説明

空気冷媒式冷凍装置のデフロスト方法及び装置

【課題】空気冷媒式冷凍装置において、省エネ化された効率の良いデフロスト運転を可能にする。
【解決手段】圧縮機12の吸入圧を検出する圧力センサ50と、圧縮機出口側冷媒温度を検出する温度センサ52と、膨張機18出口側空気冷媒温度を検出する温度センサ54と、一次冷却器22出口側の空気冷媒を膨張機入口側にバイパスさせる弁介装の第1バイパス路36と、膨張機出口側空気冷媒を被冷却室32をバイパスしてフロストトラップ34入口側に供給する弁介装の第2バイパス路38とを設けている。圧縮機吸入圧が設定圧Pcs以下になった時、空気冷媒を第1バイパス路36及び第2バイパス路38に通してデフロスト運転を行ない、圧縮機出口側冷媒温度を許容温度以下の設定温度Tcsに維持しながら、膨張機出口部から熱回収器入口部に亘る着霜区域の空気冷媒温度が0℃近傍のプラス温度の融解終了温度設定値Ttsとなった時、デフロスト工程を終了させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気を冷媒として用いる空気冷媒式冷凍装置において、省エネ化された効率の良いデフロスト運転を可能にするデフロスト方法及びデフロスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒として空気を用い、圧縮機で高圧高温の空気とし、これを冷却器で冷却した後、膨張機で低圧低温とする空気冷媒式冷凍装置は、温暖化係数の高いフロン系冷媒などを用いないので、環境を害しない利点がある。しかし、蒸発と凝縮とを行わせる相変化方式の冷凍サイクルに比べると、冷却能力は劣る。しかし、冷媒空気を各種用途の空間内に直接吹き出してその空間を冷却する直接冷却方式は、室内空気と熱交換する間接冷却方式と比べて、冷却効果が高い。
【0003】
空気冷媒式冷凍装置の冷凍サイクルは、反時計方向に作動する逆ブレートンサイクルと称される冷凍サイクルを構成し、航空機の空調用冷凍サイクルとしてよく知られている。逆ブレートンサイクルは、等エントロピー工程(断熱圧縮工程及び断熱膨張工程)と等圧工程との組み合わせからなっている。
【0004】
図4に一般的な空気冷媒式冷凍装置の構成を示す。一般的な空気冷媒式冷凍装置100は、冷媒循環路102に冷凍サイクル構成機器類が介設されている。駆動モータ104の単一の出力軸104aに圧縮機106と膨張機108とが連結され、圧縮機106と膨張機108とは同時に駆動される。圧縮機106から吐出された高圧高温の空気冷媒は、一次冷却器112で一次冷却される。一次冷却器112には冷却水循環路110が接続されている。冷却水循環路110では、冷却水ポンプ116と流量調整可能な通水弁118とが設けられ、冷却水ポンプ116によって矢印方向に冷却水が循環している。冷却水は、冷却塔114で冷却され、一次冷却器112で空気冷媒と熱交換して空気冷媒を冷却する。
【0005】
一次冷却器112で冷却された空気冷媒は、熱回収器120で、被冷却室122から戻る空気冷媒と熱交換して、さらに冷却される。熱回収器120で冷却された空気冷媒は、膨張機108で膨張し、低圧低温空気となって、被冷却室122に供給される。被冷却室122は、例えば冷凍庫やフリーザ等で構成される。被冷却室122で被冷却品の冷凍に供した後の空気冷媒は、被冷却室122内から運ばれる微細氷が含まれ、この微細氷はフロストトラップ124で一部が捕集される。フロストトラップ124を出た空気冷媒は、熱回収器120で一次冷却器112を出た高圧高温空気冷媒と熱交換され、該高圧高温空気冷媒を冷却し、その後、圧縮機106に送られる。
【0006】
空気冷媒式冷凍装置の冷凍サイクル(逆ブレートンサイクル)が理想的に作動する場合を図5により説明する。図5において、図中の符号a〜fの位置は、図4中の符号a〜fの位置に合わせてある。行程(a→b)及び行程(d→e)は、等エントロピー行程であり、行程(a→b)は断熱圧縮行程であり、行程(d→e)は断熱膨張行程である。行程(b→d)及び行程(e→a)は等圧行程である。行程(b→c)は、一次冷却器112で空気冷媒が冷却されるときの行程であり、行程(e→f)は、被冷却室122で、空気冷媒が被冷却品を冷却し、被冷却品の保有熱を受け取るときの行程である。
