説明

空気入りタイヤ

【課題】インナーライナーの剥離、耐クラック性を改善する。
【解決手段】インナーライナーは、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体の60質量%以上と、炭素数4のモノマーの重合体であるC4重合体の40質量%以下の混合物より成る熱可塑性エラストマー組成物であって、厚さが0.05mm〜0.6mmの第1層と、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体の少なくともいずれかの60質量%以上と、C4重合体の40質量%以下の混合物より成る熱可塑性エラストマー組成物であって、厚さが0.01mm〜0.3mmである第2層とからなり、第2層はカーカスプライ6と接し、インナーライナーはビード領域Rbの平均厚さGbより、タイヤ最大幅位置からベルト層端の対応位置Luに亘るバットレス領域Rsの平均厚さGsが薄いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインナーライナーを備えた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車の低燃費化に対する強い社会的要請から、タイヤの軽量化が図られており、タイヤ部材のなかでも、タイヤの内部に配され、空気入りタイヤ内部から外部への空気の漏れを防止する機能を有するインナーライナーにおいても軽量化が求められている。
【0003】
現在、インナーライナー用ゴム組成物は、たとえばブチルゴム70〜100質量%および天然ゴム30〜0質量%を含むブチルゴムを主体とするゴム配合を使用することで、タイヤの耐空気透過性を向上させることが行われている。また、ブチルゴムを主体とするゴム配合はブチレン以外に約1質量%のイソプレンを含み、これが硫黄・加硫促進剤・亜鉛華と相俟って、隣接ゴム層との分子間の共架橋を可能にしている。上記ブチル系ゴムは、通常の配合では乗用車用タイヤでは0.6〜1.0mm、トラック・バス用タイヤでは1.0〜2.0mm程度の厚さが必要となるが、タイヤの軽量化を図るために、ブチル系ゴムより耐空気透過性に優れ、インナーライナー層の厚さをより薄くできるポリマーが要請されている。
【0004】
従来、インナーライナーの軽量化を図るために熱可塑性エラストマーを用いることが提案されている。しかし熱可塑性エラストマーは、ブチルゴムよりも厚さを薄くすると耐空気透過性及び強度が低下し、さらにタイヤの加硫の際にブラダーの熱と圧力でインナーライナーが破れてしまうことがある。さらに強度が低い熱可塑性エラストマーは、タイヤ走行の際に大きな繰り返しせん断変形を受けるバットレス部において、インナーライナーにクラックが発生しやすい。
【0005】
特許文献1には、インナーライナー層とゴム層の接着性を改善するための積層体が開示されている。これはインナーライナー層の両側に接着層を設けることで、インナーライナー層の重ね合わせ部において接着層同士が接触するようになり、加熱によって強固に接着されるので、空気圧保持性を向上させている。しかし、このインナーライナー層の重ね合わせのための接着層は、加硫工程においてブラダーと加熱状態で接触することになり、ブラダーに粘着、接着するという問題がある。
【0006】
特許文献2は、耐空気透過性のナイロン樹脂とブチルゴムを動的架橋により混合物を作成し、厚さ100μmのインナーライナー層を作製している。しかしナイロン樹脂は室温では硬くタイヤ用インナーライナーとしては不向きである。また、この動的架橋による混合物だけではゴム層との加硫接着はしないため、インナーライナー層とは別に加硫用接着層を必要とするため、インナーライナー部材としては構造が複雑で工程が多くなり、生産性の観点から不利である。
【0007】
先行文献3は、耐空気透過性のエチレン−ビニルアルコール共重合体中に無水マレイン酸変性水素添加スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体を分散させ、柔軟なガスバリア層を作製している。また、熱可塑性ポリウレタン層では挟み込みサンドイッチ構造、さらにタイヤゴムと接着する面にゴム糊(ブチルゴム/天然ゴムの70/30をトルエンに溶解させる)を塗布させてインナーライナー層を作製している。しかし、柔軟樹脂分散の変性エチレン−ビニルアルコール共重合体は接着力が低く、熱可塑性ポリウレタン層と剥離するおそれがある。また柔軟樹脂分散の変性エチレン−ビニルアルコール共重合体は柔軟樹脂が分散されているが、マトリックスのEVOHは屈曲疲労性に乏しく、タイヤ走行中に破壊してしまう。さらにタイヤゴムと接着する面にゴム糊を塗布しているが、通常のインナーライナー工程とは別の工程が必要となり生産性が劣ることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−19987号公報
【特許文献2】特許第2999188号
