説明

空気入りタイヤ

【課題】タイヤの内圧低下を軽減し、タイヤ走行に伴う繰り返し屈曲変形に伴うインナーライナーの亀裂成長を軽減し、さらに転がり抵抗を低減した空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】タイヤ内側に配置される第1層と、カーカスプライ6のゴム層と接するように配置される第2層で構成されてインナーライナー9を備えた空気入りタイヤ1であって、前記第1層は、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体を主体とする熱可塑性エラストマー組成物で、前記第2層はスチレン系熱可塑性エラストマー組成物であり、(a)前記第1層および第2層の少なくともいずれかの熱可塑性エラストマー組成物は前記熱可塑性エラストマー100質量部に対して、粘着付与剤を0.1〜100質量部含むか、または(b)前記第2層は、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体を、熱可塑性エラストマー成分の10〜80質量%を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインナーライナーを備えた空気入りタイヤに関し、特に、タイヤ走行時の繰り返し屈曲変形に伴うインナーライナーの亀裂成長を軽減し、タイヤ内圧低下を軽減するとともに転がり抵抗を低減した空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車の低燃費化に対する強い社会的要請から、タイヤの軽量化が図られており、タイヤ部材のなかでも、タイヤの内部に配され、空気入りタイヤ内部から外部への空気の漏れの量(空気内圧低下)を軽減して耐空気透過性を向上させる機能を有するインナーライナーにおいても、軽量化などが行われるようになってきた。
【0003】
現在、インナーライナー用ゴム組成物は、たとえばブチルゴム70〜100質量%および天然ゴム30〜0質量%を含むブチルゴムを主体とするゴム配合を使用することで、タイヤの耐空気透過性を向上させることが行われている。また、ブチルゴムを主体とするゴム配合はブチレン以外に約1質量%のイソプレンを含み、これが硫黄・加硫促進剤・亜鉛華と相まって、ゴム分子間の架橋を可能にしている。上記ブチル系ゴムは、通常の配合では乗用車用タイヤでは0.6〜1.0mm、トラック・バス用タイヤでは1.0〜2.0mm程度の厚みが必要となるが、タイヤの軽量化を図るために、ブチル系ゴムより耐空気透過性に優れ、インナーライナー層の厚みをより薄くできるポリマーが要請されている。
【0004】
従来、タイヤの軽量化を図るために、前記ゴム組成物にかえて熱可塑性樹脂を含む材料からなるフィルムが提案されている。しかし薄い熱可塑性樹脂のインナーライナーを用いてタイヤを製造すると、加硫工程の圧力で部分的に薄くなりすぎてタイヤ製品のインナーライナーの仕上がりゲージが設計より薄くなってしまう。仕上がりが薄いインナーライナーはその箇所ではカーカスコードが浮き出て見える現象(オープンスレッド)でユーザーには外観が悪いという印象を与えてしまうほかに、インナーライナーが薄いと、部分的にガスバリア性が悪くなってしまい、タイヤ内圧が低下し、最悪な場合にはタイヤがバーストしてしまう虞がある。
【0005】
またインナーライナーはタイヤ走行時にショルダー部近傍に大きなせん断歪が作用する。熱可塑性樹脂を含む材料をインナーライナーとして使用した場合、このせん断歪みによって、インナーライナーとカーカスプライの接着界面で剥離が発生しやすくなり、タイヤの空気漏れが発生するという問題があった。
【0006】
またインナーライナーの軽量化のため、熱可塑性エラストマー材料を用いる技術も提案されている。しかしブチルゴムのインナーライナーよりも厚みを薄くし、また高い耐空気透過性を示す材料は、インナーライナーに隣接するインスレーションゴムやカーカスプライゴムとの加硫接着力がブチルゴムのインナーライナーよりも劣ることが分かっている。
【0007】
インナーライナーの加硫接着力が低いと、インナーライナーとインシュレーションゴム、またはカーカスゴムの間に空気が混入し、小さな風船のようなものが現れる、所謂エアーイン現象が生じる。タイヤの内側に小さな斑模様が多数あることで、ユーザーには外観が悪いという印象を与えるほかに、走行中にエアが起点となり剥離が生じてインナーライナーに亀裂が生じタイヤ内圧が低下し、最悪な場合はタイヤがバーストしてしまう虞がある。
【0008】
特許文献1には、熱可塑性江ラストマーであるSIBSに粘着付与剤として石油樹脂、テルペン樹脂を用いて接着力を向上することが提案されている。しかしSIBSのほかにポリアミド系ポリマーをブレンドしており、耐屈曲亀裂性が低下するという問題がある。
【0009】
また特許文献2には、SIBSと硫黄架橋可能な重合体のブレンド物に粘着付与剤として、天然ロジン、テルペン、クロマンインデン樹脂、石油樹脂またはアルキルフェノール樹脂などを用いて、カーカスプライゴムの接着性を向上することが提案されている。
【0010】
しかしSIBSの100重量部に対して硫黄加硫可能な重合体を10〜300重量部ブレンドする技術では、硫黄架橋可能な重合体が100重量部以下の場合、SIBSがマトリックス(海部分)で、硫黄架橋可能な重合体がドメイン構造(島部分)となり、カーカスゴムへの接触界面での接着力が向上しない。また硫黄架橋可能な重合体が100重量部以上の場合、ブチルゴム以外ではガスバリア性が低下し、ブチルゴムでは接着力が低下し、更にはブレンドする重合体によっては、粘着が高くなり厚さ600μm以下のフィルムを作製できないという問題がある。
