説明

空冷式電気装置用の塵捕集構造及びそれを備えた電気装置

【課題】 本発明の課題は、空冷式電気装置に使用されるものとして、塵フィルターを使用することなく塵が分離及び捕集できる空冷式電気装置用の塵捕集構造を提供することにある。
【解決手段】 空気吸引用の吸気ファンを備える空冷式電気装置に用いられる空冷式電気装置用の塵捕集構造は、前記電気装置の筐体に間隔をおいて並んで設置され、複数個の吸引口を形成する複数個の第1渦流発生部材と、前記複数個の吸引口から前記筐体の内側に一定距離離間して設定される複数個の第2渦流発生部材とを含み、前記複数個の第1渦流発生部材の各々は前記筐体の内側に突出しており、前記吸気ファンにより前記吸引口に吸引される空気が前記第1渦流発生部材の後端に渦流を発生させる形状に形成され、前記複数個の第2渦流発生部材の各々は、前記吸引口を通じて吸引される空気を分岐させ、分岐された空気が前記第2渦流発生部材の後端で渦流を形成する形状に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空冷式電気装置に関し、より詳細には、吸引される空気から塵を分離する空冷式電気装置に使用される塵捕集構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この頃、電気装置の基本的な機能に対する技術だけでなく、その基本的な機能が長く保持かつ発揮できるようにするための技術も、電気装置の中核性能として評価されている。
【0003】
ところが、外部空気を用いて内部の発熱源を冷却する空冷式電気装置においては、電気装置の機能を長く保持するためには、電気装置に吸引される塵を取り除く必要がある。吸引される空気から塵を取り除くために、一般的に、従来の空冷式電気装置は塵フィルターを使用してきた。
【0004】
一般的な塵フィルターは、無数の微細な穴又は格子状のフィルター部材を数回に折って形成する。従って、吸引される空気は、微細な穴又は格子を通過し、塵はフィルター部材にかけられるようになる。塵フィルターを長時間使用すると、塵フィルターの微細な穴又は格子が塵によって詰まってしまう。従って、塵フィルターを使用する電気装置は、定期的に塵フィルターを洗浄したり、取り替えなければならないという不便さがある。
【0005】
特に、空冷式で冷却される電気装置の場合、内部に入り込む塵を遮断するために、穴又は格子の細かい塵フィルターを使用すると、外部の冷たい空気が電気装置の内部に入り込みにくくなる。従って、冷却機能が低下するおそれがある。逆に、穴又は格子の間隔の大きい塵フィルターを使用すると、外部の空気を電気装置に取り込むことは容易であるため、冷却機能を高めることはできるものの、塵除去の効率が低下して電気装置の性能を低下させるおそれがあるという問題がある。
【0006】
従って、従来の空冷式電気装置は、適切な大きさの穴をもつ塵フィルターを使って吸引される空気から塵を取り除いており、一定間隔で塵フィルターを洗浄又は取り替えるように管理している。
【0007】
しかし、このような従来の空冷式電気装置は、塵フィルターをユーザが適切に管理していなかったために、電気装置が故障を起こしてしまうケースが頻発し、製品の信頼性を低下させるだけでなく、修理代がかさむようになってしまう。
【0008】
従って、塵フィルターを使用することなく、塵が捕集できる塵捕集構造への開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国登録実用第0339215号
【特許文献2】日本特開第2000−304379号公報
【特許文献3】日本特開平9−117627号公報
【特許文献4】日本特開第2004−220016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、空冷式電気装置に使用されるものとして、塵フィルターを使用することなく塵が分離及び捕集できる空冷式電気装置用の塵捕集構造に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面によると、空気吸引用の吸気ファンを備える空冷式電気装置に用いられる空冷式電気装置用の塵捕集構造において、前記電気装置の筐体に間隔をおいて並んで設置され、複数個の吸引口を形成する複数個の第1渦流発生部材と、前記複数個の吸引口から前記筐体の内側に一定距離離間して設定される複数個の第2渦流発生部材とを含み、前記複数個の第1渦流発生部材の各々は前記筐体の内側に突出しており、前記吸気ファンにより前記吸引口に吸引される空気が前記第1渦流発生部材の後端に渦流を発生させる形状に形成され、前記複数個の第2渦流発生部材の各々は、前記吸引口を通じて吸引される空気を分岐させ、分岐された空気が前記第2渦流発生部材の後端で渦流を形成するようにする形状に形成されることが望ましい。