【特許文献3】特開2008−24219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はインナーライナーを備えた空気入りタイヤにおいて、インナーライナーの剥離を防止し、さらに屈曲疲労性、耐空気透過性および耐クラック性を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、タイヤ内側にインナーライナーを備えた空気入りタイヤであって、前記インナーライナーは、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体の60質量%以上と、炭素数4のモノマーの重合体であるC4重合体の40質量%以下の混合物より成る熱可塑性エラストマー組成物であって、厚さが0.05mm〜0.6mmの第1層と、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体の少なくともいずれかの60質量%以上と、前記C4重合体の40質量%以下の混合物より成る熱可塑性エラストマー組成物であって、厚さが0.01mm〜0.3mmである第2層とからなるポリマー積層体で形成され、前記第2層はカーカスプライのゴム層と接するように配置され、前記インナーライナーは、タイヤ最大幅位置からビードトウに亘るビード領域Rbの平均厚さGbより、タイヤ最大幅位置からベルト層端の対応位置Luに亘るバットレス領域Rsの平均厚さGsが薄いことを特徴とする空気入りタイヤである。
【0011】
前記スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体はスチレン成分含有量が10〜30質量%であり、重量平均分子量が50,000〜400,000であることが望ましい。
【0012】
前記C4重合体は、ポリブテン若しくはポリイソブチレンが好ましい。また前記C4重合体が、数平均分子量が300〜3,000、重量平均分子量が700〜100,000、または粘度平均分子量が20,000〜70,000であることが好ましい。
【0013】
前記スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体は、スチレン成分含有量が10〜30質量%であり、重量平均分子量が100,000〜290,000であることが好ましい。
【0014】
さらに前記スチレン−イソブチレンブロック共重合体は分子鎖が直鎖状であり、スチレン成分含有量が10〜35質量%であり、重量平均分子量が40,000〜120,000であることが好ましい。
【0015】
前記インナーライナーのバットレス領域の平均厚さGsと、ビード領域の平均厚さGbの比(Gs/Gb)は、0.30〜0.75であり、前記インナーライナーのバットレス領域の平均厚さGsは、0.05〜0.45mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、前記C4重合体を含む熱可塑性エラストマー組成物の積層体をインナーライナーに用いることで、耐空気透過性を高めながら、その厚さを薄くでき、さらに隣接ゴム層との接着性を改善できる。そしてインナーライナーのビード領域Rbの平均厚さGbと、バットレス領域Rsの平均厚さGsを調製することで、走行時のタイヤの繰り返し変形に伴う応力を有効に緩和でき屈曲疲労性及び耐クラック性が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態における空気入りタイヤの右半分を示す概略断面図である。
【図2】本発明の空気入りタイヤにおけるインナーライナーの概略断面図である。
【図3】本発明の空気入りタイヤにおけるインナーライナーの概略断面図である。
【図4】本発明の空気入りタイヤにおけるインナーライナーの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、タイヤ内側にインナーライナーを備えた空気入りタイヤであって、前記インナーライナーは、少なくとも2層よりなるポリマー積層体で形成される。第1層は、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(SIBS)からなり、厚さが0.05mm〜0.6mmの範囲である。第2層は、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体(SIS)およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体(SIB)の少なくともいずれかを含み、厚さが0.01mm〜0.3mmである。前記第2層はカーカスプライのゴム層と接するように配置されている。
【0019】
本発明の空気入りタイヤの実施形態を図に基づき説明する。図1は、乗用車用空気入りタイヤの右半分の断面図である。空気入りタイヤ1は、トレッド部2と、該トレッド部両端からトロイド形状を形成するようにサイドウォール部3とビード部4とを有している。さらに、ビード部4にはビードコア5が埋設される。また、一方のビード部4から他方のビード部に亘って設けられ、両端をビードコア5のまわりに折り返して係止されるカーカスプライ6と、該カーカスプライ6のクラウン部外側には、少なくとも2枚のプライよりなるベルト層7とが配置されている。
【0020】
前記ベルト層7は、通常、スチールコードまたはアラミド繊維等のコードよりなるプライの2枚をタイヤ周方向に対して、コードが通常5〜30°の角度になるようにプライ間で相互に交差するように配置される。なおベルト層の両端外側には、トッピングゴム層を設け、ベルト層両端の剥離を軽減することができる。またカーカスプライはポリエステル、ナイロン、アラミド等の有機繊維コードがタイヤ周方向にほぼ90°に配列されており、カーカスプライとその折り返し部に囲まれる領域には、ビードコア5の上端からサイドウォール方向に延びるビードエーペックス8が配置される。また前記カーカスプライ6のタイヤ半径方向内側には一方のビード部4から他方のビード部4に亘るインナーライナー9が配置されている。
