説明

積層プレート式ろ過カートリッジ

内側周囲部分で相互にシールされ且つ端部キャップ(22、24)に対してシールした1つまたは積層したろ過ユニット(26)を含み、積層体を包囲するハウジングを不要化するろ過カートリッジ(20)が提供される。全流入フィードが、ろ液としてろ過カートリッジを通過する以前にろ過される流体通路が提供される。ろ過カートリッジには単一の出口(30)を設け得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件出願は2007年10月3日付で提出した米国仮特許出願番号第60/997,402号の優先権を利益を主張するものである。
本発明は、別個の外側ハウジングを持たないろ過カートリッジに関し、詳しくは、ろ過カートリッジからの単一の透過液出口に向かう単一の透過液通路を有するろ過カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
膜フィルタは様々なポリマー材料性のものが知られており、一般的には、体積比での多孔度が約50〜80%である薄い多孔質構造を有する。膜フィルタは比較的脆いため、一般に種々形式の機械的支持体または補強構造と共に使用される。膜フィルタの単位面積当たりの通過流量は孔寸法の関数である。孔寸法が微細な、例えば、約1ミクロン以下である膜フィルタの通過流量を高めるには膜面積を比較的大きくする必要がある。膜面積の大型化は、個々の膜フィルタを大型化する、または、もっと小径化した個々の膜フィルタを多数使用することにより提供されて来ている。製薬用途上重要な、例えば殺菌に使用するそれら膜フィルタ及びその支持装置は、小粒子または小有機物を通過させ得る漏れまたは欠陥を有すべきではない。
【0003】
かくして、平行流れ用の小型膜フィルタの多くは手作業で組み立てられ、支持用プレートや関連装置を取り付けた上でテストを実施し、必要に応じて、相当のコストと不便性を伴いつつ、しばしばユーザー側で殺菌が実施される。手作業で組み立てた膜フィルタアセンブリは、テストに不合格になると作り直す必要がある。より大型且つ複雑な膜システムの場合、各機械的パーツは、一般に、膜フィルタを交換するのみで洗浄及び再利用される。使い捨て性プラスチック製の従来の膜フィルタアセンブリの1つもまた、比較的少ない可動パーツで機械的に固定される。
【0004】
膜面積の広い個別の膜フィルタは、平坦または円筒状態下に支持され、または、小型ハウジングに納めるようプリーツ加工される。平坦膜用のホルダは所定膜面積に対しては大きく、使い捨て性が無く、膜フィルタ交換毎に分解、洗浄、再組み立て、テストも必要となる。脆い膜フィルタをプリーツ加工すると、折り目部分に応力が集中して使用時に膜フィルタが撓むため、膜フィルタの上流及び下流の各側の一方または両方に流れスクリーンを介挿させる必要があると共に、その各端部やオーバーラップするシーム部分をポッティング及びまたは接着剤でシールする必要がある。折り目、シーム部、または各端部が損傷する恐れがあり得ることから、プリーツ加工型カートリッジでは平坦な最終フィルタを別に設け、重要用途、例えば、製薬及び経静脈補液の殺菌の確実性を高めている。更には、プリーツ加工型カートリッジは、その構造上数多くの異なる材料を使用するため、保持液中に抽出される物質源が増大する。
【0005】
現在、矩形の膜支持プレートを構成するろ過カートリッジには複数の透過液出口が設けられる。当該構成は、透過液を回収するための複数の連結装置及び導管を必要とすることから望ましくない。
米国特許第4,501,663号には、積層した複数のろ過モジュールで構成され、外側ハウジングを別個に備えるろ過カートリッジが開示される。このろ過カートリッジは、ホールドアップ体積が大きく、従ってサンプル損失を生じ得ることから望ましくない。
米国特許出願番号第60/925,774号には、フィード入口と、透過液出口とを中央部分に有するろ過カートリッジが開示される。当該ろ過カートリッジでは、流入する流体フィードをろ過カートリッジの中央部分からその周囲部分に送るための流体逸らせプレートが必要とされる。流体逸らせプレートは、ろ過カートリッジへの非作動要素の追加になることから望ましくない。
【0006】
現在、ろ過カートリッジの完全性テストでは、バイナリガスを使用してろ過カートリッジ内の膜フィルタの欠陥の有無を判定する。当該テストは、バイナリガスが、法線方向流ろ過(NFF)モード(デッドエンドろ過)ではなくむしろ、接線方向流ろ過(TFF)モード下に流動する場合に高精度化される。完全性テストは、ここに引用することにより本明細書の一部とする米国特許出願番号第11/545,738号に記載される。従って、NFFろ過モード状態下にろ過カートリッジの完全性テストを実施するためには、ろ過カートリッジはTFF及びNFFの両モード下に動作可能であるべきである。
