説明

空気入りタイヤ

【課題】 タイヤ負荷時におけるトレッド部(特にセンター部)の発熱を効果的に抑制・放熱してヒートセパレーション故障を防止した空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】 トレッド部に多数本のラグ溝22を配設し、これらのラグ溝の終端位置をそれぞれ実質上タイヤ周方向に結ぶことによる、2本のタイヤ円周間のセンター部Cに20mm以下の幅の細溝24が幅方向に配置される空気入りタイヤにおいて、センター部にタイヤ周方向に沿って周方向浅溝26を設けると共に、赤道CLを中心とするトレッド幅の25%の領域での周方向浅溝26を除いてネガティブ率が8%以下であり、かつ、天然ゴム及び合成ゴムからなる群から選ばれた少なくとも1種のゴム成分100質量部に対して、ダイポーラー窒素を含む部分Q、及び酸素又は硫黄を含む4〜6の窒素含有複素環部分Bを有する化合物を0.1〜30質量部配合してなるゴム組成物をタイヤ部材に使用してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、タイヤトレッドでの発熱性を改善すると共に、耐摩耗性を向上させて、要求の厳しい建設車両用空気入りタイヤに好適な空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多数本のラグ溝を所定間隔において配設した、いわゆるラグパターンを有する建設車両用タイヤにおいて、その耐摩耗性を向上させるには、耐摩耗性のよいトレッドゴムを使用し、トレッドボリュームを増加させ、トレッドパターンを増加(深溝化)させ、ネガティブ率を減少させ、陸部剛性を高める等の手段を用いるのが一般的である。
【0003】
しかしながら、上記手段を用いて耐摩耗性を向上させる場合には、とりわけ、タイヤの負荷転動時におけるトレッド部の発熱性の悪化を招く傾向があり、この発熱性の悪化は、トレッド部のヒートセパレーション等の故障を引き起こす原因となることがあった。従って、耐摩耗性を維持しながら、発熱性のよいトレッドゴム・ベースゴムが必要とされるが、発熱と耐摩耗性は背反しており、高度にユーザーのニーズに応えるには限界がある。
【0004】
特に、ラグ溝の終端位置をそれぞれ実質上タイヤ周方向に結ぶことによって形成される2本のタイヤ円周の陸部は、放熱面積が少ないため、発熱温度が高くなる傾向にある。
そのため、トレッドボリュームの低下を最小限に抑え、陸部剛性の低下を最小限に抑え、放熱面積を増やすべく、20mm以下の幅の細溝を該陸部に配設する技術が近年開発されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0005】
しかしながら、最近、特に、建設車両の大型化に伴うタイヤサイズの大型化、扁平化及び重荷重下が進んできたことにより、トレッド部の発熱性の悪化は、顕著になる傾向にあり、センター部の発熱を抑えることは、依然重要視されている。
【特許文献1】特開2001−213120号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開2000−233610号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の課題に鑑み、タイヤセンター部の放熱性を高めると共に、タイヤトレッドでの発熱性を改善し、かつ、耐摩耗性を向上させて、要求の厳しい建設車両用空気入りタイヤに好適な空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記従来の課題等を解決するために、鋭意検討した結果、トレッド部に各トレッド端からそれぞれタイヤ赤道面に向かって延びる多数本のラグ溝を配設し、これらのラグ溝の終端位置をそれぞれ実質上タイヤ周方向に結ぶことによって形成される2本のタイヤ円周間のセンター部に20mm以下の幅の細溝が幅方向に配置されると共に、深さ70mm以上の主溝を有する空気入りタイヤにおいて、タイヤセンター部の構造を特定構造とすると共に、特定のゴム組成物をタイヤ部材に使用することにより、上記目的の空気入りタイヤが得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0008】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(8)に存する。
(1) トレッド部に各トレッド端からそれぞれタイヤ赤道面に向かって延びる多数本のラグ溝を配設し、これらのラグ溝の終端位置をそれぞれ実質上タイヤ周方向に結ぶことによって形成される2本のタイヤ円周間のセンター部に20mm以下の幅の細溝が幅方向に配置される空気入りタイヤにおいて、センター部にタイヤ周方向に沿って延びる周方向浅溝を設けると共に、赤道を中心とするトレッド幅の25%の領域での周方向浅溝を除いてネガティブ率が8%以下であり、かつ、天然ゴム及び合成ゴムからなる群から選ばれた少なくとも1種のゴム成分100質量部に対して、ダイポーラー窒素を含む部分Q、及び酸素又は硫黄を含む4〜6の窒素含有複素環部分Bを有する化合物を0.1〜30質量部配合してなるゴム組成物をタイヤ部材に使用してなることを特徴とする空気入りタイヤ。
(2) 上記のダイポーラー窒素部分が、A1−C(A2)=N(A3)→O、A1−C≡N→O、及びA1−C≡N→N−A4の少なくとも1以上から選択され、該A1〜A4はそれぞれ異なっていても良い水素又は炭素数が20以下の基又は上記Bを連結する連結鎖であり、上記化合物が少なくともA1〜A4の1つ以上に上記Bが連結している上記(1)記載の空気入りタイヤ。