【0012】
前記第1渦流発生部材は、前記吸引口を通じて引き込まれる空気が、渦流を形成するようにガイドする曲面形状をもつガイド部と、前記ガイド部の両側端で隣接する前記第1渦流発生部材に向かって突出している羽根部とを含んでよい。
【0013】
前記羽根部は、三角形と、長方形及び台形の形状のうちのいずれか一つの断面形状に形成されてよい。
【0014】
前記第1渦流発生部材のガイド部は、凹状に形成されてよい。
【0015】
前記第2渦流発生部材の断面は楔状に形成され、前記楔状の両側傾斜面は、前記吸引口側に向かって集まるように配置されてよい。
【0016】
前記第2渦流発生部材の断面は、前記吸引口側の部分が三角形状又は流線型に形成されてよい。
【0017】
前記第2渦流発生部材の断面は、前記吸引口側の部分の反対側の部分には空気に対して流動抵抗を発生させる溝が形成されてよい。
【0018】
前記複数個の第2渦流発生部材は少なくとも2列に配置され、後列に配置される複数個の第2渦流発生部材は、前列に配置される複数個の第2渦流発生部材の各々の間の空間を隔てて対向するように配置されてよい。
【0019】
前記複数個の第2渦流発生部材は、ジグザグ状に配置されてよい。
【0020】
前記第1及び第2渦流発生部材は、前記筐体と一つの胴体とで形成されることは望ましい。
【0021】
前記第1及び第2渦流発生部材は、前記筐体と分離自在のハウジングに設けてよい。
【0022】
本発明に係る塵捕集構造は、前記筐体の内側に設けられ、前記複数個の第1及び第2渦流発生部材を通過した空気を前記吸気ファン側にガイドするガイドダクトを更に含み、前記ガイドダクトの内面には吸引された空気が渦流を形成するようにする複数個の渦流発生溝が形成されてよい。
【0023】
前記複数個の第1及び第2渦流発生部材のうち、少なくとも一部の渦流発生部材の各々の後端周囲に、前記筐体の床面に形成された塵排出口を更に含んでよい。
【0024】
前記複数個の第1及び第2渦流発生部材のうち、少なくとも一部の渦流発生部材の各々の後端に設けられた塵付着部材を更に含んでよい。
【0025】
なお、前記複数個の第1及び第2渦流発生部材のうち、少なくとも一部の渦流発生部材の各々の後端周囲に、前記筐体の床面に形成された塵排出口と、他の一部の渦流発生部材の後端に設けられた塵付着部材を更に含んでよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一実施形態に係る塵捕集構造を有する空冷式電気装置は、塵フィルターの微細穴にしてはかなり大きい吸引口を通じて外部空気を筐体内に吸引するため、塵フィルターを使用する場合より、容量の小さい吸気ファンを使用しても電気装置を必要な温度に冷却することができる。
【0027】
なお、本発明に係る塵捕集構造は、筐体内部の発熱源に付着できる比較的大きい塵を分離して捕集できるため、塵によって電気装置の性能が低下してしまうことを防止することができる。
【0028】
本発明の一実施形態に係る塵捕集構造を有する空冷式電気装置は、捕集された塵を筐体外部に排出できるため、塵フィルターを使用する電気装置に比べて維持保守が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る空冷式電気装置用の塵捕集構造を有する電気装置を概念的に示す図である。
【図2】図1の電気装置を矢印Cの方向から見た図である。
【図3】図1の電気装置に設けられた塵捕集構造を示す斜視図である。
【図4】図1の塵捕集構造の作動原理を説明するための図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る空冷式電気装置用の塵捕集構造によって塵が分離されることをシミュレーションした結果を示す写真である。
【図6】図1の塵捕集構造の第1渦流発生部材の別の例を示す図である。
【図7】図4の塵捕集構造の第1渦流発生部材の羽根部の様々な例を示す部分図である。
