説明

積層フィルム

【課題】ガラス転移点(Tg)が異なるシクロオレフィン層を積層した積層フィルムであって、斜めスジ故障、横段故障、縦スジ故障及びコーナームラが改良された積層フィルムを提供する。
【解決手段】シクロオレフィン樹脂層Aとシクロオレフィン樹脂層Bとを、溶融流延製膜法により製膜及び積層して製造した積層フィルムであって、該シクロオレフィン樹脂層Aのガラス転移温度をTg(a)とし、該シクロオレフィン樹脂層Bのガラス転移温度をTg(b)としたとき、ガラス転移温度差ΔTg(Tg(a)−Tg(b))が5℃以上であり、かつ該シクロオレフィン樹脂層A及びシクロオレフィン樹脂層Bのメルトフローレートが、いずれも5g/10分以上、50g/10分以下であることを特徴とする積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相差フィルムとして用いる平面性、膜均一性に優れた積層フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ワードプロセッサーやパーソナルコンピュータ、TV等の画像表示装置には、光学フィルムが多く用いられている。例えば、液晶画像表示装置(LCD)に用いられる液晶セルの両側に設けられている偏光板には、偏光子の両面に貼り付けられる保護フィルムとして用いられている。偏光板は、一定方向の偏波面の光だけを通すので、LCDにおいては、電界による液晶の配向の変化を可視化させる重要な役割を担っており、偏光板の性能によってLCDの性能が大きく左右される。よって、偏光子の両面に貼り付けられる保護フィルムに要求される光学性能も高くなってきている。
【0003】
従来から、偏光板は、ポリビニルアルコール誘導体を延伸して作成した偏光子を、2枚の偏光板保護フィルムで挟む構成をとることが行われている。偏光板保護フィルムとしては、例えば、特開2002−116320号公報においては、セルロースエステルフィルムのほかにポリエステル系樹脂フィルムやポリオレフィン系樹脂フィルム等の種々の樹脂が候補として検討されている。しかしながら、光学性能的にセルロースエステルフィルムを凌ぐものは現われず、現時点でもセルロースエステルが偏光板保護フィルムとして最も一般に使用され続けている。
【0004】
一方、位相差板は偏光板に貼合するタイプ、偏光子であるポリビニルアルコール誘導体と直接接着するタイプ(偏光板保護フィルムを兼ねた構造)などがあるが、部材数を減らすこと、あるいは部材のコストダウンなどの要求から、偏光板保護フィルムが位相差板の機能を有するタイプが主流になりつつあり、セルロースエステルだけでなく、例えば、特開2004−334168号公報にはシクロオレフィン樹脂からなる位相差フィルムが偏光板保護フィルムとして用いる方法が開示されている。
【0005】
一方、このような光学フィルムの製造方法には、大別して、溶融流延成膜法と溶液流延成膜法がある。前者は、ポリマーを加熱溶融して支持体上に流延し、冷却固化し、さらに必要に応じて延伸等を行ってフィルムにする方法であり、後者は、ポリマーを溶媒に溶かして、その溶液を支持体上に流延し、溶媒を蒸発し、さらに必要に応じて延伸等を行ってフィルムにする方法である。
【0006】
従来、膜厚の均一化が容易なこと等の理由により溶液流延成膜法による製造が主流であった。しかし、溶液流延成膜法は、溶剤の回収のため巨大な生産設備が必要となること等の問題があることから、これらの問題の無い溶融流延成膜法による光学フィルムの製造が注目されるようになった。
【0007】
一方、これらの光学フィルムでは、光学的な性能、特にリタデーションが均一であることが要求される。特に、モニターやTVの大型化や軽量化が進み、リタデーションの均一性がますます厳しく要求されると共に、光学フィルムの広幅化、薄膜化、表面平滑性も強く要求されるようになってきた。
【0008】
溶融流延成膜法による光学フィルムの製造は、セルロース樹脂などの熱可塑性樹脂を含む溶融物を流延ダイから回転支持体(以降、キャストロールとも呼ぶ。)の表面にフィルム状に押し出し、押し出されたフィルム状の溶融物(以降、フィルムとも呼ぶ。)を回転支持体と挟圧回転体(タッチロール)によって挟圧することによってフィルムを得るのが一般的である。タッチロールの表面は、フィルムの表面平滑性を上げるために、鏡面加工が施されている。
【0009】
しかし、光学フィルムの広幅化に伴い、流延ダイの幅も広くなることで、押し出されたフィルム状の溶融物をキャストロールとタッチロールとによって均一な圧力で挟圧することが困難となっている。
【0010】
このような問題点に対処する方法として、タッチロールに外周に金属円筒を有する弾性ロール(以降、弾性金属ロールとも呼ぶ。)を用いて、挟圧するときの圧力を均一にする方法や、また、特開2005−172940号公報においては、流延ダイからキャストロールに流下される溶融物の温度を高く設定することで、キャストロールとタッチロールとの挟圧力が多少不均一であっても、リタデーションムラを抑制する方法が提案されている。
【0011】
しかしながら、キャストロール上に押し出された熱可塑性樹脂を含む溶融物に、表面が鏡面加工されたタッチロールを接触加圧すると、タッチロールからのフィルムの剥離不良が発生しやすく、フィルム幅方向に筋状のムラ(横段ムラ)が生じることがあった。さらに、タッチロールに弾性金属ロールを用いて溶融物の温度を高く設定すると、よりタッチロールへの付着力が大きくなり、剥離不良を起こし、横段ムラが更に発生しやすくなり、リタデーションムラも大きくなるという問題があった。
【0012】
この様な課題に対し、特開2004−330651号公報には、シクロオレフィン樹脂フィルムをタッチロール製膜方法によって、製膜する方法が開示されている。この方法では、弾性変形可能なタッチロール、すなわち、弾性変形可能な表面を有するタッチロール表面を金属チューブで被覆したものを使用し、厚みむらを低減している。
【0013】
しかしながら、この方法では、「投影斜めスジ」が発生し、破断伸度が低い(脆い)、という問題があった。「投影斜めスジ」は、テレビ用途の高画質液晶表示装置で発生し問題となり、製膜方向に対し10°〜80°、1〜30mm間隔で発生するが、肉眼では見え難く、サンプルフィルムを壁面の前に置き、点光源から斜め方向から光を投影した際に確認することができるものである。よって、フィルム面に直角に光を投影した場合は見え難い。
【0014】
上記課題に対し、ダイから押し出された溶融樹脂をタッチロールとキャストロールで挟んで製膜する溶融製膜法において、タッチロールとキャストロールに、0.1℃〜20℃の温度差を設けて製膜することを特徴とするシクロオレフィン樹脂フィルムの製膜方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0015】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、ある程度の投影斜めスジの改良に対しては改善効果が認められるものの、シクロオレフィン樹脂フィルム製造時の横段故障や縦スジ故障の改良に関しては不十分な効果であることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2008−272983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、ガラス転移点(Tg)が異なるシクロオレフィン層を積層した積層フィルムであって、斜めスジ故障、横段故障、縦スジ故障及びコーナームラが改良された積層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0019】
1.シクロオレフィン樹脂層Aとシクロオレフィン樹脂層Bとを、溶融流延製膜法により製膜及び積層して製造した積層フィルムであって、該シクロオレフィン樹脂層Aのガラス転移温度をTg(a)とし、該シクロオレフィン樹脂層Bのガラス転移温度をTg(b)としたとき、ガラス転移温度差ΔTg(Tg(a)−Tg(b))が5℃以上であり、かつ該シクロオレフィン樹脂層A及びシクロオレフィン樹脂層Bのメルトフローレートが、いずれも5g/10分以上、50g/10分以下であることを特徴とする積層フィルム。
【0020】
2.前記シクロオレフィン樹脂層Aの製膜後の膜厚をd(A)とし、前記シクロオレフィン樹脂層Bの製膜後の膜厚をd(B)とした時、膜厚比d(B)/d(A)>1.00であることを特徴とする前記1に記載の積層フィルム。
【0021】
3.前記ガラス転移温度差ΔTg(Tg(a)−Tg(b))が、15℃以上であることを特徴とする前記1または2に記載の積層フィルム。
【0022】
4.前記シクロオレフィン樹脂層Aのガラス転移温度Tg(a)が、155℃以上であることを特徴とする前記1から3のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【0023】
5.下式(1)で表される面内リタデーション値Roが10nm以上、350nm以下であり、かつ下式(2)で表される厚み方向リタデーション値Rtが30nm以上、400nm以下であることを特徴とする前記1から4のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【0024】
式(1)
Ro=(nx−ny)×d
式(2)
Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
〔式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyは面内で遅相軸に直交する方向の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率、dはフィルムの厚み(nm)を表す。〕
【発明の効果】
【0025】
本発明により、ガラス転移点(Tg)が異なるシクロオレフィン層を積層した積層フィルムであって、斜めスジ故障、横段故障、縦スジ故障及びコーナームラが改良された積層フィルムを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の積層フィルムの製造方法を実施する装置の全体構成を示す概略フローシートである。
【図2】本発明に適用可能な共押出しダイ溶融製膜装置の概略図の一例を示す。
【図3】本発明に適用可能なフィードブロックを有するダイの一例を示す斜視図である。
【図4】本発明に適用可能なマルチマニフォールドダイの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0028】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、シクロオレフィン樹脂層Aとシクロオレフィン樹脂層Bとを、溶融流延製膜法により製膜及び積層して製造した積層フィルムであって、該シクロオレフィン樹脂層Aのガラス転移温度をTg(a)とし、該シクロオレフィン樹脂層Bのガラス転移温度をTg(b)としたとき、ガラス転移温度差ΔTg(Tg(a)−Tg(b))が5℃以上であり、かつ該シクロオレフィン樹脂層A及びシクロオレフィン樹脂層Bのメルトフローレートが、いずれも5g/10分以上、50g/10分以下であることを特徴とする積層フィルムにより、斜めスジ故障、横段故障、縦スジ故障及びコーナームラが改良された積層フィルムを実現することができることを見出し、本発明に至った次第である。
【0029】
以下、本発明の積層フィルムの詳細について説明する。
【0030】
〔シクロオレフィン樹脂層〕
本発明の積層フィルムにおいては、シクロオレフィン樹脂層Aとシクロオレフィン樹脂層Bとを、溶融流延製膜法により製膜及び積層して製造することを特徴とする。
【0031】
以下、各シクロオレフィン樹脂層の形成に用いる本発明に係るシクロオレフィン樹脂について説明する。
【0032】
(シクロオレフィン樹脂)
本発明に用いられるシクロオレフィン樹脂は、脂環式構造を含有する重合体樹脂からなるものである。
【0033】
好ましいシクロオレフィン樹脂は、環状オレフィンを重合または共重合した樹脂である。環状オレフィンとしては、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、エチルテトラシクロドデセン、エチリデンテトラシクロドデセン、テトラシクロ〔7.4.0.110,13.02,7〕トリデカ−2,4,6,11−テトラエンなどの多環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン、シクロヘプテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの単環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体等が挙げられる。これら環状オレフィンには置換基として極性基を有していてもよい。極性基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシル基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニル基、アミノ基、エステル基、カルボン酸無水物基などが挙げられ、特に、エステル基、カルボキシル基またはカルボン酸無水物基が好適である。
