説明

積層体

【課題】半田付けを用いずに、バスバー電極等の電極にインターコネクタを、優れた接着性をもって接続する。
【解決手段】25〜100質量%が銀コート金属粉(a)である導電性粒子(A)を含有する第1の電極用導電性組成物を、温度400℃以上で熱処理して形成される第1の電極導電層と、上記第1の電極導電層上に配置され、バインダ樹脂(B)および導電性粒子(C)を含有する接着用導電性組成物を用いて形成される接着導電層と、を備える積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、焼成されて電極等を形成する材料として、種々の導電性組成物が用いられている。
例えば、特許文献1には、「電気抵抗率が20×10-6Ω・cm以下の金属材料(A)と、水酸基を1個以上有する脂肪酸銀塩(B)と、沸点が200℃以下の2級脂肪酸を用いて得られる2級脂肪酸銀塩(C)と、を含有する導電性組成物。」が開示され([請求項1])、この「金属材料(A)」として「銀粉末」が用いられている([実施例][0071])。
【0003】
また、特許文献2には、「銀粉(A)と、酸化銀(B)と、有機溶媒(D)とを含有し、該銀粉(A)が組成物に含有される銀単体および銀化合物中50質量%以上である導電性組成物」が提案されており([請求項1])、任意成分としてカルボン酸銀を含む態様や、ガラスフリット、金属系添加剤等の他の添加剤を含む態様が記載されている([請求項2][0030][0033][0034]等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−92684号公報
【特許文献2】特開2011−35062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
銀粉を含有する導電性組成物は、焼成後において優れた導電性を示すなど高性能である一方で、高コストであるという問題があった。
本発明者らは、導電性組成物の低コスト化を図るため検討を行ったところ、銀粉または銀粉の一部に代えて、銀コートニッケル粉等の銀コート金属粉を用いることにより、低コスト化が実現できることを明らかにした。
【0006】
ところで、太陽電池セルにおいては、上述したような導電性組成物が印刷された後に焼成されて電極(フィンガー電極、バスバー電極等)が形成される。そして、一つの太陽電池セルにおけるバスバー電極と、他の太陽電池セルにおける裏面電極の接続部とが、インターコネクタ(例えば銅リボン等)によって接続されて、太陽電池モジュールが形成される。
このとき、バスバー電極とインターコネクタとは、半田付けによって接続されるのが一般的である。
【0007】
しかしながら、例えば銀コートニッケル粉を含有する導電性組成物を焼成した場合、銀コートの隙間から露出しているニッケル部分が焼成時に酸化してしまい、これにより半田密着性が劣る場合があることを、本発明者らは見出した。
この場合、半田付けによるバスバー電極に対するインターコネクタの接着性(インターコネクタ接着性)が劣ることになり、好ましくない。
【0008】
そこで、本発明は、半田付けを用いずに、バスバー電極等の電極にインターコネクタを、優れた接着性をもって接続することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、電極である層に対して、特定の層を介して、インターコネクタを接続し得ることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(9)を提供する。
【0010】
(1)25〜100質量%が銀コート金属粉(a)である導電性粒子(A)を含有する第1の電極用導電性組成物を、温度400℃以上で熱処理して形成される第1の電極導電層と、上記第1の電極導電層上に配置され、バインダ樹脂(B)および導電性粒子(C)を含有する接着用導電性組成物を用いて形成される接着導電層と、を備える積層体。
【0011】
(2)25〜100質量%が銀コート金属粉(a)である導電性粒子(A)およびバインダ樹脂(B)を含有する第2の電極用導電性組成物を、温度150℃以上400℃未満で熱処理して形成される第2の電極導電層と、上記第2の電極導電層上に配置され、上記バインダ樹脂(B)および導電性粒子(C)を含有する接着用導電性組成物を用いて形成される接着導電層と、を備える積層体。