(3) 上記の化合物のA1〜A4は、水素、炭素数が1〜20の範囲にあるアルキル基、及び炭素数が6〜20の範囲にあるアリール基(但し、芳香族環にはニトロ基、シアノ基、クロロ基、ブロモ基、アシル基、カルボニルアルキル基、アルキル基、及びアルコキシル基を有してよい。)の何れか1つから選択される基、又は連結鎖である上記(2)記載の空気入りタイヤ。
(4) 上記B部分の窒素含有複素環がオキサゾリン又はチアゾリンである上記(1)記載の空気入りタイヤ。
(5) 上記の化合物が、4−(2−オキサゾリル)−フェニル−N−メチル−ニトロン、4−(2−チアゾリル)−フェニル−N−メチル−ニトロン、4−(2−オキサゾリル)−フェニル−N−フェニル−ニトロン、4−(2−チアゾリル)−フェニル−N−フェニル−ニトロン、フェニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、フェニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、4−トリル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、4−トリル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、4−メトキシフェニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、4−メトキシフェニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトリルオキシド、4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトリルオキシド、4−(2−オキサゾリル)−フェニル−N−メチル−ニトリルイミン、4−(2−チアゾリル)−フェニル−N−メチル−ニトリルイミン、4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトリルオキシド、4−(2−オキサゾリル)−フェニル−N−フェニル−ニトリルイミン、4−(2−チアゾリル)−フェニル−N−フェニル−ニトリルイミン、フェニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトリルイミン、フェニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトリルイミンの1以上のものからなる上記(4)記載の空気入りタイヤ。
(6) 周方向浅溝の溝深さは、前記ラグ溝深さの25%以下である上記(1)〜(5)の何れか一つに記載の空気入りタイヤ。
(7) 周方向浅溝の溝幅は、30mm以上50mm以下である上記(1)〜(6)の何れか一つに記載の空気入りタイヤ。
(8) 空気入りタイヤが建設車両用空気入りタイヤである上記(1)〜(7)の何れか一つに記載される空気入りタイヤ。
本発明において、「トレッド端」とは、空気入りタイヤをJATMA YEAR BOOK(2002年度版、日本自動車協会規格)に規定される標準リムに装着し、JATMA YEAR BOOKでの適用サイズ・プレイトーレディングにおける最大負荷能力(内圧−負荷能力対応表の太字荷重)に対する空気圧(最大空気圧)の100%を内圧として充填し、最大負荷の能力を負荷したときのタイヤ幅方向最外の接地部分を指す。なお、使用地又は製造地においてTRA規格、ETRTO規格が適用される場合は各々の規格に従う。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、タイヤセンター部の放熱性を高めると共に、タイヤトレッドでの発熱性を更に改善し、かつ、耐摩耗性を更に向上させることができ、タイヤ負荷時におけるトレッド部(特にセンター部)の発熱を効果的に抑制・放熱することによりヒートセパレーション故障を防止した空気入りタイヤ、特に、建設車両用空気入りタイヤが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態を図面を参照しながら、詳しく説明する。
図1及び図2は、本発明の第1実施形態を示す建設車両用空気入りタイヤを示すものであり、図1はそのタイヤ径方向断面図、図2(A)及び(B)は夫々、トレッド部を示す平面図及びタイヤ径方向断面図である。
本発明の第1実施形態の建設車両用空気入りタイヤ10は、図1及び図2に示すように、両端部が夫々ビードコア11で折り返されたカーカス12を備えている。カーカス12は、1層又は複数層で構成される。
【0011】
カーカス12のクラウン部12Cのタイヤ径方向外側には、複数枚のベルトプライが重ねられたベルト層14が埋設されている。ベルト層14のタイヤ径方向外側には、溝を配設したトレッド部18が形成されている。
【0012】
本実施形態では、トレッド部18のトレッドゴム・ベースゴムとして、天然ゴム及び合成ゴムからなる群から選ばれた少なくとも1種のゴム成分100質量部に対して、ダイポーラー窒素を含む部分Q、及び酸素又は硫黄を含む4〜6の窒素含有複素環部分Bを有する化合物を0.1〜30質量部配合してなるゴム組成物から構成されている。
用いるゴム成分としては、天然ゴム及び合成ゴムからなる群から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。合成ゴムとしては、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができる。特に共役ジェン系ゴムが好ましく、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、及びブチルゴムから少なくとも1種を適宜選択することが好ましい。特に好ましくは、SBRを選択することにより、耐摩耗性を更に向上させることができる。また、合成ゴムの総量は、上記変性共役ジエン系重合体を含めて、30〜100質量%の範囲で含めることが望ましい。
