説明

積層型コンデンサ及びその製造方法

【課題】 コンデンサ素子間を接続する導電性ペーストの比抵抗による影響を抑えると共に、小さい素子床面積でも素子床面積に占める陰極部の割合が小さくならない積層型コンデンサ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】導体板、導体板を一周する絶縁体である第1の帯、第1の帯と略平行に導体板を一周する絶縁体である第2の帯、第1及び第2の帯に挟まれた領域を覆う絶縁性被膜、絶縁性被膜上に形成された第1の電極層、導体板であって第1及び第2の帯のうち少なくとも一方の外側に形成された第2の電極とを備えるコンデンサ素子を積層してなる積層型コンデンサ。隣接する2つのコンデンサ素子の対向する2つの第1の電極層を直列に接続する導通経路、及び、コンデンサ素子の第1の電極層を並列に接続する導通経路の両方を介して、コンデンサ素子の第1の電極層同士が導通し、第2の電極を互いに並列に接続する導通経路を介して、第2の電極同士が導通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板状アルミニウム箔を用いた薄型アルミ固体電解コンデンサ及びその製造方法に関し、特に、超小型、積層大容量かつ低インピーダンスな薄型アルミ固体電解コンデンサ及びその製造方法に関する。本発明は、電解コンデンサ用アルミニウム箔を用いた積層型の薄型アルミ固体電解コンデンサであって、低インピーダンス特性を有するものの構造及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化・高速化・デジタル化に伴って、コンデンサの分野においても小型、大容量で、かつインピーダンスの高周波特性が優れているコンデンサが強く求められている。
【0003】
高周波領域で使用されるコンデンサは、従来、積層セラミックコンデンサが主体であったが、この種のコンデンサでは、小型・大容量・低インピーダンス化のニーズに応じることが出来なかった。
【0004】
また、大容量のコンデンサとしては、従来のアルミ電解コンデンサや、タンタル固体電解コンデンサなどの電解コンデンサがあるが、これらのコンデンサに用いられてきた電解液、電解質(二酸化マンガン等)の比抵抗値が高く(1Ω・cm〜100Ω・cm)、高周波領域でインピーダンスが十分に低いコンデンサを得ることが困難であった。
【0005】
しかし近年、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子を固体電解質に用いた固体電解コンデンサが開発された。導電性高分子の固体電解質は、従来の二酸化マンガン等の金属酸化物半導体からなる固体電解質と比較して比抵抗値が小さい(0.01Ω・cm〜0.1Ω・cm)。高周波領域でのインピーダンス値Zは、用いた電解質の比抵抗値ρと比例する、即ちZ∝ρである。従って、比抵抗値の小さい導電性高分子を固体電解質とする固体電解コンデンサは、高周波領域でのインピーダンス値を低く抑えることが出来ることとなり、現在では広く用いられている。
【0006】
導電性高分子を固体電解質とするアルミ固体電解コンデンサの一例として、平板型素子構造について説明すると、粗面化(エッチング)した帯状アルミニウム箔の表面に陽極酸化皮膜層を形成し、所定の部分に陽極部と陰極部とを区分するためのエポキシ樹脂等の絶縁性樹脂によるレジスト帯を形成したのち、所定の部分に導電性高分子化合物膜を形成し、該導電性高分子膜上にグラファイト層、銀ペースト層を順次形成して、陰極部を形成する。しかるのち、該素子陰極部と外部陰極端子とを銀ペーストで接続する。レジスト帯で区分された所定の陽極部は、はんだ付けが不可能なアルミニウム箔であるため、はんだ付け可能な金属板を超音波溶着、電気抵抗溶着、レーザー溶接等により、電気的接続を行っている。
【0007】
また、近年では、制限された床面積で大容量、低インピーダンス特性を出すため、導電性高分子化合物を固体電解質とするアルミ固体電解コンデンサ素子を複数個積層し、陰極を導電性ペーストで接着すると共に、陽極端子を貫通させてその部分に導電性ペーストを流して導通を取るものがある(例えば特許文献1を参照)。
【0008】
更に、高周波領域における低インピーダンス化のため、ある大きさの粗面化した平板状アルミニウム基体の両端を陽極とし、中央に電解質、電極を設け、陽極と陰極との間に絶縁層を形成した三端子構造を有するアルミ固体電解コンデンサもある(例えば特許文献2を参照)。
