説明

空気入りタイヤ

【課題】低発熱性を確保しながら、良好な耐摩耗性及び耐久性を有する空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】ゴム成分として合成ゴムと天然ゴムとを含み、前記合成ゴムの少なくとも1種がアミン系官能基変性スチレン−ブタジエン共重合体であるゴム組成物をトレッドのベースゴムに用いてなる空気入りタイヤである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のゴム組成物をトレッド部のベースゴムに用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤトレッド部のベースゴムに求められる性能としては、低発熱性であると共に耐摩耗性・耐カット性に優れることが要求される。耐摩耗性・耐カット性を向上させる手段としては、タイヤ用ゴムの主たる充填剤(例えば、カーボンブラック)を増量させたり、充填剤を微粒径化(カーボンブラックのグレードアップ)させたり、といったことが挙げられる(例えば、特許文献1参照)。しかし、このような手段を採用すると、発熱性の確保が難しくなる。すなわち、耐摩耗性・耐カット性を向上させながら、発熱性を確保することは非常に困難であるといえる。
【0003】
また、従来の手法として、シリカを配合することも行われてきた。シリカを配合することで、ヒステリシスロスを高くし、悪路チッピング等に効果を発揮することができた。しかしながら、弾性率の低下や長時間加硫における加硫戻りによる発熱性の低下及び作業性の著しい悪化により、シリカを多量に配合することが工場では困難であった。
【0004】
【特許文献1】特開平10−195249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、低発熱性を確保しながら、良好な耐摩耗性及び耐久性を有する空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定のアミン系官能基を導入し変性してなるスチレン−ブタジエン共重合体及び天然ゴムを含むゴム組成物をトレッド部のベースゴムに用いると、その目的を達成し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)ゴム成分として合成ゴムと天然ゴムとを含み、前記合成ゴムの少なくとも1種がアミン系官能基変性スチレン−ブタジエン共重合体であるゴム組成物をトレッドのベースゴムに用いてなる空気入りタイヤである。
(2)前記アミン系官能基変性スチレン−ブタジエン共重合体が、前記アミン系官能基としてプロトン性アミノ基及び/又は保護化アミノ基を有する(1)に記載の空気入りタイヤである。
(3)前記ゴム成分100質量部に対し、充填剤を30〜65質量部含む(1)又は(2)に記載の空気入りタイヤである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低発熱性を確保しながら、良好な耐摩耗性及び耐久性を有する空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の空気入りタイヤは、所定のベースゴム用ゴム組成物をトレッドのベースゴムに用いてなる。以下、ベースゴム用ゴム組成物の構成成分等について説明する。
【0010】
[ベースゴム用ゴム組成物]
本発明に係るベースゴム用ゴム組成物は、ゴム成分として合成ゴムと天然ゴムとを含み、合成ゴムの少なくとも1種がアミン系官能基変性スチレン−ブタジエン共重合体(以下、変性SBRと称することがある。)である。
まず、本発明における変性スチレン−ブタジエン共重合体について説明する。
【0011】
(変性SBR)
アミン系官能基で変性されている変性SBRにおいて、アミン系官能基が導入される重合体の位置については特に制限はなく、重合末端であってもよく、ポリマー鎖の側鎖であってもよいが、アミン系官能基の導入しやすさや、重合体末端からエネルギー消失を抑制して低発熱性を改良し得るなどの観点から、重合末端であることが好ましい。
【0012】
アミン系官能基としては、プロトン性アミノ基及び/又は保護化アミノ基を挙げることができる。また、当該変性SBRにおいては、前記プロトン性アミノ基及び/又は保護化アミノ基と共に、さらにヒドロカルビルオキシシラン基を、重合体中に有するものが好ましい。これらの官能基は、前記理由により、重合末端に導入されていることが好ましく、特に同一の重合末端に導入されていることが好ましい。
【0013】
前記のプロトン性アミノ基、保護化アミノ基及びヒドロカルビルオキシシラン基、並びにベースのSBR(以下、SBR又は未変性SBRと称する。)の変性に用いられるこれらの官能基を有する化合物(以下、変性剤と称することがある。)などについては、後で詳述する。
【0014】
本発明に係る変性SBRの製造方法としては、活性末端を有するSBRを得たのち、その活性末端に、変性剤を反応させて、変性SBRを製造する方法を採用することができる。
【0015】
(SBRの製造)
本発明においては、活性末端を有するSBRは、スチレンとブタジエンとを共重合して得られるものであり、その製造方法については特に制限はなく、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法のいずれも用いることができるが、特に溶液重合法が好ましい。また、重合形式は、回分式及び連続式のいずれであってもよい。
また、SBRの分子中に存在する活性部位の金属はアルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる一種であることが好ましく、アルカリ金属がより好ましく、特にリチウム金属が好ましい。
【0016】
上記溶液重合法においては、例えば有機アルカリ金属化合物、特にリチウム化合物を重合開始剤とし、スチレンとブタジエンとをアニオン重合させることにより、目的の重合体を製造することができる。
溶液重合法を用いた場合には、溶媒中の単量体濃度は、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%である。また、スチレンの量は、ブタジエンとの合計量に対し、20〜45質量%の範囲が好ましい。
【0017】
重合開始剤のリチウム化合物としては、特に制限はないが、ヒドロカルビルリチウム及びリチウムアミド化合物が好ましく用いられ、前者のヒドロカルビルリチウムを用いる場合には、重合開始末端にヒドロカルビル基を有し、かつ他方の末端が重合活性部位であるSBRが得られる。また、後者のリチウムアミド化合物を用いる場合には、重合開始末端に窒素含有基を有し、他方の末端が重合活性部位であるSBRが得られる。
【0018】
上記ヒドロカルビルリチウムとしては、炭素数2〜20のヒドロカルビル基を有するものが好ましく、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチルーフエニルリチウム、4−フェニルーブチルリチウム、シクロへキシルリチウム、シクロベンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応性生物などが挙げられるが、これらの中で、特にn−ブチルリチウムが好適である。