【0011】
特許文献3は、熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーをブレンドしたフィルム積層体のストリップでタイヤを製造している。積層体にすることで、ガスバリア性、接着性を改善することができ、リボン状のストリップ間の接合を可能にしている。しかし、この技術はフィルム積層体の未加硫生カバーでのゲージは一定であり、ゲージを薄くするとバットレス部などで加硫後のタイヤ仕上がりが薄くなってしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2010−13646号公報
【特許文献2】特開2010−100675
【特許文献3】WO2008−029781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明はインナーライナーを備えた空気入りタイヤにおいて、タイヤの内圧低下を軽減し、タイヤ走行に伴う繰り返し屈曲変形に伴うインナーライナーの亀裂成長を軽減し、さらに転がり抵抗を低減した空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、一対のビード部の間に装架されたカーカスプライのタイヤ内側にインナーライナーを備えた空気入りタイヤであって、前記インナーライナーは、タイヤ内側に配置される第1層と、前記カーカスプライのゴム層と接するように配置される第2層で構成されており、前記第1層は、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体を主体とする熱可塑性エラストマー組成物で、前記第2層はスチレン系熱可塑性エラストマー組成物であり、(a)前記第1層および第2層の少なくともいずれかの熱可塑性エラストマー組成物は、前記熱可塑性エラストマー100質量部に対して、粘着付与剤を0.1〜100質量部含むか、または(b)前記第2層は、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体を、熱可塑性エラストマー成分の10〜80質量%含むことを特徴とする前記空気入りタイヤである。
【0015】
前記粘着付与剤は、重量平均分子量Mwが、1×102 〜1×106で、軟化点が50℃〜150℃の範囲であることが望ましい。また、前記第2層は、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体の少なくともいずれかを含む熱可塑性エラストマー組成物であり、該第2層の熱可塑性エラストマーは、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体を5〜90質量%含むことが好ましい。また、本発明は前記第1層の厚さは0.05mm〜0.6mmであり、第2層の厚さは0.01mm〜0.3mmである前記空気入りタイヤに関する。
【0016】
さらに、前記スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体はスチレン成分含有量が10〜30質量%であり、重量平均分子量が50,000〜400,000であり、前記スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体は、スチレン成分含有量が10〜30質量%であり、重量平均分子量が100,000〜290,000であることが望ましい。また前記スチレン−イソブチレンブロック共重合体は直鎖状であり、スチレン成分含有量が10〜35質量%であり、重量平均分子量が40,000〜120,000であることが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明においてインナーライナーを、SIBSを主体とする第1層と、スチレン系熱可塑性エラストマーよりなる第2層で構成し、いずれかに粘着付与剤を混合しているため、第1層と第2層の間の加硫接着を改善することができる。その結果、第1層とカーカスプライとの接着性も強化され、第1層/カーカスプライ間、第1層/第2層間およびカーカスプライ/第2層間のエアーインの発生を防止することができ、タイヤ耐久性能が向上する。
【0018】
また、第2層にSIBSを配合しているために、第1層との接着性が改善され、第1層/第2層間/カーカスプライ間の接着強化を一層向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の空気入りタイヤの右半分の概略断面図である。
【図2】図2(a)〜(d)はインナーライナーとカーカスの配置状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<タイヤの構造>
本発明はタイヤ内側にインナーライナーを備えた空気入りタイヤを図に基づいて説明する。図1は、空気入りタイヤの右半分の概略断面図である。図において空気入りタイヤ1は、トレッド部2と、該トレッド部両端からトロイド形状を形成するようにサイドウォール部3とビード部4とを有している。さらに、ビード部4にはビードコア5が埋設される。また、一方のビード部4から他方のビード部に亘って設けられ、両端をビードコア5のまわりに巻き返して係止されるカーカスプライ6と、該カーカスプライ6のクラウン部外側には、少なくとも2枚のプライよりなるベルト層7とが配置されている。
【0021】
