説明

積層体の製造方法

【課題】反射防止性能に優れる反射防止膜積層体を安価で製造する方法として有効に適用することができる、基材と無機微粒子層とを有する積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】基材上に無機微粒子からなる膜が積層された積層体の製造方法であって、以下の工程(1)〜(3)を含む積層体の製造方法。
工程(1):液体媒体と該液体媒体中に分散した無機微粒子とを含有する分散液(A)に凝集剤を添加し、前記分散液(A)に含まれていた無機微粒子の少なくとも一部が凝集した凝集液(B)を得る工程
工程(2):前記凝集液(B)を、基材上に塗布する工程、および
工程(3):塗布した凝集液(B)から液体媒体を除去することにより、前記基材上に前記無機微粒子からなる膜を形成する工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材と無機微粒子層とを有する積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LCD、PDP、CRT、有機EL、無機EL、FEDのような各種ディスプレイにおいては、太陽光や蛍光灯といった外部光が表面で反射することにより、映り込みやギラツキが発生し、視認性が低下することが問題となっている。
【0003】
上記問題はディスプレイ表面での屈折率の急激な変化が原因であり、これを緩和するために、ディスプレイ表面を構成する材料よりも低い屈折率をもつ材料からなる反射防止膜をディスプレイ表面に形成する技術が知られている。ディスプレイ表面を構成する材料、すなわち基材の屈折率をn2、該基材上に形成された反射防止膜の屈折率をn1とするとき、n1=(n2)0.5の関係を満たすとき反射率が0であることが、理論的に知られている。基材がアクリル樹脂の場合にはn2=1.5程度なので、n1=1.2前後の材料からなる反射防止膜が望ましい。しかしながら、低屈折率膜の材料として知られるフッ化マグネシウムでも屈折率は1.38程度であるので、このような材料を用いて反射防止膜を形成したとしても、十分な反射防止効果は得られていない。
【0004】
より反射防止効果に優れる反射防止膜として、内部に空洞がある中空微粒子を用いた反射防止膜が知られている。粒子内部を空洞化することで、粒子としての屈折率が低下し、結果として低屈折率膜を形成することができ、高い反射防止効果が得られる(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−201443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら前記のような中空微粒子を用いると、コストが高くなる。
【0007】
本発明は、反射防止性能に優れる反射防止膜積層体を安価で製造する方法として有効に適用することができる、基材と無機微粒子層とを有する積層体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基材上に無機微粒子からなる膜が積層された積層体の製造方法であって、以下の工程(1)〜(3)を含む積層体の製造方法である。
工程(1):液体媒体と該液体媒体中に分散した無機微粒子とを含有する分散液(A)に凝集剤を添加し、前記分散液(A)に含まれていた無機微粒子の少なくとも一部が凝集した凝集液(B)を得る工程
工程(2):前記凝集液(B)を、基材上に塗布する工程、および
工程(3):塗布した凝集液(B)から液体媒体を除去することにより、前記基材上に前記無機微粒子からなる膜を形成する工程
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法を利用すれば、反射防止性能に優れる積層体を安価で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明における反射防止膜とは、LCD、PDP、CRT、有機EL、無機EL、FEDのような各種ディスプレイの表面もしくは内部に配され、ディスプレイ表面での外部光に起因する映り込みの防止や、ディスプレイ内部の発光体または発光層から発生した光がディスプレイ内部で反射した結果、光線透過率が低下してディスプレイの輝度が低下することの防止を目的とするものである。
【0011】