【0019】
一方、リチウムアミド化合物としては、例えばリチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピぺリジド、リチウムへプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジへプチルアミド、リチウムジへキシルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチウムジ−2−エチルへキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウム−N−メチルピぺラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミドなどが挙げられる。これらの中で、カーボンブラックに対する相互作用効果及び重合開始能の点から、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピぺリジド、リチウムへプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミドなどの環状リチウムアミドが好ましく、特にリチウムヘキサメチレンイミド及びリチウムピロリジドが好適である。
【0020】
これらのリチウムアミド化合物は、一般に、第二アミンとリチウム化合物とから、予め調製したものを重合に使用することができるが、重合系中(in−situ)で調製することもできる。また、この重合開始剤の使用量は、好ましくは単量体100g当たり、0.2〜20ミリモルの範囲で選定される。
前記リチウム化合物を重合開始剤として用い、アニオン重合によってSBRを製造する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。
具体的には、反応に不活性な有機溶媒、例えば脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物などの炭化水素系溶媒中において、スチレンとブタジエンとを、前記リチウム化合物を重合開始剤として、所望により、用いられるカリウム化合物やランダマイザーの存在下にアニオン重合させることにより、目的のSBRが得られる。
このようにして得られたSBRの全スチレン単位の含有量は0.5〜55質量%が好ましく、20〜45がより好ましい。ブタジエン部におけるビニル結合量が10モル%以上であることが好ましい。
ブタジエン部におけるビニル結合量が10モル%以上であるとヒステリシスロスを良好なものとすることができる。
SBRの全スチレン単位の含有量及びブタジエン部におけるビニル結合量を上記範囲にすることによって本発明の目的を効果的に奏することができる。
【0021】
また、所望により用いられるランダマイザーとはSBRのミクロ構造の制御、例えばブタジエン部分の1,2結合の増加など、あるいは単量体単位の組成分布の制御、例えばブタジエン単位、スチレン単位のランダム化などの作用を有する化合物のことである。このランダマイザーとしては、特に制限はなく、従来ランダマイザーとして一般に使用されている公知の化合物の中から任意のものを適宜選択して用いることができる。具体的には、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、2,2−ビス(2−テトラヒドロフリル)−プロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジピペリジノエタンなどのエーテル類及び第三アミン類などを挙げることができる。また、カリウム−t−アミレート、カリウム−t−ブトキシドなどのカリウム塩類、ナトリウム−t−アミレートなどのナトリウム塩類も用いることができる。
これらのランダマイザーは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量は、リチウム化合物1モル当たり、好ましくは0.01〜1000モル当量の範囲で選択される。
【0022】
この重合反応における温度は、好ましくは0〜150℃、より好ましくは20〜130℃の範囲で選定される。重合反応は、発生圧力下で行うことができるが、通常は単量体を実質的に液相に保つに十分な圧力で操作することが望ましい。すなわち、圧力は重合される個々の物質や、用いる重合媒体及び重合温度にもよるが、所望ならばより高い圧力を用いることができ、このような圧力は重合反応に関して不活性なガスで反応器を加圧する等の適当な方法で得られる。
【0023】
この重合においては、重合開始剤、カリウム化合物、ランダマイザー、溶媒、単量体など、重合に関与する全ての原材料は、水、酸素、二酸化炭素、プロトン性化合物などの反応阻害物質を除去したものを用いることが望ましい。
尚、得られるSBRは、示差熱分析法により求めたガラス転移温度(Tg)が−95℃〜−15℃であることが好ましい。ガラス転移温度を上記範囲にすることによって、粘度が高くなるのを抑え、取り扱いが容易なSBRを得ることができる。
【0024】
(SBRの変性)
本発明においては、このようにして得られた活性末端を有するSBRの該活性末端に、所定の変性剤を反応させて、重合末端にアミン系官能基、例えばプロトン性アミノ基及び/又は保護化アミノ基を、好ましくはプロトン性アミノ基及び/又は保護化アミノ基とヒドロカルビルオキシシラン基とを導入する。より好ましくは同一の重合末端に前記のプロトン性アミノ基及び/又は保護化アミノ基とヒドロカルビルオキシシラン基とを導入する。
プロトン性アミノ基及び/又は保護化アミノ基としては、例えば−NH2、−NHRa、−NL12及び−NRb3(ただし、Ra及びRbは、それぞれ炭化水素基を示し、L1、L2及びL3は、それぞれ水素原子又は解離し得る保護基を示す。)の中から選ばれる少なくとも一種の基を挙げることができる。
a、Rbで示される炭化水素基としては、各種のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基を挙げることができる。L1、L2、L3としては、容易に解離し得る保護基であればよく、特に制限はなく、後述で説明するような基を挙げることができる。
【0025】
<変性剤>
本発明においては、変性SBRとして、同一の重合末端にプロトン性アミノ基及び/又は保護化アミノ基とヒドロカルビルオキシシラン基とを有するものが好ましく、したがって変性剤としては、同一分子内に保護化1級アミノ基を有する2官能性ケイ素化合物を用いることが好ましい。
同一分子内に保護化1級アミノ基を有する2官能性ケイ素化合物としては、例えば式(I)、式(II)及び式(III)で示される化合物を挙げることができる。
【0026】
【化1】

【0027】
(式中、R1、R2は、それぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基、R3〜R5は、それぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基、R6は炭素数1〜12の2価の炭化水素基、Aは反応性基、fは1〜10の整数を示す。)
