空力音低減装置
【課題】突起の有無による気流の乱れを低減することができる空力音低減装置を提供する。
【解決手段】車両用空調装置10における空力音低減装置では、複数の突起40のうち一部の突起40は、周囲の突起40と形状が異なるか、または一部に設けられる突起40の間隔が周囲の突起40の間隔と異なる。したがって乱れた気流と接して音を発生する位置に、複数の不均一な形状の突起40、または不均一な位置に突起40を設置することで、騒音低減効果を高めている。
【解決手段】車両用空調装置10における空力音低減装置では、複数の突起40のうち一部の突起40は、周囲の突起40と形状が異なるか、または一部に設けられる突起40の間隔が周囲の突起40の間隔と異なる。したがって乱れた気流と接して音を発生する位置に、複数の不均一な形状の突起40、または不均一な位置に突起40を設置することで、騒音低減効果を高めている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気流の乱れによって発生する空力音を低減する空力音低減装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および2には、空調および冷却用の送風装置から発生する空力音を低減するため、物体表面に圧力変動を低減する部材(以下、「低減部材」ということがある)を設けている。低減部材として、たとえば羽毛状または円柱状の突起、または毛皮状の繊維状部材を設ける構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−225048号公報
【特許文献2】特開2006−159924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のように従来技術では、空力音を低減するため低減部材を設けているが、低減部材が突起物であり、部分的に突起を設けた場合、突起の有無の境界付近で気流の乱れが集中することがある。このような突起の有無の境界が新たな音源となって騒音低減効果を充分に得られないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は前述の問題点を鑑みてなされたものであり、突起の有無による気流の乱れを低減することができる空力音低減装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前述の目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0007】
請求項1に記載の発明では、空気が流れる通路(13,22,25)を形成する通路部材(11)に設けられる空力音低減装置であって、
通路部材の壁面(11a)の一部から突出するように、壁面に設けられる複数の突起(40)を含み、
複数の突起が設けられる部位の一部に設けられる突起は、一部の突起の周囲の突起と形状が異なるか、または一部に設けられる突起の間隔は、周囲に設けられる突起の間隔と異なることを特徴とする空力音低減装置である。
【0008】
請求項1に記載の発明に従えば、一部の突起は、周囲の突起と形状が異なるか、または突起の間隔が異なる。突起が設けられると、突起が設けられた部位内の不特定の位置に気流の乱れが発生する。このような気流の乱れは、突起の形状および間隔が一定であると、大きくなる傾向にある。そこで突起の形状などを異ならせて、突起の形状などを不均一にすることで、突起によって新たに発生する乱れの位置を、突起の形状などが一様の場合に比べて分散することができる。したがって突起によって壁面付近の気流の乱れを抑制するとともに、突起によって新たに発生する乱れを低減でき、充分な騒音低減効果を得ることができる。
【0009】
また請求項2に記載の発明では、複数の突起は、空気が壁面に沿って流れる部位に設けられ、
複数の突起のうち空気流れ上流側に位置する一部の突起は、空気流れ下流ほど、突起の高さが大きく、直径が大きく、または間隔が小さいことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明に従えば、複数の突起のうち空気流れ上流側に位置する一部の突起は、空気の流れの下流ほど、突起の高さが大きく、直径が大きく、または間隔が小さい。したがって空気の流れの上流から下流に向けて徐々に抵抗を高めることができる。これによって気流が剥離して逆流した流れを緩和することができ、突起の開始位置付近で乱れが集中して新たに発生する乱れを低減できるので充分な騒音低減効果を得ることができる。
【0011】
さらに請求項3に記載の発明では、複数の突起は、空気が壁面に沿って流れる部位に設けられ、
複数の突起のうち空気流れ下流側に位置する一部の突起は、空気流れ下流ほど、突起の高さが小さく、直径が小さく、または間隔が大きいことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明に従えば、複数の突起のうち空気流れ下流側に位置する一部の突起は、空気の流れの下流ほど、突起の高さが小さく、直径が小さく、または間隔が大きい。したがって空気の流れに上流から下流に向けて徐々に抵抗を低くすることができる。これによって突起の終了位置付近で乱れが集中して新たに発生する乱れを低減でき、充分な騒音低減効果を得ることができる。
【0013】
さらに請求項4に記載の発明では、複数の突起のうち一部の突起は、周囲の突起に比べて高さ、直径および間隔のうち少なくとも1つが異なることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明に従えば、複数の突起のうち一部の突起は、周囲の突起に比べて高さ、直径および間隔の少なくとも1つが異なる。したがって突起の高さ、直径、間隔を不均一にしている。これによって、たとえば、突起群の中で高さを不均一にすると気流の乱れの大きい位置が高さ方向で分散するため、空気流れ全体での乱れを低減でき、充分な騒音低減効果を得ることができる。
【0015】
さらに請求項5に記載の発明では、複数の突起のそれぞれは、断面形状において、空気の流れ方向の長さ寸法が流れ方向に直交する幅方向の幅寸法よりも大きく、
複数の突起のうち一部の突起は、周囲の突起と間隔が異なることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明に従えば、複数の突起のそれぞれは、断面形状において、空気の流れ方向の長さ寸法が流れ方向に直交する幅方向の幅寸法よりも大きく、複数の突起のうち一部の突起は、突起の間隔が異なる。したがって各突起を空気の流れ方向に延びるように配置するとともに、突起の位置を不均一にしている。したがって成型による加工しやすさで有利な長手状の突起を使用する場合、突起の向きを気流の流れと平行にすることで、流れが突起にぶつかる位置で乱れが集中して新たに発生する乱れを低減でき、充分な騒音低減効果を得ることができる。
【0017】
さらに請求項6に記載の発明では、複数の突起のそれぞれは、断面形状において、予め設定される第1方向の長さ寸法が第1方向に直交する第2方向の幅寸法よりも大きく、
複数の突起のうち一部の突起は、第1方向が延びる向きが、周囲の突起における第1方向の延びる向きと異なることを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の発明に従えば、複数の突起のそれぞれは、断面形状において、予め設定される第1方向の長さ寸法が第1方向に直交する第2方向の幅寸法よりも大きく、複数の突起のうち一部の突起は、周囲の突起と第1方向の延びる向きが異なる。したがって、たとえば空気を流れる通路が車両用空調装置の様に風向が吹出モードによって変化する場合において、複数の突起がいずれの方向の流れに対しても乱れが集中することを防止でき、充分な騒音低減効果を得ることができる。
【0019】
なお、前述の各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】車両用空調装置10および送風機60の概略構成を示す模式図である。
【図2】送風機60を示す断面図である。
【図3】車両用空調装置10の概略構成を示す模式図である。
【図4】車両用空調装置10の構成を説明するための断面図ある。
【図5】複数の突起40の第1の例を示す斜視図である。
【図6】突起40の第1の例を示す側面図である。
【図7】従来の突起40Zを比較例として示す側面図である。
【図8】突起40の第2の例を示す側面図である。
【図9】従来の突起40Zを比較例として示す側面図である。
【図10】突起40の第3の例の気流の乱れを示すグラフである。
【図11】従来の突起40の気流の乱れを示すグラフである。
【図12】突起40の第4の例を示す平面図である。
【図13】従来の突起40Zを比較例として示す平面図である。
【図14】本実施形態の突起40Aを示す平面図である。
【図15】従来の突起40Zを比較例として示す平面図である。
【図16】従来の突起40Zを比較例として示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を、複数の形態について説明する。各実施形態で先行する実施形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付すか、または先行の参照符号に一文字追加し、重複する説明を略する場合がある。また各実施形態にて構成の一部を説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している実施形態と同様とする。各実施形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0022】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に関して、図1〜図13を用いて説明する。図1は、車両用空調装置10および送風機60の概略構成を示す模式図である。図2は、送風機60を示す断面図である。図3は、車両用空調装置10の概略構成を示す模式図である。車両用空調装置10は、車室内空調運転の実施可能な装置である。
