】
次に、本実施形態の切断装置を使用して積層フィルムを切断する方法について説明する。
本実施形態の切断装置1で切断される積層フィルムとして、図3に示す構成の偏光フィルム2を使用する。
偏光フィルム2は、PVAフィルムをヨウ素で染色してから延伸して形成され、両面側に保護層2d1、2d2が設けられた偏光子層2aの一面側に保護層2d1を介して粘着層2bが設けられ、さらに該粘着層2bを介して離型フィルム層2cが設けられている。
偏光子層2aの他面側には、前記保護層2d2を介して粘着層2eが設けられ、さらに該粘着層2eを介して表面保護層2fが設けられている。
【0031】
上記構成の偏光フィルム2は上記各層を積層した後、巻回することでロール原反2gとして形成される。
前記偏光フィルム2が巻回されたロール原反2gは図1に示すように、前記切断装置1に設置され、フィルム移送手段20によって前記切断手段10に供給される。
この時、偏光フィルム2は、表面保護層2fが円形カッター11側になるように前記切断手段10の台座15上に供給される。
【0032】
偏光フィルム2は切断手段10の円形カッター11によって、所定のサイズに切断されるが、円形カッター11は、前記のようにモーター13aによって所定の回転速度で回転されると同時に、前記走行手段14のモーター14gによって偏光フィルム2の切断方向に走行されながら、偏光フィルム2を切断する。
【0033】
ここで、円形カッター11の回転方向は、図1に示すように円形カッター11の走行方向に対して、該円形カッター11の先端部が偏光フィルム2表面から偏光フィルム2の深さ方向に入っていくような回転方向に設定される。
尚、本発明においてこのような回転方向を正転と称する。
円形カッターの回転方向がこの方向の逆、すなわち逆転になった場合には、クラックや表面保護フィルムの浮きが発生しやすい。
【0034】
また、この時の円形カッターの回転速度と走行速度は、円形カッター11の走行速度Vcから刃先周速Vrを引いた相対切断速度Vが−50m/min以上30m/min以下の範囲になるように制御される。
前記相対切断速度Vが−50m/min以上30m/min以下の範囲内、好ましくは−30m/min以上20m/min以下の範囲内、さらに好ましくは−20m/min以上10m/min以下の範囲内の条件で偏光フィルムを切断することで、切断面におけるケバや偏光フィルム各層間の浮き、あるいは偏光子層のクラックを生じることなく偏光フィルムを切断できる。
尚、円形カッター11の刃先周速Vrは、円形カッターの角速度に円形カッター11の半径を乗じて算出される。
【0035】
そして偏光フィルム2は、前記円形カッター1によって所定のサイズに切断された後に、液晶セルに貼り付ける後工程へ移送される。
偏光フィルム2を切断する方法として、偏光フィルム2が離型フィルム層2cは切断せずに残した状態で後工程へ移送されるハーフカット方式を採用した場合には、図1(b)に示すように、切断後も偏光フィルム2iは離型フィルム層2cによって連続した帯状になっているため、前記フィルム巻取り手段40によって巻き取られ、ロール状にされて後工程に移送される。
【0036】
一方、偏光フィルム2を切断する方法として、離型フィルム層2cごと切断し、枚葉状態で後工程に移送されるフルカット方式を採用した場合には、図1(a)に示すように前記フィルム回収手段30によって回収される。
すなわち、枚葉に切断された偏光フィルム2hを吸着手段30aによって吸着し、スライド部材によって該吸着手段30aは偏光フィルム2hを吸着したまま上方に移動され、さらにフィルム移送手段20の側方へと移動される。
フィルム移送手段20の側方には、前記収納部30bが設置され、該収納部30b内まで切断された偏光フィルム2hは移送された後、吸着手段30aから取り外される。
尚、切断された偏光フィルム2hを吸着する具体的な手段としては、静電吸着や、真空吸着など公知の吸着手段が採用できる。
【0037】
また、偏光フィルム2を切断する方法としてハーフカット方式を採用する場合には、離型フィルム層を破断することを防止するために、前記円形カッターの真円度は±30μm以内、好ましくは±10μm以内程度であることが好ましい。
ここでいう真円度とはJIS B 0182 機械精度及び工作精度 番号:356で示される測定方法によって決定される真円度をいう。
【0038】
本発明の切断方法で切断される積層フィルムは特に前記のような構成の偏光フィルムに限定されるものではなく複数の層が積層されているフィルム状のシートであればどのようなものであってもよい。