【0012】
(3)上記銀コート金属粉(a)の平均粒子径が、1.5〜20μmである、上記(1)または(2)に記載の積層体。
【0013】
(4)上記銀コート金属粉(a)が、ニッケル粉100質量部に対して5〜30質量部の銀コートを有する銀コートニッケル粉である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の積層体。
【0014】
(5)上記銀コート金属粉(a)以外の上記導電性粒子(A)が、銀粉である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の積層体。
【0015】
(6)上記導電性粒子(C)が、銀粉、ニッケル粉、銅粉、銀コートニッケル粉、および、銀コート銅粉からなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の積層体。
【0016】
(7)上記導電性粒子(C)の平均粒子径が、1.5〜20μmである、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の積層体。
【0017】
(8)上記バインダ樹脂(B)が、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、および、ポリイミド樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の積層体。
【0018】
(9)さらに、上記接着導電層上に配置されるインターコネクタを備える、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の積層体。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、半田付けを用いずに、バスバー電極等の電極にインターコネクタを、優れた接着性をもって接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】太陽電池セルの模式断面図である。
【図2】太陽電池セルの表面電極側からみた模式上面図および裏面電極側からみた模式下面図である。
【図3】太陽電池モジュールの模式斜視図および接合部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[積層体]
本発明の第1態様の積層体は、25〜100質量%が銀コート金属粉(a)である導電性粒子(A)を含有する第1の電極用導電性組成物を、温度400℃以上で熱処理して形成される第1の電極導電層と、上記第1の電極導電層上に配置され、バインダ樹脂(B)および導電性粒子(C)を含有する接着用導電性組成物を用いて形成される接着導電層と、を備える積層体である。
【0022】
一方、本発明の第2態様の積層体は、25〜100質量%が銀コート金属粉(a)である導電性粒子(A)およびバインダ樹脂(B)を含有する第2の電極用導電性組成物を、温度150℃以上400℃未満で熱処理して形成される第2の電極導電層と、上記第2の電極導電層上に配置され、上記バインダ樹脂(B)および導電性粒子(C)を含有する接着用導電性組成物を用いて形成される接着導電層と、を備える積層体である。
【0023】
以下では、まず、本発明の第1態様および第2態様の積層体(以下、これらをまとめて「本発明の積層体」ともいう)が備える各部について説明する。
【0024】
〔第1の電極導電層、および、第2の電極導電層〕
第1の電極導電層は、25〜100質量%が銀コート金属粉(a)である導電性粒子(A)を含有する第1の電極用導電性組成物を、温度400℃以上で熱処理して形成される層である。
一方、第2の電極導電層は、25〜100質量%が銀コート金属粉(a)である導電性粒子(A)およびバインダ樹脂(B)を含有する第2の電極用導電性組成物を、温度150℃以上400℃未満で熱処理して形成される層である。
そこで、以下では、まず、第1および第2の電極導電層を形成するために用いられる第1および第2の電極用導電性組成物について説明する。
【0025】
<第1の電極用導電性組成物、および、第2の電極用導電性組成物>
第1の電極用導電性組成物は、25〜100質量%が銀コート金属粉(a)である導電性粒子(A)を含有する組成物である。
一方、第2の電極用導電性組成物は、25〜100質量%が銀コート金属粉(a)である導電性粒子(A)およびバインダ樹脂(B)を含有する組成物である。
