説明

空気ダクトへの部材取り付け構造

【課題】気漏れ抑制、省スペース化ともに達成可能とした空気ダクトへの部材取り付け構造を提供する。
【解決手段】車両用空調装置における空気ダクト3に形成された開口部4に部材を挿入して取り付ける構造1であって、立壁11内に挿入されて嵌合される円筒壁14と、該円筒壁の外周面上に設けられ部材挿入時に内壁12上に係止されるとともに該内壁上を周方向に案内される環状係止壁15と、円筒壁の外周面上に周方向に部分的に設けられ部材挿入時に切り欠き13を通過して内壁の裏面まで挿入され挿入後に該内壁の裏面上を周方向に案内されることが可能な円弧状係合壁16と、円筒壁の外周面上に設けられ部材挿入時に前記立壁の頂面に係合されるとともに部材挿入後には立壁の頂面上を周方向に案内されることが可能な外爪17とを有する構造に構成したことを特徴とする空気ダクトへの部材取り付け構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置における空気ダクトへの部材取り付け構造に関し、とくに、アスピレータ等の部材を気漏れを抑えつつ小スペースにて容易に取り付けることができるようにした空気ダクトへの部材取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置における空気ダクトには、開口部を設けて外部から部材を取り付けることがある。このような部材として、例えば、車両用空調装置の空気ダクト内の流通空気流を利用して、車室内から車室内温度検出用の空気を吸入するためのアスピレータが知られている(例えば、特許文献1)。このアスピレータは、例えば、車両用空調装置の空気ダクトの開口部に取り付けられ、該開口部を通して空気ダクト内から空気を排出する屈曲した形状のディフューザ部と、該ディフューザ部に挿入、接続され、該ディフューザ部の喉部において空気ダクト内からの排出空気流により生じる負圧を利用して吸引力を発生させ、該吸引力により外部空気(この場合、車室内空気)を吸入するノズル部とを有する構造に構成されている。ノズル部には例えばホースの一端が接続され、ホースの他端が例えば車両のインスツルメントパネルに開設された通孔に連結されて、ここから車室内空気が吸い込まれ、センサーによって吸い込まれてくる車室内空気の温度が測定されるようになっている。
【0003】
上記のようなアスピレータは、従来、ねじ(例えば、タッピンねじ)を用いて、空気ダクトに固定されていた。しかし、このようなねじを用いると、部品点数が増加するばかりでなく、狭小な場所での組み付けが必要になるため組み付け工数がかかり、また、ねじ自体のコストがかかり、さらに、ねじ自体の重量や必要なねじ取り付け部の重量のため重量が増加するという問題があり、組み付け工数や部品点数の削減、コスト低減、軽量化等が難しいか、それらに限界がある。
【0004】
一方、上記のようなねじを用いた取り付け構造における問題に対処するために、前述したようなアスピレータを、ねじを用いない、いわゆるワンタッチ方式で取り付ける構造が知られている。従来のワンタッチ方式のアスピレータ取り付け構造として、次のような構造が知られている。
【0005】
まず、従来の第1の取り付け構造として、アスピレータの内部に、とくに、空気ダクトに取り付けられるディフューザ部の内部に内爪を設け、ディフューザ部を空気ダクトの開口部(嵌合穴)に挿入した後、ディフューザ部を回動させて空気ダクト側に設けられた段差等に係合させてディフューザ部を固定する方法が知られている。しかし、このような取り付け構造においては、アスピレータ固定のための係合部を、ディフューザ部の内部側に内爪として設けるので、空気ダクト側の係合構造もスペースを小さく抑えて構成できるという利点がある反面、ディフューザ部取り付け部分にその挿入方向に挿入ガタを与えておく必要があり、取り付け部における空気ダクト内からの気漏れを小さく抑えることが難しくなるという問題がある。
【0006】