【0013】
本実施形態において、トレッド部18に用いるゴム組成物は、上記ゴム成分にカーボンブラック及び/又はシリカ等が配合される。これらはゴム成分100質量部に対して30〜70質量部の範囲で配合することが好ましい。カーボンブラック及びホワイトカーボンの量が少なくなると弾性率が低下する傾向がある。また、カーボン等の量が多くなると加硫ゴム組成物の低発熱性が悪くなる傾向にある。
用いることができるカーボンブラックとしては、通常ゴム工業に用いられるものが使用できる。例えば、SAF、HAF、ISAF、FEF、GPFなど種々のグレードのカーボンブラックを単独にまたは2種以上を混合して使用することができる。
好ましくは、本発明の効果の更なる向上の点から、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)が30〜200m/g若しくはDBP吸油量が60〜200(cm/100g)のものが望ましい。
【0014】
カーボンブラックの配合量は、ゴム成分100質量部に対して、20〜100質量部配合することが好ましく、特には、20〜80質量部の範囲であることが好ましい。カーボンブラックの量が20質量部より少ないと発熱性に優れるが、耐摩耗性が著しく損なわれる場合があり、一方、100質量部を超えると、加工性が悪化する場合がある。
【0015】
また、ゴム組成物中に充填材としてシリカを配合することが好ましい。用いるシリカとしては、ヒステリシスロス向上によるチッピング性向上を更に向上せしめる点から、窒素吸着比表面積(NSA)が180〜270m/gであるものが望ましい。なお、NSAが270m/gを超えるものであると、工場作業性が悪化し、好ましくない。
シリカの配合量は、ゴム成分100質量部に対して、更なる分散確保の点から、1〜40質量部配合することが好ましく、特には、3〜30質量部の範囲であることが好ましい。
【0016】
本発明において、トレッド部18に用いるゴム組成物には、ゴム成分100質量部に対して、ダイポーラー窒素を含む部分Q、及び酸素又は硫黄を含む4〜6の窒素含有複素環部分Bを有する化合物を0.1〜30質量部配合することが必要である。好ましくは、0.3〜5質量部配合することが好ましい。
用いる上記化合物は、ダイポーラー窒素部分を含む限り、本発明の化合物に含まれるものである。特に好ましいダイポーラー窒素部分の具体的なものとしては、A1−C(A2)=N(A3)→O(ニトロン系)、A1−C≡N→O(ニトリルオキサイド系)、及びA1−C≡N→N−A4(ニトリルイミン系)の3つが挙げられる。これらのダイポーラー窒素部分Qは、ゴム成分等のポリマー中の二重結合部分と下記の反応式(1)〜(3)で示すように反応結合するものである。
【化1】

【化2】

【化3】

【0017】
上述のニトロン系、ニトリルオキサイド系、及びニトリルイミン系のダイポーラー窒素部分Qにおける各A1〜A4の基は、水素、又は炭素数が20以下の基或いは連結鎖であることが望ましい。炭素数が20を超えると、化合物自体の分子量が嵩み、ゴム成分との反応性が悪くなる。
上記化合物はB部分を有していることから、A1〜A4はB部分を連結する連結鎖となり得る。但し、A1〜A3の場合、A1のみの場合、又はA1及びA4の場合は、少なくとも1つ以上がB部分と連結しており、B部分が複数存在していても良い。尚、A1〜A4はそれぞれ異なるものであっても良く、同一のものであっても良い。
【0018】
上記の化合物のA1〜A4の具体的な基又は連結鎖としては、具体的に水素、炭素数が1〜20の範囲にあるアルキル基、及び炭素数が6〜20の範囲にあるアリール基(但し、芳香族環にはニトロ基、シアノ基、クロロ基、ブロモ基、アシル基、カルボニルアルキル基、アルキル基、及びアルコキシル基を有してよい。)の何れか1つから選択される基、又は連結鎖である。上記アルキル基、アシル基、カルボニルアルキル基、及びアルコキシル基は、分岐鎖を有していても良く、またシクロ環があっても良い。またA1〜A4はそれぞれ異なっても良い。
【0019】
上記の化合物のB部分は、オキゼチン系、チオゼチン系、オキサゾリン系、チアゾリン系、テトラヒドロオキサジン系及びテトラヒドロチオキサジン系等の酸素又は硫黄を有する窒素含有複素環からなる。特に、下記構造式(I)〜(III)で表される4〜6員の窒素含有複素環からなる(表中のXは、酸素:O又は硫黄:S)。中でも、構造式(II)のオキサゾリン及びチオゾリンが望ましい。また、各構造式中において、R1〜R7は、水素、又は炭素数が20以下の基又は連結鎖である。また、A1〜A4の場合と同様に各構造式において、R1〜R3の場合、R1〜R5の場合、又はR1〜R7の場合には、少なくとも1以上がQと連結しているA1〜A4に相当する。
上述したようにB部分は、下記反応式(4)〜(15)の結合反応が起こり、カーボンブラック及びホワイトカーボン(シリカ)をゴム成分のポリマー中に均一に取り込むことができる。
【0020】
【化4】

【0021】
【化5】

【0022】
【化6】

【0023】
【化7】

【0024】