そこで、以下では、まず、第1および第2の電極用導電性組成物が含有する各成分について説明する。
【0026】
(導電性粒子(A))
導電性粒子(A)は、その25〜100質量%が銀コート金属粉(a)であれば特に限定されない。そこで、まず、銀コート金属粉(a)について説明する。
【0027】
銀コート金属粉(a)としては、金属粉の表面の少なくとも一部に銀がコートされているものであれば特に限定されない。ここで、上記金属粉としては、例えば、ニッケル粉、銅粉、アルミニウム粉、マグネシウム粉等が挙げられ、なかでも、熱処理時に酸化されにくいという理由から、ニッケル粉が好ましい。
【0028】
銀コート金属粉(a)は、銀が表面の一部に偏在しているものよりも、銀が偏在せずに、表面全体に亘って均一に分布されているものが好ましい。これにより、導通性が均一な銀コート金属粉となる。また、コートしている銀は、金属粉の表面に点状、網目状などの形状で付着していてよい。
銀コート金属粉(a)において、ニッケル粉等の金属粉の表面をコートする銀の量(銀コート量)は、導電性の観点から、金属粉100質量部に対して5〜30質量部であるのが好ましく、20〜30質量部であるのがより好ましい。
銀コート金属粉(a)の平均粒子径は、印刷性が優れる等の理由から、1.5〜20μmであるのが好ましく、比表面積が小さく熱処理時に酸化されにくいという理由から、5〜20μmであるのがより好ましい。
【0029】
なお、本明細書において、平均粒子径とは、粒子径の平均値をいい、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定された50%体積累積径(D50)をいう。なお、平均値を算出する基になる粒子径は、断面が楕円形である場合はその長径と短径の合計値を2で割った平均値をいい、正円形である場合はその直径をいう。
また、球状とは、長径/短径の比率が2以下の粒子の形状をいう。
【0030】
(銀粉)
第1および第2の電極用導電性組成物は、低コスト化の観点からは、銀粉を含有しない方が好ましいが、導電性等の観点から、導電性粒子(A)として、銀粉を含有していてもよい。すなわち、この場合、上述した銀コート金属粉(a)以外の導電性粒子(A)が、銀粉となる。
上記銀粉としては、印刷性が良好になるという理由から、平均粒子径が0.5〜10μmであるのが好ましく、0.7〜5μmであるのがより好ましく、1〜3μmであるのがさらに好ましい。
また、体積抵抗率のより小さい電極を形成することができ、光電変換効率の更に高い太陽電池セルを作製することができるという理由から、球状の銀粉末を用いるのがより好ましい。
このような銀粉としては、市販品を用いることができ、その具体例としては、AgC−102(形状:球状、平均粒子径:1.5μm、福田金属箔粉工業社製)、AgC−103(形状:球状、平均粒子径:1.5μm、福田金属箔粉工業社製)、AG4−8F(形状:球状、平均粒子径:2.2μm、DOWAエレクトロニクス社製)、AG2−1C(形状:球状、平均粒子径:1.0μm、DOWAエレクトロニクス社製)、AG3−11F(形状:球状、平均粒子径:1.4μm、DOWAエレクトロニクス社製)、AgC−2011(形状:フレーク状、平均粒子径:2〜10μm、福田金属箔粉工業社製)、AgC−301K(形状:フレーク状、平均粒子径:3〜10μm、福田金属箔粉工業社製)等が挙げられる。
【0031】
(溶剤)
第1および第2の電極用導電性組成物は、溶剤を含有していてもよい。
上記溶剤としては、特に限定されないが、沸点が200℃以上の有機溶剤であることが好ましい。沸点が200℃以上の有機溶剤としては、具体的には、例えば、ブチルカルビトール、メチルエチルケトン、イソホロン、α−テルピネオール、トリエチレングリコール等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
上記溶剤の量は、上述した導電性粒子(A)100質量部に対して、2〜20質量部であるのが好ましく、5〜15重量部であるのがより好ましい。
【0032】
(ビヒクル)
第1の電極用導電性組成物は、印刷性の観点から、ビヒクルを含有していてもよい。上記ビヒクルとしては、樹脂を有機溶剤に溶解させたものであって、印刷性を付与できるものであれば特に限定されない。