【0007】
行程(c→d)は、一次冷却器22を出た空気冷媒が熱回収器120で熱交換され冷却されるときの行程であり、行程(f→a)は、フロストトラップ124を出た空気冷媒が熱回収器120で熱交換され吸熱するときの行程である。両行程の前後のエントロピー差は同一である。また、点aと点cの温度は同一であり、点dと点fの温度は同一である。
【0008】
通常の冷凍運転においては、駆動モータ104は定格回転数に維持され、冷却水循環路110に設けられた通水弁115は常時全開(最大通水量)となっている。低温側等圧熱交換行程(f→a)と高温側等圧熱交換行程(c→d)とは、等圧状態で等量の熱量を交換する行程、即ち、冷熱の再生利用行程である。
【0009】
このような空気冷媒式冷凍装置の最大の課題は、運転時間の経過に従い、被冷却室122の出口側から熱回収器120の低温部入口側までの冷媒循環路に、被冷却室122から運ばれる微細氷が次第に堆積(着霜)することである。熱回収器120の入口側での着霜進行に伴い、低温側冷媒路の圧損が増加し、終には冷媒通路が閉塞状態となる。また、着霜の進行と共に圧縮機106の吸入圧が低下し、冷凍サイクルのCOPが低下する。着霜防止法として、被冷却室122の出口側冷媒路に簡易な分離器、即ち、デフロストトラップ124を設ける試みがなされている。このデフロストトラップ124で捕集した霜や、熱回収器120、低温側冷媒循環路の着霜は、デフロスト運転を行なって融解除去している。
【0010】
特許文献1〜3には、夫々、空気冷媒式冷凍装置において、低温側冷媒路にデフロストトラップを設けること、及びデフロスト運転時に圧縮機吐出側の0℃以上の空気冷媒を、バイパス路を通して着霜区域に流し、デフロストトラップ等に溜まった着霜を溶解除去する技術が開示されている。
【0011】
特許文献1(図2)には、デフロスト運転時に、圧縮機吐出側の高圧高温空気冷媒を、膨張機を通して低圧低温にし、低圧低温にした空気冷媒を、膨張機の出口側から被冷却室をバイパスさせ、被冷却室下流側の着霜区域に送るデフロスト方法が開示されている。
また、特許文献1(図1)及び特許文献2及び3には、デフロスト運転時に、圧縮機吐出側の高圧高温空気冷媒を、膨張機及び被冷却室をバイパスして、被冷却室下流側の着霜区域に送るデフロスト方法が開示されている。
【0012】
また、特許文献4には、空気冷媒式冷凍装置において、デフロスト運転を行なった後、融解水を排出する工程、及び融解水排出工程後、被冷却室をバイパスさせて空気冷媒を循環させることで、冷媒循環路を予冷する予冷工程をもうけることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平11−132582号公開公報
【特許文献2】特開2003−287299号公開公報
【特許文献3】特開2006−118772号公開公報
【特許文献4】特開2008−298322号公開公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
図6は、空気冷媒式冷凍装置の実際の冷凍サイクルを示した図である。図6に示すように、実際の冷凍サイクルでは、圧縮機106の圧縮行程(a→b)及び膨張機108の膨張行程(d→e)は、等エントロピー行程ではなく、夫々Δi及びΔiだけエントロピーが増加する行程、即ち不可逆行程となる。
【0015】
そのため、特許文献1〜3に開示されているように、デフロスト運転時に、圧縮機吐出側の高圧高温空気冷媒を、膨張機をバイパスして、被冷却室下流側の着霜区域に流すデフロスト方法では、空気冷媒を循環させていくにつれて、圧縮機吐出後の空気冷媒温度が異常に上昇し、空気冷媒の温度制御が困難になる。その結果、デフロスト運転の継続が困難になるおそれがある。
【0016】
また、特許文献1(図2)に開示されているように、圧縮機吐出側の高圧高温空気冷媒を、膨張機を通し低圧低温にして、被冷却室下流側の着霜区域に循環するデフロスト方法では、圧縮機吐出側空気冷媒の温度や着霜区域の配管系の温度等を監視しながら、圧縮機の容量や冷却水循環路の冷却水量等を制御していかないと、省エネされた効率の良いデフロスト運転はできない。