【0034】
好ましいシクロオレフィン樹脂は、環状オレフィン以外の単量体を付加共重合したものであってもよい。付加共重合可能な単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテンなどのエチレンまたはα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどのジエン等が挙げられる。
【0035】
環状オレフィンは、付加重合反応或いはメタセシス開環重合反応によって得られる。重合は触媒の存在下で行われる。付加重合用触媒として、例えば、バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる重合触媒などが挙げられる。開環重合用触媒として、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金などの金属のハロゲン化物、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる重合触媒;或いは、チタン、バナジウム、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる重合触媒などが挙げられる。重合温度、圧力等は特に限定されないが、通常−50℃〜100℃の重合温度、0〜490N/cmの重合圧力で重合させる。
【0036】
本発明に用いるシクロオレフィン樹脂は、環状オレフィンを重合または共重合させた後、水素添加反応させて、分子中の不飽和結合を飽和結合に変えたものであることが好ましい。水素添加反応は、公知の水素化触媒の存在下で、水素を吹き込んで行う。水素化触媒としては、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウムの如き遷移金属化合物/アルキル金属化合物の組み合わせからなる均一系触媒;ニッケル、パラジウム、白金などの不均一系金属触媒;ニッケル/シリカ、ニッケル/けい藻土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/けい藻土、パラジウム/アルミナの如き金属触媒を担体に担持してなる不均一系固体担持触媒などが挙げられる。
【0037】
或いは、シクロオレフィン樹脂として、下記のノルボルネン系ポリマーも挙げられる。ノルボルネン系ポリマーは、ノルボルネン骨格を繰り返し単位として有していることが好ましく、その具体例としては、特開昭62−252406号公報、特開昭62−252407号公報、特開平2−133413号公報、特開昭63−145324号公報、特開昭63−264626号公報、特開平1−240517号公報、特公昭57−8815号公報、特開平5−39403号公報、特開平5−43663号公報、特開平5−43834号公報、特開平5−70655号公報、特開平5−279554号公報、特開平6−206985号公報、特開平7−62028号公報、特開平8−176411号公報、特開平9−241484号公報等に記載されたものが好ましく利用出来るが、これらに限定されるものではない。また、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
本発明においては、前記ノルボルネン系ポリマーの中でも、下記構造式(I)〜(IV)のいずれかで表される繰り返し単位を有するものが好ましい。
【0039】
【化1】

【0040】
前記構造式(I)〜(IV)中、A、B、C及びDは、各々独立して、水素原子または1価の有機基を表す。
【0041】
また、前記ノルボルネン系ポリマーの中でも、下記構造式(V)または(VI)で表される化合物の少なくとも1種と、これと共重合可能な不飽和環状化合物とをメタセシス重合して得られる重合体を水素添加して得られる水添重合体も好ましい。
【0042】
【化2】

【0043】
前記構造式中、A、B、C及びDは、各々独立して、水素原子または1価の有機基を表す。
【0044】
ここで、上記A、B、C及びDは特に限定されないが、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、一価の有機基、または、少なくとも2価の連結基を介して有機基が連結されてもよく、これらは同じであっても異なっていてもよい。また、AまたはBとCまたはDは単環または多環構造を形成してもよい。ここで、上記少なくとも2価の連結基とは、酸素原子、イオウ原子、窒素原子に代表されるヘテロ原子を含み、例えば、エーテル、エステル、カルボニル、ウレタン、アミド、チオエーテル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、上記連結基を介し、上記有機基は更に置換されてもよい。
【0045】
また、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン、及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、及びこれらの誘導体;1、4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが用いられる。これらの中でも、α−オレフィン、特にエチレンが好ましい。
【0046】
これらの、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーは、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用することが出来る。ノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとを付加共重合する場合は、付加共重合体中のノルボルネン系モノマー由来の構造単位と共重合可能なその他のモノマー由来の構造単位との割合が、質量比で通常30:70〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは70:30〜95:5の範囲となるように適宜選択される。
【0047】
合成したポリマーの分子鎖中に残留する不飽和結合を水素添加反応により飽和させる場合には、耐光劣化や耐候劣化性などの観点から、水素添加率を90%以上、好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上とする。
【0048】
このほか、本発明で用いられるシクロオレフィン樹脂としては、特開平5−2108号公報段落番号[0014]〜[0019]記載の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂、特開2001−277430号公報段落番号[0015]〜[0031]記載の熱可塑性ノルボルネン系ポリマー、特開2003−14901号公報段落番号[0008]〜[0045]記載の熱可塑性ノルボルネン系樹脂、特開2003−139950号公報段落番号[0014]〜[0028]記載のノルボルネン系樹脂組成物、特開2003−161832号公報段落番号[0029]〜[0037]記載のノルボルネン系樹脂、特開2003−195268号公報段落番号[0027]〜[0036]記載のノルボルネン系樹脂、特開2003−211589号公報段落番号[0009]〜[0023]脂環式構造含有重合体樹脂、特開2003−211588号公報段落番号[0008]〜[0024]記載のノルボルネン系重合体樹脂若しくはビニル脂環式炭化水素重合体樹脂などが挙げられる。
【0049】
具体的には、日本ゼオン(株)製ゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製アートン、三井化学(株)製アペル(APL8008T、APL6509T、APL6013T、APL5014DP、APL6015T)などが好ましく用いられる。
【0050】
本発明で使用されるシクロオレフィン樹脂の分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(シクロオレフィン樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法で測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常、5000〜500000、好ましくは8000〜200000、より好ましくは10000〜100000の範囲である。
【0051】
(ガラス転移温度)
本発明の積層フィルムにおいては、溶融流延製膜法によりシクロオレフィン樹脂層Aとシクロオレフィン樹脂層Bとを積層して製造するが、シクロオレフィン樹脂層Aのガラス転移温度をTg(a)とし、シクロオレフィン樹脂層Bのガラス転移温度をTg(b)としたとき、ガラス転移温度差ΔTg(Tg(a)−Tg(b))が5℃以上として構成することを特徴とする。
【0052】
本発明に係るシクロオレフィン樹脂層のガラス転移点温度(Tg)は、示差走査カロリメーター「DSC−7」(パーキンエルマー製)、および熱分析装置コントローラー「TAC7/DX」(パーキンエルマー製)を用いて測定することができる。具体的には、シクロオレフィン樹脂層4.50mgをアルミニウム製パン「KITNO.0219−0041」に封入し、これを「DSC−7」のサンプルホルダーにセットし、リファレンスの測定には空のアルミニウム製パンを使用し、測定温度0〜200℃で、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分の測定条件で、Heat−cool−Heatの温度制御を行い、その2nd.Heatにおけるデータを取得し、第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1の吸熱ピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線との交点をガラス転移点温度(Tg)として求める。
【0053】
本発明の積層フィルムにおいて、本発明で規定するガラス転移温度差ΔTg(Tg(a)−Tg(b))を5℃以上とする方法については、シクロオレフィン樹脂層を構成するシクロオレフィン樹脂として、シクロオレフィン樹脂層間のTgの差が5℃以上となる様に、それぞれの層で適用するTgの異なるシクロオレフィン樹脂の組み合わせを適宜選択することにより、所望のTg差を備えた積層フィルムを得ることができる。
【0054】
本発明の積層フィルムにおいては、ガラス転移温度差ΔTg(Tg(a)−Tg(b))、あるいはΔTg(Tg(c)−Tg(d))を5℃以上とすることを特徴とるが、本発明の目的効果がより奏する観点からは、15℃以上、であることが好ましく、より好ましくは15℃以上、50℃以下であり、更に好ましくは15℃以上、30℃以下である。
【0055】
また、本発明の積層フィルムにおいては、より高いTg値を有するシクロオレフィン樹脂層A、CのTg値としては、155℃以上であることが好ましく、より好ましくは155℃以上、165℃以下である。
【0056】
(メルトフローレート)
本発明の溶融流延製膜法により作製した積層フィルムにおいては、シクロオレフィン樹脂層A及びシクロオレフィン樹脂層Bのメルトフローレートが、いずれも5g/10分以上、50g/10分以下であることを特徴とする。
【0057】
本発明に係るメルトフローレートは、メルトフローインデックスとも称され、各シクロオレフィン層について、温度260℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(g/10分)を、ASTM D1238で規定された方法に従って測定することにより求めることができる。
【0058】
本発明において、本発明に係る各シクロオレフィン樹脂層のメルトフローレートを本発明で規定する範囲に制御する方法としては、特に制限はないが、それぞれのシクロオレフィン樹脂層の形成に用いるシクロオレフィン樹脂の種類、各種添加剤(例えば、紫外線吸収剤、安定剤、可塑剤)の種類及び添加量を適宜調整することにより、所望のメルトフローレートに調整することができる。
【0059】
(膜厚)
本発明の溶融流延法で作製した積層フィルムにおいては、Tgの高いシクロオレフィン樹脂層Aの膜厚をd(A)とし、相対的に低Tgのシクロオレフィン樹脂層Bの膜厚をd(B)としたとき、膜厚比d(B)/d(A)が、1.0を越えること、すなわち、低Tgのシクロオレフィン樹脂層Bの膜厚d(B)が、Tgの高いシクロオレフィン樹脂層Aの膜厚d(A)より厚いことが好ましく、より好ましくは、5.0>d(B)/d(A)>1.0であり、特に好ましくは5.0>d(B)/d(A)>2.0である。
