説明

空気入りタイヤ

【課題】周方向ベルト層を幅広化した構造においても、周方向ベルト層が配置されていないトレッドショルダ端では偏摩耗の発生が避けられず、周方向ベルト層は、高い剛性を有していることから、トレッドにおけるショルダとセンタの摩耗バランスが悪くなり、トレッドに偏摩耗が発生する要因となる。
【解決手段】カーカス11のタイヤ径方向外側の、タイヤ幅方向端部では二層以上とする、少なくとも一層の周方向ベルト層15と、周方向ベルト層15のタイヤ径方向外側の、二層以上の、ベルトコードのタイヤ赤道方向に対する傾斜角度を40度以下とする傾斜ベルト層17と、傾斜ベルト層17のタイヤ幅方向端部の隣接する層間に設けた、傾斜ベルト層17のコーティングゴムより100%伸張時モヂュラスが小さい間クッションゴム19と、傾斜ベルト層17のタイヤ径方向外側のトレッド13とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気入りタイヤに関し、特に、タイヤ形状を保持するための周方向ベルト層を採用した、トラック・バスに用いるのに適した重荷重用の空気入りラジアルタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カーカスのタイヤ径方向外側に層状にタイヤ周方向に沿って装着された周方向ベルト層を採用している重荷重用ラジアルタイヤ、例えば、超扁平のトラック・バス用ラジアルタイヤ(Truck・Bus Radial Tire:TBR)等の空気入りタイヤが知られている。
【0003】
近年、大型トラックやバスにおいては、車両の低燃費化及び軽量化のためにタイヤのシングル装着構造を採用する例が多くなっており、このシングル装着構造に対応して、タイヤの低扁平率化及びトレッドベースの広幅化が進んでいる。一般に、低扁平率の空気入りタイヤは、ベルトを、一対の傾斜ベルト層とタイヤ周方向補強のための周方向ベルト層により構成しており、これによって、高い内圧負荷時においてタイヤ形状を保持し、また、車両走行時における耐遠心力性及び耐発熱性を向上させ、もって、タイヤ耐久性の向上を図っている。
【0004】
このタイヤ周方向を強化する周方向ベルト層を用いたタイヤとして、波状に癖付けしたウェービー(WAVY)コードを用いたベルト構造を適用した、例えば、「空気入りタイヤ」(特許文献1参照)がある。
このように、タイヤの低扁平率化に伴うタイヤ形状保持の観点から、また、タイヤへの負荷加重が年々増大する傾向にあってタイヤ耐久性を確保するために、現今、ウェービーコードやハイエロンゲーションコード等からなる周方向ベルト層を用いることが必要不可欠になっている。
【0005】
ところで、低扁平率の空気入りタイヤにおいては、周方向ベルト層が配置されていないトレッドショルダに偏摩耗が発生する事例が多く出ているため、周方向ベルト層のベルト幅を広くすることによって、偏摩耗発生の抑制を図っている。また、タイヤの耐摩耗性の要求を満足するためには、ベルトコードがタイヤ赤道に対して傾斜配置された傾斜ベルト層が必要になるが、この傾斜ベルト層は、タイヤ幅方向長さがタイヤの耐摩耗性を決定付けるため、タイヤ幅に対する割合が一定以上のベルト幅を有する必要があり、その上、上下層のベルトコードが互いに交錯している必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−201147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、周方向ベルト層を幅広化した構造においても、ショルダ端までベルト幅を広くすることは、ベルト幅を広くしたことによるタイヤ幅方向端部における耐久性の向上を必要とし、それに伴う製造工程における対応を必要とすることから難しく、ショルダ端までベルト幅を広くすることができない場合、周方向ベルト層が配置されていないショルダ端では偏摩耗の発生が避けられない。
【0008】
また、主に、タイヤ形状保持の目的で低扁平率の空気入りタイヤに適用される周方向ベルト層は、高いベルト剛性を有していることから荷重付加時の偏芯効果が大きく、そのため、トレッドの荷重付加部位は接地長が短くなり、結果的に荷重付加部位での接地圧の上昇を招く。この接地圧の上昇により、トレッドゴムが圧縮変形を受けてトレッドゴムの変形が大きくなり、トレッドセンタ(タイヤ赤道)での摩耗速度が速くなる。
【0009】
その一方で、トレッドショルダの摩耗速度はトレッドセンタに比べて遅いため、トレッドにおけるショルダとセンタの摩耗バランスが悪くなり、ショルダの方が摩耗量が多くなる偏摩耗が発生する要因となる。
この発明の目的は、トレッドにおける耐久性の向上と偏摩耗発生の抑制を両立させることができる、周方向ベルト層を有する空気入りタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、この発明に係る空気入りタイヤは、タイヤの骨格を構成するカーカスのタイヤ径方向外側に設けた、タイヤ幅方向端部では二層以上とする、少なくとも一層の、タイヤ周方向に沿って延在する周方向ベルト層と、前記周方向ベルト層のタイヤ径方向外側に設けた、二層以上の、ベルトコードのタイヤ赤道方向に対する傾斜角度を40度以下とする傾斜ベルト層と、前記傾斜ベルト層のタイヤ幅方向端部の隣接する層間に設けた、前記傾斜ベルト層のコーティングゴムより100%伸張時モヂュラスが小さい間クッションゴムと、前記傾斜ベルト層のタイヤ径方向外側に設けた、トレッドとを有することを特徴としている。
