説明

空気入りタイヤ

【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、耐カット性を他の性能を損なうことなく改善しうる空気入りタイヤに関する。
〔従来の技術〕
空気入りラジアルタイヤ、特に高速かつ重荷重が作用する航空機用タイヤは、近年の航空機の大型化、飛行速度の増大に伴い、使用速度、作用荷重が増大し、従って■航空機が滑走路に離着陸する際の衝撃を効果的に緩和させるため、タイヤの負荷時の撓み量が、例えば28〜38%と極めて大であり、従って大きな繰返し変形に耐えうること、■飛行機の高速化に伴い、離着陸に伴う速度が増大し、従って大荷重、大きな変形下における高速回転に耐えること、■滑走路とゲートとの間を移動するときの低速ではあるが、比較的長時間に亘り大きな荷重が作用するタクシー条件に耐えること、が望まれる。
他方、このようなま航空機用タイヤとして、カーカスコードをプライ間で互いに交差するように配したクロスプライ構造のものが多用されている。
しかしながら、この構造のタイヤは、カーカスコードが大きな角度で交差するため、横剛性が大であるという優れた利点を有する反面、トレッド部の剛性が、強固なベルトを有するラジアルタイヤに比して小であるため、トレッド部の摩耗がやや大という欠点もある。
さらに飛行機は、離着陸時、さらには滑走路と、ゲートとの間の走行時において、路面に散在しがちな異物によってトレッド部が損傷を受けやすく、又受傷したときには、その傷が比較的容易に内部層の表面に達し、又侵入した異物自体によっても内部層を傷つけるなど、トレッド部を損ない、耐久性を低下させる。従って、このようなトレッド部の損傷に対する抵抗性、即ち耐カット性を向上することも必要となる。
なおこのような内部層などの損傷は、トレッドゴムの取換えによるタイヤの更生を困難にする場合もある。
他方、航空機用タイヤとして、クロスプライ構造のもの他、カーカスコードをタイヤ赤道に略直角に配列したいわゆるラジアル、セミラジアル構造のラジアルタイヤが使用されつつあるが、ラジアルタイヤに比して、前記のように、摩耗性に劣りかつベルト層を有しないクロスプライ構造のタイヤにおいては、カーカスの保護のため、この耐カット性を高めることが肝要となる。
なおラジアルタイヤにおいて、例えば特開昭61-196804号公報は、ベルト層の外側にバント層を設ける航空機用タイヤを提案している。
さらに特開昭57-201704号公報は、波付けしたスチールコードを用いたバンド層を採用したタイヤを提案している。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、前者の提案に係る航空機用タイヤは、前記バンド層によって、幾分耐カット性を高めかつ面内曲げ剛さを改善しうるとはいえ、このタイヤにおいては、バンド層のコードとして、有機繊維コードを採用しているため、耐カット性を充分には向上しえない。
さらに後者のものでは、コードを波付けしているとはいえ、スチールコードを用いているため、伸び性に劣り、大きなタガ効果によって、タイヤの内圧充填によるインフレート形状をいびつとし、ときに、トレッド部に形成したリブが蛇行するという場合も生じる。又クロスプライタイヤにおいて、このようにスチールのみからなるコードを用いるときには、タイヤ重量が大となり、耐久性を低下させる。
本発明は、複合コードを用いたカットプロテクタを採用することを基本として、耐カット性を向上しうる空気入りタイヤの提供を目的としている。
なお本発明の空気入りタイヤは、高速重荷重用タイヤ、特に、航空機用タイヤとして好適に用いうる他、乗用車用タイヤ、トラック用タイヤなどとしても採用しうる。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、ビード部に複数のビードコアが並置されるとともに、外面が接地するトレッド部からサイドウオール部をへて前記ビード部のビードコアで夫々折返しかつタイヤ赤道に対して傾く有機繊維のカーカスコードを用いた複数のカーカスプライからなるカーカスと、該カーカスの外側に位置するとともにタイヤ赤道に対して0度以上かつ90度以下の角度で配置した保護コードを用いるカットプロテクタとを具えるとともに、前記保護コードは、有機繊維を用いた親コードに、螺旋で巻付く内のスチール素線と、この内の素線の外側でかつ内の素線と逆向きの螺旋で巻付く外のスチール素線とを含む金属製の子線を巻付けた複合コードからなる空気入りタイヤである。
