説明

空気中に含まれる特定ガス成分の分析方法

【課題】空気中に微量に含まれるガス成分を捕集しその量を測定分析するにあたり、この捕集を容易かつ適切に行えるようにすると共に、格別の配慮をすることなくその測定結果の信頼性を保証できるようにする。
【解決手段】測定対象となるガス成分を生じさせることのない金属又は合成樹脂よりなる管10中にこのガス成分を化学吸着する粒状をなす吸着剤11を充填してなる捕集管1に、測定対象空間にある空気を所定量通気させた後、この捕集管1の両管端12、12を気密状態にシールする捕集工程と、捕集工程を経た捕集管1中から取り出した吸着剤11から蒸留により前記ガス成分を含んだ試料液を得る蒸留工程と、蒸留工程で得られた試料液中の前記ガス成分の濃度を測定する測定工程とを含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気中に含まれる特定ガス成分の分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気中に特定のガス成分(化学物質)が含まれているかどうか、含まれている場合にはその量を分析する要請がある。例えば、クリーンルーム内の空間や半導体製造装置内の空間にあっては、そこにある空気中にppbレベルの微量なガス成分(典型的にはアンモニア)が存在することも忌避されるところである。ターゲットガスなどと称される空気中に含まれるこうした微量なガス成分の分析にあたっては、先ずサンプリング(捕集)が行われるが、このサンプリングは従来、石英ガラス製のインピンジャに入れられた超純水に測定対象空間にある空気を所定量通気させることでなされていた。しかるに、石英ガラス製のインピンジャは破損しやすく、サンプリングの前後にわたってその取り扱いには相応の注意を要するところであった。また、超純水は汚染され易い一方でサンプリングの対象となるガス成分は微量であるので、分析結果の信頼性担保の観点から、このサンプリングの前後にわたり超純水の管理にも相応の注意を要させていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、空気中に微量に含まれるガス成分を捕集しその量を測定分析するにあたり、この捕集を容易かつ適切に行えるようにすると共に、格別の配慮をすることなくその測定結果の信頼性を保証できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、空気中に含まれる特定ガス成分の分析方法を、以下の(1)〜(3)の工程を含んでなり、(3)の測定工程で得られた濃度と後述の捕集管に通気された空気の所定量とから測定対象空間にある空気中の後述のガス成分の濃度を求めるものとした。
(1)少なくとも測定対象となるガス成分を生じさせることのない金属又は合成樹脂よりなる管中にこのガス成分を化学吸着する粒状をなす吸着剤を充填してなる捕集管に、測定対象空間にある空気を所定量通気させた後、この捕集管の両管端を気密状態にシールする捕集工程、
(2)捕集工程を経た捕集管中から取り出した吸着剤から蒸留により前記ガス成分を含んだ試料液を得る蒸留工程、
(3)蒸留工程で得られた試料液中の前記ガス成分の濃度を測定する測定工程。
【発明の効果】
【0005】
この発明にかかる分析方法によれば、捕集工程においては、捕集管は測定対象となるガス成分を生じさせることのない金属又は合成樹脂よりなることから、その取り扱いは容易であり、吸着剤は通気によりこのガス成分を化学吸着させるものであることから、前記従来の超純水を用いた捕集に比べ、捕集後の捕集管の運搬などにおいて汚染される可能性はない。したがって、蒸留工程で得られた試料液中に含まれたガス成分の濃度を測定工程において測定することで、測定対象空間にあった空気中のガス成分の有無ないしはその濃度を正確に把握することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、この発明を実施するための最良の形態について説明する。この発明にかかる分析方法は、空気中に特定のガス成分が含まれているかどうか、含まれている場合にはこれを正確に把握できるようにするものである。
【0007】
かかる分析方法は、捕集工程と、この捕集工程後に実施される蒸留工程と、この蒸留工程後に実施される測定工程とを含んでなるものである。すなわち、各工程がこの順序でなされることが必須であって、各工程の前後に各工程の実施の意味を喪失させない限度で他の工程が介在されることを妨げるものではない。そして、かかる測定工程で得られた濃度と後述の捕集管1に通気された空気の所定量とから測定対象空間にある空気中の前記ガス成分の濃度を求めるものである。
【0008】
捕集工程は、少なくとも測定対象となるガス成分を生じさせることのない金属又は合成樹脂よりなる管10中にこのガス成分を化学吸着する粒状をなす吸着剤11を充填してなる捕集管1に、測定対象空間にある空気を所定量通気させた後、この捕集管1の両管端12、12を気密状態にシールするものである。
【0009】
図1にこの捕集管1の構成例を示す。前記少なくとも測定対象となるガス成分を生じさせることのない金属又は合成樹脂よりなる管10は、例えば、前記ガス成分がアンモニアである場合には、このアンモニアを生じさせない金属又は合成樹脂により構成される。この管10の両管端は共に開放されており、その間に前記吸着剤11が充填されている。捕集前は捕集管1の両管端12、12を後述するシール手段13により塞ぐなどして捕集管1内の吸着剤11が外気に触れることがないようにしておく。吸着剤11は粒状をなしていることから、例えば、捕集管1の一端側14を測定対象空間に開放させ、あるいは、連通させた状態から、捕集管1の他端側15を吸引ポンプ2に接続させ、この吸引ポンプ2を稼働させることで、吸着剤11に通気をさせることができる。(図2)この通気は流量計などにより所定量に管理する。例えば、2リットル/分の流量で二時間吸引ポンプを稼働させた段階で吸引ポンプの稼働を停止させる。
