説明

穴打抜き金型

【要 約】
【課 題】一端が開口された中空形状のワークWに打抜き穴を形成する際、打抜き穴周辺部に生じ易い「だれ」変形を小さくすることができ、高精度な打抜き穴を形成することができる穴打抜き金型を提供する。
【解決手段】ダイ金型は、一方が打抜き穴を形成する逃げ貫通部(4)を有しワーク長手方向への移動が規制される固定ダイ金型(1A)、他方がワーク長手方向の待機位置から所定位置までの間をスライド可能なスライドダイ金型(1B)とされ、それぞれの先端部側のワーク中心寄りに、ワーク長手方向に対して同じ角度に傾けられたスライド可能な傾斜平面(5、6)を有し、該傾斜平面(5、6)を介して互いに接触可能なように打抜き方向に並べて配設されてなり、スライドダイ金型(1B)を前記所定位置にまでスライド移動させた状態で逃げ貫通部(4)の周辺部および逃げ凹部(4)と反対側の一部が、打抜き穴を形成するワーク(W)の内面と密着するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一端が開口された中空形状のワークに高精度な打抜き穴を形成することができる穴打抜き金型に関する。
【背景技術】
【0002】
一端が開口された中空形状の部品の一例として、自動車ステアリング用のアッパーシャフト(以下、アウターシャフト10と称す)が挙げられる。
アウターシャフト10(ワークW)は、図4に示したように、ワーク長手方向の一端部WLに内径スプライン部を、反対側の他端部WRに雄セレーション部を、長手方向中央部WMにキーロック穴11を有する。この雄セレーション部には、図示しないステアリングホイールが連結され、キーロック穴11にはハンドルロック用キーが取付けされる。キーロック穴11が形成される長手方向中央部WMの内径は、一端部WLおよび他端部WRよりも大きい。
【0003】
このようなアウターシャフトを得るには、特許文献1の場合、図8に示されるように、円筒状の素材25を用い、長手方向中央部WMには縮径加工を施さず、中間素材を経て製造している。すなわち特許文献1の場合には、先ずワーク長手方向の他端部WR側にプレス押し込み加工あるいはロータリースエージング加工等の縮径加工を施し、縮径部の内径が最終形状の雄セレーション部30よりも大きい第1中間素材26を得る。次いで、ワーク長手方向の一端部WL側に同様な縮径加工を施し、縮径部の内径が最終形状の内径スプライン部(特許文献1では雌セレーション部という)29と一致する第2中間素材27を得、この第2中間素材27の一端部WL内に内径スプライン部29を形成して第3中間素材28とする。この一端部WL内に内径スプライン部29を形成された第3中間素材28の他端部WR側に再度、縮径加工を施して雄セレーション部30や雄ねじ部31を形成し、アウターシャフト10を得ている。
【0004】
また、特許文献1に記載の場合、第3中間素材28の長手方向中央部WMにキーロック穴11を削り加工等で形成するとしている。
このように一端が開口された中空形状のワークWに対し、高精度なキーロック穴11を削り加工で形成すると、時間がかかり、コストと製造効率の点で難がある。
一方、一端が開口された中空形状のワークWに対し、打抜き穴などを形成する際、打抜き部のバリ除去加工を不要としたプレス金型およびその金型によるプレス加工方法が提案されている(特許文献2)。
【0005】
特許文献2のプレス金型は、図6(a)、(b)に示したように、ワークWに対して打抜き部を形成する逃げ凹部9aを有する型形成金型9(下部金型)と、型形成金型9に配設されたワークWを上方から支持するワーク支持金型(上部金型)と、逃げ凹部9aに対応し、ワークWの内部に配設されるピン7と、該ピン7をワークWの内部から外部に移動させ、逃げ凹部9aと合致させるスライド可能なスライド金型8とを備える。
【特許文献1】特開平11−247835号公報
【特許文献2】特開平6−39455号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2のプレス金型は、ワークWに対して一端から離れた部分に打抜き部を形成しようとすると、打抜き部を形成するピンを介してスライド金型8に大きな曲げモーメントが作用する。したがって、図4に示したようなワークWの長手方向中央部WMにキーロック穴11を形成するには難がある。
また、従来の穴打抜き金型を用いた場合、図4に示したようなワークWの長手方向中央部WMに高精度な打抜き穴を形成することが難しいという課題があった。この従来の穴打抜き金型の課題を以下に説明する。
【0007】