また、従来の第2の取り付け構造として、アスピレータの外部に、とくに、空気ダクトに取り付けられるディフューザ部の外部に外爪を設け、ディフューザ部を空気ダクトの開口部(嵌合穴)に挿入した後、ディフューザ部を回動させて外爪を空気ダクト側の開口部外側に設けられた係合爪等に係合させてディフューザ部を固定する方法が知られている。しかし、このような取り付け構造においては、アスピレータ固定のための係合構造が、開口部よりも外側に位置することになるので、外部側から係合状態を確認でき挿入方向ガタが不要であるため取り付け部における空気ダクト内からの気漏れを小さく抑えることができるという利点がある反面、この気漏れは基本的にアスピレータ側の環状のフランジ状底面を空気ダクト側の対応面に押し付けて防止される構造となっているため、この底面の面積を大きく設定しておく必要があり、アスピレータの取り付け、固定に要するスペースが大きくなるという問題がある。
【特許文献1】特開平5−155227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明の課題は、従来のワンタッチ方式のアスピレータ取り付け構造における上記のような問題点に着目し、空気ダクトに取り付けられるべき部材の空気ダクトの開口部への挿入方向におけるガタを基本的になくし、その状態であっても取り付け部における空気ダクト内からの気漏れを小さく抑えることを可能とし、かつ、気漏れを防止するために空気ダクト側の対応面に押し付けられる取り付け部材側の底面部位の面積を小さく抑え、それによって取り付け部に要するスペースを小さく抑えることを可能とし、気漏れ抑制、省スペース化ともに達成可能とした空気ダクトへの部材取り付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る空気ダクトへの部材取り付け構造は、車両用空調装置における空気ダクトに形成された開口部に部材を挿入して取り付ける空気ダクトへの部材取り付け構造であって、前記空気ダクトの開口部を、該空気ダクトから外側に向けて円筒状に立ち上がり内部に円筒状空間を形成する立壁と、該立壁の内面に設けられ前記円筒状空間の内方に向けて突出するとともに周方向全周にわたって環状に延びる内壁と、該内壁の内縁に周方向に部分的に延びるように形成された切り欠きとを有する構造に構成し、前記部材を、前記円筒状の立壁内に挿入されて嵌合される円筒壁と、該円筒壁の外周面上に設けられ部材挿入時に前記内壁上に係止されるとともに該内壁上を周方向に案内されることが可能な環状係止壁と、前記円筒壁の外周面上に周方向に部分的に設けられ部材挿入時に前記切り欠きを通過して前記内壁の裏面まで挿入され挿入後に該内壁の裏面上を周方向に案内されることが可能な円弧状係合壁と、前記円筒壁の外周面上に設けられ部材挿入時に前記立壁の頂面に係合されるとともに部材挿入後には前記立壁の頂面上を周方向に案内されることが可能な外爪とを有する構造に構成したことを特徴とするものからなる。
【0009】
このような空気ダクトへの部材取り付け構造においては、部材の円筒壁および環状係止壁が、空気ダクト側の円筒状立壁と環状内壁とに囲まれる形態となるので、小さな取り付け用スペースであっても、部材側と空気ダクト側との間の所望のシールを容易に行うことが可能になり、環状内壁の裏面まで挿入された円弧状係合壁が所定形態で環状内壁の裏面側に係合されている限り、気漏れを小さく抑えることが可能となる。すなわち、部材の空気ダクトの開口部への挿入方向におけるガタを基本的に持たせない状態で、かつ、部材側の環状係止壁と空気ダクト側の環状内壁との接触面積を小さく抑えた状態であっても、気漏れを小さく抑えることが可能となる。そして、部材挿入時に部材側の外爪が空気ダクト側の円筒状立壁の頂面に係合され部材挿入後に該立壁の頂面上を周方向に案内されるので、部材挿入方向についてはこの外爪と環状内壁の裏面まで挿入された円弧状係合壁とにより部材の位置を所定位置に保持することが可能になる。外爪は、空気ダクト側の円筒状立壁の外周面上の位置まで折れ曲がって延びる必要はなく、円筒状立壁の頂面に係合され案内されるに要するだけ部材の円筒壁の外周面から突出していればよいので、外爪および外爪を用いた係合構造には大きなスペースは要しない。その結果、部材を空気ダクトに取り付けるに際し、気漏れを抑制しつつ、取り付け部の省スペース化を達成することが可能となる。