【0009】
【特許文献1】特開2004−158577号公報(第0011〜0021段落、図1)
【特許文献2】特開2004−15706号公報(第0023〜0025段落、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
積層型アルミ固体電解コンデンサでは、単板素子を積み重ねて構成した陽極端子間及び陰極端子間の接合方法によって接触抵抗が生まれ、積層枚数が増えるに従って、接合に用いる導電性ペーストの比抵抗の影響が大きくなる。このため、積層型アルミ固体電解コンデンサの低インピーダンス化は困難だった。
【0011】
また、平板状アルミニウム箔を用いた従来の薄型アルミ固体電解コンデンサでは、素子床面積が小さくなるにつれて、素子床面積に占める陰極部の割合が小さくなるという問題がある。例えば、素子床が幅W×長さL=4.3×7.3(mm)以下であるような積層型アルミ固体電解コンデンサの場合、有効床面積(素子床に陰極部が占める面積)と素子床面積との比、即ち有効床面積/素子床面積は約60%以下となる。更に、床面積が、幅W×長さL=2.8×3.5(mm)の場合や、幅W×長さL=1.6×3.2(mm)の場合、有効床面積/素子床面積は約50%以下となる。このため、従来の構造は小型・大容量の積層型固体電解コンデンサを形成するのには不向きであった。
【0012】
以上のような状況に鑑みて、本発明は、コンデンサ素子間を接続する導電性ペーストの比抵抗による影響を、多層化しても抑えることが可能で、その結果、低インピーダンスを有する積層型コンデンサ及びその製造方法を提供する。
【0013】
同時に、本発明は、小さな素子床面積であっても、素子床面積に占める陰極部の割合が小さくならない構造を有する積層型コンデンサ及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の課題を解決するため、本発明は次のような積層型コンデンサ及びその製造方法を提供する。
【0015】
即ち、複数のコンデンサ素子を積層してなる積層型コンデンサにおいて、導体板と、導体板を一周する絶縁体である第1の帯と、第1の帯と略平行に導体板を一周する絶縁体である第2の帯と、第1及び第2の帯に挟まれた領域を覆う絶縁性被膜と、絶縁性被膜上に形成された第1の電極層と、導体板であって第1及び第2の帯のうち少なくとも一方の外側に形成された第2の電極とを備えるコンデンサ素子を積層してなる積層型コンデンサであって、隣接する2つのコンデンサ素子の対向する2つの第1の電極層を隣接させてなる第1の導通経路、及び、複数のコンデンサ素子の第1の電極層を並列に接続する第2の導通経路の両方を介して、コンデンサ素子の第1の電極層同士が導通し、第2の電極を互いに並列に接続する第3の導通経路を介して、第2の電極同士が導通することを特徴とする積層型コンデンサを提供する。ここで導体板は例えばアルミニウム箔のような金属箔、金属板である。第1及び第2の帯は例えばレジストである。絶縁性被膜は例えばアルミ酸化被膜である。第1、第2及び第3の導通経路は例えば導電性ペーストにて形成される。
【0016】
第3の導通経路は、第2の電極間を溶接してなる金属結合を備えることが望ましい。これにより第2の電極間の抵抗に起因するインピーダンスを下げることが出来る。
【0017】
第2の導通経路は、第1の電極層を覆う導電性ペーストと、導電性ペーストの少なくとも一部を覆う金属体とを備えることが望ましい。特に、金属体は第1及び第2の帯の間で導体板を一周する金属箔であると、インピーダンスを下げる上で効果的である。
【0018】
第1の電極層は最外層に導電性ペースト層を備えることとしてもよいが、導電性ペースト層に代わって、最外層にメッキ層を備えることとすれば、インピーダンス低下に効果的である。
【0019】
コンデンサ素子のそれぞれは、第2の電極の少なくとも一方に、少なくとも片面にメッキを施した金属板を接合してなり、金属板は、メッキを施した面を介して第2の電極に接合されることしてもよい。こうすれば、アルミニウム箔のような半田づけがしにくい導体板を用いる場合であっても、金属板に銅板等の適切な材料を採用することにより、積層型コンデンサに半田付け容易な端子を提供することができる。メッキは金属板の両面に施されることとしてもよい。こうすれば接合作業の際に接合すべき面を選択する必要がなくなり、作業が容易になる。メッキは例えばニッケルメッキや銀メッキがある。