【0011】
また、この発明の他の態様に係る空気入りタイヤは、前記周方向ベルト層のベルト幅が、タイヤ幅の70%以上から90%以下の範囲に形成されていることを特徴としている。
また、この発明の他の態様に係る空気入りタイヤは、前記周方向ベルト層のタイヤ幅方向端部の前記傾斜ベルト層との層間に設けた、100%伸張時モヂュラスが前記間クッションゴムより小さい層間ゴムを有することを特徴としている。
【0012】
また、この発明の他の態様に係る空気入りタイヤは、前記間クッションゴムは、100%伸張時モヂュラスが6.5MPa以下であることを特徴としている。
また、この発明の他の態様に係る空気入りタイヤは、前記周方向ベルト層のタイヤ径方向内側で前記カーカスのタイヤ径方向外側に、少なくとも一層の、ベルトコードをタイヤ赤道方向に対して傾斜配置した傾斜ベルト層を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係る空気入りタイヤによれば、タイヤ幅方向端部では二層以上とする、少なくとも一層の、タイヤ周方向に沿って延在する周方向ベルト層により、軽量化を図りつつ、二層以上の、ベルトコードのタイヤ赤道方向に対する傾斜角度を40度以下とする傾斜ベルト層により、傾斜ベルト層に張力保持効果を持たせ、傾斜ベルト層のタイヤ幅方向端部の隣接する層間に設けた、傾斜ベルト層のコーティングゴムより100%伸張時モヂュラスが小さい間クッションゴムにより、傾斜ベルト層17をタイヤ周方向に立てたことによって層間端部に発生しがちな歪の発生を抑制することができる。
【0014】
また、この発明の他の態様に係る空気入りタイヤによれば、周方向ベルト層のベルト幅が、タイヤ幅の70%以上から90%以下の範囲に形成されていることにより、トレッドショルダの接地圧を向上させてトレッドゴムの押し出し成分を増大させることで、偏摩耗性能を向上させることができる。
また、この発明の他の態様に係る空気入りタイヤによれば、周方向ベルト層のタイヤ幅方向端部の傾斜ベルト層との層間に設けた、100%伸張時モヂュラスが間クッションゴムより小さい層間ゴムにより、周方向ベルト層のベルト端部での層間剪断歪を効果的に低減させることになり、ベルトセパレーションに対する耐久性を向上させることができる。
【0015】
また、この発明の他の態様に係る空気入りタイヤによれば、間クッションゴムは、100%伸張時モヂュラスが6.5MPa以下であることにより、傾斜ベルト層間のせん断歪を低くすることができる。
また、この発明の他の態様に係る空気入りタイヤによれば、周方向ベルト層のタイヤ径方向内側でカーカスのタイヤ径方向外側に、少なくとも一層の、ベルトコードをタイヤ赤道方向に対して傾斜配置した傾斜ベルト層を有することにより、転動時のタイヤへの突起入力に対する耐久力が向上し、タイヤの突起物等の乗り越し性能(耐バースト性)を飛躍的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の一実施の形態に係る空気入りタイヤの構成を模式的に示す、タイヤ赤道を境とするタイヤ幅方向一方の側のタイヤ幅方向に沿う断面図である。
【図2】図1の空気入りタイヤの他の例の構成を模式的に示す、タイヤ赤道を境とするタイヤ幅方向一方の側のタイヤ幅方向に沿う断面図である。
【図3】図1の空気入りタイヤの更に他の例の構成を模式的に示す、タイヤ赤道を境とするタイヤ幅方向一方の側のタイヤ幅方向に沿う断面図である。
【図4】従来の空気入りタイヤ(従来例)のベルト構造を概念的に示す、図1と同様の断面説明図である。
【図5】参考例1の空気入りタイヤのベルト構造を概念的に示す、図1と同様の断面説明図である。
【図6】参考例2の空気入りタイヤのベルト構造を概念的に示す、図1と同様の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
図1は、この発明の一実施の形態に係る空気入りタイヤの構成を模式的に示す、タイヤ赤道を境とするタイヤ幅方向一方の側のタイヤ幅方向に沿う断面図である。なお、以下の説明は、タイヤ赤道を境とするタイヤ幅方向一方の半分側について行い、同様の構成を有するタイヤ幅方向他方の半分側については説明を省略する。
【0018】
図1に示すように、空気入りタイヤ10は、例えば、トラック・バス用ラジアルタイヤ(TBR)等の超扁平の重荷重用ラジアルタイヤであり、タイヤの骨格を構成するカーカス11、カーカス11のタイヤ径方向外側に位置するベルト12、ベルト12のタイヤ径方向外側に位置するトレッド13、及びトレッド13に続いてカーカス11のタイヤ幅方向外側に位置するサイドウォール14を有している。