【図8】図1の塵捕集構造の第2渦流発生部材の別の例を示す図である。
【図9】図1の塵捕集構造の塵排出口と塵付着部材を示す部分断面図である。
【図10】ハウジングに設けられた本発明の一実施形態に係る空冷式電気装置用の塵捕集構造を示す斜視図である。
【図11】本発明の別の実施形態に係る空冷式電気装置用の塵捕集構造を概略的に示す部分断面図である。
【図12】本発明の別の実施形態に係る空冷式電気装置用の塵捕集構造を概略的に示す部分断面図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る空冷式電気装置用の塵捕集構造を備えたプロジェクタを示す概略図である。
【図14】図13の塵捕集構成によって塵が捕集される様子を示すシミュレーション写真である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ここで説明される実施形態は、発明の理解を促すための例示を示したものであって、本発明はここで説明される実施形態とは異なる多様な実施形態に変形されて実施できることを理解すべきである。但し、以下で本発明を説明するうえで、関連の公知機能又は構成要素に対する具体的な説明が、本発明の要旨からかけ離れていると判断される場合、その詳細な説明及び具体的な図示を省略する。なお、添付の図は、発明の理解を促すために、添付図面は実際の寸法で示されたものではなく、一部の構成要素のみを拡大して示すことがある。
【0031】
図1は、本発明の一実施形態に係る空冷式電気装置用の塵捕集構造を有する電気装置を概念的に示す図である。図2は、図1の電気装置を矢印Cの方向から見た図であり、図3は、図1の電気装置に設けられた塵捕集構造を示す斜視図である。
【0032】
図1によると、空冷式電気装置1は、筐体10と、発熱源20と、吸気ファン30と、塵捕集構造110を含んでよい。
【0033】
筐体10は、空冷式電気装置(又は電子装置)1の外観を形成するものとして、外部空気OAが筐体10内部に引き込まれる吸引口11を含む。ここで、空冷式電気装置1は、電気を使って所定機能を行うものとして、その内部の発熱源20を外部空気OAで冷却して内部温度を所定温度以下に保持する装置のことをいう。例えば、空冷式電気装置1は、プロジェクタ(Projector)、プロジェクションテレビ(Projector TV)等を含んでよい。
【0034】
図1において、筐体10は長方形の断面であるものとして示されているが、それは一例に過ぎず、無論、電気装置1の機能に応じて筐体10は多様な形状に形成されてよい。
【0035】
発熱源20は、筐体10内部に設けられ、電気装置1が所定の機能を行う間、熱を発生する全ての部品のことをいう。
【0036】
吸気ファン30は、筐体10の一端に設けられ、外部空気OAを電気装置1の筐体10内部に吸引する吸引力を発生させる。従って、吸気ファン30が動作すると、外部空気OAが筐体10内部に吸引されて発熱源20を通過した後、吸気ファン30を通って筐体10の排出口13を通じて筐体10外部に排出される。
【0037】
塵捕集構造100は、従来の塵フィルターの代わりに使用するものとして、外部空気OAの吸引が円滑になるようにし、吸引される外部空気OAに含まれる比較的に大きな塵を効果的に分離できるように構成される。
【0038】
図1ないし図3を参照しながら、本発明の一実施形態に係る塵捕集構造100は、複数個の第1渦流発生部材110と複数個の第2渦流発生部材120とを含んでよい。
【0039】
複数個の第1渦流発生部材110は、筐体10と一体に形成され、外部空気OAが吸引される複数個の吸引口11を形成する。即ち、複数個の第1渦流発生部材110は筐体10を成形する際、筐体10の前面12と一つの胴体とで形成してよい。複数個の第1渦流発生部材110は筐体10に間隔をおいて並んで設置され、互いに隣接する2つの第1渦流発生部材110は一つの吸引口11を形成する。
【0040】
