説明

空気入りタイヤ

【課題】 ウエット路面での制動性能とドライ路面での操縦安定性をバランス良く改善することを可能にした空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】 トレッド部1とサイドウォール部2とビード部3とを備えた空気入りタイヤにおいて、トレッド部1に溝幅が3.0mm以上であってタイヤ周方向に蛇行しながら延長する複数本の周方向溝11と溝幅が3.0mm以上であってタイヤ幅方向に隣り合う一対の周方向溝11,11間を連通する複数本の横溝12とを設け、これら周方向溝11及び横溝12により5つ以上の角部を持つ多角形の形状を有する複数の多角形ブロック13をタイヤ周方向に沿って千鳥状に配列してなる2列の多角形ブロック列14を区画すると共に、該2列の多角形ブロック列14の相互間にタイヤ周方向に延在する多角形リブ15を配置し、該多角形リブ15を2列の多角形ブロック列14,14に隣接させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド部に複数の多角形ブロックを配置した空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、ウエット路面での制動性能とドライ路面での操縦安定性をバランス良く改善することを可能にした空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気入りタイヤにおいて、トレッド部にはタイヤ周方向に延びる複数本の周方向溝とタイヤ幅方向に延びる複数本の横溝が形成され、これら周方向溝及び横溝により多数のブロックが区画されている(例えば、特許文献1,2参照)。また、ブロックには必要に応じてサイプが形成されている。このような空気入りタイヤにおいて、ウエット路面での制動性能を向上するには、溝やサイプの本数を多くして排水性能を向上させると共にエッジ効果を増大させることが有効である。
【0003】
しかしながら、トレッド部に配置される溝やサイプの本数を単に多くした場合、トレッド部の剛性が低下し、ドライ路面での操縦安定性が低下するという問題がある。また、溝を細くすることでトレッド部の剛性低下を抑えることが検討されているが、溝を細くした場合、排水効果が不十分になり、溝を細くした上でその本数を更に増やした場合、トレッド部の剛性が低下する。そのため、ウエット路面での制動性能とドライ路面での操縦安定性とを両立させることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−83462号公報
【特許文献2】特開2011−25864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ウエット路面での制動性能とドライ路面での操縦安定性をバランス良く改善することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備えた空気入りタイヤにおいて、前記トレッド部に溝幅が3.0mm以上であってタイヤ周方向に蛇行しながら延長する複数本の周方向溝と溝幅が3.0mm以上であってタイヤ幅方向に隣り合う一対の周方向溝間を連通する複数本の横溝とを設け、これら周方向溝及び横溝により5つ以上の角部を持つ多角形の形状を有する複数の多角形ブロックをタイヤ周方向に沿って千鳥状に配列してなる2列の多角形ブロック列を区画すると共に、該2列の多角形ブロック列の相互間にタイヤ周方向に延在する多角形リブを配置し、該多角形リブを前記2列の多角形ブロック列に隣接させたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、5つ以上の角部を持つ多角形の形状を有する多角形ブロックを形成し、従来から多用されている四角形ブロックに比べてブロックエッジの屈曲角度を鈍角化することでブロック剛性を増大させ、更に複数の多角形ブロックをタイヤ周方向に沿って千鳥状に配列することでトレッド部のエッジ成分を十分に確保するので、ウエット路面での制動性能を大幅に向上することができる。また、2列の多角形ブロック列の相互間に高剛性を有すると共に多くのエッジ成分を具備する多角形リブを配置し、該多角形リブを2列の多角形ブロック列に隣接させることにより、多角形ブロックの倒れ込みを抑制し、ブロック列の形成に伴うトレッド部の剛性低下を補完し、ドライ路面での操縦安定性を向上することができる。これにより、ウエット路面での制動性能とドライ路面での操縦安定性とを両立することができる。
【0008】
本発明において、多角形ブロックの形状は六角形とすることが好ましい。これにより、トレッド部に多数の多角形ブロックを効率良く配置することができ、そのエッジ効果に基づいてウエット路面での制動性能を向上することができる。
【0009】
多角形ブロック単体の面積は2cm2 〜50cm2 とすることが好ましい。これにより、ウエット路面での制動性能とドライ路面での操縦安定性をバランス良く改善することができる。
【0010】