〔作用〕
カーカスの外側に配したカットプロテクタは、路面上の異物などにより外層ゴムが損傷したとき、その傷がカーカスに達するのを防ぐ。さらにカットプロテクタの保護コードとして、有機繊維を用いた親コードに、金属製の子線を巻付けた複合コードを用いている。これにより、金属製の子線は、異物に対する防護体として機能し、カーカスの損傷を防ぐ。又重量増加を最小限に抑制する。又保護コードは、有機繊維からなる親コードが用いられることにより、適度の伸び性を付与でき、カーカスとトレッドゴムとの間に剛性段差が生じるのを防ぎ、損傷およびその拡大を防止できる。しかもこのカットプロテクタを、トレッド部の内方かつカーカスの外側に配したときには、トレッド部の面内曲げ剛さを幾分でも高めることができ、コーナーリング力の向上にも寄与させうる。
〔実施例〕
以下本発明の一実施例を、タイヤサイズ49×17 20/32PRの航空機用バイアスタイヤを例にとり、説明する。
第1、2図において、航空機用バイアスタイヤ1は、左右一対かつビードコア2が通るビード部3と、該ビード部3に連なりタイヤ半径方向外向きにのびるサイドウォール部4と、該サイドウォール部4の外端間を継ぐトレッド部5とからなるトロイド状のタイヤ基体6を具えるとともに、前記ビードコア2は、タイヤ軸方向内側から外向きに並置される第1のビードコア2A、第2のビードコア2B、第3のビートコア2Cを含んでいる。
又タイヤ基体6には、トレッド部5からサイドウオール部4をへてビード部3の前記ビードコア2A、2B、2Cで折り返すカーカス群G…からなるカーカス7と、カットプロテクタ9とが配され、又カットプロテクタ9は、カーカス7の外側を、トレッド部5からサイドウオール部4をへてビード部3に至る範囲で覆うカーカス保護プライ9Aと、トレッド部5の内方かつカーカス保護プライ9Aの半径方向外面にリトレッドゴム10を介して配したトレッド保護プライ9Bとを具える。
又カーカスプライ群Gは、第2図に詳示するように、前記第1のビードコア2Aにタイヤ内側から外側に巻付くタイヤ内方に位置する6枚のカーカスプライ11a、11a、11b…からなる第1のカーカスプライ群GA(第1図に点線で示す)、第2のビードコア2Bの底面に内側から外側に巻付く4枚のカーカスプライ11c…からなる第2のカーカスプライ群GB(第1図に実線で示す)、第3のビードコア2Cの底面に内側から外側に巻付く4枚のカーカスプライ11d…からなる第3のカーカスプライ群GC(第1図R>図に破線で示す)を包含し、これによって前記第1のカーカスプライ群GAの6枚のカーカスプライ11a…、11b…の内、外側の4枚の前記カーカスプライ11b…、第2のカーカスプライ群GBのカーカスプライ11c…、第3のカーカスプライ群GCのカーカスプライ11d…は、ともに第1、第2、第3のビードコア2A、2B、2Cで半径方向外方に折返す折返し部GA1、GB2、GC3を形成している。
又第1のカーカスプライ群GAの、内側の2枚のカーカスプライ11a、11aは、第1〜第3のビードコア2A〜2Cの底面をとおる底部GA2を介して、前記折返し部GC1の外面に沿い半径方向外方に折返す折返し部GA3を形成している。
さらに、第1〜第3のビードコア2A〜2Cを折返す第1〜第3のカーカスプライ群GA〜GCの本体部と、折返し部GA1〜GC1とには、各第1〜第3のビードコア2A〜2Cを囲むフィラー12を設け、かつその内部には、硬質ゴムからなりかつ半径方向外向きにのびる先細三角形状のビードエーペックス13…を設けることにより、ビード部3の剛性を高めている。
なお前記ビードエーペックス13として、硬質ゴム、例えば動的弾性率(E*)が岩本制作所製粘弾性スペクトロメータを用いて77℃、初期歪10%、振幅2.0%、周波数50Hz条件で、4mm巾×30mm長さ×2mm厚さの試料を用いて測定した値で200kg/cm2〜1500kg/cm2、好ましくは900kg/cm2以上のゴムを用いるのがよい。