【0028】
【化2】

【0029】
(式中、R7〜R11は、それぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基、R12は炭素数1〜12の2価の炭化水素基を示す。)
【0030】
【化3】

【0031】
(式中、R1、R2は、それぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基、R3〜R5は、それぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基、R6は炭素数1〜12の2価の炭化水素基、R13は炭素数1〜12の2価の炭化水素基、Aは反応性基、fは1〜10の整数を示す。)
【0032】
上記式(I)〜(III)において、それぞれ独立に炭素数1〜20の一価の炭化水素基の具体例としては、例えばメチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,イソブチル基,sec−ブチル基,tert−ブチル基,各種ペンチル基,各種ヘキシル基,各種オクチル基,各種デシル基,各種ドデシル基,各種テトラデシル基,各種ヘキサデシル基,各種オクタデシル基,各種イコシル基,シクロペンチル基,シクロヘキシル基,ビニル基,プロぺニル基,アリル基,ヘキセニル基,オクテニル基,シクロペンテニル基,シクロヘキセニル基,フェニル基,トリル基,キシリル基,ナフチル基,ベンジル基,フェネチル基,ナフチルメチル基等が挙げられる。中でも炭素数1〜4のメチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,イソブチル基,sec−ブチル基,tert−ブチル基等が好ましく、エチル基、メチル基、tert−ブチル基がより好ましい。
【0033】
炭素数1〜12の2価の炭化水素基としては、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、炭素数7〜12のアリーレンアルキレン基等が挙げられる。
上記炭素数1〜12アルキレン基は、直鎖状、分枝状のいずれであってもよく、具体的には、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基等の直鎖状アルキレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基、2−メチルトリメチレン基、イソペンチレン基、イソへキシレン基、イソオクチレン基、2−エチルへキシレン基、イソデシレン基などの分枝状のアルキレン基が挙げられる。
炭素数6〜12のアリーレン基としては、例えばフェニレン基、メチルフェニレン基、ジメチルフェニレン基、ナフチレン基、等が挙げられ、炭素数7〜12のアリーレンアルキレン基としては、例えばフェニレンメチレン基、フェニレンエチレン基、キシリレン基等が挙げられる。中でも炭素数1〜4のアルキレン基が好ましく、特にトリメチレン基が好ましい。
【0034】
Aの反応性基は、ハロゲン原子、炭素数1〜20のヒドロカルビロキシ基又はヒドロキシ基が好ましく、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられるが、中でも塩素が好ましい。
炭素数1〜20のヒドロカルビロキシ基としては、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリーロキシ基、炭素数7〜20のアラルキルオキシ基などを挙げることができる。
上記炭素数1〜20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基,n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基,sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、各種ヘキソキシ基、各種オクトキシ基、各種デシロキシ基、各種ドデシロキシ基,各種テトラデシロキシ基、各種ヘキサデシロキシ基、各種オクタデシロキシ基、各種イコシロキシ基などが挙げられる。炭素数6〜20のアリーロキシ基としては、例えばフェノキシ基、メチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられ、炭素数7〜20のアラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジロキシ基、フェネチロキシ基、ナフチルメトキシ基等が挙げられる。これらの中で1〜4のアルコキシ基が好ましく、特にエトキシ基が好ましい。
【0035】
また、あらかじめ加水分解により得られた珪素原子に結合するヒドロキシ基は、アルコキシ基に比べ、補強性充填剤、特にシリカと反応する場合、シリカとの反応性はより高くなり、ゴム組成物中のシリカの分散性が向上し、且つゴム組成物の低発熱性が向上するという大きな効果を奏する。更に、加水分解によりヒドロキシ基を生成する特性基がアルコキシ基である場合は揮発性有機化合物(VOC、特にアルコール)を発生するが、ヒドロキシ基は発生しないので、作業環境上好ましい。
【0036】
その他の反応性基としては、カルボニル基、酸無水物残基、各ジヒドロイミダゾリニル基、N−メチルピロリドニル基、イソシアネート基等を含有する基が挙げられる。
また、式(I)のR3,R4およびR5の2つが結合してそれらが結合している珪素原子と一緒になって、4〜7員環を形成してもよく、同様に式(II)のR9,R10およびR11の2つが結合してそれらが結合している珪素原子と一緒になって、4〜7員環を形成してもよい。この4〜7員環としては炭素数4〜7のメチレン基を有するものを挙げることができる。
【0037】
保護された1級アミノ基及びケイ素原子に結合したアルコキシ基を少なくとも有する2官能性ケイ素原子を含む化合物としては、例えばN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジエトキシシラン、および1−トリメチルシリル−2−エトキシ−2−メチル−1−アザ−2−シラシクロペンタンなどを挙げることができる。
【0038】
また、Aがハロゲン原子である化合物として例えば、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルメトキシクロロシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルエトキシクロロシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルメトキシクロロシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルエトキシクロロシランなどが挙げられる。
好ましくは、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、1−トリメチルシリル−2−エトキシ−2−メチル−1−アザ−2−シラシクロペンタンである。
【0039】
これらの変性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。またこの変性剤は部分縮合物であってもよい。
ここで、部分縮合物とは、変性剤のSiORの一部(全部ではない)が縮合によりSiOSi結合したものをいう。
上記の変性反応においては、使用する重合体は、少なくとも10%のポリマー鎖がリビング性を有するものが好ましい。
【0040】
上記変性剤による変性反応において、該変性剤の使用量は、好ましくは0.5〜200mmol/kg・SBRである。同含有量は、さらに好ましくは1〜100mmol/kg・SBRであり、特に好ましくは2〜50mmol/kg・SBRである。ここで、SBRとは、製造時または製造後、添加される老化防止剤などの添加剤を含まないポリマーのみの質量を意味する。変性剤の使用量を上記範囲にすることによって、充填剤の分散性に優れ、加硫後の破壊特性、摩耗特性、低発熱性が改良される。
【0041】
なお、上記変性剤の添加方法は、特に制限されず、一括して添加する方法、分割して添加する方法、あるいは、連続的に添加する方法などが挙げられるが、一括して添加する方法が好ましい。また、変性剤は、重合開始末端、重合終了末端、重合体主鎖、側鎖のいずれに結合していてもよいが、重合体末端からエネルギー消失を抑制して低発熱性を改良しうる点から、重合開始末端あるいは重合終了末端に導入されていることが好ましい。
【0042】
<縮合促進剤>
本発明では、前記した変性剤として用いる保護化第一アミノ基を有するアルコキシシラン化合物が関与する縮合反応を促進するために、縮合促進剤を用いることが好ましい。
このような縮合促進剤としては、第三アミノ基を含有する化合物、又は周期律表(長周期型)の3族、4族、5族、12族、13族、14族及び15族のうちのいずれかの属する元素を一種以上含有する有機化合物を用いることができる。さらに縮合促進剤として、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ビスマス(Bi)、及びアルミニウム(Al)からなる群から選択される少なくとも一種以上の金属を含有する、アルコキシド、カルボン酸塩、又はアセチルアセトナート錯塩であることが好ましい。
【0043】
ここで用いる縮合促進剤は、前記変性反応前に添加することもできるが、変性反応の途中及び又は終了後に変性反応系に添加することが好ましい。変性反応前に添加した場合、活性末端との直接反応が起こり、活性末端に保護された第一アミノ基を有するヒドロカルビロキシ基が導入されない場合がある。
縮合促進剤の添加時期としては、通常、変性反応開始5分〜5時間後、好ましくは変性反応開始15分〜1時間後である。
【0044】
具体的な縮合促進剤としては、テトラキス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、テトラキス(2−メチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、テトラキス(2−プロピル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、テトラキス(2−ブチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、テトラキス(1,3−ヘキサンジオラト)チタン、テトラキス(1,3−ペンタンジオラト)チタン、テトラキス(2−メチル−1,3−ペンタンジオラト)チタン、テトラキス(2−エチル−1,3−ペンタンジオラト)チタン、テトラキス(2−プロピル−1,3−ペンタンジオラト)チタン、テトラキス(2−ブチル−1,3−ペンタンジオラト)チタン、テトラキス(1,3−ヘプタンジオラト)チタン、テトラキス(2−メチル−1,3−ヘプタンジオラト)チタン、テトラキス(2−エチル−1,3−ヘプタンジオラト)チタン、テトラキス(2−プロピル−1,3−ヘプタンジオラト)チタン、テトラキス(2−ブチル−1,3−ヘプタンジオラト)チタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタンオリゴマー、テトライソブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン、テトラ−tert−ブトキシチタン、ビス(オレート)ビス(2−エチルヘキサノエート)チタン、チタンジプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタンジブトキシビス(トリエタノールアミネート)、チタントリブトキシステアレート、チタントリプロポキシステアレート、チタントリプロポキシアセチルアセトネート、チタンジプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタントリプロポキシ(エチルアセトアセテート)、チタンプロポキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、チタントリブトキシアセチルアセトネート、チタンジブトキシビス(アセチルアセトネート)、チタントリブトキシエチルアセトアセテート、チタンブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、チタンテトラキス(アセチルアセトネート)、チタンジアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ビス(2−エチルヘキサノエート)チタンオキサイド、ビス(ラウレート)チタンオキサイド、ビス(ナフテート)チタンオキサイド、ビス(ステアレート)チタンオキサイド、ビス(オレエート)チタンオキサイド、ビス(リノレート)チタンオキサイド、テトラキス(2−エチルヘキサノエート)チタン、テトラキス(ラウレート)チタン、テトラキス(ナフテート)チタン、テトラキス(ステアレート)チタン、テトラキス(オレエート)チタン、テトラキス(リノレート)チタン、チタンジ−n−ブトキサイド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンオキサイドビス(ステアレート)、チタンオキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタンオキサイドビス(ペンタンジオネート)、チタンテトラ(ラクテート)などが挙げられる。中でも、テトラキス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン、チタンジ−n−ブトキサイド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)が好ましい。
【0045】