【0023】
車両用空調装置10は、外殻が空調ケース11で構成されており、大別して送風部と空調部を備えている。空調ケース11は、車室内前方のインストルメントパネル12の裏側に配置されている。空調ケース11は、内方に空気が流れる通路を形成する通路部材としての機能を有する。空調ケース11は、複数のケース部材からなり、例えばポリプロピレンなどの樹脂成形品である。複数のケース部材は、金属ばね、ねじ等の締結手段によって一体的に結合されて空調ケース11を構成している。
【0024】
さらに車両用空調装置10は、車室内に向けて左右の吹出し口からそれぞれに温調された空気を供給する装置であり、運転席側と助手席側とにおいて独立に空調設定を可変できる、いわゆる左右独立温度コントロールを実現する。そして、車両用空調装置10の空調ケース11内部には、左右別々に温調された通風が混ざらないように中間仕切り板14が設けられ、中間仕切り板14によって空調ケース11内部は、車両左右方向に二つの通風路に区画されている。
【0025】
送風部は、車室内または車室外の空気を空調部に送風するための送風機60を備え、送風機60の吹出口は空調部の入口に至る送風通路13と接続されている。送風機60は、遠心多翼ファン61とこれを駆動するモータ64とからなり、遠心多翼ファン61の周囲はスクロールケーシング62で囲まれ、遠心多翼ファン61の遠心方向に伸びるダクトによって送風通路13と連通している。
【0026】
スクロールケーシング62は、遠心多翼ファン61を収納するとともに、遠心多翼ファン61から吹き出す空気の通路を構成する渦巻き状の部材である。スクロールケーシング62の壁面62bには、ノーズ部62aを有する。ノーズ部62aは、スクロールケーシング62の巻き始め側と巻き終わり側との重なる部分であって、巻き始め側の部分である。ノーズ部62aでは、空気上流側と空気下流とが、僅かな隙間を介して連通している。
【0027】
空調部は、送風通路13全体を横断的に塞いで設けられたエバポレータ20と、エバポレータ20を通過してきた空気を加熱するヒータコア21と、冷風通路22と、エアミックスドア23、デフ用ミックスドア24と、温風通路25と、温風と冷風が混合する空間のエアミックスチャンバ26と、デフロスタ用ドア27と、フェイス用ドア28と、フット用ドア29と、リア用ドア30とを空調ケース11の内部に備えている。さらに空調ケース11には、冷風通路22および温風通路25の下流側に複数個の吹出口31〜34が形成されており、ここでは、空調ケース11の吹出口の一例であるデフロスタ吹出口31、フェイス吹出口32、フット吹出口33および第1のリア吹出口34、第2のリア吹出口35が設けられている。
【0028】
デフロスタ吹出口31は、空調ケース11の車両前方側の上部に位置する。インストルメントパネル12のフロントウィンドウガラス12a付近の車両前方部には、室内吹出口の一つであるデフロスタ室内吹出口31aが設けられている。デフロスタ吹出口31とデフロスタ室内吹出口31aは、曇り度合いを低減するために空調風がフロントウィンドウガラス12a等の室内側面に沿うように、デフロスタ用ダクト31bによって接続されている。デフロスタ吹出口31は、デフロスタ用ドア27によって開閉制御される。
【0029】
フェイス吹出口32は、空調ケース11上部のデフロスタ吹出口31よりも車両後方側に位置する。インストルメントパネル12の車両後方側の前面には、車室内に露出する室内吹出口の一つであるフェイス室内吹出口32aが設けられている。フェイス吹出口32とフェイス室内吹出口32aは、運転席および助手席の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すために、フェイス用ダクト32bによって接続されている。フェイス吹出口32は、フェイス用ドア28によって開閉制御される。
【0030】
各リア吹出口34,35は、空調ケース11下部の車両後方側に位置する。後部座席には、室内吹出口の一つであるリア室内吹出口(図示せず)が設けられている。各リア吹出口34,35とリア室内吹出口とは、後部座席に向けて空調風を吹き出すために、リア用ダクト34bによって接続されている。各リア吹出口34,35は、その開口断面積がリア用ドア30によって開閉制御される。リア用ドア30によって、第1のリア吹出口34が開状態になる場合はリア用ダクト34b内の通路をヒータコア21で加熱された空気が流れ、第2のリア吹出口35が開状態になる場合はリア用ダクト34b内の通路をエバポレータ20で冷却された空気が流れる。
【0031】
フット吹出口33は、空調ケース11上部のフェイス吹出口32よりも下方側に位置する。乗員の足元には、室内吹出口の一つであるフット室内吹出口(図示せず)が設けられている。フット吹出口33とフット室内吹出口とは、運転席および助手席の乗員の足元に向けて空調風を吹き出すために、フット用ダクト(図示せず)によって接続されている。フット吹出口33は、その開口断面積がフット用ドア29によって開閉制御される。
【0032】
各吹出口31〜35は、空調ケース11の内部を車両左右方向に二分する通路仕切り壁(図示せず)を中心として左右対称であり、車両の運転席側および助手席側の左右両方側に空調風を供給可能なように配置されている。また、各吹出口31〜35から吹き出される空調風は、接続された各ダクト31b,32b,34b内を通って車室内の所定の室内吹き出し部位に供給されることになる。
【0033】
また、デフロスタ用ドア27、フェイス用ドア28およびフット用ドア29のそれぞれは、回転軸と平板状のドア板とを有する片側支持式の板状ドアである。リア用ドア30は、回転軸と平板状のドア板とを有し、ドア板を円運動させる片面支持式の板状ドアである。送風機60、エアミックスドア23、デフ用ミックスドア24、デフロスタ用ドア27、フェイス用ドア28、フット用ドア29およびリア用ドア30の作動は、図示しない制御装置によって制御される。
【0034】
エバポレータ20は、たとえば空調ケース11の車両前方側に位置し、冷凍サイクル内の膨張弁で減圧された低温低圧の冷媒を送風機60の送風を受けて内部で蒸発させる冷却用熱交換器である。そして、冷媒が流れるチューブの周囲を通過する送風空気を冷却して下流の冷風通路22に冷風を供給する。
【0035】
ヒータコア21は、エバポレータ20よりも車両後方側の下部に位置し、走行用エンジンの高温の冷却水を熱源として送風空気と熱交換させ、周囲を流れる空気を加熱する加熱用熱交換器である。ヒータコア21は、エバポレータ20よりも空気流れ方向の下流側の通路を部分的に塞ぐように配置されている。
【0036】
デフ用ミックスドア24は、エバポレータ20よりも車両後方側に位置し、エバポレータ20を通過した空気が流下する下流側の通路である冷風通路22を開閉できるドアである。エアミックスドア23は、エバポレータ20よりも車両後方側に位置し、エバポレータ20を通過した空気が流下する冷風通路22および温風通路25を開閉できるドアである。
【0037】
エアミックスドア23およびデフ用ミックスドア24は、その開度位置により、ヒータコア21を通る温風の風量とヒータコア21を通過しない冷風の風量との比率を調節して、空調風の温度調節を行う。そして、エアミックスドア23およびデフ用ミックスドア24が図3の実線で示す位置にあるときは最大冷房時であり、温風通路25を閉めてヒータコア21への空気の流れを完全に遮断し、車室内に冷房風を提供する。なお、図3に示す状態は、フェイス吹き出しモードが設定されたときであり、エアミックスドア23、デフ用ミックスドア24、デフロスタ用ドア27、フェイス用ドア28、フット用ドア29、およびリア用ドア30も当該モードを実施する開度位置に設定されている。
【0038】
図4は、車両用空調装置10の構成を説明するための断面図であって、図3とはドアの開度位置が異なる状態を示す。エアミックスドア23およびデフ用ミックスドア24が図4に示す位置にあるときは最大暖房時であり、エアミックスチャンバ26に至る冷風通路22を閉めてエバポレータ20を通過した空気をすべてヒータコア21へ流して加熱し、車室内に暖房風を提供する。
【0039】
また、エアミックスドア23が図3と図4とで示す位置の中間の位置にあるときは、冷風通路22と温風通路25の両方が部分的に開放されて冷風と温風の両方が流下するようになり、各吹出口の上流側に設けられるエアミックスチャンバ26で混合し、温調されてから開放されている吹出口から吹き出され、ダクト内を通過して室内吹出口に送られる。
【0040】
温風通路25は、車両前方側に傾いた形態で、空調ケース11の下部から上方のエアミックスチャンバ26に向けて延びるように形成されている。温風通路25は、空調ケース11の車両左右方向全体に亘る幅寸法を有し、その幅寸法は車両前後方向の寸法よりも大きくなっている。つまり、温風通路25は、前後方向に薄く、横長で上下方向に長い扁平状の通路を呈している。
【0041】
フェイス吹出口32およびデフロスタ吹出口31は、エアミックスチャンバ26に臨む開口である。第1のリア吹出口34は、温風通路25に臨む開口である。第2のリア吹出口35は、エバポレータ20の下流側から、ヒータコア21よりも下方の位置に延びる通路に臨み、ヒータコア21を通らない冷風が吹き出される開口である。したがって、リア用ドア30が図3の実線で示す位置にあるときは、第1のリア吹出口34は閉じられて第2のリア吹出口35から冷風が吹き出される。また、リア用ドア30が図4の実線で示す位置にあるときは、第2のリア吹出口35は閉じられて第1のリア吹出口34から温風が吹き出される。