【0007】
従って、フィード入口及び透過液出口が共に1つの、簡易構造のろ過カートリッジを提供することが望ましい。また、TFF及びNFFの両モード下に作動し得る如きろ過カートリッジを提供することが望ましい。更には、非作動要素が最小であるろ過カートリッジを提供することが、コスト削減上望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,501,663号
【特許文献2】米国特許出願番号第60/925,774号
【特許文献3】米国特許出願番号第11/545,738号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
フィード入口及び透過液出口が共に1つの、簡易構造のろ過カートリッジを提供することであり、また、TFF及びNFFの両モード下に作動し得る如きろ過カートリッジを提供することであり、更には、非作動要素が最小である、コスト削減上望ましいろ過カートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、ろ過カートリッジの入口から、少なくとも1つの膜を通過して、ろ過カートリッジの出口に至る流体流れを保証する、1つまたは、相互に積層状態で接着した複数のろ過ユニットから構成されるろ過カートリッジが提供される。ろ過カートリッジはTFF及びNFFの両モード下に動作可能である。ろ過は、デッドエンド式の、法線方向流ろ過(NFF)モードで実施される。各ろ過ユニットは2枚の膜支持プレートを含み、各膜支持プレートはその外側周囲部分が相互にシールされた積層ろ過ユニットを構成する。各膜支持プレートは第1表面及び第2表面を有する。単一の膜または複数の膜の如きろ過膜が、各膜支持プレートの第1及び第2の各表面の各々に接着される。ろ過カートリッジには端部キャップと、流体入口と、透過液出口と、通気口として機能する第2出口とが設けられる。端部キャップはカートリッジをシールし、また、フィード入口からの流れを、各膜を通過させて出口から排出させるよう配行する。
透過液はろ過カートリッジ内の単一の流路を通過し、かくして、ろ過カートリッジには透過液用の単一の出口を設け得る。
【発明の効果】
【0011】
フィード入口及び透過液出口が共に1つの、簡易構造のろ過カートリッジが提供され、また、TFF及びNFFの両モード下に作動し得る如きろ過カートリッジが提供され、更には、非作動要素が最小の、コスト削減上望ましいろ過カートリッジが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明のろ過カートリッジの斜視図である。
【図2】図2は、本発明の膜支持プレートの第1表面側から見た分解斜視図である。
【図3】図3は、図2の膜支持プレートの、図2の上下を反転した状態で示す、底面側からの分解斜視図である。
【図4】図4は、1つのろ過ユニットを図2の線4−4に沿った断面で示す、本発明のろ過カートリッジの断面図である。
【図5】図5は、2つのろ過ユニットを図2の線4−4に沿った断面で示す本発明のろ過カートリッジの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照するに、フィルタ面積が、例えば0.015平米である内蔵型のろ過カートリッジ20が示される。ろ過カートリッジ20は、頂端部キャップ22と、底端部キャップ24と、複数のろ過ユニット26と、を含み、底端部キャップ24にはフィード用の入口28と、透過液用の出口30とが設けられる。頂端部キャップ22にはガス通気用の通気口27が設けられる。頂端部キャップ22及び底端部キャップ24及びろ過ユニット26は、同じプラスチック材料製であり且つそれらの外側周囲部分に熱または溶剤等で選択的に相互溶接することが好ましい。入口28、出口30、通気口27は、夫々がチューブその他の導管に連結するようになっている。
【0014】
任意の好適形式の通気口27は、頂端部キャップ22を貫いて伸延し、かくして始動時にろ過カートリッジからの排気を可能とさせ、また、TFFモード下にろ過カートリッジ20を動作させる場合の膜の欠陥テスト用のガス通気を可能とする。膜の欠陥テスト用のガス通気は、例えば、開放させるとガスを排気する弁を手動で開き、次いで当該弁を閉じることが含まれ得る。
使用に際し、被ろ液を入口28を通してろ過ユニット26の積層体に送り、以下に説明する如く積層した各ろ過ユニット26内部の各ろ過膜に通し、ろ過膜を通した透過液を出口30から排出させる。
【0015】
