空気と表面を消毒するための方法と装置
本発明は、微生物によって汚染された空気、あらゆる表面および食品を消毒および殺菌するための方法と装置に関する。改良された装置は、ウイルス、バクテリア、胞子、病原体のDNAや外殻を破壊する水銀系の254nmの殺菌ランプよりも効果的な多波長で分光幅が狭いUV源からなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気、あらゆる表面および食品を消毒および殺菌するための方法と装置に関する。本発明の方法は、高度な消毒をするためにUV−C光子の効果と遠紫外線(Far UV)光子の効果を組み合わせた多波長UV光子を利用する。本発明の装置は、同一の励起過程の間に互いに異なる波長を出す2個の別途のチャンバー(chamber)からなる。
【背景技術】
【0002】
空気を消毒し殺菌する従来の全ての技術は、主に、GUV(germicidal ultra−violet)ランプを利用する。このランプはパルス型であるか、連続的に励起される。連続型ランプは水銀系であり、主に254nmにおいて光を出す。現在、多くの会社において、室内空気中にあるウイルス、バクテリア、胞子、病原体を殺菌するのにGUV光を出す装置を生産する。このような装置は、室内空気を連続的に十分な時間の間に光に露出させる。必要な露出時間は、微生物の光吸収能に応じ、254nmにおいて10秒〜100秒程度である。この方式が部屋ごとに別途に室内空気を処理するには効果的であるが、大型ダクトを通過する大量の空気流れを処理するには非実用的である。処理時間が多くかかるため、大部分の表面処理には非実用的である。
【0003】
紫外線は、生物に及ぼす影響に応じ、4個の区域に区分される。これらの区域は主に医学用語で言及されており、UV−Aは320〜420nm帯域であり、UV−Bは280〜320nm帯域であり、UV−Cは280nmより短い波長帯である。最近、UV−C帯域を185〜250nmのFUVと250〜290nmのUV−Cの2つの帯域にさらに細分したりもする。光化学者と光生物学者らは、化学結合の吸収スペクトルが前述した帯域より遥かに狭いのでこの用語をあまり使わず、観察された効果に関連する波長帯を使う。
【0004】
今までは、殺菌UV−C(GUV)がDNAを破壊するのに使われたが、これは、254nmの水銀ランプ放出波長がDNA吸収帯域に近いためである。また、高度な殺菌のために色々な波長のUV光子を結合しようとする試みは全くなかった。微生物殺菌強化のためにFUV光子とUV−C光子を結合しようとする試みもなかった。FUV光子供給源はピーク吸収波長が200nmである窒素塩基吸収帯域をターゲットにするが、UV−C光子供給源はピーク値が282nmである他の窒素塩基は勿論、ピーク値が254〜265nmであるアミノ酸もターゲットにする。多波長UV光子を利用すれば、従来の短波長光子供給源に比べて病原体の殺菌をより強化することができる。
【0005】
過去数年間、エキシマーの励起に基づいた新しいUVランプが商用化された。このようなランプは自らの気体組成によって決定された波長帯の線形スペクトルを放出する。ランプの波長が微生物の色々な要素吸収帯域のピーク吸収波長に近ければ、短時間に致死量を伝達することができる。大量の空気と、大型/小型表面と、食材料を各種の準備ステップにおいて効果的に消毒し殺菌できる支援装備にFUVとUV−Cを結合して使うことに対する特許は今までなかった。
【0006】
全ての生命体の遺伝子構造はDNA分子の中に入っている。DNA分子が分離し、転写しながら、自体的に複製がなされる。DNA分子は、ピリミジン塩基、シトシン、チミン、ウラシルのような名称を有するが、これらの全てが生命を維持する生化学基を形成する。長いDNA分子は糖(sugar)から起こるような簡単な結合によって互いに結合される。
【0007】
GUV光子エネルギによって特定生化合物の間に強い(共有)結合が形成される。しかし、共有結合の結合力は参加する分子の相対的位置に大きく左右される。共有結合が水素原子の両側において対称であれば、これをダイマー(dimer)という。ダイマーは非常に強い結合であり、一般的に液体の蒸発過程中には壊れない。GUV光によってチミン、シトシン−チミン、シトシンダイマーが形成される。ダイマーが形成されれば、これ以上のDNAの複製は中止される。図1は、DNA分子におけるダイマーの形成概念を示す。
【0008】
DNA分子は波長180〜400nm程度の光を吸収する。水銀ランプは、DNAアミノ酸の最大吸収波長である260nm程度の波長の光子を放出するため、一般殺菌などに多く使われる。水銀ランプの水銀気体の圧力によって光の波長が決定される。低圧(LP;low−pressure)ランプと低圧高出力(LPHO;low−pressure high output)ランプの光の波長は254nmである。中間圧力の中圧ランプの光の波長は200〜400nm程度である。しかし、このようなランプにおいて効果的な波長は、連続型は245nm以下であり、中圧型は235nm以下である。パルスランプ内部のキセノン気体は中圧水銀ランプと類似する多波長放出をする。しかし、本発明で重要なのは、多波長源が2つの狭い線や帯状の光を出し、このような線形の光は微生物のDNAの最小2個のピーク吸収発色団に相応する。このような多波長源を、以下、二重線形ランプという。異なる波長帯の紫外線光子や低波長青色光は、損傷した共有結合を復旧し、生物が複製を再開するのに役に立つものとして知られている。このような反応を光再活性化(photo−reactivation)反応という。
【0009】
DNAスペクトルで示す色々なピークは、組織を構成する窒素塩基とアミノ酸の組成によって左右される。共有結合を壊すにはFUV光子が効果があると明らかになっているが、FUVとUV−Cの2波長を組み合わせることがより効果的であると言える。
【0010】
最近の論文(Peak、UV action spectra for DNA dimmer induction.,Photochemistry and Photobiology、40、5(613−620)、1984)によれば、ダイマーの形成がDNAの活動を止める唯一の条件ではない。長いDNA分子内の色々な分子グループごとに各々異なる波長の光子を吸収すれば、グループの間のエネルギ伝達が強化される。これらの結合グループの破壊は、いくつかのグループだけに影響を与える1個帯域の光子よりDNAの破壊により大きい影響を及ぼす。線形UV光源のいくつかを組み合わせたものがDNAの破壊にどんな影響を及ぼすかについては今まで誰も詳しく研究をしたことがない。
【0011】
各々異なる光子エネルギが分子の電子や原子に共鳴を引き起こしたり、各々異なるエネルギ準位を引き起こすため、ある物質に対して各々異なる過程を引き起こす多光子効果に対する記事は多い。本発明の概念は、微生物に多重吸収効果を引き起こすのに1つのランプから出た複数の線形波長を利用するものである。多光子作用は、より多い経路の破壊を引き起こすので細胞破壊を高め、生存率は下げると言える。経路内の結合は共鳴吸収だけによって物理的に破壊される。色々なアミノ酸、窒素塩基、核酸、その他の主要結合の架橋結合は生物の複製を引き起こす。このような架橋結合は、生物体がこれ以上複製できない条件を生成して、地域住民に伝染物質が伝達される確率を減らす。
【0012】
放出された光子のエネルギは波長によって決定され、250nmにおいて約5eVであり、波長が短くなるほど増加する。DNA内の結合ごとに異なる光子エネルギの影響を受ける。
