説明

積層体

【課題】建築物外装面の表面に対し、装飾性の高い仕上面を形成することができるとともに、建築物の温度上昇を抑制し、省エネルギーにも資する材料を提供する。
【解決手段】基材の上に装飾層が積層された積層体であって、前記基材は、織布または不織布であり、前記装飾層は、有機質結合材、並びに、赤外線反射性材料により基体粒子が被覆された粒子径0.01〜5mmの有色粒子及び/または赤外線反射性材料の集合体からなる粒子径0.01〜5mmの有色粒子を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な積層体に関する。本発明積層体は、外壁、屋根、屋上等の建築物外装面に適用できる。本発明では、自然石調等の装飾仕上げを得ることができる。
【背景技術】
【0002】
建築物の外装面では、景観上の観点から美観性が求められる。また建築物においては、外壁、屋根、屋上等の外装面の断熱性を高めることにより、省エネルギー化を図ろうとする動きがある。
このような背景のもと、種々の材料が提案されている。例えば特開平8−127736号公報には、合成樹脂エマルジョン組成物にセラミック微細中空粒子と無機質粉末を配合してなる断熱性塗材が記載されている。この特許文献に記載の技術によれば、建築物外装面に断熱性を付与しつつ、石材調の装飾仕上げを得ることができ、美観性の点でも好ましいものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−127736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、都市部においては、コンクリート建造物や冷房等から排出される人工放射熱などにより、都市独特の気候が作り出されている。特に夏期において都市部における屋外の温度上昇は著しく、ヒートアイランド現象と呼ばれる問題を引き起こしている。これに対し、建築物内部においては、冷房の使用によって屋内温度を下げることが頻繁に行われるが、冷房の多用は消費電力エネルギーを増加させるだけでなく、室外機からの排気によって屋外の温度上昇を助長している。
前述の特許文献等に記載の技術では、このような問題点に十分に対処することは困難である。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたものであり、建築物外装面の表面に対し、装飾性の高い仕上面を形成することができるとともに、建築物の温度上昇を抑制し、省エネルギーにも資する材料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するため本発明者らは鋭意検討を行った結果、基材上に、有機質結合材及び特定の有色粒子を必須成分とする装飾層を設けた積層体に想到し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.基材の上に装飾層が積層された積層体であって、
前記基材は、織布または不織布であり、
前記装飾層は、有機質結合材、並びに、赤外線反射性材料により基体粒子が被覆された粒子径0.01〜5mmの有色粒子及び/または赤外線反射性材料の集合体からなる粒子径0.01〜5mmの有色粒子を含む
ことを特徴とする積層体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、装飾性の高い仕上面を形成することができる。例えば御影石等の自然石調の装飾仕上げを得ることができる。本発明は、石材やタイル等に代わる仕上材としても有用である。
さらに、本発明積層体は、建築物外装面に遮熱性を付与し、建築物の温度上昇を抑制することができる。本発明積層体は、省エネルギーに貢献できる材料として活用できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0010】
[基材]
本発明積層体における基材は、織布または不織布である。このような基材としては、無機繊維を含む織布または不織布等が使用できる。具体的には、鉱物繊維、ガラス繊維等の無機繊維からなる織布または不織布等が挙げられる。特に本発明では、可とう性を有するものが好ましく、さらに、接着剤等の樹脂成分によって繊維を3次元構造に重ね合わせ結合させた不織布が好ましい。また、織布または不織布にガラスメッシュ、ガラスクロス等を積層した基材を使用することもできる。基材の厚さは、通常0.05〜1.5mm、坪量は5〜300g/m程度である。