【0017】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、空気冷媒式冷凍装置において、省エネ化された効率の良いデフロスト運転を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
かかる目的を達成するため、本発明の空気冷媒式冷凍装置のデフロスト方法は、駆動装置の単一出力軸に連結された圧縮機及び膨張機と、圧縮機吐出側空気冷媒を冷却する冷却器と、冷却された空気冷媒を被冷却室から出た戻り空気冷媒と熱交換する熱回収器とを備え、熱回収後の空気冷媒を膨張機で減圧し、被冷却室に供給する空気冷媒式冷凍装置のデフロスト方法において、圧縮機吸入圧、圧縮機出口の空気冷媒温度、及び膨張機出口側の着霜区域の空気冷媒温度を監視する工程と、圧縮機吸入圧が設定圧以下になった時、空気冷媒を冷却器出口側から膨張機入口側にバイパスさせると共に、空気冷媒を膨張機出口側から被冷却室出口側にバイパスさせるデフロスト運転を行ない、冷却器への冷却媒体の供給を遮断又は加減することにより、圧縮機及び膨張機の損失動力の全量又は一部に相当するエンタルピー熱量を用いて前記着霜区域の着霜を融解させるデフロスト工程と、からなり、圧縮機出口の空気冷媒温度を許容温度以下の設定温度に維持しながら、着霜区域の空気冷媒温度が0℃近傍のプラス温度の着霜融解終了温度となった時、デフロスト工程を終了するようにしたものである。
【0019】
本発明方法では、圧縮機吸入圧、圧縮機出口の空気冷媒温度、及び着霜区域の空気冷媒温度を監視しながら、空気冷媒を冷却器出口から膨張機入口にバイパスさせると共に、空気冷媒を膨張機出口側から被冷却室出口側にバイパスさせるデフロスト運転を行なう。このとき、冷却器への冷却媒体の供給を遮断又は加減することにより、デフロスト運転時の空気冷媒温度を必要以上に昇温させることなく、圧縮機及び膨張機の損失動力の全量又は一部に相当するエンタルピー熱量のみを利用したデフロスト運転が可能になる。
【0020】
なお、「膨張機出口側の着霜区域」とは、膨張機の翼車近傍及び出口配管から被冷却室をバイパスし、熱回収器の低温側配管に至る低温側冷媒路に沿う領域を指す。
【0021】
また、過去の試験や経験から、膨張機出口側の着霜区域の空気冷媒温度と着霜融解終了時の空気冷媒温度との相関関係を把握しておく。そして、膨張機出口側の着霜区域の空気冷媒温度が0℃近傍のプラス温度の着霜融解終了温度となった時、デフロスト運転を終了する。これによって、圧縮機出口の空気冷媒温度を許容温度以下に保持しながら、余分な動力を消費しない省エネ化された効率の良いデフロスト運転を実現できる。なお、膨張機出口側の着霜区域の空気冷媒温度を計測する場合、温度センサの取付位置は、事前の実験により最適な場所を選定しておく。また、「0℃近傍のプラス温度」とは、例えば、2〜7℃の範囲を言う。
【0022】
本発明方法によれば、デフロスト工程が短時間で済むようになるので、デフロスト工程を頻繁に行なうことが可能になる。そのため、膨張機出口側の着霜区域に、必ずしもフロストトラップを設ける必要がなくなる。
【0023】
本発明方法において、好ましくは、着霜融解終了温度となった時、冷却器で冷却媒体の供給を開始し、膨張機出口側の空気冷媒温度が0℃近傍のプラス温度に収束した時、デフロスト工程を終了するようにするとよい。これによって、圧縮機出口側で空気冷媒温度の異常高温を招くことなく、かつ余分な熱量を消費することなく、必要最小限のエネルギーでデフロスト運転を行なうことができる。また、膨張機出口側の空気冷媒温度を0℃近傍のプラス温度にしてデフロスト運転を終えることで、通常冷凍運転に復帰する時、復帰に要する時間とエネルギー(駆動モータの動力)とが無駄に消費されることがなくなる。
【0024】