前記ベルト層7は、通常、スチールコードまたはアラミド繊維等のコードよりなるプライの2枚をタイヤ周方向に対して、コードが通常5〜30°の角度になるようにプライ間で相互に交差するように配置される。なおベルト層の両端外側には、トッピングゴム層を設け、ベルト層両端の剥離を軽減することができる。またカーカスプライはポリエステル、ナイロン、アラミド等の有機繊維コードがタイヤ周方向にほぼ90°に配列されており、カーカスプライとその折り返し部に囲まれる領域には、ビードコア5の上端からサイドウォール方向に延びるビードエーペックス8が配置される。また前記カーカスプライ6のタイヤ半径方向内側には一方のビード部4から他方のビード部4に亘るインナーライナー9が配置されている。
【0022】
<インナーライナー>
本発明においてインナーライナーは、タイヤ内側に配置される第1層と、前記カーカスプライのゴム層と接するように配置される第2層で構成されている。前記第1層は、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(以下、「SIBS」ともいう。)を主体とする熱可塑性エラストマー組成物で、前記第2層はスチレン系熱可塑性エラストマー組成物であり、前記第1層および第2層の少なくともいずれかの熱可塑性エラストマー組成物は、前記熱可塑性エラストマー100質量部に対して、粘着付与剤を0.1〜100質量部含むことを特徴とする。
【0023】
<第1層>
前記第1層は、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)を主体とする熱可塑性エラストマーの組成物からなる。SIBSのイソブチレンブロック由来により、SIBSからなるポリマーフィルムは優れた耐空気透過性を有する。したがって、SIBSからなるポリマーをインナーライナーに用いた場合、耐空気透過性に優れた空気入りタイヤを得ることができる。
【0024】
さらに、SIBSは芳香族以外の分子構造が完全飽和であることにより、劣化硬化が抑制され、優れた耐久性を有する。したがって、SIBSからなるポリマーフィルムをインナーライナーに用いた場合、耐久性に優れた空気入りタイヤを得ることができる。
【0025】
SIBSからなるポリマーフィルムをインナーライナーに適用して空気入りタイヤを製造した場合には、耐空気透過性を確保できる。したがってハロゲン化ブチルゴム等の、従来から耐空気透過性を付与するために使用されてきた高比重のハロゲン化ゴムを使用する必要がなく、使用する場合にも使用量の低減が可能である。これによってタイヤの軽量化が可能であり燃費が向上する。
【0026】
SIBSの分子量は特に制限はないが、流動性、成形化工程、ゴム弾性などの観点から、GPC測定による重量平均分子量が50,000〜400,000であることが好ましい。重量平均分子量が50,000未満であると引張強度、引張伸びが低下するおそれがあり、400,000を超えると押出加工性が悪くなるおそれがあるため好ましくない。SIBSは耐空気透過性と耐久性をより良好にする観点から、SIBS中のスチレン成分の含有量は10〜30質量%、好ましくは14〜23質量%であることが好ましい。
【0027】
該SIBSは、その共重合体において、各ブロックの重合度は、ゴム弾性と取り扱い(重合度が10,000未満では液状になる)の点からイソブチレンでは10,000〜150,000程度、またスチレンでは5,000〜30,000程度であることが好ましい。
【0028】
SIBSは、一般的なビニル系化合物のリビングカチオン重合法により得ることができ。例えば、特開昭62−48704号公報および特開昭64−62308号公報には、イソブチレンと他のビニル化合物とのリビングカチオン重合が可能であり、ビニル化合物にイソブチレンと他の化合物を用いることでポリイソブチレン系のブロック共重合体を製造できることが開示されている。
【0029】
SIBSは分子内に芳香族以外の二重結合を有していないために、分子内に二重結合を有している重合体、例えばポリブタジエンに比べて紫外線に対する安定性が高く、従って耐候性が良好である。さらに分子内に二重結合を有しておらず、飽和系のゴム状ポリマーであるにも関わらず、波長589nmの光の20℃での屈折率(nD)は、ポリマーハンドブック(1989年:ワイリー(Polymer Handbook, Willy,1989))によると、1.506である。これは他の飽和系のゴム状ポリマー、例えば、エチレン−ブテン共重合体に比べて有意に高い。
【0030】
SIBSからなる第1層の厚さT1は、0.05〜0.6mmである。第1層の厚さが0.05mm未満であると、ポリマー積層体をインナーライナーに適用した生タイヤの加硫時に、第1層がプレス圧力で破れてしまい、得られたタイヤにおいてエアーリーク現象が生じる虞がある。一方、第1層の厚さが0.6mmを超えるとタイヤ重量が増加し、低燃費性能が低下する。第1層の厚さは、さらに0.05〜0.4mmであることが好ましい。第1層は、SIBSを押出成形、カレンダー成形といった熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーをフィルム化する通常の方法によってフィルム化して得ることができる。
【0031】
前記第1層はSIBSを主体とする。即ち、熱可塑性エラストマー成分中にSIBSを90質量%以上含む。ここで熱可塑性エラストマーは、スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマーなどが使用できる。
【0032】
<第2層>