このような基材を使用した場合、装飾層との接触界面が大きくなるため密着性に優れ、さらに、壁面等に施工した場合、装飾層を安定的に支えることができる。また、施工時に積層体を任意の形状に容易に切断することも可能であり、切断面の小口処理等を適宜行うこともできる。
【0011】
[装飾層]
本発明積層体における装飾層は、有機質結合材及び粒子径0.01〜5mmの特定有色粒子を含有するものである。装飾層は、このような成分を含有する装飾層形成用組成物を硬化させることにより形成できる。
【0012】
このうち有機質結合材は、有色粒子を固定化する役割等を担うものである。具体的に有機質結合材としては、合成樹脂エマルション、水溶性樹脂、溶剤型樹脂、無溶剤型樹脂、粉末樹脂等が挙げられる。これらは架橋反応性を有するものであってもよく、またその形態は特に限定されず、1液型、2液型のいずれであってもよい。本発明では特に、合成樹脂エマルション及び/または水溶性樹脂が好適に用いられる。使用可能な樹脂の種類としては、例えば、セルロース、ポリビニルアルコール、エチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等、あるいはこれらの複合系等を挙げることができる。アルコキシシラン化合物、シリカゾル、シリコーン樹脂等の珪素化合物を複合化した樹脂を用いることもできる。このような複合化においては、樹脂や化合物を化学的に結合させる手段、または混合する手段等を採用することができる。
【0013】
本発明では、装飾層における有色粒子として、赤外線反射性材料により基体粒子が被覆された有色粒子及び/または赤外線反射性材料の集合体からなる有色粒子を含む。本発明では、このような特定の有色粒子を必須成分として含むことにより、装飾性の高い仕上面が形成できるとともに、建築物の温度上昇を十分に抑制することが可能となる。
【0014】
上記有色粒子のうち、まず、赤外線反射性材料により基体粒子が被覆された有色粒子(以下「粒子(i)」ともいう)について説明する。
【0015】
粒子(i)における基体粒子としては、例えば大理石、御影石、蛇紋岩、花崗岩、蛍石、寒水石、長石、珪石等の粉砕物、珪砂、雲母、陶磁器粉砕物、セラミック粉砕物、ガラス粉砕物、ガラス粒、樹脂粒、金属粒、植物粉砕物等が挙げられる。多孔質粒子や発泡粒子等も使用できる。
【0016】
粒子(i)では、上述の基体粒子の表面を、赤外線反射性材料で被覆する。このような粒子(i)は、結合材と赤外線反射性材料を含む着色剤で、基体粒子を被覆することにより得ることができる。結合材としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム等の水溶性ケイ酸アルカリ金属塩、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等の樹脂類、あるいはこれらを複合したもの等が挙げられる。
【0017】
赤外線反射性材料としては、例えば、アルミニウムフレーク、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化インジウム、アルミナ、鉄−クロム複合酸化物、マンガン−ビスマス複合酸化物、マンガン−イットリウム複合酸化物、マンガン−鉄−コバルト複合酸化物、ペリレン顔料、アゾ顔料、キナクリドン顔料、弁柄、朱、チタニウムレッド、カドミウムレッド、イソインドリノン、イソインドリン、ベンズイミダゾロン、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、コバルトブルー、インダスレンブルー、群青、紺青等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。粒子(i)の色相は、これら赤外線反射性材料の種類や量を適宜選択・調製することにより設定できる。
着色剤における赤外線反射性材料の混合比率は、結合材の固形分100重量部に対し、通常0.1〜100重量部である。
【0018】
着色剤は、上記成分のほか、必要に応じて例えば、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、可塑剤、pH調整剤、希釈剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、繊維、触媒、架橋剤等を含むものであってもよい。また、透明粒子、中空粒子、鱗片状粒子等を含むものであってもよい。