特に、粘着層を介して離型フィルム層を有する偏光フィルムのような光学フィルムは、切断時のケバや浮き、あるいはクラックが生じることで光学特性や生産歩留りが低下するため、本発明の切断方法で切断することで特に不良率を低下することができる。
積層フィルムの厚みも特に限定されるものではないが、例えば80μm〜400μm程度の厚みの積層フィルムであれば特に好適に切断できる。
【0039】
本発明の切断方法により切断された積層フィルムを、光学部材として光学表示ユニットに積層することで、光学表示装置を製造することができる。
光学表示装置としては、例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置が挙げられる。
これらの光学表示装置は、光学表示ユニットとしての、液晶セルあるいは、有機ELセルに本発明の切断方法で切断された積層フィルムを貼り付けることで製造される。
かかる光学表示装置を製造する方法において、本発明の切断方法以外に光学表示装置を製造するために用いられる方法に関しては公知の方法を採用することができる。
例えば、前記積層フィルムを、前記のようなハーフカット方式で離型フィルム層2cによって連続した状態でロール状に形成して光学表示ユニットへの貼り付け工程へ移送し、該貼り付け工程において、前記長尺状の離型フィルム2cをはがしながら順次移送される光学表示ユニット上に切断された積層フィルムを前記粘着層2bを介して光学表示ユニットに貼り付けていく方法が挙げられる。
あるいは、前記のようなフルカット方式で切断されフィルム回収手段30bに収納された積層フィルムを、光学表示ユニットへの貼り付け工程へ移送し、該貼り付け工程において、切断された積層フィルムを一枚ずつ光学表示ユニット上面に粘着層2bを介して貼り付けていく方法でもよい。
前記のように、本発明の切断方法で切断された積層フィルムはケバや浮き等の不良が発生しにくいため、この積層フィルムを光学表示ユニットに貼り付けることで、高品質の光学表示装置を得ることができる。
【0040】
尚、上記実施形態において、円形カッターの回転手段としてモーターの回転をプーリーベルトを介して円形カッターの回転軸に伝えて円形カッターを回転させる手段を説明したが、円形カッターの回転手段は特に限定されるものではなく、例えば、回転駆動モーターからの駆動をギアを介して円形カッターの回転軸に伝える方法など、任意の方法を採用することができる。
【0041】
また、上記実施形態において円形カッターの走行手段として、スライド可能な可動部材に円形カッターをとりつけ、プーリーベルトを介してモーターの駆動を伝えて可動部材を走行させる手段を説明したが、円形カッターの走行手段としては、これに限定されるものではなく、リニア式のアクチュエータなどの駆動手段によってカッターを走行させる手段など任意の方法を採用することができる。
【実施例】
【0042】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
(積層フィルム)
実施例及び比較例には次のサンプルA(製品名 NPF−VEG1724DU、日東電工株式会社製)、B(製品名 NTB−EFCVEQ−K1、日東電工株式会社製)及びC(製品名 NZB−CVEQ−ST19、日東電工株式会社製)の3種類の偏光フィルムを使用した。
これらの偏光フィルムは幅400mm長さ50mのロール原反として準備した。
【0044】
(装置)
切断装置は、上記のような構成からなるロール繰り出し式自転丸刃切断実験機を使用した。
円形カッターとして、超硬丸刃 FW05 京セラ株式会社製を使用し、下記の5種類のサイズのものを用意した。
刃径=60mm、刃厚=0.5mm 先端部の角度=20°
刃径=80mm、刃厚=0.2mm 先端部の角度=20°
刃径=80mm、刃厚=0.5mm 先端部の角度=20°
刃径=80mm、刃厚=1.0mm 先端部の角度=20°
刃径=100mm、刃厚=0.5mm 先端部の角度=20°
尚、この場合の刃厚は円形カッターの最も厚い部分の厚みをいう。
【0045】
前記装置を使用し表1〜表3に示す各条件でそれぞれサンプルA〜Cを50mm×400mmの大きさに切断し、切断後の各サンプルの評価を行った。
回転方式は、各円形カッターを回転軸に取り付け、該回転軸の回転によって所定の回転速度で制御にしたものを「自転」、各円形カッターを回転しない軸に固定した状態で取り付け回転しないようにしたものを「固定」、各円形カッターを軸に対して固定せずに取り付け、フリーに回転できるようにしたものを「フリー」と表示した。