【0060】
(リタデーション値Ro、Rt)
本発明の積層フィルムにおいては、下式(1)で表される面内リタデーション値Roが10nm以上、350nm以下であり、かつ下式(2)で表される厚み方向リタデーション値Rtが30nm以上、400nm以下であることが好ましい。
【0061】
式(1)
Ro=(nx−ny)×d
式(2)
Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
上記式(1)、(2)において、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyは面内で遅相軸に直交する方向の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率、dはフィルムの厚み(nm)を表す。
【0062】
本発明におけるリタデーションの測定は、一例として、王子計測機器製KOBRA21ADHを用いて23℃、55%RHの環境下で590nm、もしくは所定の波長(480nm、630nm)で行うことができる。また、リタデーションを計算する際には、アッベの屈折計1T(株式会社アタゴ製)を用いて各試料の該当波長の屈折率を測定した値を用いる。本発明の積層フィルムの場合には、各層の屈折率の平均値を用いる。膜厚d(nm)は、市販のマイクロメーターを用いて試料の厚さを何点か測定し平均値を用い、上記式(1)、(2)に代入して、Ro、Rtを求めることができる。
【0063】
本発明の積層フィルムにおいて、Ro、Rtを本願で規定する条件とするための達成手段としては、例えば、MD延伸およびTD延伸の倍率および延伸温度の制御、膜厚の制御等が挙げられる。
【0064】
〔その他の添加剤〕
本発明の積層フィルムを構成する各シクロオレフィン樹脂層には、本発明の目的効果を損なわない範囲で、下記に示す酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、可塑剤、酸補足剤、無機・有機微粒子等を添加することができる。
【0065】
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、耐熱加工安定剤、酸素スカベンジャー等が挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤、特にアルキル置換フェノール系酸化防止剤が好ましい。これらの酸化防止剤を配合することにより、透明性、耐熱性等を低下させることなく、成型時の熱や酸化劣化等による成形体の着色や強度低下を防止できる。これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、セルロースエステル100質量部に対して好ましくは0.001〜5質量部、より好ましくは0.01〜1質量部である。
【0066】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤化合物は既知の化合物であり、例えば、米国特許第4,839,405号明細書の第12〜14欄に記載されており、2,6−ジアルキルフェノール誘導体化合物が含まれる。
【0067】
ヒンダードフェノール化合物の具体例には、n−オクタデシル=3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル=3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−アセテート、n−オクタデシル=3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、n−ヘキシル=3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、n−ドデシル=3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、ネオ−ドデシル=3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ドデシル=β(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチル=α−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシル=α−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシル=α−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−(n−オクチルチオ)エチル=3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート、2−(n−オクチルチオ)エチル=3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル=3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル=3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート、2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エチル=3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ジエチルグリコール=ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル=3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ステアルアミド−N,N−ビス−[エチレン=3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、n−ブチルイミノ−N,N−ビス−[エチレン=3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル=3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル=7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,2−プロピレングリコール=ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコール=ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ネオペンチルグリコール=ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコール=ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、グリセリン−l−n−オクタデカノエート−2,3−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、ペンタエリトリトール−テトラキス−[3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,1−トリメチロールエタン−トリス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ソルビトールヘキサ−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−ヒドロキシエチル=7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−ステアロイルオキシエチル=7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,6−n−ヘキサンジオール−ビス[(3′,5′−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリトリトール−テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)が含まれる。上記タイプのヒンダードフェノール系酸化防止剤は、例えば、Ciba Specialty Chemicalsから、“Irganox1076”及び“Irganox1010”という商品名で市販されている。
【0068】
その他の酸化防止剤としては、具体的には、トリスノニルフェニルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤、ジラウリル−3,3′−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3′−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)等のイオウ系酸化防止剤、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3、5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート等の耐熱加工安定剤、特公平08−27508号記載の3,4−ジヒドロ−2H−1−ベンゾピラン系化合物、3,3′−スピロジクロマン系化合物、1,1−スピロインダン系化合物、モルホリン、チオモルホリン、チオモルホリンオキシド、チオモルホリンジオキシド、ピペラジン骨格を部分構造に有する化合物、特開平3−174150号記載のジアルコキシベンゼン系化合物等の酸素スカベンジャー等が挙げられる。これら酸化防止剤の部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にポリマーへペンダントされていてもよい。
【0069】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、偏光子や表示装置の紫外線に対する劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることができるが、ベンゾフェノン系化合物や着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましく、特に好ましくはベンゾトリアゾール系化合物である。また、特開平10−182621号公報、特開平8−337574号公報記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報記載の高分子紫外線吸収剤を用いてもよい。
【0070】
有用なベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例として、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0071】
また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)234、チヌビン(TINUVIN)360(何れもBASFジャパン(株)社製)を用いることもできる。
【0072】
ベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)メタン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
紫外線吸収剤は0.1〜20質量%添加することが好ましく、更に0.5〜10質量%添加することが好ましく、更に1〜5質量%添加することが好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。
【0074】
(安定剤)
積層フィルムには、外光や液晶ディスプレイのバックライトからの光に対する安定化剤として、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)化合物が挙げられ、これは既知の化合物であり、例えば、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄及び米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、又はそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体等が含まれる。
【0075】