複数個の第1渦流発生部材110の各々は、筐体10の内側に突出しており、筐体10の上面15と下面14との間の距離に相当する長さを有する。第1渦流発生部材110の断面は、吸気ファン30によって吸引口11に吸引される外部空気OAが、図4に示すように、第1渦流発生部材110の後端周囲Bで渦流を発生させるようにする曲面形状に形成される。このような機能を行う第1渦流発生部材110は、図4に示すようにガイド部111と羽根部112とを含んでよい。ガイド部111は、吸引口11を通じて引き込まれる外部空気OAが渦流を形成するようにガイドするものとして、曲面形状を有する。ガイド部111は、図1及び図3に示すように、筐体10の内側方向に窪んでいる形状、即ち、空気移動方向に窪んでいる形状に形成されてよい。即ち、第1渦流発生部材110は、断面が曲面であるチャネル(Channel)形状に形成されてよい。従って、第1渦流発生部材110は、凹部110aの入口が筐体10の外部を向くように配置される。なお、第1渦流発生部材110’は、図6に示すように、羽根部112の間に壁113がある形状に形成されてよい。この場合、第1渦流発生部材110’は断面が曲面である柱状となる。
【0041】
図4によると、中央部の第1渦流発生部材110−1の羽根部112は、ガイド部111の両側端で隣接している第1渦流発生部材110−2、110−3に向かって突設される。従って、隣接する2つの第1渦流発生部材110−1、110−2の羽根部112の間の空間が吸引口11を形成する。この突出している羽根部112は、吸引口11を通過する空気が第1渦流発生部材110の後端、即ちガイド部111の後端周囲Bで渦流の形成を手伝う。従って、吸引口11の幅W1が吸引口11の内側の幅W2より小さいものが、第1渦流発生部材110による空気の渦流発生が容易になる。ここで、吸引口11の内側の幅W2は、隣接する2つの第1渦流発生部材110−1、110−2のガイド部111の間の距離として、隣接する2つの第1渦流発生部材110−1、110−2のガイド部111は、外部空気OAが通過する空気通路を形成する。
【0042】
羽根部112は、ガイド部111で突出している形態である限り、多様な形状に形成されてよい。例えば、羽根部112は図7の(a)ないし(c)に示されたような多様な三角断面、又は、図7の(d)と(e)に示されたような長方形断面又は台形断面に形成されてよい。
【0043】
第1渦流発生部材110の形状及び大きさ、吸引口11の幅W1と個数、吸引口の内側の幅W2などは、本発明による塵捕集構造100を実際に電気装置1に適用する際、電気装置1に必要な冷却容量に応じて適切に決定されてよい。
【0044】
複数個の第2渦流発生部材120は、複数個の吸引口11から筐体10の内側に一定距離離間されて設置される。複数個の第2渦流発生部120は筐体10を成形する際、筐体10と一つの胴体とで形成されてよい。
【0045】
複数個の第2渦流発生部材120の各々は、吸引口11を通して吸引される外部空気OAを2つの流れに分岐させ、分岐された空気の流れが第2渦流発生部材120の後端周囲Aで渦流を形成することができるようにする形状に形成される。
【0046】
図3に示すように、第2渦流発生部材120は吸引口11に向かう側の先端部121は一直線であり、吸引口11から遠ざかる方向の後端部は先端部121をなす一直線を中心に両側に広がる形状に形成されてよい。従って、第2渦流発生部材120の断面は、図4に示すように、2つの側面122、123を有し、前記2つの側面122、123は吸引口11側に向かって集まり、吸引口11から遠ざかると両側に広がる傾斜面で形成される。即ち、第2渦流発生部材120の断面は2つの傾斜面122、123が一点に向かって集まる楔状に形成されてよい。このとき、楔状の第2渦流発生部材120の断面は、吸引口11側の先端部121は三角形状に形成できる。又は、別の例として、図8に示すように、先端部121’を流線型に形成できる。図8で、流線型に形成された先端部121’は、P1とP2との間の部分を指す。
【0047】
なお、吸引口11の反対側に向かう第2渦流発生部材120の後端部124には、第2渦流発生部材120によって2つの流れに分岐された空気が、第2渦流発生部材120の後端部124で円滑に渦流を形成できるように溝が形成されてよい。この場合、第2渦流発生部材120は、図3に示すように、ほぼV字型の断面をもつチャネルに形成される。この溝124は、第2渦流発生部材120に沿って流れる空気に対して流動抵抗を発生させて渦流発生を促進させる。従って、第2渦流発生部材120に沿って移動した空気は、図4及び図5に示すように、第2渦流発生部材120の後端部124の周囲Aに渦流を形成する。
【0048】