また、縮合促進剤としては、例えば、トリス(2−エチルヘキサノエート)ビスマス、トリス(ラウレート)ビスマス、トリス(ナフテート)ビスマス、トリス(ステアレート)ビスマス、トリス(オレエート)ビスマス、トリス(リノレート)ビスマス、テトラエトキシジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−sec−ブトキシジルコニウム、テトラ−tert−ブトキシジルコニウム、テトラ(2−エチルヘキソキシ)ジルコニウム、ジルコニウムトリブトキシステアレート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムジアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ビス(2−エチルヘキサノエート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ラウレート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ナフテート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ステアレート)ジルコニウムオキサイド、ビス(オレエート)ジルコニウムオキサイド、ビス(リノレート)ジルコニウムオキサイド、テトラキス(2−エチルヘキサノエート)ジルコニウム、テトラキス(ラウレート)ジルコニウム、テトラキス(ナフテート)ジルコニウム、テトラキス(ステアレート)ジルコニウム、テトラキス(オレエート)ジルコニウム、テトラキス(リノレート)ジルコニウム等を挙げることができる。
【0046】
また、トリエトキシアルミニウム、トリ−n−プロポキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、トリ−sec−ブトキシアルミニウム、トリ−tert−ブトキシアルミニウム、トリ(2−エチルヘキソキシ)アルミニウム、アルミニウムジブトキシステアレート、アルミニウムジブトキシアセチルアセトネート、アルミニウムブトキシビス(アセチルアセトネート)、アルミニウムジブトキシエチルアセトアセテート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、トリス(2−エチルヘキサノエート)アルミニウム、トリス(ラウレート)アルミニウム、トリス(ナフテート)アルミニウム、トリス(ステアレート)アルミニウム、トリス(オレエート)アルミニウム、トリス(リノレート)アルミニウム等を挙げることができる。
【0047】
上述の縮合促進剤の内、チタン系縮合促進剤が好ましく、チタン金属のアルコキシド、チタン金属のカルボン酸塩、又はチタン金属のアセチルアセトナート錯塩が特に好ましい。この縮合促進剤の使用量としては、前記化合物のモル数が、反応系内に存在するヒドロカルビロキシ基総量に対するモル比として、0.1〜10となることが好ましく、0.5〜5が特に好ましい。縮合促進剤の使用量を前記範囲にすることによって縮合反応が効率よく進行する。
【0048】
本発明における縮合反応は、上述の縮合促進剤と、水蒸気又は水の存在下で進行する。水蒸気の存在下の場合として、スチームストリッピングによる脱溶媒処理が挙げられ、スチームストリッピング中に縮合反応が進行する。また、縮合反応を水溶液中で行ってもよく、縮合反応温度は85〜180℃が好ましく、さらに好ましくは100〜170℃、特に好ましくは110〜150℃である。
縮合反応時の温度を前記範囲にすることによって、縮合反応を効率よく進行完結することができ、得られる変性SBRの経時変化によるポリマーの老化反応等による品質の低下等を抑えることができる。
【0049】
なお、縮合反応時間は、通常、5分〜10時間、好ましくは15分〜5時間程度である。縮合反応時間を前記範囲にすることによって縮合反応を円滑に完結することができる。
また、縮合反応時の反応系の圧力は、通常、0.01〜20MPa、好ましくは0.05〜10MPaである。
縮合反応を水溶液中で行う場合の形式については特に制限はなく、バッチ式反応器を用いても、多段連続式反応器等の装置を用いて連続式で行ってもよい。また、この縮合反応と脱溶媒を同時に行ってもよい。
【0050】
変性SBRの変性剤由来の第一アミノ基は、上述のように脱保護処理を行うことによって生成する。上述したスチームストリッピング等の水蒸気を用いる脱溶媒処理以外の脱保護処理の好適な具体例を以下に詳述する。
すなわち、第一アミノ基上の保護基を加水分解することによって遊離した第一アミノ基に変換する。これを脱溶媒処理することにより、第一アミノ基を有する変性SBRを得ることができる。なお、該縮合処理を含む段階から、脱溶媒して乾燥ポリマーまでのいずれかの段階において必要に応じて変性剤由来の保護された第一アミノ基の脱保護処理を行うことができる。
【0051】
本発明に係る変性SBRのムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、好ましくは10〜150、より好ましくは15〜100である。ムーニー粘度の値を上記範囲にすることによって、混練り作業性および加硫後の機械的特性のすぐれたゴム組成物を得ることができる。
【0052】
本発明に係る変性SBRは、重合体中にプロトン性アミノ基及び/又は保護化アミノ基、好ましくはこれらのアミン系官能基とヒドロカルビルオキシシラン基とを有し、プロトン性アミノ基や保護化アミノ基の解離基は、カーボンブラックやシリカに対して良好な相互作用を有しており、一方ヒドロカルビルオキシシラン基は、特にシリカに対して優れた相互作用を有している。
当該変性SBRを含むゴム組成物は、優れた破壊特性や摩耗特性を有すると共に、低発熱性を確保した空気入りタイヤ(例えば、重荷重用タイヤ)を与えることができる。
【0053】
本発明に係るベースゴム用ゴム組成物は、既述のように、ゴム成分として合成ゴムと天然ゴムとを含み、前記合成ゴムの少なくとも1種が、既述のアミン系官能基変性スチレン−ブタジエン共重合体となっている。また、適宜、充填剤等が配合されてなる。
以下、ゴム成分等について説明する。
【0054】
(ゴム成分)
ゴム成分中の変性SBRの好ましい含有量は10質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。ゴム成分中の変性SBRを上記範囲にすることによって、所望の物性を有するゴム組成物を得ることができる。
【0055】
この変性SBRは一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本発明における効果を奏する範囲においてこの変性SBR及び天然ゴムに併用される他のゴム成分としては、合成イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンーブタジエンゴム、エチレン−α−オレフィン共重合ゴム、エチレン−α−オレフィンージエン共重合ゴム、アクリロニトリルーブタジエン共重合ゴム、クロロブレンゴム、ハロゲン化プチルゴムおよびこれらの混合物などが挙げられる。また、その一部が多官能型、例えば四塩化スズ、四塩化珪素のような変性剤を用いることにより分岐構造を有しているものでもよい。中でも、天然ゴム、合成イソプレンゴムが好ましく、特に天然ゴムが好ましい。