多角形ブロックにはサイプ又は浅溝を設けることが好ましい。このように多角形ブロックにサイプ又は浅溝を付加した場合、サイプ又は浅溝に基づくエッジ効果によりウエット路面での制動性能を更に向上することができる。サイプ又は浅溝の延長方向は多角形ブロックのいずれかの辺と平行にすると良い。これにより、ブロック内に多数のサイプ又は浅溝を効率良く配置することができ、そのエッジ効果に基づいてウエット路面での制動性能を向上することができる。また、サイプ又は浅溝の延長方向はタイヤ周方向に隣り合う一対の多角形ブロックにおいて互いに異ならせることが好ましい。これにより、多方向のエッジ効果が得られるので、ドライ路面での操縦安定性を向上することができる。
【0011】
多角形リブにはサイプ又は浅溝を設けることが好ましい。このように多角形リブにサイプ又は浅溝を付加した場合、サイプ又は浅溝に基づくエッジ効果によりウエット路面での制動性能を更に向上することができる。また、多角形リブにはディンプル又は凹部を設けることが好ましい。これらディンプル又は凹部もウエット路面での制動性能の改善に寄与する。
【0012】
2列の多角形ブロック列は互いに相似形とすることが好ましい。ここで、2列の多角形ブロック列の「相似形」とは、2列の多角形ブロック列に含まれる多角形ブロックの形状及び寸法が互いに一致し、かつ千鳥状の配列パターンが互いに一致した構造を意味する。このように2列の多角形ブロック列は互いに相似形とすることにより、ウエット路面での制動性能とドライ路面での操縦安定性との両立に際して、優れた耐偏摩耗性を発揮することが可能になる。
【0013】
多角形ブロック列と多角形リブとは互いに相似形とすることが好ましい。ここで、多角形ブロック列と多角形リブとの「相似形」とは、多角形リブが多角形ブロック列に含まれる多角形ブロックに対応する角部を有し、多角形ブロック列及び多角形リブの千鳥状の配列パターンが互いに一致し、かつ多角形リブの総面積と多角形ブロック列に含まれる多角形ブロックの総面積とが実質的に一致した構造を意味する。なお、多角形リブの総面積が多角形ブロック列に含まれる多角形ブロック及び多角形ブロック間の横溝の総面積の90%〜110%の範囲内にあるとき、これらは実質的に一致するものと見做す。このように多角形ブロック列と多角形リブとは互いに相似形とすることにより、ウエット路面での制動性能とドライ路面での操縦安定性との両立に際して、優れた耐偏摩耗性を発揮することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤのトレッドパターンを示す展開図である。
【図2】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示す子午線断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態からなる空気入りタイヤのトレッドパターンを示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1及び図2は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示すものである。図1及び図2に示すように、本実施形態の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、該トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2,2と、これらサイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3,3とを備えている。
【0016】
一対のビード部3,3間には2層のカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ折り返されている。ビードコア5の外周上には断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラー6が配置されている。
【0017】
一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層7が埋設されている。これらベルト層7はタイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。ベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°〜40°の範囲に設定されている。ベルト層7の補強コードとしては、スチールコードが好ましく使用される。ベルト層7の外周側には、高速耐久性の向上を目的として、補強コードをタイヤ周方向に対して例えば5°以下の角度で配列してなる少なくとも1層のベルトカバー層8が配置されている。ベルトカバー層8の補強コードとしては、ナイロンやアラミド等の有機繊維コードが好ましく使用される。
【0018】
なお、上述したタイヤ内部構造は空気入りタイヤにおける代表的な例を示すものであるが、これに限定されるものではない。
【0019】
図1に示すように、トレッド部1には、タイヤ周方向に蛇行しながら延長する複数本の周方向溝11と、タイヤ幅方向に隣り合う一対の周方向溝11,11間を連通する複数本の横溝12とが形成されている。周方向溝11はタイヤ周方向に直線状に延びるシースルー溝とは異なって蛇行することでエッジ成分を確保している。周方向溝11は溝幅が3.0mm以上、より好ましくは、3.0mm〜15.0mmの範囲に設定され、溝深さが5.0mm〜10.0mmの範囲に設定されている。横溝12は溝幅が3.0mm以上、より好ましくは、3.0mm〜10.0mmの範囲に設定され、溝深さが3.0mm〜10.0mmの範囲に設定されている。周方向溝11及び横溝12の溝幅を3.0mm以上とすることで排水性能を十分に確保している。