従来の穴打抜き金型は、図7(a)、(b)、(c)に示したように、打抜き穴を形成する逃げ貫通部4を有する一体のロッド状のダイ金型1(ダイスともいう)と、逃げ貫通部4に対応してワークWの外部に配置される打抜き方向へ移動可能なパンチ2と、ワークWの外周面と接触してワークWを支持するワーク支持金型3とからなる。前記したダイ金型1は、ワーク長手方向への移動が規制されており、ワーク支持金型3の上方に固定保持されている。
【0008】
そして、打抜き穴の形成時、固定保持されているダイ金型1に向かってワークWが、一端部WL側から挿入され、ストッパ23に当接し、長手方向中央部の打抜き穴形成箇所が逃げ貫通部4と合致するように位置決めされる(図7(a)、(b)参照)。このワークWの長手方向中央部の内径は一端部WLの内径よりも大きいために、一体のダイ金型外面とワーク内面間のギャップgが、許容すき間を超える(図7(b)、(c)参照)。このギャップgは、穴許容すき間に、ワークWの長手方向中央部の内径と一端部WLの内径との差の半分を加えた値である。
【0009】
したがって、従来の穴打抜き金型では、一端が開口された中空形状のワークWに打抜き穴を形成する際、打抜き穴周辺部に大きな「だれ」変形が生じてしまい、高精度な打抜き穴を形成することが難しくなるという課題があった。
本発明は、上記従来技術の問題点を解消し、一端が開口された中空形状のワークWに打抜き穴を形成する際、打抜き穴周辺部に生じ易い「だれ」変形を小さくすることができ、高精度な打抜き穴を形成することができる穴打抜き金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、穴打抜き金型について鋭意検討した結果、一体のダイ金型に代え、2分割構造のダイ金型とすれば上記課題を解決できることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
すなわち本発明は、以下のとおりである。
1.打抜き穴を形成する逃げ貫通部を有しワークの内部に配設される2分割構造のダイ金型と、前記逃げ貫通部に対応してワークの外部に配置される打抜き方向へ移動可能なパンチと、前記ワークをその外周面から支持するワーク支持金型とを備え、前記ワークに打抜き穴を形成するための穴打抜き金型であって、
前記ダイ金型は、一方が打抜き穴を形成する逃げ貫通部を有しワーク長手方向への移動が規制される固定ダイ金型、他方がワーク長手方向の待機位置から所定位置までの間をスライド可能なスライドダイ金型とされ、それぞれの先端部側のワーク中心寄りに、ワーク長手方向に対して同じ角度に傾けられたスライド可能な傾斜平面を有し、該傾斜平面を介して互いに接触可能なように打抜き方向に並べて配設されてなり、前記スライドダイ金型を前記所定位置にまでスライド移動させた状態で前記逃げ貫通部の周辺部および前記逃げ貫通部と反対側の一部が、前記打抜き穴を形成するワークの内面と密着するように形成されていることを特徴とする穴打抜き金型。
2.前記スライドダイ金型の支持部側に、ダイ金型間の間隔が広くなることを防止する付勢手段が具備されていることを特徴とする上記1.に記載の穴打抜き金型。
3.前記ダイ金型の先端側に、ワーク長手方向に直角な断面が凸形状とされた凸部と、該凸部が嵌まり込むように凹形状とされた凹部とからなるガイド手段が具備されていることを特徴とする上記1.または2.に記載の穴打抜き金型。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、一端が開口された中空形状のワークWに打抜き穴を形成する際、打抜き穴周辺部に生じ易い「だれ」変形を小さくすることができ、高精度な打抜き穴を形成することができる。したがって、打抜き穴周辺のバリ除去加工を不要とすることができ、コストと製造効率の点で有利である。また、本発明によれば、一端が開口された中空形状のワーク長手方向の一端部、長手方向中央部、それよりも奥の他端部にも高精度に打抜き穴を形成することができ、本発明の穴打抜き金型は特にアウターシャフトに用いて好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明例の穴打抜き金型について説明する。
図1(a)、(b)、(c)は、本発明例の穴打抜き金型の構成およびその使用手順を示す一部断面側面図であり、図2は、図1(c)のX−X断面図である。また図3は、2分割構造のダイ金型1A、1Bの作用を説明する側面図である。