本発明の1つの態様は、基材上に無機微粒子からなる膜が積層されてなる積層体の製造方法である。本発明において、基材としては、透明な基材が好ましく用いられ、製品の用途に応じて適度な機械的剛性を有する透明プラスチックフィルムまたはシート、および透明ガラスから適宜選択して用いることができる。プラスチックフィルムまたはシートの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリメタクリル酸メチル等のフィルムまたはシートを挙げることができる。透明性に優れ光学的に異方性がないことから、トリアセチルセルロースやポリエチレンテレフタレートからなるフィルムまたはシートが好ましい。
【0012】
本発明の方法では、基材上に無機微粒子からなる膜が積層された積層体を製造するが、無機微粒子からなる膜を形成するために、液体媒体と該液体媒体中に分散した無機微粒子とを含有する分散液(A)を用いる。無機微粒子としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸バリウム等の微粒子が挙げられる。
本発明の方法では、該分散液(A)に凝集剤を添加して、該分散液(A)に含まれていた無機微粒子の少なくとも一部を凝集させて得られた凝集液(B)を基材表面に塗布するが、該凝集液(B)を基材上に塗工する際の凝集系の安定性を確保するため、用いる分散液(A)は、帯電し、無機微粒子が電荷によって液体媒体中で安定的に分散したコロイドであることが好ましい。該コロイドは親水コロイドであっても疎水コロイドであってもよい。液体媒体が水である場合には、分散液(A)は親水コロイドであることが好ましく、粒径分布が小さいことから特にコロイダルシリカが好ましい。
【0013】
分散液(A)の液体媒体には、水や揮発性の有機溶剤を用いることができる。分散液(A)において無機微粒子をコロイド状に分散させる場合には、pH調整を行うことや電解質、分散剤を添加することができる。また、無機微粒子を均一に分散させるために、スターラーによる攪拌、超音波分散、超高圧分散(超高圧ホモジナイザー)等の手法を適用してもよい。分散液(A)中の無機微粒子の濃度は特に限定されないが、分散液(A)の基材への塗工性の観点から1〜20重量%であることが望ましい。
【0014】
分散液(A)は、該分散液をレーザー回折散乱法により測定して得られる横軸粒子径、縦軸頻度の粒径分布図において、最高ピークRaによって示される粒径が0.01〜1μmの範囲内に存在し、該分散液をレーザー回折散乱法により測定して得られる累積粒度分布図において、D90以下の粒径を有する粒子の累積個数が全粒子数の90%となるところの粒径D90が1μm以下であることが好ましい。最高ピークRaとは、前記粒径分布図において最も高さの高いピークである。分散液(A)の最高ピークRaによって示される粒径は、0.05〜0.5μmの範囲にあることが、形成される塗膜の均一性の観点からより好ましい。
【0015】
本発明の工程(1)は、前記した分散液(A)に凝集剤を添加し、前記分散液(A)中の無機微粒子の少なくとも一部が凝集した凝集液(B)を得る工程である。
【0016】
前記凝集剤とは、液体媒体中に分散している無機微粒子を凝集させる効果を有する物質である。分散液(A)がコロイド状態にある場合には、無機微粒子は電解質の添加により凝集する。電解質としては、クエン酸塩、酒石酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物、臭化物、硝酸塩、ヨウ化物、チオシアン酸塩、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。また、無機微粒子を凝集させる作用をもつポリビニルアルコール、メチルセルロール等の非イオン性高分子やアクリル酸、アクリルアミド、アクリル酸ナトリウム、ジメチルアミノエチルメタアクリレート等のモノマーの重合体からなる高分子凝集剤を用いてもよい。また、酸や塩基を添加してpHを調整することにより分散液中の無機微粒子を凝集させることができる場合には、このような酸や塩基も凝集剤に該当する。
分散液(A)が親水コロイドである場合には、凝集剤として脱水剤または脱水剤と電解質の併用組み合わせの使用により無機微粒子を凝集させることができる。ここで脱水剤とは親水コロイド中の無機微粒子の表面から水和水を除去する効果を有するものであり、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類が好適である。
【0017】