【0056】
(充填剤)
本発明に係るゴム組成物においては、充填剤として、補強性充填剤を含有することができる。補強性充填剤としては、カーボンブラックやシリカ等が挙げられる。
カーボンブラックは、そのベースゴムの力学的性能を高め、加工性等を改善させるものである限り、I2吸着量、CTAB比表面積、N2吸着量、DBP吸着量等の範囲を適宜選択した公知のカーボンブラックを使用することができる。カーボンブラックの種類としては、例えば、SAF、ISAF−LS、HAF、HAF−HS等の公知のものを適宜選択して使用することができる。
【0057】
また、シリカは、狭義の二酸化珪素のみを示すものではなく、ケイ酸系充填剤を意味し、具体的には、無水ケイ酸の他に、含水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等のケイ酸塩を含む。中でも耐摩耗性の優れた湿式シリカが好ましい。このようなシリカとしては、東ソー・シリカ社製「ニプシールAQ」(BET比表面積:195m2/g)が挙げられる。
【0058】
充填剤は、ゴム成分100質量部当たり30〜65質量部とすることが好ましく、35〜55質量部とすることがより好ましい。30〜65質量部とすることで、耐破壊特性を維持し、組成物の混練作業性の低下を抑制することができる。
【0059】
(シランカップリング剤)
本発明に係るゴム組成物においては、補強用充填剤としてシリカを用いる場合、その補強性及び低発熱性をさらに向上させる目的で、シランカップリッグ剤を配合することができる。好ましいシランカップリング剤の配合量は、シランカップリング剤の種類などにより異なるが、シリカに対して、好ましくは2〜20質量%の範囲で選定される。
2質量%以上とすることで、カップリング剤としての効果が充分に発揮されにくくなることを防ぎ、20質量%以下とすることで、ゴム成分のゲル化を防ぐことができる。カップリング剤としての効果およびゲル化防止などの点から、このシランカップリング剤の好ましい配合量は、5〜15質量%の範囲である。
【0060】
好ましいシランカップリング剤としては、下記一般式(IV)
【0061】
【化4】

【0062】
で表される保護化メルカプトシランからなるシランカップリング剤が用いられる。
一般式(IV)において、R14はR19O−、R19C(=O)O−、R1920C=NO−、R1920N−又は−(OSiR1920m(OSiR181920)(ただし、R19及びR20は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜18の一価の炭化水素基である。)、R15はR14で挙げられた置換基、水素原子又は炭素数1〜18の一価の炭化水素基、R16はR14及びR15で挙げられた置換基、又は−[O(R21O)a0.5−基(ただし、R21は炭素数1〜18のアルキレン基、aは1〜4の整数である。)、R17は炭素数1〜18の二価の炭化水素基、R18は炭素数1〜18の一価の炭化水素基を示し、x、y及びzは、x+y+2z=3、0≦x≦3、0≦y≦2、0≦z≦1の関係を満たす数である。
【0063】
一般式(IV)において、炭素数1〜18の一価の炭化水素基としては、例えば炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜18のアラルキル基等を挙げることができる。ここで、上記アルキル基及びアルケニル基は直鎖状、枝分かれ状、環状のいずれであってもよく、アリール基及びアラルキル基は、芳香環上に低級アルキル基などの置換基を有していてもよい。
【0064】
炭素数1〜18の一価の炭化水素基の具体例としては、メチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,イソブチル基,sec−ブチル基,tert−ブチル基,ペンチル基,ヘキシル基,オクチル基,デシル基,ドデシル基,シクロペンチル基,シクロヘキシル基,ビニル基,プロぺニル基,アリル基,ヘキセニル基,オクテニル基,シクロペンテニル基,シクロヘキセニル基,フェニル基,トリル基,キシリル基,ナフチル基,ベンジル基,フェネチル基,ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0065】
一般式(IV)において、R21で表される炭素数1〜18のアルキレン基は、直鎖状、枝分かれ状、環状のいずれであってもよいが、特に直鎖状のものが好適である。この直鎖状のアルキレン基の例としては、メチレン基,エチレン基,トリメチレン基,テトラメチレン基,ペンタメチレン基,ヘキサメチレン基,オクタメチレン基,デカメチレン基,ドデカメチレン基等が挙げられる。
【0066】
また、R17で表される炭素数1〜18の二価の炭化水素基としては、例えば炭素数1〜18のアルキレン基、炭素数2〜18のアルケニレン基、炭素数5〜18のシクロアルキレン基、炭素数6〜18のシクロアルキルアルキレン基、炭素数6〜18のアリーレン基、炭素数7〜18のアラルキレン基を挙げることができる。前記アルキレン基及びアルケニレン基は、直鎖状、枝分かれ状のいずれであってもよく、前記シクロアルキレン基、シクロアルキルアルキレン基、アリーレン基及びアラルキレン基は、環上に低級アルキル基などの置換基を有していてもよい。
このR17としては、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、特に直鎖状アルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基を好ましく挙げることができる。
【0067】
一般式(IV)で表されるシランカップリング剤の例としては、3−ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2−ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3−ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2−ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−ラウロイルチオエチルトリメトキシシランなどを挙げることができる。
【0068】
本発明に係るゴム組成物は、このようなシランカップリング剤を用いることにより、未加硫ゴムの粘度が低下することによりヤケが発生するまでの時間が長くなることによって長時間の練が可能となりゴム組成物の混練り加工時の作業性に優れると共に、シリカのゴム成分への分散が改良され、かつシリカとポリマーとの反応性が改良されることによりヒステリシスロスを低減することができる。この改善分を活用して補強性充填剤の配合量を増やすことが可能となり、その結果として耐摩耗性の良好な重荷重用タイヤを得ることができる。
【0069】
本発明においては、前記シランカップリング剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
