説明

空気入りタイヤ用静音具およびその帯状部材の両端の接合方法

【課題】耐久性の向上を図りつつ質量のアンバランスを抑制する上で有利な空気入りタイヤ用静音具およびその帯状部材の両端の接合方法を提供する。
【解決手段】空気入りタイヤ用静音具10は、環状体12と、複数の多孔質吸音部材14とを備えている。環状体12は、弾性復元力を有する熱可塑性樹脂からなり断面が厚さよりも幅が大きい扁平な矩形状を呈して延在する帯状部材16の両端が接合されて形成されている。各多孔質吸音部材14は、環状体12に該環状体12の延在方向に等間隔をおいて取着されている。帯状部材16の両端の接合は突合わせ接合によってなされているので、接合部20における段差を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤとホイールのリムとの間に装着される空気入りタイヤ用静音具および空気入りタイヤ用静音具の帯状部材の両端の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤにおいて、騒音を発生させる原因の一つにタイヤ内部に充填された空気の振動による空洞共鳴音がある。
この空洞共鳴音は、タイヤを転動させたときにトレッド部が路面の凹凸によって振動し、トレッド部の振動がタイヤ内部の空気を振動させることによって生じるものである。
【0003】
そこで、このような空洞共鳴現象による騒音を低減する手段として、空気入りタイヤ用静音具が提案されている(特許文献1参照)。
この空気入りタイヤ用静音具は、熱可塑性樹脂からなり断面が厚さよりも幅が大きい扁平な矩形状を呈して延在する帯状部材の両端が接合されて形成された環状体と、この環状体に該環状体の延在方向に等間隔をおいて取着された複数の多孔質吸音部材とを備えている。
そして、この空気入りタイヤ用静音具はタイヤ内周面に装着され、タイヤの転動に伴って回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−137253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような空気入りタイヤ用静音具では、環状体を構成する帯状部材の両端を接合した箇所に段差があると、該空気入りタイヤ用静音具の回転時に段差に応力集中を生じ耐久性の点で不利となり、また、質量のアンバランスから振動や異音が発生する不具合がある。
【0006】
このような空気入りタイヤ用静音具では、耐久性の向上を図りつつ質量のアンバランスを抑制する上で、環状体を構成する帯状部材の両端の接合部分の段差を抑制することが重要となっている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐久性の向上を図りつつ質量のアンバランスを抑制する上で有利な空気入りタイヤ用静音具およびその帯状部材の両端の接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、熱可塑性樹脂からなり断面が厚さよりも幅が大きい扁平な矩形状を呈して延在する帯状部材の両端が接合されて形成された環状体と、前記環状体に該環状体の延在方向に間隔をおいて取着された複数の多孔質吸音部材とを備える空気入りタイヤ用静音具であって、前記帯状部材の両端の接合は突合わせ接合によってなされることを特徴とする。
また本発明は、熱可塑性樹脂からなり断面が厚さよりも幅が大きい扁平な矩形状を呈して延在する帯状部材の両端が接合されて形成された環状体と、前記環状体に該環状体の延在方向に間隔をおいて取着された複数の多孔質吸音部材とを備える空気入りタイヤ用静音具の前記帯状部材の両端の接合方法であって、前記帯状部材の両端の接合は突合わせ接合によってなされ、前記突合せ接合は、前記帯状部材の両端の部分を加熱して溶融させた状態で、前記両端同士を対向させつつ前記帯状部材の長手方向において互いに圧接する第1ステップと、前記第1ステップにより前記帯状部材の両端の圧接された箇所から前記厚さ方向および幅方向に膨出した膨出部を一対の成型子によって挟み込むことにより前記膨出部を押しつぶして平滑面からなる接合部を成型する第2ステップとを含み、前記帯状部材の平均厚さをT1、前記膨出部の厚さをT3としたとき、T3/T1>1.5を満足することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の空気入りタイヤ用静音具によれば、帯状部材の両端の接合を突合わせ接合によって行ったので、接合部における段差の発生を抑制することができ、したがって、耐久性の向上を図りつつ環状体の質量のアンバランスを抑制することができる。