【0042】
本実施形態の車両用空調装置10には、空力音を低減するための空力音低減装置が設けられる。空力音低減装置は、複数の突起40を含む。複数の突起40は、スクロールケーシング62の壁面62bおよび空調ケース11の内壁11bの少なくとも一部の所定箇所に設けられる。突起40は、所定箇所から突出するように複数設けられる。図5は、複数の突起40の第1の例を示す斜視図である。スクロールケーシング62の壁面62bおよび空調ケース11の壁面11aに複数の突起40を設ける場合、たとえば複数の突起40を壁面11aに一体に設けられる。本実施形態ではスクロールケーシング62および空調ケース11と突起40との材質は同一であり、射出成型によって各ケース部材と突起40を一体成形する。また複数の突起40を各ドアに設ける場合も同様に、一体に設けられる。
【0043】
次に、突起40が設けられる場所に関して説明する。複数の突起40は、たとえば空気の流れを変更する変更部分に設けられる。変更部分とは、壁面11aの形状が変化して、空気の流れ方向を変更するために気流が衝突する面を有する部分である。壁面11aの形状が変化するとは、壁面11aが気流れに沿った直線状でなく、通路がたとえば屈曲、湾曲、拡大および縮小させるために壁面11aの形状が変化している部分である。また変更部分とは、通路抵抗によって風量が低下しない迎え角度を有する部分である。変更部分は、たとえば空気の流れ方向に対する迎え角が、30度以上であり、好ましくは40度以上であり、さらに好ましくは60度以上である。
【0044】
複数の突起40は、図1では模式的に示し、図2〜図4では斜線を施して示すように、スクロールケーシング62の壁面62b、空調ケース11の壁面11a、各ドアを構成するドア板の両面のうち少なくともいずれか一方に設けられる。以後、ドア板を単にドアということがある。
【0045】
スクロールケーシング62の壁面62bにおける一方の設置部位は、図1に示すように、ノーズ部62aである。ノーズ部62aは、気流の流れが不安定で時々刻々と気流の向きや流速の大きさが変化する部分である。またスクロールケーシング62の壁面62bにおける他方の設置部位63は、図2に示すように、吸い込んだ空気の流れ方向を吸込方向から遠心方向へ変更する部分である。他方の設置部位63は、スクロールケーシング62の壁面62bの吸込み側と反対側の一部の面である。送風機60作動時には、吸込み側から導入される気流が、遠心多翼ファン61の翼間で圧力が高められ翼外周(遠心方向)に押し出され、スクロールケーシング62に沿って吹出口に向けて送風される。他方の設置部位63は、導入される気流が翼の前縁に衝突して翼から放出された気流が衝突する部位である
空調ケース11の壁面11aにおける第1の設置部位41は、エバポレータ20の下流側であって、エバポレータ20と対向する位置である。空調ケース11の壁面11aにおける第2の設置部位42は、ヒータコア21の下流側であって、ヒータコア21に対向する位置である。空調ケース11の壁面11aにおける第3の設置部位43は、送風機60から空調ケース11内に空気が送風される部分である。したがって第3の設置部位43は、エバポレータ20の上流側であってスクロールケーシング62に至る通路を構成する部位のうち、エバポレータ20に空気を向かうように空気流れを変更する部分である。
【0046】
さらに各ドアのうち、フェイス用ドア28およびリア用ドア30には、各ドアを閉じた際に、空調ケース11の内側となる面に突起40が設けられる。したがってフェイス用ドア28およびガイドについては、閉状態にあるときに、空調ケース11の内側に位置する面に複数の突起40が設けられる。またリア用ドア30については、図3に示すように、第1のリア吹出口34を閉じている場合に、ヒータコア21に対向する面に複数の突起40が設けられる。またエアミックスドア23については、両面に複数の突起40が設けられる。
【0047】
さらに図示は省略するが、フェイス用ドア28の周辺およびリア用ドア30周囲には、各ドアへ空気を導くガイド(図示せず)が設けられる。ガイドの壁面のうち、少なくとも空気が衝突して、各ドアへ向かう方向へ空気を案内する面に突起40が設けられる。またエアミックスチャンバ26の壁面には、リブ(図示せず)が設けられる。リブは、冷風と温風との混合の割合を調整するためのものである。このようなリブも空調ケース11の壁面11aの一部を構成し、空気が衝突する部分であるので、リブの表面にも複数の突起40が設けられる。混合の割合を調整するリブには、冷風と温風との混合を避ける(混合割合を0にする)ためのリブも含む。
【0048】
空調ケース11においては、前述のような部位に突起40が設けられるので、たとえば図3に示す冷房時には、破線で示すように、エバポレータ20を通過した気流の一部がエアミックスドア23に衝突し、フェイス吹出口32に向かう方向へ気流方向が変更される。またエバポレータ20を通過した気流の他部は、第1の設置部位41に衝突し、リア用ダクト34bに向かう方向へ気流方向が変更される。またフェイス用ドア28、およびエアミックスドア23の裏面に設けられた突起40は気流の流れと接していないので、突起40によって風量低下を引き起こすことがないような部分である。
【0049】
また図4に示す暖房時は、破線で示すように、エバポレータ20を通過した気流の一部がエアミックスドア23の裏面に衝突し、ヒータコア21に向かう方向へ気流方向が変更される。ヒータコア21を通過した気流は、第2の設置部位42に衝突し、さらにフェイス用ドア28の内側の面に衝突し、フット用ドア29に向かう方向へ気流方向が変更される。またエバポレータ20を通過した気流の他部は、リア用ドア30に衝突し、リア室内吹出口へ向かうように気流方向が変更される。またエアミックスドア23の表面、第1の設置部位41に設けられた突起40は気流の流れと接していないので、突起40によって風量低下を引き起こすことがないような部分である。
【0050】
次に、突起40の形状に関して説明する。図6は、突起40の第1の例を示す側面図である。図7は、従来の突起40Zを比較例として示す側面図である。図6および図7では、突起40の直径を簡略化して線状に示す。図6に示す突起40は、エアミックスドア23に設けられる突起40である。各突起40は、円柱状に形成される。また複数の突起40は、エアミックスドア23の表面から垂直に突出するように形成されている。
【0051】
複数の突起40のうち一部の突起40は、周囲の突起40と形状が異なる。突起40の形状とは、突起40の外形、高さおよび直径なども含む。図6に示すように、複数の突起40のうち一部の突起40は、空気の流れ上流側から空気の流れの下流にある中央まで、突起40の高さが大きくなっている。また複数の突起40のうち一部の突起40は、中央から空気の流れの下流になるにつれて、突起40の高さが小さくなっている。換言すると、複数の突起40は、空気の流れ方向の中央の突起40が高くなり、中央が高く裾野が低い山形に形成されている。これに対して図7に示すように比較例の突起40Zは、高さが一様である。
【0052】
空気の流れ方向を変更するとき、エアミックスドア23の表面に沿う流れが発生する。このようなエアミックスドア23に設ける突起40の一部を上流から下流に向けて徐々に高さを高くしている。図6および図7では、矢印で示すように、左から右に向かって空気が流れている状態を示している。これによって、上流から下流に向けて徐々に空気抵抗を高めることができる。図7の比較例では、突起40Zの開始位置付近で乱れが集中して新たに乱れが発生している。これに対して図6に示すように突起40の開始位置(上流側の位置)付近での乱れを低減でき、充分な騒音低減効果を得ることができる。
【0053】
また、突起40の下流部では上流から下流に向けて徐々に高さを低くしている。これによって、上流から下流に向けて徐々に空気抵抗を低くすることができる。図7の比較例では、突起40Zの終了位置付近で乱れが集中して乱れが新たに発生している。これに対して図6に示すように、突起40の終了位置付近での乱れを低減でき、充分な騒音低減効果を得ることができる。
【0054】
図8は、突起40の第2の例を示す側面図である。図9は、従来の突起40Zを比較例として示す側面図である。図8に示す突起40は、下流側が下方に向かって傾斜している部分に設けられる突起40である。図8および図9では、突起40の直径を簡略化して線状に示す。また図8および図9では、矢印で示すように、左から右に向かって空気が流れている状態を示している。
【0055】
図8に示すように、複数の突起40のうち下流側の一部の突起40は、空気の流れの下流になるにつれて、突起40の高さが小さくなっている。これに対して図7に示すように比較例の突起40Zは、高さが一様である。
【0056】
たとえば、エアミックスドア23の下流側の端部で気流が剥離する位置では、下流ほど高さを低くしている。図9の比較例では、気流が剥離して逆流した流れが発生している。これに対して図8に示すように、低い突起40によって逆流を緩和することができる。したがって突起40の終了位置付近で乱れが集中して新たに発生する乱れを低減でき、充分な騒音低減効果を得ることができる。
【0057】