本発明の工程(1)で得られる凝集液(B)は、分散液(A)に凝集剤を添加することによって得られるものであり、該凝集液(B)は、該凝集剤をレーザー回折散乱法により測定して得られる横軸粒子径、縦軸頻度の粒径分布図において、前記最高ピークRaの示す粒径の20倍以上の粒径を示すピークRbが存在することが好ましい。このような凝集液(B)を用いることによって、反射防止性能により優れる反射防止膜を形成することができる。凝集液(B)は、その粒径分布図において最高ピークRaが示す粒径の50倍以上、更に好ましくは100倍以上の粒径を示すピークRbが存在する凝集液であることが好ましい。
【0018】
本発明の工程(2)は、前記凝集液(B)を、基材上に塗布する工程であり、工程(3)は、塗布した凝集液(B)から液体媒体を除去することにより、前記基材上に前記無機微粒子からなる膜を形成する工程である。凝集液(B)は、基材の片面に塗布してもよいし、両面に塗布してもよい。基材への凝集液(B)の塗布には、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター等の塗布装置を使用することができる。基材の凝集液(B)を塗布する面には、予め、コロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、フレーム処理、電子線処理、アンカーコート処理、洗浄処理などの前処理を施すことが好ましい。また、基材として、紫外線硬化性樹脂等からなるハードコート層や導電性微粒子等を含有する帯電防止層を表面層として有する基材を使用し、このような表面層の上に凝集液(B)を塗布してもよい。工程(3)では、基材に塗布した凝集液(B)から液体媒体を除去するが、通常、この液体媒体を揮発させることによりこれを除去する。このときの温度(乾燥温度)は通常、室温〜200℃である。基材両面に凝集液(B)を塗布して基材の両面に無機微粒子からなる膜を形成する場合には、基材の一方の面に膜を形成した後、他方の面に更に膜を形成してもよく、両面同時に形成してもよい。
【0019】
発明者らの推定によれば、このような方法により基材上に形成された無機微粒子の膜では、無機微粒子同士が接触していることにより、空隙が形成されている。この空隙は、空気の屈折率(屈折率1.0)と実質的に同じ屈折率を示すので、このような空隙を有する膜は、屈折率が低い。
【0020】
本発明の方法では、基材上に形成する無機微粒子の膜の厚さを50〜150nmの範囲内にすることが好ましく、80〜130nmの範囲内にすることがより好ましい。特に、製造した積層体をディスプレイ・デバイスの反射防止部材として使用する場合において、該無機微粒子の膜でディスプレイの最表層を構成し、外部光の反射を防止する場合においては、反射光の干渉の効果を考慮すると、無機微粒子の膜の厚さは、前記範囲内にあることが好ましい。無機微粒子の膜の厚さは、粒子凝集液(B)の濃度や塗工方法を選択することにより、制御することができる。なお、無機微粒子の膜の膜厚とは、該膜の厚み方向断面において10点以上厚みを測定した測定値の平均値である。
【0021】
本発明の一態様としては、分散液(A)に含まれる無機微粒子が、平均粒径Daが1〜300nmの無機微粒子(C)であることが好ましい。このような無機微粒子(C)が分散した分散液を用いることにより、均一性に優れる無機微粒子膜を形成することができる。なお、無機微粒子(C)の平均粒径とは、BET法またはレーザー回折散乱法により測定される値である。
【0022】
本発明の他の態様としては、分散液(A)に含まれる無機微粒子が、55〜90重量%の、平均粒径が30〜300nmの範囲内にある無機微粒子(C)と、10〜45重量%の、平均粒径が1〜20nmの範囲内にある無機微粒子(D)との混合物(ただし、無機微粒子(A)と無機微粒子(B)の合計量を100重量%とする)であることが好ましい。
このような分散液(A)を用いることにより、強度に優れる膜を形成させることができる。なお、無機微粒子(D)の平均粒径とは、シアーズ法または動的光散乱法により測定される値である。
【0023】
分散液(A)として、前記無機微粒子(C)、または無機微粒子(C)および無機微粒子(D)の混合物の分散液を用いる場合には、該分散液(A)に凝集剤を添加して得られる凝集液(B)は、該凝集液をレーザー回折散乱法により測定して得られる横軸粒子径、縦軸頻度の粒径分布図において、最高ピークRaの示す粒径の20倍以上の粒径を示す凝集粒子の体積の合計が、凝集液(B)中の無機微粒子の合計体積の1%以上であることが望ましい。このような凝集液を用いることにより、反射防止性能により優れる反射防止膜を形成することができる。