前記第2層は熱可塑性エラストマー組成物であり、熱可塑性エラストマー成分100質量部に対し、(a)粘着付与剤を0.1〜100質量部含むか、または(b)前記スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体を、熱可塑性エラストマー成分の10〜80質量%含むことを特徴とする。
【0033】
前記第2層は、好ましくはスチレン系熱可塑性エラストマー組成物で構成される。ここでスチレン系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントとしてスチレンブロックを含む共重合体をいう。例えば、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(以下、「SIS」ともいう。)、スチレン−イソブチレンブロック共重合体(以下、「SIB」ともいう。)、
スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(以下、「SBS」ともいう。)、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(以下、「SIBS」ともいう。)、スチレン−エチレン・ブテン−スチレンブロック共重合体(以下、「SEBS」ともいう。)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(以下、「SEPS」ともいう。)、スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(以下、「SEEPS」ともいう。)、スチレン−ブタジエン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(以下、「SBBS」ともいう。)がある。
【0034】
また、スチレン系熱可塑性エラストマーは、その分子構造において、エポキシ基を有してもよく、例えば、ダイセル化学工業(株)社製、エポフレンドA1020(重量平均分子量が10万、エポキシ当量が500)のエポキシ変性スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(エポキシ化SBS)を使用できる。
【0035】
第2層に用いられる前記スチレン系熱可塑性エラストマーのうち、特にスチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)およびSIBが好適である。SISのイソプレンブロックはソフトセグメントであるため、SISからなるポリマーフィルムはゴム成分と加硫接着しやすい。したがって、SISからなるポリマーフィルムをインナーライナーに用いた場合、該インナーライナーは、たとえばカーカスプライのゴム層との接着性に優れているため、耐久性に優れた空気入りタイヤを得ることができる。
【0036】
前記SISの分子量は特に制限はないが、ゴム弾性および成形性の観点から、GPC測定による重量平均分子量が100,000〜290,000であることが好ましい。重量平均分子量が100,000未満であると引張強度が低下するおそれがあり、290,000を超えると押出加工性が悪くなるため好ましくない。SIS中のスチレン成分の含有量は、粘着性、接着性およびゴム弾性の観点から10〜30質量%が好ましい。
【0037】
本発明において、SISにおける、各ブロックの重合度は、ゴム弾性と取り扱いの観点からイソプレンでは500〜5,000程度、またスチレンでは50〜1,500程度であることが好ましい。
【0038】
前記SISは、一般的なビニル系化合物の重合法により得ることができ、例えば、リビングカチオン重合法により得ることができる。SIS層は、SISを押出成形、カレンダー成形といった熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーをフィルム化する通常の方法によってフィルム化して得ることができる。
【0039】
スチレン−イソブチレンブロック共重合体(SIB)のイソブチレンブロックはソフトセグメントであるため、SIBからなるポリマーフィルムはゴム成分と加硫接着しやすい。したがって、SIBからなるポリマーフィルムをインナーライナーに用いた場合、該インナーライナーは、たとえばカーカスやインスレーションを形成する隣接ゴムとの接着性に優れているため、耐久性に優れた空気入りタイヤを得ることができる。
【0040】
SIBとしては、直鎖状のものを用いることがゴム弾性および接着性の観点から好ましい。SIBの分子量は特に制限はないが、ゴム弾性および成形性の観点から、GPC測定による重量平均分子量が40,000〜120,000であることが好ましい。重量平均分子量が40,000未満であると引張強度が低下するおそれがあり、120,000を超えると押出加工性が悪くなるおそれがあるため好ましくない。
【0041】
SIB中のスチレン成分の含有量は、粘着性、接着性およびゴム弾性の観点から10〜35質量%であることが好ましい。
【0042】
本発明において、SIBにおける、各ブロックの重合度は、ゴム弾性と取り扱いの観点からイソブチレンでは300〜3,000程度、またスチレンでは10〜1,500程度であることが好ましい。
【0043】
前記SIBは、一般的なビニル系化合物のリビング重合法により得ることができ、例えば、攪拌機にメチルシクロヘキサン、n−ブチルクロライド、クミルクロライドを加え、−70℃に冷却した後、2時間反応させ、その後に大量のメタノールを添加して反応を停止させ、60℃で真空乾燥してSIBを製造できる。
【0044】