図10は、突起40の第3の例の気流の乱れを示すグラフである。図11は、従来の突起40の気流の乱れを示すグラフである。図10および図11では、突起40の側面から状態を仮想的に示して、突起40の位置関係とグラフとの関係を示している。図10に示す突起40は、第1の設置部位41に設けられる突起40である。また図10および図11では、矢印で示すように、左から右に向かって空気が流れている状態を示している。複数の突起40のうち少なくとも一部の突起40は、隣接する突起40と高さが異なるように形成され、本例では流れ方向に隣接する突起40の高さが互いに異なる。換言すると、突起40の高さが不均一である。
【0058】
図11の比較例では、突起40Zの高さが一様であるので、気流の乱れ(渦度変数)が突起40の頂点で値が大きくなっている。これに対して図10に示すように、突起40の中で高さを不均一にすると気流の乱れの大きい位置が高さ方向で分散するため、流れ全体での乱れを低減でき、充分な騒音低減効果を得ることができる。
【0059】
図12は、突起40の第4の例を示す平面図である。図13は、従来の突起40Zを比較例として示す平面図である。図12に示す突起40は、エアミックスドア23に設けられる突起40である。図12および図13では、矢印で示すように、左から右に向かって空気が流れている状態を示している。複数の突起40のうち少なくとも一部の突起40は、隣接する突起40と間隔が、周囲に配置されている他の突起40同士との間隔と異なるように形成される。換言すると、突起40の間隔が不均一である。
【0060】
図13の比較例では、隣接する突起40Zとの間隔が一様であるので、突起40Zの間隔を貫通する流れが発生し、気流の乱れを充分に抑制することができない。これに対して図12に示すように、突起40の間隔を不均一にすると、間隔を貫通するような流れを防ぐことができ、気流の乱れを抑制することができる。
【0061】
以上説明したように本実施形態の車両用空調装置10における空力音低減装置では、複数の突起40のうち一部の突起40は、周囲の突起40と形状が異なるか、または一部に設けられる突起40の間隔が周囲の突起40の間隔と異なる。したがって乱れた気流と接して音を発生する位置に、複数の不均一な形状の突起40、または不均一な位置に突起40を設置することで、騒音低減効果を高めている。一部の突起40の形状などが異ならせて、突起40の形状などを不均一にすることで、突起40によって新たに発生する乱れの位置を分散することができる。したがって突起40によって壁面付近の気流の乱れを抑制するとともに、突起40によって新たに発生する乱れを低減でき、充分な騒音低減効果を得ることができる。
【0062】
また本実施形態では、複数の突起40のうち一部の突起40は、空気の流れの下流ほど、突起40の高さが大きい。したがって空気の流れの上流から下流に向けて徐々に抵抗を高めることができる。これによって気流が剥離して逆流した流れを緩和することができ、突起40の開始位置付近で乱れが集中して新たに発生する乱れを低減できるので充分な騒音低減効果を得ることができる。また突起40の高さを大きくするに限るものではなく、突起40の直径が大きく、または間隔が小さくしてもよく、これらを組み合わせてもよい。
【0063】
さらに本実施形態では、複数の突起40のうち一部の突起40は、空気の流れの下流ほど、突起40の高さが小さい。したがって空気の流れに上流から下流に向けて徐々に抵抗を低くすることができる。これによって突起40の終了位置付近で乱れが集中して新たに発生する乱れを低減でき、充分な騒音低減効果を得ることができる。また突起40の高さを小さくするに限るものではなく、突起40の直径が小さく、または間隔が大きくしてもよく、これらを組み合わせてもよい。
【0064】
また本実施形態では、複数の突起40のうち一部の突起40は、周囲の突起40に比べて高または間隔が異なる。したがって、たとえば隣り合う突起40の高さ、または間隔の少なくとも1つを不均一にしている。これによって、たとえば、突起40群の中で高さを不均一にすると気流の乱れの大きい位置が高さ方向で分散するため、空気流れ全体での乱れを低減でき、充分な騒音低減効果を得ることができる。また突起40の高さおよび間隔に限るものではなく、突起40の直径および外形、これらを組み合わせてもよい。
【0065】
たとえば突起40の形状を円柱状ではなく、長円柱状にして、突起40の長辺が気流の流れと平行となるようにするとともに、突起40の位置を不均一にしてもよい。長円柱条にすると強度が高くなるので、成型による加工しやすく、突起40の向きを気流の流れと平行にすることで、流れが突起40にぶつかる位置で乱れが集中して新たに発生する乱れを低減でき、充分な騒音低減効果を得ることができる。
【0066】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に関して、図14〜図16を用いて説明する。図14は、本実施形態の突起40Aを示す平面図である。図15は、従来の突起40Zを比較例として示す平面図である。図16は、従来の突起40Zを比較例として示す平面図である。図15と図16とでは、流れ込む空気の流れ方向が互いに異なる。
【0067】
突起40Aの外形の長円柱状には、小判状および楕円柱状も含む。突起40Aは、予め定める第1方向に延びる。また各突起40Aの第1方向が延びる方向(向き)は、図14に示すように、一様でなく不均一である。これに対して、比較例では、向きが一様である。
【0068】
複数の突起40Aのそれぞれは、断面形状において、第1方向(長さ方向)の長さ寸法(図15の左右方向の寸法)が第1方向に直交する第2方向(幅方向)の幅寸法W(図15の上下方向の長さ寸法)よりも大きい。断面形状は、突起40Aを壁面11aと平行な仮想一平面で切断した場合の断面形状である。したがって断面形状は、突起40Aの断面形状が変わらない柱状の場合には、壁面11aに向かって見た場合の形状と同一である。
【0069】
図12に示す突起40Aは、たとえばエアミックスチャンバ26内に設けられる突起40Aである。冷房時にフェイス吹出口32から気流を吹き出す場合と、除湿時にデフロスタ吹出口31から気流を吹き出す場合とで、エアミックスチャンバ26内では風向が大きく異なる。
【0070】
図15および図16の比較例では、向きが一様であるので、図15に示す右方に向かう空気流れの場合は効果があるが、図16に示す上方に向かう空気流れの場合には、乱れが集中して騒音低減効果を充分に得ることができない。これに対して図14に示すように、向きが不均一であると、いずれの方向の流れに対しても乱れが集中することを防止でき、充分な騒音低減効果を得ることができる。
【0071】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0072】
前述の第1実施形態および第2実施形態では、複数の突起40は、円柱状または長円柱状であったが、このような形状に限定するものではない。たとえば断面形状は、第1方向に延びる菱形状であってもよく、長方形状であってもよい。また根本から先端に向けてテーパ状に縮径する形状であってもよい。また各突起40は、底面(壁面)に対して傾斜していてもよい。
【0073】
また前述の第1実施形態では、空気音低減装置は車両用空調装置10に設けられるが、車両用空調装置10に限るものではなく、空調装置以外であってもよく、たとえば機器冷却用の冷却用送風機などに適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
10…車両用空調装置
11…空調ケース(通路部材)
11a…壁面
13…送風通路(通路)
20…エバポレータ
21…ヒータコア
22…冷風通路(通路)
23…エアミックスドア
25…温風通路(通路)
26…エアミックスチャンバ
28…フェイス用ドア
29…フット用ドア
30…リア用ドア
40,40A…突起
60…送風機
62…スクロールケーシング
【技術分野】
【0001】
本発明は、気流の乱れによって発生する空力音を低減する空力音低減装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および2には、空調および冷却用の送風装置から発生する空力音を低減するため、物体表面に圧力変動を低減する部材(以下、「低減部材」ということがある)を設けている。低減部材として、たとえば羽毛状または円柱状の突起、または毛皮状の繊維状部材を設ける構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−225048号公報
【特許文献2】特開2006−159924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のように従来技術では、空力音を低減するため低減部材を設けているが、低減部材が突起物であり、部分的に突起を設けた場合、突起の有無の境界付近で気流の乱れが集中することがある。このような突起の有無の境界が新たな音源となって騒音低減効果を充分に得られないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は前述の問題点を鑑みてなされたものであり、突起の有無による気流の乱れを低減することができる空力音低減装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前述の目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0007】
請求項1に記載の発明では、空気が流れる通路(13,22,25)を形成する通路部材(11)に設けられる空力音低減装置であって、
通路部材の壁面(11a)の一部から突出するように、壁面に設けられる複数の突起(40)を含み、
複数の突起が設けられる部位の一部に設けられる突起は、一部の突起の周囲の突起と形状が異なるか、または一部に設けられる突起の間隔は、周囲に設けられる突起の間隔と異なることを特徴とする空力音低減装置である。