第1渦流発生部材110の後端周囲B及び第2渦流発生部材の後端周囲Aに形成される渦流によって分離された塵を捕集するために塵排出口17を筐体10の床16に形成してよい(図9を参照)。又は、渦流によって捕集された塵を吸着するための塵付着部材18を筐体10の内部に設けてよい。又は、第1及び第2渦流発生部材110、120の一部の後端周囲の筐体の床16には塵排出口17を形成し、第1及び第2渦流発生部材110、120の他の一部の後端には塵付着部材18を設けてよい。
【0049】
図9は、第1及び第2渦流発生部材110、120の一部の後端周囲の筐体の床面16に形成された塵排出口17と一部の第1及び第2渦流発生部材110、120の後端に付着された塵付着部材18を示している。従って、吸気ファン30が停止すると、渦流によって捕集されていた塵は下に落下して塵排出口17を通って筐体10の外部に排出される。第1及び第2渦流発生部材110、120の後端に塵付着部材18が設けられている場合には、吸気ファン30が停止すると、渦流によって捕集されていた塵は隣接している塵付着部材18に付着される。
【0050】
以下、前記のような構造を有する本発明の一実施形態に係る塵付着構造100の作用を、図1、図4及び図5を参照しながら説明する。図5は、本発明の一実施形態に係る塵捕集構造100によって塵が分離される様子をコンピュータでシミュレーションした結果を示す写真である。
【0051】
吸気ファン30を作動させると、吸引力が発生して外部空気OAが複数個の第1渦流発生部材110との間の吸引口11を通して筐体10の内部に引き込まれる。
【0052】
吸引口11を通して吸引される外部空気OAは、第2渦流発生部材120によって図4及び図5に示すように、2つの空気の流れに分岐される。図4において、第2渦流発生部材120の右側に分岐された右側空気の流れは、第2渦流発生部材120の右側傾斜面122と右側第1渦流発生部材110のガイド部111との間を通過する。
【0053】
右側空気の流れの一部R1は、右側第1渦流発生部材110−1のガイド部111に従って移動するようになる。空気がガイド部111に従って移動すると、流動抵抗の差によってガイド部111の後端周囲Bに逆流(Back Flow)が生じ、抗力(Drag Force)が発生する。この抗力によって、第1渦流発生部材110の後端周囲Bには渦流が形成され、吸引された外部空気OAに含まれた塵は、この渦流によって外部空気OAから分離されてこの渦流に閉じ込められるようになる。
【0054】
なお、右側空気の流れの他の一部R2は、第2渦流発生部材120の右側傾斜面122に沿って移動するようになる。空気が右側傾斜面122に沿って移動すると、流動抵抗の差によって右側傾斜面122の後端周囲Aに逆流が生じ、抗力が発生する。この抗力によって第2渦流発生部材120の後端周囲Aに渦流が形成され、吸引された外部空気OAに含まれた塵は、この渦流によって外部空気OAから分離されてこの渦流に閉じ込められるようになる。従って、右側空気の流れとともに引き込まれてきた塵は、第1及び第2渦流発生部材110、120の後端周囲B、Aに形成された渦流に閉じ込まれるため、筐体10の内部に入り込むことはない。
【0055】
なお、図4において、第2渦流発生部材120の左側に分岐された左側空気の流れL2、L1は、第2渦流発生部材120の左側傾斜面123と左側第1渦流発生部材110−2のガイド部111との間を通過する。
【0056】
左側空気の流れの一部L1は、
左側第1渦流発生部材110−2のガイド部111に従って移動するようになり、左側空気の流れの他の一部L2は、第2渦流発生部材120の左側傾斜面123に沿って移動するようになる。空気が第1渦流発生部材110のガイド部111と第2渦流発生部材120の左側傾斜面123に沿って移動すると、上記において説明したような原理に基づき、第1渦流発生部材110の後端周囲Bと第2渦流発生部材120の後端周囲Aに渦流が形成される。吸引された外部空気OAに含まれた塵は、この渦流によって外部空気OAから分離されてこの渦流に閉じ込められるようになる。従って、右側空気の流れとともに引き込まれてきた塵は、第1及び第2渦流発生部材110、120の後端周囲B、Aに形成された渦流に閉じ込まれるため、筐体10の内部に入り込むことはない。
【0057】
塵捕集構造100を通過して塵の分離された外部空気OAは、発熱源20を通るようになる。冷たい外部空気が発熱源20を通る間、熱交換によって発熱源20が冷却して空気は熱くなる。熱くなった空気は、吸気ファン30を通って筐体10の排出口13を通って外部に排出される。