又前記ビード部3に沿って、リムとの擦過損傷を防ぐチエーフア15を配置する。
前記カーカス保護プライ9Aは、カーカス7の外側、従って第3のカーカスプライ群GCの外面に沿ってトレッド部5、サイドウオール部4をのびかつビード部3では、前記第1のカーカスプライ群GAのカーカスプライ11a、11aの折返し部GA3外面を覆う主体部9A1に、本例では、前記底部GA2の下方をタイヤ内側までのびる延在部9A2を設けており、又保護コード20を用いて形成した2枚のプライ13a、13bを含んでいる。
前記トレッド保護プライ9Bは、前記のごとくトレッド部5の内方かつカーカス保護プライ9Aの半径方向外側にリトレッドゴム10を介して配され、かつ保護コード20を用いる一枚以上、本例では広狭2枚のプライ13c、13dからなり、巾広のプライ13cを内方に配している。このトレッド保護プライ9Bはトレッド部5の耐カット性を向上するとともに、トレッド部5のゴムとの間の剛性段差の発生を緩和し、その間における剪断応力を低減することにより、トレッド部5の損傷、及びその拡大成長を抑制する機能も具える。
そのためにトレッド保護プライ9Bは、好ましくはトレッド部5の全巾に配されるのが好ましい。又巾狭のプライ13cは、タイヤ1が正規リムにリム組されかつ正規内圧、正規荷重を付加したときにおいて、トレッド部5の外面が接地するタイヤ軸方向の接地巾Sの少なくとも70%以上とする。なお好ましくは、離着陸時の最大変形を考慮して、前記のごとく、トレッド部5の全巾とするのがよい。
さらにカットプロテクタ9は、2層のプライを用いる場合の他、一枚又は三枚以上の複数層とすることもできる。
次に前記保護コード20は、第3図に示すように、有機繊維を用いた親コード21に、金属製の子線22を巻付けた複合コードを用いている。この子線22には、強度に優れるスチールが好適に用いられる。
親コード21は、レーヨン、ポリエステル、ビニロン、ナイロン66等の脂紡族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリビニルアールコール系繊維等の有機繊維を用いたモノフィラメント21A、21Aを撚合わせた撚合わせコードを用いることにより、可撓性、伸び性を高めている。又親コード21は、約300d/2〜1350d/3程度の比較的小径のものが用いられる。
なお親コード21として、大径のモノフイラメントの他、モノフイラメントの複数本が撚合わされたロープ又はストランドからなる撚合せコードを用いてもよい。
子線22は、第3図に示すように、親コード21に螺旋に巻付く一本の内のスチール素線22bと、この内のスチール素線22bの外側でかつ内のスチール素線22bと逆向きの螺旋で巻付の外のスチール素線22cとから形成することができる。
内のスチール素線22bは、親コード21が撚合せコードである場合において、その撚りの螺旋の向きとは逆向きの螺旋とすることにより、親コード21の撚り戻しを防いでいる。
さらにスチール素線22b、22cは、直径が約0.05〜0.3mm程度であって、かつ紡錆、ゴムとのなじみを良好とするため、必要により厚さ2μm程度以上の真鍮メッキを施すのがよい。
さらに子線22は、2本のスチール素線22b、22cを用いるときには、内のスチール素線22bの螺旋ピッチPbを約0.3〜1.2mm程度、かつ外のスチール素線22cの螺旋ピッチPcを1.0〜2.0mm程度と、外のスチール素線22cの螺旋ピッチPcを、内のスチール素線22bの螺旋ピッチPbよりも大とする。
内のスチール素線22bの螺旋ピッチPbを前記範囲とすることにより、有機繊維からなる親コード21を保護しつつ保護コード20の可撓性を維持する。なおこのためには、螺旋に巻付くスチール素線22b、22b間の最小間隙を前記範囲において、素線直径の50%よりも大きい距離とする。なお螺旋ピッチPbが1.2mmより大であるとき、内のスチール素線22b、22b間の間隙が過大となり、カットプロテクタ9A、9Bとしての機能を低下させる。