【0013】
FUVランプから出る540kJ/モルの光子エネルギは、タンパク質の色々なペプチド結合の結合エネルギとDNAの窒素塩基の結合エネルギより大きい。バクテリア細胞は、多くのタンパク質分子を含有した脂質膜や細胞壁で囲まれる。バクテリアの生存には細胞壁が必須である。FUV光は、GUVとは異なり、このような構造のタンパク質を破壊して、微生物の物理的破壊を引き起こす。図2は、炭疽菌胞子の1000倍拡大顕微鏡写真である。光子エネルギによって微生物の細胞壁が破損し、細胞が切断されたのを写真で確認することができる。この写真は、光子が病原体の損傷と破壊を引き起こすことを知らせた第1の証拠写真である。同じ輻射線に露出されたスライドにおいては何の複製も起こらず、これは、微生物が100%死んだという表示である。
【0014】
タンパク質のペプチド結合が、200nmと280nmの2つの波長において最高の吸収率を示すということは広く知られた事実である。200nmと280nmにおいて最高の吸収率を示すものは、DNAの全ての窒素塩基は勿論、バクテリアと胞子とウイルスの細胞壁をなすタンパク質がある。このような現象は、核タンパク質(nucleo−protein)、ジグリシン(diglycine)、トリグリシン(triglycine)および牛のアルブミンにも発生する(MclarenのPhotochemistry of Proteins and Nucleic Acids、Pergamon Press、Macmillan Company、1964参照)。アミノ酸は、260nmの付近において最高吸収率を示す。222nmや282nmにおいて光を出すUVランプは、窒素塩基とタンパク質に対して最高の光子吸収を示す。260nmにおいて光を出すUV−Cランプは、DNA内のアミノ酸に対して最高の光子吸収を示す。現在、このような3個の波長が微生物の破壊を引き起こす主要な吸収帯域である。
【0015】
テスト:
概念テストのために、3種類の微生物を使って比較テストを何回もした。小さい皿いくつかに生物体を置いておき、色々なUV光子の組み合わせに露出させた。添付図面は、良好な対照結果を得るために同一の皿を明るい背景や暗い背景で表示したものである。
【0016】
図3は、微生物としてセラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)をテストしたものである。皿の左側は222nm+254nmの光子に露出させ、右側は282nmの光子だけに露出させた。多波長側が相当改善されたことが分かる。
【0017】
図4は、微生物として黒色アスペルギルス(Aspergillus Niger)をテストしたものである。皿の左側は282nmの光子だけに露出させ、右側は282nm+254nmの光子に露出させた。これも多波長側が相当改善されたことが分かる。
【0018】
図5は、大腸菌(Escherichia coli)をテストしたものである。皿の左側は222nm+254nm光子に露出させ、右側は282nm+254nmの光子に露出させた。右側が正しい多波長組み合わせを使ったものであり、相当な改善を示した。
【0019】
図6は、プランクトン性藻類(planktonic algae)をテストしたものである。皿の左側は露出させず、右側だけFUV光子に露出させた。相当な細胞破壊が発生した。
【0020】
分析:
全てのテストは、DNA窒素塩基の2つの吸収帯域とDNAアミノ酸の1つの吸収帯域のピーク値の付近において光を出す線形光源を利用して実施した。その結果、DNA分子において、色々な発色団分子グループの各々に対する光子の作用と他の発色団グループとの作用を実際に測定することができた。
【0021】
1番目の3個のテスト結果は、多波長線形光源を使った時、短波長光源より相当な病原体の減少を示した。このテスト結果によれば、微生物ごとに二重線形光源の正しい組み合わせが異なるということが分かった。図6は、波長が非常に重要であることを示す。FUV光子は相当な細胞破壊を引き起こすが、GUV光子はほぼ影響を及ぼさない。
【0022】
類似するテストを色々な病原体に実施し、各々の病原体を殺したり活動停止させたりするのに最も効果的な波長組み合わせのリストを選んだ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、従来のこのような問題点を考慮して導き出されたものであり、殺菌に効果的な色々な波長の光を出す光源を組み合わせて殺菌効果をより上げる方法と装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の方法において重要なのは、微生物の窒素塩基のDNA発色団、タンパク質、アミノ酸とその他の成分の結合に対する最大吸収帯域にほぼ一致する紫外線光子の線形波長を2以上放出する二重線形ランプの開発にある。2以上の波長を出す多波長線形光源を使うことが好ましい。このようなスペクトル放出は、標準254nmの光子よりDNA破壊に遥かに効果的である。殺菌時間は、10秒〜100秒から0.1秒に短縮される。空気中の病原体が二重線形ランプを過ぎて殺菌される。このような二重線形ランプは、生物膜やタンパク質系アレルギー源の破壊にも効果的である。
【0025】
一方の線形ランプがFUV光を出す二重線形ランプの光子エネルギーは同等の時間に化学的有毒物質の炭素結合を破壊するほど十分に高い。短時間に殺菌するためには、ターゲット有機体や化学物質を破壊するのに必要な特定波長を決定することが重要である。二重線形ランプは、ターゲット有機体や化学物質の2個以上の主要吸収発色団のピーク吸収率に近い2以上の線形紫外線を放出する。
【0026】
線形光源の間の相対的強度も殺菌効率に影響を及ぼす。3個の同軸チューブ内の各チャンバーの環状管の幅が同じならば、外側環状管から出る光の強度が内側チャンバーから出る光より強い(両側の気体密度が同じ場合)。1つの二重線形ランプのデザインにおいて、気体密度と環状管の位置を6種類に組み合わせることができる。気体密度と位置を調整して、殺菌しようとする病原体の全体に最も効果的な光子放出組み合わせを選択することができる。
【0027】
この装置は、正常な日常生活中に空気とあらゆる表面と食べ物を殺菌したり消毒したりするための経済的な方法のためのものである。また、この装置は、多くの人々が頻繁に接触するフロアとハンドレールなどの物体を効果的で効率的に消毒することができる。このような区域の消毒は、人と動物に有害な疾病と有毒物質の伝播を大きく減らさなければならない。
【0028】
二重線形ランプは、殺菌や消毒が必要なあらゆる物体と表面に使うことができる。一例として、病室外に位置したキャディーカート(caddie cart)に使う。病室で使われたあらゆる機構と書類とペンは病室を出る時にキャディーカートを通過しながら二重線形ランプの放射線に露出される。この過程により、他の患者に病原体が伝染することを防止することができる。人の皮膚と傷部位、手、動物の皮膚、革、毛、医療器具に使われたプラスチックのような物質を消毒するのに使用する時に有害な影響を与えないように露出制限をすることもできる。
【0029】
二重線形ランプが光源であるため、光ファイバーを使って光の強度を分散させ、厚さと組織が異なる色々な材料にも使うことができる。例えば、ブラシ内に光ファイバーを混ぜ、ブラシで清掃する床面やカーベットに光を照射して消毒をすることもできる。同じく、外部の光源に直接露出されない空間や区域を有する製品や品物も消毒することができる。その例としては、二重線形ランプを口腔に入れ、治療前に口腔内壁や組織を殺菌することができる。