【0010】
上記本発明に係る空気ダクトへの部材取り付け構造においては、上記立壁の頂面に段差が形成されており、部材挿入時には上記外爪がこの段差の低位部に係合するまで挿入されるとともに、該段差の低位部が部材の挿入後回転組み付け時に外爪の案内面を構成している構造を採用することができる。このような構造とすれば、外爪が所定の適切な位置にくるように部材を挿入することが可能になり、かつ、部材の挿入後回転組み付け時の外爪の移動量を望ましい範囲内の量に規制することが可能になる。とくに、段差の低位部の一端における該低位部と高位部との接続壁を、部材の挿入後回転組み付け時の外爪の回転方向ストッパとして機能するように構成できる。このように構成すれば、外爪をストッパとして機能する低位部と高位部との接続壁に当てることにより、外爪の回動を確実に所定位置で停止させることが可能になり、外爪の所定位置への位置決めも容易に行うことができる。また、上記段差の低位部に、外爪が該低位部に案内されて回転される際の前記回転方向ストッパに至る直前に外爪が乗り上げる隆起部が設けられている構成とすることも可能である。このように構成すれば、外爪は隆起部に乗り上げ、該隆起部を通過した直後に、前述の所定位置へと位置決めされることになるので、外爪が該所定位置部分に到達した際には、外爪が該所定位置部分に丁度嵌まりこむような形態となり、外爪の所定位置への位置決め動作が一層容易化される。
【0011】
さらに、上記立壁の内面に、外爪が前記段差の低位部に案内されて回転される際の前記回転方向ストッパに当たる直前にもしくは当たると同時に前記円弧状係合壁の回転動作を停止させる回転方向係止壁が設けられている構成とすることも可能である。このように構成すれば、外爪の回転が回転方向ストッパで停止されるだけでなく、円弧状係合壁の回転動作も回転方向係止壁によって停止されるので、部材全体の回転動作をより確実に所定位置にて停止させることができるようになる。したがって、部材全体の回転が2箇所で停止されることになり、予定以上に大きな回転力が部材に加えられた場合にあっても、過大回転が防止され、部材の破損等が確実に防止されることになる。
【0012】
上記外爪は、円筒壁の外周面上に突出するように設けられることになるので、補強構造を備えていることが好ましい。補強構造としては、例えば、外爪が、部材挿入方向に延びるリブを備えている構造を採用できる。部材挿入方向に延びるリブを備えていると、部材挿入時に外爪が破損することが防止されるとともに、挿入後部材が回転され、外爪が所定部位に位置された状態においては、部材の望ましくない傾きを外爪を介して防止することも可能になる。
【0013】
本発明における上記部材は、例えば樹脂で構成されていることが好ましい。樹脂で構成することにより、曲面部等を有する比較的複雑な形状の部材であっても、成形によって所定形状の部材を容易に製作できるようになる。また、外爪等の多少弾性変形可能な性能を有することが望ましい部位に対しても、容易に所望の弾性変形可能性能を持たせることが可能になる。
【0014】
また、本発明における上記部材として、例えばアスピレータを挙げることができる。例えば、前記開口部を通して前記空気ダクト内から空気を排出するディフューザ部と、該ディフューザ部に接続され該ディフューザ部の喉部において排出空気流により生じる吸引力により外部空気を吸入するノズル部とを有するアスピレータを挙げることができる。このようなアスピレータの場合には、通常、ノズル部に外部空気を吸入するためのチューブ(またはホース)が接続されるので、上記外爪がこのノズル部とは反対側に位置されていることが好ましい。このようにすれば、接続チューブを介して何らかの外力が加わり、それによってアスピレータを傾ける方向の望ましくない力が作用したとしても、チューブとは反対側に位置される外爪を介しての抗力により傾きを防止あるいは抑制することが可能になる。