【0019】
粒子(i)は、基体粒子と着色剤を混合した後、当該混合物を乾燥する方法等によって製造することができる。基体粒子に着色剤を混合する方法としては、例えば、基体粒子に、直接着色剤を一括混合する方法や、基体粒子に対し着色剤をスプレーする方法等が挙げられる。乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥、真空乾燥、直接加熱乾燥、高周波加熱乾燥、遠赤外線加熱乾燥、除湿乾燥等を採用することができる。
【0020】
本発明では、上記粒子(i)の他に、赤外線反射性材料の集合体からなる有色粒子(以下「粒子(ii)」ともいう)も使用できる。このような粒子(ii)としては、赤外線反射性材料と結合材との混合物により得られる硬化物を所定の粒子径に破砕したもの、あるいは赤外線反射性材料と結合材との混合物を所定の粒子径に成形したもの、等が使用できる。
【0021】
装飾層における有色粒子の粒子径は、0.01〜5mm(好ましくは0.03〜3mm)に設定する。有色粒子の粒子径が小さすぎる場合は、装飾層が単色になりやすく、装飾性が不十分となる。逆に粒子径が大きすぎる場合は、凹凸が目立ちすぎる仕上りとなりやすい。なお、上記有色粒子は、通常粒状であり、後述の鱗片状粒子とは異なる形状のものである。
有色粒子の粒子径は、JIS Z8801−1:2000に規定される金属製網ふるいを用いてふるい分けを行うことによって測定できる。
【0022】
装飾層における有色粒子の混合比率は、有機質結合材の固形分100重量部に対し、通常100〜2000重量部(好ましくは200〜1500重量部)である。このような比率であれば、美観性や温度上昇抑制効果等の点で好適である。
【0023】
装飾層としては、上記成分に加え、透明粒子、中空粒子等を含むものが使用できる。このような成分を含むことにより、本発明の効果をいっそう高めることができる。
このうち透明粒子の配合は、装飾材層(C)の色相が濃色(具体的にはL値が50以下)である場合に有効である。これは、有色粒子の配合量を相対的に減量しても所望の色相が得られやすくなるためである。透明粒子としては、光透過率が20%以上であるものが好適である。なお、ここに言う光透過率とは、濁度計による全光線透過率の値である。この測定では、透明粒子の試料を内厚5mmの透明ガラス製セル中に充填し、次いで徐々に水を充填した後、セル中の気泡を振動によって取り除いたものを用いる。但し試料としては、粒子径が0.5〜1.0mmのものを選別して用いる。
【0024】
透明粒子の具体例としては、例えばガラスビーズ、ガラス粉砕物、シリカ、寒水石、長石、珪石、樹脂ビーズ等が挙げられる。透明粒子の粒子径は、通常0.1〜5.0mmである。また、透明粒子の混合比率は、有機質結合材の固形分100重量部に対し、通常1〜500重量部である。
【0025】
中空粒子としては、例えば、中空セラミック粒子、中空樹脂粒子等が挙げられる。中空セラミック粒子を構成するセラミック成分としては、例えば、珪酸ソーダガラス、アルミ珪酸ガラス、硼珪酸ソーダガラス、フライアッシュ、アルミナ、シラス、黒曜石等が挙げられる。中空樹脂粒子を構成する樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリル−スチレン共重合樹脂、アクリル−アクリロニトリル共重合樹脂、アクリル−スチレン−アクリロニトリル共重合樹脂、アクリロニトリル−メタアクリロニトリル共重合樹脂、アクリル−アクリロニトリル−メタアクリロニトリル共重合樹脂、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合樹脂等が挙げられる。中空粒子は、これらの成分を公知の方法で発泡させることにより得られる。このような中空粒子は、最終的な積層体中で発泡した状態となっていればよく、積層体の製造過程等において発泡させることもできる。
【0026】
中空粒子の平均粒子径は通常0.1〜200μm(好ましくは1〜150μm)程度である。また、中空粒子の密度は通常0.01〜1g/cm(好ましくは0.01〜0.8g/cm)程度である。