さらに、当該シランカップリング剤とポリマーをカップリングするためにDPG(ジフェニルグアニジン)などに代表されるプロトンドナーを脱保護化剤として最終混練工程に配合することが好ましい。その使用量は、ゴム成分100質量部に対し、0.1〜5.0質量部が好ましく、更に好ましくは0.2〜3.0質量部である。
【0070】
その他、本出願人により公開されたWO2004/000930パンフレットに記載の分子の両末端にオルガノオキシシリル基を有し、分子中央部にスルフィド又はポリスルフィドを有する特定の構造を有する硫黄含有シラン化合物を本発明に係るシランカップリング剤として用いた場合、ゴム組成物の未加硫粘度が低く、シリカの分散性が高いゴム組成物であって、トレッド部のベースゴムとして使用した場合に、耐破壊特性が高く、走行中のベースゴムの温度上昇を抑制する。
【0071】
さらに、従来使用されているシランカップリング剤も適用することができる。
シランカップリング剤としては、例えばビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−卜リエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N、N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N、N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N、N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル−N、N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドなどが挙げられるが、これらの中で補強性改善効果などの点から、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドおよび3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドが好適である。
これらのシランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0072】
(ゴム組成物の調製)
本発明に係るゴム組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、通常ゴム工業界で用いられる各種薬品、例えば加硫剤、加硫促進剤、プロセス油、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸などを含有させることができる。
【0073】
上記加硫剤としては、硫黄等が挙げられ、その使用量は、(A)ゴム成分100質量部に対し、硫黄分として0.1〜10.0質量部が好ましく、さらに好ましくは1.0〜5.0質量部である。0.1質量部以上であることで、加硫ゴムの破壊強度、耐摩耗性、低発熱性の低下を防ぐことができ、10.0質量部以下であることでゴム弾性が失われるのを防ぐことができる。
【0074】
本発明で使用できる加硫促進剤は、特に限定されるものではないが、例えば、M(2−メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)、CZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)等のチアゾール系、あるいはDPG(ジフェニルグアニジン)等のグアニジン系の加硫促進剤等を挙げることができ、その使用量は、(A)ゴム成分100質量部に対し、0.1〜5.0質量部が好ましく、さらに好ましくは0.2〜3.0質量部である。
【0075】
また、本発明におけるゴム組成物で使用できるプロセス油としては、例えばパラフィン系、ナフテン系、アロマチック系等を挙げることができる。引張強度、耐摩耗性を重視する用途にはアロマチック系が、ヒステリシスロス、低温特性を重視する用途にはナフテン系又はパラフィン系が用いられる。その使用量は、(A)ゴム成分100質量部に対して、0〜100質量部が好ましく、100質量部以下とすることで、加硫ゴムの引張強度、低発熱性が低下するのを防ぐことができる。
【0076】
本発明におけるゴム組成物は、ロール、インターナルミキサー等の混練り機を用いて混練りすることによって得られ、成形加工後、加硫を行い、タイヤトレッド部のベースゴムに用いられる。
【0077】
[空気入りタイヤ]
本発明の空気入りタイヤは、キャップ/ベース構造のトレッド部を備え、トレッド部のベースゴムに上記本発明に係るゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて、上記のように各種薬品を含有させたゴム組成物が未加硫の段階でベースゴムに加工され、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、空気入りタイヤが得られる。当該空気入りタイヤは、低発熱性を確保しながら、良好な耐摩耗性及び耐久性を有し、例えば、重荷重用タイヤに適用することができる。
【実施例】
【0078】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0079】
なお、未変性又は変性SBRの物性は下記の方法に従って測定した。
<ミクロ構造の分析法>
赤外法(モレロ法)により、ビニル結合含有量(%)を測定した。
<結合スチレン含量(ポリマー中の質量%)>
270MHz1H−NMRによって求めた。
<ムーニー粘度(ML1+4,100℃)の測定>
JIS K6300に従って、Lローター、予熱1分、ローター作動時間4分、温度100℃で求めた。
【0080】
実施例1
<変性剤の合成>
窒素雰囲気下、攪拌機を備えたガラスフラスコ中のジクロロメタン溶媒400ml中にアミノシラン部位として36gの3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン(Gelest社製)を加えた後、さらに保護部位として塩化トリメチルシラン(Aldrich社製)48ml、トリエチルアミン53mlを溶液中に加え、17時間室温下で攪拌し、その後反応溶液をエバポレーターにかけることにより溶媒を取り除き、反応混合物を得、さらに得られた反応混合物を665Pa条件下で減圧蒸留することにより、130〜135℃留分としてN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン(変性剤)を40g得た。
【0081】
<第一アミン変性スチレン−ブタジエンゴムの合成>
窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン2,750g、テトラヒドロフラン41.3g、スチレン125g、1,3−ブタジエン375gを仕込んだ。反応器内容物の温度を10℃に調整した後、n−ブチルリチウム215mgを添加して重合を開始した。重合は断熱条件で実施し、最高温度は85℃に達した。