【0015】
このようなアスピレータの上記ノズル部は、チューブを介して、例えば車室内に連通され車室内空気を吸入できるように構成される。このように構成すれば、車室内温度検出用の車室内空気を吸入できるようになる。この車室内空気の吸入経路に温度センサを設けておけば、容易に車室内温度を検出できるようになる。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明に係る空気ダクトへの部材取り付け構造によれば、ねじを用いない、小作業工数で済むワンタッチ方式の部材取り付け構造において、部材の空気ダクトの開口部への挿入方向におけるガタを基本的に持たせない状態で、かつ、部材側の環状係止壁と空気ダクト側の環状内壁との接触面積を小さく抑え、この部分に要するスペースを小さく抑えた状態で、気漏れを小さく抑えることができる。また、外爪係合方式の取り付け構造ではあるが、外爪は、空気ダクト側の円筒状立壁の外周面上まで延びる必要はなく、円筒状立壁の頂面に係合され案内されるに要するだけ部材の円筒壁の外周面から突出していればよいので、外爪および外爪を用いた係合構造には大きなスペースを必要とせず、部材取り付け構造としてコンパクトに構成することができる。したがって、気漏れの抑制と、取り付け部の省スペース化の両方をともに効率よく達成可能な空気ダクトへの部材取り付け構造を実現でき、アスピレータの取り付けに最適な構造を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施態様に係る空気ダクトへの部材取り付け構造1を示しており、とくに取り付け部材としてアスピレータ2を用いた場合の取り付け構造1を示している。図2〜図4は、図1の取り付け構造1において、アスピレータ2を取り付ける場合を操作順に示している。本実施態様では、アスピレータ2は樹脂で形成されており、部位によっては多少の弾性変形可能特性を有している。
【0018】
図1において、車両用空調装置における空気ダクト3には開口部4が形成されており、この開口部4に、本発明における部材としてアスピレータ2が挿入され、ねじを使用しないワンタッチ方式で取り付けられる。アスピレータ2は、開口部4を通して空気ダクト3内から空気を排出するディフューザ部5と、該ディフューザ部5に接続され該ディフューザ部5の喉部6において排出空気流により生じる吸引力により(負圧による吸引力により)外部空気を吸入するノズル部7とを有している。ディフューザ部5の先端部8からは、空気ダクト3内から吸入された空気が外部へ排出され、ノズル部7の一端部9には、車室内へと連通されるチューブ10が接続される。チューブ10を介して吸入されてくる車室内空気の温度を、該空気吸入経路に設けた温度センサ(図示略)で検出することにより、車室内温度を検出できるようになっている。
【0019】
空気ダクト3の開口部4は、該空気ダクト3から外側に向けて円筒状に立ち上がり内部に円筒状空間を形成する立壁11と、該立壁11の内面に設けられ前記円筒状空間の内方に向けて突出するとともに周方向全周にわたって環状に延びる内壁12と、該内壁12の内縁に周方向に部分的に延びるように形成された切り欠き13とを有する構造に構成されている。アスピレータ2のディフューザ部5は、上記円筒状の立壁11内に挿入されて嵌合される円筒壁14と、該円筒壁14の外周面上に設けられアスピレータ2の挿入時に上記内壁12上に係止されるとともに該内壁12上を周方向に案内されることが可能な環状係止壁15と、上記円筒壁14の外周面上に周方向に部分的に設けられアスピレータ2挿入時に切り欠き13を通過して内壁12の裏面まで挿入され挿入後に該内壁12の裏面上を周方向に案内されることが可能な円弧状係合壁16と、円筒壁14の外周面上に設けられアスピレータ2挿入時に立壁11の頂面に係合されるとともにアスピレータ2挿入後には立壁11の頂面上を周方向に案内されることが可能な外爪17とを有する構造に構成されている。