【0024】
本発明のさらに他の態様としては、分散液(A)に含まれる無機微粒子が鎖状無機微粒子(E)であることが好ましい。鎖状無機微粒子とは、球状粒子が通常3個以上鎖状に連なった無機微粒子である。このような鎖状無機微粒子(E)が分散されてなる分散液(A)を用いることにより、反射防止性能により優れる反射防止膜を形成することが可能となる。
【0025】
本発明の他の態様としては、分散液(A)に含まれる無機微粒子が、55〜90重量%の鎖状無機微粒子(E)と、10〜45重量%の、平均粒径が1〜20nmの範囲内にある無機微粒子(F)との混合物(ただし、無機微粒子(E)と無機微粒子(F)の合計量を100重量%とする)であることが好ましい。(ただし、無機微粒子(E)と無機微粒子(F)の合計量を100重量%とする) このような分散液(A)を用いることにより、強度に優れる膜を形成させることができる。このような分散液(A)を用いて形成される反射防止膜は、無機微粒子(F)が鎖状無機微粒子(E)の表面および間隙に存在し、無機微粒子(E)をつなぎ止める役割を果たすので、強度に優れる膜になると考えられる。なお、無機微粒子(F)の平均粒径とは、シアーズ法または動的光散乱法により測定される値である。
【0026】
分散液(A)として、前記鎖状無機微粒子(E)、または鎖状無機微粒子(E)および無機微粒子(F)の混合物を含有する分散液を用いる場合には、該分散液(A)に凝集剤を添加して得られる凝集液(B)は、レーザー回折散乱法により測定して得られる横軸粒子径、縦軸頻度の粒径分布図において、前記最高ピークRaの示す粒径の20倍以上の粒径を有する凝集粒子の体積の合計が、凝集液(B)中の無機微粒子の合計体積の5%以上であることが望ましい。このような凝集液を用いることにより、反射防止性能により優れる反射防止膜を形成することができる。
鎖状無機微粒子(E)を含む分散液(A)に凝集剤を添加して形成される凝集粒子では、該鎖状無機微粒子(E)を形成する球状粒子同士が鎖により連なっているため密に充填されにくく、適度な空隙を有する反射防止膜を形成しやすいものと考えられる。
【0027】
本発明で用いる分散液(A)には、反射防止効果を損なわない程度に樹脂バインダーを添加してもよい。また、基材上に無機微粒子膜を形成した後、該膜上に樹脂バインダーを積層したり、あるいは膜内に樹脂バインダーを含浸したりしてもよい。また、本発明の方法により基材上に形成される無機微粒子膜上には、フッ素系化合物からなる防汚層を更に形成してもよい。
【0028】
本発明により得られる積層体は、基材を適宜選択することにより、偏光板、拡散板、導光板、輝度向上フィルム、反射偏光板等の光学用部材として使用可能である。また、前記した各種光学用部材の表面に、反射防止膜を形成したプラスチックフィルムまたはシートやガラスを貼り合わせてもよい。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。基材には富士写真フィルム製トリアセチルセルロースフィルムを用いた。該フィルム表面の反射率は4.0%、透過率は93.0%であった。なお、実施例の評価は以下の方法により行なった。
(1)粒度分布:
粒度分布は、堀場製作所製レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910を用いて、フローセル方式により測定した。測定に際しては、液体媒体中のイソプロピルアルコール濃度を分散液(B)のイソプロピルアルコール濃度に等しくした。
(2)反射率:
島津製作所製分光光度計UV−3150を用いて入射角5°の相対正反射強度を測定した。測定に際してはフィルム裏面に黒色テープを貼った。
(3)透過率:
島津製作所製分光光度計UV−3150を用いて、全光線透過率を測定した。
【0030】
[実施例1]