また、本実施の形態の空気入りタイヤ用静音具の帯状部材の両端の接合方法によれば、帯状部材の両端の突き合わせ接合を第1、第2ステップで行い、T3/T1>1.5を満足するようにしたので、強度を確保しかつ段差を低減した接合部を安定して確実に得る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態に係る空気入りタイヤ用静音具10の構成を示す斜視図である。
【図2】実施の形態に係る空気入りタイヤ用静音具10の構成を示す斜視図である。
【図3】(A)〜(D)は帯状部材16の両端1602、1604を突合わせ接合によって接合する場合の説明図である。
【図4】帯状部材16の厚さT1と膨出部1610の厚さT3とを示す説明図である。
【図5】環状体12の非接合部22の平均厚さT1と接合部20の最大厚さT2とを示す説明図である。
【図6】環状体12の非接合部22の平均厚さT1と接合部20の最大厚さT2との関係を示す図である。
【図7】本発明に係る空気入りタイヤ用静音具10の実施例と比較例との実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る空気入りタイヤ用静音具10は、環状体12と、複数の多孔質吸音部材14とを備えている。
【0011】
環状体12は、弾性復元力を有する熱可塑性樹脂からなり断面が厚さよりも幅が大きい扁平な矩形状を呈して延在する帯状部材16の両端が接合されて形成されている。
このような熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリカーボネート(PC),ポリスチレン(PS)、ポリビニルアルコール(PVA),エチレン−酢酸ビニル強重合樹脂(EVA)などの従来公知のさまざまな熱可塑性樹脂が使用可能であるが、ヒンジ特性に優れていることからポリプロピレン(PP)が好ましい。
帯状部材16および帯状部材16の両端の接合については後で詳述する。
【0012】
各多孔質吸音部材14は、環状体12に該環状体12の延在方向に等間隔をおいて取着されている。
多孔質吸音部材14は、タイヤとホイールのリムとの間、特にタイヤ内面に装着されてタイヤ転動時の空洞共鳴音を抑制する、いわゆる騒音低減材として使用されるものである。
多孔質吸音部材14としては、発泡ウレタン、吸音フェルト、発泡アルミニウムなど従来公知のさまざまな材料が使用可能であるが、欠け・裂け等の破損や圧縮(へたり)等の変形を有効に抑制する上で、軟質ポリウレタンフォームが好ましい。
より詳細には、軟質ポリウレタンフォームの単位密度(kg/m)あたりの引裂強さ(単位;N/cm)が0.30以上、特に0.33以上、好ましくは0.35〜0.90、より好ましくは0.39〜0.70、最も好ましくは0.40〜0.65でことが、破損や変形を有効に抑制する上で有利となる(2007−137253号公報)。
単位密度あたりの引裂強さとは、測定された密度および引裂強さから算出される値であり、引裂強さを密度で除することによって得られる値である。
また、本発明の軟質ポリウレタンフォームの密度は7〜40kg/m、好ましくは10〜30kg/mである。一般に、密度は小さくすると、軟質ポリウレタンフォームの機械的強度は低下するので、破損は起こり易いことが知られているが、上記のように比較的小さく設定しても、軟質ポリウレタンフォームの破損を有効に抑制できる。
【0013】
また引裂強さは、試験片の形状を「切込みなしアングル形試験片」としてJIS K6400−5に準じて測定された値を用いている。
【0014】
軟質ポリウレタンフォームのセル数は、上記単位密度あたりの引裂強さが達成されれば、特に制限されず、密度を減少させることによって単位密度あたりの引裂強さを増大させる観点からは、25個/25mm以上が好ましい。セル数は25mmあたりの個数で示すものとする。
【0015】
セル数は、JIS K6400−1 付属書1に準じて測定された値を用いている。
【0016】