なお外のスチール素線22cも、保護コード20の可撓性を維持しつつ保護機能を高めるものであって、内のスチール素線22bよりも疎に巻付けるのがよく、従って前記範囲としている。
第4図にナイロン66からなる1260d/2のS撚りの撚合せコードからなる親コード21に、直径0.15mmの内のスチール素線22bを螺旋ピッチPbが0.88mmでZ撚りに、かつその外側に同直径の外のスチール素線22cを螺旋ピッチPcが1.39mmでS撚りに夫々巻付けた保護コード20の伸び曲線を実線により例示している。
又1260d/2のナイロン66コードのみからなる撚合せコードAの伸び曲線を同図に破線を用いて示している。
同図から明らかなように、スチール素線22b、22cを有する保護コード20は、スチール素線を有しない撚合わせコードAに比して同一荷重において大きな伸びを示している。又保護コード20の破断荷重(kg f)は、撚合せコードAに比して20%程度低下することが見出された。
これはスチール素線22b、22cの巻付けによって予め親コード21の径が縮小していること、スチール素線22b、22cの巻付け後のスプリングバックによって長さが減じていることなどに起因すると考えられる。
又破断強度が減じるのはスチール素線22b、22cの巻付によるノッチ効果によるものと考えられるが、耐カット性を特に重視する保護コード20として、この程度の低下は問題とはならない。
この保護コード20は、タイヤ赤道COに対して、0〜90度の自在の傾きで配置されることにより、前記トレッド保護プライ9Bのプライ13c、13dを形成する。このトレッド保護プライ9Bが、耐カット性に加えて、トレッド部5の面内曲げ剛さを高め、コーナーリング力を増す補強層としても機能させるときには、プライ13c、13dが交差配列となるように、好ましくは10〜70度、さらに好ましくは30〜60度の範囲で傾ける。
又保護コード20は、5cm当たり20〜60本のエンズ(20〜60E/5cm)を配する。本数が20本よりも小のとき、耐カット性に劣り、60本をこえるときにはタイヤ重量を増大しかつ高価となる。
従って、好ましくは5cm当たり30〜50本程度である。又保護コード20は、一本又は複数本を小角度で螺旋状に巻回するコードワインデイング法によりプライ13c、13dを形成することもできる。
前記カーカス保護プライ9Aのプライ13a、13bの保護コード20の傾きは、カーカス7のカーカスコードに応じて定められる。
前記第1、第2、第3のカーカスプライ群GA〜GCのカーカスコードは、タイヤ赤道に対して20〜50度、好ましくは30〜45度の範囲で傾ける。しかもタイヤの内側から外側に順に配した第1〜第3のカーカスプライ群GA〜GCのカーカスコードの前記コード角度を、順次減少させる。
例えば、第1のカーカスプライ群GAのコード角度は、25〜50度、好ましくは30〜45度、本例では40度とし、第2、第3のカーカスプライ群GB、GCとなるに従い、第1のカーカスプライ群GAのコード角度に比して、1〜5度、好ましくは2度程度の角度段階で順次コード角度を減じる。即ち、第1のカーカスプライ群GAのコード角度が前記のように40度であるとき、第2のカーカスプライ群GCのコード各部を38度、第3のカーカスプライ群GCのコード角度を36度程度に設定する。
しかも、各カーカスプライ群GA〜GCにおける各カーカスプライ11a〜11dにおいては、各カーカスコードが互いに交差させて配列する。このようにコード角度を内側から外側にかけて減少させることによって、内から外に向かってプライの剛さを高め、好ましい所定のインフレート形状を得ることができる。
前記カーカス保護プライ9Aの保護コード20は、タイヤ赤道COに対して0〜90度、好ましくは10〜70度とすることができるが、カーカス7についての前記した観点から、カーカス保護プライ9Aのプライ13a、13bの保護コード20の傾きは、さらに小、例えば34度程度に設定するのがよい。
なお第1〜第3のカーカスプライ群GA〜GCの前記折返し部GA1〜GC1は、外向きに順次その高さを大とし、特に第3のカーカスプライ群GCの折返し部GC1は、タイヤの最大巾となる位置の近傍で終端させている。