SIB層は、SIBを押出成形またはカレンダー成形などのスチレン系熱可塑性エラストマーをフィルム化する通常の方法によって成型できる。第2層の厚さは、0.01mm〜0.3mmが好ましい。ここで第2層の厚さとは、例えば第2層がSIS層、SIBなどの1層のみからなる場合は、その厚さをいう。一方、第2層が例えば、SIS層およびSIB層などを含む2層あるいは3層の場合は、これらの層の合計の厚さを意味する。第2層の厚さが0.01mm未満であると、ポリマー積層体をインナーライナーに適用した生タイヤの加硫時に、第2層がプレス圧力で破れてしまい、加硫接着力が低下する虞がある。一方、第2層の厚さが0.3mmを超えるとタイヤ重量が増加し低燃費性能が低下する可能性がある。第2層の厚さは、さらに0.05〜0.2mmであることが好ましい。
【0045】
なお、第2層はSIS層とSIB層の複合層で構成されることが好ましいが、第1層とSIS層の間、第1層とSIB層の間またはSIS層とSIB層の間に、さらに第3層として、ウレタンゴム、シリコーンゴムよりなるフィルムを配置することができる。
【0046】
<SIBS混合物>
本発明では第2層をスチレン系熱可塑性エラストマーとSIBSの混合物、特に、SISとSIBSの混合物層、またはSIBとSIBSの混合物で構成することができる。この場合、SIBSの配合量は、熱可塑性エラストマー成分の10〜80質量%、好ましくは30〜70質量%の範囲で調整される。SIBSが10質量%より少ないと第1層との接着性が低下し、SIBSが80質量%を超えるとカーカスプライとの接着性が低下する傾向がある。
【0047】
<粘着付与剤>
本発明において第1層及び第2層の少なくともいずれかは、熱可塑性エラストマー100質量に対し、粘着付与剤が0.1〜100質量部は配合される。ここで「粘着付与剤」とは、熱可塑性エラストマー組成物の粘着性を増進するための添加剤をいい、例えば、次の粘着付与剤が例示される。また粘着付与剤は、重量平均分子量Mwが、1×102〜1×106で、軟化点が50℃〜150℃の範囲であることが望ましい。重量平均分子量が1×102未満の場合、粘度が低くなり、シートの成形性が不利となり、一方、1×106を超えると、第1層及び第2層への粘着性付与が十分でなくなる。
【0048】
[C9石油樹脂]
C9石油樹脂とは、ナフサを熱分解して、エチレン、プロピレン、ブタジエンなどの有用な化合物を得ているが、それらを取り去った残りのC5〜C9留分(主としてC9留分)を混合状態のまま重合して得られた芳香族石油樹脂である。例えば、商品名として、アルコンP70、P90、P100、P125、P140、M90、M100、M115、M135(いずれも、荒川化学工業(株)社製、軟化点70〜145℃)、またアイマーブS100、S110、P100、P125、P140(いずれも出光石油化学(株)製、芳香族共重合系水添石油樹脂、軟化点100〜140℃、重量平均分子量700〜900、臭素価2.0〜6.0g/100g)、さらに、ペトコールXL(東ソー(株)製)がある。
【0049】
[C5石油樹脂]
C5石油樹脂とは、ナフサを熱分解して、エチレン、プロピレンやブタジエンなどの有用な化合物を得ているが、それらを取り去った残りのC4〜C5留分(主としてC5留分)を混合状態のまま重合して、得られた脂肪族石油樹脂である。商品名として、ハイレッツG100(三井石油化学(株)製、軟化点が100℃)、またマルカレッツT100AS(丸善石油(株)製、軟化点100℃)、さらにエスコレッツ1102(トーネックス(株)製、軟化点が110℃)がある。
【0050】
[テルペン樹脂]
商品名として、YSレジンPX800N、PX1000、PX1150、PX1250、PXN1150N、クリアロンP85、P105、P115、P125、P135、P150、M105、M115、K100(いずれもヤスハラケミカル(株)製、軟化点は75〜160℃)がある。
【0051】
[芳香族変性テルペン樹脂]
商品名として、YSレジンTO85、TO105、TO115、TO125(いずれもヤスハラケミカル(株)製、軟化点75〜165℃)がある。
【0052】
[テルペンフェノール樹脂]
商品名として、タマノル803L、901(荒川化学工業(株)製、軟化点120℃〜160℃)、またYSポリスターU115、U130、T80、T100、T115、T145、T160(いずれもヤスハラケミカル(株)製、軟化点75〜165℃)がある。
【0053】
[クマロン樹脂]
軟化点90℃のクマロン樹脂(神戸油化学工業(株)製)がある。
【0054】
[クマロンインデンオイル]
商品名として、15E(神戸油化学工業(株)製、流動点15℃)がある。
【0055】
[ロジンエステル]
商品名として、エステルガムAAL、A、AAV、105、AT、H、HP、HD(いずれも荒川化学工業(株)製、軟化点68℃〜110℃)、またハリエスターTF、S、C、DS70L、DS90、DS130(いずれもハリマ化成(株)製、軟化点68℃〜138℃)がある。
【0056】
[水添ロジンエステル]
商品名として、スーパーエステルA75、A100、A115、A125(いずれも荒川化学工業(株)製、軟化点70℃〜130℃)がある。
【0057】
[アルキルフェノール樹脂]
商品名として、タマノル510(荒川化学工業(株)製、軟化点75℃〜95℃)がある。
【0058】
[DCPD]
商品名として、エスコレッツ5300(トーネックス(株)製、軟化点105℃)がある。
【0059】