軟質ポリウレタンフォームは、例えば、主原料であるポリオール成分の種類により、ポリエステルウレタンフォーム、ポリエーテルウレタンフォームおよびポリエステルエーテルウレタンフォームに大別される。
単位密度あたりの引裂強さの制御の観点からは、ポリエステルウレタンフォームおよびポリエーテルウレタンフォームが好ましい。
【0017】
このような軟質ポリウレタンフォームは例えば、市販の倉敷紡績社製「クララフォーム」シリーズ等として入手可能である。
【0018】
本実施の形態では、多孔質吸音部材14は、矩形状の板の四隅を面取りした八角形の板状を呈している。
なお、多孔質吸音部材14の形状は、特に制限されるものではないが、環状体12を用いて装着されることを考慮すれば、厚さ3〜30mm程度が好ましく、特に5〜15mmが好ましい。
3mm未満であると、環状体12への取付け性が低下する。また、30mmを越えると面外曲げの強制変位に対して表面応力が大きくなり、裂け・欠けが発生しやすい。
また、幅は、タイヤのカーカス層外周側に配される補強層、いわゆるベルト層の最大幅の50〜150%程度であり、好ましくは80〜130%である。
なお、環状体12の幅とは、環状体12をタイヤに装着した時におけるタイヤ回転軸方向の長さである。
【0019】
図1、図2は空気入りタイヤ用静音具10の斜視図である。
図1、図2の何れにおいても、各多孔質吸音部材14は、その幅方向の中央を通る中心線を環状体12の幅方向の中心線に平行させた状態で環状体12に取着されている。
各多孔質吸音部材14は、図1に示すように、環状体12の内周面に取着されてもよく、あるいは、図2に示すように、環状体12の外周面に取着されてもよい。
各多孔質吸音部材14が環状体12の延在方向に等間隔をおいて取着されることにより、周方向の重量バランスを均一に保つことができる。
図1、図2においては、多孔質吸音部材14の個数は5個であるが、特に制限されるものではなく、例えば、3〜20個であってよい。
【0020】
多孔質吸音部材14の環状体12に対する取着方法として例えば以下の方法が使用できる。
1)接着剤や粘着テープを用いて多孔質吸音部材14を環状体12に取着する。
2)ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂からなる樹脂層を、多孔質吸音部材14における環状体12との接触面に予め形成しておき、当該樹脂層の熱融着によって多孔質吸音部材14を環状体12に取着する。このような樹脂層の熱融着には超音波溶着機を用いることが好ましい。
【0021】
また、多孔質吸音部材14の環状体12に対する取着は、多孔質吸音部材14と環状体12との接触面全面において行っても、あるいは、当該接触面において局部的に行ってもよい。
【0022】
空気入りタイヤ用静音具10の寸法、すなわち環状体12および多孔質吸音部材14の寸法は、多孔質吸音部材14がタイヤの内面、特にトレッド部の内面に装着・保持され、かつ騒音低減効果を奏する限り特に制限されるものではない。
特に環状体12を真円としたときの直径は、通常、装着されるべきタイヤの内径と略同等又は小さくされる。
【0023】
空気入りタイヤ用静音具10の製造に際しては、帯状部材16の所定位置に多孔質吸音部材14を取着した後、帯状部材16の両端を接合してもよい。
あるいは、帯状部材16の両端を接合して環状体12を形成した後、環状体12の所定位置に多孔質吸音部材14を取着してもよい。
【0024】
空気入りタイヤ用静音具10は、環状体12が弾性復元力を有するため、外力によって変形されながらタイヤ内に挿入されても、外力が除かれると、環状体12はタイヤ周方向に連続的に延在するように復元する。
その結果として空気入りタイヤ用静音具10はタイヤ内面に保持され、各多孔質吸音部材14がタイヤ内面、特にトレッド部内面に装着・保持される。
また空気入りタイヤ用静音具10はタイヤに対して着脱自在であり、その着脱作業は簡便である。
【0025】
次に本発明の要旨である帯状部材16の接合方法について詳細に説明する。
図3(A)〜(D)は帯状部材16の両端1602、1604を突合わせ接合によって接合する場合の説明図である。
本実施の形態では、帯状部材16の両端の接合は突合わせ接合によってなされている。
突合せ接合は次のような手順で行われる。
図3(A)に示すように帯状部材16の両端1602、1604の部分を加熱して溶融させた状態で、図3(B)に示すように、両端1602、1604同士を対向させつつ帯状部材16の長手方向において互いに圧接する第1ステップを行う。