上記の化合物の具体的なものとしては、4−(2−オキサゾリル)−フェニル−N−メチル−ニトロン、4−(2−チアゾリル)−フェニル−N−メチル−ニトロン、4−(2−オキサゾリル)−フェニル−N−フェニル−ニトロン、4−(2−チアゾリル)−フェニル−N−フェニル−ニトロン、フェニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、フェニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、4−トリル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、4−トリル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、4−メトキシフェニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、4−メトキシフェニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトリルオキシド、4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトリルオキシド、4−(2−オキサゾリル)−フェニル−N−メチル−ニトリルイミン、4−(2−チアゾリル)−フェニル−N−メチル−ニトリルイミン、4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトリルオキシド、4−(2−オキサゾリル)−フェニル−N−フェニル−ニトリルイミン、4−(2−チアゾリル)−フェニル−N−フェニル−ニトリルイミン、フェニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトリルイミン、フェニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトリルイミン等を挙げることができる。
【0025】
このような化合物において、例えば、4−(2−オキサゾリル)−フェニル−N−メチル−ニトロン〔以下、「4OPMN」という。下記式(IV)参照〕及び4−(2−オキサゾリル)−フェニル−N−フェニル−ニトロン〔以下、「4OPPN」という。下記式(V)参照〕を具体的に挙げることができる。
【0026】
【化8】

【0027】
上記の化合物の製造方法は、過度の実験をしなくても製造できる。例えば、4OPMN及び4OPPNに関しては後述する実施例においてその製造方法を示すことができる。
また、他の化合物についても、他の開始物質及び中間物質を適宜選択することにより代表的な製造方法で製造することができる。
上記の化合物は、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜30質量部の範囲で含む。特に、0.1〜5質量部の範囲で含むことが好ましい。化合物の配合量が0.1質量部未満では、低発熱化及び低ヒステリシスロス性の効果が十分でない。化合物の配合量が30質量部を超えると、著しいコストアップになり好ましくない。
【0028】
更に、用いるゴム組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、通常ゴム工業界で用いられる種々の成分を含むことができる。例えば、種々の成分として、充填剤(例えば、炭酸カルシウム及び炭酸カルシウムなどの無機充填剤);加硫促進剤;老化防止剤;酸化亜鉛;ステアリン酸;軟化剤;及びオゾン劣化防止剤等の添加剤を挙げることができる。なお、加硫促進剤として、MBTS(ジベンゾチアジルジスルフィド)及びCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)等のチアゾール系加硫促進剤;TT(テトラメチルチウラムスルフィド)等のチウラム系加硫促進剤;並びにDPG(ジフェニルグアニジン)等のグアニジン系の加硫促進剤等を挙げることができる。
【0029】
本実施形態の空気入りタイヤ10では、まず、トレッド部18のゴムとして上記構成のゴム組成物を用いることにより、耐摩耗性、耐偏摩耗性、及び低ヒステリシスロス性を改善させ、タイヤを著しく改良することができる。これに加えて、上記の化合物を加えると、ゴム成分中の二重結合部分(P)と化合物のQ部分が上述の反応式(1)〜(3)の反応が生じる。更に、カーボンブラック(CB)或いはシリカと化合物B部分が上記反応式(4)〜(15)式の反応が生じる。
このような化合物の作用により、ゴム組成物においてカーボンブラック及びシリカが十分に拡散される。その結果として、耐摩耗性に加えてトレッドゴムの低発熱性及び低ヒステリシスロス性を更に改善し、建設車両用空気入りタイヤとしての使用性能を更に高めるものとなる。
更に、本実施形態の空気入りタイヤ10では、ベルト層14のタイヤ径方向外側には、下記に詳述する特定構造となる溝を配設したトレッド部18を形成することにより、放熱性を高めることができるものとなる。
【0030】
すなわち、図2に示すように、タイヤ幅方向両側のトレッドショルダー領域には、複数本のラグ溝22、22……が配置されている。
また、これらのラグ溝22、22……の終端位置をそれぞれ実質上タイヤ周方向に結ぶことによって形成される2本(図示符号15,15)のタイヤ円周間のタイヤセンター部Cには、タイヤ幅方向に略沿っている複数本の幅方向細溝24、24……が配置されている。そして、この幅方向細溝24は、タイヤ幅方向内側端がトレッド内(トレッド端Tよりもタイヤ幅方向内側)に終端すると共に、タイヤ幅方向外側端がラグ溝22の先端に接続するように形成されている。各ラグ溝22のタイヤ幅方向外側端は、トレッド端Tを超えてタイヤ幅方向外側へ排水可能となるように延設されている。
【0031】
更に、タイヤ赤道CL上でタイヤ周方向に延びる赤道上浅溝26が配置されている。赤道上浅溝26の幅GW、深さdは、トレッド部18の発熱が顕著であるタイヤ新品時からタイヤ使用初期にかけてタイヤセンター部Cの発熱を充分に抑制できるように幅、深さに設定されている。
【0032】
この建設車両用空気入りタイヤ10は、タイヤ赤道CL上でタイヤ周方向に延びる赤道上浅溝26が配置されており、これにより、タイヤセンター部Cに作用する圧縮応力を緩和することができ、かつ、放熱面積を増大さえることができる。従って、タイヤ負荷時におけるトレッド部18の温度上昇を効果的に抑制してヒートセパレーション等のタイヤ故障の発生を抑えた建設車両用空気入りタイヤ10とすることができる。