上記ビヒクルにおける樹脂としては、具体的には、例えば、エチルセルロース樹脂、ニトロセルロース樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、フェノール樹脂等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのうち、熱分解性の観点から、エチルセルロース樹脂を用いるのが好ましい。
また、上記ビヒクルにおける有機溶剤としては、具体的には、例えば、α−テルピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ジアセトンアルコール、メチルイソブチルケトン等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
上記ビヒクルの含有量は、上述した導電性粒子(A)100質量部に対して、固形分で、0〜20質量部であるのが好ましく、0.3〜20質量部であるのがより好ましい。
【0033】
(バインダ樹脂(B))
第2の電極用導電性組成物は、接着性の観点から、バインダ樹脂(B)を含有する。
バインダ樹脂(B)としては、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、被着体に対する接着性により優れるという理由から、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂であるのが好ましい。
バインダ樹脂(B)の含有量は、上述した導電性粒子(A)100質量部に対して、1〜25質量部であるのが好ましく、5〜15質量部であるのがより好ましい。
【0034】
なお、バインダ樹脂(B)は、上述したエポキシ樹脂やポリエステル樹脂等の樹脂のみからなっていてもよいが、さらに、さらに他の樹脂や添加剤等を含有していてもよい。
より具体的には、例えば、バインダ樹脂(B)は、エポキシ樹脂やポリエステル樹脂等の樹脂100質量部に対して、さらに、コアシェル型ゴム粒子15〜35質量部、フェノキシ樹脂10〜30質量部、溶剤20〜40質量部、シリカ0.5〜1.5質量部、シランカップリング剤0.5〜1.5質量部、硬化剤1〜3質量部を含有していてもよい。
【0035】
(ガラスフリット)
第1の電極用導電性組成物は、必要に応じて、ガラスフリットを含有していてもよい。
上記ガラスフリットとしては、特に限定されないが、酸化鉛を含有しないガラスフリットであるのが好ましく、例えば、軟化温度300〜800℃のホウケイ酸ガラスフリット等が挙げられる。
上記ガラスフリットの形状は特に限定されず、球状でも破砕粉状でもよい。球状のガラスフリットの平均粒子径(D50)は、0.1〜20μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。さらに、15μm以上の粒子を除去した、シャープな粒度分布を持つガラスフリットを用いることが好ましい。
上記ガラスフリットの含有量は、導電性粒子(A)100質量部に対して0.5〜5質量部であるのが好ましく、1〜3質量部であるのがより好ましい。
【0036】
(第1および第2の電極用導電性組成物の製造方法)
第1および第2の電極用導電性組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、上述した必須成分および任意成分をボールミル等を用いて混合する方法が挙げられる。
【0037】
<第1の電極導電層の製造方法>
第1の電極導電層の製造方法は、少なくとも、上述した第1の電極用導電性組成物を温度400℃以上で熱処理する工程を備える。
当該熱処理によって、第1の電極用導電性組成物は焼結され、第1の電極導電層が形成される。第1の電極用導電性組成物は導電性粒子(A)を有することから、形成される第1の電極導電層は、導電性を有する。
第1の電極導電層は、詳しくは後述するが、例えば、太陽電池セルが備える表面電極のバスバー電極や裏面電極の接続部とすることができる。
第1の電極導電層を形成する際の熱処理温度は、400℃以上であれば特に限定されないが、700〜800℃の温度であるのが好ましい。
また、当該熱処理の時間は、特に限定されず、例えば、数秒〜数十分間であるのが好ましい。
【0038】
<第2の電極導電層の製造方法>
一方、第2の電極導電層の製造方法は、少なくとも、上述した第2の電極用導電性組成物を150℃以上400℃未満で熱処理する工程を備える。