【0020】
トレッド部1には、周方向溝11及び横溝12により、5つ以上の角部、より好ましくは、5つ〜8つの角部を持つ多角形の形状を有する複数の多角形ブロック13が区画されており、これら多角形ブロック13をタイヤ周方向に沿って千鳥状に配列してなる2列の多角形ブロック列14,14が区画されている。つまり、各多角形ブロック列14においてタイヤ周方向に並ぶ複数の多角形ブロック13はタイヤ幅方向の一方側と他方側に交互に突き出すように配列されている。多角形ブロック13の形状としては、例えば、五角形、六角形、七角形、八角形を挙げることができるが、特に図示のような六角形が望ましい。六角形の場合、トレッド部1に多数の多角形ブロック13を効率良く配置することができ、そのエッジ効果を十分に得ることができる。なお、多角形ブロック13の角部には面取り加工を施されていても良い。
【0021】
上記2列の多角形ブロック列14,14の相互間には、タイヤ周方向に延在する多角形リブ15が配置されている。多角形リブ15は、そのタイヤ幅方向両側の輪郭がタイヤ周方向に蛇行しながら延長する周方向溝11によって規定され、2列の多角形ブロック列14,14に対して隣接するように配置されている。同様にして、多角形ブロック列14のタイヤ幅方向外側の位置にも他の多角形リブ15が配置されている。そのため、多角形ブロック列14の各々は一対の多角形リブ15,15にて挟み込まれている。
【0022】
上記空気入りタイヤでは、5つ以上の角部を持つ多角形の形状を有する多角形ブロック13を形成して四角形ブロックに比べてブロックエッジの屈曲角度を鈍角化しているため、多角形ブロック13の剛性を増大させることができる。更に、複数の多角形ブロック13をタイヤ周方向に沿って千鳥状に配列しているため、トレッド部1のエッジ成分を十分に確保することができる。このようなブロック剛性の増大及びエッジ成分の増大によりウエット路面での制動性能を大幅に向上することができる。また、2列の多角形ブロック列14,14の相互間に高剛性を有すると共に多くのエッジ成分を具備する多角形リブ15を配置し、該多角形リブ15を2列の多角形ブロック列14,14に隣接させることにより、多角形ブロック13の倒れ込みを抑制し、ブロック列14の形成に伴うトレッド部1の剛性低下を補完し、ドライ路面での操縦安定性を向上することができる。これにより、ウエット路面での制動性能とドライ路面での操縦安定性との両立が可能になる。
【0023】
上記空気入りタイヤにおいて、各多角形ブロック13の踏面での面積は2cm2 〜50cm2 の範囲、より好ましくは、10cm2 〜30cm2 の範囲に設定されている。これにより、ウエット路面での制動性能とドライ路面での操縦安定性をバランス良く改善することができる。多角形ブロック13の単体としての面積が2cm2 未満であると剛性低下によりドライ路面での操縦安定性の改善効果が低下し、逆に50cm2 を超えると溝面積の不足によりウエット路面での制動性能の改善効果が低下する。
【0024】
上記空気入りタイヤにおいて、多角形ブロック13の各々には複数本のサイプ16が形成されている。このように多角形ブロック13にはサイプ又は浅溝を付加することができる。この場合、サイプ又は浅溝に基づくエッジ効果によりウエット路面での制動性能を更に向上することができる。ここで、サイプとは溝幅を0.3mm〜1.5mmとし、溝深さを2.0mm以上かつ周方向溝の溝深さ以下としたものである。また、浅溝とは溝幅を0.3mm〜1.5mmとし、溝深さを0.2mm〜2.0mmとしたものである。つまり、浅溝の形成は踏面に表面加工を施すことであり、特にタイヤ使用開始直後の走行特性を改善するものである。
【0025】
図1に示すように、サイプ又は浅溝の延長方向は多角形ブロック13のいずれかの辺と平行にすると良い。これにより、多角形ブロック13内に多数のサイプ又は浅溝を効率良く配置することができ、そのエッジ効果に基づいてウエット路面での制動性能を向上することができる。また、サイプ又は浅溝の延長方向はタイヤ周方向に隣り合う一対の多角形ブロック13,13において互いに異ならせることが好ましい。これにより、多方向のエッジ効果が得られるので、ドライ路面での操縦安定性を向上することができる。
【0026】
上記空気入りタイヤにおいて、多角形リブ15には複数本のサイプ17が形成されている。このように多角形リブ15にはサイプ又は浅溝を付加することができる。この場合、サイプ又は浅溝に基づくエッジ効果によりウエット路面での制動性能を更に向上することができる。なお、サイプ又は浅溝の寸法は上述の通りであるが、このような寸法を有するサイプ又は浅溝を付加してもリブとしての一体性が損なわれるものではない。
【0027】
上記空気入りタイヤにおいて、多角形リブ15には複数の凹部18が形成されている。このように多角形リブ15にはディンプル又は凹部を付加することができる。この場合、ディンプル又は凹部のエッジ効果によりウエット路面での制動性能を改善することができる。ディンプル又は凹部の平面視形状は特に限定されるものではなく、矩形、楕円形、長円形、多角形、星形等とすることができる。