中空粒子の混合比率は、有機質結合材の固形分100重量部に対し、通常5〜300重量部である。
【0027】
透明粒子及び/または中空粒子としては、その形状が真球状であるものが好適である。このような真球状の粒子を使用することにより、蓄熱源となる汚染物質等の付着を抑制することが可能となり、温度上昇抑制の点でも有利である。
【0028】
本発明における装飾層としては、厚みに対する粒子径の比(粒子径/厚み)が2/1以上である鱗片状粒子を含むものが使用できる。装飾層にこのような鱗片状粒子が含まれることにより、本発明の効果を高めることができる。その理由は明確ではないが、仕上材層中にこのような形状の鱗片状粒子が散在することによって、塗膜中で太陽光が反射ないし散乱されやすくなる作用がはたらくためと考えられる。
【0029】
このような鱗片状粒子としては、例えば雲母、焼成雲母、酸化チタン被覆雲母、タルク、板状カオリン、硫酸バリウムフレーク、アルミナフレーク、ガラスフレーク、貝殻片、金属片、リーフィング型アルミニウムフレーク、ノンリーフィング型アルミニウムフレーク等の無機質片、あるいはゴム片、プラスチック片、木片等を使用することができる。これらは、着色されたものであってもよい。赤外線反射性材料と結合材との混合物により得られる硬化物を鱗片状に破砕したもの等も使用できる。
【0030】
鱗片状粒子の厚みに対する粒子径の比は2/1以上であり、好ましくは3/1以上、より好ましくは4/1以上である。鱗片状粒子の粒子径は、通常0.01〜20mm程度である。なお、鱗片状粒子の平均粒子径は、JIS Z8801−1:2000に規定される金属製網ふるいを用いてふるい分けを行うことによって得られる値である。
鱗片状粒子は、結合材の固形分100重量部に対し、通常1〜500重量部(好ましくは3〜200重量部)の比率で混合する。
【0031】
本発明における装飾層は、赤外線反射性材料を含むものであってもよい。この場合、屈折率2.4以下の赤外線反射性材料を用いることにより、良好な美観性を保ちつつ、温度上昇抑制効果を高めることができる。
【0032】
装飾層形成用組成物は、有機質結合材並びに粒子(i)及び/または粒子(ii)を必須成分とし、必要に応じ上記各成分の1種または2種以上を公知の方法によって均一に混合することで製造することができる。さらに、必要に応じ通常使用可能なその他の成分を混合することもできる。このような成分としては、例えば、着色顔料、体質顔料、骨材、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、希釈剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、繊維、触媒、架橋剤、発泡剤、起泡剤等が挙げられる。また、本発明の効果が損われない範囲内であれば、本発明の規定から外れる有色粒子等を混合することもできる。
装飾層の厚みは、通常0.05〜10mm程度である。
【0033】
[断熱層]
本発明の積層体では、前記装飾層の下層に断熱層を設けることができる。この断熱層は、結合材及び中空粒子を含有するものである。このような断熱層と装飾層を積層した積層体では、温度上昇抑制効果等においてより優れた性能を得ることができる。
【0034】
断熱層における結合材、中空粒子としては、装飾層で例示したものと同様のものが使用できる。中空粒子の混合比率は、結合材の固形分100重量部に対し、通常0.5〜200重量部、好ましくは1〜100重量部である。
【0035】
断熱層は、赤外線反射性材料を含むものであってもよい。赤外線反射性材料は、結合材の固形分100重量部に対し、通常1〜400重量部、好ましくは2〜200重量部程度配合すればよい。
【0036】
本発明の断熱層は、上記成分の混合物を硬化させることで得られるが、必要に応じその他の成分を混合することもできる。このような成分としては、例えば、着色顔料、体質顔料、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、希釈剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、繊維、触媒、架橋剤、発泡剤、起泡剤等が挙げられる。
断熱層の厚みは、通常0.5〜20mm程度である。
【0037】