本発明例の穴打抜き金型は、図1(a)〜(c)に示したように、打抜き穴を形成する逃げ貫通部4を有しワークの内部に配設される2分割構造のダイ金型1A、1Bと、逃げ貫通部4に対応してワークWの外部に配設される打抜き方向に可動なパンチ2と、ワークWをその外周面から支持するワーク支持金型3とを備え、ワークWの長手方向中央部に打抜き穴を形成するようにしている。
【0013】
ワークWは、図1(a)、(b)中の矢印で示したように、右方向から供給され、ストッパ23に当接することで、打抜き穴を形成する箇所が逃げ貫通部4と合致するように位置決めされる。パンチ2およびワーク支持金型3は従来例の穴打抜き金型と同様な構成である。
2分割構造のダイ金型1A、1Bの先端部側は、図1(c)に示したように、打抜き穴の形成時、ワークWの長手方向中央部内に配設され、先端部側よりも細く形成された支持部側はワークWの一端部WL内からワーク外にわたり配設される。図1、図2中、逃げ貫通部4を有し上側(打抜き穴に近い側)に配設される方が、固定ダイ金型1Aであり、逃げ貫通部4を設けず固定ダイ金型1Aの下側に配設される方がスライドダイ金型1Bである。すなわち、逃げ貫通部4を有する固定ダイ金型1Aは、ワーク長手方向への移動が規制され、支持部側よりも太く形成された先端部側の逃げ貫通部4が、パンチ2に対応してワーク支持金型3の上方に来るように固定保持されている。一方、固定ダイ金型1Aの下側に配設されるスライドダイ金型1Bは、支持部側よりも太く形成された先端部側が、ワーク長手方向の待機位置からワーク長手方向の所定位置にまでスライド移動可能となっている。このスライドダイ金型1Bの支持部側には、ダイ金型間の間隔が広くなるのを防止するための付勢手段22が具備されている。なお、打抜き方向に平行な方向を上下方向、打抜き方向に直角な2軸方向をそれぞれ、長手方向および幅方向とする。
【0014】
スライドダイ金型1Bの待機位置とは、図1(a)、(b)に示したように、スライドダイ金型1Bの先端が固定ダイ金型1Aの段差部5Aよりも少し後方に位置しているときであり、スライドダイ金型1Bの所定位置とは、図1(c)に示したように、スライドダイ金型1Bの先端が固定ダイ金型1Aの先端近くに位置しているときである。
また、2分割構造のダイ金型1A、1Bは、それぞれの先端部側のワーク中心寄りに、ワーク長手方向に対して同じ角度に傾けられたスライド可能な傾斜平面5、6を有する(図1、図2参照)。
【0015】
すなわち、本発明例の2分割構造のダイ金型は、一方が逃げ貫通部4を有しワーク長手方向への移動が規制される固定ダイ金型1A、他方がワーク長手方向の待機位置から所定位置までの間をスライド可能なスライドダイ金型1Bとされ、それぞれの先端部側のワーク中心寄りに、ワーク長手方向に対して同じ角度に傾けられたスライド可能な傾斜平面5、6を有し、傾斜平面5、6を介して互いに接触可能に打抜き方向に並べて配設されてなることが特徴である。
【0016】
次いで、本発明例の2分割構造のダイ金型1A、1Bの作用について、図3を用い、説明する。図3中の(イ)で示したスライドダイ金型1Bの位置が、待機位置に相当し、図3中の(ハ)で示したスライドダイ金型1Bの位置が、所定位置の近くに相当する。スライドダイ金型1Bは、図3中の(ロ)で示したように、固定ダイ金型1Aとスライド可能な傾斜平面5、6で接触させつつ、前進移動(図3で右方向への移動を前進移動という)させることにより、固定ダイ金型1Aの上端からスライドダイ金型1Bの下端までの距離(ダイ金型高さという)を可変にできる。このダイ金型高さの可変量は、傾斜平面5、6のワーク長手方向距離と傾き角度θに応じて決まる。
【0017】
本発明はこの原理を利用している。すなわち、スライドダイ金型1Bを所定位置にスライド移動させた状態では、上下方向のダイ金型高さが高くなるため、逃げ貫通部4の周辺部および逃げ貫通部4と反対側の一部が、打抜き穴を形成するワークWの内面と密着する(図1(c)、図2参照)ようにダイ金型1A、1Bを形成できる。
つまり、図2に示したように、固定ダイ金型1Aの外周面上の点PQの範囲およびスライドダイ金型1Bの外周面上の点RSの範囲が、打抜き穴を形成するワークWの長手方向中央部の内面と合致する形状とされている。
【0018】
一方スライドダイ金型1Bを待機位置にスライド移動させた状態では、上下方向のダイ金型高さが低くなるため、ワークWの長手方向中央部に比べて内径が小さい一端部WLの内周面と、ダイ金型の外周面とが非接触状態となる(図1(a)参照)。