図2及び図3を参照するに、膜支持プレート32が示され、上面34(図2)と、底面36(図3)とを有している。上面34は、2つの膜38a及び38bから形成した大型の膜38を収受するための、比較的大きな内径(LID:大内径)を有する。膜38a及び38bは2つの膜40a及び40bから構成する膜40よりも大きい。小型の膜40を収受する底面36の内径は比較的小さい(SID:小内径)。図2及び図3に示すろ過プレート42は膜支持プレート32と、2つの膜38及び40とを含み、これらの膜支持プレート32と、2つの膜38及び40とは、膜シール部位44及び46位置で膜支持プレート32の全周囲部分に対してシールされる。流体をろ過し得るろ過ユニット26は、2つのろ過プレート42を各SID位置の表面で相互に連結(シール)して形成する。積層したろ過ユニット26は、各ろ過ユニット26を各LID位置の表面で相互に連結(シール)して形成する。このように各SID位置及び各LID位置で各表面をシールすることにより、流体を流通させ得る積層ろ過ユニット26(図1)が形成され、かくして、当該積層ろ過ユニット26から形成したろ過カートリッジ20(図1)の出口30から排出される以前に、全入力流体フィードが膜38または40を通過することが保証される。
【0016】
図2及び図3に示すろ過プレート42は、フィード入口孔48と、透過液出口孔50と、通気孔56とを含む。使用に際し、ろ過カートリッジ20へのフィードは入口28(図1)から流入し、フィード入口孔48を矢印29で表す如く通過する。SID側(図3)では流体フィードは膜40を通過して透過液を生成し、当該透過液は溝60を矢印58で表す如く移動する。透過液はポスト68、68間に位置決めした空間68aを通過した後、透過液出口孔50から矢印35で表す如く排出され、出口30(図1)に向かう。LID側(図2)では流体フィードは膜38を通過して透過液を生成し、当該透過液は溝71を矢印69aで表す如き方向に移動する。透過液は矢印35で表す如く透過液出口孔50から排出される。
【0017】
図4を参照するに、端部キャップ65及び67に対してシールしたろ過ユニット26が示される。ろ過ユニット26は、図2及び図3に示す2枚のろ過プレート42を含み、図2の線4−4に沿って切断した断面図として示される。膜支持プレート32はプレートのシール64及び70の位置で相互にシールされる。膜38は膜シール領域72位置で膜支持プレート32に対してシールされる。膜40は膜シール領域74位置で膜支持プレート32に対してシールされる。膜支持プレート32には、内側孔列76及び外側孔列78が設けられる。図4に矢印で示すように、全流入フィード流体80は透過液82として回収される以前に膜38または40を必ず通過する。ろ過ユニット26は外側プレートシール64位置でその外側周囲部分がシールされ、SID側のプレートシール70(図3)位置でその内側周囲部分がシールされ、またLID側(図2)の外側プレートシール66a及び内側プレートシール71の各位置でシールされる。各シール70、64、71、66aは、透過液出口孔50への流路を提供するべく、透過液出口孔50(図2及び3)を包囲する表面から隆起される。ろ過ユニット26は外側プレートシール66a位置で端部キャップ65に対してシールされ、外側周囲シール69位置で端部キャップ67に対してシールされる。フィードをろ過ユニット26に導入するための入口(図示せず)が設けられる。通気口27及び出口30が、図1に示す態様で設けられる。シール64、66a及び69は、所望の流体流れを生じさせるための追加的な外側ハウジングを不要化させる。
【0018】
図5を参照するに、相互にシールした2つのろ過ユニット26が示される。図5では、図4と同じ要素には同じ参照番号が付記される。図5では、複数のろ過ユニット26を積層し且つ相互にシールすることにより、追加的な外側ハウジングを持たない、ろ過カートリッジ20(図1)が形成されている。
使用に際し、膜38及び40の完全性が、TFFモード下に通気口27を開放した状態でバイナリガスの如きガスを用いてテストされる。この完全性テストは、ここに引用することにより本明細書の一部とする米国特許出願番号第11/545,738号に記載される。本発明の装置に関して使用する完全性テストは、小型ウィルス除去に関連して企画されたものである。2つのガスの初期成分にはCO290%、ヘキサフルオロエタン10%が含まれる。当該ガス混合物が装置のフィードポートに導入された。当該ガス混合物は、越膜圧力を約344880Pa(50psi)に維持しつつ、膜上流側を横断して掃流させ、通気ポートから抜き出した。前記掃流は、2つのガスが上流側で一定濃度を維持するために必要である。ガスの成分が下流側で測定された。ヘキサフルオロエタン値が高いのは膜がウィルスを保持していないことの表われである。
【0019】
次いで通気口27を先ず開放させて流体フィードを入口28から導入し、生成した透過液をろ過カートリッジ20内のガスに置換させた。次いで通気口27が閉鎖すると、通気孔56(図2及び3)が未ろ過流体フィードで満たされた。過剰の未ろ過流体フィードはろ過実行時間に渡り出口30を通して除去された。ろ過実行後、未ろ過流体フィードは通気口27及び出口30を通してろ過カートリッジ20から排出可能とされた。