ヒンダードアミン光安定剤化合物の具体例には、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−アリル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−ベンジル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(4−t−ブチル−2−ブテニル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−エチル−4−サリチロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン−4−イル−β(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1−ベンジル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルマレイネート(maleinate)、(ジ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−アジペート、(ジ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−セバケート、(ジ−1,2,3,6−テトラメチル−2,6−ジエチル−ピペリジン−4−イル)−セバケート、(ジ−1−アリル−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−4−イル)−フタレート、1−アセチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−アセテート、トリメリト酸−トリ−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)エステル、1−アクリロイル−4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ジブチル−マロン酸−ジ−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−ピペリジン−4−イル)−エステル、ジベンジル−マロン酸−ジ−(1,2,3,6−テトラメチル−2,6−ジエチル−ピペリジン−4−イル)−エステル、ジメチル−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オキシ)−シラン,トリス−(1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ホスフィット、トリス−(1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ホスフェート,N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ヘキサメチレン−1,6−ジアミン、N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ヘキサメチレン−1,6−ジアセトアミド、1−アセチル−4−(N−シクロヘキシルアセトアミド)−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン、4−ベンジルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−N,N′−ジブチル−アジパミド、N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−N,N′−ジシクロヘキシル−(2−ヒドロキシプロピレン)、N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−p−キシリレン−ジアミン、4−(ビス−2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−メタクリルアミド−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、α−シアノ−β−メチル−β−[N−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)]−アミノ−アクリル酸メチルエステル等が挙げられる。
【0076】
積層フィルム中の安定化剤の添加する量は、シクロオレフィン樹脂の全質量に対して、光安定化剤の添加量は0.001質量%以上、5質量%以下が好ましく、より好ましくは0.005質量%以上3質量%以下であり、更に好ましくは0.01質量%以上0.8質量%以下である。
【0077】
(無機・有機微粒子)
添加できる微粒子としては特に限定はされないが、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられる。
【0078】
無機化合物としては、珪素を含む化合物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくは、ケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、二酸化珪素が特に好ましく用いられる。
【0079】
二酸化珪素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用できる。
【0080】
酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用できる。
【0081】
有機化合物としては、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。
【0082】
上記記載のシリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上、東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
【0083】
本発明に係る微粒子の一次平均粒子径としては、ヘイズを低く抑えるという観点から、20nm以下が好ましく、更に好ましくは、5〜16nmであり、特に好ましくは、5〜12nmである。
【0084】
(可塑剤)
可塑剤として知られる化合物を添加することは、機械的性質向上、柔軟性付与、耐吸水性付与、水分透過率の低減等のフィルムの改質の点から好ましい。
【0085】
可塑剤としては、例えばリン酸エステル誘導体、カルボン酸エステル誘導体が好ましく用いられる。また、特開2003−12859号に記載の重量平均分子量が500以上10000以下であるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリル系ポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリル系ポリマー又はシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーなども好ましく用いられる。
【0086】
具体的な可塑剤としては、リン酸エステル系可塑剤、エチレングリコールエステル系可塑剤、グリセリンエステル系可塑剤、ジグリセリンエステル系可塑剤(脂肪酸エステル)、多価アルコールエステル系可塑剤、ジカルボン酸エステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、ポリマー可塑剤等が挙げられる。この中でも多価アルコールエステル系可塑剤、ジカルボン酸エステル系可塑剤及び多価カルボン酸エステル系可塑剤が好ましい。また、可塑剤は液体であっても固体であってもよく、組成物の制約上無色であることが好ましい。熱的にはより高温において安定であることが好ましく、分解開始温度が150℃以上、更に200℃以上が好ましい。添加量は光学物性・機械物性に悪影響がなければよく、その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択され、本発明に用いられるセルロースエステル100質量部に対して好ましくは0.001〜50質量部、より好ましくは0.01〜30質量部である。特に0.1〜15質量%が好ましい。
【0087】
以下、以下、可塑剤の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0088】
リン酸エステル系の可塑剤:具体的には、トリアセチルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸アルキルエステル、トリシクロベンチルホスフェート、シクロヘキシルホスフェート等のリン酸シクロアルキルエステル、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリナフチルホスフェート、トリキシリルオスフェート、トリスオルト−ビフェニルホスフェート等のリン酸アリールエステルが挙げられる。これらの置換基は、同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキル基、シクロアルキル基、アリール基のミックスでもよく、また置換基同士が共有結合で結合していてもよい。
【0089】
またエチレンビス(ジメチルホスフェート)、ブチレンビス(ジエチルホスフェート)等のアルキレンビス(ジアルキルホスフェート)、エチレンビス(ジフェニルホスフェート)、プロピレンビス(ジナフチルホスフェート)等のアルキレンビス(ジアリールホスフェート)、フェニレンビス(ジブチルホスフェート)、ビフェニレンビス(ジオクチルホスフェート)等のアリーレンビス(ジアルキルホスフェート)、フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、ナフチレンビス(ジトルイルホスフェート)等のアリーレンビス(ジアリールホスフェート)等のリン酸エステルが挙げられる。これらの置換基は、同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキル基、シクロアルキル基、アリール基のミックスでもよく、また置換基同士が共有結合で結合していてもよい。
【0090】
更にリン酸エステルの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。上記化合物の中では、リン酸アリールエステル、アリーレンビス(ジアリールホスフェート)が好ましく、具体的にはトリフェニルホスフェート、フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)が好ましい。
【0091】
エチレングリコールエステル系の可塑剤:具体的には、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジブチレート等のエチレングリコールアルキルエステル系の可塑剤、エチレングリコールジシクロプロピルカルボキシレート、エチレングリコールジシクロヘキルカルボキシレート等のエチレングリコールシクロアルキルエステル系の可塑剤、エチレングリコールジベンゾエート、エチレングリコールジ4−メチルベンゾエート等のエチレングリコールアリールエステル系の可塑剤が挙げられる。これらアルキレート基、シクロアルキレート基、アリレート基は、同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキレート基、シクロアルキレート基、アリレート基のミックスでもよく、またこれら置換基同士が共有結合で結合していてもよい。更にエチレングリコール部も置換されていてもよく、エチレングリコールエステルの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0092】
グリセリンエステル系の可塑剤:具体的にはトリアセチン、トリブチリン、グリセリンジアセテートカプリレート、グリセリンオレートプロピオネート等のグリセリンアルキルエステル、グリセリントリシクロプロピルカルボキシレート、グリセリントリシクロヘキシルカルボキシレート等のグリセリンシクロアルキルエステル、グリセリントリベンゾエート、グリセリン4−メチルベンゾエート等のグリセリンアリールエステル、ジグリセリンテトラアセチレート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンアセテートトリカプリレート、ジグリセリンテトララウレート、等のジグリセリンアルキルエステル、ジグリセリンテトラシクロブチルカルボキシレート、ジグリセリンテトラシクロペンチルカルボキシレート等のジグリセリンシクロアルキルエステル、ジグリセリンテトラベンゾエート、ジグリセリン3−メチルベンゾエート等のジグリセリンアリールエステル等が挙げられる。これらアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基は、同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基のミックスでもよく、またこれら置換基同士が共有結合で結合していてもよい。更にグリセリン、ジグリセリン部も置換されていてもよく、グリセリンエステル、ジグリセリンエステルの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0093】
多価アルコールエステル系の可塑剤:具体的には、特開2003−12823号公報の段落番号[0030]〜[0033]に記載の多価アルコールエステル系可塑剤が挙げられる。