当該熱処理によって、第2の電極用導電性組成物は加熱されて第2の電極導電層が形成されるが、このとき、熱処理温度が比較的低温であるため、形成される第2の電極導電層においては、バインダ樹脂(B)が完全に気化せずに残存し、接着性に寄与する。また、形成される第2の電極導電層は、第2の電極用導電性組成物が導電性粒子(A)を含有することから、導電性を有する。
第2の電極導電層は、第1の電極導電層と同様に、例えば、太陽電池セルが備える表面電極のバスバー電極や裏面電極の接続部とすることができるが、とりわけ、高温処理に向かないハイブリッド型の太陽電池セルにおいて適用することができる。
第2の電極導電層を形成する際の熱処理温度は、150℃以上400℃未満であれば特に限定されないが、150〜200℃の温度であるのが好ましい。
また、当該熱処理の時間は、特に限定されず、例えば、数秒〜数十分間であるのが好ましい。
【0039】
〔接着導電層〕
次に、接着導電層について説明する。
接着導電層は、上述した第1または第2の電極導電層上に配置され、バインダ樹脂(B)および導電性粒子(C)を含有する接着用導電性組成物を用いて形成される層である。
そこで、以下では、まず、接着導電層を形成するために用いられる接着用導電性組成物について説明する。
【0040】
<接着用導電性組成物>
接着用導電性組成物は、バインダ樹脂(B)および導電性粒子(C)を含有する組成物である。
【0041】
(バインダ樹脂(B))
接着用導電性組成物は、接着性の観点から、バインダ樹脂(B)を含有する。このバインダ樹脂(B)としては、上述した第2の電極用導電性組成物が含有するバインダ樹脂(B)として記載したものを好ましく用いることができる。
【0042】
(導電性粒子(C))
接着用導電性組成物は、導電性の観点から、導電性粒子(C)を含有する。
導電性粒子(C)としては、特に限定されないが、例えば、金属粉、銀コート金属粉等が挙げられる。より具体的には、例えば、銀粉、ニッケル粉、銅粉などの金属粉;銀コートニッケル粉、銀コート銅粉などの銀コート金属粉;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
導電性粒子(C)として銀コート金属粉を用いる場合、金属粉の表面をコートする銀の量(銀コート量)は、導電性の観点から、金属粉100質量部に対して5〜30質量部であるのが好ましく、20〜30質量部であるのがより好ましい。
また、導電性粒子(C)の平均粒子径は、印刷性が優れる等の理由から、1.5〜20μmであるのが好ましく、比表面積が小さく熱処理時に酸化されにくいという理由から、5〜20μmであるのがより好ましい。
【0043】
導電性粒子(C)の含有量は、上述したバインダ樹脂(B)100質量部に対して、1〜30質量部であるのが好ましく、5〜20質量部であるのがより好ましい。
【0044】
(溶剤)
なお、接着用導電性組成物は、溶剤を含有していてもよく、例えば、第1の電極用導電性組成物含有していてもよい溶剤として記載したものを好適に用いることができる。
【0045】
(接着用導電性組成物の製造方法)
接着用導電性組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、上述した必須成分および任意成分をボールミル等を用いて混合する方法が挙げられる。
【0046】
<接着導電層の製造方法>
接着導電層の製造方法は、上述した接着用導電性組成物を用いて接着導電層を形成する方法であれば特に限定されず、例えば、接着用導電性組成物を上述した第1または第2の電極導電層上に配置する工程を備える。
その後、後述するインターコネクタが配置され、接着用導電性組成物が含有するエポキシ樹脂等のバインダ樹脂(B)が硬化することで、接着導電層が形成される。このとき、接着用導電性組成物が導電性粒子(C)を含有することから、接着導電層は導電性を有する。
このようにして、接着導電層(接着用導電性組成物)が、いわば導電性接着剤として機能して、第1または第2の電極導電層とインターコネクタとが接続される。
【0047】
なお、インターコネクタが配置された後に、接着用導電性組成物を、例えば、100〜200℃の温度条件下で、5〜60秒放置してもよい。
【0048】
〔インターコネクタ〕