【0008】
請求項1に記載の発明に従えば、一部の突起は、周囲の突起と形状が異なるか、または突起の間隔が異なる。突起が設けられると、突起が設けられた部位内の不特定の位置に気流の乱れが発生する。このような気流の乱れは、突起の形状および間隔が一定であると、大きくなる傾向にある。そこで突起の形状などを異ならせて、突起の形状などを不均一にすることで、突起によって新たに発生する乱れの位置を、突起の形状などが一様の場合に比べて分散することができる。したがって突起によって壁面付近の気流の乱れを抑制するとともに、突起によって新たに発生する乱れを低減でき、充分な騒音低減効果を得ることができる。
【0009】
また請求項2に記載の発明では、複数の突起は、空気が壁面に沿って流れる部位に設けられ、
複数の突起のうち空気流れ上流側に位置する一部の突起は、空気流れ下流ほど、突起の高さが大きく、直径が大きく、または間隔が小さいことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明に従えば、複数の突起のうち空気流れ上流側に位置する一部の突起は、空気の流れの下流ほど、突起の高さが大きく、直径が大きく、または間隔が小さい。したがって空気の流れの上流から下流に向けて徐々に抵抗を高めることができる。これによって気流が剥離して逆流した流れを緩和することができ、突起の開始位置付近で乱れが集中して新たに発生する乱れを低減できるので充分な騒音低減効果を得ることができる。
【0011】
さらに請求項3に記載の発明では、複数の突起は、空気が壁面に沿って流れる部位に設けられ、
複数の突起のうち空気流れ下流側に位置する一部の突起は、空気流れ下流ほど、突起の高さが小さく、直径が小さく、または間隔が大きいことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明に従えば、複数の突起のうち空気流れ下流側に位置する一部の突起は、空気の流れの下流ほど、突起の高さが小さく、直径が小さく、または間隔が大きい。したがって空気の流れに上流から下流に向けて徐々に抵抗を低くすることができる。これによって突起の終了位置付近で乱れが集中して新たに発生する乱れを低減でき、充分な騒音低減効果を得ることができる。
【0013】
さらに請求項4に記載の発明では、複数の突起のうち一部の突起は、周囲の突起に比べて高さ、直径および間隔のうち少なくとも1つが異なることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明に従えば、複数の突起のうち一部の突起は、周囲の突起に比べて高さ、直径および間隔の少なくとも1つが異なる。したがって突起の高さ、直径、間隔を不均一にしている。これによって、たとえば、突起群の中で高さを不均一にすると気流の乱れの大きい位置が高さ方向で分散するため、空気流れ全体での乱れを低減でき、充分な騒音低減効果を得ることができる。
【0015】
さらに請求項5に記載の発明では、複数の突起のそれぞれは、断面形状において、空気の流れ方向の長さ寸法が流れ方向に直交する幅方向の幅寸法よりも大きく、
複数の突起のうち一部の突起は、周囲の突起と間隔が異なることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明に従えば、複数の突起のそれぞれは、断面形状において、空気の流れ方向の長さ寸法が流れ方向に直交する幅方向の幅寸法よりも大きく、複数の突起のうち一部の突起は、突起の間隔が異なる。したがって各突起を空気の流れ方向に延びるように配置するとともに、突起の位置を不均一にしている。したがって成型による加工しやすさで有利な長手状の突起を使用する場合、突起の向きを気流の流れと平行にすることで、流れが突起にぶつかる位置で乱れが集中して新たに発生する乱れを低減でき、充分な騒音低減効果を得ることができる。
【0017】
さらに請求項6に記載の発明では、複数の突起のそれぞれは、断面形状において、予め設定される第1方向の長さ寸法が第1方向に直交する第2方向の幅寸法よりも大きく、
複数の突起のうち一部の突起は、第1方向が延びる向きが、周囲の突起における第1方向の延びる向きと異なることを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の発明に従えば、複数の突起のそれぞれは、断面形状において、予め設定される第1方向の長さ寸法が第1方向に直交する第2方向の幅寸法よりも大きく、複数の突起のうち一部の突起は、周囲の突起と第1方向の延びる向きが異なる。したがって、たとえば空気を流れる通路が車両用空調装置の様に風向が吹出モードによって変化する場合において、複数の突起がいずれの方向の流れに対しても乱れが集中することを防止でき、充分な騒音低減効果を得ることができる。
【0019】
なお、前述の各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】車両用空調装置10および送風機60の概略構成を示す模式図である。
【図2】送風機60を示す断面図である。
【図3】車両用空調装置10の概略構成を示す模式図である。
【図4】車両用空調装置10の構成を説明するための断面図ある。
【図5】複数の突起40の第1の例を示す斜視図である。
【図6】突起40の第1の例を示す側面図である。
【図7】従来の突起40Zを比較例として示す側面図である。
【図8】突起40の第2の例を示す側面図である。
【図9】従来の突起40Zを比較例として示す側面図である。
【図10】突起40の第3の例の気流の乱れを示すグラフである。
【図11】従来の突起40の気流の乱れを示すグラフである。
【図12】突起40の第4の例を示す平面図である。
【図13】従来の突起40Zを比較例として示す平面図である。
【図14】本実施形態の突起40Aを示す平面図である。
【図15】従来の突起40Zを比較例として示す平面図である。
【図16】従来の突起40Zを比較例として示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を、複数の形態について説明する。各実施形態で先行する実施形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付すか、または先行の参照符号に一文字追加し、重複する説明を略する場合がある。また各実施形態にて構成の一部を説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している実施形態と同様とする。各実施形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0022】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に関して、図1〜図13を用いて説明する。図1は、車両用空調装置10および送風機60の概略構成を示す模式図である。図2は、送風機60を示す断面図である。図3は、車両用空調装置10の概略構成を示す模式図である。車両用空調装置10は、車室内空調運転の実施可能な装置である。
【0023】
車両用空調装置10は、外殻が空調ケース11で構成されており、大別して送風部と空調部を備えている。空調ケース11は、車室内前方のインストルメントパネル12の裏側に配置されている。空調ケース11は、内方に空気が流れる通路を形成する通路部材としての機能を有する。空調ケース11は、複数のケース部材からなり、例えばポリプロピレンなどの樹脂成形品である。複数のケース部材は、金属ばね、ねじ等の締結手段によって一体的に結合されて空調ケース11を構成している。
【0024】
さらに車両用空調装置10は、車室内に向けて左右の吹出し口からそれぞれに温調された空気を供給する装置であり、運転席側と助手席側とにおいて独立に空調設定を可変できる、いわゆる左右独立温度コントロールを実現する。そして、車両用空調装置10の空調ケース11内部には、左右別々に温調された通風が混ざらないように中間仕切り板14が設けられ、中間仕切り板14によって空調ケース11内部は、車両左右方向に二つの通風路に区画されている。
【0025】
送風部は、車室内または車室外の空気を空調部に送風するための送風機60を備え、送風機60の吹出口は空調部の入口に至る送風通路13と接続されている。送風機60は、遠心多翼ファン61とこれを駆動するモータ64とからなり、遠心多翼ファン61の周囲はスクロールケーシング62で囲まれ、遠心多翼ファン61の遠心方向に伸びるダクトによって送風通路13と連通している。
【0026】
スクロールケーシング62は、遠心多翼ファン61を収納するとともに、遠心多翼ファン61から吹き出す空気の通路を構成する渦巻き状の部材である。スクロールケーシング62の壁面62bには、ノーズ部62aを有する。ノーズ部62aは、スクロールケーシング62の巻き始め側と巻き終わり側との重なる部分であって、巻き始め側の部分である。ノーズ部62aでは、空気上流側と空気下流とが、僅かな隙間を介して連通している。
【0027】
空調部は、送風通路13全体を横断的に塞いで設けられたエバポレータ20と、エバポレータ20を通過してきた空気を加熱するヒータコア21と、冷風通路22と、エアミックスドア23、デフ用ミックスドア24と、温風通路25と、温風と冷風が混合する空間のエアミックスチャンバ26と、デフロスタ用ドア27と、フェイス用ドア28と、フット用ドア29と、リア用ドア30とを空調ケース11の内部に備えている。さらに空調ケース11には、冷風通路22および温風通路25の下流側に複数個の吹出口31〜34が形成されており、ここでは、空調ケース11の吹出口の一例であるデフロスタ吹出口31、フェイス吹出口32、フット吹出口33および第1のリア吹出口34、第2のリア吹出口35が設けられている。