【符号の説明】
【0020】
20 ろ過カートリッジ
22 頂端部キャップ
24 底端部キャップ
26 ろ過ユニット
27 通気口
28 入口
30 出口
32 膜支持プレート
34 上面
36 底面
38、38a 膜
40、40a 膜
42 ろ過プレート
44 膜シール部位
48 フィード入口孔
50 透過液出口孔
56 通気孔
58 矢印
60 溝
64 シール
65 端部キャップ
66a 外側プレートシール
67 端部キャップ
68 ポスト
68a 空間
70 プレートシール
71 内側プレートシール
76 内側孔列
78 外側孔列
80 全流入フィード流体
82 透過液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体入口及び流体出口を有するろ過カートリッジであって、
各々が2つの膜支持プレートを含み、各膜支持プレートが、該膜支持プレートの底面及び上面に接着した少なくとも1つのろ過膜を含み、各膜支持プレートが外側周囲表面位置で相互に接着されることにより、膜の少なくとも一方を通過することによる以外の、流体フィードの流体出口への流入を防止するシールを形成する少なくとも1つのろ過ユニットと、
頂端部キャップと、
底端部キャップと、
頂端部キャップ及び底端部キャップの一方における通気口と、
流体入口から膜を通過し、流体出口に至る流体流路にして、流体入口からの流体フィードの膜バイパスを防止し、且つ、透過液流れを流体出口に流動させるための孔列を含む単一の透過液通路を提供する流体流路と、
を含むろ過カートリッジ。
【請求項2】
複数のろ過ユニットを有する請求項1のろ過カートリッジ。
【請求項3】
膜支持プレートが、各膜支持プレートの上面及び底面から流体出口への透過液流れを許容する流体通路を含む請求項1のろ過カートリッジ。
【請求項4】
膜支持プレートの底面に接着した複数のろ過膜と、膜支持プレートの上面に接着した複数のろ過膜と、を有する請求項1のろ過カートリッジ。
【請求項5】
膜支持プレートの底面に接着した1つのろ過膜と、膜支持プレートの上面に接着した1つのろ過膜と、を含む請求項1のろ過カートリッジ。
【請求項6】
膜支持プレートの底面に接着した1つのろ過膜と、膜支持プレートの上面に接着した1つのろ過膜と、を含む請求項1のろ過カートリッジ。
【請求項7】
頂端部キャップ及び底端部キャップが、開放した通気口を含む請求項1のろ過カートリッジ。
【請求項8】
流体入口及び流体出口を有するろ過カートリッジであって、
膜支持プレートにして、その底面及び上面に接着したろ過膜を有し、膜支持プレートの内側周囲表面位置及び外側周囲表面位置で第1分離プレート及び逸らせプレートに接着されることにより、膜の少なくとも一つを通過することによる以外は流体フィードを流体出口に流入させないシールを形成する膜支持プレートを含むろ過ユニットと、
流体入口を有する頂端部キャップと、
流体出口を有する底端部キャップと、
頂端部キャップに接着した第2分離プレートにして、第1分離プレートが底端部キャップ及びろ過ユニットに接着され、逸らせプレートがろ過ユニット及び第2分離プレートに接着される第2分離プレートと、
膜を通過し、流体出口を通過する流体入口を形成する流体流路にして、流体入口からの流体フィードの膜バイパスを防止する流体流路と、
を含むろ過カートリッジ。
【請求項9】
流体流路内部に、間隔を置いた複数のプロングを更に含む請求項8のろ過カートリッジ。
【請求項10】
逸らせプレートが、間隔を置いた複数のプロングを含む請求項8のろ過カートリッジ。
【請求項11】
膜支持プレートが、各膜支持プレートの上面及び底面から流体出口への保持液流れを許容する流体通路を含む請求項8のろ過カートリッジ。
【請求項12】
頂端部キャップ及び底端部キャップの各々が、開放した通気口を含む請求項8のろ過カートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−540240(P2010−540240A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527937(P2010−527937)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/010764
【国際公開番号】WO2009/045269
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(390019585)ミリポア・コーポレイション (212)
【氏名又は名称原語表記】MILLIPORE CORPORATION
【Fターム(参考)】