また、タイヤセンター部Cに配置された複数本の幅方向細溝24は、タイヤ幅方向内側端がトレッド内に終端している。これにより、陸部剛性の低下を抑えることにより耐摩耗性を向上させたトラクション性能に優れたタイヤとすることができる。その上、幅方向細溝24の本数を増やしても放熱性を高めたり、ラグ溝22から離れていて温度が最も高くなる位置に幅方向細溝24を配置して放熱性を高めたりすることができる。
【0033】
また、幅方向細溝24の幅(SW)は、20mm以下、好ましくは、4〜20mmの範囲内にされており、幅方向細溝24の溝深さ(SW−d)がラグ溝22の溝深さ(D)の50〜95%の範囲内にされている。これにより、放熱性を高める効果が充分に発揮されると共に、タイヤセンター部Cのブロック剛性が低くなりすぎることが回避されている。なお、幅方向細溝24の幅(SW)が20mmを超えると、タイヤセンター部のブロック剛性が低くなって、偏摩耗やトレッド欠けの問題が生じやすくなり、一方、4mmに満たないと、放熱性を高める効果が充分に発揮され難いものとなる。また、幅方向細溝24の溝深さ(SW−d)がラグ溝22の溝深さ(D)の50%に満たないと、放熱性効果が充分に得られず、一方、95%を越えると、タイヤセンター部のブロック剛性が低くなって、偏摩耗やトレッド欠けの問題が生じやすくなるからである。
【0034】
更に、赤道上浅溝26の溝幅(GW)は、好ましくは、30〜50mmの範囲内にされている。これにより、タイヤ負荷転動時にタイヤセンター部Cに作用する圧縮応力を緩和する効果が更に充分に発揮されると共に、タイヤセンター部Cの接地領域が減少しすぎてベルト端故障が生じることが回避されている。なお、この溝幅(GW)を30mm未満にすると、タイヤ負荷転動時におけるセンター部に作用する圧縮応力を緩和する効果が十分に発揮できなくなる傾向があるからであり、一方、溝幅(GW)が50mmを超えると、センター部の接地領域が現象しすぎてトレッド側方域での接地圧増加を招き、ベルト端故障を生じやすくなる傾向があるからである。
【0035】
また、赤道上浅溝26の溝深さ(d)は、好ましくは、ラグ溝22の溝深さ(D)の25%以下、更に好ましくは、10〜25%の範囲内にされている。これにより、放熱性効果が更に充分に得られると共に、トレッドボリュームの減少により耐摩耗性が悪化することが充分に回避されている。なお、周方向浅溝24が、前記ラグ溝22深さの25%を超えてより大きいと、トレッドボリュームの減少が無視できなくなり、耐摩耗性を悪化させる可能性があるからである。
【0036】
また、タイヤ赤道上CLを中心とするトレッド幅の25%の領域で、赤道上浅溝26を除いた領域におけるネガティブ率が8%以下となっており、好ましくは、2〜8%の範囲内にされている。このネガティブ率を8%以下とすることにより、タイヤセンター部Cの耐摩耗性を落とすことなく効率的に発熱を低減させルことができる。なお、トレッド幅とはタイヤ幅方向両側のトレッド端Tの間隔のことである。
【0037】
このように構成される第1実施形態の建設車両用空気入りタイヤ10では、1)タイヤトレッドゴム・ベースゴム部材として、天然ゴム及び合成ゴムからなる群から選ばれた少なくとも1種のゴム成分100質量部に対して、ダイポーラー窒素を含む部分Q、及び酸素又は硫黄を含む4〜6の窒素含有複素環部分Bを有する化合物を0.1〜30質量部配合してなるゴム組成物を用いると共に、2)タイヤトレッド部において、センター部にタイヤ周方向に沿って延びる周方向浅溝を設けると共に、赤道を中心とするトレッド幅の25%の領域での周方向浅溝を除いてネガティブ率が8%以下とする構成とすることにより、すなわち、上記1)の構成により、タイヤセンター部の放熱性を高めると共に、上記2)の構成により、タイヤトレッドでの発熱性を更に改善し、かつ、耐摩耗性を更に向上させることができ、タイヤ負荷時におけるトレッド部(特にセンター部)の発熱を効果的に抑制・放熱することによりヒートセパレーション故障を防止した空気入りタイヤ、特に、建設車両用空気入りタイヤが得られるものとなる。
特に、タイヤの扁平率が90%以下であると、ORタイヤ(建設車両用空気入りタイヤ)一般の95シリーズよりベルト張力負担が大きくなり、よりトレッド部の発熱が大きくなるため、本発明の空気入りタイヤはより有効となる。また、TRAに規定されているタイヤの荷重負荷能力対応表の最高速度に応じた係数が1.4以上であると、タイヤ空気容積対比の負荷が増えることによって、よりトレッド部の発熱が大きくなるため、本発明の空気入りタイヤはより有効となる。なお、上記構成のゴム組成物は、タイヤ部材に用いるものであり、特に、トレッドゴム、ベースゴムに適用することが望ましい。また、空気入りタイヤは、充填される気体に、空気、又は窒素などの不活性なガスを用いることができる。
【0038】
以下に、本発明の他の実施形態となる建設車両用空気入りタイヤを更に図面を参照しながら詳述する。なお、以下の実施形態は、タイヤトレッドゴム・ベースゴム部材は、上記第1実施形態と同様のゴム組成物を用いたものであり、トレッド部18の溝形状・構造が異なる構成としたものである。上記第1実施形態と同じ構成は、同一符号を付して、その説明を省略する。また、以下の実施形態の効果は、上記第1実施形態の効果に更に付加されるものである。
【0039】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態を示す建設車両用空気入りタイヤのトレッド部を示す平面図である。
本第2実施形態の建設車両用空気入りタイヤは、第1実施形態に較べて、幅方向細溝24に変えて、図3に示すように幅方向細溝27がラグ溝22間に形成されている。