【0020】
上記立壁11の頂面には図2に示すように段差が形成されており、アスピレータ2挿入時には外爪17がこの段差の低位部18に係合するまで挿入されるとともに、該段差の低位部18がアスピレータ2の挿入後回転組み付け時に外爪17の案内面を構成している。この段差の低位部18の一端における該低位部18と高位部19との接続壁20(図2(A)、図3(A)、図4(A)に図示)が、アスピレータ2の挿入後回転組み付け時の外爪17の回転方向ストッパを構成している。また、上記段差の低位部18には、外爪17が該低位部18に案内されて回転される際の上記回転方向ストッパ(つまり、接続壁20)に至る直前に外爪17が乗り上げる隆起部21が設けられている。本実施態様では、この隆起部21は、立壁11の外面に沿って延びるように立壁11と一体に形成されたリブ22の頂面として形成されている。外爪17が回転移動によりこの隆起部21を乗り越えた時に、外爪17が上記回転方向ストッパに係止されるようになっている。また、立壁11の内面には、外爪17が上記段差の低位部18に案内されて回転される際の上記回転方向ストッパに当たる直前にもしくは当たると同時に上記円弧状係合壁16の回転動作を停止させる回転方向係止壁23(図2(D)、図3(D)、図4(D)に図示)が設けられている。
【0021】
本実施態様では、外爪17は、アスピレータ2のノズル部7とは反対側に、つまり、ノズル部7へのチューブ10接続側とは反対側に、位置されている。この外爪17は、その上面側にアスピレータ2の挿入方向Aに延びるリブ24を備えており、該リブ24によって補強されている。
【0022】
アスピレータ2は、ねじ等を使用することなく、いわゆるワンタッチ操作にて、つまり、図2〜図4に示すような操作順で空気ダクト3の開口部4に取り付けられ、図1に示したような取り付け後状態に固定されることになる。図2はアスピレータ2を開口部4に挿入する前の状態を示しており、図2(A)は斜視図、図2(B)〜(D)は、図2(A)の斜視図で示した状態の、アスピレータ2の上面側から見た上面図、アスピレータ2のノズル部7側から見た側面図、開口部4の裏面側から見た底面図をそれぞれ示している。図3はアスピレータ2を開口部4に挿入した状態を示しており、図3(A)は斜視図、図3(B)〜(D)は、図3(A)の斜視図で示した状態の、アスピレータ2の上面側から見た上面図、アスピレータ2のノズル部7側から見た側面図、開口部4の裏面側から見た底面図をそれぞれ示している。図4はアスピレータ2を開口部4に挿入後回転させた状態を示しており、図4(A)は斜視図、図4(B)〜(D)は、図4(A)の斜視図で示した状態の、アスピレータ2の上面側から見た上面図、アスピレータ2の側面側から見た側面図、開口部4の裏面側から見た底面図をそれぞれ示している。
【0023】
図1も参照しながら、図2〜図4に示した操作順を説明するに、まず、図2において、アスピレータ2を空気ダクト3の開口部4上に、所定の姿勢で位置させる。そして、図3に示すように、アスピレータ2の円筒壁14の下端部側を開口部4の立壁11内に挿入する。このとき、円弧状係合壁16が、内壁12に形成された切り欠き13を通過し内壁12の裏面側まで挿入され、環状係合壁15が内壁12の上面に係止され、外爪17が円筒壁14の頂面の低位部18に係止される。この挿入状態にて、図4に示すように、アスピレータ2が本実施態様では略90度回転される。この回転時には、円弧状係合壁16が内壁12の裏面側にもぐり込んでアスピレータ2の開口部4からの抜けが防止されるとともに回転動作の終了位置で円弧状係合壁16が回転方向係止壁23に係止されて所定位置にて停止され、過大回転動作が阻止される。
【0024】