【0094】
これらアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基は、同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基のミックスでもよく、またこれら置換基同士が共有結合で結合していてもよい。更に多価アルコール部も置換されていてもよく、多価アルコールの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0095】
ジカルボン酸エステル系の可塑剤:具体的には、ジドデシルマロネート(C1)、ジオクチルアジペート(C4)、ジブチルセバケート(C8)等のアルキルジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロペンチルサクシネート、ジシクロヘキシルアジーペート等のアルキルジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニルサクシネート、ジ4−メチルフェニルグルタレート等のアルキルジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤、ジヘキシル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート、ジデシルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロヘキシル−1,2−シクロブタンジカルボキシレート、ジシクロプロピル−1,2−シクロヘキシルジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニル−1,1−シクロプロピルジカルボキシレート、ジ2−ナフチル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤、ジエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等のアリールジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロプロピルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等のアリールジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニルフタレート、ジ4−メチルフェニルフタレート等のアリールジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤が挙げられる。これらアルコキシ基、シクロアルコキシ基は、同一でもあっても異なっていてもよく、また一置換でもよく、これらの置換基は更に置換されていてもよい。アルキル基、シクロアルキル基はミックスでもよく、またこれら置換基同士が共有結合で結合していてもよい。更にフタル酸の芳香環も置換されていて良く、ダイマー、トリマー、テトラマー等の多量体でもよい。またフタル酸エステルの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にポリマーへペンダントされていてもよく、酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0096】
多価カルボン酸エステル系の可塑剤:具体的には、トリドデシルトリカルバレート、トリブチル−meso−ブタン−1,2,3,4−テトラカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、トリシクロヘキシルトリカルバレート、トリシクロプロピル−2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、トリフェニル2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボキシレート、テトラ3−メチルフェニルテトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤、テトラヘキシル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレート、テトラブチル−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、テトラシクロプロピル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレート、トリシクロヘキシル−1,3,5−シクロヘキシルトリカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、トリフェニル−1,3,5−シクロヘキシルトリカルボキシレート、ヘキサ4−メチルフェニル−1,2,3,4,5,6−シクロヘキシルヘキサカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤、トリドデシルベンゼン−1,2,4−トリカルボキシレート、テトラオクチルベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、トリシクロペンチルベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、テトラシクロヘキシルベンゼン−1,2,3,5−テトラカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤トリフェニルベンゼン−1,3,5−テトラカルトキシレート、ヘキサ4−メチルフェニルベンゼン−1,2,3,4,5,6−ヘキサカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤が挙げられる。これらアルコキシ基、シクロアルコキシ基は、同一でもあっても異なっていてもよく、また一置換でもよく、これらの置換基は更に置換されていてもよい。アルキル基、シクロアルキル基はミックスでもよく、またこれら置換基同士が共有結合で結合していてもよい。更にフタル酸の芳香環も置換されていて良く、ダイマー、トリマー、テトラマー等の多量体でもよい。またフタル酸エステルの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にポリマーへペンダントされていてもよく、酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0097】
ポリマー可塑剤:具体的には、脂肪族炭化水素系ポリマー、脂環式炭化水素系ポリマー、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系ポリマー、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリN−ビニルピロリドン等のビニル系ポリマー、ポリスチレン、ポリ4−ヒドロキシスチレン等のスチレン系ポリマー、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア等が挙げられる。数平均分子量は、1,000〜500,000程度が好ましく、特に好ましくは、5,000〜200,000である。1,000以下では揮発性に問題が生じ、500,000を超えると可塑化能力が低下し、セルロースエステル誘導体組成物の機械的性質に悪影響を及ぼす。これらポリマー可塑剤は1種の繰り返し単位からなる単独重合体でも、複数の繰り返し構造体を有する共重合体でもよい。また、上記ポリマーを2種以上併用して用いてもよく、他の可塑剤、酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤、滑り剤及びマット剤等を含有させてもよい。
【0098】
これらの化合物の添加量は、可塑剤がフィルムを構成する樹脂に対して、0.5質量%以上〜50質量%未満の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1質量%以上〜30質量%未満の範囲、更に好ましくは1質量%以上〜15質量%未満の範囲にある。
【0099】
上記可塑剤の中でも熱溶融時に揮発成分を生成しないことが好ましい。具体的には特表平6−501040号に記載されている不揮発性リン酸エステルが挙げられ、例えばアリーレンビス(ジアリールホスフェート)エステルや上記例示化合物の中ではトリメチロールプロパントリベンゾエート等が好ましいがこれらに限定されるものではない。
【0100】
(帯電防止剤)
本発明のシクロオレフィン樹脂層からなる積層フィルムには帯電防止剤を含有することが好ましく、樹脂100質量部に対し、帯電防止剤を0.001〜2.0質量部含有することが好ましい。
【0101】
帯電防止剤としては、特に制限はなく、公知の帯電防止剤を用いることができるが、その中でも、アニオン性帯電防止剤、カチオン性帯電防止剤、非イオン性帯電防止剤、両性イオン性帯電防止剤、高分子帯電防止剤及び導電性微粒子から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、更に好ましくは導電性微粒子であり、特に好ましくは酸化セリウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化アンチモン及び酸化シリコーンから選ばれる少なくとも1種である。
【0102】
アニオン性帯電防止剤としては、例えば、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、液体脂肪油硫酸エステル塩類、脂肪族アミン及び脂肪属アマイドの硫酸塩類、脂肪属アルコールリン酸エステル塩類、二塩基性脂肪酸エステルのスルホン酸塩類、脂肪族アミドスルホン酸塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類、ホルマリン縮合のナフタリンスルホン酸塩類等が挙げられ、カチオン性帯電防止剤としては、例えば、脂肪族アミン塩類、第4級アンモニウム塩類、アルキルピリジニウム塩等が挙げられる。非イオン性帯電防止剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類等が挙げられ、両性イオン性帯電防止剤としては、例えば、イミダゾリン誘導体、ベタイン型高級アルキルアミノ誘導体、硫酸エステル誘導体、リン酸エステル誘導体等が挙げられ、具体的な化合物は、丸茂秀雄著「帯電防止剤 高分子の表面改質」幸書房、増補「プラスチック及びゴム用添加剤実用便覧 p333〜p455」化学工業社刊、特開平11−256143号、特公昭52−32572号、特開平10−158484号等に記載されている。
【0103】
好ましい帯電防止剤としては、アニオン性帯電防止剤やカチオン性帯電防止剤といったイオン性高分子化合物を挙げることができる。イオン性高分子化合物としては、特公昭49−23828号、同49−23827号、同47−28937号にみられるようなアニオン性高分子化合物;特公昭55−734号、特開昭50−54672号、特公昭59−14735号、同57−18175号、同57−18176号、同57−56059号等にみられるような、主鎖中に解離基をもつアイオネン型ポリマー:特公昭53−13223号、同57−15376号、特公昭53−45231号、同55−145783号、同55−65950号、同55−67746号、同57−11342号、同57−19735号、特公昭58−56858号、特開昭61−27853号、同62−9346号にみられるような、側鎖中にカチオン性解離基をもつカチオン性ペンダント型ポリマー、特開平5−230161号にみられるようなグラフト共重合体等を挙げることができる。
【0104】
また、本発明において特に好ましく用いることのできる導電性微粒子としては、金属酸化物の例としては、ZnO、TiO、SnO、Al、In、SiO、MgO、BaO、CeO、Sb、MoO、V等、或いはこれらの複合酸化物が好ましく、特に、CeO、In、SnO、Sb、及びSiOが好ましい。異種原子を含む例としては、例えば、ZnOに対してはAl、In等の添加、TiOに対してはNb、Ta等の添加、またSnOに対しては、Sb、Nb、ハロゲン元素等の添加が効果的である。これら異種原子の添加量は0.01〜25mol%の範囲が好ましいが、0.1〜15mol%の範囲が特に好ましい。
【0105】
(酸補足剤)