粘着付与剤は、C9石油樹脂の完全水添系石油樹脂がSIBと相溶性がよく、またガスバリア性も低下することなく、接着性を高めることができる。また粘度も下げる効果もあり、フィルム押出成形にも有利に使用できる。
【0060】
前記粘着付与剤は、第1層の熱可塑性エラストマー100質量部に対して、0.1〜100質量部、好ましくは、1〜50質量部の範囲で配合される。粘着付与剤が0.1質量部未満の場合は、第2層との加硫接着力が十分でなく、一方、100質量部を超えると粘着性が高くなりすぎて、加工性、生産性を低下し、更にガスバリア性が低下することになる。
【0061】
第2層は、タイヤ内側の第1層とカーカスプライの間に配置され、これら両者との接着性が要求される。そこで前記粘着付与剤は、第2層の熱可塑性エラストマー100質量部に対して、0.1〜100質量部、好ましくは、1〜50質量部の範囲で配合される。粘着付与剤が0.1質量部未満の場合は、第1層との加硫接着力が十分でなく、一方、100質量部を超えると粘着性が高くなりすぎて、加工性、生産性を低下し、更にガスバリア性が低下することになる。
【0062】
<ポリマー積層体>
本発明において、インナーライナーは前記第1層と第2層で構成されるポリマー積層体が使用される。ここで第1層、第2層は熱可塑性エラストマーの組成物であり、加硫温度、例えば150℃〜180℃において、金型中で軟化状態にある。軟化状態とは分子運動性が向上し固体と液体の中間状態を意味する。また、熱可塑性エラストマー組成物は軟化状態では隣接する部材と粘着、接着しやすい。そのため、熱可塑性エラストマーの形状変化や隣接部材との粘着、融着を防止するために、タイヤの製造の際には、冷却工程を必要とする。冷却工程は、タイヤ加硫後に、10〜300秒間、50〜120℃に急冷し、ブラダー内を冷却する。冷却媒体としては、空気、水蒸気、水およびオイルより選択される1種以上が使用される。かかる冷却工程を採用することで、インナーライナーを0.05〜0.6mmの範囲の薄いインナーライナーを形成することができる。
【0063】
次に、インナーライナーの加硫タイヤにおけるカーカスプライとの配置状態を図2において例示する。図2(a)において、ポリマー積層体PLは、第1層としてのSIBS層PL1および第2層としてのSIS層PL2から構成される。該ポリマー積層体PLを空気入りタイヤのインナーライナーに適用する場合、SIS層PL2がカーカスプライ61に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて設置すると、タイヤの加硫工程において、SIS層PL2とカーカス61との接着強度を高めることができる。したがって得られた空気入りタイヤは、インナーライナーとカーカスプライ61のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
【0064】
図2(b)において、ポリマー積層体PLは、第1層としてのSIBS層PL1および第2層としてのSIB層PL3から構成される。該ポリマー積層体PLを空気入りタイヤのインナーライナーに適用する場合、SIB層PL3の面を、カーカスプライ61に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて設置すると、タイヤの加硫工程において、SIB層PL3とカーカス61との接着強度を高めることができる。したがって得られた空気入りタイヤは、インナーライナーとカーカスプライ61のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
【0065】
図2(c)において、ポリマー積層体PLは、第1層としてのSIBS層PL1、第2層としてのSIS層PL2およびSIB層PL3が前記の順に積層されて構成される。該ポリマー積層体PLを空気入りタイヤのインナーライナーに適用する場合、SIB層PL3の面を、カーカスプライ61に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて設置すると、タイヤの加硫工程において、SIB層PL3とカーカスプライ61との接着強度を高めることができる。したがって得られた空気入りタイヤは、インナーライナーとカーカスプライ61のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
【0066】
図2(d)において、ポリマー積層体PLは、第1層としてのSIBS層PL1、第2層としてのSIB層PL3およびSIS層PL2が前記の順に積層されて構成される。該ポリマー積層体PLを空気入りタイヤのインナーライナーに適用する場合、SIS層PL2の面を、カーカスプライ61に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて設置すると、タイヤの加硫工程において、SIS層PL2とカーカスプライ61との接着強度を高めることができる。したがってインナーライナーとカーカスプライ61のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
【0067】
<空気入りタイヤの製造方法>
本発明の空気入りタイヤは、一般的な製造方法を用いることができる。前記ポリマー積層体PLを用いてストリップを製造し、前述の方法でインナンーライナーを製造する。空気入りタイヤ1の生タイヤに前記インナーライナーを適用して他の部材とともに加硫成形することによって製造することができる。ポリマー積層体PLを生タイヤに配置する際は、ポリマー積層体PLの第2層であるSIS層PL2またはSIB層PL3が、カーカスプライ61に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて配置する。このように配置すると、タイヤ加硫工程において、スチレン系熱可塑性エラストマー組成物よりなる第2層、例えばSIS層PL2またはSIB層PL3とカーカス6との接着強度を高めることができる。得られた空気入りタイヤは、インナーライナーとカーカスプライ61のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