この回転時には、同時に、環状係合壁15が、内壁12との接触状態に保たれながら内壁12上を周方向に案内され、この間の所定のシール状態(気漏れ防止状態)が維持される。このとき、環状係合壁15の外周面は、立壁11の内周面に対し微少隙間に維持されるか、実質的に摺接状態に保たれるので、この間の所定のシール状態(気漏れ防止状態)も維持される。したがって、アスピレータ2装着状態における気漏れは、環状係合壁15と内壁12との接触および環状係合壁15の外周面と立壁11の内周面との間の僅かな隙間あるいは実質的な摺接状態の両方によって抑制されることになり、これら両部位に大きなスペースは要しないから、小さなスペースにて良好な気漏れ防止あるいは抑制構造が達成されることになる。
【0025】
さらに上記回転時には、同時に、外爪17が立壁11の頂面の低位部18上を摺接されながら周方向に案内され、内壁12の裏面側にもぐり込んだ円弧状係合壁16との共働により、アスピレータ2の姿勢が所定姿勢に保たれる。低位部18上を回転されてくる外爪17は、やがて、隆起部21上に乗り上げた後、隆起部21上を乗り越え、その位置で低位部18と高位部19の接続壁20(回転方向ストッパ)に当接して所定位置にて停止され、アスピレータ2の取り付けが完了する。外爪17は立壁11の頂面上を案内されるだけでよく、立壁11の外周面上まで折れ曲がって延び外周面上で係合される必要はないので、このような外爪17を設けても大きなスペースは要しない。
【0026】
その結果、ねじを使用しないワンタッチ方式のアスピレータ2の取り付け構造でありながら、気漏れの抑制と取り付け部の省スペース化の両方をともに効率よく達成できる。このようなアスピレータ2のノズル部7の一端部9に、車室内へと連通されるチューブ10が接続されれば、チューブ10を介して吸入されてくる車室内空気の温度(つまり、車室内温度)を効率よく検出できるようになる。また、チューブ10の接続側にはアスピレータ2に外力が加わりやすいが、チューブ10の接続側と反対側に位置されることになる外爪17の剛性を上げておけば、例えばリブ24を設けておけば、上記のような外力に対して外爪17係合部で適切な抗力を発揮でき、それによってアスピレータ2の姿勢を所定姿勢に保つことができるとともに、外爪17自体を破損等が生じないように補強することができる。
【0027】
このように、小さなスペース内にて気漏れの適切に抑制した状態にて、アスピレータ2をワンタッチ方式で取り付けることが可能になる。なお、上記実施態様では取り付け部材がアスピレータ2の場合について説明したが、アスピレータ2以外の取り付け部材に対しても本発明の適用は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明に係る空気ダクトへの部材取り付け構造は、車両用空調装置における空気ダクトの開口部への取り付けが要求されるあらゆる部材の取り付け部に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施態様に係る空気ダクトへの部材取り付け構造の縦断面図である。
【図2】図1の構造におけるアスピレータの開口部への挿入前の状態を示しており、図2(A)は斜視図、図2(B)はアスピレータの上面側から見た上面図、図2(C)はアスピレータのノズル部側から見た側面図、図2(D)は開口部の裏面側から見た底面図である。
【図3】図1の構造におけるアスピレータを開口部に挿入した状態を示しており、図3(A)は斜視図、図3(B)はアスピレータの上面側から見た上面図、図3(C)はアスピレータのノズル部側から見た側面図、図3(D)は開口部の裏面側から見た底面図である。
【図4】図1の構造におけるアスピレータを開口部に挿入した後回転させた状態を示しており、図4(A)は斜視図、図4(B)はアスピレータの上面側から見た上面図、図4(C)はアスピレータの側面側から見た側面図、図4(D)は開口部の裏面側から見た底面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 取り付け部材としてアスピレータを用いた場合の取り付け構造
2 アスピレータ
3 空気ダクト
4 開口部
5 ディフューザ部
6 ディフューザ部の喉部
7 ノズル部
8 ディフューザ部の先端部
9 ノズル部の一端部
10 チューブ
11 立壁
12 内壁