カーカス11は、環状構造を有する左右一対のビードコア(図示しない)間に、トロイダル状に架け渡されている。
【0019】
ベルト12は、少なくとも一層の周方向ベルト層15と、周方向ベルト層15が一層の場合に設けられる端部周方向ベルト層16と、二層以上の傾斜ベルト層17とが、記載順にカーカス11のタイヤ径方向外側に配置された積層構造を有している。また、周方向ベルト層15と傾斜ベルト層17の層間には、層間ゴム18が配置され、傾斜ベルト層17の層間には、間クッションゴム19が配置されている。ここでは、一例として、周方向ベルト層15が一層、端部周方向ベルト層16が一層、傾斜ベルト層17が二層(17a,17b)の場合について説明する。これらベルト層は、例えば、スチール繊維材或いは有機繊維材からなる複数のベルトコードを圧延加工することにより形成される。
【0020】
周方向ベルト層15は、タイヤ幅方向に沿うベルト幅が、タイヤ幅の70%以上から90%以下の範囲、好ましくは75%以上に形成されている。また、周方向ベルト層15のタイヤ幅方向端部が、傾斜ベルト層17(即ち、ベルト幅が傾斜ベルト層17の中で一番広い傾斜ベルト層17a)のタイヤ幅方向端部からタイヤ幅方向内側に5mmから20mm以内に位置するように配置されている。上記構成は、周方向ベルト層が複数ある場合、全ての周方向ベルト層について適用される。
端部周方向ベルト層16は、周方向ベルト層15のタイヤ径方向外側のタイヤ幅方向端部域、即ち、周方向ベルト層15のタイヤ幅方向端部からタイヤ幅方向中心(C.L)であるタイヤ赤道側に20mm以上、80mm以内の領域、を占めるように配置されている。
【0021】
従って、トレッド13のタイヤ幅方向において、周方向ベルト層15のタイヤ幅方向端部からタイヤ赤道(C.L)側に80mm以内の領域、所謂、トレッドショルダ(タイヤ幅方向端部)では、周方向ベルト層15と端部周方向ベルト層16の二層構造となり、両トレッドショルダに挟まれた、所謂、トレッドセンタでは、周方向ベルト層15のみの一層構造となる。これにより、トレッド13のタイヤ幅方向端部域(トレッドショルダ)における偏摩耗の発生を抑制することができる。
なお、タイヤ幅方向に沿う断面構造において、周方向ベルト層15のタイヤ幅方向端部位置を示す線を、周方向ベルト層端部線Lとする。
【0022】
周方向ベルト層15及び端部周方向ベルト層16は、同一構成のベルト層からなり、ベルトコードの繊維方向がタイヤ周方向に対し略平行に、即ち、タイヤ赤道(C.L)に対し、例えば、1度から2度の傾斜角度を有して配置されており、非伸張性の直線コード若しくは非伸張性のコードを波状に癖付けしたウェービー(WAVY)コード、或いは金属性弾性コードであるハイエロンゲーションコード等を用い、コードをゴム皮膜した狭幅のストリップをタイヤ周方向に螺旋巻回して形成することが望ましい。
【0023】
傾斜ベルト層17(17a,17b)は、ベルトコードがタイヤ周方向に立った状態、即ち、ベルトコードの繊維方向がタイヤ周方向(タイヤ赤道)に対し10度以上から40度以下の範囲の角度(ハイアングル)で傾斜配置されており、二層以上の傾斜ベルト層17の各層は、ベルトコードの繊維方向をタイヤ赤道(C.L)に対して相互に異なる方向(右上がり或いは左上がり)に傾斜させ、上下層において交錯するように積層されている。
【0024】
周方向ベルト層15に隣接する傾斜ベルト層(この例では、傾斜ベルト層17a)のベルト幅は、タイヤ幅の75%以上から90%以下の範囲、好ましくは80%以上とし、傾斜ベルト層17aのタイヤ径方向外側に積層された傾斜ベルト層(この例では、傾斜ベルト層17b)のベルト幅は、タイヤ幅の55%以上から85%以下の範囲、好ましくは70%以上としている。
【0025】
つまり、周方向ベルト層15に隣接する傾斜ベルト層(この例では、傾斜ベルト層17a)のベルト幅は、周方向ベルト層15のベルト幅より広く(その差が5mm以上、30mm以下)形成され、周方向ベルト層15に隣接する傾斜ベルト層のタイヤ径方向外側に積層された傾斜ベルト層(この例では、傾斜ベルト層17b)のベルト幅は、周方向ベルト層15に隣接する傾斜ベルト層(この例では、傾斜ベルト層17a)のベルト幅より狭く、周方向ベルト層17のベルト幅と略同じに形成されている。
【0026】
層間ゴム18は、周方向ベルト層15のタイヤ幅方向端部と、周方向ベルト層15に隣接する傾斜ベルト層(この例では、傾斜ベルト層17a)の層間に配置されており、JIS K6251に準拠する方法で測定した100%伸張時モデュラス(Mod.)が、1.5MPa以上、5.0MPa以下のゴム部材により形成されている。
この層間ゴム18は、周方向ベルト層17側、即ち、タイヤ径方向内側が、タイヤ幅方向のタイヤ赤道(C.L)から端部側に向かって層間厚み(ゲージ:Ga.)が増大する傾斜面からなる、タイヤ幅方向に沿う断面が楔形状に形成されている。
【0027】
そして、層間ゴム18が配置される、端部周方向ベルト層16のタイヤ幅方向端部のベルトコード上面と、端部周方向ベルト層16に隣接する傾斜ベルト層(この例では、傾斜ベルト層17a)のタイヤ幅方向端部のベルトコード下面との、最大層間厚み(タイヤ幅方向端部における層間厚み)は、3.0mm以上確保されていると共に、厚みがタイヤ幅方向端部から内側に向かって漸減するように形成されている。