【0030】
二重線形ランプは、必要な露出時間の間に全ての物体を直接露出させ、室内空気中の微生物と室内の表面と装置と構造物と衣類を直接消毒するのに使うことができる。ランプをいくつか同時に使えば、表面の全体を確実に露出させ、総露出時間を短縮することができる。病室を出る際に病原菌を殺菌することによって室内空気を効果的に処理することができる。生物学的テロ剤で汚染された室内空間は、二重線形ランプが付いたロボットを空間内部の色々な方向に動かせて処理することができる。
【0031】
大部分の感染源とテロリストの活動は食材料に集中される。光子放出体は食材料と表面を消毒するのに数年間有効に使われた。しかし、本発明においては、二重線形ランプを使って反応時間がほぼ即刻的であるため、食物と材料の表面を処理するのに非常に経済的である。
【0032】
二重線形ランプは、化学的処理なしで食材料を消毒する方法であり、植える前の種と芽は勿論のこと、農場で処理センターや倉庫やスーパーマーケットや厨房に移すために準備した食材料も消毒や殺菌をすることができる。また、肉類包装室の切断作業面は勿論のこと、肉類やその他の食料品を運搬処理するのに用いられるカッターと装備を消毒するにも本発明の二重線形ランプを使うことができる。
【0033】
本発明の装置は、コンベヤーやカートで運ぶ食物は勿論のこと、食物を貯蔵室から加工室まで運ぶ間の経路も処理することができる。重要な部品や医療装備を包装する前に組み立てラインにおいて殺菌消毒するにも本発明の装置を使うことができる。
【0034】
患者がせきやくしゃみする時に出る少量のエアゾールに入っている微生物の感染を減らすのに室内空気の消毒が重要であるという証拠は多い。現在、室内のUV殺菌は人間に紫外線が照射されることを防ぐ遮蔽板が付けられ、壁面に設置された水銀系殺菌ランプに限って使われるように制限されている。このような殺菌ランプは、ファンや送風機を利用せず、微生物が紫外線を通過するように室内の空気流れを調節する。一方、送風機やファンから出る空気流れにGUV水銀ランプが付いたボックスを使うこともできる。このボックスは、微生物を集めてランプを通るようにするために室内の適切な位置に設置される。どの場合も、室内の全ての微生物の50%だけ紫外線に露出される。
【0035】
他種類の装置に設置された二重線形ランプの場合、全ての微生物の90%まで露出させることができる。このような新しい装置は、天井と床面の室内温度差による室内空気の循環と通風を考慮した環境を作って、大量の空気をより効果的に移動させることができるという事実に基づく。この装置は、翼が4〜5個付けられ、低速で回転するファンや特殊ファンを利用するが、このようなファンは、二重線形ランプや多数の線形ランプが照射する上部室内区域に空気を上昇させるように開発された。このようなランプは、ファン上に設置され、上昇する空気流れを全方向から照射する。紫外線が人間に照射されることを防ぐバッフル(baffle)を使う。空気中のいかなる微生物も比較的に長時間露出させると、大部分が殺菌されるか破壊される。空気がこの区域を通過する時ごとに全ての微生物の90%以上が破壊される。時間当たり3回通過させれば、99.9%まで破壊される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】DNA分子のダイマーの形成を示すグラフである。
【図2】炭疽菌胞子の1000倍拡大顕微鏡写真である。
【図3】微生物としてセラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)をテストした写真である。
【図4】微生物として黒色アスペルギルス(Aspergillus Niger)をテストした写真である。
【図5】大腸菌(Escherichia coli)をテストした写真である。
【図6】プランクトン性藻類(planktonic algae)をテストした写真である。
【図7a】本発明の消毒装置の一部分である二重線形ランプの断面図である。
【図7b】特定の場所、方向、表面、材料に向かってUV光子を照射するのに用いられる二重線形ランプが中央に配置された装置の断面図である。
【図8a】二重線形ランプがワンド(wand)の中に入っている実施例である。
【図8b】真空清掃機や床掃除機の前方隔室に二重線形ランプを設置した実施例の概略図である。
【図9a】厨房や包装ラインに原料や食材料をコンベヤーで運びながら消毒するための二重線形ランプの概略図である。
【図9b】食物が厨房からお客に伝達される前にサービングカウンターにおいて食物を暖かく維持するために二重線形ランプをヒートランプの合間に配置した状態の断面図である。
【図10a】二重線形ランプがエアーダクトに水平にまたは垂直に設置された例の断面図である。
【図11】医療器具を消毒するための二重線形ランプが設置されたキャディーカートの平面図と断面図である。
【図12】室内空気消毒のために低速ファン上に二重線形ランプが設置された例の平面図と側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本明細書において、殺菌や消毒は米国FDAで定義された通りの概念である。殺菌や消毒は他のレベルの消毒を全て含む概念である。
【0038】
添付図面に本発明の色々な実施例と二重線形ランプを製作するのに必要な装置が示されている。ランプは、電気が通じた時に色々な波長の光子を生成するように、色々な気体混合物が入っている2個の管をなす3個の同軸チューブからなる。中間チューブの直径は、両側チャンバーから放射された相対強度を最適化するように選択される。内側チューブの内部に位置した電極と外側チューブの外部に位置した電極との間に高電圧が印加されれば、両側気体の励起が生じる。ランプから光を外部に放出させるための外部電極としてスクリーンが使われる。
【0039】
図7aは、本発明の消毒装置の一部分である二重線形ランプの断面図である。高電圧電極(E1)は内側チューブの内部に位置する。接地電極スクリーン(E2)はランプの外部に位置する。UV光子を出す気体は、内側チューブ3と中間チューブ4との間の環状区域(A1)に位置する。UV光子を出す2番目の気体は、中間チューブ4と外側チューブ5との間の環状区域(A2)に位置する。これらの気体は、放射されたUV光子がターゲット微生物や化学物質によって吸収されるように選択される。UV線は、矢印6方向に放射状で外部に放出される。2個の電極間の電圧や電流が変われば、放出されるUV線の量も変わる。各々の環状管の寸法や内部の気体密度が変われば、両側チャンバーの相対密度も変わる。各々のチャンバーごとに、FUV波長は222nmにおいて生じ、UV−C波長は254nmや282nmの付近において生じるように気体を選択すれば良い。3つの波長の組み合わせから3つの二重線形ランプを作ることができる。
【0040】
図7bの中央には、特定の場所、方向、表面、材料に向かってUV光子を照射するのに用いられる二重線形ランプの断面図が示されている。反射器10は、放出光の90%以上が下平坦面に向かうようにする「ガルウイング(gull wing)」デザインに設計される。反射器10は、最大限多くの光子数を平坦面に反射するようにする反射物質として硫酸バリウム(Ba2SO4)を使う。一方、NUV光源と反射器をホコリから保護するためのカバー11が必要である場合もある。カバーはUV光を通過させる。反射器は、応用分野に応じて各々異なる方向に反射するように形状を異にすることもできる。