本発明の積層体は、さらに、上述した接着導電層上に配置されるインターコネクタを備え得る。インターコネクタは、太陽電池セル(後述する)を直列に接合して太陽電池モジュール(後述する)際に用いられるものである。
本発明において、インターコネクタとしては、例えば、銅リボン、アルミニウムリボンなどの金属リボンを好適に用いることができる。
【0049】
次に、図1〜図3に基いて、本発明の積層体をより具体的に説明する。なお、以下では、太陽電池セル、および、太陽電池モジュールについて説明しつつ、その説明過程で、本発明の積層体についての説明も併せて行う。
【0050】
[太陽電池セル]
まず、太陽電池セルの構成について図1および図2を用いて説明する。なお、図1では、結晶系シリコン太陽電池を例に挙げて、太陽電池セルを説明するが、これに限られることはなく、例えば、薄膜系のアモルファスシリコン太陽電池、ハイブリッド型(HIT)太陽電池等であってもよい。
【0051】
図1に示すように、太陽電池セル10は、受光面側の表面電極1(フィンガー電極1a)と、n層3およびp層5が接合したpn接合シリコン基板4(以下、これらを併せて「結晶系シリコン基板7」ともいう。)と、裏面電極6(全面電極6a)とを具備するものである。なお、図1は、図2のI−I線における模式的な断面図である。
また、図1に示すように、太陽電池セル10は、反射率低減のためピラミッド状のテクスチャが形成された反射防止膜2を具備するのが好ましい。
【0052】
図2(A)に示すように、太陽電池セル10は、受光面側の表面電極1として、フィンガー電極1aとバスバー電極1bとを具備するものである。
また、図2(B)および図1に示すように、太陽電池セル10は、裏面電極6として、全面電極6aと接続部6bとを具備するものである。
【0053】
〔表面電極/裏面電極〕
表面電極および裏面電極は、電極の配置(ピッチ)、形状、高さ、幅等は特に限定されない。
図1および図2に示す態様においては、少なくとも、表面電極1におけるバスバー電極1bが、上述した第1または第2の電極導電層である。なお、フィンガー電極1aも、同様に、第1または第2の電極導電層であってもよい。
一方、裏面電極6においては、全面電極6aがアルミニウム電極であるのが好ましい。また、接続部6bが、第1または第2の電極導電層であるのが好ましい。
なお、以下では、フィンガー電極1a、バスバー電極1bおよび接続部6bが、第1または第2の電極導電層である場合について説明する。
【0054】
〔反射防止膜〕
反射防止膜は、受光面の表面電極が形成されていない部分に形成される膜(膜厚:0.05〜0.1μm程度)であって、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、酸化チタン膜、これらの積層膜等から構成されるものである。
【0055】
〔結晶系シリコン基板〕
結晶系シリコン基板は特に限定されず、太陽電池を形成するための公知のシリコン基板(板厚:100〜450μm程度)を用いることができ、また、単結晶または多結晶のいずれのシリコン基板であってもよい。
また、上記結晶系シリコン基板はpn接合を有するが、これは、第1導電型の半導体基板の表面側に第2導電型の受光面不純物拡散領域が形成されていることを意味する。なお、第1導電型がn型の場合には、第2導電型はp型であり、第1導電型がp型の場合には、第2導電型はn型である。
ここで、p型を与える不純物としては、ホウ素、アルミニウム等が挙げられ、n型を与える不純物としては、リン、砒素などが挙げられる。
【0056】
太陽電池セルを製造する方法は特に限定されないが、例えば、上述した第1または第2の電極用導電性組成物をシリコン基板上に塗布して配線を形成する配線形成工程と、得られた配線を熱処理して、第1または第2の電極導電層(表面電極のフィンガー電極およびバスバー電極、ならびに、裏面電極の接続部)を形成する熱処理工程と、を有する方法が挙げられる。
なお、太陽電池セルが反射防止層を具備する場合、反射防止膜は、プラズマCVD法等の公知の方法により形成することができる。
以下に、配線形成工程、熱処理工程について詳述する。
【0057】
<配線形成工程>
上記配線形成工程は、第1または第2の電極用導電性組成物をシリコン基板上に塗布して配線を形成する工程である。
ここで、塗布方法としては、具体的には、例えば、インクジェット、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷等が挙げられる。