【0028】
間クッションゴム19は、周方向ベルト層15のタイヤ径方向外側に隣接して配置された傾斜ベルト層(この例では、傾斜ベルト層17a)のタイヤ幅方向端部と、この傾斜ベルト層(この例では、傾斜ベルト層17a)のタイヤ径方向外側に隣接して配置された傾斜ベルト層(この例では、傾斜ベルト層17b)の層間に配置されている。この間クッションゴム19は、JIS K6251に準拠する方法で測定した100%伸張時モデュラス(Mod.)が、傾斜ベルト層17のコーティングゴムより小さく、層間ゴム18に比べて大きい、例えば、2MPa〜6.5MPaの範囲のゴム部材により形成されている。
【0029】
また、間クッションゴム19は、周方向ベルト層15のタイヤ径方向外側に隣接して配置された傾斜ベルト層(この例では、傾斜ベルト層17a)側を底辺とし、周方向ベルト層端部線L上を頂点とする、タイヤ幅方向に沿う断面が略二等辺三角形状に形成されている。従って、間クッションゴム19のタイヤ径方向外側に配置された傾斜ベルト層(この例では、傾斜ベルト層17b)のタイヤ幅方向端部側は、間クッションゴム19の斜辺に沿ってタイヤ径方向外側へと屈曲している。
【0030】
トレッド13は、硬質ゴムのキャップゴム(上層、即ち、タイヤ径方向外側部分)13aと軟質ゴムのベースゴム(下層)13bからなる二層構造とする、キャップアンドベース(CAPandBASE)構造を有している。キャップアンドベース構造において、キャップゴム13aとベースゴム13bの弾性率は、キャップゴム13aの方がベースゴム13bより大きく(キャップゴム13a>ベースゴム13b)、ベースゴム13bの層間厚みは、タイヤ幅方向中央(タイヤ赤道)の方がタイヤ幅方向端(トレッドショルダ)より小さく(タイヤ赤道<トレッドショルダ)なるようにしている。
【0031】
また、タイヤ赤道(C.L)におけるベースゴム13bの層間厚み(ベースゲージ)は、0mm以上、3mm以下とし、タイヤ赤道(C.L)とトレッドショルダにおけるベースゴム13bの層間厚み差(ゲージ差)は、3mm以上、8mm以下であることが望ましく、ベースゲージが最大となる領域は、周方向ベルト層端部線Lを中心として、タイヤ幅方向の内側(タイヤ赤道(C.L)側)へ20mm、外側へ20mmの範囲にあることが望ましい。
このように、ベルトを配置することができないトレッドショルダ端部において、キャップゴムとベースゴムの層間方向の分割を適正化することにより、トレッドショルダ端部のトレッドゴムの押し出し量を増大させトレッドショルダ端部まで摩耗性能を向上させることで、偏摩耗を発生させないタイヤとすることができる。
【0032】
上述したように、この発明に係る空気入りタイヤ10のベルト構成において、周方向ベルト層15のベルト幅を、タイヤ幅の70%以上から90%以下の範囲に形成したのは、ベルト幅がタイヤ幅の70%未満ではトレッド面の接地圧分布が不均一となって、周方向ベルト層15が配置されていないトレッド13のタイヤ幅方向外側部分で偏摩耗が発生し、トレッド13が完全に摩耗するまでタイヤを使用することができなくなるからであり、ベルト幅がタイヤ幅の90%を超えると、規定した層間を有していた場合においても、周方向ベルトと傾斜ベルト層間のせん断歪を抑制するのが困難になるからである。
また、ベルト幅が、タイヤ幅の70%未満では、タイヤ形状の維持が困難になりタイヤの耐久性が著しく低下するためである。
また、周方向ベルト層15のタイヤ幅方向端部を、傾斜ベルト層17のタイヤ幅方向端部からタイヤ幅方向内側に5mmから20mm以内に位置させていることで、周方向ベルト層15は、タイヤの荷重接地時に十分な張力を発揮することができるようになり、トレッド中央部からトレッド端部(トレッドショルダ)まで概ね均一な接地圧が発生して、トレッドにおける局所的な接地圧の低下による偏摩耗を抑制することができる。
【0033】
このように、扁平タイヤにおいては、周方向ベルト層15のベルト幅が広いことが必要である。
しかしながら、周方向ベルト層15のベルト幅が広いと、荷重接地時のタイヤ形状の変形により、周方向ベルト層15のタイヤ幅方向端部には大きな層間剪断歪が発生するため、周方向ベルト層15のベルト幅がタイヤ幅の80%以上の場合には、周方向ベルト層15のタイヤ幅方向端部において、3.0mm以上の層間ゲージが必要であり、また、トレッドゴムの、JIS K6251に準拠する方法で測定した100%伸張時モヂュラスも低いことが必要であり、4MPa以下であることが好ましい。
【0034】
ところで、周方向ベルト層15を設けた場合、荷重時にベルト張力が大きくリング剛性が高くなることによって偏芯効果が増加することによるゴム変形の増加が避けられなかったが、ゴムの変形はゴムの弾性率に比例するため、変形の大きい部分を硬くすればゴム変形の増加を抑制することが可能であることが分かり、特に、偏芯効果の大きいタイヤ赤道(C.L)部分のゴムの弾性率を大きくすれば良いことが判明した。