重合転化率が99%に達した時点で、ブタジエン10gを追加し、更に5分重合させた。リアクターからポリマー溶液を、メタノール1gを添加したシクロヘキサン溶液30g中に少量サンプリングした後、合成例1で得られたN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン1129mgを加えて、変性反応を15分間行った。この後、縮合促進剤のテトラキス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン8.11gを加え、更に15分間攪拌し縮合反応を行った。最後に反応後の重合体溶液に、2.6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒及び保護された第一アミノ基の脱保護を行い、110℃に調温された熟ロールによりゴムを乾燥し、第一アミン変性スチレン−ブタジエンゴム(アミン系官能基変性スチレン−ブタジエン共重合体 表1中のSBR(A)に相当)を得た。得られた第一アミン変性スチレン−ブタジエンゴムの結合スチレン量24.5質量%、共役ジエン部のビニル含量は56モル%、ムーニー粘度は32であった。
【0082】
<ゴム組成物の作製>
上記第一アミン変性スチレン−ブタジエンゴム、NR、カーボンブラック(HAF N330)、シリカ、ステアリン酸、亜鉛華、老化防止剤、促進剤、及び硫黄を、下記表1に記載の配合で混合し、ベースゴム用ゴム組成物を作製した。
【0083】
<空気入りタイヤの作製>
作製したベースゴム用ゴム組成物をトレッドのベースゴム部材に適用して、タイヤサイズ180R33の空気入りタイヤを作製した。
【0084】
実施例2,3及び比較例1〜6
配合を下記表1に記載の通りとした以外は、実施例1と同様にしてベースゴム用ゴム組成物及び空気入りタイヤを作製した。
【0085】
なお、比較例6で使用したS−SBRは、JSR社製「SL552」の乳化重合SBRである。
【0086】
実施例4
N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランの代わりにN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルトリエトキシシランを使用した以外は、実施例1と同様にして第一アミン変性スチレン−ブタジエンゴム(アミン系官能基変性スチレン−ブタジエン共重合体 表1中のSBR(B)に相当)を作製し、さらに、ベースゴム用ゴム組成物及び空気入りタイヤを作製した。
【0087】
実施例5
N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランの代わりにN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルジメチルエトキシシランを使用した以外は、実施例1と同様にして第一アミン変性スチレン−ブタジエンゴム(アミン系官能基変性スチレン−ブタジエン共重合体 表1中のSBR(C)に相当)を作製し、さらに、ベースゴム用ゴム組成物及び空気入りタイヤを作製した。
【0088】
各実施例及び比較例で作製したベースゴム用ゴム組成物または空気入りタイヤについて以下に示す評価を行った。結果を下記表1に示す。
【0089】
《評価》
<低発熱性>
(1)反発弾性
JIS K 6301に従い、145℃、30分の加硫条件にて測定した。
(2)換算タイヤ温度
1800R13の供試タイヤを各ベースゴムで作製し、10km/hrの一定速度、700kPaの初期内圧、10.9ton荷重でのドラム試験を実施し、24時間走行後に一定深さ位置で温度を測定した。比較例1の値を100として、各実施例及び比較例の値を指数で表示した。指数が大きいほど、低発熱化の効果が大きいことを示す。
【0090】
<耐摩耗性>
JIS K 6264−2:2005に準拠し、145℃、30分の加硫条件にて加硫されたゴムサンプルをスリップ率25%で摩耗させ摩耗量の逆数の値を100として指数化した。数値が大きい程、耐摩耗性が優れることを示す。
【0091】
<耐カット性>
各実施例及び比較例で作製した空気入りタイヤの残溝10mmまでバフし、500Hrs走行させた後、タイヤベース部の外観を目視により評価した。10ラグ当たりのカット傷(長さ30mm以上のもの)を数え、比較例1の値を100として、各実施例及び比較例の値を指数で表示した。指数が大きいほど、耐カット性の効果が大きいことを示す。
【0092】
【表1】

[注]
HAF N330:旭カーボン社製「#70」
ISAF N220:旭カーボン社製「#80」
シリカ:東ソー・シリカ株式会社製「ニプシルAQ」
老化防止剤:大内新興化学工業社製「ノクセラー6C」
促進剤:大内新興化学工業社製「ノクセラーCZ」
【0093】
比較例2は、架橋密度の増加により低発熱化しているが、耐カット性の低下が著しかった。比較例3は、カーボンブラックのグレードアップにより耐カット性は改良されたが発熱性の悪化が大きかった。比較例4はシリカの適用により耐カット性が改良されたが、比較例3と同様に発熱性の悪化を伴った。そこで、比較例5のように充填剤量を減らすことで低発熱性の確保を図ろうとすると、耐カット性の確保が難しくなった。比較例6のように、S−SBRを適用すると、耐カット性は大きく向上するが、低発熱性が大幅に悪化するためベースゴムとしての機能が果たせない。
これらに対し、実施例1は、第1アミン変性SBRを適用したため、低発熱性を確保しつつ耐カット性を向上させることができた。実施例2は、第1アミン変性SBRを適用しさらに充填剤の量を減らしたため、低発熱性と耐カット性とを高次に両立させることができた。実施例3は、第1アミン変性SBRの配合量を増加させたことにより、実施例2と同様に、低発熱性と耐カット性とを高次に両立させることができた。実施例4,5では、変性剤を変更しても、良好な低発熱性と耐摩耗性が得られことがわかり、さらに、当該変性剤により耐カット性を向上させることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分として合成ゴムと天然ゴムとを含み、前記合成ゴムの少なくとも1種がアミン系官能基変性スチレン−ブタジエン共重合体であるゴム組成物をトレッドのベースゴムに用いてなる空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記アミン系官能基変性スチレン−ブタジエン共重合体が、前記アミン系官能基としてプロトン性アミノ基及び/又は保護化アミノ基を有する請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ゴム成分100質量部に対し、充填剤を30〜65質量部含む請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2009−263511(P2009−263511A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115175(P2008−115175)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】