【0020】
メッキを施した金属板を接合する代わりに、コンデンサ素子のそれぞれの第2の電極の少なくとも一方は、金属蒸着膜にて覆われ、金属蒸着膜は更にメッキにて覆われることとしてもよい。メッキを施した金属板を接合する場合には、溶接・溶着の工程が必要となる。この工程と比較すると、金属蒸着膜の上にメッキする工程は量産性に優れる。
【0021】
本発明の積層型コンデンサは、二端子型、三端子型、四端子型のいずれであってもよい。例えば四端子型の場合、第1の電極層に導通する2端子、及び、第2の電極に導通する2端子を備えることが考えられる。
【0022】
また、本発明は、複数のコンデンサ素子を積層してなる積層型コンデンサの製造方法において、絶縁性被膜に覆われた導体板に、導体板を一周する絶縁体である第1の帯と、第1の帯と略平行に導体板を一周する絶縁体である第2の帯とを形成する工程と、第1及び第2の帯の間の絶縁性被膜上に、第1の電極層を形成する工程と、第1及び第2の帯の外側の導体板を覆う絶縁性被膜の少なくとも一部を除去して第2の電極とする工程とを含む方法にて製造したコンデンサ素子を積層する方法であって、隣接する2つのコンデンサ素子の対向する2つの第1の電極層を隣接させてなる第1の導通経路、及び、複数のコンデンサ素子の第1の電極層を並列に接続する第2の導通経路を形成する工程と、第2の電極を互いに並列に接続する第3の導通経路を形成する工程とを含むことを特徴とする積層型コンデンサの製造方法を提供する。
【0023】
第3の導通経路を形成する工程は、第2の電極間を溶接して金属結合を形成する工程を含むことが望ましい。
【0024】
第2の導通経路を形成する工程は、第1の電極層を導電性ペーストにて覆い、当該導電性ペーストの少なくとも一部を金属体にて覆う工程を含むことが望ましい。更に、金属体は第1及び第2の帯の間で導体板を一周する金属箔であることとすれば、インピーダンス低下に効果的である。
【0025】
第1の電極層は最外層に導電性ペースト層を備えることとしてもよいし、メッキ層を備えることとしてもよい。
【0026】
金属板の少なくとも片面にメッキを施す工程と、金属板を、メッキを施した面を介して第2の電極に接合する工程とを更に含む方法にて製造したコンデンサ素子を積層することとしてもよい。このとき、メッキは金属板の両面に施されることとしてもよい。メッキは例えばニッケルメッキや銀メッキが考えられる。
【0027】
或いは、コンデンサ素子のそれぞれの第2の電極の少なくとも一方を、金属蒸着膜にて覆う工程と、金属蒸着膜を更にメッキにて覆う工程とを更に含む方法にて製造したコンデンサ素子を積層することとしてもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、小型、大容量、低インピーダンスで良好な高周波特性を有するの積層型コンデンサ及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の実施の形態である積層型コンデンサの製造方法について図面を参照して説明する。尚、図中の金属箔、レジスト帯等の長さの比は、構造を説明する都合上、実際の比とは必ずしも一致していない。
【0030】
図1を参照してコンデンサ素子の製造方法について説明する。
【0031】
アルミニウム箔等の金属箔(或いは金属板)を粗面化し、金属箔表面に酸化皮膜等の絶縁皮膜を形成して化成箔を生成して、化成箔を所定の形状に打ち抜く(図1A)。
【0032】
次に、打ち抜いた化成箔1の表面に絶縁樹脂を用いてレジスト帯2、3を形成し、陽極部と陰極部とに区分する(図1B)。絶縁樹脂としては例えばエポキシ樹脂を用いる。図示した例では、化成箔を両端部(陽極部)及び中央部(陰極部)の三箇所に区分するようにレジスト帯を形成している。
【0033】
次に、陰極部に電極層4を形成する(図1C)。陰極電極層4は、例えば固体電解質となる導電性高分子層、グラファイト層、導電性ペースト層を順次積層して形成する。
【0034】
次に、化成箔1の両端部から研磨等により絶縁皮膜を除去し、電極5、6を形成する(図1D)。図1Dでは、レジスト帯から突出している端部のおよそ半分の位置から絶縁皮膜を除去しているが、端部の全てから絶縁皮膜を除去してもよい。
【0035】
最後に、端部を含むコンデンサ素子全体が直方体となるように端部を導電性ペースト7、8で覆う(図1E)。このとき電極5、6の端部は露出させる。
【0036】