【0028】
デフロスタ吹出口31は、空調ケース11の車両前方側の上部に位置する。インストルメントパネル12のフロントウィンドウガラス12a付近の車両前方部には、室内吹出口の一つであるデフロスタ室内吹出口31aが設けられている。デフロスタ吹出口31とデフロスタ室内吹出口31aは、曇り度合いを低減するために空調風がフロントウィンドウガラス12a等の室内側面に沿うように、デフロスタ用ダクト31bによって接続されている。デフロスタ吹出口31は、デフロスタ用ドア27によって開閉制御される。
【0029】
フェイス吹出口32は、空調ケース11上部のデフロスタ吹出口31よりも車両後方側に位置する。インストルメントパネル12の車両後方側の前面には、車室内に露出する室内吹出口の一つであるフェイス室内吹出口32aが設けられている。フェイス吹出口32とフェイス室内吹出口32aは、運転席および助手席の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すために、フェイス用ダクト32bによって接続されている。フェイス吹出口32は、フェイス用ドア28によって開閉制御される。
【0030】
各リア吹出口34,35は、空調ケース11下部の車両後方側に位置する。後部座席には、室内吹出口の一つであるリア室内吹出口(図示せず)が設けられている。各リア吹出口34,35とリア室内吹出口とは、後部座席に向けて空調風を吹き出すために、リア用ダクト34bによって接続されている。各リア吹出口34,35は、その開口断面積がリア用ドア30によって開閉制御される。リア用ドア30によって、第1のリア吹出口34が開状態になる場合はリア用ダクト34b内の通路をヒータコア21で加熱された空気が流れ、第2のリア吹出口35が開状態になる場合はリア用ダクト34b内の通路をエバポレータ20で冷却された空気が流れる。
【0031】
フット吹出口33は、空調ケース11上部のフェイス吹出口32よりも下方側に位置する。乗員の足元には、室内吹出口の一つであるフット室内吹出口(図示せず)が設けられている。フット吹出口33とフット室内吹出口とは、運転席および助手席の乗員の足元に向けて空調風を吹き出すために、フット用ダクト(図示せず)によって接続されている。フット吹出口33は、その開口断面積がフット用ドア29によって開閉制御される。
【0032】
各吹出口31〜35は、空調ケース11の内部を車両左右方向に二分する通路仕切り壁(図示せず)を中心として左右対称であり、車両の運転席側および助手席側の左右両方側に空調風を供給可能なように配置されている。また、各吹出口31〜35から吹き出される空調風は、接続された各ダクト31b,32b,34b内を通って車室内の所定の室内吹き出し部位に供給されることになる。
【0033】
また、デフロスタ用ドア27、フェイス用ドア28およびフット用ドア29のそれぞれは、回転軸と平板状のドア板とを有する片側支持式の板状ドアである。リア用ドア30は、回転軸と平板状のドア板とを有し、ドア板を円運動させる片面支持式の板状ドアである。送風機60、エアミックスドア23、デフ用ミックスドア24、デフロスタ用ドア27、フェイス用ドア28、フット用ドア29およびリア用ドア30の作動は、図示しない制御装置によって制御される。
【0034】
エバポレータ20は、たとえば空調ケース11の車両前方側に位置し、冷凍サイクル内の膨張弁で減圧された低温低圧の冷媒を送風機60の送風を受けて内部で蒸発させる冷却用熱交換器である。そして、冷媒が流れるチューブの周囲を通過する送風空気を冷却して下流の冷風通路22に冷風を供給する。
【0035】
ヒータコア21は、エバポレータ20よりも車両後方側の下部に位置し、走行用エンジンの高温の冷却水を熱源として送風空気と熱交換させ、周囲を流れる空気を加熱する加熱用熱交換器である。ヒータコア21は、エバポレータ20よりも空気流れ方向の下流側の通路を部分的に塞ぐように配置されている。
【0036】
デフ用ミックスドア24は、エバポレータ20よりも車両後方側に位置し、エバポレータ20を通過した空気が流下する下流側の通路である冷風通路22を開閉できるドアである。エアミックスドア23は、エバポレータ20よりも車両後方側に位置し、エバポレータ20を通過した空気が流下する冷風通路22および温風通路25を開閉できるドアである。
【0037】
エアミックスドア23およびデフ用ミックスドア24は、その開度位置により、ヒータコア21を通る温風の風量とヒータコア21を通過しない冷風の風量との比率を調節して、空調風の温度調節を行う。そして、エアミックスドア23およびデフ用ミックスドア24が図3の実線で示す位置にあるときは最大冷房時であり、温風通路25を閉めてヒータコア21への空気の流れを完全に遮断し、車室内に冷房風を提供する。なお、図3に示す状態は、フェイス吹き出しモードが設定されたときであり、エアミックスドア23、デフ用ミックスドア24、デフロスタ用ドア27、フェイス用ドア28、フット用ドア29、およびリア用ドア30も当該モードを実施する開度位置に設定されている。
【0038】
図4は、車両用空調装置10の構成を説明するための断面図であって、図3とはドアの開度位置が異なる状態を示す。エアミックスドア23およびデフ用ミックスドア24が図4に示す位置にあるときは最大暖房時であり、エアミックスチャンバ26に至る冷風通路22を閉めてエバポレータ20を通過した空気をすべてヒータコア21へ流して加熱し、車室内に暖房風を提供する。
【0039】
また、エアミックスドア23が図3と図4とで示す位置の中間の位置にあるときは、冷風通路22と温風通路25の両方が部分的に開放されて冷風と温風の両方が流下するようになり、各吹出口の上流側に設けられるエアミックスチャンバ26で混合し、温調されてから開放されている吹出口から吹き出され、ダクト内を通過して室内吹出口に送られる。
【0040】
温風通路25は、車両前方側に傾いた形態で、空調ケース11の下部から上方のエアミックスチャンバ26に向けて延びるように形成されている。温風通路25は、空調ケース11の車両左右方向全体に亘る幅寸法を有し、その幅寸法は車両前後方向の寸法よりも大きくなっている。つまり、温風通路25は、前後方向に薄く、横長で上下方向に長い扁平状の通路を呈している。
【0041】
フェイス吹出口32およびデフロスタ吹出口31は、エアミックスチャンバ26に臨む開口である。第1のリア吹出口34は、温風通路25に臨む開口である。第2のリア吹出口35は、エバポレータ20の下流側から、ヒータコア21よりも下方の位置に延びる通路に臨み、ヒータコア21を通らない冷風が吹き出される開口である。したがって、リア用ドア30が図3の実線で示す位置にあるときは、第1のリア吹出口34は閉じられて第2のリア吹出口35から冷風が吹き出される。また、リア用ドア30が図4の実線で示す位置にあるときは、第2のリア吹出口35は閉じられて第1のリア吹出口34から温風が吹き出される。
【0042】
本実施形態の車両用空調装置10には、空力音を低減するための空力音低減装置が設けられる。空力音低減装置は、複数の突起40を含む。複数の突起40は、スクロールケーシング62の壁面62bおよび空調ケース11の内壁11bの少なくとも一部の所定箇所に設けられる。突起40は、所定箇所から突出するように複数設けられる。図5は、複数の突起40の第1の例を示す斜視図である。スクロールケーシング62の壁面62bおよび空調ケース11の壁面11aに複数の突起40を設ける場合、たとえば複数の突起40を壁面11aに一体に設けられる。本実施形態ではスクロールケーシング62および空調ケース11と突起40との材質は同一であり、射出成型によって各ケース部材と突起40を一体成形する。また複数の突起40を各ドアに設ける場合も同様に、一体に設けられる。
【0043】
次に、突起40が設けられる場所に関して説明する。複数の突起40は、たとえば空気の流れを変更する変更部分に設けられる。変更部分とは、壁面11aの形状が変化して、空気の流れ方向を変更するために気流が衝突する面を有する部分である。壁面11aの形状が変化するとは、壁面11aが気流れに沿った直線状でなく、通路がたとえば屈曲、湾曲、拡大および縮小させるために壁面11aの形状が変化している部分である。また変更部分とは、通路抵抗によって風量が低下しない迎え角度を有する部分である。変更部分は、たとえば空気の流れ方向に対する迎え角が、30度以上であり、好ましくは40度以上であり、さらに好ましくは60度以上である。
【0044】
複数の突起40は、図1では模式的に示し、図2〜図4では斜線を施して示すように、スクロールケーシング62の壁面62b、空調ケース11の壁面11a、各ドアを構成するドア板の両面のうち少なくともいずれか一方に設けられる。以後、ドア板を単にドアということがある。
【0045】
スクロールケーシング62の壁面62bにおける一方の設置部位は、図1に示すように、ノーズ部62aである。ノーズ部62aは、気流の流れが不安定で時々刻々と気流の向きや流速の大きさが変化する部分である。またスクロールケーシング62の壁面62bにおける他方の設置部位63は、図2に示すように、吸い込んだ空気の流れ方向を吸込方向から遠心方向へ変更する部分である。他方の設置部位63は、スクロールケーシング62の壁面62bの吸込み側と反対側の一部の面である。送風機60作動時には、吸込み側から導入される気流が、遠心多翼ファン61の翼間で圧力が高められ翼外周(遠心方向)に押し出され、スクロールケーシング62に沿って吹出口に向けて送風される。他方の設置部位63は、導入される気流が翼の前縁に衝突して翼から放出された気流が衝突する部位である