【0041】
図8aは、二重線形ランプがワンド(wand)の中に入っている実施例である。ワンドは人間の間に病原菌を移す媒介物として多く用いられる物体を消毒するのに使われる。ここでは、二重線形ランプが所望の処理面を正しく指さなければランプをオフにする検知スイッチ22も使う。ワンドは手術前後の傷と床擦れの治療手段でありつつ、病院、治療室、手術台、患者治療のためのハンドレール(hand rail)などの消毒手段でもある。
【0042】
また、医療用手袋やガウンやマスクが不足する場合、新しいものを購入する代わりに適当な時に二重線形ランプを使って周期的に消毒して使ってもよい。
【0043】
図8bは、真空清掃機や床掃除機の前方隔室に二重線形ランプを設置した場合を示す。真空清掃機は、いかなる形式であろうと二重線形ランプがフロアの近く配置された装置を全て含む。反射器10が付いた二重線形ランプの構造は図7で説明したものと類似する。図面に示すように、付属部品としてはボックス、ホイール、ハンドルがある。
【0044】
図9aは、厨房や包装ラインに原料や食材料をコンベヤーで運びながら消毒するための二重線形ランプを示す。コンベヤー24は、二重線形ランプに表面が最大限露出されるように設計する。一方、食べ物や原料の露出面が運搬中に変わらないのでランプ14が複数必要な場合もある。食材料や原料がコンベヤーに沿って移動しながら方向が変わるようにタンブラー(tumbler)や振動機を使用する場合もある。図9bは、食べ物が厨房からお客に伝達される前にサービングカウンターにおいて食べ物を暖かく維持するために二重線形ランプ14をヒートランプ15の合間に配置した例を示す。一方、ヒートランプ15なしで冷たい食べ物に二重線形ランプを照射することもできる。
【0045】
二重線形ランプはいかなるサイズと長さに製作することもできる。図10aはエアーダクト20に適用された実施例であり、二重線形ランプ14が空気流れに平行にエアーダクト20の側面、天井、底面に支持される。一方、図10bのように、エアーダクト20の空気流れに垂直するように二重線形ランプ14を設置することもできる。本実施例においては、円筒形タンブラーの中央にランプを設置して、タンブリング過程中に物体に光を照射して確実に消毒(殺菌)されるようにする。
【0046】
図11は、患者のチャート、ペンのような機構26を消毒するのに用いられる二重線形ランプを示す。患者検診のために病室に入ってきた全ての機構26は、医療用キャディーカート24を通過しながら二重線形ランプの放射線に露出させた後に病室から出るようになる。
【0047】
図12は、室内空気消毒のために低速ファン28の上に二重線形ランプ14を設置した例を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気、あらゆる表面および食品を消毒および殺菌するための方法と装置に関する。本発明の方法は、高度な消毒をするためにUV−C光子の効果と遠紫外線(Far UV)光子の効果を組み合わせた多波長UV光子を利用する。本発明の装置は、同一の励起過程の間に互いに異なる波長を出す2個の別途のチャンバー(chamber)からなる。
【背景技術】
【0002】
空気を消毒し殺菌する従来の全ての技術は、主に、GUV(germicidal ultra−violet)ランプを利用する。このランプはパルス型であるか、連続的に励起される。連続型ランプは水銀系であり、主に254nmにおいて光を出す。現在、多くの会社において、室内空気中にあるウイルス、バクテリア、胞子、病原体を殺菌するのにGUV光を出す装置を生産する。このような装置は、室内空気を連続的に十分な時間の間に光に露出させる。必要な露出時間は、微生物の光吸収能に応じ、254nmにおいて10秒〜100秒程度である。この方式が部屋ごとに別途に室内空気を処理するには効果的であるが、大型ダクトを通過する大量の空気流れを処理するには非実用的である。処理時間が多くかかるため、大部分の表面処理には非実用的である。
【0003】
紫外線は、生物に及ぼす影響に応じ、4個の区域に区分される。これらの区域は主に医学用語で言及されており、UV−Aは320〜420nm帯域であり、UV−Bは280〜320nm帯域であり、UV−Cは280nmより短い波長帯である。最近、UV−C帯域を185〜250nmのFUVと250〜290nmのUV−Cの2つの帯域にさらに細分したりもする。光化学者と光生物学者らは、化学結合の吸収スペクトルが前述した帯域より遥かに狭いのでこの用語をあまり使わず、観察された効果に関連する波長帯を使う。
【0004】
今までは、殺菌UV−C(GUV)がDNAを破壊するのに使われたが、これは、254nmの水銀ランプ放出波長がDNA吸収帯域に近いためである。また、高度な殺菌のために色々な波長のUV光子を結合しようとする試みは全くなかった。微生物殺菌強化のためにFUV光子とUV−C光子を結合しようとする試みもなかった。FUV光子供給源はピーク吸収波長が200nmである窒素塩基吸収帯域をターゲットにするが、UV−C光子供給源はピーク値が282nmである他の窒素塩基は勿論、ピーク値が254〜265nmであるアミノ酸もターゲットにする。多波長UV光子を利用すれば、従来の短波長光子供給源に比べて病原体の殺菌をより強化することができる。
【0005】
過去数年間、エキシマーの励起に基づいた新しいUVランプが商用化された。このようなランプは自らの気体組成によって決定された波長帯の線形スペクトルを放出する。ランプの波長が微生物の色々な要素吸収帯域のピーク吸収波長に近ければ、短時間に致死量を伝達することができる。大量の空気と、大型/小型表面と、食材料を各種の準備ステップにおいて効果的に消毒し殺菌できる支援装備にFUVとUV−Cを結合して使うことに対する特許は今までなかった。
【0006】
全ての生命体の遺伝子構造はDNA分子の中に入っている。DNA分子が分離し、転写しながら、自体的に複製がなされる。DNA分子は、ピリミジン塩基、シトシン、チミン、ウラシルのような名称を有するが、これらの全てが生命を維持する生化学基を形成する。長いDNA分子は糖(sugar)から起こるような簡単な結合によって互いに結合される。
【0007】
GUV光子エネルギによって特定生化合物の間に強い(共有)結合が形成される。しかし、共有結合の結合力は参加する分子の相対的位置に大きく左右される。共有結合が水素原子の両側において対称であれば、これをダイマー(dimer)という。ダイマーは非常に強い結合であり、一般的に液体の蒸発過程中には壊れない。GUV光によってチミン、シトシン−チミン、シトシンダイマーが形成される。ダイマーが形成されれば、これ以上のDNAの複製は中止される。図1は、DNA分子におけるダイマーの形成概念を示す。
【0008】