続いて、図2を参照し、上述のコンデンサ素子を積層して積層型コンデンサを形成する工程を説明する。
【0037】
まず、陰極部に形成した電極層に導電性ペーストを塗布して、コンデンサ素子同士を積層する(図2A)。これにより、2つのコンデンサ素子の間における陰極電極層間の電気的な接続経路が確立される。このとき、これらコンデンサ素子の両端部同士の間では、図1Eのステップで塗布した導電性ペーストを介して互いに電気的な接続経路が確立される。
【0038】
次に、図中正面に露出している陰極電極層に、積層したコンデンサ素子全ての陰極電極層に接触するようにして、金属箔9を貼り付ける(図2B)。図中では正面にのみ金属箔9が図示されているが、背面にも同様に金属箔を貼り付けてもよい。尚、本図ではレジスト帯2及び3の間の一部領域のみを金属箔9で覆ったが、図中正面、背面、上面、下面におけるレジスト帯2及び3の間の領域に金属箔を巻きつけるようにして覆うこととしてもよい。
【0039】
次に、必要に応じて、図中左右側面に露出している3つの電極5に対して溶接・溶着を行うことにより、金属接合10を形成することとしてもよい(図2C)。金属接合10を形成する溶接・溶着方法としては例えばレーザー溶接、超音波溶着、電気抵抗溶着等がある。また、金属接合10を形成する際、はんだ付け可能な金属を溶接・溶着すれば、積層型コンデンサにはんだ付け可能な陽極端子を付与することができる。図中では右側の側面の金属接合10のみが図示されているが、対向する側面にも同様に金属接合を形成してもよい。
【0040】
最後に、積層型コンデンサの端子を設ける。少なくとも金属箔9及び金属結合10にそれぞれひとつずつの端子を設けることによりコンデンサとして機能するが、他の構造として、図中両側面に形成した金属接合のそれぞれに端子を設けると共に、金属箔9に一端子を設ける3端子構造としてもよい。或いは、図3(A)及び(B)に示すような4端子構造としてもよい。4端子構造にしたとき最も効果的な低インピーダンス特性が得られることが発明者らによって確かめられている。このため、後述する実施例の積層型コンデンサのインピーダンス測定は、4端子構造のものに対して行っている。尚、4端子構造コンデンサのインピーダンス測定は、通常の2端子構造のコンデンサで用いるインピーダンス測定法を適用することができないので、4端子デバイスに対して一般的に使用されているSパラメータを測定した後、インピーダンスに変換して特性比較を行った。
【実施例1】
【0041】
実施例1の積層型コンデンサについて説明する。まず積層型コンデンサを構成するコンデンサ素子20について図4を参照して説明する。コンデンサ素子20は、粗面化したアルミニウム箔21、アルミニウム箔21の両端部以外を覆う酸化アルミ被膜層22、酸化アルミ被膜層22の上に形成され、アルミニウム箔21の表面を陽極部と陰極部とに区分する絶縁性樹脂によるレジスト帯23、レジスト帯23の間の酸化アルミ被膜層22上に順次形成される導電性高分子層24、グラファイト層25、陰極側銀ペースト層26からなる。
【0042】
コンデンサ素子20の製造工程は次の通りである。全体を酸化アルミ被膜層22に覆われたアルミニウム箔21を用意する。その両面を横断する帯状の陰極部と、その両端部に陽極部を形成するようにレジスト帯23を形成する。陰極部に導電性高分子層24、グラファイト層25、陰極側銀ペースト層26を形成する。そして、陽極部から酸化アルミ被膜層22を研磨等により除去する。
【0043】
図5に示すように、コンデンサ素子20を3つ積層したのが積層型コンデンサ27である。コンデンサ素子20同士の間の陰極側銀ペースト層26a、26b、26c、及び26dは、積層後に加熱硬化させることにより隣接するコンデンサ素子の陰極側導電性ペースト層同士が一体化されたものであり、隣接するコンデンサ素子20の陰極部同士を互いに電気的に接続する役割を果たす。これにより、隣接するコンデンサ素子20同士の間において、対向する銀ペースト層同士の間に導通経路が形成される。また、積層型コンデンサ27の側面において、コンデンサ素子20の陰極同士を並列に接続する導通経路が、一体化した銀ペースト層により形成される。後者の導通経路は図2の金属箔9に相当する導通経路となる。
【0044】
更に、レジスト帯23から外側に突出しているアルミニウム箔21の端部は、陽極側導電性ペースト層28で覆われている。陽極側導電性ペースト層28も加熱硬化され、これにより複数のコンデンサ素子の陽極部が一体化される。また、陽極側導電性ペースト層28は3枚のアルミニウム箔21を互いに電気的に接続する。