【0058】
このように、本発明の一実施形態に係る塵捕集構造100を有する空冷式電気装置1は、塵フィルターの微細穴にしてはかなり大きい吸引口11を通って外部空気OAを筐体10の内部に吸引するため、塵フィルターを使用する場合より容量が小さい吸気ファン30を使用しても、電気装置1を必要な温度に冷却することができる。なお、本発明に係る塵捕集構造100は、筐体10の内部の発熱源20に付着可能な比較的大きい塵を分離して捕集できるため、塵によって電気装置1の性能が低下することを防止することができる。
【0059】
吸気ファン30が停止すると、吸引口11を通って外部空気OAが筐体10の内部に引き込まれない。すると、第1及び第2渦流発生部材110、120の後端周囲B、Aに形成されていた渦流が消滅する。渦流が消滅すると、渦流に閉じ込められていた塵は下へ落下するようになる。このとき、筐体10の床面16には塵排出口17が形成されているため、落下する塵は筐体10の外部へ排出される。
【0060】
従って、本発明の一実施形態に係る塵捕集構造100を有する空冷式電気装置1は捕集された塵を筐体10の外部に排出できるため、塵フィルターを使用する電気装置に比べて維持保守が容易になる。
【0061】
図10は、本発明の一実施形態に係る空冷式電気装置用の塵捕集構造の別の例を示す斜視図である。
【0062】
図10の塵捕集構造200は、第1及び第2渦流発生部材210、220がハウジング201に設けられることが、上述の塵捕集構造100とは相違する。ハウジング201は電気装置1の筐体10と別個に形成され、電気装置1の筐体10に形成された装着孔(図示せず)に分離自在に装着される。第1及び第2渦流発生部材210、220はハウジング201の内側に一定間隔で配置される。第1及び第2渦流発生部材210,220の配置は、上述の実施形態の第1及び第2渦流発生部材110、120と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0063】
図11と図12は、本発明の別の実施形態に係る空冷式電気装置用の塵捕集構造を示す断面図である。図11を参照すると、本実施形態の塵捕集構造300は、第2渦流発生部材320が2列に配置されていることが、図1に示されている塵捕集構造100と異なる。第1渦流発生部材310から近い第1列の第2渦流発生部材320−1は、図1の塵捕集構造100の第1及び第2渦流発生部材110、120と同様に配置される。第2列の第2渦流発生部材320−2は、第1列の第2渦流発生部材320−1の間の空間Sを隔てて第1渦流発生部材310と対向するように設けられる。
【0064】
本実施形態において、第1渦流発生部材310と2列に配置されている第2渦流発生部材320が吸引口311を通って吸引される外部空気から塵を分離する作用は、上述の実施形態の第1及び第2渦流発生部材110、120と類似するため、詳細な説明は省略する。
【0065】
図12を参照すると、本実施形態の塵捕集構造400は第2渦流発生部材420がジグザグに配置されていることが、図1に示されている塵捕集構造100と異なる。図12において、左側から一番目の第2渦流発生部材420−1が吸引口411の近くに設けられると、二番目の第2渦流発生部材420−2は吸引口411から一番目の第2渦流発生部材420−1より遠く離れるように設けられる。三番目、五番目の第2渦流発生部材420−3、420−5は、吸引口411から一番目の第2渦流発生部材420−1と同じ距離d1離間されて設置され、四番目の第2渦流発生部材420−4は、吸引口411から二番目の第2渦流発生部材420−2と同じ距離d2離間されて設置される。従って、第2渦流発生部材420はジグザグ状に配置される。
【0066】
本実施形態において、第1渦流発生部材410とジグザグに配置されている第2渦流発生部材420が吸引口411を通って吸引される外部空気から塵を分離する作用は、上述の実施形態の第1及び第2渦流発生部材110、120と類似するため、詳細な説明は省略する。
【0067】