さらに本実施例では、トレッド部5の内方かつ第2の内カーカスプライ群GBと第3の内カーカスプライ群GCとの間および前記外カーカスプライ群GDと第3の内カーカスプライ群GCとの間には2つの第1、第2のキャッププライ層C1、C2が配される。
キャッププライ層C1、C2は、ともに各2枚のキャッププライ層16a、16a、16b、16bからなり、又第1のキャップフライ層C1のキャップコードは、タイヤ赤道に対して36度の角度で、又第2のキャッププライ層のキャップコードは34度で互いに交わりかつ隣り合うカーカスコードと夫々交差する向きに配される。
又第1、第2のキャッププライ層C1、C2において、その少なくとも1つのキャッププライ層16a、16bは、タイヤの接地面のタイヤ軸方向の巾Sの110〜130%程度に設定する。これよりキャッププライ層16a、16bの外端は、ビード部の半径方向外方で途切れており、これによって、ビードコア2に巻付くカーカスプライ11a〜11dに比して小巾としつつ、使用において大きな負荷が作用するトレッド部5を効果的に補強し、さらに、キャッププライ層Cを、カーカスプライ群G間に配することによって、キャッププライ層Cの加硫時における熱作用による収縮に基づく応力を、その内側に位置するカーカスプライ群Gによって担持させうる。
前記カーカスプライ11a〜11d、キャッププライ層C1、C2の各カーカスコード、キャップコードには、ポリエチレン系繊維、ポリウレタン系繊維、セルローズ系繊維、セルローズエステル系繊維、さらには芳香族ポリアミド系繊維などの有機繊維が使用でき、特にナイロン66等の脂肪族ポリアミド系繊維を好適に用いうる。
さらに、カーカスコード、キャップコードは、比較的柔らかいゴム、例えば300%モジュラスが80〜160kg/cm2、好ましくは90〜110kg/cm2の範囲のトッピングゴムに埋設することにより、前記プライ11a〜11e、16a、16bを形成する。
なお前記リトレッドゴム10は、ブレーカ10の半径方向内側のその全巾にわたって延在し、その厚さを2.0mm以上としている。
これによってタイヤの更生に際してトレッドゴムを除去するときのカーカス7の損傷を防止しており、このリトレッドゴム10として、トレッドゴムより低い硬さのゴムを用いることによって、除去を容易とし前記カーカス7の損傷を防止する。なおトレッドゴムと同等、又はより硬いゴムを用いてカーカス7を保護するのもよい。
さらにタイヤ1には、カットプロテクタ9として、カーカス保護プライ9A、トレッド保護プライ9Bの双方を用いるときの他、いずれか一方を用いるのもよい。
〔具体例〕
タイヤサイズ49×17 32PR、の航空機用バイアスタイヤを、第1図および第1表に示す仕様により試作した(なお第1表において、第2表の各記号で示すコードを用いている。)
夫々正規内圧を充填するとともに、米国航空局規格TSO-C62cに基づくタクシーシュミレ





ーションテストに基づき耐久性をテストした。なおテスト後、200%負荷での離陸に耐えたものを○印で示す(なお回数は、テストにおける破壊する迄の回数を示す)。
又コーナリング力は、フラットベルト式の室内試験機を用いて測定し、比較例1を100とする指数表示で示している。数値が大なる程よい結果であることを示す。重量も比較例1を100とする指数により示している。
耐カット性は、第5図に示すようにドラムに高さ5mm先端半径0.5Rの楔片aを散在させて150%の負荷にて回転させ、タイヤ破壊に至る時間を、比較例1を100とする指数表示で示している。指数が大なる程よい結果であることを示している。なお指数120以上が合格基準である。
〔発明の効果〕
このように本発明のタイヤは、他の性能を損なうことなく、耐カット性を向上しうる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例を示す断面図、第2図はプライ構成を例示する断面図、第3図は保護コードを例示する線図、第4図は保護コードの特性を例示する線図、第5図5図は耐カット性テストのドラムを例示する斜視図である。