両端1602、1604の部分を溶融する方法としては次に例示する方法を含め、従来公知のさまざまな方法が使用可能である。
1)加熱した金属製の熱板を用いて両端1602、1604を融点以上に加熱して溶融させる。
2)熱風を用いて両端1602、1604を融点以上に加熱して溶融させる。
3)熱線(放射線)を用いて両端1602、1604を融点以上に加熱して溶融させる。
【0026】
図3(B)に示すように、第1ステップにより帯状部材16の両端1602、1604の圧接された箇所において厚さ方向および幅方向に膨出した膨出部1610が形成される。
次に、図3(C)に示すように、膨出部1610を一対の成型子C1、C2によって挟み込むことにより膨出部1610を押しつぶして平滑面からなる接合部20を成型する第2ステップを行う。すなわち、一対の成型子C1、C2によって押しつぶされた膨出部1610が冷却硬化されることにより、接合部20が成型される。なお、一対の成型子C1、C2で膨出部1610を押しつぶした際には、融点以上に再加熱をした後に冷却硬化すると、精度良く成型する上で有利となる。この際に、接合部の幅方向(厚さTの法線方向)にバリの様な突起が出る場合があるが、それを取り除く工程を入れても良い。
この場合、図4に示すように、帯状部材16の厚さをT1、膨出部20の厚さをT3としたとき、T3/T1>1.5を満足することが接合部20を安定して成型する上で有利となる。
【0027】
また、膨出部1610を冷却硬化させるために、成形子C1,C2が膨出部1610を押圧する押圧面の温度は膨出部1610の温度(溶融された両端1602、1604の温度)よりも低温であることが必要である。
また、成形子C1,C2が膨出部1610を押圧する押圧面は、平坦な平面であることが接合部20の平滑面を得る上で好ましい。
次いで、図3(D)に示すように、一対の成型子C1、C2を接合部20から離間させることにより、環状体12が得られる。この場合、接合部20以外の環状体12の部分が非接合部22となる。
【0028】
このように膨出部1610を押しつぶして平滑面からなる接合部20を成型することにより、段差をなくすことができ、接合部20の強度を、接合部20を除く帯状部材16の部分の強度と同等とすることができる。
したがって、接合部20における応力集中を抑制でき、環状体12の耐久性を高める上で有利となる。
また、接合部20と接合部20を除く帯状部材16の部分との厚さをほぼ均等にできるため、環状体12の周方向における質量のアンバランスを抑制することができる。
したがって、タイヤの転動に追従して回転する空気入りタイヤ用静音具10の振動および異音の発生を抑制する上で有利となる。
また、図1に示すように、各多孔質吸音部材14を環状体12の内周面に取着して構成した空気入りタイヤ用静音具10では、タイヤ内周面に装着した状態で環状体12がタイヤ内周面に接触するが、平滑面からなる接合部20は、段差に比べてタイヤ内周面(インナーライナー)への損傷を抑制する上で有利となる。
【0029】
なお、図5に示すように、環状体12の非接合部22の平均厚さ(帯状部材16の厚さ)をT1、接合部20の最大厚さをT2としたときに、T2−T1が−0.3mm以上+0.3mm以下であることが、耐久性および質量のバランスを阻害する段差をなくす上で有利となる。
また、(T2−T1)/T2が−0.3以上+0.3以下であることが接合部20付近での応力集中による耐久性の低下を抑制する上で有利となる。
図6は上記したT1,T2の関係を示す図であり、直線L1がT2−T1=−0.3mm、直線L2がT2−T1=+0.3mm、直線L3が(T2−T1)/T2=−0.3、直線L4が(T2−T1)/T2=+0.3を示している。
したがって、ハッチングを施した範囲が耐久性および質量のバランスを阻害する段差を低減する上で好ましいT1,T2の数値の範囲を示している。
【0030】
さらに、T2−T1が−0.1mm以上+0.1mm以下であることが耐久性および質量のバランスを阻害する段差を低減する上でより好ましく、(T2−T1)/T2が−0.1以上+0.1以下であることが接合部20付近での応力集中による耐久性の低下を抑制する上でより好ましい。
【0031】