【0035】
しかしながら、キャップゴムを硬くすることは、ゴム変形の抑制になるものの、ゴム剛性が上がり過ぎてトレッドのブロックがもげ易い等の不具合を招くことになる。これらの不具合を招くことなく効率的にゴムの弾性率を高めるには、タイヤ赤道(C.L)部のベースゴムの層間厚み(ベースゲージ)を少なくすることで達成することができる。これは、一般的に、ベースゴムは良好な発熱性を得るため軟らかく設定しているので、軟らかいベースゴムのゲージを減らすことによりタイヤ赤道(C.L)部の弾性率が向上するからである。
【0036】
一方、トレッドにおける発熱性の良し悪しは、ゲージが厚くなるショルダで殆ど決まってしまうことから、ショルダでは、良好な発熱性を得るため配置しているベースゴムのゲージ減少化が困難であると共に、ショルダは元々偏芯効果が大きくないため、タイヤ赤道(C.L)部で発生するような現象は発生し難い。よって、タイヤ赤道(C.L)部とショルダの摩耗バランスを考慮すれば、ショルダのベースゲージを変更する必要度は小さい。
【0037】
また、ベースゴムにおいては、周方向ベルト層15のベルト幅を広くしていることからトレッドショルダで押し出される成分が増大するが、これは、ベルト幅広化しているために接地圧を向上させることができ、その結果、ゴム押し出し力が大きくなるためである。また、トレッドショルダの端部まで周方向ベルト層15が配置されていないものの、ベルト幅広化によってトレッドショルダの端部近傍まで(従来に比べはるかに端部近傍まで)周方向ベルト層15が配置されているため、トレッドショルダの端部におけるゴム押し出し力を増大させる(従来に比べより大きくする)ことになるので、ベルト幅広化がゴム押し出し力を大きくする要因となる。
【0038】
周方向ベルト層15が、所謂、トレッドセンタで一層の場合、周方向ベルト層15のタイヤ幅方向端部からタイヤ赤道(C.L)側に40mm以内の領域、所謂、トレッドショルダでは、周方向ベルト層15が二層以上(この例では、周方向ベルト層15と端部周方向ベルト層16の二層構造)であることが必要である。これは、周方向ベルト層15の、トレッドショルダに位置するベルト端が一層であると、タイヤ付加荷重時に周方向ベルト層15に発生するタイヤ周方向歪がベルト端に集中してベルト端が耐えられず、ベルトセパレーションを起こしてしまうためである。
【0039】
つまり、周方向ベルト層15の、所謂、トレッドショルダで、周方向ベルト層15が二層以上になっていることにより、タイヤの荷重接地時に十分な張力を発揮することができ、周方向ベルト層15が二層以上となる範囲が40mm以内であれば、タイヤ内圧充填時における形状保持とタイヤ重量の増加抑制との両立が可能である。
また、所謂、トレッドショルダでは、周方向ベルト層15と端部周方向ベルト層16の二層構造とし、所謂、トレッドセンタでは、周方向ベルト層15のみの一層構造とすることにより、トレッド全域において周方向ベルト層を二層構造とする場合に比べ、周方向ベルト層を形成するために使用する部材の量を低減することができるので、軽量化を図ることができる。
【0040】
傾斜ベルト層17は、トレッド面のタイヤ周方向の変形を均一にする機能を有しており、この変形が均一である程、トレッドゴムの摩耗度合いがトレッド面全域において均一になることから、傾斜ベルト層17を設けたことにより、トレッド13が完全に摩耗するまでタイヤを使い切ることができる。
また、二層以上の傾斜ベルト層17(17a,17b)における、ベルトコードの繊維方向のタイヤ周方向(タイヤ赤道)に対する傾斜角度がハイアングルの場合、30度以下であることが好ましく、30度以下で二層以上の傾斜ベルト層17が互いに交錯することにより、トレッドショルダのゴムの流動を促進し、偏摩耗発生の抑制力を向上させることができる。
【0041】
なお、傾斜ベルト層17(17a,17b)は、ベルトコードの繊維方向がタイヤ周方向(タイヤ赤道)に対し45度以上から70度以下の範囲の角度(ローアングル)で傾斜配置しても良く、角度が45度以上であれば、偏摩耗性能と耐久性能を両立させることができる。
また、傾斜ベルト層17における、ベルトコードの繊維方向のタイヤ周方向(タイヤ赤道)に対する傾斜角度を40度以下にして、傾斜ベルト層17のベルトコードをタイヤ周方向に対し立てた状態にしているので、傾斜ベルト層17に張力保持効果を持たせることができる。このため、所謂、トレッドセンタでは、周方向ベルト層15の総数が少なくなって(この例では、一層)張力保持効果が低減しているが、これを補って十分な張力保持効果を確保することができる。
【0042】
また、二層以上の傾斜ベルト層17(17a,17b)は、タイヤ幅の65%以上の範囲、好ましくは70%以上の範囲で、上下層が互いに交錯していることが必要である。これは、トレッドショルダの摩耗抑制力を向上させるためである。