【0045】
最後に、実装時のハンドリングを可能とするため、積層型コンデンサ27に外装を施すと共に、実装端子を取り付けて製品となる。
【実施例2】
【0046】
実施例2の積層型コンデンサ30について説明する。積層型コンデンサ30を構成するコンデンサ素子20なので説明を省略する。
【0047】
個々のコンデンサ素子20の陽極端子部、即ちアルミニウム箔21の両端部から、酸化アルミ被膜層22を研磨により除去した後、銅ペースト31を塗布する。
【0048】
コンデンサ素子20の陰極部最外層である陰極側銀ペースト層26の上に銀ペーストを塗布し、他のコンデンサ素子20の陰極側銀ペースト層26と向きを揃えて重ねた後、ペーストを加熱硬化させて一体化させる。これを繰り返して、5個のコンデンサ素子20を積層させる。
【0049】
積層したコンデンサ素子のレジスト帯23に挟まれた中央部、即ち積層型コンデンサ陰極部の両側面、及び、陽極部側面に銀ペーストを塗布した後、銀ペーストを加熱硬化させる。
【0050】
次に、図6に示すように、積層型コンデンサ陰極部の両側面に、銀ペーストを塗布し、銅箔片32を貼り付ける。これにより、コンデンサ素子個々の陰極は、非常に低い抵抗を有する銅箔片32によって最短距離で電気的に互いに接続されることになる。
【0051】
次に、陽極端子部をレーザー溶接により一体化させる。図6及び図7に示すように、このとき、積層前に陽極端子部に塗布しておいた銅ペースト層31が、アルミニウム箔21と共に溶融し、金属接合33を形成する。このため、アルミニウム箔21のみをレーザー溶接する場合と比較して接続抵抗を下げることができる。
【0052】
最後に、実装時のハンドリングを可能とするために外装を施すと共に、実装端子を取り付けて製品となる。
【実施例3】
【0053】
実施例3の積層型コンデンサ40について説明する。前述の積層型コンデンサ30と比較すると、積層型コンデンサ40は、銅箔片32の代わりに銅箔帯41を用いている点で異なる。コンデンサ素子20は実施例1及び2と同様である。
【0054】
実施例2では、積層型コンデンサ陰極部の両側面に銀ペーストを塗布して銅箔片32を貼り付けた。これに対して、本実施例では、図8に示すように、積層型コンデンサ陰極部の周囲に帯状に銀ペーストを塗布し、その上に帯状の銅箔帯41を貼付する。本実施例では銅箔帯41の厚さは10μmとするが、積層するコンデンサ素子20の数に応じて、銅箔を厚くすることが望ましい。
【実施例4】
【0055】
実施例4の積層型コンデンサは、実施例3の積層型コンデンサ40において、陰極側面に塗布した銀ペーストを銅ペーストに置き換えたものである。ここで、銅ペーストは硬化後の抵抗率が1mΩ・cm以下となるものを用いている。一般に、銅ペーストは銀ペーストに比べて低価格であるため、製造コストの面で有利である。
【実施例5】
【0056】
実施例5では、図9に示すコンデンサ素子50を積層して積層型コンデンサを構成する。図4のコンデンサ素子20と比較すると、コンデンサ素子50は、グラファイト層25を形成後、導電性ペースト層26を形成する代わりに、銅メッキを行って銅メッキ層51を形成する点が異なる。
【0057】
このようなコンデンサ素子50を、実施例3のように積層して陰極部周辺を銅箔帯41で覆う。
【0058】
本実施例の積層型コンデンサでは、陰極部における銀ペーストを銅メッキに置き換えたことにより、陰極部の比抵抗が1/10以下に低下し、インピーダンスを更に下げることができる。
【実施例6】
【0059】
本実施例では、図10に示すコンデンサ素子60を積層して積層型コンデンサを構成する。コンデンサ素子60は図4のコンデンサ素子20に近いが、酸化被膜層22を除去したアルミニウム箔21の両端部に、片面にニッケルメッキ61を施した銅板62を抵抗溶接にて溶接してある点で異なる。ニッケルメッキ61を介して溶接することにより、アルミニウム箔21との良好な溶接状態が実現し、溶接部の信頼性が向上する。尚、銅板62の溶接手段は、超音波溶接、電気抵抗溶着、レーザー溶接等であってもよい。
【0060】
本実施例では、このようなコンデンサ素子50を積層した後、実施例3と同様に陰極部周辺を銅箔帯41で覆う。そして図11に示すように、陽極部である銅板62を導電性ペースト63で覆い、レーザー溶接等により溶接して金属結合64を形成する。
【実施例7】
【0061】