カット方式は、各サンプルの偏光フィルムを離型フィルムを残して切断する場合をハーフカット、離型フィルムも含めて切断する場合をフルカットと表示した。
回転方向は、走行方向に対する円形カッターの先端部から偏光フィルムの深さ方向に入っていく方向を「正転」、この方向と逆の回転方向、すなわち、円形カッター1の走行方向に対する後端部が偏光フィルム2表面から偏光フィルム2の深さ方向に入っていくような回転方向を「逆転」、と表示した。
【0046】
尚、切断時の相対切断速度Vは、切断条件から下記式にて求めた。
相対切断速度V=走行速度Vc−刃先速度Vr
刃先速度Vr(m/min)=円形カッターの角速度(rad/min)×円形カッター半径(m)
【0047】
評価方法は、切断後のサンプル(サンプル数=各10個)について下記の3種類の評価を行った。
(クラック)
切断サンプルを無アルカリガラス板(製品名 イーグルXG、コーニング社製)に貼付実験機にて貼り付け、冷熱衝撃試験機(装置名 TSA−101S、ESPEC社製)にて−40℃〜70℃のヒートショック試験を200サイクル行った。
その後、マイクロスコープでサンプル端部を目視して、0.5mm以上のクラックの有無を確認し、クラックの発生したサンプルを1個としてカウントした。
(ケバ)
切断サンプルをマイクロスコープで目視して、1.0mm以上のケバの有無を確認し、ケバが発生したサンプルを1個としてカウントした。
(表面保護フィルムの浮き)
切断サンプルをマイクロスコープで目視して、0.5mm以上の表面保護フィルム層の浮きの有無を確認し、浮きが発生しているサンプルを1個としてカウントした。
【0048】
結果を表1〜表3に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
以上の結果から、各実施例ではクラック及びケバが発生したサンプルはなかった。また、表面保護フィルムの浮きについても、発生しないか、或いは発生した実施例でも発生数は3個以下であった。
これに対して各比較例では3種類のサンプルすべてにクラック、ケバ、浮きのいずれかの不良が発生しており、その不良発生率も各実施例に比較すると非常に高いことが判明した。
これらの結果から、本発明に係る切断方法は、積層フィルムをクラック、浮き、ケバななどの不良を抑制して良好に切断することができ得ることがわかる。
【符号の説明】
【0053】
1:切断装置
10:切断手段
11:円形カッター
11a:刃先
13:回転手段
14:移送手段
2:偏光フィルム( 積層フィルム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周縁部に刃を有する円形カッターによって積層フィルムを切断する積層フィルムの切断方法において、
前記円形カッターを回転手段により刃先周速Vrで切断方向に対して正転方向に回転させながら切断方向に走行速度Vcで走行させて前記積層フィルムを切断するとともに、
前記走行速度Vcから刃先周速Vrを引いた相対切断速度Vを−50m/min以上30m/min以下とすることを特徴とする積層フィルムの切断方法。
【請求項2】
前記積層フィルムが、偏光子層と、該偏光子層の少なくとも一面側に粘着層を介して離型フィルム層とを有する偏光フィルムである請求項1記載の積層フィルムの切断方法。
【請求項3】
周縁部に刃を有する円形カッターを有する切断手段を備えた積層フィルムの切断装置において、
前記円形カッターを刃先周速Vrで切断方向に対して正転方向に回転させる回転手段と、
前記円形カッターを切断方向に走行速度Vcで走行させる走行手段と、
前記円形カッターの走行速度Vcから刃先周速Vrを引いた切断手段の相対切断速度Vが−50m/min以上30m/min以下になるように制御する制御手段とを
備えたことを特徴とする積層フィルムの切断装置。
【請求項4】
積層フィルムを切断し、当該切断された積層フィルムを光学表示ユニットに貼り合わせて光学表示装置を製造する方法であって、
前記請求項1または2に記載の積層フィルムの切断方法を用いて、積層フィルムを切断する工程を備えたことを特徴とする光学表示装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−183514(P2011−183514A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51754(P2010−51754)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)