【0021】
本発明において、タイヤ最大幅位置LeからビードトウLtに亘るビード領域Rbのインナーライナー9の平均厚さGbより、タイヤ最大幅位置Leからベルト層端の対応位置Luに亘るバットレス領域Rsのインナーライナー9の平均厚さGsが薄くなるように形成されている。
【0022】
バットレス領域Rsにおけるインナーライナーの厚さを薄くすることで、タイヤ走行時における、この領域での繰り返し屈曲変形に伴うせん断変形が生じても、その応力を緩和することができ、クラックの発生を防止することができる。
【0023】
屈曲変形による応力を効果的に緩和するには、前記インナーライナーのバットレス領域Rsの平均厚さGsと、ビード領域Rbの平均厚さGbの比(Gs/Gb)は、0.3〜0.75である。また空気圧保持性能を維持し、バットレス領域の応力を緩和する効果を兼備するには、前記インナーライナーのバットレス領域Rsの平均厚さGsは、0.05〜0.45mmであることが望ましい。
【0024】
<ポリマー積層体>
本発明においてインナーライナーは、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(SIBS)を主体とする熱可塑性エラストマー組成物であって、厚さが0.05mm〜0.6mmの第1層と、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体の少なくともいずれかを主体とする熱可塑性エラストマー組成物であって、厚さが0.01mm〜0.3mmである第2層とからなるポリマー積層体で形成される。ここで第1層および第2層の熱可塑性エラストマー組成物は、炭素数が4のモノマーの重合体であるC4重合体が、40質量%以下、特に、0.5〜40質量%混合されている。
【0025】
<第1層>
本発明において、第1層は、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(SIBS)を60質量%以上と、炭素数4のモノマーを重合して得られるC4重合体を40質量%以下の混合物より成る熱可塑性エラストマー組成物で形成される。
【0026】
スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(SIBS)は、そのイソブチレンブロック由来により、SIBSからなるポリマーフィルムは優れた耐空気透過性を有する。したがって、SIBSからなるポリマーフィルムをインナーライナーに用いた場合、耐空気透過性に優れた空気入りタイヤを得ることができる。
【0027】
さらに、SIBSは芳香族以外の分子構造が完全飽和であることにより、劣化硬化が抑制され、優れた耐久性を有する。したがって、SIBSからなるポリマーフィルムをインナーライナーに用いた場合、耐久性に優れた空気入りタイヤを得ることができる。
【0028】
SIBSの分子量は特に制限はないが、流動性、成形化工程、ゴム弾性などの観点から、GPC測定による重量平均分子量が50,000〜400,000であることが好ましい。重量平均分子量が50,000未満であると引張強度、引張伸びが低下するおそれがあり、400,000を超えると押出加工性が悪くなるおそれがあるため好ましくない。SIBSは耐空気透過性と耐久性を改善するため、SIBS中のスチレン成分の含有量は10〜30質量%、好ましくは14〜25質量%であることが好ましい。
【0029】
SIBSにおいて、各ブロックの重合度は、ゴム弾性と作業性の観点からイソブチレンブロックでは10,000〜150,000程度、またスチレンブロックでは5,000〜30,000程度であることが好ましい。
【0030】
SIBSは、一般的なビニル系化合物のリビングカチオン重合法により得ることができ。例えば、特開昭62−48704号公報および特開昭64−62308号公報には、イソブチレンと他のビニル化合物とのリビングカチオン重合が可能であり、ビニル化合物にイソブチレンと他の化合物を用いることでポリイソブチレン系のブロック共重合体を製造できることが開示されている。
【0031】
SIBSは分子内に芳香族以外の二重結合を有していないために、分子内に二重結合を有している重合体、例えばポリブタジエンに比べて紫外線に対する安定性が高く、従って耐候性が良好である。
【0032】
(C4重合体)
本発明において第1層には、SIBSとともに炭素数4のモノマー単位を重合して得られるC4重合体を含む。該C4重合体の低分子量成分は、SIBS由来の耐空気透過性を損なうことなく、SIBSの第1層と、他のポリマーシートやゴム層との未加硫粘着力および加硫接着力を向上させることができる。したがって、該C4重合体を含むSIBS層をタイヤのインナーライナー部に用いると、隣接するカーカスやインスレーションなどを形成するゴム層との接着力が向上し、インナーライナーとカーカス、またはインナーライナーとインスレーションの間のエアーイン現象を防ぐことができる。
前記C4重合体のGPC法による数平均分子量は、300〜3,000であることが好ましく、500〜2,500であることがさらに好ましい。該重合体のGPC法による重量平均分子量は700〜100,000であることが好ましく、1,000〜80,000であることがさらに好ましい。該重合体のFCC法による粘度平均分子量は20,000〜70,000であることが好ましく、30,000〜60,000であることがさらに好ましい。
【0033】