周方向ベルト層15のタイヤ幅方向端部と、周方向ベルト層15に隣接する傾斜ベルト層(この例では、傾斜ベルト層17a)の層間に、100%伸張時モデュラスが5.0MPa以下のゴム部材からなる層間ゴム18を配置したことにより、周方向ベルト層15のベルト端部での層間剪断歪を効果的に低減させることになり、ベルトセパレーションに対する耐久性を向上させることができる。
【0043】
周方向ベルト層15のタイヤ径方向外側に配置された二層の傾斜ベルト層17(17a,17b)の層間に、100%伸張時モデュラスが層間ゴム18に比べて大きい間クッションゴム19を配置したことにより、傾斜ベルト層17の端部において歪が発生するのを抑制することができる。これは、傾斜ベルト層17のベルトコードをタイヤ周方向に対し立てた状態にしたことで、傾斜ベルト層17の端部においても、張力を有するため故障の原因になる歪が発生し易くなったことに対応するものである。
【0044】
図2は、図1の空気入りタイヤの他の例の構成を模式的に示す、タイヤ赤道を境とするタイヤ幅方向一方の側のタイヤ幅方向に沿う断面図である。図2に示すように、空気入りタイヤ20は、周方向ベルト層15のタイヤ径方向内側に、狭幅傾斜ベルト層21を設けており、その他の構成及び作用は、空気入りタイヤ10と同様である。
空気入りタイヤ20の狭幅傾斜ベルト層21は、ベルトコードの繊維方向がタイヤ周方向(タイヤ赤道)に対し50度以上から90度以下の範囲の角度(ローアングル)、望ましくは70度以上の角度で傾斜配置されていると共に、周方向ベルト層15よりもベルト幅を20mm以上から250mm以下の範囲で狭く形成されている。
【0045】
この狭幅傾斜ベルト層21、即ち、ローアングルで狭幅の傾斜ベルト層が、周方向ベルト層15のタイヤ径方向内側に隣接して配置されることで、転動時のタイヤへの突起入力に対する耐久力が向上し、タイヤの突起物等の乗り越し性能(耐バースト性)を飛躍的に向上させることができる。タイヤ重量との両立のためには、狭幅傾斜ベルト層21のベルト幅を、周方向ベルト層15のベルト幅よりも20mm以上狭く、即ち、周方向ベルト層15よりもベルト幅を短くすれば十分であり、40mm以上狭い方が好ましい。
【0046】
図3は、図1の空気入りタイヤの更に他の例の構成を模式的に示す、タイヤ赤道を境とするタイヤ幅方向一方の側のタイヤ幅方向に沿う断面図である。図3に示すように、空気入りタイヤ30は、傾斜ベルト層を三層以上(一例として、三層の場合を図示)設けており、その他の構成及び作用は、空気入りタイヤ20と同様である。
【0047】
空気入りタイヤ30の周方向ベルト層15のタイヤ径方向外側には、三層の傾斜ベルト層17a,17b,17cがタイヤ径方向内側から記載順に配置されているが、傾斜ベルト層を三層以上設けた場合、タイヤ径方向最外側に位置する傾斜ベルト層(この例では、傾斜ベルト層17c)は、ベルトコードの繊維方向が、その傾斜ベルト層とタイヤ径方向内側に隣接する傾斜ベルト層(この例では、傾斜ベルト層17b)のベルトコードの繊維方向と、傾斜方向が同一になるように配置されていることが望ましい。
【0048】
これは、タイヤ径方向最外側に位置する傾斜ベルト層(この例では、傾斜ベルト層17c)が、周方向ベルト層15に外傷が付くことを防ぐ保護層になることで、転動時のタイヤへの突起入力に対する耐久力を向上させるためである。
なお、傾斜ベルト層を三層以上設ける構成を、この例では、周方向ベルト層15のタイヤ径方向内側に傾斜ベルト層21(ローアングル傾斜ベルト層)が配置される構成(図3参照)に適用したが、傾斜ベルト層21が配置されない構成(例えば、図2参照)に適用しても良い。
【0049】
このように、上述した空気入りタイヤ10,20,30は、周方向ベルト層15のベルト幅を広くすることにより、トレッドショルダの接地圧を向上させてトレッドゴムの押し出し成分を増大させることで、偏摩耗性能を向上させており、また、ベルトを配置することができないトレッドショルダ端部においては、キャップゴムとベースゴムの層間方向の分割を適正化することにより、トレッドショルダ端部のトレッドゴムの押し出し量を増大させトレッドショルダ端部まで摩耗性能を向上させることで、偏摩耗を発生させないタイヤとしており、また、周方向ベルト層15のベルト幅広化及び層間ゴム18を配置することにより、ベルト端部のセパレーションを抑制して耐久性を高めている。
【0050】
また、周方向ベルト層15の数をトレッドセンタでは1層(周方向ベルト層15)、トレッドショルダでは二層(周方向ベルト層15と端部周方向ベルト層16)として軽量化を図りつつ、二層以上配置した傾斜ベルト層17(17a,17b)の、ベルトコードの繊維方向をタイヤ周方向(タイヤ赤道)に対し40度以下で傾斜配置する、即ち、タイヤ周方向に立てることで、傾斜ベルト層17に張力保持効果を持たせ、層間端部に間クッションゴム19を配置したことで、傾斜ベルト層17をタイヤ周方向に立てたことによって層間端部に発生しがちな歪の発生を抑制することができる。
【実施例】
【0051】
この発明に係る空気入りタイヤを3種類(実施例1〜3)試作し、発熱耐久性能、偏摩耗性能、耐突起性能について、一種類の従来例、一種類の比較例、及び二種類の参考例(参考例1,2)との比較試験を行った。