以上説明したように本実施の形態の空気入りタイヤ用静音具10によれば、帯状部材16の両端の接合を突合わせ接合によって行ったので、接合部20における段差を低減でき、したがって、接合部20の強度を確保することができる。
また、接合部20における段差を低減することによって接合部20と接合部20を除く帯状部材16の部分との厚さをほぼ均等にできるため、環状体12の質量のアンバランスを抑制することができる。
また、本実施の形態の空気入りタイヤ用静音具の帯状部材の両端の接合方法によれば、帯状部材16の両端1602、1604の突き合わせ接合を第1、第2ステップで行い、T3/T1>1.5を満足するようにしたので、強度を確保しかつ段差を低減した接合部20を安定して確実に得る上で有利となる。
【0032】
なお、本実施の形態では、帯状部材16の両端1602、1604の突き合わせ接合を熱溶着を用いて行ったが、要するに突き合わせ接合を行えればよいのであり、熱溶着に代えて振動溶着、超音波溶着を用いてもよい。
【0033】
また、図1に示すように、空気入りタイヤ用静音具10の各多孔質吸音部材14が環状体12の内周面に取着されて構成されている場合、言い換えると、環状体12の外周面がタイヤ内周面に接触して装着される場合は次のことが言える。
すなわち、接合部20のうち環状体12の外周面に位置する部分のみを平滑面とすれば接合部20がタイヤ内周面に損傷を与えることを抑制することができ、接合部20のうち環状体12の内周面に位置する部分については必ずしも平滑面としなくてもよい。
しかしながら、本実施の形態のように、接合部20のうち環状体12の外周面および内周面の双方を平滑面とすれば、接合部20の強度を確保しつつ接合部20における段差を低減する上でより有利となり、また、環状体12の周方向における質量のアンバランスを抑制する上でより有利となる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の実施例を比較例と比較しつつ説明する。
図7は本発明に係る空気入りタイヤ用静音具10の実施例と比較例との実験結果を示す図である。
実験条件は、以下の通りである。
空気入りタイヤ用静音具10の仕様:
帯状部材16の材質はポリプロピレン、寸法は長さ1900mm、幅25mm、厚さ1mmとした。
多孔質吸音部材14の材質は軟質ポリウレタンフォーム、寸法は長さ300、幅200、厚さ10mmとした。
また、図1に示すように、空気入りタイヤ用静音具10は、5個の多孔質吸音部材14が環状体12の内周面に取着されて構成されている。
タイヤ仕様:
215/60R16 95H(サマータイヤ)
評価方法:
ドラム耐久試験(速度80km/h、タイヤ荷重100%LI、空気圧120kPa、走行距離6000km)
【0035】
評価項目は以下の2項目である。
耐久性:環状体12の破損状況に基づいて◎、○、×の3段階で評価した。
◎は空気入りタイヤ用静音具10外観に目立った損傷がなく使用可能であることを示す。
○は空気入りタイヤ用静音具10外観に損傷はあるが使用可能であることを示す。
×は空気入りタイヤ用静音具10外観の損傷が大きく使用不可能であることを示す。
すなわち、×は環状体12および多孔質吸音部材14の何れかが破断した状態を示す。
低タイヤ攻撃性:接合部20がタイヤ内周面に与えた損傷の程度に基づいて◎、○、×の3段階で評価した。
◎はインナーライナーに目立った損傷が無いことを示す。
○はインナーライナーを貫通しない傷が見られることを示す。
×はインナーライナーを貫通する傷、あるいは、インナーライナーの剥離が見られることを示す。
【0036】
実施例1〜3は、帯状部材16を熱溶着により突き合わせ接合(バット接合)し、T1、T2,T3の数値が前記の条件式を満足するように設定した。
比較例1、2は、帯状部材16を熱溶着により突き合わせ接合した。
比較例3は、帯状部材16を熱溶着により重ね合わせ接合(ラップ接合)した。重ね合わせ接合は、帯状部材16の両端1602、1604をそれらの厚さ方向で重ね合わせて接合することをいう。
比較例4は、帯状部材16を接着剤により突き合わせ接合した。
比較例5は、帯状部材16を接着剤により重ね合わせ接合した。
なお、比較例1〜5は、T1、T2,T3の数値の少なくとも一部が前記の条件式を満たさないように設定した。
【0037】