【0058】
<熱処理工程>
上記熱処理工程は、上記配線形成工程で得られた配線を熱処理して、第1または第2の電極導電層を形成する工程である。
ここで、熱処理温度は、第1の電極用導電性組成物または第2の電極用導電性組成物によって異なるものであり、その温度については上述したとおりである。
【0059】
[太陽電池モジュール]
太陽電池モジュールは、インターコネクタを用いて太陽電池セルを直列に接合した太陽電池モジュールである。以下に、太陽電池モジュールの構成について図3を用いて説明する。
【0060】
図3に示すように、太陽電池モジュール20は、インターコネクタ8を用いて、太陽電池セル10を直列に接合したものである。
図3に示す態様において、インターコネクタ8は、金属リボンであり、その具体例としては、銅リボン、アルミニウムリボン等が挙げられる。
【0061】
図3における接合部の拡大断面図に示すように、表面電極1のバスバー電極1bとインターコネクタ8とが、接着導電層9を介して接着し、さらに、裏面電極6の接続部6bとインターコネクタ8とが、接着導電層9を介して接着している。
【0062】
すなわち、図3においては、バスバー電極1bまたは接続部6bと、接着導電層9と、任意でインターコネクタ8とを備える積層体が、本発明の積層体を示す。
図3においては、バスバー電極1bまたは接続部6bとインターコネクタ8とが、半田付けではなく接着導電層9を用いて接続されていることで、バスバー電極1bまたは接続部6bに対するインターコネクタ8の接着性が優れている。
【実施例】
【0063】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0064】
(実施例1〜6、比較例1)
まず、ボールミルに、下記第1表に示す成分を下記第1表中に示す組成比となるように添加し、これらを混合することにより第1または第2の電極用導電性組成物(以下、まとめて単に「電極用導電性組成物」ともいう)、および、接着用導電性組成物を調製した。
【0065】
<インターコネクタ密着性>
シリコン基板を準備し、裏面の全面にアルミニウムペーストをスクリーン印刷で塗布し、乾燥させた。
次いで、シリコン基板の表面に、調製した電極用導電性組成物をスクリーン印刷で塗布することにより、フィンガー電極の所定の配線パターンおよびバスバー電極の所定の配線パターンを形成した。
スクリーン印刷で配線を形成した後、焼成炉にて、ピーク温度が下記第1表中の熱処理温度となるようにして60秒間焼成し、第1または第2の電極導電層(以下、まとめて単に「電極導電層」ともいう)としてのバスバー電極(およびフィンガー電極)を形成させた太陽電池セルのサンプルを作製した。
【0066】
次に、作製した太陽電池セルのサンプルのバスバー電極(電極導電層)上に、調製した接着用導電性組成物をスクリーン印刷で塗布し、さらに、その上にインターコネクタ(銅リボン)を配置し、170℃の条件下で20秒間放置した。
なお、比較例1においては、半田(組成:Sn−3Ag−0.5Cu)を用いて、上記インターコネクタを、バスバー電極に半田付けした。
【0067】
その後、JIS K6850:1999に準じて、引張速度50mm/分で引張せん断試験を行い、破断時の荷重(MPa)を測定した。
破断時の荷重が1MPa以上であった場合にはインターコネクタ密着性に優れるものとして「○」と評価し、破断時の荷重が1MPa未満であった場合にはインターコネクタに劣るものとして「×」と評価した。結果を下記第1表に示す。
【0068】
<セル効率>
作製した各太陽電池セルのサンプルの電気特性(I−V特性)をセルテスター(山下電送社製)用いて評価し、光電変換効率(Eff)を求めた。
実施例1〜6においては、光電変換効率(Eff)がいずれも15%以上であったことから、セル効率が優れるものとして「○」と評価した。結果を下記第1表に示す。
なお、比較例1においては、評価を行わなかったため「−」を記載した。
【0069】
【表1】

【0070】
第1表中の各成分は、以下のものを使用した。
・銀コートニッケル粉(形状:球状、平均粒子径:1.5μm、銀コート量:20質量%、福田金属箔粉工業社製)
・銀粉:AgC−103(形状:球状、平均粒子径:1.5μm、福田金属箔粉工業社製)
・銅粉:1200N(形状:球状、平均粒子径:2μm、三井金属鉱業社製)
【0071】