実施例1は、この発明に係る空気入りタイヤ10(図1参照)と、実施例2は、この発明に係る空気入りタイヤ20(図2参照)と、実施例3は、この発明に係る空気入りタイヤ30(図3参照)と、ほぼ同一の構成を有している。
【0052】
図4は、従来の空気入りタイヤ(従来例)のベルト構造を概念的に示す、図1と同様の断面説明図である。図4に示すように、従来の空気入りタイヤ1は、図1に示す、空気入りタイヤ10(実施例1)と比較して、周方向ベルト層2がトレッド全域において二層構造とされ、二層の傾斜ベルト層3がローアングルベルトコードとされ、間クッションゴム19が設けられておらず、キャップゴム13aベースゴム13bの割合が、トレッドセンタ(C.L)とトレッドショルダでベースゴム13bの層間厚み(ベースゲージ)に大きな差がなく形成されている。その他の構成は、空気入りタイヤ10と同様である。
【0053】
図5は、参考例1の空気入りタイヤのベルト構造を概念的に示す、図1と同様の断面説明図である。図5に示すように、参考例1の空気入りタイヤ4は、図4に示す、従来の空気入りタイヤ1と比較して、キャップゴム13aベースゴム13bの割合が、トレッドセンタ(C.L)とトレッドショルダでベースゴム13bの層間厚み(ベースゲージ)に大きな差を有している。その他の構成は、従来の空気入りタイヤ1と同様である。
【0054】
図6は、参考例2の空気入りタイヤのベルト構造を概念的に示す、図1と同様の断面説明図である。図6に示すように、参考例2の空気入りタイヤ5は、図5に示す、参考例1の空気入りタイヤ4と比較して、キャップゴム13aベースゴム13bの割合が、トレッドセンタ(C.L)でベースゴム13bの層間厚み(ベースゲージ)を0とする、即ち、トレッドセンタ(C.L)ではベースゴム13bが無いように形成されている。なお、ベースゴム13bのタイヤ幅方向内側端は、トレッド13に形成されたショルダ溝13cのタイヤ幅方向内側位置dから、タイヤ幅方向内側と外側に20mmの範囲に配置されている。その他の構成は、参考例1の空気入りタイヤ4と同様である。
【0055】
上述した、従来例、比較例、参考例1,2、実施例1〜3の空気入りタイヤは、何れもタイヤサイズが435/45R22.5(タイヤ幅:430mm)の超扁平の重荷重用ラジアルタイヤであり、上記サイズの各タイヤをリムサイズ14.00×22.5の適用リムに組み込み、正規内圧900kPa、規定荷重5000kgで、発熱耐久性能試験、偏摩耗性能試験、耐突起入力性能試験を行った。
【0056】
ここで、適用リムとは、JATMA(The Japan Automobile Tyre Manufacturers Association,Inc.)に規定される「適用リム」、TRA(THE TIRE AND RIM ASSOCIATION INC.)に規定される「Design Rim」、或いはETRTO(THE European Tyre and Rim Technical Organisation)に規定される「Measuring Rim」をいう。また、正規内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、或いはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、或いはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。
【0057】
発熱耐久性能試験は、JATMA等で規定されるQC耐久ドラムによるWS(荷重と走行距離によるシビリティ)値を測定し、従来例のタイヤのWS値を100(INDEX)として、指数で表示した。
偏摩耗性能試験は、ドラム走行後のタイヤ赤道溝及びトレッドショルダ溝の摩耗量を測定し、トレッドセンタ(C.L)とトレッドショルダの摩耗の偏りを調べた。従来例のタイヤのトレッドセンタ摩耗量に対するショルダ摩耗量の割合値を100(INDEX)として、指数で表示した。
耐突起入力性能試験は、トレッド面に突起を押し付けてタイヤがバーストしたときの押し付け力を測定した。従来例のタイヤにおけるタイヤがバーストしたときの押し付け力を100(INDEX)として、指数で表示した。
【0058】
以下、実施例1〜3、従来例、比較例、参考例1,2の諸元について表1及び表2を参照して説明する。なお、表中、角度[deg]の欄内において、Rは右上がりを、Lは左上がりをそれぞれ表し、傾斜ベルト層17aのベルト層15差は、傾斜ベルト層17aのベルト幅と周方向ベルト層15のベルト幅との差(傾斜ベルト層17aベルト幅−周方向ベルト層15ベルト幅)を、ショルダベースのゲージ差は、タイヤ赤道部とトレッドショルダにおけるベースゴム13bの層間厚み差(ゲージ差)を、それぞれ表す。実施例は、周方向ベルト端部のゲージ差にて比較(ゲージMAX部)。
【0059】
実施例1〜3、従来例、比較例、参考例1,2の各空気入りタイヤにおいて、周方向ベルト層15と端部周方向ベルト層16の、タイヤ赤道(C.L)に対する角度は0deg、ベルトコード種はウェービー(WAVY)であり、層間ゴム18の、層間厚み(層間ゲージ)は5.0mm、100%伸張時モデュラス(mod.)は1.8であり、トレッドショルダのベースゲージが最大となる領域は周方向ベルト層15のタイヤ幅方向端部からタイヤ幅方向内側へ10mmの位置であり、それぞれ共通である。