図13は、本発明の一実施形態に係る空冷式電気装置用の塵捕集構造を備えたプロジェクタを示す概略図である。図13に示すように、プロジェクタ500は、送風機510と、ガイドダクト520と、塵捕集構造530とを含んでよい。送風機510は、外部空気OAを吸引して発熱源のあるプロジェクタ500の内部に送風してプロジェクタ500を冷却させる。送風機510は、上述の実施形態の吸気ファン30に相当する。ガイドダクト520は、送風機510と塵捕集構造530を連結して塵捕集構造530を通過した外部空気OAを送風機510にガイドする。
【0068】
塵捕集構造530は、ガイドダクト520の入口部521に設けられ、送風機510の吸引力によって引き込まれる外部空気OAから塵を分離する。塵捕集構造530は複数個の第1渦流発生部材531と、複数個の第2渦流発生部材532、及び複数個の渦流発生溝533を含んでよい。
【0069】
複数個の第1渦流発生部材531は、一定間隔離間されるように配置されている。従って、互いに隣接している2つの第1渦流発生部材531の間には吸引口535が形成される。複数個の第1渦流発生部材531によって形成された複数個の吸引口535がガイドダクト520の入口を形成する。本実施形態の場合には、第1渦流発生部材531の断面がほぼ長方形の溝形状に形成されているが、上述の実施形態の第1渦流発生部材110のように渦流発生を促す曲面に形成されてよい。第1渦流発生部材531は、その断面形状の他には、上述の実施形態の第1渦流発生部材110と同様である。
【0070】
複数個の第2渦流発生部材532は、上述の実施形態に係る第2渦流発生部材120と同様の形状に形成され、複数個の第1渦流発生部材531の後側のガイドダクト520にジグザグに配置されている。従って、複数個の第1渦流発生部531を通過した外部空気OAは、図14に示すように、複数個の第2渦流発生部材532の後端周囲に渦流を生成するようになる。図14は、図13の塵捕集構造530によって外部空気OAから塵が分離される様子を示すために、コンピュータシミュレーションを行った結果を示す写真である。
【0071】
複数個の渦流発生溝533は、複数個の第1渦流発生部材531を対向するガイドダクト520の内面に形成される。複数個の渦流発生溝533の各々は、溝入口が複数個の第1渦流発生部材531を向くように形成される。送風機510によって外部空気OAが吸引される際、図14に示すように、渦流発生溝533の内部には渦流が発生して外部空気OAから塵を分離し、分離された塵を閉じ込めることができる。送風機510が停止すると、複数個の渦流発生溝533の内部で渦流に閉じ込められていた塵は下方に落下するようになる。従って、複数個の渦流発生溝533が設けられたガイドダクト520の床面には各々の渦流発生溝533に相当する複数個の塵排出口(図示せず)を形成することができる。すると、複数個の渦流発生溝533によって分離された塵を塵排出口を通ってガイドダクト520の外部には排出することができる。
【0072】
ガイドダクト520は、塵捕集構造530の設けられた入口部521と送風機510に連結される排出部522と入口部521と排出部533を連結する連結部523を含み、ほぼS字型に形成されることができる。連結部523は、複数個の第1渦流発生部材531の設けられた入口及び送風機510に連結された出口より狭く形成されてよい。すると、ガイドダクト520を通過する外部空気OAから塵をより効果的に分離することができるようになる。
【0073】
送風機510で外部空気OAをガイドするガイドダクト520に設けられた第1及び第2渦流発生部材531、532によって塵が分離される作用は、上述の実施形態と類似するため、詳細な説明は省略する。
【0074】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0075】
1 電気装置
10 筐体
11 吸引口
12 筐体前面
17 塵排出口
18 塵付着部材
20 発熱源
30 吸気ファン
100、200、300、400、530 塵捕集構造
110、210、310、410、531 第1渦流発生部材
120、220、320、420、532 第2渦流発生部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気吸引用の吸気ファンを備える空冷式電気装置に用いられる空冷式電気装置用の塵捕集構造において、
前記電気装置の筐体に間隔をおいて並んで設置され、複数個の吸引口を形成する複数個の第1渦流発生部材と、
前記複数個の吸引口から前記筐体の内側に一定距離離間して設定される複数個の第2渦流発生部材とを含み、