前記C4重合体としては、ポリブテン、ポリイソブチレンなどが挙げられる。ポリブテンは、モノマー単位としてイソブテンを主体として、さらにノルマルブテンを用い、これらを反応させて得られる長鎖状炭化水素の分子構造を持った共重合体である。ポリブテンとしては、水素添加型のポリブテンも用いることができる。ポリイソブチレンは、モノマー単位としてイソブテンを用いて、これを重合させて得られる長鎖状炭化水素の分子構造を持った共重合体である。
【0034】
ポリブテンとしては、例えば、新日本石油(株)社製の、日石ポリブテン(グレードLV7、LV50、LV100、HV15、HV35、HV50、HV100、HV300、HV1900)を挙げることができる。これらはGPC法による数平均分子量は、300〜3000である。また、BASF(株)社製のグリソパール(Glissopal)550、1000、1300、2300がある。これらはGPC法による数平均分子量は、550〜2300、重量平均分子量が700〜4,5000である。また、また、出光石油化学(株)社製の出光ポリブテンOH、5H、2000H(水素添加グレード)、15R、35R、100R、300R(水素未添加グレード)を挙げることができる。これらはASTM D2503−92による数平均分子量は、350〜3000である。
また、ポリイソブチレンとして、新日本石油(株)社製のテトラックス(TETRAX)3T、4T、5T、6Tを挙げることができる。これらはNPCCC法(GPC法)による重量平均分子量が30,000〜100,000であり、FCCによる粘度平均分子量が20,000〜70,000の範囲である。
【0035】
(SIBS層)
本発明においてSIBSを主体とする第1層をSIBS層ともいう。本発明において、SIBS層は、炭素数4のモノマー単位を重合して得られるC4重合体を、40質量%未満、特に0.5質量%以上40質量%以下含む。C4重合体の含有量が0.5質量%未満であると、カーカスやインスレーションとの加硫接着力が低下するおそれがあり、40質量%を超えると、耐空気透過性が低下し、さらに粘度が低くなるため押出加工性が悪くなるおそれがある。該C4重合体の含有量は、好ましくは5質量%以上20質量%以下である。一方、SIBS層中のSIBSの含有量は60質量%以上99.5質量%以下が好ましい。SIBSの含有量が60質量%未満であると、耐空気透過性が低下するおそれがあり、99.5質量%を超えると、カーカスやインスレーションとの加硫接着力が低下するおそれがあるため好ましくない。SIBSの含有量は、80質量%以上95質量%以下がさらに好ましい。
【0036】
第1層であるSIBS層の厚さは、0.05mm以上0.6mm以下である。SIBS層の厚さが0.05mm未満であると、ポリマーシートをインナーライナーに適用した生タイヤの加硫時に、SIBS層がプレス圧力で破れてしまい、得られたタイヤにおいてエアーリーク現象が生じるおそれがある。一方、SIBS層の厚さが0.6mmを超えると、タイヤ重量が増加して低燃費性能が低下する。SIBS層の厚さは、さらに0.05mm以上0.4mm以下であることが好ましい。
【0037】
SIBS層は、SIBSを押出成形、カレンダー成形といった熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーをシート化する通常の方法によって得ることができる。
【0038】
<第2層>
本発明において、第2層はスチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体(以下、「SIS」ともいう。)およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体(以下、「SIB」ともいう。)の少なくともいずれかを60質量%以上と、前記C4重合体を40質量%以下の混合物より成るエラストマー組成物であって厚さが0.01mm〜0.3mmである。
【0039】
(SIS)
スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体(SIS)のイソプレンブロックはソフトセグメントであるため、SISからなるポリマーフィルムはゴム成分と加硫接着しやすい。したがって、SISからなるポリマーフィルムをインナーライナーに用いた場合、該インナーライナーは、たとえばカーカスプライのゴム層との接着性に優れているため、耐久性に優れた空気入りタイヤを得ることができる。
【0040】
前記SISの分子量は特に制限はないが、ゴム弾性および成形性の観点から、GPC測定による重量平均分子量が100,000〜290,000であることが好ましい。重量平均分子量が100,000未満であると引張強度が低下するおそれがあり、290,000を超えると押出加工性が悪くなるため好ましくない。
【0041】
SIS中のスチレン成分の含有量は、粘着性、接着性およびゴム弾性の観点から10〜30質量%であることが好ましい。SISにおいて、各ブロックの重合度は、ゴム弾性と取り扱いの観点からイソプレンブロックでは500〜5,000程度、またスチレンブロックでは50〜1,500程度であることが好ましい。
【0042】
本発明において、SISにおける、各ブロックの重合度は、ゴム弾性と作業性を維持する観点からイソプレンでは500〜5,000程度、またスチレンでは50〜1,500程度であることが好ましい。
【0043】