本発明積層体は、その製造方法については特に限定されるものではないが、例えば以下の方法で製造することができる。
(1)型枠の内面に装飾層形成用組成物を塗付後、基材を積層し硬化後に脱型する方法。
(2)基材に装飾層形成用組成物を塗付する方法。
【0038】
また、断熱層と装飾層を積層した積層体は、上記方法に準じ以下に例示する方法で製造できる。
(1)型枠の内面に装飾層形成用組成物を塗付した後、断熱層形成用組成物を積層し、次いで基材を積層し、硬化後に脱型する方法。
(2)基材に断熱層形成用組成物を塗付し、次いで装飾層形成用組成物を積層する方法。
【0039】
なお、装飾層形成用組成物としては、有機質結合材及び有色粒子を含むペースト状混合物等が使用でき、断熱層形成用組成物としては、結合材及び中空粒子を含むペースト状混合物等が使用できる。
【0040】
上記(1)において使用する型枠としては、例えばシリコン樹脂製、ウレタン樹脂製、金属製等の型枠、あるいは離型紙を設けた型枠等が使用できる。また、上記(1)では型枠側が積層体の表面となるため、型枠内側の形状を調整することで、所望の凹凸模様を付与することができる。一方、上記(2)では、装飾層の硬化前に種々の凹凸模様を形成することもできる。
上記方法において各材料を塗付する際には、例えばスプレー、ローラー、こて、レシプロ、コーター、流し込み等の手段を用いた方法を採用することができる。また、装飾層形成用組成物や断熱層形成用組成物を硬化させる際には、加熱することもできる。2種以上の装飾層形成用組成物を用いて、2色以上が斑点状、筋状等で混在する模様を形成することも可能である。
【0041】
また、装飾層の装飾性等を高める目的で、装飾層に対し、粒子径の大きな粒子を混合したり、散布することもできる。このような粒子としては、例えば前述の有色粒子と同材質のものの他、前述の無機質片、例えば雲母、焼成雲母、酸化チタン被覆雲母、ガラスフレーク、貝殻片、植物片等が挙げられる。このような粒子の導入により、温度上昇抑制効果を高めることも可能である。
【0042】
本発明積層体では、装飾層の下層として、遮熱層を設けることもできる。このような層を設けることは、本発明の効果発現の点で好ましいものである。このような遮熱層は、結合材及び赤外線反射性材料を含有するものであり、これら成分を含む組成物を硬化させることにより形成できる。遮熱層の厚みは、通常0.01〜1mm程度である。
【0043】
また、装飾層の表面には、別途クリヤー層等を設けることもできる。クリヤー層は、有機質結合材及び/または珪素化合物を含むクリヤー塗料等によって形成できる。珪素化合物としては、例えば、アルコキシシラン化合物、シリカゾル等が挙げられる。クリヤー塗料には、温度上昇抑制効果を奏する各種粉体を混合することもできる。このようなクリヤー層は、本発明の効果向上の点で好適である。また、クリヤー層は、本発明の効果が著しく阻害されない限り、着色されたものであってもよい。
【0044】
本発明積層体は、主に建築物の外装仕上げに適用できる。すなわち、流通時には、シート状成形体として取り扱い、これを建築物外装面の各部位に施工して外装仕上げを行うことができる。このような部位を構成する基材としては、例えば、コンクリート、モルタル、セメントボード、押出成形板、スレート板、PC板、ALC板、繊維強化セメント板、金属ボード、磁器タイル、金属系サイディングボード、窯業系サイディングボード、セラミック板、プラスチックボード、硬質木片セメント板、塩ビ押出サイディングボード、煉瓦、合板等、あるいはこれらの複合体等があげられる。このような基材は、何らかの表面処理(例えば、シーラー層、パテ層、サーフェーサー層等)が施されたものであってもよい。
【0045】
本発明積層体は、このような基材に対し、装飾層が屋外側を向くようにして施工する。
本発明積層体を施工する際には、接着剤、粘着剤、粘着テープ、釘、鋲等を用いて基材に貼着すればよい。その他、ピン、ファスナー、マジックテープ(登録商標)、レール等を用いて固定化することもできる。
本発明では、上述の断熱層形成用組成物を基材に塗付した後に、本発明積層体を貼り付けることもできる。この場合には、断熱層形成用組成物を硬化させた後に、接着剤等を介して本発明積層体を貼り付ける方法、あるいは断熱層形成用組成物の硬化前に、当該組成物の接着力を利用して本発明積層体を貼り付ける方法等を採用することができる。