2、2A、2B、2C……ビードコア、3……ビード部、4……サイドウォール部、5……トレッド部、7……カーカス、10……リトレッドゴム、11a、11b、11c、11d……カーカスプライ、20……保護コード、21……親コード、22……子線、22b……内のスチール素線、22c……外のスチール素線。
C、C1、C2……キャッププライ層、G……カーカスプライ群、GA……第1の内カーカスプライ群、GB……第2のカーカスプライ群、GC……第3の内カーカスプライ群、GD……外カーカスプライ群。

【特許請求の範囲】
【請求項1】ビード部に複数のビードコアが並置されるとともに、外面が接地するトレッド部からサイドウオール部をへて前記ビード部のビードコアで夫々折返しかつタイヤ赤道に対して傾く有機繊維のカーカスコードを用いた複数のカーカスプライからなるカーカスと、該カーカスの外側に位置するとともにタイヤ赤道に対して0度以上かつ90度以下の角度で配置した保護コードを用いるカットプロテクタとを具えるとともに、前記保護コードは、有機繊維を用いた親コードに螺旋で巻付く内のスチール素線と、この内の素線の外側でかつ内の素線と逆向きの螺旋で巻付く外のスチール素線とを含む金属製の子線を巻付けた複合コードからなる空気入りタイヤ。
【請求項2】前記カットプロテクタは、前記保護コードからなりかつトレッド部の内方しかもタイヤがリム組されかつ正規内圧、正規荷重を付加したときの前記トレッド部外面のタイヤ軸方向の接地巾の70%をこえる巾のトレッド保護プライを含むことを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】前記カットプロテクタは、保護コードからなりかつ前記カーカスの外側をトレッド部からサイドウオール部をへてビード部に至る範囲で覆うカーカス保護プライを有することを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】前記カットプロテクタは、保護コードからなりかつ前記カーカスの外側をトレッド部からサイドウオール部をへてビード部に至る範囲で覆うカーカス保護プライと、該カーカス保護プライの半径方向外側かつトレッド部の内方しかもタイヤがリム組されかつ正規内圧、正規荷重を付加したときの前記トレッド部外面のタイヤ軸方向の接地巾の70%をこえる巾のトレッド保護プライとを有することを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】前記外のスチール素線は、その螺旋ピッチが、内のスチール素線の螺旋ピッチよりも大であることを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。

【第1図】
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【第3図】
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【第5図】
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【第2図】
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【第4図】
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【特許番号】第2688522号
【登録日】平成9年(1997)8月22日
【発行日】平成9年(1997)12月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平1−131208
【出願日】平成1年(1989)5月24日
【公開番号】特開平2−310105
【公開日】平成2年(1990)12月25日
【出願人】(999999999)住友ゴム工業株式会社
【参考文献】
【文献】特開 昭51−106906(JP,A)
【文献】特開 昭61−196804(JP,A)
【文献】特開 昭59−15587(JP,A)
【文献】特開 昭57−143535(JP,A)
【文献】実開 昭58−180705(JP,U)
【文献】実開 昭56−53798(JP,U)