有用な酸捕捉剤としては、酸と反応して酸を不活性化する化合物であれば制限なく用いることができるが、中でも米国特許第4,137,201号明細書に記載されているエポキシ基を有する化合物が好ましい。このような酸捕捉剤としてのエポキシ化合物は当該技術分野において既知であり、種々のポリグリコールのジグリシジルエーテル、特にポリグリコール1モル当たりに約8〜40モルのエチレンオキシドなどの縮合によって誘導されるポリグリコール、グリセロールのジグリシジルエーテルなど、金属エポキシ化合物(例えば、塩化ビニルポリマー組成物において、及び塩化ビニルポリマー組成物と共に、従来から利用されているもの)、エポキシ化エーテル縮合生成物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(即ち、4,4′−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン)、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル(特に、2〜22この炭素原子の脂肪酸の4〜2個程度の炭素原子のアルキルのエステル(例えば、ブチルエポキシステアレート)など)、及び種々のエポキシ化長鎖脂肪酸トリグリセリドなど(例えば、エポキシ化大豆油など)の組成物によって代表され例示され得るエポキシ化植物油及び他の不飽和天然油(これらはときとしてエポキシ化天然グリセリド又は不飽和脂肪酸と称され、これらの脂肪酸は一般に12〜22個の炭素原子を含有している)が含まれる。また、市販のエポキシ基含有エポキシド樹脂化合物として、EPON 815Cも好ましく用いることができる。
【0106】
更に上記以外に用いることが可能な酸捕捉剤としては、オキセタン化合物やオキサゾリン化合物、或いはアルカリ土類金属の有機酸塩やアセチルアセトナート錯体、特開平5−194788号公報の段落68〜105に記載されているものが含まれる。
【0107】
〔積層フィルムの製造方法〕
(溶融流延法)
本発明の積層フィルムを形成する実施態様としては、シクロオレフィン樹脂層Aとシクロオレフィン樹脂層Bとを、溶融流延製膜法を用いて製膜及び積層して製造する方法である。
【0108】
以下、溶融流延製膜法による本発明の積層フィルムの形成方法を説明する。
【0109】
溶融流延製膜法とは、シクロオレフィン樹脂の他に、上記説明した各種添加剤を含む組成物を、流動性を示す温度まで加熱溶融し、その後、流動性のシクロオレフィン樹脂を含む溶融物を流延することをいう。
【0110】
加熱溶融する成形方法としては、具体的には、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できる。これらの中で、機械的強度及び表面精度などに優れる複数層のシクロオレフィン樹脂層から形成される積層フィルムを得るためには、溶融押出し法が優れている。
【0111】
溶融押出しに用いるそれぞれTgの異なるシクロオレフィン樹脂を含む各原材料は、通常予め混錬してペレット化しておくことが好ましい。ペレット化は、公知の方法でよく、例えば、乾燥したシクロオレフィン樹脂や安定剤、可塑剤、その他添加剤をフィーダーで押出し機に供給し、1軸や2軸の押出し機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押出し、水冷又は空冷し、カッティングすることでペレット化したシクロオレフィン樹脂を含む組成物を得ることができる。
【0112】
この時、添加剤は、押出し機に供給する前に混合しておいてもよいし、それぞれ個別のフィーダーで供給してもよい。粒子や酸化防止剤等少量の添加剤は、均一に混合するため、事前に混合しておくことが好ましい。
【0113】
押出し機は、剪断力を抑え、シクロオレフィン樹脂が劣化(分子量低下、着色、ゲル生成等)しないようにペレット化可能で、かつできるだけ低温で加工することが好ましい。例えば、2軸押出し機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させることが好ましい。混錬の均一性から、噛み合いタイプが好ましい。
【0114】
以上のようにして得られたTgの異なるシクロオレフィン樹脂を含む各ペレットを用いて本発明のTgの異なる2層のシクロオレフィン樹脂層を積層したフィルム製膜を行う。もちろんペレット化せず、原材料の粉末をそのままフィーダーで押出し機に供給し、そのまま積層させてフィルム製膜することも可能である。
【0115】
上記ペレットを1軸や2軸タイプの押出し機を用いて、押出す際の溶融温度を200〜300℃程度とし、リーフディスクタイプのフィルターなどで濾過し異物を除去した後、Tダイからフィルム状に流延し、冷却ロール上で固化させる。
【0116】
供給ホッパーから押出し機へ導入する際は真空下又は減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。
【0117】
押出し流量は、ギアポンプを導入するなどして安定に行うことが好ましい。また、異物の除去に用いるフィルターは、ステンレス繊維焼結フィルターが好ましく用いられる。
【0118】
ステンレス繊維焼結フィルターは、ステンレス繊維体を複雑に絡み合った状態を作り出した上で圧縮し接触箇所を焼結し一体化したもので、その繊維の太さと圧縮量により密度を変え、濾過精度を調整できる。
【0119】
可塑剤や粒子などの添加剤は、予めシクロオレフィン樹脂と混合しておいてもよいし、押出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサーなどの混合装置を用いることが好ましい。
【0120】
冷却ロールと弾性タッチロールでフィルムをニップする際のタッチロール側のフィルム温度はフィルムのTg以上Tg+110℃以下にすることが好ましい。このような目的で使用する弾性体表面を有するロールは、公知のロールが使用できる。
【0121】
弾性タッチロールは挟圧回転体ともいう。弾性タッチロールとしては、登録特許3194904号公報、登録特許3422798号公報、特開2002−36332号公報、特開2002−36333号公報などで開示されているタッチロールを好ましく用いることができる。これらは市販されているものを用いることもできる。
【0122】
冷却ロールから積層フィルムを剥離する際は、張力を制御して積層フィルムの変形を防止することが好ましい。
【0123】
また、上記のようにして得られた積層フィルムは、冷却ロールに接する工程を通過後、前記延伸操作により延伸することが好ましい。
【0124】
延伸する方法は、公知のロール延伸機やテンターなどを好ましく用いることができる。延伸温度は、通常フィルムを構成する樹脂のTg〜Tg+60℃の温度範囲で行われることが好ましい。巻き取る前に、製品となる幅に端部をスリットして裁ち落とし、巻き中の貼り付きやすり傷防止のために、ナール加工(エンボッシング加工)を両端に施してもよい。ナール加工の方法は凸凹のパターンを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することができる。尚、フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、フィルムが変形しており製品として使用できないので切除されて、再利用される。
【0125】
積層フィルムの膜厚は、特に限定はされないが10〜200μmの範囲のものが用いられる。特に膜厚は10〜100μmであることが特に好ましい。更に好ましくは20〜80μmである。
【0126】
積層フィルムは、幅1〜4mのものが用いられる。特に幅1.2m以上であることが生産上好ましく、1.4〜4mのものがより好ましく用いられ、特に好ましくは1.6〜3mである。4mを超えると搬送が困難となる。
【0127】
次いで、Tgの異なる2層のシクロオレフィン樹脂層を積層して本発明の積層フィルムを作製する具体的な方法について、更に図を交えて説明する。
【0128】
本発明の積層フィルムは、2層のTgの異なるシクロオレフィン樹脂層から構成されている。本発明でいう「積層」とは、2層のシクロオレフィン樹脂層を溶融し流動性をもったまま接合せしめ、一体のシートフィルム状に加工することをいう。
【0129】
図1は、本発明の積層フィルムの製造方法を実施する装置の全体構成を示す概略フローシートである。
【0130】
図1において、本発明の積層フィルムの製造方法としては、例えば、ペレット化した各シクロオレフィン樹脂を含む組成物を、図2に記載のような2基の押出し機1を用いて、ダイス4から第1冷却ロール5上に溶融押出し、第1冷却ロール5表面にTgの高いシクロオレフィン樹脂層Aを外接させるとともに、さらに、第2冷却ロール7表面にTgの低いシクロオレフィン樹脂層Bを外接させ、第3冷却ロール8へ搬送し合計3本の冷却ロールに順に外接させて、冷却固化して2層のシクロオレフィン樹脂層が積層された積層フィルム10とする。ついで、剥離ロール9によって剥離した積層フィルム10を、延伸装置12により積層フィルム10の両端部を把持して延伸した後、巻取り装置16により巻き取る。また、平面性を矯正するために積層フィルムを第1冷却ロール5表面に挟圧するタッチロール6が設けられている。このタッチロール6は表面が弾性を有し、第1冷却ロール5との間でニップを形成している。
【0131】
図2に、本発明に適用可能な共押出しダイ溶融製膜装置の概略図の一例を示す。
【0132】
粉体またはペレット状に成形されたシクロオレフィン樹脂を含む組成物のうち、Tgの高いシクロオレフィン樹脂層Aの形成に用いる粉体またはペレット状に成形されたシクロオレフィン樹脂を含む組成物は二軸押出し機(A)溶融混練され、Tgの低いシクロオレフィン樹脂層Bの形成に用いる粉体またはペレット状に成形されたシクロオレフィン樹脂を含む組成物は二軸押出し機(B)で溶融混練される。二軸押出し機は二本のスクリューにより単軸押出し機より強い剪断力がかかり、材料を混合する効果が高い。二軸押出し機は、同方向回転型と異方向回転型の二種類があるが、本発明においてはより強い剪断力が得られる同方向型が好ましく用いられる。さらにスクリューの送り、ニーディングなどのセグメントを本発明の材料を溶融混練するのに最適な組合せになるようデザインすることができる。例えば、無機微粒子マット剤のような分散しにくい材料を所望の分散度に分散できるだけのニーディングディスクを組み込み、かつ所望の押出し量が得られるようにスクリューの径を選定することができる。同方向回転型二軸押出し機に原料を供給する際には、各原料を別個に供給しても良いし、あらかじめ混合してから供給しても良い。原料を押出し機に供給するには、公知のスクリューフィーダー、電磁振動フィーダー、強制押込み型スクリューフィーダー、等の連続式フィーダーが使用できる。シクロオレフィン樹脂は押出し機に供給する前に乾燥することが好ましく、乾燥温度はその樹脂のTg以下が好ましいが、可塑剤などの添加剤のガラス転移点や融点がシクロオレフィン樹脂の乾燥温度以下だと、一緒に乾燥した場合に機壁に融着したりするので好ましくない。そのような場合は、シクロオレフィン樹脂と添加剤を別個に乾燥、供給することが好ましい。シクロオレフィン樹脂と添加剤をあらかじめ混合して供給する場合は、乾燥温度を各材料のうち最も低いTgないし融点以下の温度に設定すれば良い。乾燥後吸湿しない様に、乾燥が終了した材料は速やかに押出し機に供給されることが好ましい。そのため、押出し機直上に乾燥機を設置し、乾燥を終了した原料を前述した連続式フィーダーで押出し機に供給することができる。また、乾燥を効率良く行い、乾燥終了した原料の吸湿を防止するために、真空乾燥、減圧乾燥、または不活性ガスを導入しながらの乾燥も好ましく用いられる。同じ目的で、乾燥機とフィーダー、フィーダーと押出し機投入口の間も減圧ないし不活性ガス雰囲気とすることが好ましく行われる。シクロオレフィン樹脂と添加剤を粉体で供給する場合、別個フィードでも、混合フィードでも、均一混合のために粒径、粒度分布が一致ないし近似していることが好ましい。そのため、混合した原料を粉砕機で粉砕することも好ましく行われる。
【0133】
その後、各溶融されたシクロオレフィン樹脂流をフィードブロックと呼ばれる合流器で積層したり、マニフォールドで拡幅された樹脂流を口金ランド部で合流積層したりして、共押出しダイ(本発明ではフラットダイ)より溶融押出しされ、高Tgのシクロオレフィン樹脂層A、低Tgのシクロオレフィン樹脂層Bに積層されたシートにし、該積層フィルムを、移動冷却媒体に密着冷却固化させてキャストシートを得る。
【0134】
まず、作製したシクロオレフィン樹脂ペレットを二軸タイプの押出機を用いて、押し出す際の溶融温度を200〜300℃程度とし、リーフディスクタイプのフィルターなどでろ過し異物を除去した後、Tダイからフィルム状に共押出し、冷却ロール上で固化し、弾性タッチロールと押圧しながら流延する。
【0135】
供給ホッパーから押出機へ導入する際は真空下または減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。
【0136】
ダイに傷や可塑剤の凝結物等の異物が付着するとスジ状の欠陥が発生する場合がある。このような欠陥のことをダイラインとも呼ぶが、ダイライン等の表面の欠陥を小さくするためには、押出機からダイまでの配管には樹脂の滞留部が極力少なくなるような構造にすることが好ましい。ダイの内部やリップにキズ等が極力無いものを用いることが好ましい。