DNA分子は波長180〜400nm程度の光を吸収する。水銀ランプは、DNAアミノ酸の最大吸収波長である260nm程度の波長の光子を放出するため、一般殺菌などに多く使われる。水銀ランプの水銀気体の圧力によって光の波長が決定される。低圧(LP;low−pressure)ランプと低圧高出力(LPHO;low−pressure high output)ランプの光の波長は254nmである。中間圧力の中圧ランプの光の波長は200〜400nm程度である。しかし、このようなランプにおいて効果的な波長は、連続型は245nm以下であり、中圧型は235nm以下である。パルスランプ内部のキセノン気体は中圧水銀ランプと類似する多波長放出をする。しかし、本発明で重要なのは、多波長源が2つの狭い線や帯状の光を出し、このような線形の光は微生物のDNAの最小2個のピーク吸収発色団に相応する。このような多波長源を、以下、二重線形ランプという。異なる波長帯の紫外線光子や低波長青色光は、損傷した共有結合を復旧し、生物が複製を再開するのに役に立つものとして知られている。このような反応を光再活性化(photo−reactivation)反応という。
【0009】
DNAスペクトルで示す色々なピークは、組織を構成する窒素塩基とアミノ酸の組成によって左右される。共有結合を壊すにはFUV光子が効果があると明らかになっているが、FUVとUV−Cの2波長を組み合わせることがより効果的であると言える。
【0010】
最近の論文(Peak、UV action spectra for DNA dimmer induction.,Photochemistry and Photobiology、40、5(613−620)、1984)によれば、ダイマーの形成がDNAの活動を止める唯一の条件ではない。長いDNA分子内の色々な分子グループごとに各々異なる波長の光子を吸収すれば、グループの間のエネルギ伝達が強化される。これらの結合グループの破壊は、いくつかのグループだけに影響を与える1個帯域の光子よりDNAの破壊により大きい影響を及ぼす。線形UV光源のいくつかを組み合わせたものがDNAの破壊にどんな影響を及ぼすかについては今まで誰も詳しく研究をしたことがない。
【0011】
各々異なる光子エネルギが分子の電子や原子に共鳴を引き起こしたり、各々異なるエネルギ準位を引き起こすため、ある物質に対して各々異なる過程を引き起こす多光子効果に対する記事は多い。本発明の概念は、微生物に多重吸収効果を引き起こすのに1つのランプから出た複数の線形波長を利用するものである。多光子作用は、より多い経路の破壊を引き起こすので細胞破壊を高め、生存率は下げると言える。経路内の結合は共鳴吸収だけによって物理的に破壊される。色々なアミノ酸、窒素塩基、核酸、その他の主要結合の架橋結合は生物の複製を引き起こす。このような架橋結合は、生物体がこれ以上複製できない条件を生成して、地域住民に伝染物質が伝達される確率を減らす。
【0012】
放出された光子のエネルギは波長によって決定され、250nmにおいて約5eVであり、波長が短くなるほど増加する。DNA内の結合ごとに異なる光子エネルギの影響を受ける。
【0013】
FUVランプから出る540kJ/モルの光子エネルギは、タンパク質の色々なペプチド結合の結合エネルギとDNAの窒素塩基の結合エネルギより大きい。バクテリア細胞は、多くのタンパク質分子を含有した脂質膜や細胞壁で囲まれる。バクテリアの生存には細胞壁が必須である。FUV光は、GUVとは異なり、このような構造のタンパク質を破壊して、微生物の物理的破壊を引き起こす。図2は、炭疽菌胞子の1000倍拡大顕微鏡写真である。光子エネルギによって微生物の細胞壁が破損し、細胞が切断されたのを写真で確認することができる。この写真は、光子が病原体の損傷と破壊を引き起こすことを知らせた第1の証拠写真である。同じ輻射線に露出されたスライドにおいては何の複製も起こらず、これは、微生物が100%死んだという表示である。
【0014】
タンパク質のペプチド結合が、200nmと280nmの2つの波長において最高の吸収率を示すということは広く知られた事実である。200nmと280nmにおいて最高の吸収率を示すものは、DNAの全ての窒素塩基は勿論、バクテリアと胞子とウイルスの細胞壁をなすタンパク質がある。このような現象は、核タンパク質(nucleo−protein)、ジグリシン(diglycine)、トリグリシン(triglycine)および牛のアルブミンにも発生する(MclarenのPhotochemistry of Proteins and Nucleic Acids、Pergamon Press、Macmillan Company、1964参照)。アミノ酸は、260nmの付近において最高吸収率を示す。222nmや282nmにおいて光を出すUVランプは、窒素塩基とタンパク質に対して最高の光子吸収を示す。260nmにおいて光を出すUV−Cランプは、DNA内のアミノ酸に対して最高の光子吸収を示す。現在、このような3個の波長が微生物の破壊を引き起こす主要な吸収帯域である。
【0015】
テスト:
概念テストのために、3種類の微生物を使って比較テストを何回もした。小さい皿いくつかに生物体を置いておき、色々なUV光子の組み合わせに露出させた。添付図面は、良好な対照結果を得るために同一の皿を明るい背景や暗い背景で表示したものである。
【0016】
図3は、微生物としてセラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)をテストしたものである。皿の左側は222nm+254nmの光子に露出させ、右側は282nmの光子だけに露出させた。多波長側が相当改善されたことが分かる。
【0017】
図4は、微生物として黒色アスペルギルス(Aspergillus Niger)をテストしたものである。皿の左側は282nmの光子だけに露出させ、右側は282nm+254nmの光子に露出させた。これも多波長側が相当改善されたことが分かる。
【0018】
図5は、大腸菌(Escherichia coli)をテストしたものである。皿の左側は222nm+254nm光子に露出させ、右側は282nm+254nmの光子に露出させた。右側が正しい多波長組み合わせを使ったものであり、相当な改善を示した。
【0019】
図6は、プランクトン性藻類(planktonic algae)をテストしたものである。皿の左側は露出させず、右側だけFUV光子に露出させた。相当な細胞破壊が発生した。
【0020】
分析:
全てのテストは、DNA窒素塩基の2つの吸収帯域とDNAアミノ酸の1つの吸収帯域のピーク値の付近において光を出す線形光源を利用して実施した。その結果、DNA分子において、色々な発色団分子グループの各々に対する光子の作用と他の発色団グループとの作用を実際に測定することができた。
【0021】
1番目の3個のテスト結果は、多波長線形光源を使った時、短波長光源より相当な病原体の減少を示した。このテスト結果によれば、微生物ごとに二重線形光源の正しい組み合わせが異なるということが分かった。図6は、波長が非常に重要であることを示す。FUV光子は相当な細胞破壊を引き起こすが、GUV光子はほぼ影響を及ぼさない。
【0022】
類似するテストを色々な病原体に実施し、各々の病原体を殺したり活動停止させたりするのに最も効果的な波長組み合わせのリストを選んだ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、従来のこのような問題点を考慮して導き出されたものであり、殺菌に効果的な色々な波長の光を出す光源を組み合わせて殺菌効果をより上げる方法と装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の方法において重要なのは、微生物の窒素塩基のDNA発色団、タンパク質、アミノ酸とその他の成分の結合に対する最大吸収帯域にほぼ一致する紫外線光子の線形波長を2以上放出する二重線形ランプの開発にある。2以上の波長を出す多波長線形光源を使うことが好ましい。このようなスペクトル放出は、標準254nmの光子よりDNA破壊に遥かに効果的である。殺菌時間は、10秒〜100秒から0.1秒に短縮される。空気中の病原体が二重線形ランプを過ぎて殺菌される。このような二重線形ランプは、生物膜やタンパク質系アレルギー源の破壊にも効果的である。