また、図2に示したように、固定ダイ金型1Aの外周面には、点P、点Qよりも下側寄りに逃がしが形成され、同様にスライドダイ金型1Bの外周面にも、点R、点Sよりも上側寄りに逃がしが形成されている。この逃がしによって、スライドダイ金型1Bを待機位置にスライド移動させた状態で、ワーク長手方向に直角なダイ金型の幅方向に対し、ワークWの一端部WLの内周面と、ダイ金型の外周面とが非接触状態となる。
【0019】
以上説明した本発明例の2分割構造のダイ金型によれば、スライドダイ金型1Bを所定位置にまでスライド移動させた状態で、固定ダイ金型1Aの逃げ貫通部4の周辺部および逃げ貫通部4と反対側のスライドダイ金型1Bの一部が、打抜き穴を形成するワークWの内面と密着する。したがって、打抜き穴の形成時、パンチ2から加わる打抜き力を、傾斜平面5、6を介して互いに接触しているダイ金型1A、1Bを経てワーク支持金型3に伝えることができる(図1(c)、図2参照)。このため、中空形状のワークWの打抜き穴周辺部に生じ易い「だれ」変形を小さくすることができ、高精度な打抜き穴を形成することができる。
【0020】
一方、従来例の穴打抜き金型の場合には、一体のダイ金型外面とワーク内面とを密着状態とすることができず、ダイ金型外面とワーク内面間のギャップgが許容すき間を超えてしまうことが起こる(図7(b)、(c)参照)。このため、従来例の穴打抜き金型では、パンチ2から加わる打抜き力によって、打抜き穴周辺部に大きな「だれ」変形が生じてしまい、高精度な打抜き穴を形成することが難しい。
【0021】
ところで、図1中、22は、スライドダイ金型1Bの支持部側に具備した、ダイ金型間の間隔が広くなるのを防止するための付勢手段22である。スライドダイ金型1Bの支持部側にダイ金型間の間隔が広くなるのを防止するための付勢手段22を具備することが好ましい。この理由はスライドダイ金型1Bに付勢手段22を具備していない場合、スライドダイ金型1Bを所定位置から待機位置に戻したときに、スライドダイ金型1Bの自重によって、ダイ金型1A、1B間の上下方向の間隔が広くなり、ワークWを供給する際、ワークWの一端部WLの内周面と、ダイ金型1A、1Bの外周面とが接触してしまうことが起こり得るからである。付勢手段22としては、ばねやエアーシリンダなどが好適である。
【0022】
なお、ダイ金型間の間隔が広くなるのを防止する付勢手段22は固定ダイ金型1Aの支持部側に具備することもできる。
また、ダイ金型1A、1Bの先端部側に、ワーク長手方向に直角な断面が凸形状とされた凸部20と該凸部20が嵌まり込む凹形状の凹部21とからなるガイド手段が具備されているのが好ましい(図2参照)。この理由は、スライドダイ金型1Bをスライド移動させる際、ダイ金型1A、1B同士を傾斜平面5、6で接触させつつ前進移動させ、あるいは後退移動させることを確実にすることができるからである。
【0023】
特に固定ダイ金型1Aの傾斜平面5の後端に段差部5Aを設けた場合、スライドダイ金型1Bを待機位置から所定位置にまで前進移動させるには、この段差部5Aを乗り越えてスライド移動させる必要があるから、このガイド手段が有効に作用する。この固定ダイ金型1Aの段差部5Aは、上下方向のダイ金型高さの可変量(傾斜平面5、6のワーク長手方向距離と傾き角度θに応じて決まる。図3参照)が不十分であるとき、それを補うためのものである。
【0024】
以上の説明では、一端が開口された中空形状のワークWの長手方向中央部に高精度な打抜き穴を1つ形成する場合を示した(図1、図2参照)。
この打抜き穴を形成するワークWが、図4に示したようなアウターシャフト10のように、円筒形状である場合、ダイ金型の外周面上の点PQおよび点RSの範囲は、ワーク長手方向中央部における内径寸法と同じ内径寸法をもつ円弧形状に形成される。ただし、本発明の穴打抜き金型で打抜き穴を形成する対象は、図4に示したようなアウターシャフト10のように、円筒形状のワークWに限定されない。
【0025】
また、図5(a)、(b)に示したような形状のワークWにも高精度な打抜き穴24を形成できる。図7(a)は、一端部WLの内径と長手方向中央部WMの内径とが同じ場合であり、図5(b)は、図5(a)と同じ形状のワークWに対して、打抜き穴24を形成する位置を、長手方向中央部WMに代えて一端部WLとした場合である。打抜き穴24の数は、複数個とすることも可能である。
【実施例】
【0026】
本発明例の穴打抜き金型を用い、図4に示したようなアウターシャフト10(ワークW)の長手方向中央部WMにキーロック穴11を形成した。このワークWは厚みが3mmの構造用炭素鋼管を用い、長手方向中央部WMには縮径加工を施さず、その両側部分にプレス押し込み加工あるいはロータリースエージング加工等の縮径加工を施して作成した。なお、キーロック穴11は、ワークWの一端部WL内に内径スプラインを形成した後に、竪型プレスに組み込んだ本発明例の穴打抜き金型で一端から150mmの位置に形成した。