前記SISは、一般的なビニル系化合物の重合法により得ることができ、例えば、リビングカチオン重合法により得ることができる。SIS層は、SISを押出成形、カレンダー成形といった熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーをフィルム化する通常の方法によってフィルム化して得ることができる。
【0044】
(SIB)
スチレン−イソブチレンジブロック共重合体(SIB)のイソブチレンブロックはソフトセグメントであるため、SIBからなるポリマーフィルムはゴム成分と加硫接着しやすい。したがって、SIBからなるポリマーフィルムをインナーライナーに用いた場合、該インナーライナーは、たとえばカーカスやインスレーションを形成する隣接ゴムとの接着性に優れているため、耐久性に優れた空気入りタイヤを得ることができる。
【0045】
SIBとしては、分子鎖が直鎖状のものを用いることがゴム弾性および接着性を高める観点から好ましい。SIBの分子量は特に制限はないが、ゴム弾性および作業性を維持するために、GPC測定による重量平均分子量が40,000〜120,000であることが好ましい。重量平均分子量が40,000未満であると引張強度が低下するおそれがあり、120,000を超えると押出加工性が悪くなるおそれがあるため好ましくない。
【0046】
SIB中のスチレン成分の含有量は、粘着性、接着性およびゴム弾性の観点から10〜35質量%であることが好ましい。
【0047】
本発明において、SIBにおける、各ブロックの重合度は、ゴム弾性と取り扱いの観点からイソブチレンでは300〜3,000程度、またスチレンでは100〜1,500程度であることが好ましい。
【0048】
前記SIBは、一般的なビニル系化合物の重合法により得ることができ、例えば、リビングカチオン重合法により得ることができる。たとえば、国際公開第2005/033035号には、攪拌機にメチルシクロヘキサン、n−ブチルクロライド、クミルクロライドを加え、−70℃に冷却した後、2時間反応させ、その後に大量のメタノールを添加して反応を停止させ、60℃で真空乾燥してSIBを得るという製造方法が開示されている。
【0049】
(SIS層、SIB層)
SISまたはSIBにC4重合体が混合された熱可塑性エラストマー組成物をSIS層、SIB層ともいう。C4重合体は、熱可塑性エラストマーに対し、40質量%以下、特に0.5質量%〜40質量%混合される。前記C4重合体の含有量が0.5質量%未満であると、カーカスやインスレーションとの加硫接着力が低下するおそれがあり、40質量%を超えると、耐空気透過性が低下し、さらに粘度が低くなるため押出加工性が悪くなるおそれがあるため好ましくない。該C4重合体の含有量は、5質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。一方、第2層の熱可塑性エラストマー組成物、即ち、SIS層またはSIB層のSISまたはSIBの含有量は60質量%以上99.5質量%以下が好ましい。SISまたはSIBの含有量が60質量%未満であると、粘度が低くなるため押出加工性が悪くなるおそれがあり、99.5質量%を超えると、カーカスやインスレーションとの加硫接着力が低下するおそれがあるため好ましくない。SISまたはSIBの含有量は、80質量%以上95質量%以下がさらに好ましい。
【0050】
第2層の厚さは、0.01mm以上0.3mm以下である。第2層の厚さが0.01mm未満であると、ポリマー積層体をインナーライナーに適用した生タイヤの加硫時に、第2層がプレス圧力で破れてしまい、加硫接着力が低下する恐れがある。一方、第2層の厚さが0.3mmを超えるとタイヤ重量が増加し、低燃費性能が低下する。第2層の厚さは、さらに0.01mm以上0.2mm以下であることが好ましい。
【0051】
<インナーライナーの適用>
図1を参照して、ポリマー積層体を空気入りタイヤ1のインナーライナー9に適用する場合、第1層のSIBS層の面をタイヤ半径方向の最も内側に向け、第2層のSIS層またはSIB層の面をカーカス6に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて設置すると、タイヤの加硫工程において、第2層とカーカス6とが加硫接着することができる。したがって得られた空気入りタイヤ1は、インナーライナー9とカーカス6のゴム層とが良好に接着してエアーインを防ぐことができ、さらに優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
【0052】
<ポリマー積層体の配置形態>
本発明においてインナーライナーに用いられるポリマー積層体の構造は各種の形態を採用できる。これらの形態をインナーライナーの模式的断面図で示す、図2〜図4に基づき説明する。
【0053】
形態1
ポリマー積層体10は、図2に示すように、第1層としてのSIBS層11および第2層としてのSIS層12から構成される。該ポリマー積層体10を空気入りタイヤのインナーライナーに適用する場合、SIS層12がカーカスプライ61に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて設置すると、タイヤの加硫工程において、SIS層12とカーカス61との接着強度を高めることができる。したがって得られた空気入りタイヤは、インナーライナーとカーカスプライ61のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
【0054】
形態2