【実施例】
【0046】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0047】
(装飾層形成用組成物1の製造)
容器内に有機質結合材1を200重量部仕込み、これに骨材1を700重量部、造膜助剤を12重量部、増粘剤を4重量部、消泡剤を6重量部混合し、常法にて均一に攪拌することにより装飾層形成用組成物1を製造した。
【0048】
(装飾層形成用組成物2の製造)
容器内に有機質結合材1を200重量部仕込み、これに骨材1を700重量部、中空粒子1を50重量部、造膜助剤を12重量部、増粘剤を4重量部、消泡剤を6重量部混合し、常法にて均一に攪拌することにより装飾層形成用組成物2を製造した。
【0049】
(装飾層形成用組成物3の製造)
容器内に有機質結合材1を200重量部仕込み、これに骨材2を700重量部、造膜助剤を12重量部、増粘剤を4重量部、消泡剤を6重量部混合し、常法にて均一に攪拌することにより装飾層形成用組成物3を製造した。
【0050】
なお、装飾層形成用組成物の製造においては下記の原料を使用した。
・有機質結合材1:アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%、ガラス転移温度30℃)
・骨材1:アクリルシリコン樹脂200重量部に対し、マンガン−ビスマス複合酸化物を20重量部混合した着色剤1によって、珪砂を被覆して得られる黒色骨材。粒子径0.2〜1mm。
・骨材2:アクリルシリコン樹脂200重量部に対し、カーボンブラックを20重量部混合した着色剤2によって、珪砂を被覆して得られる黒色骨材。粒子径0.2〜1mm。
・中空粒子1:平均粒子径40μmの真球状ガラスバルーン、密度0.45g/cm
・造膜助剤:2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート
・増粘剤:ウレタン系増粘剤
・消泡剤:シリコーン系消泡剤
【0051】
○実施例1
ガラス不織布(厚み0.4mm、坪量50g/m)に、装飾層形成用組成物1を塗付し、60℃下で60分間乾燥後、さらに80℃下で60分間乾燥後、積層体(装飾層の厚さ:2.5mm)を得た。アクリル樹脂接着剤を用いて、この積層体をアルミニウム板に貼り付け、以下の試験を実施した。
【0052】
(試験1)
上述の方法で得られた試験板について、60cmの距離を設けて赤外線ランプ(出力250W)を20分間照射したときの裏面温度を測定した。
【0053】
(試験2)
上述の方法で得られた試験板について、60cmの距離を設けて赤外線ランプ(出力250W)を8時間照射した後、23℃の水に16時間浸漬するサイクルを、合計10サイクル行った後、その外観変化を目視にて観察した。評価は、異常(膨れ、剥れ、浮き等)が認められないものを「○」、一部に異常が認められたものを「△」、明らかに異常が認められたものを「×」として行った。
【0054】
試験結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
○実施例2
装飾層形成用組成物1に替えて、装飾層形成用組成物2を使用した以外は、実施例1と同様の方法で試験体を作製し、試験を実施した。試験結果を表1に示す。
【0057】
○比較例1
装飾層形成用組成物1に替えて、装飾層形成用組成物3を使用した以外は、実施例1と同様の方法で試験体を作製し、試験を実施した。試験結果を表1に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の上に装飾層が積層された積層体であって、
前記基材は、織布または不織布であり、
前記装飾層は、有機質結合材、並びに、赤外線反射性材料により基体粒子が被覆された粒子径0.01〜5mmの有色粒子及び/または赤外線反射性材料の集合体からなる粒子径0.01〜5mmの有色粒子を含む
ことを特徴とする積層体。

【公開番号】特開2010−240965(P2010−240965A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91628(P2009−91628)
【出願日】平成21年4月4日(2009.4.4)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)
【Fターム(参考)】