【0010】
また、図示の例では、前記管10内にその長さ方向に間隔を開けて二箇所の通気性を持ったメッシュ材などの目や通気孔などを複数備えた仕切り材16を配させると共に、この二箇所の仕切り材16、16の間にこの仕切り材16を通過しない粒径の粒状をなす吸着剤11を充填させている。図中、符号17で示すのはこの仕切り材16の押さえリングである。前記所定量の通気の後、捕集管1の両管端12、12はそれぞれ気密状態にシールされる。(図3)図示の例では、捕集管1の両管端12、12にそれぞれ栓状体13aを嵌め付けてかかるシールをなすようにしている。このシールをするシール手段13は、前記所定量の通気の後に捕集管1内に外気を入り込ませないようにするものであれば良く、例えば、捕集管1の両管端12、12を塞ぐキャップや捕集管1の両管端12、12にそれぞれ設けられた弁装置などであっても良い。
【0011】
かかる捕集管1を構成する管は、洗浄したステンレス管などの金属管や、樹脂製とする場合には、それ自身からガスを生じさせ難い、PFAやPTFEなどのフッ素樹脂を用いることが最良である。前記仕切り材16や押さえリングや栓状体13a(シール手段13)もそれ自身からガスを生じさせ難い金属や樹脂などで構成する。
【0012】
吸着剤11は、典型的には、粒状をなす担持体にガス成分を担持させて構成される。例えば、前記ガス成分をアンモニアとする場合には、粒状をなすシリカゲルに硫酸を添着担持させて吸着剤11を構成する。より具体的には粒状をなすシリカゲルを純水にて洗浄してこのシリカゲルの生成過程で付着したアンモニアを取り除いた後これを乾燥させこの後このシリカゲルに硫酸を添着担持させる。捕集管1に通気された空気中にアンモニアが含まれている場合、このアンモニアは吸着剤11に硫酸アンモニウムとなって捕捉されることとなる。かかる捕集管1は捕集工程終了後に図示しない収納容器に密封した状態で運搬などすることが好ましい。この収納容器としては洗浄した金属製のケースなどを用いることができる。
【0013】
次いで、前記蒸留工程は、前記捕集工程を経た捕集管1中から取り出した吸着剤11から蒸留により前記ガス成分を含んだ試料液を得るものである。
【0014】
具体的には、前記捕集工程において所定量の通気後にシールされた捕集管1のシールを解き、管中から吸着剤11を取りだし、これを蒸留フラスコに純水と共に入れ加熱し、発生した水蒸気を冷却管に通して前記試料液とする。より具体的には、前記ガス成分をアンモニアとする場合には、前記蒸留フラスコにさらに水酸化ナトリウムを加えて吸着剤11からアンモニウムイオンを流出させるようにする。かかる蒸留フラスコと冷却管を含む蒸留装置は石英ガラスによって構成させることが最良とされる。図示の例では、捕集管1を構成する管10の長さ方向略中程の位置にこの管10を周回する切り込み18が形成されており、この切り込み18を利用してこの管10を吸着剤11の充填箇所において破断させて吸着剤11の前記取り出しをなすこともできるようになっている。
【0015】
次いで、前記測定工程は、前記蒸留工程で得られた試料液中の前記ガス成分の濃度を測定するものである。具体的には、前記試料液中においてイオン化されている前記ガス成分の濃度をイオンクロマトグラフを用いて測定する。
【0016】
そして、前記測定工程で得られた濃度と前記捕集管1に通気された空気の所定量とから測定対象空間にある空気中の前記ガス成分の濃度が求められる。
【0017】
前記捕集工程においては、捕集管1は測定対象となるガス成分を生じさせることのない金属又は合成樹脂よりなることから、その取り扱いは容易であり、吸着剤11は通気によりこのガス成分を化学吸着させるものであることから捕集後に捕集管1をシールした後の捕集管1の運搬などにおいて汚染される可能性はない。したがって、蒸留工程で得られた試料液中に含まれたガス成分の濃度を測定工程において測定することで、測定対象空間にあった空気中のガス成分の有無ないしはその濃度を正確に把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】捕集工程で用いる捕集管1の断面構成図
【図2】捕集工程において捕集管1に通気させている状態を示した説明図
【図3】捕集工程終了後の捕集管1のシール状態を示した捕集管1の断面構成図
【符号の説明】
【0019】
1 捕集管
10 管
11 吸着剤
12 管端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも測定対象となるガス成分を生じさせることのない金属又は合成樹脂よりなる管中にこのガス成分を化学吸着する粒状をなす吸着剤を充填してなる捕集管に、測定対象空間にある空気を所定量通気させた後、この捕集管の両管端を気密状態にシールする捕集工程と、
捕集工程を経た捕集管中から取り出した吸着剤から蒸留により前記ガス成分を含んだ試料液を得る蒸留工程と、
蒸留工程で得られた試料液中の前記ガス成分の濃度を測定する測定工程とを含んでなり、
測定工程で得られた濃度と前記捕集管に通気された空気の所定量とから測定対象空間にある空気中の前記ガス成分の濃度を求めることを特徴とする、空気中に含まれる特定ガス成分の分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−25092(P2009−25092A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−187125(P2007−187125)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(596042578)日本ピュアテック株式会社 (15)