実施例6では、片面にニッケルメッキ61を施した銅板62をアルミニウム箔21に溶接した。これに対し、本実施例のコンデンサ素子70では、銅板71の両面にニッケルメッキ72を施したものをアルミニウム箔21に溶接している。実施例6ではメッキが片面のため、溶接作業を行う際に銅板62の向きを確認する必要があるが、本実施例では両面にメッキを施してあるため、確認する必要がない。このため、溶接作業を容易にすることができる。
【実施例8】
【0062】
実施例6及び7では、ニッケルメッキを片面乃至両面に施した銅板をアルミニウム箔21に溶接した。これに対し、実施例8では、銀メッキを片面又は両面に施した銅板をアルミニウム箔21に溶接する。即ち、片面であれば図10のコンデンサ素子60においてニッケルメッキ61を銀メッキに置き換えたものとなり、両面であれば図12のコンデンサ素子70においてニッケルめっき72を銀メッキに置き換えたものとなる。
【0063】
実施例6及び7でニッケルメッキを介してアルミニウム箔21と溶接したことにより溶接性が向上したが、これと同様に、本実施例では銀メッキを介してアルミニウム箔21と溶接するので、溶接性が向上する。また、両面に銀メッキを施す場合は、実施例7と同様に作業が容易になる。
【0064】
更に、陽極部の端部に着目すると、銀メッキ部が陽極部最外面に露出することになる。このため、実装の段階において、近年開発された半田代替の銀ペーストを用いて容易に実装が可能となる。
【実施例9】
【0065】
実施例6、7及び8では、ニッケル又は銀メッキを施した銅板を陽極部の端部に溶接した。これに対して、実施例9のコンデンサ素子80では、図13に示すように陽極部の端部に白金蒸着膜81を形成した後、この上に銅メッキ82を施す。
【0066】
コンデンサ素子80を実施例3と同様に積層して陰極部を含むコンデンサ素子80の中央部に銅箔帯41を巻きつけ、図14のように陽極部を導電性ペースト83で覆い、レーザー溶接等により金属結合84を形成する。
【0067】
実施例6乃至8では陽極部に銅板を溶接したのに対し、本実施例では、陽極部に対して蒸着とメッキを行う。このため、前者の実施例と比較して量産性に優れるという利点がある。また、銅板溶接を行わないため、接続信頼性が高いという利点がある。
【実施例10】
【0068】
図15を参照すると、本実施例のコンデンサ素子90は、実施例5のように、陰極部に銅メッキ層51を設けた陰極部を有すると共に、実施例6のように片面ニッケルメッキ61を施した銅板62を陽極部に溶接した構造を有する。
【0069】
上述した実施例2〜10のインピーダンス周波数特性を図16に示す。実施例2では、個々のコンデンサ素子の陰極部間を導電性ペーストを介して接続した。これに対して、実施例3、4では、この導電性ペースト上に帯状の金属箔帯を貼付することにより、個々のコンデンサ素子の陰極部間における抵抗を下げた。実施例6−9では、陽極部にメッキや蒸着等を施すことにより抵抗を下げた。実施例5では、実施例3の陰極部における銀ペーストを銅メッキに置換したことにより、陰極部の比抵抗が1/10以下に低下したため、インピーダンスが更に低下している。実施例10では、実施例5と同様に陰極部の導電性ペーストをメッキに置換すると共に、実施例6と同様に陽極部にメッキ、蒸着等を施すことにより、全体のインピーダンスが更に低下した。
【0070】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、当業者の通常の知識の範囲内でその変更や改良が可能であることは勿論である。
【0071】
例えば、上述の実施例では、5つのコンデンサ素子を積層した積層型コンデンサを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、より少ない或いはより多いコンデンサ素子を積層してもよいことは、当業者には自明であろう。
【0072】
また、実施例10は実施例5と実施例6の組み合わせであるが、実施例5を実施例7乃至9のいずれとも組み合わせることができることは、当業者には容易に理解できるであろう。
【0073】
また、上述の説明では積層型コンデンサは四端子構造を有するものとして説明したが、本発明はこれに限らず、二端子構造、三端子構造の積層型コンデンサであっても適用可能であることは、当業者には明らかだろう。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施の形態である積層型コンデンサを構成するコンデンサ素子の製造方法を説明するための図である。