無機微粒子(C)として日産化学社製コロイダルシリカST−XL(BET法により測定された平均粒径40〜60nm、固形分濃度:40重量%;液体媒体:水)25.00g、無機微粒子(D)として日産化学社製コロイダルシリカST−XS(平均粒径4〜6nm、固形分濃度:20重量%;液体媒体:水)12.50g、純水を100.00g、を混合し、分散液(A)を得た。該分散液(A)に、凝集剤としてイソプロピルアルコール112.50gを添加して混合し、凝集液(B)を得た。該凝集液(B)の組成は、無機微粒子12.5g、水125g、イソプロピルアルコール112.5gであり、無機微粒子(C)と無機微粒子(D)の合計重量に対する無機微粒子(C)の重量の比率は80%、無機微粒子(D)の重量の比率は20%である。また、分散液(A)を純水で希釈したサンプル(A’)について、レーザー回折散乱法により平均粒径を測定したところ、最高ピークRaは0.08μm、D90は0.10μmであった。凝集液(B)を、水:イソプロピルアルコール=125:112.5(重量比)の混合溶媒で希釈したサンプル(B’)について、レーザー回折散乱法により平均粒径を測定したところ、86μm付近にピークトップを示す、ピークRbが見られた。該サンプル(B’)において、Raの100倍以上の粒径を示す凝集粒子の体積は85.2%であった。
この凝集液(B)をバーコーターを用いてトリアセチルセルロースフィルム上に塗布し、60℃で乾燥して反射防止膜を形成した。得られた反射防止膜の可視光領域での最小反射率は0.5%、最大透過率は96.0%であり、反射防止性能に優れるものであった。なお、反射率測定結果から推測される反射防止膜の膜厚は110nmであった。
【0031】
[実施例2]
鎖状無機微粒子(E)として日産化学社製鎖状コロイダルシリカPS−M(動的光散乱法により測定された平均粒径111nm、固形分濃度:20重量%;液体媒体:水)62.50gと日産化学社製鎖状コロイダルシリカPS−S(動的光散乱法により測定された平均粒径106nm、固形分濃度:20重量%;液体媒体:水)6.25g、無機微粒子(F)として日産化学社製コロイダルシリカST−XS(平均粒径4〜6nm、固形分濃度20重量%;液体媒体:水)25.00g、純水 81.25g、を混合し、分散液(A)を得た。該分散液(A)に、凝集剤としてイソプロピルアルコール75.00gを添加して混合し、凝集液(B)を得た。該凝集液(B)の組成は、無機微粒子18.75g、水156.25g、イソプロピルアルコール75gであり、鎖状無機微粒子(E)と無機微粒子(F)の合計重量に対する鎖状無機微粒子(E)の重量の比率は73%、無機微粒子(F)の重量の比率は27%である。また、分散液(A)を純水で希釈したサンプル(A’)について、レーザー回折散乱法により平均粒径を測定したところ、最高ピークRaは0.12μm、D90は0.15μmであった。凝集液(B)を、水:イソプロピルアルコール=156.25:75(重量比)の混合溶媒で希釈したサンプル(B’)について、レーザー回折散乱法により平均粒径を測定したところ、77μm付近にピークトップを示す、ピークRbが見られた。該サンプル(B’)において、Raの100倍以上の粒径を示す凝集粒子の体積は90.1%であった。
この凝集液(B)をバーコーターを用いてトリアセチルセルロースフィルム上に塗布し、60℃で乾燥して反射防止膜を形成した。得られた反射防止膜の可視光領域での最小反射率は0.1%、最大透過率は95.8%であり、反射防止性能に優れるものであった。なお、反射率測定結果から推測される反射防止膜の膜厚は120nmであった。
【0032】
[比較例1]
無機微粒子(C)としてコロイダルシリカST−XLを25.00g、無機微粒子(D)としてコロイダルシリカST−XSを12.50g、純水212.50gを混合して、固形分含有率が実施例1の凝集液(B)の固形分含有率と同じである分散液(A)を得た。無機微粒子(C)と無機微粒子(D)の合計重量に対する無機微粒子(C)の重量の比率は80%、無機微粒子(D)の重量の比率は20%である。この分散液(A)をバーコーターを用いてトリアセチルセルロースフィルム上に塗布し、60℃で乾燥して反射防止膜を形成した。得られた反射防止膜の可視光領域での最小反射率は1.6%、最大透過率は93.7%であり、反射防止性能に劣った。なお、反射率測定結果から推測される反射防止膜の膜厚は110nmであった。
【0033】
[比較例2]
鎖状無機微粒子(E)として鎖状コロイダルシリカPS−Mを62.50g、同じく鎖状無機微粒子(E)として鎖状コロイダルシリカPS−Sを6.25g、無機微粒子(F)としてコロイダルシリカST−XSを25.00g、純水を156.25g混合して、固形分含有率が実施例2の凝集液(B)の固形分含有率と同じである分散液(A)を得た。鎖状無機微粒子(E)と無機微粒子(F)の合計重量に対する鎖状無機微粒子(E)の重量の比率は73%、無機微粒子(F)の重量の比率は27%である。この分散液(A)をバーコーターを用いてトリアセチルセルロースフィルム上に塗布し、60℃で乾燥して反射防止膜を形成した。得られた反射防止膜の可視光領域での最小反射率は0.8%、最大透過率は94.6%であり、反射防止性能に劣った。なお、反射率測定結果から推測される反射防止膜の膜厚は70nmであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に無機微粒子からなる膜が積層された積層体の製造方法であって、以下の工程(1)〜(3)を含む積層体の製造方法。