図7から明らかなように、比較例1、2は帯状部材16を突き合わせ接合することで環状体12を構成しているものの、T1、T2,T3の数値が前記の条件式を満たしていない。
したがって、実施例1〜3は比較例1、2に比較して耐久性および低タイヤ攻撃性の面で有利となっていることがわかる。
また、比較例3、5は重ね合わせ接合であることから、帯状部材の両端の接合部分の強度をある程度確保することはできるものの、接合部分に大きな段差(T2−T1=0.9mm、1.1mm)が生じるためにタイヤ内周面に損傷を与えやすい。
したがって、実施例1〜3は、比較例3、5に比較して低タイヤ攻撃性の面で有利となっていることがわかる。
また、比較例4は突き合わせ接合であることから、帯状部材の両端の接合部分の段差は低減できるものの、接着剤を用いているため帯状部材の両端の接合部分の強度を確保する上で不利がある。
したがって、実施例1〜3は、比較例4に比較して耐久性の面で有利となっていることがわかる。
すなわち、実施例1〜3は、比較例1〜5に対して、耐久性および低タイヤ攻撃性の双方を確保する上で有利であることがわかる。
【符号の説明】
【0038】
10……空気入りタイヤ用静音具、12……環状体、14……多孔質吸音部材、16……帯状部材、1602、1604……両端、1610……膨出部、20……接合部、22……非接合部、C1,C2……成形子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなり断面が厚さよりも幅が大きい扁平な矩形状を呈して延在する帯状部材の両端が接合されて形成された環状体と、
前記環状体に該環状体の延在方向に間隔をおいて取着された複数の多孔質吸音部材とを備える空気入りタイヤ用静音具であって、
前記帯状部材の両端の接合は突合わせ接合によってなされる、
ことを特徴とする空気入りタイヤ用静音具。
【請求項2】
前記突き合わせ接合により接合された前記帯状部材の両端の部分によって接合部が形成され、
前記環状体の前記接合部を除く非接合部の平均厚さをT1、前記接合部の最大厚さをT2としたときに、
T2−T1が−0.3mm以上+0.3mm以下であり、
かつ、
(T2−T1)/T2が−0.3以上+0.3以下である、
ことを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ用静音具。
【請求項3】
前記突き合わせ接合により接合された前記帯状部材の両端の部分によって接合部が形成され、
前記環状体の前記接合部を除く非接合部の平均厚さをT1、前記接合部の最大厚さをT2としたときに、
T2−T1が−0.1mm以上+0.1mm以下であり、
かつ、
(T2−T1)/T2が−0.1以上+0.1以下である、
ことを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ用静音具。
【請求項4】
熱可塑性樹脂からなり断面が厚さよりも幅が大きい扁平な矩形状を呈して延在する帯状部材の両端が接合されて形成された環状体と、
前記環状体に該環状体の延在方向に間隔をおいて取着された複数の多孔質吸音部材とを備える空気入りタイヤ用静音具の前記帯状部材の両端の接合方法であって、
前記帯状部材の両端の接合は突合わせ接合によってなされ、
前記突合せ接合は、
前記帯状部材の両端の部分を加熱して溶融させた状態で、前記両端同士を対向させつつ前記帯状部材の長手方向において互いに圧接する第1ステップと、
前記第1ステップにより前記帯状部材の両端の圧接された箇所から前記厚さ方向および幅方向に膨出した膨出部を一対の成型子によって挟み込むことにより前記膨出部を押しつぶして平滑面からなる接合部を成型する第2ステップとを含み、
前記帯状部材の平均厚さをT1、前記膨出部の厚さをT3としたとき、
T3/T1>1.5を満足する、
ことを特徴とする空気入りタイヤ用静音具の前記帯状部材の両端の接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−148437(P2011−148437A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12158(P2010−12158)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【出願人】(509294922)ムネカタインダストリアルマシナリー株式会社 (5)