【図2】図1のコンデンサ素子を積層して積層型コンデンサを製造する過程を説明するための図である。
【図3】本発明の積層型コンデンサを用いた4端子コンデンサに設ける端子について説明するための図である。
【図4】本発明の実施例1の積層型コンデンサ27を構成するコンデンサ素子の一例であるコンデンサ素子20の断面図である。
【図5】積層型コンデンサ27の断面図である。
【図6】実施例2の積層型コンデンサ30の斜視図である。
【図7】実施例2の積層型コンデンサ30の断面図である。
【図8】実施例3の積層型コンデンサ40の斜視図である。
【図9】実施例5のコンデンサ素子50の断面図である。
【図10】実施例6のコンデンサ素子60の断面図である。
【図11】実施例6の積層型コンデンサの断面図である。
【図12】実施例7のコンデンサ素子70の断面図である。
【図13】実施例9のコンデンサ素子80の断面図である。
【図14】実施例9のコンデンサ素子80を積層した積層型コンデンサの断面図である。
【図15】実施例10のコンデンサ素子90の断面図である。
【図16】実施例2〜10のインピーダンス周波数特性を説明するためのグラフである。
【符号の説明】
【0075】
1 化成箔
2、3 レジスト帯
4 電極層
5、6 電極
7、8 導電性ペースト
9 金属箔
10、33、64 金属結合
20、50、60、70、80、90 コンデンサ素子
21 アルミニウム箔
22 酸化アルミ被膜層
23 レジスト帯
24 導電性高分子層
25 グラファイト層
26、26a、26b、26c 陰極側導電性ペースト層
27、30、40 積層型コンデンサ
28、63、83 陽極側導電性ペースト層
31 銅ペースト
32 銅箔片
41 銅箔帯
51 銅メッキ層
61、72 ニッケルメッキ
62、71 銅板
81 白金蒸着膜
82 銅メッキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンデンサ素子を積層してなる積層型コンデンサにおいて、
導体板と、前記導体板を一周する絶縁体である第1の帯と、前記第1の帯と略平行に前記導体板を一周する絶縁体である第2の帯と、前記第1及び第2の帯に挟まれた領域を覆う絶縁性被膜と、前記絶縁性被膜上に形成された第1の電極層と、前記導体板であって前記第1及び第2の帯のうち少なくとも一方の外側に形成された第2の電極とを備えるコンデンサ素子を積層してなる積層型コンデンサであって、
隣接する2つの前記コンデンサ素子の対向する2つの前記第1の電極層を隣接させてなる第1の導通経路、及び、複数の前記コンデンサ素子の前記第1の電極層を並列に接続する第2の導通経路の両方を介して、前記コンデンサ素子の第1の電極層同士が導通し、
前記第2の電極を互いに並列に接続する第3の導通経路を介して、前記第2の電極同士が導通する
ことを特徴とする積層型コンデンサ。
【請求項2】
請求項1に記載の積層型コンデンサにおいて、前記第3の導通経路は、前記第2の電極間を溶接してなる金属結合を備えることを特徴とする積層型コンデンサ。
【請求項3】
請求項1に記載の積層型コンデンサにおいて、前記第2の導通経路は、前記第1の電極層を覆う導電性ペーストと、前記導電性ペーストの少なくとも一部を覆う金属体とを備えることを特徴とする積層型コンデンサ。
【請求項4】
請求項3に記載の積層型コンデンサにおいて、前記金属体は前記第1及び第2の帯の間で前記導体板を一周する金属箔であることを特徴とする積層型コンデンサ。
【請求項5】
請求項1に記載の積層型コンデンサにおいて、前記第1の電極層は最外層に導電性ペースト層を備えることを特徴とする積層型コンデンサ。
【請求項6】
請求項1に記載の積層型コンデンサにおいて、前記第1の電極層は最外層にメッキ層を備えることを特徴とする積層型コンデンサ。
【請求項7】
請求項1に記載の積層型コンデンサにおいて、
前記コンデンサ素子のそれぞれは、前記第2の電極の少なくとも一方に、少なくとも片面にメッキを施した金属板を接合してなり、
前記金属板は、メッキを施した面を介して前記第2の電極に接合されることを特徴とする積層型コンデンサ。
【請求項8】
請求項7に記載の積層型コンデンサにおいて、前記メッキは前記金属板の両面に施されることを特徴とする積層型コンデンサ。
【請求項9】
請求項7に記載の積層型コンデンサにおいて、前記メッキはニッケルメッキであることを特徴とする積層型コンデンサ。