前記複数個の第1渦流発生部材の各々は前記筐体の内側に突出しており、前記吸気ファンにより前記吸引口に吸引される空気が前記第1渦流発生部材の後端に渦流を発生させる形状に形成され、
前記複数個の第2渦流発生部材の各々は、前記吸引口を通じて吸引される空気を分岐させ、分岐された空気が前記第2渦流発生部材の後端で渦流を形成するようにする形状に形成されることを特徴とする空冷式電気装置用の塵捕集構造。
【請求項2】
前記第1渦流発生部材は、
前記吸引口を通じて引き込まれる空気が、渦流を形成するようにガイドする曲面形状をもつガイド部と、
前記ガイド部の両側端で隣接する前記第1渦流発生部材に向かって突出している羽根部と
を含むことを特徴とする請求項1に記載の空冷式電気装置用の塵捕集構造。
【請求項3】
前記羽根部は、三角形と、長方形及び台形の形状のうちのいずれか一つの断面形状であることを特徴とする請求項2に記載の空冷式電気装置用の塵捕集構造。
【請求項4】
前記第1渦流発生部材のガイド部は、凹状に形成されることを特徴とする請求項2に記載の空冷式電気装置用の塵捕集構造。
【請求項5】
前記第2渦流発生部材の断面は楔状に形成され、前記楔状の両側傾斜面は、前記吸引口側に向かって集まるように配置されることを特徴とする請求項1に記載の空冷式電気装置用の塵捕集構造。
【請求項6】
前記第2渦流発生部材の断面は、前記吸引口側の部分が三角形状であることを特徴とする請求項5に記載の空冷式電気装置用の塵捕集構造。
【請求項7】
前記第2渦流発生部材の断面は、前記吸引口側の部分が流線型であることを特徴とする請求項5に記載の空冷式電気装置用の塵捕集構造。
【請求項8】
前記第2渦流発生部材の断面は、前記吸引口側の部分の反対側の部分には空気に対して流動抵抗を発生させる溝が形成されることを特徴とする請求項5に記載の空冷式電気装置用の塵捕集構造。
【請求項9】
前記複数個の第2渦流発生部材は少なくとも2列に配置され、
後列に配置される複数個の第2渦流発生部材は、前列に配置される複数個の第2渦流発生部材の各々の間の空間を隔てて対向するように配置されることを特徴とする請求項1に記載の空冷式電気装置用の塵捕集構造。
【請求項10】
前記複数個の第2渦流発生部材は、ジグザグ状に配置されることを特徴とする請求項1に記載の空冷式電気装置用の塵捕集構造。

【請求項11】
前記第1及び第2渦流発生部材は、前記筐体と分離自在のハウジングに設けられることを特徴とする請求項1に記載の空冷式電気装置用の塵捕集構造。
【請求項12】
前記筐体の内側に設けられ、前記複数個の第1及び第2渦流発生部材を通過した空気を前記吸気ファン側にガイドするガイドダクトを更に含み、
前記ガイドダクトの内面には吸引された空気が渦流を形成するようにする複数個の渦流発生溝が形成されることを特徴とする請求項1に記載の空冷式電気装置用の塵捕集構造。
【請求項13】
前記複数個の第1及び第2渦流発生部材のうち、少なくとも一部の渦流発生部材の各々の後端周囲に、前記筐体の床面に形成された塵排出口を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の空冷式電気装置用の塵捕集構造。
【請求項14】
前記複数個の第1及び第2渦流発生部材のうち、少なくとも一部の渦流発生部材の各々の後端に設けられた塵付着部材を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の空冷式電気装置用の塵捕集構造。
【請求項15】
請求項1ないし請求項14のうちいずれか一項に係る空冷式電気装置用の塵捕集構造を含むことを特徴とする電気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図5】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−216830(P2012−216830A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−76765(P2012−76765)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung−ro,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】