【0025】
一方の線形ランプがFUV光を出す二重線形ランプの光子エネルギーは同等の時間に化学的有毒物質の炭素結合を破壊するほど十分に高い。短時間に殺菌するためには、ターゲット有機体や化学物質を破壊するのに必要な特定波長を決定することが重要である。二重線形ランプは、ターゲット有機体や化学物質の2個以上の主要吸収発色団のピーク吸収率に近い2以上の線形紫外線を放出する。
【0026】
線形光源の間の相対的強度も殺菌効率に影響を及ぼす。3個の同軸チューブ内の各チャンバーの環状管の幅が同じならば、外側環状管から出る光の強度が内側チャンバーから出る光より強い(両側の気体密度が同じ場合)。1つの二重線形ランプのデザインにおいて、気体密度と環状管の位置を6種類に組み合わせることができる。気体密度と位置を調整して、殺菌しようとする病原体の全体に最も効果的な光子放出組み合わせを選択することができる。
【0027】
この装置は、正常な日常生活中に空気とあらゆる表面と食べ物を殺菌したり消毒したりするための経済的な方法のためのものである。また、この装置は、多くの人々が頻繁に接触するフロアとハンドレールなどの物体を効果的で効率的に消毒することができる。このような区域の消毒は、人と動物に有害な疾病と有毒物質の伝播を大きく減らさなければならない。
【0028】
二重線形ランプは、殺菌や消毒が必要なあらゆる物体と表面に使うことができる。一例として、病室外に位置したキャディーカート(caddie cart)に使う。病室で使われたあらゆる機構と書類とペンは病室を出る時にキャディーカートを通過しながら二重線形ランプの放射線に露出される。この過程により、他の患者に病原体が伝染することを防止することができる。人の皮膚と傷部位、手、動物の皮膚、革、毛、医療器具に使われたプラスチックのような物質を消毒するのに使用する時に有害な影響を与えないように露出制限をすることもできる。
【0029】
二重線形ランプが光源であるため、光ファイバーを使って光の強度を分散させ、厚さと組織が異なる色々な材料にも使うことができる。例えば、ブラシ内に光ファイバーを混ぜ、ブラシで清掃する床面やカーベットに光を照射して消毒をすることもできる。同じく、外部の光源に直接露出されない空間や区域を有する製品や品物も消毒することができる。その例としては、二重線形ランプを口腔に入れ、治療前に口腔内壁や組織を殺菌することができる。
【0030】
二重線形ランプは、必要な露出時間の間に全ての物体を直接露出させ、室内空気中の微生物と室内の表面と装置と構造物と衣類を直接消毒するのに使うことができる。ランプをいくつか同時に使えば、表面の全体を確実に露出させ、総露出時間を短縮することができる。病室を出る際に病原菌を殺菌することによって室内空気を効果的に処理することができる。生物学的テロ剤で汚染された室内空間は、二重線形ランプが付いたロボットを空間内部の色々な方向に動かせて処理することができる。
【0031】
大部分の感染源とテロリストの活動は食材料に集中される。光子放出体は食材料と表面を消毒するのに数年間有効に使われた。しかし、本発明においては、二重線形ランプを使って反応時間がほぼ即刻的であるため、食物と材料の表面を処理するのに非常に経済的である。
【0032】
二重線形ランプは、化学的処理なしで食材料を消毒する方法であり、植える前の種と芽は勿論のこと、農場で処理センターや倉庫やスーパーマーケットや厨房に移すために準備した食材料も消毒や殺菌をすることができる。また、肉類包装室の切断作業面は勿論のこと、肉類やその他の食料品を運搬処理するのに用いられるカッターと装備を消毒するにも本発明の二重線形ランプを使うことができる。
【0033】
本発明の装置は、コンベヤーやカートで運ぶ食物は勿論のこと、食物を貯蔵室から加工室まで運ぶ間の経路も処理することができる。重要な部品や医療装備を包装する前に組み立てラインにおいて殺菌消毒するにも本発明の装置を使うことができる。
【0034】
患者がせきやくしゃみする時に出る少量のエアゾールに入っている微生物の感染を減らすのに室内空気の消毒が重要であるという証拠は多い。現在、室内のUV殺菌は人間に紫外線が照射されることを防ぐ遮蔽板が付けられ、壁面に設置された水銀系殺菌ランプに限って使われるように制限されている。このような殺菌ランプは、ファンや送風機を利用せず、微生物が紫外線を通過するように室内の空気流れを調節する。一方、送風機やファンから出る空気流れにGUV水銀ランプが付いたボックスを使うこともできる。このボックスは、微生物を集めてランプを通るようにするために室内の適切な位置に設置される。どの場合も、室内の全ての微生物の50%だけ紫外線に露出される。
【0035】
他種類の装置に設置された二重線形ランプの場合、全ての微生物の90%まで露出させることができる。このような新しい装置は、天井と床面の室内温度差による室内空気の循環と通風を考慮した環境を作って、大量の空気をより効果的に移動させることができるという事実に基づく。この装置は、翼が4〜5個付けられ、低速で回転するファンや特殊ファンを利用するが、このようなファンは、二重線形ランプや多数の線形ランプが照射する上部室内区域に空気を上昇させるように開発された。このようなランプは、ファン上に設置され、上昇する空気流れを全方向から照射する。紫外線が人間に照射されることを防ぐバッフル(baffle)を使う。空気中のいかなる微生物も比較的に長時間露出させると、大部分が殺菌されるか破壊される。空気がこの区域を通過する時ごとに全ての微生物の90%以上が破壊される。時間当たり3回通過させれば、99.9%まで破壊される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】DNA分子のダイマーの形成を示すグラフである。
【図2】炭疽菌胞子の1000倍拡大顕微鏡写真である。
【図3】微生物としてセラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)をテストした写真である。
【図4】微生物として黒色アスペルギルス(Aspergillus Niger)をテストした写真である。
【図5】大腸菌(Escherichia coli)をテストした写真である。
【図6】プランクトン性藻類(planktonic algae)をテストした写真である。
【図7a】本発明の消毒装置の一部分である二重線形ランプの断面図である。
【図7b】特定の場所、方向、表面、材料に向かってUV光子を照射するのに用いられる二重線形ランプが中央に配置された装置の断面図である。
【図8a】二重線形ランプがワンド(wand)の中に入っている実施例である。
【図8b】真空清掃機や床掃除機の前方隔室に二重線形ランプを設置した実施例の概略図である。
【図9a】厨房や包装ラインに原料や食材料をコンベヤーで運びながら消毒するための二重線形ランプの概略図である。
【図9b】食物が厨房からお客に伝達される前にサービングカウンターにおいて食物を暖かく維持するために二重線形ランプをヒートランプの合間に配置した状態の断面図である。
【図10a】二重線形ランプがエアーダクトに水平にまたは垂直に設置された例の断面図である。