幅方向細溝27は、タイヤセンター部Cにタイヤ幅方向に略沿って配置されている。そして、この幅方向細溝27は、赤道上浅溝26を跨いでいて、両端部ともラグ溝22の終端に接続する構成となっている。
この第2実施形態の建設車両用空気入りタイヤでは、上述のゴム組成物を用いているので、タイヤトレッドでの発熱性を更に改善し、かつ、耐摩耗性を更に向上させることができ、しかも、第1実施形態のように幅方向細溝とラグ溝とを接続した構造となるので、更に、タイヤセンター部の放熱性を高めることができる建設車両用空気入りタイヤとすることができる。
【0040】
(第3実施形態)
図4は、本発明の第3実施形態を示す建設車両用空気入りタイヤのトレッド部を示す平面図である。
本第3実施形態の建設車両用空気入りタイヤは、第1実施形態に較べて、幅方向細溝24に変えて、図4に示すように幅方向細溝34がトレッド部に形成されている。
幅方向細溝34は、タイヤセンター部Cにタイヤ幅方向に略沿って配置されている。そして、この幅方向細溝34は、赤道上浅溝26を跨いでいて、両端部共トレッド内に終端していて、ラグ溝22には接続していない構成となっている。
この第3実施形態の建設車両用空気入りタイヤ28では、上述のゴム組成物を用いているので、タイヤトレッドでの発熱性を更に改善し、かつ、耐摩耗性を更に向上させることができ、仮に第1実施形態のように幅方向細溝とラグ溝とを接続した構造にすると、幅方向細溝とラグ溝とでトラクション力によって変形が異なって接続部位で応力集中により亀裂が生じるような大トラクション力を必要とするユーザーにとって大変有効な建設車両用空気入りタイヤとすることができる。
【0041】
(第4実施形態)
図5は、本発明の第4実施形態を示す建設車両用空気入りタイヤのトレッド部を示す平面図である。
本第4実施形態の建設車両用空気入りタイヤは、第1実施形態に較べ、図5に示すように、ラグ溝22の終端位置をタイヤ周方向に結んだ2本の直線に沿って夫々タイヤ周方向に延びる非赤道上細溝46が、更に配置されている。非赤道上細溝46の溝深さはラグ溝の溝深さの10〜25%の範囲内にされている。幅方向細溝34の両端は、非赤道上細溝46に繋がっている。
この第4実施形態の建設車両用空気入りタイヤでは、上述のゴム組成物を用いているので、タイヤトレッドでの発熱性を更に改善し、かつ、耐摩耗性を更に向上させることができ、しかも、横滑りを確保しかつ細溝により幅方向の剛性を落とさないことができる。
【0042】
(第5実施形態)
図6は、本発明の第5実施形態を示す建設車両用空気入りタイヤのトレッド部を示す平面図である。
本第5実施形態の建設車両用空気入りタイヤは、図6に示すように、第3実施形態と同様に、非赤道上細溝46が配置される手いる。また、赤道上浅溝26も配置されている。
本実施形態では、ラグ溝52は、第3実施形態のラグ溝22に較べて形状が異なっており、非赤道上細溝46に近づくほどラグ溝52の溝幅が細くなっている。ラグ溝52の終端は非赤道上細溝46に繋がっている。
また、第4実施形態で説明した幅方向細溝34に代えて幅方向細溝54がタイヤセンター部Cに形成されている。幅方向細溝54の両端は、非赤道上細溝46に繋がっている。また、幅方向細溝54は、非赤道上細溝46に近づくに従いタイヤ幅方向に対する傾斜角度が徐々に小さくなるい曲線状の溝に形成されている。
更に、タイヤ周方向に隣り合うラグ溝52の間には、タイヤ幅方向内側端が非赤道上細溝46に繋がる第二幅方向細溝56が形成されている。
この第5実施形態の建設車両用空気入りタイヤでは、上述のゴム組成物を用いているので、タイヤトレッドでの発熱性を更に改善し、かつ、耐摩耗性を更に向上させることができ、しかも、細溝によりブロック剛性の低下を最小限に抑制し、耐横滑りおよび耐トラクション方向滑りを確保することができる。
【0043】
(第6実施形態)
図7は、本発明の第6実施形態を示す建設車両用空気入りタイヤのトレッド部を示す平面図である。
本第6実施形態の建設車両用空気入りタイヤでは、第4実施形態に較べ、非赤道上細溝46に換えて、図7に示すように、タイヤ周方向に延びる非赤道上細溝66が形成されている。また、赤道上浅溝26も配置されている。
ラグ溝62は、第4実施形態のラグ溝22に較べて形状が異なっており、非赤道上細溝46の近くでは溝幅が細くなっている。そして、ラグ溝62の終端は非赤道上細溝46に繋がっている。
また、第5実施形態で説明した幅方向細溝34に代えて幅方向細溝64がタイヤセンター部Cに形成されている。幅方向細溝64の両端は、ラグ溝62のタイヤ幅方向内側端よりもタイヤ赤道CL側に位置しており、このため、非赤道上細溝66はタイヤ周方向にジグザグ状に延びている。なお、タイヤ周方向にジグザグ状に延びるとは、タイヤ周方向に対して傾斜している溝部分が、傾斜方向が互い違いになるように折り返しながらタイヤ周方向に延びることをいう。
この第6実施形態の建設車両用空気入りタイヤでは、上述のゴム組成物を用いているので、タイヤトレッドでの発熱性を更に改善し、かつ、耐摩耗性を更に向上させることができ、しかも、ジグザグ状に延びる細溝によって表面積がより大きくなるので、トレッド全体の温度低減が可能となる。このことは、直に高速度でタイヤを使用するユーザーに対して有効である。
【実施例】
【0044】
次に、本発明を実施例及び比較例により更に詳しく説明するが、本発明は、下記実施例によってなんら限定されるものではない。
【0045】
〔実施例1〜4及び比較例1〜4〕
本発明の発明を更に確かめるために、下記表1に示す配合組成により、タイヤトレッド部、ベース部となるタイヤ用部材を作製した。なお、下記表1中に示す4OPPN;(4−(2−オキサゾリル)−フェニル−N−フェニルニトロン)、4OPMN;(4−(2−オキサゾリル)−フェニル−N−メチルニトロン)〕は、下記製造方法により得た。