空調ケース11の壁面11aにおける第1の設置部位41は、エバポレータ20の下流側であって、エバポレータ20と対向する位置である。空調ケース11の壁面11aにおける第2の設置部位42は、ヒータコア21の下流側であって、ヒータコア21に対向する位置である。空調ケース11の壁面11aにおける第3の設置部位43は、送風機60から空調ケース11内に空気が送風される部分である。したがって第3の設置部位43は、エバポレータ20の上流側であってスクロールケーシング62に至る通路を構成する部位のうち、エバポレータ20に空気を向かうように空気流れを変更する部分である。
【0046】
さらに各ドアのうち、フェイス用ドア28およびリア用ドア30には、各ドアを閉じた際に、空調ケース11の内側となる面に突起40が設けられる。したがってフェイス用ドア28およびガイドについては、閉状態にあるときに、空調ケース11の内側に位置する面に複数の突起40が設けられる。またリア用ドア30については、図3に示すように、第1のリア吹出口34を閉じている場合に、ヒータコア21に対向する面に複数の突起40が設けられる。またエアミックスドア23については、両面に複数の突起40が設けられる。
【0047】
さらに図示は省略するが、フェイス用ドア28の周辺およびリア用ドア30周囲には、各ドアへ空気を導くガイド(図示せず)が設けられる。ガイドの壁面のうち、少なくとも空気が衝突して、各ドアへ向かう方向へ空気を案内する面に突起40が設けられる。またエアミックスチャンバ26の壁面には、リブ(図示せず)が設けられる。リブは、冷風と温風との混合の割合を調整するためのものである。このようなリブも空調ケース11の壁面11aの一部を構成し、空気が衝突する部分であるので、リブの表面にも複数の突起40が設けられる。混合の割合を調整するリブには、冷風と温風との混合を避ける(混合割合を0にする)ためのリブも含む。
【0048】
空調ケース11においては、前述のような部位に突起40が設けられるので、たとえば図3に示す冷房時には、破線で示すように、エバポレータ20を通過した気流の一部がエアミックスドア23に衝突し、フェイス吹出口32に向かう方向へ気流方向が変更される。またエバポレータ20を通過した気流の他部は、第1の設置部位41に衝突し、リア用ダクト34bに向かう方向へ気流方向が変更される。またフェイス用ドア28、およびエアミックスドア23の裏面に設けられた突起40は気流の流れと接していないので、突起40によって風量低下を引き起こすことがないような部分である。
【0049】
また図4に示す暖房時は、破線で示すように、エバポレータ20を通過した気流の一部がエアミックスドア23の裏面に衝突し、ヒータコア21に向かう方向へ気流方向が変更される。ヒータコア21を通過した気流は、第2の設置部位42に衝突し、さらにフェイス用ドア28の内側の面に衝突し、フット用ドア29に向かう方向へ気流方向が変更される。またエバポレータ20を通過した気流の他部は、リア用ドア30に衝突し、リア室内吹出口へ向かうように気流方向が変更される。またエアミックスドア23の表面、第1の設置部位41に設けられた突起40は気流の流れと接していないので、突起40によって風量低下を引き起こすことがないような部分である。
【0050】
次に、突起40の形状に関して説明する。図6は、突起40の第1の例を示す側面図である。図7は、従来の突起40Zを比較例として示す側面図である。図6および図7では、突起40の直径を簡略化して線状に示す。図6に示す突起40は、エアミックスドア23に設けられる突起40である。各突起40は、円柱状に形成される。また複数の突起40は、エアミックスドア23の表面から垂直に突出するように形成されている。
【0051】
複数の突起40のうち一部の突起40は、周囲の突起40と形状が異なる。突起40の形状とは、突起40の外形、高さおよび直径なども含む。図6に示すように、複数の突起40のうち一部の突起40は、空気の流れ上流側から空気の流れの下流にある中央まで、突起40の高さが大きくなっている。また複数の突起40のうち一部の突起40は、中央から空気の流れの下流になるにつれて、突起40の高さが小さくなっている。換言すると、複数の突起40は、空気の流れ方向の中央の突起40が高くなり、中央が高く裾野が低い山形に形成されている。これに対して図7に示すように比較例の突起40Zは、高さが一様である。
【0052】
空気の流れ方向を変更するとき、エアミックスドア23の表面に沿う流れが発生する。このようなエアミックスドア23に設ける突起40の一部を上流から下流に向けて徐々に高さを高くしている。図6および図7では、矢印で示すように、左から右に向かって空気が流れている状態を示している。これによって、上流から下流に向けて徐々に空気抵抗を高めることができる。図7の比較例では、突起40Zの開始位置付近で乱れが集中して新たに乱れが発生している。これに対して図6に示すように突起40の開始位置(上流側の位置)付近での乱れを低減でき、充分な騒音低減効果を得ることができる。
【0053】
また、突起40の下流部では上流から下流に向けて徐々に高さを低くしている。これによって、上流から下流に向けて徐々に空気抵抗を低くすることができる。図7の比較例では、突起40Zの終了位置付近で乱れが集中して乱れが新たに発生している。これに対して図6に示すように、突起40の終了位置付近での乱れを低減でき、充分な騒音低減効果を得ることができる。
【0054】
図8は、突起40の第2の例を示す側面図である。図9は、従来の突起40Zを比較例として示す側面図である。図8に示す突起40は、下流側が下方に向かって傾斜している部分に設けられる突起40である。図8および図9では、突起40の直径を簡略化して線状に示す。また図8および図9では、矢印で示すように、左から右に向かって空気が流れている状態を示している。
【0055】
図8に示すように、複数の突起40のうち下流側の一部の突起40は、空気の流れの下流になるにつれて、突起40の高さが小さくなっている。これに対して図7に示すように比較例の突起40Zは、高さが一様である。
【0056】
たとえば、エアミックスドア23の下流側の端部で気流が剥離する位置では、下流ほど高さを低くしている。図9の比較例では、気流が剥離して逆流した流れが発生している。これに対して図8に示すように、低い突起40によって逆流を緩和することができる。したがって突起40の終了位置付近で乱れが集中して新たに発生する乱れを低減でき、充分な騒音低減効果を得ることができる。
【0057】
図10は、突起40の第3の例の気流の乱れを示すグラフである。図11は、従来の突起40の気流の乱れを示すグラフである。図10および図11では、突起40の側面から状態を仮想的に示して、突起40の位置関係とグラフとの関係を示している。図10に示す突起40は、第1の設置部位41に設けられる突起40である。また図10および図11では、矢印で示すように、左から右に向かって空気が流れている状態を示している。複数の突起40のうち少なくとも一部の突起40は、隣接する突起40と高さが異なるように形成され、本例では流れ方向に隣接する突起40の高さが互いに異なる。換言すると、突起40の高さが不均一である。
【0058】
図11の比較例では、突起40Zの高さが一様であるので、気流の乱れ(渦度変数)が突起40の頂点で値が大きくなっている。これに対して図10に示すように、突起40の中で高さを不均一にすると気流の乱れの大きい位置が高さ方向で分散するため、流れ全体での乱れを低減でき、充分な騒音低減効果を得ることができる。
【0059】
図12は、突起40の第4の例を示す平面図である。図13は、従来の突起40Zを比較例として示す平面図である。図12に示す突起40は、エアミックスドア23に設けられる突起40である。図12および図13では、矢印で示すように、左から右に向かって空気が流れている状態を示している。複数の突起40のうち少なくとも一部の突起40は、隣接する突起40と間隔が、周囲に配置されている他の突起40同士との間隔と異なるように形成される。換言すると、突起40の間隔が不均一である。
【0060】
図13の比較例では、隣接する突起40Zとの間隔が一様であるので、突起40Zの間隔を貫通する流れが発生し、気流の乱れを充分に抑制することができない。これに対して図12に示すように、突起40の間隔を不均一にすると、間隔を貫通するような流れを防ぐことができ、気流の乱れを抑制することができる。
【0061】
以上説明したように本実施形態の車両用空調装置10における空力音低減装置では、複数の突起40のうち一部の突起40は、周囲の突起40と形状が異なるか、または一部に設けられる突起40の間隔が周囲の突起40の間隔と異なる。したがって乱れた気流と接して音を発生する位置に、複数の不均一な形状の突起40、または不均一な位置に突起40を設置することで、騒音低減効果を高めている。一部の突起40の形状などが異ならせて、突起40の形状などを不均一にすることで、突起40によって新たに発生する乱れの位置を分散することができる。したがって突起40によって壁面付近の気流の乱れを抑制するとともに、突起40によって新たに発生する乱れを低減でき、充分な騒音低減効果を得ることができる。
【0062】
また本実施形態では、複数の突起40のうち一部の突起40は、空気の流れの下流ほど、突起40の高さが大きい。したがって空気の流れの上流から下流に向けて徐々に抵抗を高めることができる。これによって気流が剥離して逆流した流れを緩和することができ、突起40の開始位置付近で乱れが集中して新たに発生する乱れを低減できるので充分な騒音低減効果を得ることができる。また突起40の高さを大きくするに限るものではなく、突起40の直径が大きく、または間隔が小さくしてもよく、これらを組み合わせてもよい。
【0063】