ポリマー積層体10は、図3に示すように、第1層としてのSIBS層11および第2層としてのSIB層13から構成される。該ポリマー積層体10を空気入りタイヤのインナーライナーに適用する場合、SIB層13の面を、カーカスプライ61に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて設置すると、タイヤの加硫工程において、SIB層13とカーカス61との接着強度を高めることができる。したがって得られた空気入りタイヤは、インナーライナーとカーカスプライ61のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
【0055】
形態3
ポリマー積層体10は、図4に示すように、第1層としてのSIBS層11、第2層としてのSIS層12およびSIB層13が前記の順に積層されて構成される。該ポリマー積層体10を空気入りタイヤのインナーライナー61に適用する場合、SIB層13の面を、カーカスプライ61に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて設置すると、タイヤの加硫工程において、SIB層13とカーカスプライ6との接着強度を高めることができる。したがって得られた空気入りタイヤは、インナーライナーとカーカスプライ61のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
【0056】
<空気入りタイヤの製造方法>
ポリマー積層体10は、SIBSと、SISおよびSIBの少なくともいずれかを、たとえば形態1〜3のいずれかに記載された順序でラミネート押出や共押出などの積層押出をして得ることができる。
【0057】
本発明の空気入りタイヤは、一般的な製造方法を用いることができる。前記ポリマー積層体10を空気入りタイヤ1の生タイヤのインナーライナーに適用して他の部材とともに加硫成形することによって製造することができる。ポリマー積層体10を生タイヤに配置する際は、ポリマー積層体10の第2層であるSIS層12またはSIB層13が、カーカスプライ61に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて配置する。このように配置すると、タイヤ加硫工程において、SIS層12またはSIB層13とカーカス6との接着強度を高めることができる。得られた空気入りタイヤは、インナーライナーとカーカスプライ61のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
【0058】
なお、インナーライナーの厚さをビード領域Rbとバットレス領域Rsで調整するには、例えば、ポリマーシートの押し出し口にプロファイルをつけて、バットレス領域の厚さGsを薄くした一体物のシートを作成して、これをインナーライナーとしてタイヤ内面に配置する。
【0059】
本発明の空気入りタイヤに用いられるカーカスプライのゴム層の配合は、一般に用いられるゴム成分、例えば、天然ゴム、ポリイソプレン、スチレンーブタジエンゴム、ポリブタジエンゴムなどに、カーボンブラック、シリカなどの充填剤を配合したものを用いることができる。
【実施例】
【0060】
表1、表2および表3に示す仕様で、実施例および比較例の空気入りタイヤを製造して、性能を評価した。第1層、第2層に用いるSIB、SIBSおよびSISは以下のとおり調製した。
【0061】
<SIB>
攪拌機付き2L反応容器に、メチルシクロヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)589mL、n−ブチルクロライド(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)613ml、クミルクロライド0.550gを加えた。反応容器を−70℃に冷却した後、α−ピコリン(2−メチルピリジン)0.35mL、イソブチレン179mLを添加した。さらに四塩化チタン9.4mLを加えて重合を開始し、−70℃で溶液を攪拌しながら2.0時間反応させた。次に反応容器にスチレン59mLを添加し、さらに60分間反応を続けた後、大量のメタノールを添加して反応を停止させた。反応溶液から溶剤などを除去した後に、重合体をトルエンに溶解して2回水洗した。このトルエン溶液をメタノール混合物に加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間乾燥することによりスチレン−イソブチレンジブロック共重合体を得た。
【0062】
スチレン成分含有量:15質量%
重量平均分子量 :70,000
<SIBS>
カネカ(株)社製のシブスターSIBSTAR 102T(ショアA硬度25、スチレン成分含有量25質量%、重量平均分子量:100,000)を用いた。
【0063】
<SIS>
クレイトンポリマー社製のD1161JP(スチレン成分含有量15質量%、重量平均分子量:150,000)を用いた。
【0064】
<ポリブテン>
新日本石油(株)社製「日石ポリブテン グレードHV300」(数平均分子量300)
<ポリイソブチレン>
新日本石油(株)社製「テトラックス 3T」(粘度平均分子量30,000、重量平均分子量49,000)
<空気入りタイヤの製造>
上記、SIBS、SISおよびSIBを、2軸押出機(スクリュ径:φ50mm、L/D:30、シリンダ温度:220℃)にてペレット化した。その後、Tダイ押出機(スクリュ径:φ80mm、L/D:50、ダイリップ幅:500mm、シリンダ温度:220℃、フィルムゲージ:0.3mm)、またはインフレーション共押出機にてインナーライナーを作製した。