・バインダ樹脂:下記成分を下記配合量で混合して得られた混合物を用いた。
・エポキシ樹脂:EP4100(アデカ社製)100質量部
・コアシェル型ゴム粒子:カネエースMX139(カネカ社製)25質量部
・フェノキシ樹脂:4250(三菱化学社製)20質量部
・溶剤:PGMEA(昭和電工社製)30質量部
・シリカ:アエロジルRY200S(日本アエロジル社製)1質量部
・シランカップリング剤:KBM−403(信越シリコーン社製)1質量部
・硬化剤:サンエイドSI−60L(三新化学社製)2質量部
【0072】
・ビヒクル:EC−100FTP(エチルセルロース樹脂固形分:9%、日新化成社製)
・溶剤:α−テルピネオール
・半田:上述したものを用いた。
【0073】
第1表に示す結果から明らかなように、実施例1〜6は、インターコネクタ接着性に優れていた。また、セル性能も優れていた。なお、第1表には示していないが、実施例1〜6においては、導電性粒子の一部として銀コートニッケル粉を使用しているため、低コスト性にも優れるものである。
一方、半田付けを採用した比較例1では、インターコネクタ接着性が劣っていた。
【符号の説明】
【0074】
1 表面電極
1a フィンガー電極
1b バスバー電極(第1の電極導電層、第2の電極導電層)
2 反射防止膜
3 n層
4 pn接合シリコン基板
5 p層
6 裏面電極
6a 全面電極(アルミニウム電極)
6b 接続部(第1の電極導電層、第2の電極導電層)
7 結晶系シリコン基板
8 インターコネクタ
9 接着導電層
10 太陽電池セル
20 太陽電池モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
25〜100質量%が銀コート金属粉(a)である導電性粒子(A)を含有する第1の電極用導電性組成物を、温度400℃以上で熱処理して形成される第1の電極導電層と、
前記第1の電極導電層上に配置され、バインダ樹脂(B)および導電性粒子(C)を含有する接着用導電性組成物を用いて形成される接着導電層と、
を備える積層体。
【請求項2】
25〜100質量%が銀コート金属粉(a)である導電性粒子(A)およびバインダ樹脂(B)を含有する第2の電極用導電性組成物を、温度150℃以上400℃未満で熱処理して形成される第2の電極導電層と、
前記第2の電極導電層上に配置され、前記バインダ樹脂(B)および導電性粒子(C)を含有する接着用導電性組成物を用いて形成される接着導電層と、
を備える積層体。
【請求項3】
前記銀コート金属粉(a)の平均粒子径が、1.5〜20μmである、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記銀コート金属粉(a)が、ニッケル粉100質量部に対して5〜30質量部の銀コートを有する銀コートニッケル粉である、請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
【請求項5】
前記銀コート金属粉(a)以外の前記導電性粒子(A)が、銀粉である、請求項1〜4のいずれかに記載の積層体。
【請求項6】
前記導電性粒子(C)が、銀粉、ニッケル粉、銅粉、銀コートニッケル粉、および、銀コート銅粉からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれかに記載の積層体。
【請求項7】
前記導電性粒子(C)の平均粒子径が、1.5〜20μmである、請求項1〜6のいずれかに記載の積層体。
【請求項8】
前記バインダ樹脂(B)が、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、および、ポリイミド樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の積層体。
【請求項9】
さらに、前記接着導電層上に配置されるインターコネクタを備える、請求項1〜8のいずれかに記載の積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−74259(P2013−74259A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214424(P2011−214424)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】