【実施例】
【0068】
<ポリマー積層体>
本発明の第1層および第2層よりなるポリマー積層体の製造に用いた熱可塑性エラストマー(SIB、SIBSおよびSIS)は以下のとおり調整した。
【0069】
[SIB]
攪拌機付き2L反応容器に、メチルシクロヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)589mL、n−ブチルクロライド(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)613ml、クミルクロライド0.550gを加えた。反応容器を−70℃に冷却した後、α−ピコリン(2−メチルピリジン)0.35mL、イソブチレン179mLを添加した。さらに四塩化チタン9.4mLを加えて重合を開始し、−70℃で溶液を攪拌しながら2.0時間反応させた。次に反応容器にスチレン59mLを添加し、さらに60分間反応を続けた後、大量のメタノールを添加して反応を停止させた。反応溶液から溶剤などを除去した後に、重合体をトルエンに溶解して2回水洗した。このトルエン溶液をメタノール混合物に加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間乾燥することによりスチレン−イソブチレンジブロック共重合体を得た(スチレン成分含有量:15質量%、
重量平均分子量:70,000)。
【0070】
[SIBS]
カネカ(株)社製の「シブスターSIBSTAR 102(ショアA硬度25、スチレン成分含有量25質量%、重量平均分子量:100,000)」を用いた。
【0071】
[SIS]
クレイトンポリマー社製のD1161JP(スチレン成分含有量15質量%、重量平均分子量:150,000)を用いた。
【0072】
<インナーライナーの製造方法>
上記、SIBS、SISおよびSIBなどのスチレン系熱可塑性エラストマーを、2軸押出機(スクリュ径:φ50mm、L/D:30、シリンダ温度:220℃)にてペレット化した。その後、Tダイ押出機(スクリュ径:φ80mm、L/D:50、ダイリップ幅:500mm、シリンダ温度:220℃、フィルムゲージ:0.3mm)にてインナーライナーを作製した。
【0073】
<空気入りタイヤの製造>
空気入りタイヤは、図1に示す基本構造を有する195/65R15サイズのものに、上記ポリマー積層体をインナーライナーに用いて生タイヤを製造し、次に加硫工程において、170℃で20分間プレス加硫を行った。そしてタイヤを加硫金型から取り出すことなく、100℃で3分間冷却した後、加硫金型から取り出した。冷却媒体としては水を使用した。かかる冷却工程を採用することで、インナーライナーを0.3mmの薄いフィルムでインナーライナーを製造することができた。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【0077】
【表4】

【0078】
(注1) 粘着付与剤A:C9石油樹脂、アルコンP140(荒川化学工業(株)社製、軟化点140℃、重量平均分子量Mw:900)。
(注2) 粘着付与剤B:テルペン樹脂、YSレジンPX1250(ヤスハラケミカル(株)製、軟化点は125℃、重量平均分子量Mw:700)。
(注3) 粘着付与剤C:水添ロジンエステル、スーパーエステルA125(荒川化学工業(株)製、軟化点125℃、重量平均分子量Mw:700)。
【0079】
<比較例1〜4、実施例1〜16>
比較例1、2は、第1層および第2層のいずれにも粘着付与剤を配合しない例、比較例3は、第2層に粘着付与剤を0.05質量部配合した例、比較例4は、第2層に粘着付与剤を110質量部配合した例である。実施例1〜4は、第2層にSIBSを含む例であり、実施例5〜10は、第2層に粘着付与剤を配合した例である。そして、実施例11〜16は、第2層にSIBSと粘着付与剤を併用した例である。
【0080】
実施例1〜16は、比較例1に比べいずれも加硫接着力、屈曲亀裂成長性、転がり抵抗変化率および静的空気低下率が優れている。
【0081】
<比較例5、比較例6、実施例17〜24>
比較例5は第1層に粘着付与剤を0.05質量部配合した例であり、比較例6は第1層に粘着付与剤を110質量部配合した例である。実施例17、18は、第1層に粘着付与剤を配合した例、実施例19,20は第1層に粘着付与剤を配合し、第2層にSIBSを配合した例、実施例21〜26は第1層、第2層に粘着付与剤を配合した例、実施例27〜32は、第1層に粘着付与剤を配合し、第2層に粘着付与剤とSIBSを配合した例である。
【0082】
実施例17〜32は、粘着付与剤の所定量を第1層若しくは第2層に配合したため、比較例5、6に比べ加硫接着力、屈曲亀裂成長性、転がり抵抗変化率および静的空気低下率が総合的に優れている。
【0083】
<性能試験>
前述の如く製造された空気入りタイヤに関し、以下の性能評価をおこなった。
【0084】
<加硫接着力>