【0065】
空気入りタイヤは、図1に示す基本構造を有する195/65R15サイズのものに、上記ポリマー積層体をインナーライナーに用いて生タイヤを製造し、次に加硫工程において、170℃で20分間プレス成型して製造した。
【0066】
ここでインナーライナーのビード領域Rbとバットレス領域Rsで厚さを調整するために、ポリマーシートの押し出し口にプロファイルをつけて、バットレス領域の厚さGsを薄くした一体物のシートを作成して、これをインナーライナーとしてタイヤ内面に配置した。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【0070】
表1、表2および表3において、第1層、第2層の厚さは、Gs以外の領域の厚さを示している。比較例1を除き、いずれの実施例、比較例においても、Gbは第1層と第2層の厚さの合計であり、0.6mmである。
【0071】
<比較例1>
比較例1のインナーライナーには、次の配合成分をバンバリーミキサーで混合し、カレンダーロールにてシート化して厚さ1.0mmのポリマーフィルムを得た。Gs/Gbの値は1である。
【0072】
IIR(注1) 80質量部
天然ゴム(注2) 20質量部
フィラー(注3) 60質量部
(注1)IIRはエクソンモービル(株)社製の「エクソンクロロブチル 1068」を用いた。
(注2)天然ゴムはTSR20を用いた。
(注3)フィラーは東海カーボン(株)社製の「シーストV」(N660、窒素吸着比表面積:27m2/g)を用いた。
【0073】
<比較例2〜3>
上述の方法で製造した厚さ0.6mmのSIBS層の1層をインナーライナーとして用いた。Gs/Gbの値は1である。
【0074】
<比較例4〜9>
0.40mmのSIBS層と0.20mmのSIS層の複合層をインナーライナーとして用いた。Gs/Gbの値は、比較例4は1であり、比較例5〜9は、0.75である。
ここで比較例5〜8の第1層または第2層に混合されるC4重合体は、40質量%を超えている。
【0075】
<実施例1〜10>
実施例1〜10は、第1層にSIBSを、第2層にSISを用いており、C4重合体として、ポリブテンまたはポリイソブチレンを、5質量%、40質量%混合している。Gs/Gbの値は、実施例1〜6が、0.75であり、実施例7から実施例10に値が小さくなっている。
【0076】
<比較例10、実施例11〜19>
比較例10および実施例11〜19は、第1層にSIBSを、第2層にSIBを用いている。Gs/Gbの値は、実施例11が最も高く、実施例19が最も低い。比較例10はGs/Gbの値が1である。
【0077】
<比較例11、実施例20〜28>
比較例11、実施例20〜28は、第1層にSIBSを、第2層にSISとSIBの複合層を用いている。実施例20〜24は、第1層、第2層のC4重合体の種類および混合量を変更している。Gs/Gbの値は比較例11が1であり、実施例20〜24は0.75である。実施例25〜28は、Gs/Gbの値を変えており、実施例25が最も高く、実施例28が最も低い。
【0078】
<性能試験>
実施例、比較例のポリマー積層体および該ポリマー積層体をインナーライナーに用いて空気入りタイヤを製造し以下の性能試験を行った。
【0079】
<剥離試験>
JIS−K−6256「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの接着性の求め方」に準じて試験片を作製した。熱可塑性エラストマーシートとゴムシートを貼りあわせ加硫する。加硫後に貼り合わせ界面で剥離力を測定する。比較例1の剥離力を100として、相対値で指数評価した。指数が大きいほど剥離力は大きいことを示す。
【0080】
<屈曲疲労性試験>
JIS−K−6260「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムのデマチャ屈曲亀裂試験方法」に準じて、中央に溝のある所定の試験片を作製した。インナーライナーは、厚さ0.3mmシートをゴムに貼り付けて加硫し、所定の試験片を作製した。試験片の溝の中心にあらかじめ切り込みを入れ、繰り返し屈曲変形を与え亀裂成長を測定する試験を行った。雰囲気温度23℃、歪30%、周期5Hzで、70万回、140万回、210万回時に亀裂長さを測定し、亀裂が1mm成長するのに要した屈曲変形の繰り返し回数を算出した。比較例1の値を基準(100)として、実施例および比較例のポリマー積層体の屈曲疲労性について指数表示した。数値が大きい方が、亀裂が成長しにくく良好といえる。例えば、実施例1の指数は以下の式で求められる。
【0081】
(屈曲疲労性指数)=(実施例1の屈曲変形の繰り返し回数)/(比較例1の屈曲変形の繰り返し回数)×100
<静的空気圧低下率試験>
上述の方法で製造した195/65R15スチールラジアルPCタイヤをJIS規格リム15×6JJに組み付け、初期空気圧300Kpaを封入し、90日間室温で放置し、空気圧の低下率を計算した。
【0082】
<平均厚さの測定>
195/65R15スチールラジアルPCタイヤを周方向に8等分し、それぞれの箇所で、幅20mmでタイヤ径方向に沿って切断した8個のカットサンプルを作成し、この8個のカットサンプルについて、それぞれのバットレス領域Rsとビード領域Rbにおいて等間隔に5等分した5点についてインナーライナー層の厚さを測定した。それぞれ測定した合計40点の測定値の算術平均値をGs、Gbとした。
【0083】
<耐クラック性>