【図11】医療器具を消毒するための二重線形ランプが設置されたキャディーカートの平面図と断面図である。
【図12】室内空気消毒のために低速ファン上に二重線形ランプが設置された例の平面図と側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本明細書において、殺菌や消毒は米国FDAで定義された通りの概念である。殺菌や消毒は他のレベルの消毒を全て含む概念である。
【0038】
添付図面に本発明の色々な実施例と二重線形ランプを製作するのに必要な装置が示されている。ランプは、電気が通じた時に色々な波長の光子を生成するように、色々な気体混合物が入っている2個の管をなす3個の同軸チューブからなる。中間チューブの直径は、両側チャンバーから放射された相対強度を最適化するように選択される。内側チューブの内部に位置した電極と外側チューブの外部に位置した電極との間に高電圧が印加されれば、両側気体の励起が生じる。ランプから光を外部に放出させるための外部電極としてスクリーンが使われる。
【0039】
図7aは、本発明の消毒装置の一部分である二重線形ランプの断面図である。高電圧電極(E1)は内側チューブの内部に位置する。接地電極スクリーン(E2)はランプの外部に位置する。UV光子を出す気体は、内側チューブ3と中間チューブ4との間の環状区域(A1)に位置する。UV光子を出す2番目の気体は、中間チューブ4と外側チューブ5との間の環状区域(A2)に位置する。これらの気体は、放射されたUV光子がターゲット微生物や化学物質によって吸収されるように選択される。UV線は、矢印6方向に放射状で外部に放出される。2個の電極間の電圧や電流が変われば、放出されるUV線の量も変わる。各々の環状管の寸法や内部の気体密度が変われば、両側チャンバーの相対密度も変わる。各々のチャンバーごとに、FUV波長は222nmにおいて生じ、UV−C波長は254nmや282nmの付近において生じるように気体を選択すれば良い。3つの波長の組み合わせから3つの二重線形ランプを作ることができる。
【0040】
図7bの中央には、特定の場所、方向、表面、材料に向かってUV光子を照射するのに用いられる二重線形ランプの断面図が示されている。反射器10は、放出光の90%以上が下平坦面に向かうようにする「ガルウイング(gull wing)」デザインに設計される。反射器10は、最大限多くの光子数を平坦面に反射するようにする反射物質として硫酸バリウム(Ba2SO4)を使う。一方、NUV光源と反射器をホコリから保護するためのカバー11が必要である場合もある。カバーはUV光を通過させる。反射器は、応用分野に応じて各々異なる方向に反射するように形状を異にすることもできる。
【0041】
図8aは、二重線形ランプがワンド(wand)の中に入っている実施例である。ワンドは人間の間に病原菌を移す媒介物として多く用いられる物体を消毒するのに使われる。ここでは、二重線形ランプが所望の処理面を正しく指さなければランプをオフにする検知スイッチ22も使う。ワンドは手術前後の傷と床擦れの治療手段でありつつ、病院、治療室、手術台、患者治療のためのハンドレール(hand rail)などの消毒手段でもある。
【0042】
また、医療用手袋やガウンやマスクが不足する場合、新しいものを購入する代わりに適当な時に二重線形ランプを使って周期的に消毒して使ってもよい。
【0043】
図8bは、真空清掃機や床掃除機の前方隔室に二重線形ランプを設置した場合を示す。真空清掃機は、いかなる形式であろうと二重線形ランプがフロアの近く配置された装置を全て含む。反射器10が付いた二重線形ランプの構造は図7で説明したものと類似する。図面に示すように、付属部品としてはボックス、ホイール、ハンドルがある。
【0044】
図9aは、厨房や包装ラインに原料や食材料をコンベヤーで運びながら消毒するための二重線形ランプを示す。コンベヤー24は、二重線形ランプに表面が最大限露出されるように設計する。一方、食べ物や原料の露出面が運搬中に変わらないのでランプ14が複数必要な場合もある。食材料や原料がコンベヤーに沿って移動しながら方向が変わるようにタンブラー(tumbler)や振動機を使用する場合もある。図9bは、食べ物が厨房からお客に伝達される前にサービングカウンターにおいて食べ物を暖かく維持するために二重線形ランプ14をヒートランプ15の合間に配置した例を示す。一方、ヒートランプ15なしで冷たい食べ物に二重線形ランプを照射することもできる。
【0045】
二重線形ランプはいかなるサイズと長さに製作することもできる。図10aはエアーダクト20に適用された実施例であり、二重線形ランプ14が空気流れに平行にエアーダクト20の側面、天井、底面に支持される。一方、図10bのように、エアーダクト20の空気流れに垂直するように二重線形ランプ14を設置することもできる。本実施例においては、円筒形タンブラーの中央にランプを設置して、タンブリング過程中に物体に光を照射して確実に消毒(殺菌)されるようにする。
【0046】
図11は、患者のチャート、ペンのような機構26を消毒するのに用いられる二重線形ランプを示す。患者検診のために病室に入ってきた全ての機構26は、医療用キャディーカート24を通過しながら二重線形ランプの放射線に露出させた後に病室から出るようになる。
【0047】
図12は、室内空気消毒のために低速ファン28の上に二重線形ランプ14を設置した例を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2個の環状管をなす3個の同軸チューブ、1番目の狭い波長の光子放出をするように選択された第1気体混合物、1番目の狭い波長の光子放出とは異なる2番目の狭い波長の光子放出をするように選択され、第1気体混合物とは異なる第2気体混合物、最も内側チューブの内部に配置された高電圧電極、および外側チューブの外部に配置された接地電極を含む二重線形ランプ;および
前記二重線形ランプから離れ、光子を所望の表面や区域へ向かうように固定された光子反射器;を含み、
前記高電圧電極が稼動された時、光子を所望の表面や区域に放出して、微生物のDNA有機結合とタンパク質を破壊するか停止させることを特徴とする消毒装置。
【請求項2】
環状管をなす同軸チューブ、ランプごとに異なる1番目と2番目の狭い波長の光子放出をするように選択された第1、第2気体混合物、第1ランプと第2ランプ各々の最も内側チューブの内部に配置された高電圧電極、および第1ランプと第2ランプ各々の外側チューブの外部に配置された接地電極を含む第1ランプと第2ランプ;および
前記第1ランプおよび第2ランプから離れ、光子を所望の表面や区域へ向かうように固定された第1光子反射器と第2光子反射器;を含み、
前記高電圧電極が稼動された時、光子を所望の表面や区域に放出して、微生物のDNA有機結合とタンパク質を破壊するか停止させることを特徴とする消毒装置。
【請求項3】
前記1番目と2番目の狭い波長が222nm、254nmおよび282nmからなるグループから選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の消毒装置。
【請求項4】
前記ランプがエキシマー(excimer)ランプであることを特徴とする、請求項1または2に記載の消毒装置。
【請求項5】
前記光子反射器は、放出された光の90%以上を平坦面に向かうようにするガルウイング型反射器であることを特徴とする、請求項1または2に記載の消毒装置。
【請求項6】