さらに本実施形態では、複数の突起40のうち一部の突起40は、空気の流れの下流ほど、突起40の高さが小さい。したがって空気の流れに上流から下流に向けて徐々に抵抗を低くすることができる。これによって突起40の終了位置付近で乱れが集中して新たに発生する乱れを低減でき、充分な騒音低減効果を得ることができる。また突起40の高さを小さくするに限るものではなく、突起40の直径が小さく、または間隔が大きくしてもよく、これらを組み合わせてもよい。
【0064】
また本実施形態では、複数の突起40のうち一部の突起40は、周囲の突起40に比べて高または間隔が異なる。したがって、たとえば隣り合う突起40の高さ、または間隔の少なくとも1つを不均一にしている。これによって、たとえば、突起40群の中で高さを不均一にすると気流の乱れの大きい位置が高さ方向で分散するため、空気流れ全体での乱れを低減でき、充分な騒音低減効果を得ることができる。また突起40の高さおよび間隔に限るものではなく、突起40の直径および外形、これらを組み合わせてもよい。
【0065】
たとえば突起40の形状を円柱状ではなく、長円柱状にして、突起40の長辺が気流の流れと平行となるようにするとともに、突起40の位置を不均一にしてもよい。長円柱条にすると強度が高くなるので、成型による加工しやすく、突起40の向きを気流の流れと平行にすることで、流れが突起40にぶつかる位置で乱れが集中して新たに発生する乱れを低減でき、充分な騒音低減効果を得ることができる。
【0066】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に関して、図14〜図16を用いて説明する。図14は、本実施形態の突起40Aを示す平面図である。図15は、従来の突起40Zを比較例として示す平面図である。図16は、従来の突起40Zを比較例として示す平面図である。図15と図16とでは、流れ込む空気の流れ方向が互いに異なる。
【0067】
突起40Aの外形の長円柱状には、小判状および楕円柱状も含む。突起40Aは、予め定める第1方向に延びる。また各突起40Aの第1方向が延びる方向(向き)は、図14に示すように、一様でなく不均一である。これに対して、比較例では、向きが一様である。
【0068】
複数の突起40Aのそれぞれは、断面形状において、第1方向(長さ方向)の長さ寸法(図15の左右方向の寸法)が第1方向に直交する第2方向(幅方向)の幅寸法W(図15の上下方向の長さ寸法)よりも大きい。断面形状は、突起40Aを壁面11aと平行な仮想一平面で切断した場合の断面形状である。したがって断面形状は、突起40Aの断面形状が変わらない柱状の場合には、壁面11aに向かって見た場合の形状と同一である。
【0069】
図12に示す突起40Aは、たとえばエアミックスチャンバ26内に設けられる突起40Aである。冷房時にフェイス吹出口32から気流を吹き出す場合と、除湿時にデフロスタ吹出口31から気流を吹き出す場合とで、エアミックスチャンバ26内では風向が大きく異なる。
【0070】
図15および図16の比較例では、向きが一様であるので、図15に示す右方に向かう空気流れの場合は効果があるが、図16に示す上方に向かう空気流れの場合には、乱れが集中して騒音低減効果を充分に得ることができない。これに対して図14に示すように、向きが不均一であると、いずれの方向の流れに対しても乱れが集中することを防止でき、充分な騒音低減効果を得ることができる。
【0071】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0072】
前述の第1実施形態および第2実施形態では、複数の突起40は、円柱状または長円柱状であったが、このような形状に限定するものではない。たとえば断面形状は、第1方向に延びる菱形状であってもよく、長方形状であってもよい。また根本から先端に向けてテーパ状に縮径する形状であってもよい。また各突起40は、底面(壁面)に対して傾斜していてもよい。
【0073】
また前述の第1実施形態では、空気音低減装置は車両用空調装置10に設けられるが、車両用空調装置10に限るものではなく、空調装置以外であってもよく、たとえば機器冷却用の冷却用送風機などに適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
10…車両用空調装置
11…空調ケース(通路部材)
11a…壁面
13…送風通路(通路)
20…エバポレータ
21…ヒータコア
22…冷風通路(通路)
23…エアミックスドア
25…温風通路(通路)
26…エアミックスチャンバ
28…フェイス用ドア
29…フット用ドア
30…リア用ドア
40,40A…突起
60…送風機
62…スクロールケーシング
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気が流れる通路(13,22,25)を形成する通路部材(11)に設けられる空力音低減装置であって、
前記通路部材の壁面(11a)の一部から突出するように、前記壁面に設けられる複数の突起(40)を含み、
前記複数の突起が設けられる部位の一部に設けられる突起は、前記一部の突起の周囲の突起と形状が異なるか、または前記一部に設けられる突起の間隔は、前記周囲に設けられる突起の間隔と異なることを特徴とする空力音低減装置。
【請求項2】
前記複数の突起は、前記空気が前記壁面に沿って流れる部位に設けられ、
前記複数の突起のうち空気流れ上流側に位置する一部の突起は、空気流れ下流ほど、突起の高さが大きく、直径が大きく、または前記間隔が小さいことを特徴とする請求項1に記載の空力音低減装置。
【請求項3】
前記複数の突起は、前記空気が前記壁面に沿って流れる部位に設けられ、
前記複数の突起のうち前記空気流れ下流側に位置する一部の突起は、前記空気流れ下流ほど、突起の高さが小さく、直径が小さく、または前記間隔が大きいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空力音低減装置。
【請求項4】
前記複数の突起のうち一部の突起は、前記周囲の突起に比べて高さ、直径および前記間隔のうち少なくとも1つが異なることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の空力音低減装置。
【請求項5】
前記複数の突起のそれぞれは、断面形状において、空気の流れ方向の長さ寸法が前記流れ方向に直交する幅方向の幅寸法よりも大きく、
前記複数の突起のうち一部の突起は、前記周囲の突起と前記間隔が異なることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の空力音低減装置。
【請求項6】
前記複数の突起のそれぞれは、断面形状において、予め設定される第1方向の長さ寸法が前記第1方向に直交する第2方向の幅寸法よりも大きく、
前記複数の突起のうち一部の突起は、前記第1方向が延びる向きが、前記周囲の突起における前記第1方向の延びる向きと異なることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の空力音低減装置。
【請求項1】
空気が流れる通路(13,22,25)を形成する通路部材(11)に設けられる空力音低減装置であって、
前記通路部材の壁面(11a)の一部から突出するように、前記壁面に設けられる複数の突起(40)を含み、
前記複数の突起が設けられる部位の一部に設けられる突起は、前記一部の突起の周囲の突起と形状が異なるか、または前記一部に設けられる突起の間隔は、前記周囲に設けられる突起の間隔と異なることを特徴とする空力音低減装置。
【請求項2】
前記複数の突起は、前記空気が前記壁面に沿って流れる部位に設けられ、
前記複数の突起のうち空気流れ上流側に位置する一部の突起は、空気流れ下流ほど、突起の高さが大きく、直径が大きく、または前記間隔が小さいことを特徴とする請求項1に記載の空力音低減装置。
【請求項3】
前記複数の突起は、前記空気が前記壁面に沿って流れる部位に設けられ、
前記複数の突起のうち前記空気流れ下流側に位置する一部の突起は、前記空気流れ下流ほど、突起の高さが小さく、直径が小さく、または前記間隔が大きいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空力音低減装置。
【請求項4】
前記複数の突起のうち一部の突起は、前記周囲の突起に比べて高さ、直径および前記間隔のうち少なくとも1つが異なることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の空力音低減装置。
【請求項5】
前記複数の突起のそれぞれは、断面形状において、空気の流れ方向の長さ寸法が前記流れ方向に直交する幅方向の幅寸法よりも大きく、
前記複数の突起のうち一部の突起は、前記周囲の突起と前記間隔が異なることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の空力音低減装置。
【請求項6】
前記複数の突起のそれぞれは、断面形状において、予め設定される第1方向の長さ寸法が前記第1方向に直交する第2方向の幅寸法よりも大きく、
前記複数の突起のうち一部の突起は、前記第1方向が延びる向きが、前記周囲の突起における前記第1方向の延びる向きと異なることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の空力音低減装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−52808(P2013−52808A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193161(P2011−193161)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]