195/65R15スチールラジアルPCタイヤをJIS規格リム15×6JJに組み付け、正規の空気圧を充填し、JATMA YEAR BOOKで空気圧−付加能力対応表より、この空気圧に対応する最大荷重を負荷し、速度80km/hでドラム上で走行し、外観目視にて確認可能な損傷が発生した時点で走行を終了し走行距離を求めた。比較例1の走行距離を100とし指数で示す。指数が大きいほど、耐クラック性が優れている。
【0084】
<性能評価結果>
表1、2において実施例1〜10は、第1層としてのSIBS層(厚さ0.4mm)を、第2層としてのSIS層(厚さ0.2mm)からなるポリマー積層体を用いている。これらの実施例は、比較例1〜9に比べて、性能評価において、剥離力、屈曲疲労性、性的空気低下率、耐クラック性が総合的に優れている。
【0085】
表2において実施例11〜19は、第1層としてのSIBS層(厚さ0.4mm)を、第2層としてのSIB層(厚さ0.2mm)からなるポリマー積層体を用いている。これらの実施例は、比較例10に比べて、性能評価において、剥離力、屈曲疲労性、性的空気低下率、耐クラック性が総合的に優れている。
【0086】
表3において実施例20〜28は、第1層としてのSIBS層(厚さ0.4mm)、第2層としてのSIB層およびSIS層(各厚さ0.1mm)からなるポリマー積層体を用いている。これらの実施例は、比較例11に比べて、性能評価において、剥離力、屈曲疲労性、性的空気低下率、耐クラック性が総合的に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用空気入りタイヤのほか、トラック・バス用、重機用等の空気入りタイヤとして用いることができる。
【符号の説明】
【0088】
1 空気入りタイヤ、2 トレッド部、3 サイドウォール部、4 ビード部、5 ビードコア、6 カーカスプライ、7 ベルト層、8 ビードエーペックス、9 インナーライナー、10 ポリマー積層体、11 SIBS層、12 SIS層、13 SIB層、Rb ビード領域、Rs バットレス領域、Le タイヤ最大幅位置、Lt ビードトウ、Lu ベルト層端の対応位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ内側にインナーライナーを備えた空気入りタイヤであって、前記インナーライナーは、
スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体の60質量%以上と、炭素数4のモノマーの重合体であるC4重合体の40質量%以下の混合物より成る熱可塑性エラストマー組成物であって、厚さが0.05mm〜0.6mmの第1層と、
スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体の少なくともいずれかの60質量%以上と、前記C4重合体の40質量%以下の混合物より成る熱可塑性エラストマー組成物であって、厚さが0.01mm〜0.3mmである第2層とからなるポリマー積層体で形成され、
前記第2層はカーカスプライのゴム層と接するように配置され、
前記インナーライナーは、タイヤ最大幅位置からビードトウに亘るビード領域Rbの平均厚さGbより、タイヤ最大幅位置からベルト層端の対応位置Luに亘るバットレス領域Rsの平均厚さGsが薄いことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体はスチレン成分含有量が10〜30質量%であり、重量平均分子量が50,000〜400,000である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記C4重合体が、ポリブテン若しくはポリイソブチレンである請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記C4重合体が、数平均分子量が300〜3,000、重量平均分子量が700〜100,000、または粘度平均分子量が20,000〜70,000である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体は、スチレン成分含有量が10〜30質量%であり、重量平均分子量が100,000〜290,000である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記スチレン−イソブチレンブロック共重合体は、分子鎖が直鎖状であり、スチレン成分含有量が10〜35質量%であり、重量平均分子量が40,000〜120,000である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記インナーライナーのバットレス領域の平均厚さGsと、ビード領域の平均厚さGbの比(Gs/Gb)は、0.30〜0.75である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記インナーライナーのバットレス領域の平均厚さGsは、0.05〜0.45mmである請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−240604(P2012−240604A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114613(P2011−114613)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】