【0027】
ワークWの内径寸法は次のとおりである。一端部WLの内径=19.0mm、長手方向中央部WMの内径=22.0mm、他端部WRの内径=5.0mm。
本発明例の2分割構造のダイ金型1A、1Bは以下とした(図1、図2参照)。傾斜平面5、6のワーク長手方向距離=45mm、傾き角度θ=3°、ダイ金型高さの可変量=最大で2.35mm(≒45×tan3°)。そして、傾斜平面5の段差部5Aの量(上下方向の段差量)は0.65mm以上とした。段差部5Aの量≧WMの内径−WLの内径−ダイ金型高さの可変量=0.65mm。
【0028】
その結果、本発明例の穴打抜き金型を用いた場合、ハンドルロック用キーが取付けされる高精度なキーロック穴11を形成することができた。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(a)、(b)、(c)は本発明の穴打抜き金型の構成を示す一部断面側面図である。
【図2】図1(c)のX−X断面図である。
【図3】本発明例の2分割構造のダイ金型の作用を説明する側面図である。
【図4】アウターシャフトの構造を示す一部断面側面図である。
【図5】本発明を適用できる部品の形状を示す一部断面側面図である。
【図6】特許文献1に記載のプレス金型の要部断面図である。
【図7】従来例の穴打抜き金型の問題点を説明する一部断面側面図である。
【図8】特許文献2に記載のアウターシャフトの製造工程を示す一部断面側面図である。
【符号の説明】
【0030】
W ワーク
WL 一端部
WR 他端部
WM 長手方向中央部
g ダイ金型外面とワーク内面間のギャップ
θ 傾き角度
P、Q、R、S 外周面上の点
1 一体のダイ金型
1A 固定ダイ金型
1B スライドダイ金型
2 パンチ
3 ワーク支持金型
4 逃げ貫通部
5、6 傾斜平面
5A 段差部
7 ピン
8 移動金型
9 型形成金型
9a 逃げ凹部
10 アウターシャフト
11 キーロック穴
20 凸部
21 凹部
22 付勢手段
23 ストッパ
24 打抜き穴
25 素材
26 第1中間素材
27 第2中間素材
28 第3中間素材
29 内径スプライン部(特許文献1では雌セレーション部)
30 アウターシャフト
30 雄セレーション部
31 雄ねじ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
打抜き穴を形成する逃げ貫通部を有しワークの内部に配設される2分割構造のダイ金型と、前記逃げ貫通部に対応してワークの外部に配置される打抜き方向へ移動可能なパンチと、前記ワークをその外周面から支持するワーク支持金型とを備え、前記ワークに打抜き穴を形成するための穴打抜き金型であって、
前記ダイ金型は、一方が打抜き穴を形成する逃げ貫通部を有しワーク長手方向への移動が規制される固定ダイ金型、他方がワーク長手方向の待機位置から所定位置までの間をスライド可能なスライドダイ金型とされ、それぞれの先端部側のワーク中心寄りに、ワーク長手方向に対して同じ角度に傾けられたスライド可能な傾斜平面を有し、該傾斜平面を介して互いに接触可能なように打抜き方向に並べて配設されてなり、前記スライドダイ金型を前記所定位置にまでスライド移動させた状態で前記逃げ貫通部の周辺部および前記逃げ貫通部と反対側の一部が、前記打抜き穴を形成するワークの内面と密着するように形成されていることを特徴とする穴打抜き金型。
【請求項2】
前記スライドダイ金型の支持部側に、ダイ金型間の間隔が広くなることを防止する付勢手段が具備されていることを特徴とする請求項1に記載の穴打抜き金型。
【請求項3】
前記ダイ金型の先端部側に、ワーク長手方向に直角な断面が凸形状とされた凸部と、該凸部が嵌まり込むように凹形状とされた凹部とからなるガイド手段が具備されていることを特徴とする請求項1または2に記載の穴打抜き金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−94725(P2010−94725A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269756(P2008−269756)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(506109753)株式会社正田製作所 (8)
【Fターム(参考)】