工程(1):液体媒体と該液体媒体中に分散した無機微粒子とを含有する分散液(A)に凝集剤を添加し、前記分散液(A)に含まれていた無機微粒子の少なくとも一部が凝集した凝集液(B)を得る工程
工程(2):前記凝集液(B)を、基材上に塗布する工程、および
工程(3):塗布した凝集液(B)から液体媒体を除去することにより、前記基材上に前記無機微粒子からなる膜を形成する工程
【請求項2】
前記分散液(A)が以下の要件(A1)を満たし、かつ凝集液(B)が以下の要件(B1)を満たす請求項1に記載の方法。
要件(A1):分散液(A)をレーザー回折散乱法により測定して得られる粒径分布図において、最高ピークRaによって示される粒径が0.01〜1μmの範囲内に存在し、かつ、該分散液をレーザー回折散乱法により測定して得られる累積粒度分布図において、D90以下の粒径を有する粒子の累積個数が全粒子数の90%となるところの粒径D90が1μm以下である
要件(B1):凝集液(B)をレーザー回折散乱法により測定して得られる粒径分布図において、前記最高ピークRaの示す粒径の20倍以上の粒径を示すピークRbが存在する
【請求項3】
前記分散液(A)に含まれる無機微粒子の平均粒径Daが1〜300nmの範囲内にある請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記分散液(A)に含まれる無機微粒子が、55〜90重量%の、平均粒径が30〜300nmの範囲内にある無機微粒子(C)と、10〜45重量%の、平均粒径が1〜20nmの範囲内にある無機微粒子(D)との混合物(ただし、無機微粒子(A)と無機微粒子(B)の合計量を100重量%とする)である請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記凝集液(B)における、前記最高ピークRaの示す粒径の20倍以上の粒径を有する凝集粒子の体積の合計が、該凝集液(B)中の無機微粒子の合計体積の1%以上である、請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
前記分散液(A)に含まれる無機微粒子が、鎖状無機微粒子(E)である請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記分散液(A)に含まれる無機微粒子が、55〜90重量%の鎖状無機微粒子(E)と、10〜45重量%の、平均粒径が1〜20nmの範囲内にある無機微粒子(F)との混合物(ただし、無機微粒子(E)と無機微粒子(F)の合計量を100重量%とする)である請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記凝集液(B)における、前記最高ピークRaの示す粒径の20倍以上の粒径を有する凝集粒子の体積の合計が、該凝集液(B)中の無機微粒子の合計体積の5%以上である、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
前記分散液(A)が親水コロイドである、請求項1〜8いずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記分散液(A)がコロイダルシリカである、請求項1〜9いずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記凝集剤が脱水剤である請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記脱水剤がアルコールである請求項11記載の方法。

【公開番号】特開2007−283294(P2007−283294A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74380(P2007−74380)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】