【0046】
このタイヤ用部材を用いて下記表2に示すトレッド部の条件(溝構造、図2に準拠)の空気入りラジアルタイヤ(タイヤサイズ40.00R57)を作製した。得られた各空気入りラジアルタイヤについて、TRA正規リムに組み込んだ後、正規荷重、正規内圧にして下記各試験法に基づいて、発熱性能(INDEX)、耐摩耗性(INDEX)を評価した。
ここで「正規リム」とは、JATMAが発行する2004年度版のYEAR BOOKに定められた適用サイズにおける標準リムを指し、「正規荷重」及び「正規内圧」とは、同様に、JATMAが発行する2004年度版のYEAR BOOKに定められた適用サイズ・プライレーティングにおける最大荷重及び該最大荷重に対する空気圧を指す。なお、使用地又は製造地においてTRA規格、ETRTO規格が適用される場合は各々の規格に従う。
【0047】
<4OPPNの製造>
クロロホルム300mlに15.0gの4−ホルミル−ベンゾイルクロライド(1当量)を攪拌混合した溶液に、クロロホルム200mlに10.9gの2−アミノエタノール(2当量)を加えた溶液を−10℃下で滴下して加えた。この溶液を25℃に2時間おいた後、白色沈殿物が濾過により除かれた。濾液はロータリーエバポレータにより乾燥させ、17.4gの黄色液である4−ホルミル−N−(2−ヒドロキシエチル)−ベンザミドを得た。
濃硫酸50mlに4−ホルミル−N−(2−ヒドロキシエチル)−ベンザミド17.4gを攪拌しながら滴下し、混合物を100℃で1時間加熱した。この溶液に20%水酸化ナトリウム及びクロロホルムの各500mlを攪拌混合しながら滴下し、温度を15℃以下に維持した。生成層が分離され乾燥されて、6.3gの4−(2−オキサゾリル)−ベンズアルデヒドを得た。
4−(2−オキサゾリル)−ベンズアルデヒド(1当量、6.3g)とN−フェニル−ヒドロキシアミン(1当量、3.9g)との混合物を100mlのエタノール中で30分間還流して、50ml量に濃縮した。水50mlの同量を添加して、混合物を冷蔵庫に5℃にて一昼夜冷却した。濾過分離及び乾燥により白色結晶が得られ、6.7gの4−(2−オキサゾリル)−フェニル−N−フェニルニトロンを生成した。
【0048】
<4OPMNの製造>
クロロホルム300mlに4−ホルミル−ベンゾイルクロライド(15.0g、89mmol)を攪拌混合した溶液に、クロロホルム200mlに2−アミノエタノール(10.9g、178mmol)を加えた溶液を−10℃下で滴下して加えた。この溶液を25℃に2時間おいた後、白色沈殿物が濾過により除かれた。濾液はロータリーエバポレータにより乾燥させ、17g(88mmol)の黄色液である4−ホルミル−N−(2−ヒドロキシエチル)−ベンズアミドを得た。
濃硫酸50mlに4−ホルミル−N−(2−ヒドロキシエチル)−ベンザミド(17g、88mmol)を攪拌しながら滴下し、混合物を100℃で1時間加熱した。この溶液に20%水酸化ナトリウム液及びクロロホルムのそれぞれ500mlを混合し攪拌しながら滴下し、温度を15℃以下に維持した。生成層が分離され乾燥されて、6.3g(36mmol)の4−(2−オキサゾリル)−ベンズアルデヒド(収率41%)を得た。
4−(2−オキサゾリル)−ベンズアルデヒド(1当量、6.3g)とN−メチル−ヒドロキシアミン(1.7g、36mmol)との混合物を100mlのエタノール中で30分間還流して、50ml量に濃縮した。水50mlの同量を添加して、混合物を冷蔵庫に5℃にて一昼夜冷却した。濾過分離及び乾燥により白色結晶が得られ、5.1gの4−(2−オキサゾリル)−フェニル−N−メチルニトロン(収率69%)を生成した。
【0049】
発熱性能(INDEX)の評価方法
10km/hの速度・ステップロード条件のドラムシステムを実施し、トレッドの一定深さの位置の温度を測定し、比較例1を対照値(コントロール)100として、各例を指数で表示した。指数の値が大きい程、低発熱性に優れていることを示す。
【0050】
耐摩耗性(INDEX)の評価方法
190トンダンプの前輪に装着し、速度10km/hほぼ等速で100時間走行した後、トレッドを幅方向に8分割した各位置での残溝測定を行い、走行に要したゲージの平均値を摩耗量として算出した。そして、性能評価を行うあたり、比較例1における評価を指数100とし、他の比較例、実施例のタイヤについては相対評価となる指数を算出した。算出結果を下記表2に示す。この指数(耐摩耗指数)が大きいほど性能が高いことを示す。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
上記表1及び表2の結果から明らかなように、本発明範囲の実施例1〜4は、本発明の範囲外となる比較例1〜4に較べて、低発熱性、耐摩耗性に優れることが判明し、タイヤ負荷時におけるトレッド部(特にセンター部)の発熱を効果的に抑制・放熱することによりヒートセパレーション故障を防止した建設車両用空気入りタイヤが得られることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の空気入りタイヤは、放熱性、低発熱性及び耐摩耗性が優れているので、建設車両用タイヤに好適に使用できるので、産業上の利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1実施形態を示す建設車両用空気入りタイヤを示すものであり、タイヤ径方向断面図である。
【図2】(A)及び(B)は、夫々、第1実施形態の建設車両用空気入りタイヤのトレッド部を示す平面図及びタイヤ径方向断面図である。
【図3】第2実施形態の建設車両用空気入りタイヤのトレッド部を示す平面図である。