【請求項10】
請求項7に記載の積層型コンデンサにおいて、前記メッキは銀メッキであることを特徴とする積層型コンデンサ。
【請求項11】
請求項1に記載の積層型コンデンサにおいて、前記コンデンサ素子のそれぞれの前記第2の電極の少なくとも一方は、金属蒸着膜にて覆われ、前記金属蒸着膜は更にメッキにて覆われることを特徴とする積層型コンデンサ。
【請求項12】
請求項1に記載の積層型コンデンサにおいて、前記第1の電極層に導通する2端子、及び、前記第2の電極に導通する2端子を備えることを特徴とする積層型コンデンサ。
【請求項13】
複数のコンデンサ素子を積層してなる積層型コンデンサの製造方法において、
絶縁性被膜に覆われた導体板に、前記導体板を一周する絶縁体である第1の帯と、前記第1の帯と略平行に前記導体板を一周する絶縁体である第2の帯とを形成する工程と、
前記第1及び第2の帯の間の前記絶縁性被膜上に、第1の電極層を形成する工程と、
前記第1及び第2の帯の外側の前記導体板を覆う前記絶縁性被膜の少なくとも一部を除去して第2の電極とする工程と
を含む方法にて製造したコンデンサ素子を積層する方法であって、
隣接する2つの前記コンデンサ素子の対向する2つの前記第1の電極層を隣接させてなる第1の導通経路、及び、複数のコンデンサ素子の第1の電極層を並列に接続する第2の導通経路を形成する工程と、
前記第2の電極を互いに並列に接続する第3の導通経路を形成する工程と
を含むことを特徴とする積層型コンデンサの製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の積層型コンデンサの製造方法において、前記第3の導通経路を形成する工程は、前記第2の電極間を溶接して金属結合を形成する工程を含むことを特徴とする積層型コンデンサの製造方法。
【請求項15】
請求項13に記載の積層型コンデンサの製造方法において、前記第2の導通経路を形成する工程は、前記第1の電極層を導電性ペーストにて覆い、当該導電性ペーストの少なくとも一部を金属体にて覆う工程を含むことを特徴とする積層型コンデンサの製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の積層型コンデンサの製造方法において、前記金属体は前記第1及び第2の帯の間で前記導体板を一周する金属箔であることを特徴とする積層型コンデンサの製造方法。
【請求項17】
請求項13に記載の積層型コンデンサの製造方法において、前記第1の電極層は最外層に導電性ペースト層を備えることを特徴とする積層型コンデンサの製造方法。
【請求項18】
請求項13に記載の積層型コンデンサの製造方法において、前記第1の電極層は最外層にメッキ層を備えることを特徴とする積層型コンデンサの製造方法。
【請求項19】
請求項13に記載の積層型コンデンサの製造方法において、
金属板の少なくとも片面にメッキを施す工程と、
前記金属板を、メッキを施した面を介して前記第2の電極に接合する工程と
を更に含む方法にて製造したコンデンサ素子を積層する
ことを特徴とする積層型コンデンサの製造方法。
【請求項20】
請求項19に記載の積層型コンデンサの製造方法において、前記メッキは前記金属板の両面に施されることを特徴とする積層型コンデンサの製造方法。
【請求項21】
請求項19に記載の積層型コンデンサの製造方法において、前記メッキはニッケルメッキであることを特徴とする積層型コンデンサの製造方法。
【請求項22】
請求項19に記載の積層型コンデンサの製造方法において、前記メッキは銀メッキであることを特徴とする積層型コンデンサの製造方法。
【請求項23】
請求項13に記載の積層型コンデンサの製造方法において、前記コンデンサ素子のそれぞれの前記第2の電極の少なくとも一方を、金属蒸着膜にて覆う工程と、
前記金属蒸着膜を更にメッキにて覆う工程と
を更に含む方法にて製造したコンデンサ素子を積層する
ことを特徴とする積層型コンデンサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−324555(P2006−324555A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−147708(P2005−147708)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【出願人】(302005190)NECトーキン富山株式会社 (23)