13 切り欠き
14 円筒壁
15 環状係止壁
16 円弧状係合壁
17 外爪
18 低位部
19 高位部
20 接続壁
21 隆起部
22 リブ
23 回転方向係止壁
24 外爪のリブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用空調装置における空気ダクトに形成された開口部に部材を挿入して取り付ける空気ダクトへの部材取り付け構造であって、前記空気ダクトの開口部を、該空気ダクトから外側に向けて円筒状に立ち上がり内部に円筒状空間を形成する立壁と、該立壁の内面に設けられ前記円筒状空間の内方に向けて突出するとともに周方向全周にわたって環状に延びる内壁と、該内壁の内縁に周方向に部分的に延びるように形成された切り欠きとを有する構造に構成し、前記部材を、前記円筒状の立壁内に挿入されて嵌合される円筒壁と、該円筒壁の外周面上に設けられ部材挿入時に前記内壁上に係止されるとともに該内壁上を周方向に案内されることが可能な環状係止壁と、前記円筒壁の外周面上に周方向に部分的に設けられ部材挿入時に前記切り欠きを通過して前記内壁の裏面まで挿入され挿入後に該内壁の裏面上を周方向に案内されることが可能な円弧状係合壁と、前記円筒壁の外周面上に設けられ部材挿入時に前記立壁の頂面に係合されるとともに部材挿入後には前記立壁の頂面上を周方向に案内されることが可能な外爪とを有する構造に構成したことを特徴とする空気ダクトへの部材取り付け構造。
【請求項2】
前記立壁の頂面に段差が形成されており、部材挿入時には前記外爪が前記段差の低位部に係合するまで挿入されるとともに、該段差の低位部が部材の挿入後回転組み付け時に前記外爪の案内面を構成している、請求項1に記載の空気ダクトへの部材取り付け構造。
【請求項3】
前記段差の低位部の一端における該低位部と高位部との接続壁が、部材の挿入後回転組み付け時の前記外爪の回転方向ストッパを構成している、請求項2に記載の空気ダクトへの部材取り付け構造。
【請求項4】
前記段差の低位部に、前記外爪が該低位部に案内されて回転される際の前記回転方向ストッパに至る直前に前記外爪が乗り上げる隆起部が設けられている、請求項3に記載の空気ダクトへの部材取り付け構造。
【請求項5】
前記立壁の内面に、前記外爪が前記段差の低位部に案内されて回転される際の前記回転方向ストッパに当たる直前にもしくは当たると同時に前記円弧状係合壁の回転動作を停止させる回転方向係止壁が設けられている、請求項3または4に記載の空気ダクトへの部材取り付け構造。
【請求項6】
前記外爪が、部材挿入方向に延びるリブを備えている、請求項1〜5のいずれかに記載の空気ダクトへの部材取り付け構造。
【請求項7】
前記部材が樹脂で構成されている、請求項1〜6のいずれかに記載の空気ダクトへの部材取り付け構造。
【請求項8】
前記部材が、前記開口部を通して前記空気ダクト内から空気を排出するディフューザ部と、該ディフューザ部に接続され該ディフューザ部の喉部において排出空気流により生じる吸引力により外部空気を吸入するノズル部とを有するアスピレータからなる、請求項1〜7のいずれかに記載の空気ダクトへの部材取り付け構造。
【請求項9】
前記外爪が前記ノズル部とは反対側に位置されている、請求項8に記載の空気ダクトへの部材取り付け構造。
【請求項10】
前記アスピレータの前記ノズル部は、チューブを介して車室内に連通され車室内空気を吸入する、請求項8または9に記載の空気ダクトへの部材取り付け構造。
【請求項11】
車室内空気の吸入経路に温度センサが設けられている、請求項10に記載の空気ダクトへの部材取り付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−166655(P2009−166655A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6727(P2008−6727)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】