前記光子反射器は、反射率を上げるための硫酸バリウムを含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の消毒装置。
【請求項7】
底清掃装置として使うためのボックス、ホイールおよびハンドルをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の消毒装置。
【請求項8】
二重線形ランプに付いたハンドル;および
二重線形ランプが消毒する表面の近くにない時に二重線形ランプを停止させるための表面検知器;をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の消毒装置。
【請求項9】
空気を消毒するのに必要な時間を与えるために、ランプから間隔をおき、ランプを囲むエアーダクトをさらに含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の消毒装置。
【請求項10】
222nm、254nmおよび282nmからなるグループから選択された少なくとも2個の波長の光子を生成するステップ;および
前記光子を、消毒する物質に放出して、微生物のDNA有機結合とタンパク質を破壊するステップ;を含むことを特徴とする消毒方法。
【請求項11】
前記光子が所望の表面に向かって反射されることを特徴とする、請求項10に記載の消毒方法。
【請求項12】
前記反射がガルウイング型反射器によってなされることを特徴とする、請求項11に記載の消毒方法。
【請求項13】
前記反射器は硫酸バリウムでコーティングされることを特徴とする、請求項11記載の消毒方法。
【請求項14】
222nm、254nmおよび282nmからなるグループから選択された少なくとも2個の波長の光子供給源に空気を送るステップ;および
前記光子供給源に空気を露出させ、微生物のDNA有機結合とタンパク質を破壊するステップ;を含むことを特徴とする消毒方法。
【請求項15】
空気を消毒するのに必要な時間を決定するステップ;および
1回で消毒ができるように前記光子供給源を配置するステップ;をさらに含むことを特徴とする、請求項14に記載の消毒方法。
【請求項1】
2個の環状管をなす3個の同軸チューブ、1番目の狭い波長の光子放出をするように選択された第1気体混合物、1番目の狭い波長の光子放出とは異なる2番目の狭い波長の光子放出をするように選択され、第1気体混合物とは異なる第2気体混合物、最も内側チューブの内部に配置された高電圧電極、および外側チューブの外部に配置された接地電極を含む二重線形ランプ;および
前記二重線形ランプから離れ、光子を所望の表面や区域へ向かうように固定された光子反射器;を含み、
前記高電圧電極が稼動された時、光子を所望の表面や区域に放出して、微生物のDNA有機結合とタンパク質を破壊するか停止させることを特徴とする消毒装置。
【請求項2】
環状管をなす同軸チューブ、ランプごとに異なる1番目と2番目の狭い波長の光子放出をするように選択された第1、第2気体混合物、第1ランプと第2ランプ各々の最も内側チューブの内部に配置された高電圧電極、および第1ランプと第2ランプ各々の外側チューブの外部に配置された接地電極を含む第1ランプと第2ランプ;および
前記第1ランプおよび第2ランプから離れ、光子を所望の表面や区域へ向かうように固定された第1光子反射器と第2光子反射器;を含み、
前記高電圧電極が稼動された時、光子を所望の表面や区域に放出して、微生物のDNA有機結合とタンパク質を破壊するか停止させることを特徴とする消毒装置。
【請求項3】
前記1番目と2番目の狭い波長が222nm、254nmおよび282nmからなるグループから選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の消毒装置。
【請求項4】
前記ランプがエキシマー(excimer)ランプであることを特徴とする、請求項1または2に記載の消毒装置。
【請求項5】
前記光子反射器は、放出された光の90%以上を平坦面に向かうようにするガルウイング型反射器であることを特徴とする、請求項1または2に記載の消毒装置。
【請求項6】
前記光子反射器は、反射率を上げるための硫酸バリウムを含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の消毒装置。
【請求項7】
底清掃装置として使うためのボックス、ホイールおよびハンドルをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の消毒装置。
【請求項8】
二重線形ランプに付いたハンドル;および
二重線形ランプが消毒する表面の近くにない時に二重線形ランプを停止させるための表面検知器;をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の消毒装置。
【請求項9】
空気を消毒するのに必要な時間を与えるために、ランプから間隔をおき、ランプを囲むエアーダクトをさらに含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の消毒装置。
【請求項10】
222nm、254nmおよび282nmからなるグループから選択された少なくとも2個の波長の光子を生成するステップ;および
前記光子を、消毒する物質に放出して、微生物のDNA有機結合とタンパク質を破壊するステップ;を含むことを特徴とする消毒方法。
【請求項11】
前記光子が所望の表面に向かって反射されることを特徴とする、請求項10に記載の消毒方法。
【請求項12】
前記反射がガルウイング型反射器によってなされることを特徴とする、請求項11に記載の消毒方法。
【請求項13】
前記反射器は硫酸バリウムでコーティングされることを特徴とする、請求項11記載の消毒方法。
【請求項14】
222nm、254nmおよび282nmからなるグループから選択された少なくとも2個の波長の光子供給源に空気を送るステップ;および
前記光子供給源に空気を露出させ、微生物のDNA有機結合とタンパク質を破壊するステップ;を含むことを特徴とする消毒方法。
【請求項15】
空気を消毒するのに必要な時間を決定するステップ;および
1回で消毒ができるように前記光子供給源を配置するステップ;をさらに含むことを特徴とする、請求項14に記載の消毒方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2012−516197(P2012−516197A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−547897(P2011−547897)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/032392
【国際公開番号】WO2010/087831
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(511176333)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/032392
【国際公開番号】WO2010/087831
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(511176333)
【Fターム(参考)】
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