第1層とカーカスプライ層および第1層と第2層の未加硫ゴムシートを張り合わせて170℃×20分で加硫し、加硫接着力測定用のサンプルを作製する。引張試験機により剥離力を測定することで加硫接着力とした。下記計算式により、比較例1を基準として各配合の加硫接着力を指数で表示した。なお加硫接着力の指数が大きいほど、加硫接着力が高いことを示す。
【0085】
加硫接着力の指数=(各配合の加硫接着力)/(比較例1の加硫接着力)×100
<屈曲亀裂成長試験>
耐久走行試験は、インナーライナーが割れたり剥がれたりするかどうかで評価した。試作タイヤをJIS規格リム15×6JJに組み付け、タイヤ内圧は150KPaで通常よりも低内圧に設定し、荷重は600kg、速度100km/h、走行距離20,000kmでタイヤの内部を観察し、亀裂、剥離の数を測定した。比較例1を基準として、各配合の亀裂成長性を指数で表示した。指数の値が大きいほど、屈曲亀裂成長が小さいことを示す。
【0086】
屈曲亀裂成長指数=(比較例1の亀裂の数)/(各配合の亀裂の数)×100
<転がり抵抗指数>
(株)神戸製鋼所製の転がり抵抗試験機を用いて、試作タイヤをJIS規格リム15×6JJに組み付け、荷重3.4kN、空気圧230kPa、速度80km/hの条件で、室温(30℃)にて走行させて転がり抵抗を測定した。そして、下記の計算式に基づき比較例1を基準100として、実施例の転がり抵抗変化率(%)を指数で表示した。転がり抵抗変化率が大きいほど、転がり抵抗が低減されていることを示す。
【0087】
転がり抵抗指数=(比較例1の転がり抵抗/実施例の転がり抵抗)×100
<静的空気圧低下率試験>
試作タイヤをJIS規格リム15×6JJに組み付け、初期空気圧300kPaを封入し、90日間室温で放置して空気圧の低下率を計算した。数値が小さいほど空気圧が減りにくい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用空気入りタイヤ、トラック・バス用タイヤ、軽トラック用タイヤ、更に重車両用空気入りタイヤに適用できる。
【符号の説明】
【0089】
1 空気入りタイヤ、2 トレッド部、3 サイドウォール部、4 ビード部、5 ビードコア、6 カーカスプライ、7 ベルト層、8 ビードエーペックス、9 インナーライナー、PL ポリマー積層体、PL1 SIBS層、PL2 SIS層、PL3 SIB層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビード部の間に装架されたカーカスプライのタイヤ内側にインナーライナーを備えた空気入りタイヤであって、
前記インナーライナーは、タイヤ内側に配置される第1層と、前記カーカスプライのゴム層と接するように配置される第2層で構成されており、
前記第1層は、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体を主体とする熱可塑性エラストマー組成物で、前記第2層はスチレン系熱可塑性エラストマー組成物であり、
(a)前記第1層および第2層の少なくともいずれかの熱可塑性エラストマー組成物は、前記熱可塑性エラストマー100質量部に対して、粘着付与剤を0.1〜100質量部含むか、または
(b)前記第2層は、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体を、熱可塑性エラストマー成分の10〜80質量%含む
ことを特徴とする前記空気入りタイヤ。
【請求項2】
粘着付与剤は、重量平均分子量Mwが、1×102 〜1×106で、軟化点が50℃〜150℃の範囲である請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第2層は、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体の少なくともいずれかを含む熱可塑性エラストマー組成物である請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第2層の熱可塑性エラストマーは、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体を5〜90質量%含む請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
第1層の厚さは0.05mm〜0.6mmであり、第2層の厚さは0.01mm〜0.3mmである請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体はスチレン成分含有量が10〜30質量%であり、重量平均分子量が50,000〜400,000である請求項1〜5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体は、スチレン成分含有量が10〜30質量%であり、重量平均分子量が100,000〜290,000である請求項1〜6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記スチレン−イソブチレンブロック共重合体は直鎖状であり、スチレン成分含有量が10〜35質量%であり、重量平均分子量が40,000〜120,000である請求項1〜6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−96660(P2012−96660A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246017(P2010−246017)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】