【0137】
押出機やダイなどの溶融樹脂と接触する内面は、表面粗さを小さくしたり、表面エネルギーの低い材質を用いるなどして、溶融樹脂が付着し難い表面加工が施されていることが好ましい。具体的には、ハードクロムメッキやセラミック溶射したものを表面粗さ0.2S以下となるように研磨したものが挙げられる。
【0138】
第1冷却ロール5、第2冷却ロール7、第3冷却ロール8には特に制限はないが、高剛性の金属ロールで内部に温度制御可能な熱媒体または冷媒体が流れるような構造を備えるロールであり、大きさは限定されないが、溶融押し出されたフィルムを冷却するのに十分な大きさであればよく、通常冷却ロールの直径は100mmから1m程度である。
【0139】
冷却ロールの表面材質は、炭素鋼、ステンレス、アルミニウム、チタンなどが挙げられる。さらに表面の硬度を高め、樹脂との剥離性を改良するため、ハードクロムメッキや、ニッケルメッキ、非晶質クロムメッキなどや、セラミック溶射等の表面処理を施すことが好ましい。
【0140】
冷却ロール表面の表面粗さは、Raで0.1μm以下とすることが好ましく、さらに0.05μm以下とすることが好ましい。ロール表面が平滑であるほど、得られるフィルムの表面も平滑にできるのである。もちろん表面加工した表面はさらに研磨し上述した表面粗さとすることが好ましい。
【0141】
第1冷却ロール5に対向して配置される弾性タッチロール6としては、特開平03−124425号、特開平08−224772号、特開平07−100960号、特開平10−272676号、WO97−028950、特開平11−235747号、特開2002−36332号、特開2005−172940号や特開2005−280217号の各公報に記載されているような表面が薄膜金属スリーブ被覆シリコンゴムロールを使用することができる。
【0142】
冷却ロールからフィルムを剥離する際は、張力を制御してフィルムの変形を防止することが好ましい。
【0143】
溶融押出しの際、共押出しスリットダイとしてはT型ダイ、L型ダイ、フィッシュテイル型ダイのフラットダイが好ましく、ダイリップ間隔は50μm〜2mmであることが望ましい。
【0144】
また、共押出しダイのタイプとしては、図3で示すフィードブロックを有するダイ、図4で示すマルチマニフォールドダイ、マルチスロットダイ等のいずれのタイプでもよいが、マルチマニフォールドダイがフィルムの厚み精度、平面性付与の観点から特に好ましい。
【0145】
本発明において好ましいフラットダイである図4で示すマルチマニフォールドダイでは、二軸押出し機(場合によっては二軸押出し機)によって溶融混練されたシクロオレフィン樹脂を含む組成物は、流量制御のためのギヤポンプ(図示していない)を介して押出し部52、53に導入され、液だまりであるマニフォールド55、56にて押出し量を安定化し、リップ調整ボルト51によって制御された膜厚で溶融押出し製膜される。押出し機とダイの間にフィルターを配置することも好ましい。
【0146】
フラットダイの材質としては、溶融樹脂がダイなどの金属材質と接着しやすくなり、このためにダイスジといわれる固定スジが発生しやすくなり、光学用途としては利用出来なくなる恐れがある為、溶融樹脂との接液面材質は、通常のクロムメッキや窒化鋼などではなく、TiNのような離形性に優れたセラミック系材質や、SUS材質などが好ましい。
【0147】
2層に積層されたウェブを冷却ロールに密着させて冷却固化する為、ドラム上でシートが滑ると分子配向が生じ、いわゆるリタデーションばらつきが生じるため、該ウェブにエアーナイフ、エアーチャンバー、プレスロール法、流動パラフィン塗布法、静電気印加法などから選ばれた方法等の密着性向上手段によりキャストをしてもよい。
【0148】
〔適用分野:偏光板、液晶表示装置〕
(偏光板)
本発明の積層フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いる場合、偏光板は一般的な方法で作製することができる。本発明の積層フィルムの裏面側に粘着層を設け、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、貼り合わせることが好ましい。
【0149】
もう一方の面には本発明の積層フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。例えば、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC8UE、KC4UE、KC4FR−3、KC4FR−4、KC4HR−1、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、以上コニカミノルタオプト(株)製)等が好ましく用いられる。
【0150】
偏光板の主たる構成要素である偏光子とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。
【0151】
偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。
【0152】
上記粘着層に用いられる粘着剤としては、粘着層の少なくとも一部分において25℃での貯蔵弾性率が1.0×10〜1.0×10Paの範囲である粘着剤が用いられていることが好ましく、粘着剤を塗布し、貼り合わせた後に種々の化学反応により高分子量体又は架橋構造を形成する硬化型粘着剤が好適に用いられる。
【0153】
具体例としては、例えば、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、水性高分子−イソシアネート系粘着剤、熱硬化型アクリル粘着剤等の硬化型粘着剤、湿気硬化ウレタン粘着剤、ポリエーテルメタクリレート型、エステル系メタクリレート型、酸化型ポリエーテルメタクリレート等の嫌気性粘着剤、シアノアクリレート系の瞬間粘着剤、アクリレートとペルオキシド系の2液型瞬間粘着剤等が挙げられる。
【0154】
上記粘着剤としては一液型であっても良いし、使用前に二液以上を混合して使用する型であっても良い。
【0155】
また、上記粘着剤は有機溶剤を媒体とする溶剤系であってもよいし、水を主成分とする媒体であるエマルジョン型、コロイド分散液型、水溶液型などの水系であってもよいし、無溶剤型であってもよい。上記粘着剤液の濃度は、粘着後の膜厚、塗布方法、塗布条件等により適宜決定されれば良く、通常は0.1〜50質量%である。
【0156】
なお、本発明の積層フィルムは、例えば、片側の偏光子保護フィルム表面にプロテクトフィルムが貼合され、他方の側の粘着剤層表面にセパレートフィルムが貼合され、ロール状に巻かれた状態で製造されるロール状偏光板にも好適に用いられる。
【0157】
(液晶表示装置)
本発明の積層フィルムを貼合した偏光板を液晶表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた液晶表示装置を作製することができるが、特に大型の液晶表示装置やデジタルサイネージ等の屋外用途の液晶表示装置に好ましく用いられる。本発明に係る偏光板は、前記粘着層等を介して液晶セルに貼合する。
【0158】
本発明に係る偏光板は反射型、透過型、半透過型LCD又はTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型(FFS方式も含む)等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。特にVA型の画面が30型以上、特に30型〜54型の大画面の表示装置では、画面周辺部での白抜け等もなく、その効果が長期間維持される。
【0159】
なお、液晶表示装置のバックライト光源としては、平板蛍光ランプ、赤色(R)、緑色(G)、及び青色(B)の発光ダイオード(LED)を有する発光ダイオード(LED)バックライト、有機エレクトロルミネッセンス素子基板を用いた白色バックライト等を用いることができる。特に本発明の光拡散フィルムは、発光ダイオード(LED)バックライトに適している。
【実施例】
【0160】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0161】
《シクロオレフィン樹脂の準備》
下記のTgの異なるシクロオレフィン樹脂1〜7を準備した。
【0162】
1)シクロオレフィン樹脂1(COP1と略記)の調製
6−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレンに、重合触媒としてトリエチルアルミニウムの15%シクロヘキサン溶液10部、トリエチルアミン5部、及び四塩化チタンの20%シクロヘキサン溶液10部を添加して、シクロヘキサン中で開環重合し、得られた開環重合体をニッケル触媒で水素添加してポリマー溶液を得た。このポリマー溶液をイソプロピルアルコール中で凝固させ、乾燥し、粉末状のシクロオレフィン樹脂1を得た。このシクロオレフィン樹脂1の数平均分子量は40,000、水素添加率は99.8%以上であり、Tgは139℃であった。
【0163】
2)シクロオレフィン樹脂2(COP2と略記)の調製
特開2005−330465号公報の実施例2に記載の方法に従って付加重合法により合成したシクロオレフィン樹脂(主要モノマー分子量:182、Tg:127℃)を、シクロオレフィン樹脂2とした。
【0164】
3)シクロオレフィン樹脂3(COP3と略記)の調製
特表平8−507800号公報の実施例1に記載の方法に従って付加重合法により合成したシクロオレフィン樹脂(主要モノマー分子量:92、Tg:181℃)を、シクロオレフィン樹脂3とした。
【0165】
4)シクロオレフィン樹脂4(COP4と略記)
三井化学(株)製のシクロオレフィン樹脂であるAPL6015T(付加重合法、主要モノマー分子量:158、Tg:145℃)を、シクロオレフィン樹脂4とした。
【0166】
5)シクロオレフィン樹脂5(COP5と略記)
ポリプラスチックス(株)製のシクロオレフィン樹脂であるTOPAS6013(付加重合法、主要モノマー分子量:92、Tg:130℃)を、シクロオレフィン樹脂5とした。
【0167】
6)シクロオレフィン樹脂6(COP6と略記)
特許第3693803号公報の実施例1に記載の方法に従って付加重合法により合成したシクロオレフィン樹脂(主要モノマー分子量:92、Tg:140℃)を、シクロオレフィン樹脂6とした。
【0168】
7)シクロオレフィン樹脂7(COP7と略記)
特開2004−330651号公報に記載の熱可塑性シクロオレフィン樹脂である日本ゼオン社製のゼオノア1600(開環重合法、主要モノマー分子量:118、Tg:168℃)を、シクロオレフィン樹脂7とした。
【0169】
なお、上記シクロオレフィン樹脂1〜7のASTM D1238で規定された方法に従って測定したメルトフローレートは、いずれも30g/10分であった。
【0170】
《積層フィルムの作製》
〔積層フィルム1の作製〕
下記の方法に従って、溶融流延製膜法により、積層フィルム1を作製した。
【0171】
(シクロオレフィン樹脂ペレットの形成)
シクロオレフィン樹脂6(COP6、Tg:140℃)と、シクロオレフィン樹脂5(COP5、Tg:130℃)とを、それぞれ平均直径3mm、平均長さ5mmの円柱状のペレットに成形し、これを110℃の真空乾燥機で乾燥し、含水率を0.1%以下とした。
【0172】
(シクロオレフィン樹脂層A、シクロオレフィン樹脂層Bの製膜)
図1に記載の製膜フローに従って、シクロオレフィン樹脂6からなるシクロオレフィン樹脂層Aと、シクロオレフィン樹脂5からなるシクロオレフィン樹脂層Bを積層製膜して、積層フィルム1を作製した。
【0173】
はじめに、上記形成した各シクロオレフィン樹脂のペレットを、図2に記載の構成からなる2基の二軸押出し機を用いて、260℃で溶融した。次いで、ギアポンプから送り出された各溶融樹脂を、濾過精度5μmのリーフディスクフィルターにて濾過した。
【0174】
この後、260℃の共押方式のダイス4から、表面温度Taが第1冷却ロール5上に、シクロオレフィン樹脂層Aが第1冷却ロール5に接し、シクロオレフィン樹脂A上にシクロオレフィン樹脂層Bが積層される構成で共押出した。なお、各樹脂の供給量は、製膜後の膜厚として、シクロオレフィン樹脂層Aが40μm、シクロオレフィン樹脂層Bが40μmとなる条件で成膜した。この際、第1冷却ロール5上でフィルムを2mm厚の金属表面を有する弾性タッチロール6で線圧10kg/cmで押圧した。
【0175】
次いで、第2冷却ロールの表面温度が95℃になるように搬送し、総膜厚が80μmの2層構成からなる積層フィルム1を共押出成形によって得た。
【0176】
なお、第1冷却ロール及び第2冷却ロールは直径40cmのステンレス製とし、表面にハードクロムメッキを施した。又、内部には温度調整用のオイル(冷却用流体)を循環させて、ロール表面温度を制御した。弾性タッチロールは、直径20cmとし、内筒と外筒はステンレス製とし、外筒の表面にはハードクロムメッキを施した。外筒の肉厚は2mmとし、内筒と外筒との間の空間に温度調整用のオイル(冷却用流体)を循環させて弾性タッチロールの表面温度を制御した。