また、参考例2において、ベースゴム13bのタイヤ幅方向内側端は、トレッド13に形成されたショルダ溝13cのタイヤ幅方向内側位置dから、タイヤ幅方向内側へ5mmの位置に配置されている。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
この発明に係る実施例1〜3の空気入りタイヤ10,20,30における、発熱耐久性能、偏摩耗性能、及び耐突起入力性能について、従来例、比較例、参考例1,2との比較結果から以下の評価を得ることができた。
発熱耐久性能(指数値が大きい程、発熱耐久性が高く、良好であることを示す。なお、指数値90未満は、発熱耐久性が悪化し、好ましくない):
従来例を100(INDEX)として、比較例は90であるのに対し、参考例1,2、実施例1〜3の何れも100であり、比較例に比べて高く、従来例、参考例1,2と比べても劣ることは無かった。
【0063】
偏摩耗性能(指数値が大きい程、偏摩耗し難いことを示す):
従来例を100(INDEX)として、比較例は90であるのに対し、参考例1は120、参考例2は130、実施例1〜3は何れも120であり、参考例1,2及び実施例1〜3は、従来例に比べ偏摩耗し難いこと、特に、比較例に比べては格段に偏摩耗し難いことが証明された。
【0064】
耐突起入力性能(指数値が大きい程、突起入力に対する耐久性が高いことを示す):
従来例を100(INDEX)として、比較例、参考例1,2は100であるのに対し、実施例1は90、実施例2は95、実施例3は100であり、実施例1及び実施例2は、従来例、比較例、参考例1,2より若干低くはあるが、実施例3にあっては、従来例、比較例、参考例1,2と遜色無かった。
このように、空気入りタイヤ10は、周方向ベルト層を軽量化した上で、必要な発熱耐久性能を保持しつつ、トレッドでの偏摩耗発生の抑制と耐突起入力性能の確保を両立させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
この発明によれば、周方向ベルト層を軽量化した上で、必要な発熱耐久性能を保持しつつ、トレッドでの偏摩耗発生の抑制と耐突起入力性能の確保を両立させることができるため、タイヤ形状を保持するための周方向ベルト層を採用した、トラック・バスに用いる重荷重用の空気入りラジアルタイヤに最適である。
【符号の説明】
【0066】
10,20,30 空気入りタイヤ
11 カーカス
12 ベルト
13 トレッド
14 サイドウォール
15 周方向ベルト層
16 端部周方向ベルト層
17,17a,17b,17c 傾斜ベルト層
18 層間ゴム
19 間クッションゴム
21 狭幅傾斜ベルト層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの骨格を構成するカーカスのタイヤ径方向外側に設けた、タイヤ幅方向端部では二層以上とする、少なくとも一層の、タイヤ周方向に沿って延在する周方向ベルト層と、
前記周方向ベルト層のタイヤ径方向外側に設けた、二層以上の、ベルトコードのタイヤ赤道方向に対する傾斜角度を40度以下とする傾斜ベルト層と、
前記傾斜ベルト層のタイヤ幅方向端部の隣接する層間に設けた、前記傾斜ベルト層のコーティングゴムより100%伸張時モヂュラスが小さい間クッションゴムと、
前記傾斜ベルト層のタイヤ径方向外側に設けた、トレッドと
を有する空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記周方向ベルト層のベルト幅が、タイヤ幅の70%以上から90%以下の範囲に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記周方向ベルト層のタイヤ幅方向端部の前記傾斜ベルト層との層間に設けた、100%伸張時モヂュラスが前記間クッションゴムより小さい層間ゴムを有する請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記間クッションゴムは、100%伸張時モヂュラスが6.5MPaである請求項1から3のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記周方向ベルト層のタイヤ径方向内側で前記カーカスのタイヤ径方向外側に、少なくとも一層の、ベルトコードをタイヤ赤道方向に対して傾斜配置した狭幅傾斜ベルト層を有する請求項1から4のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−103692(P2013−103692A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250922(P2011−250922)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)