【図4】第3実施形態の建設車両用空気入りタイヤのトレッド部を示す平面図である。
【図5】第4実施形態の建設車両用空気入りタイヤのトレッド部を示す平面図である。
【図6】第5実施形態の建設車両用空気入りタイヤのトレッド部を示す平面図である。
【図7】第6実施形態の建設車両用空気入りタイヤのトレッド部を示す平面図である。
【符号の説明】
【0056】
10 建設車両用タイヤ
18 トレッド部
22 ラグ溝
24 幅方向細溝
26 赤道上浅溝
C タイヤセンター部
CL タイヤ赤道

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部に各トレッド端からそれぞれタイヤ赤道面に向かって延びる多数本のラグ溝を配設し、これらのラグ溝の終端位置をそれぞれ実質上タイヤ周方向に結ぶことによって形成される2本のタイヤ円周間のセンター部に20mm以下の幅の細溝が幅方向に配置される空気入りタイヤにおいて、センター部にタイヤ周方向に沿って延びる周方向浅溝を設けると共に、赤道を中心とするトレッド幅の25%の領域での周方向浅溝を除いてネガティブ率が8%以下であり、かつ、天然ゴム及び合成ゴムからなる群から選ばれた少なくとも1種のゴム成分100質量部に対して、ダイポーラー窒素を含む部分Q、及び酸素又は硫黄を含む4〜6の窒素含有複素環部分Bを有する化合物を0.1〜30質量部配合してなるゴム組成物をタイヤ部材に使用してなることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
上記のダイポーラー窒素部分が、A1−C(A2)=N(A3)→O、A1−C≡N→O、及びA1−C≡N→N−A4の少なくとも1以上から選択され、該A1〜A4はそれぞれ異なっていても良い水素又は炭素数が20以下の基又は上記Bを連結する連結鎖であり、上記化合物が少なくともA1〜A4の1つ以上に上記Bが連結している請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
上記の化合物のA1〜A4は、水素、炭素数が1〜20の範囲にあるアルキル基、及び炭素数が6〜20の範囲にあるアリール基(但し、芳香族環にはニトロ基、シアノ基、クロロ基、ブロモ基、アシル基、カルボニルアルキル基、アルキル基、及びアルコキシル基を有してよい。)の何れか1つから選択される基、又は連結鎖である請求項2記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
上記B部分の窒素含有複素環がオキサゾリン又はチアゾリンである請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
上記の化合物が、4−(2−オキサゾリル)−フェニル−N−メチル−ニトロン、4−(2−チアゾリル)−フェニル−N−メチル−ニトロン、4−(2−オキサゾリル)−フェニル−N−フェニル−ニトロン、4−(2−チアゾリル)−フェニル−N−フェニル−ニトロン、フェニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、フェニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、4−トリル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、4−トリル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、4−メトキシフェニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトロン、4−メトキシフェニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトロン、4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトリルオキシド、4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトリルオキシド、4−(2−オキサゾリル)−フェニル−N−メチル−ニトリルイミン、4−(2−チアゾリル)−フェニル−N−メチル−ニトリルイミン、4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトリルオキシド、4−(2−オキサゾリル)−フェニル−N−フェニル−ニトリルイミン、4−(2−チアゾリル)−フェニル−N−フェニル−ニトリルイミン、フェニル−N−4−(2−オキサゾリル)−フェニル−ニトリルイミン、フェニル−N−4−(2−チアゾリル)−フェニル−ニトリルイミンの1以上のものからなる請求項4記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
周方向浅溝の溝深さは、前記ラグ溝深さの25%以下である請求項1〜5の何れか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
周方向浅溝の溝幅は、30〜50mmである請求項1〜6の何れか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
空気入りタイヤが建設車両用空気入りタイヤである請求項1〜7の何れか一つに記載される空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−223350(P2007−223350A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43584(P2006−43584)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】