【0177】
次いで、この積層フィルム1を、ロール周速差を利用した延伸機によって150℃で搬送方向に1.3倍延伸し、さらに予熱ゾーン、延伸ゾーン、保持ゾーン、冷却ゾーン(各ゾーン間には各ゾーン間の断熱を確実にするためのニュートラルゾーンも有する)を有する幅手方向の延伸機であるテンターに導入し、幅手方向に150℃で1.6倍延伸した後、70℃まで冷却し、その後クリップから開放し、クリップ把持部を裁ち落として、幅2500mm、膜厚80μmの積層フィルム1を得た。
【0178】
〔積層フィルム2の作製〕
上記積層フィルム1の作製において、製膜後のシクロオレフィン樹脂層Aの膜厚を20μm、シクロオレフィン樹脂層Bの膜厚を60μmとなるように製膜条件(樹脂供給量)を変更した以外は同様にして、積層フィルム2を作製した。
【0179】
〔積層フィルム3の作製〕
上記積層フィルム2の作製において、シクロオレフィン樹脂層Aの形成に用いる樹脂をシクロオレフィン樹脂6(COP6、Tg:140℃)に代えて、シクロオレフィン樹脂1(COP1、Tg:139℃)を用い、シクロオレフィン樹脂層Bの形成に用いる樹脂をシクロオレフィン樹脂5(COP5、Tg:130℃)に代えて、シクロオレフィン樹脂2(COP2、Tg:127℃)を用いた以外は同様にして、積層フィルム3を作製した。
【0180】
〔積層フィルム4の作製〕
上記積層フィルム2の作製において、シクロオレフィン樹脂層Aの形成に用いる樹脂をシクロオレフィン樹脂6(COP6、Tg:140℃)に代えて、シクロオレフィン樹脂4(COP4、Tg:145℃)を用い、シクロオレフィン樹脂層Bの形成に用いる樹脂をシクロオレフィン樹脂5(COP5、Tg:130℃)に代えて、シクロオレフィン樹脂2(COP2、Tg:127℃)を用いた以外は同様にして、積層フィルム4を作製した。
【0181】
〔積層フィルム5の作製〕
上記積層フィルム2の作製において、シクロオレフィン樹脂層Aの形成に用いる樹脂をシクロオレフィン樹脂6(COP6、Tg:140℃)に代えて、シクロオレフィン樹脂7(COP7、Tg:168℃)を用い、シクロオレフィン樹脂層Bの形成に用いる樹脂をシクロオレフィン樹脂5(COP5、Tg:130℃)に代えて、シクロオレフィン樹脂4(COP4、Tg:145℃)を用いた以外は同様にして、積層フィルム5を作製した。
【0182】
〔積層フィルム6の作製〕
上記積層フィルム2の作製において、シクロオレフィン樹脂層Aの形成に用いる樹脂をシクロオレフィン樹脂6(COP6、Tg:140℃)に代えて、シクロオレフィン樹脂3(COP3、Tg:181℃)を用い、シクロオレフィン樹脂層Bの形成に用いる樹脂をシクロオレフィン樹脂5(COP5、Tg:130℃)に代えて、シクロオレフィン樹脂4(COP4、Tg:145℃)を用いた以外は同様にして、積層フィルム6を作製した。
【0183】
〔積層フィルム7の作製〕
上記積層フィルム2の作製において、シクロオレフィン樹脂層Aの形成に用いる樹脂をシクロオレフィン樹脂6(COP6、Tg:140℃)に代えて、シクロオレフィン樹脂4(COP4、Tg:145℃)を用い、シクロオレフィン樹脂層Bの形成に用いる樹脂をシクロオレフィン樹脂5(COP5、Tg:130℃)に代えて、シクロオレフィン樹脂6(COP6、Tg:140℃)を用いた以外は同様にして、積層フィルム7を作製した。
【0184】
〔積層フィルム8の作製〕
上記積層フィルム2の作製において、シクロオレフィン樹脂層Aの形成に用いる樹脂をシクロオレフィン樹脂6(COP6、Tg:140℃)に代えて、シクロオレフィン樹脂5(COP5、Tg:130℃)を用い、シクロオレフィン樹脂層Bの形成に用いる樹脂をシクロオレフィン樹脂5(COP5、Tg:130℃)に代えて、シクロオレフィン樹脂2(COP2、Tg:127℃)を用いた以外は同様にして、積層フィルム8を作製した。
【0185】
〔積層フィルム9の作製〕
上記積層フィルム5の作製において、シクロオレフィン樹脂層Bの形成を行わず、シクロオレフィン樹脂層Aのみの単層構成とした以外は同様にして積層フィルム9(単層構成ではあるが、便宜上積層フィルムと称す)を作製した。
【0186】
〔積層フィルム10の作製〕
上記積層フィルム4の作製において、シクロオレフィン樹脂層Bの形成を行わず、シクロオレフィン樹脂層Aのみの単層構成とした以外は同様にして積層フィルム10(単層構成ではあるが、便宜上積層フィルムと称す)を作製した。
【0187】
〔積層フィルム11の作製〕
上記積層フィルム8の作製において、シクロオレフィン樹脂層Bの形成を行わず、シクロオレフィン樹脂層Aのみの単層構成とした以外は同様にして積層フィルム11(単層構成ではあるが、便宜上積層フィルムと称す)を作製した。
【0188】
以上により作製した積層フィルム1〜11の主要構成要素を、表1に示す。
【0189】
【表1】

【0190】
《積層フィルムの特性値の測定》
〔リタデーション値の測定〕
上記作製した各積層フィルムのリタデーション値を、下記の方法に従って測定した。
【0191】
王子計測機器製のKOBRA21ADHを用いて23℃、55%RH、波長590nmの環境下でリタデーション測定を行った。また、厚み方向のリタデーションを計算する際には、アッベの屈折計を用いて測定した屈折率値を用いた。リタデーションの算出は下記式(1)、式(2)を用いた。
【0192】
式(1)
Ro=(nx−ny)×d
式(2)
Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyは面内で遅相軸に直交する方向の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率、dはフィルムの厚み(nm)を表す。
【0193】
〔各特性評価〕
(斜めスジ耐性の評価)
上記作製した各積層フィルムの製膜方向に対し斜めに発生する膜面ムラの有無を目視観察し、下記の基準に従って、斜めスジ耐性を評価した。
【0194】
◎:斜めスジ故障の発生が全く認められない
○:ほぼ斜めスジ故障の発生が認められない
△:弱い斜めスジ故障の発生が認められる
×:強い斜めスジ故障の発生が認められる
(横段故障耐性の評価)
上記作製した各積層フィルムの製膜方向に対し平行の膜面ムラの有無を目視観察し、下記の基準に従って、横段故障耐性を評価した。
【0195】
◎:横段故障の発生が全く認められない
○:ほぼ横段故障の発生が認められない
△:弱い横段故障の発生が認められる
×:強い横段故障の発生が認められる
(縦スジ耐性の評価)
上記作製した各積層フィルムの製膜方向に対し平行に発生する膜面ムラの有無を目視観察し、下記の基準に従って、縦スジ耐性を評価した。
【0196】
◎:縦スジ故障の発生が全く認められない
○:ほぼ縦スジ故障の発生が認められない
△:弱い縦スジ故障の発生が認められる
×:強い縦スジ故障の発生が認められる
(コーナームラ耐性の評価)
〈偏光板の作製〉
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光子を得た。
【0197】
次いで、下記工程1〜5に従って偏光子と作製した積層フィルム1〜11と、裏面側にはコニカミノルタオプト(株)製コニカミノルタタックKC8UY(以下、8UYとする)を偏光板保護フィルムとして貼り合わせて偏光板を作製した。
【0198】
工程1:8UYを50℃の2モル/Lの水酸化カリウム溶液に30秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して表面を鹸化したセルロースエステルフィルムを得た。
【0199】
工程2:前記偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
【0200】
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを積層フィルム1〜11と、更に裏面側に工程1で処理した8UYの上にのせて配置した。
【0201】
工程4:工程3で積層した積層フィルム1〜11と偏光子と裏面側セルロースエステルフィルムを圧力20〜30N/cm、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
【0202】
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光子と積層フィルム1〜11と裏面側セルロースエステルフィルムとを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、偏光板1〜11を作製した。偏光板のサイズは5cm×5cmである。
【0203】
次いで、VAモード型液晶表示装置(SONY製BRAVIAV1、40インチ型)の予め貼合されていた両面の偏光板を剥がして、上記作製した偏光板1〜11を積層フィルム1〜11側が、液晶セルのガラス面になるように両面に貼合した。
【0204】
その際、予め貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように行い、液晶表示装置を各々作製した。
【0205】
次いで、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタセンシング(株)製)を使用し、白表示した場合、フィルムの四隅の正面輝度を測定することによって、白表示開始時のレベルを◎とし評価した。数字は、四隅正面輝度平均である。なお、測定は、開始から1000時間後に行った。
【0206】
◎:コーナームラの発生なし(1.00〜1.05)
○:裸眼ではコーナームラ認識できない(1.06〜1.10)
△:コーナームラとして見えるが、使用にあたって支障はない(1.11〜1.20)
×:表示品質上問題がある(1.21以上)
以上により得られた各結果を、表2にまとめて示す。
【0207】
【表2】

【0208】
表2に記載の結果より明らかなように、本発明の積層フィルムは、比較例に対し、製膜時の斜めスジ故障、横段故障、縦スジの発生が無く、均一性の高い膜面品質が得られることが分かる。
【符号の説明】
【0209】
1 押出し機
4 ダイス
5 第1冷却ロール
6 タッチロール
7 第2冷却ロール
8 第3冷却ロール
9 剥離ロール
10 積層フィルム
12 延伸装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロオレフィン樹脂層Aとシクロオレフィン樹脂層Bとを、溶融流延製膜法により製膜及び積層して製造した積層フィルムであって、該シクロオレフィン樹脂層Aのガラス転移温度をTg(a)とし、該シクロオレフィン樹脂層Bのガラス転移温度をTg(b)としたとき、ガラス転移温度差ΔTg(Tg(a)−Tg(b))が5℃以上であり、かつ該シクロオレフィン樹脂層A及びシクロオレフィン樹脂層Bのメルトフローレートが、いずれも5g/10分以上、50g/10分以下であることを特徴とする積層フィルム。
【請求項2】
前記シクロオレフィン樹脂層Aの製膜後の膜厚をd(A)とし、前記シクロオレフィン樹脂層Bの製膜後の膜厚をd(B)とした時、膜厚比d(B)/d(A)>1.00であることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記ガラス転移温度差ΔTg(Tg(a)−Tg(b))が、15℃以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記シクロオレフィン樹脂層Aのガラス転移温度Tg(a)が、155℃以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項5】
下式(1)で表される面内リタデーション値Roが10nm以上、350nm以下であり、かつ下式(2)で表される厚み方向リタデーション値Rtが30nm以上、400nm以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の積層フィルム。
式(1)
Ro=(nx−ny)×d
式(2)
Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
〔式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyは面内で遅相軸に直交する方向の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率、dはフィルムの厚み(nm)を表す。〕

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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