【0028】
上記空気入りタイヤにおいて、2列の多角形ブロック列14,14は互いに相似形になっている。更に、多角形ブロック列14と多角形リブ15とは互いに相似形になっている。このように2列の多角形ブロック列14,14を互いに相似形とし、多角形ブロック列14と多角形リブ15とを互いに相似形とすることにより、ウエット路面での制動性能とドライ路面での操縦安定性との両立に際して、耐偏摩耗性を向上することができる。
【0029】
図3は本発明の他の実施形態からなる空気入りタイヤのトレッドパターンを示すものである。図3に示すように、トレッド部1には、タイヤ周方向に蛇行しながら延長する複数本の周方向溝11と、タイヤ幅方向に隣り合う一対の周方向溝11,11間を連通する複数本の横溝12とが形成されている。その結果、トレッド部1には、五角形の形状を有する複数の多角形ブロック13をタイヤ周方向に沿って千鳥状に配列してなる2列の多角形ブロック列14,14が区画されている。2列の多角形ブロック列14,14の相互間にはタイヤ周方向に延在する多角形リブ15が配置され、同様にして、多角形ブロック列14のタイヤ幅方向外側の位置にも他の多角形リブ15が配置されている。また、多角形ブロック13の各々には複数本のサイプ16が形成されている。なお、2列の多角形ブロック列14,14は互いに相似形になっているが、多角形ブロック列14と多角形リブ15とは互いに相似形になっていない。
【0030】
このように構成される空気入りタイヤによれば、前述の実施形態と同様に、ウエット路面での制動性能とドライ路面での操縦安定性とを両立することが可能である。
【実施例】
【0031】
タイヤサイズが205/55R16であり、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備えた空気入りタイヤにおいて、トレッド部にタイヤ周方向に蛇行しながら延長する複数本の周方向溝とタイヤ幅方向に隣り合う一対の周方向溝間を連通する複数本の横溝とを設け、これら周方向溝及び横溝により多角形の形状を有する複数の多角形ブロックをタイヤ周方向に沿って千鳥状に配列してなる2列の多角形ブロック列を区画すると共に、該2列の多角形ブロック列の相互間及び多角形ブロック列のタイヤ幅方向外側の位置にタイヤ周方向に延在する多角形リブを配置し、該多角形リブを2列の多角形ブロック列に隣接させ、その具体的な構造を表1のように種々異ならせた実施例1〜9のタイヤを作製した。
【0032】
比較のため、トレッド部にタイヤ周方向に延長する複数本の周方向溝とタイヤ幅方向に延びる複数本の横溝とを設け、これら周方向溝及び横溝により四角形の形状を有する複数の多角形ブロックをタイヤ周方向に沿って縦列に配列してなる5列の多角形ブロック列を区画すると共に、トレッド部からタイヤ周方向に延在するリブを排除した従来例1のタイヤを用意した。
【0033】
また、トレッド部にタイヤ周方向に蛇行しながら延長する複数本の周方向溝とタイヤ幅方向に隣り合う一対の周方向溝間を連通する複数本の横溝とを設け、これら周方向溝及び横溝により多角形の形状を有する複数の多角形ブロックをタイヤ周方向に沿って縦列に配列してなる5列の多角形ブロック列を区画すると共に、トレッド部からタイヤ周方向に延在するリブを排除した比較例1のタイヤを用意した。
【0034】
更に、トレッド部にタイヤ周方向に蛇行しながら延長する複数本の周方向溝とタイヤ幅方向に隣り合う一対の周方向溝間を連通する複数本の横溝とを設け、これら周方向溝及び横溝により多角形の形状を有する複数の多角形ブロックをタイヤ周方向に沿って千鳥状に配列してなる3列の多角形ブロック列を区画すると共に、これら多角形ブロック列のタイヤ幅方向外側の位置にタイヤ周方向に延在する多角形リブを配置した比較例2のタイヤを用意した。
【0035】
従来例1、比較例1,2及び実施例1〜9において、周方向溝の溝幅を7.0mmとし、その溝深さを8.0mmとする一方で、横溝の溝幅を7.0mmとし、その溝深さを8.0mmとした。
【0036】
表1には、リブ配列、ブロック配列、ブロック形状、ブロック面積、ブロック内サイプ、ブロック内サイプの向き、ブロック内サイプの向き変化、リブ内サイプ、ブロック列同士の相似関係、ブロック列とリブとの相似関係が記載されている。ブロック内サイプの向きについて、「水平」とはサイプがタイヤ幅方向に延長していることを意味し、「平行」とはサイプの延長方向がブロックのいずれかの辺と平行であることを意味する。ブロック内サイプの向き変化について、「無」とはブロック内サイプの延長方向がトレッド部の全域で一定であることを意味し、「有」とはブロック内サイプの延長方向がタイヤ周方向に隣り合う一対のブロックにおいて互いに異なることを意味する。
【0037】
これら試験タイヤについて、下記の評価方法により、ウエット路面での制動性能、ドライ路面での操縦安定性、耐偏摩耗性を評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0038】
ウエット路面での制動性能:
各試験タイヤをリムサイズ16×6.5JJのホイールに組み付けて空気圧を230kPaとして排気量2000ccの試験車両(前輪駆動車)に装着し、ウエット路面からなるテストコースにおいて、速度100km/hでの走行状態からブレーキを掛けて車両が停止するまでの制動距離を測定した。評価結果は、測定値の逆数を用い、従来例1を100とする指数値にて示した。この指数値が大きいほど制動距離が短くウエット路面での制動性能が優れていることを意味する。
【0039】
ドライ路面での操縦安定性:
各試験タイヤをリムサイズ16×6.5JJのホイールに組み付けて空気圧を230kPaとして排気量2000ccの試験車両(前輪駆動車)に装着し、ドライ路面からなるテストコースにおいて、テストドライバーによるフィーリング評価を行った。評価結果は、従来例1を100とする指数値にて示した。この指数値が大きいほど操縦安定性が優れていることを意味する。
【0040】
耐偏摩耗性:
各試験タイヤをリムサイズ16×6.5JJのホイールに組み付けて空気圧を230kPaとして排気量2000ccの試験車両(前輪駆動車)に装着し、舗装路を5万km走行した後、リブ及びブロック列における摩耗量を測定し、その摩耗量差を求めた。評価結果は、摩耗量差の逆数を用い、従来例1を100とする指数値にて示した。この指数値が大きいほど耐偏摩耗性が優れていることを意味する。
【0041】
【表1】

【0042】
表1から明らかなように、実施例1〜9のタイヤは、いずれも、従来例1との対比において、ウエット路面での制動性能とドライ路面での操縦安定性がバランス良く改善されていた。一方、比較例1のタイヤは、トレッド部に複数の多角形ブロックからなる多角形ブロック列を設けているものの、多角形リブを併用していないため、ドライ路面での操縦安定性の改善効果が得られなかった。比較例2のタイヤは、トレッド部に複数の多角形ブロックからなる多角形ブロック列を設けているものの、多角形リブを多角形ブロック列のタイヤ幅方向外側の位置に配置しているため、多角形ブロックに基づくウエット路面での制動性能の改善効果を有効に引き出すことができず、しかもドライ路面での操縦安定性が悪化していた。
【符号の説明】
【0043】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
11 周方向溝
12 横溝
13 多角形ブロック
14 多角形ブロック列
15 多角形リブ
16,17 サイプ
18 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備えた空気入りタイヤにおいて、前記トレッド部に溝幅が3.0mm以上であってタイヤ周方向に蛇行しながら延長する複数本の周方向溝と溝幅が3.0mm以上であってタイヤ幅方向に隣り合う一対の周方向溝間を連通する複数本の横溝とを設け、これら周方向溝及び横溝により5つ以上の角部を持つ多角形の形状を有する複数の多角形ブロックをタイヤ周方向に沿って千鳥状に配列してなる2列の多角形ブロック列を区画すると共に、該2列の多角形ブロック列の相互間にタイヤ周方向に延在する多角形リブを配置し、該多角形リブを前記2列の多角形ブロック列に隣接させたことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記多角形ブロックの形状を六角形としたことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記多角形ブロック単体の面積を2cm2 〜50cm2 としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記多角形ブロックにサイプ又は浅溝を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記サイプ又は前記浅溝の延長方向を前記多角形ブロックのいずれかの辺と平行にしたことを特徴とする請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記サイプ又は前記浅溝の延長方向をタイヤ周方向に隣り合う一対の多角形ブロックにおいて互いに異ならせたことを特徴とする請求項4又は5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記多角形リブにサイプ又は浅溝を設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記多角形リブにディンプル又は凹部を設けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記2列の多角形ブロック列を互いに相似形としたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記多角形ブロック列と前記多角形リブとを互いに相似形としたことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−35477(P2013−35477A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174583(P2011−174583)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)