本発明方法によるデフロスト運転を行なう場合、例えば、夏期のデフロスト運転終了間際において、冷却器出口の空気冷媒温度がより高い温度となったとき、膨張機出口の空気冷媒温度も0℃近傍のプラス温度より相当高くなり、無駄なエネルギーを消費することになる。夏期の冷却水温が高すぎる場合、このような事態が発生する。この場合、冷却器に供給される冷却水量を最大にして無駄を最小限に抑えるようにする。また、膨張機出口側の空気冷媒温度が0℃近傍のプラス温度以下になる場合には、冷却器への冷却媒体供給量を減少して、該空気冷媒温度を0℃近傍のプラス温度に高めるようにする。
【0025】
本発明方法において、デフロスト工程時に、冷却器への冷却媒体の供給を最大としても、圧縮機出口側空気冷媒温度が許容温度を超えるとき、圧縮機の回転数を減少させて圧縮機出口側空気冷媒温度を許容温度以下の設定値に維持するようにするとよい。このように、冷却器への冷却媒体供給と、圧縮機の回転数制御とを併用することにより、夏期のような高温環境下においても、圧縮機出口側空気冷媒温度を許容温度以下に維持することができる。
【0026】
本発明方法において、デフロスト工程時に、周囲環境によって前記着霜区域の空気冷媒温度が設定温度を越えた時、冷却器への冷却媒体の供給を開始し、該冷却媒体の供給量を制御して膨張機出口側空気冷媒温度を設定温度に維持するようにするとよい。これによって、余分な動力を消費しない省エネ化された効率の良いデフロスト運転が可能になる。なお、前記設定温度として、例えば、0℃近傍のプラス温度を採用する。
【0027】
デフロスト工程では、膨張機出口側空気冷媒温度が上昇していても、融け残りの着霜が存在する可能性がある。これを回避するためには、膨張機出口側の着霜区域に設けられた温度センサの設置場所を当該融け残り着霜部に移動して、最後の着霜部温度が測定できるようにする必要がある。
【0028】
前記本発明方法の実施に直接使用可能な本発明の空気冷媒式冷凍装置のデフロスト装置は、駆動装置の単一出力軸に連結された圧縮機及び膨張機と、圧縮機吐出側空気冷媒を冷却する冷却器と、冷却された空気冷媒を被冷却室から出た戻り空気冷媒と熱交換する熱回収器とを備え、熱回収後の空気冷媒を膨張機で減圧し、被冷却室に供給する空気冷媒式冷凍装置のデフロスト装置において、圧縮機吸入圧を検出する圧力センサと、圧縮機出口側の空気冷媒温度を検出する第1温度センサと、膨張機出口側の着霜区域の空気冷媒温度を検出する第2温度センサと、冷却器出口側の空気冷媒を被冷却室をバイパスさせる弁介装の第1バイパス路と、膨張機出口側の空気冷媒を被冷却室出口側にバイパスさせる弁介装の第2バイパス路と、圧縮機吸入圧が設定圧以下になった時、空気冷媒を前記第1バイパス路及び第2バイパス路に通してデフロスト運転を行ない、圧縮機出口の空気冷媒温度を許容温度以下の設定温度に維持しながら、前記着霜区域の空気冷媒温度が0℃近傍のプラス温度の融解終了温度となった時、デフロスト工程を終了させるコントローラと、を備えたものである。
【0029】
本発明装置では、圧縮機吸入圧、圧縮機出口の空気冷媒温度、及び膨張機出口側の着霜区域の空気冷媒温度を監視しながら、空気冷媒を冷却器出口から膨張機入口にバイパスさせると共に、空気冷媒を膨張機出口から被冷却室出口側にバイパスさせるデフロスト運転を行なう。これによって、デフロスト運転時の空気冷媒温度を必要以上に昇温させることなく、圧縮機及び膨張機の損失動力に相当するエンタルピー熱量のみを利用したデフロスト運転が可能になる。
【0030】
また、膨張機出口側の着霜区域の空気冷媒温度が0℃近傍のプラス温度の着霜融解終了温度となった時、デフロスト運転を終了するようにしているので、圧縮機出口の空気冷媒温度を許容温度以下に保持しながら、余分な動力を消費しない省エネ化された効率の良いデフロスト運転を実現できる。
【0031】
本発明装置によれば、デフロスト運転が短時間で済むようになるので、デフロスト運転を頻繁に行なうことが可能になる。そのため、膨張機出口側の着霜区域に、必ずしもフロストトラップを設ける必要がなくなる。
【0032】
本発明装置において、デフロスト運転時に、着霜区域の空気冷媒温度が前記融解終了温度となった時、コントローラによって、前記冷却器で冷却媒体の供給を開始し、前記第2温度センサの検出値が0℃近傍のプラス温度に収束した時、デフロスト工程を終了するように制御させるとよい。これによって、圧縮機出口側で空気冷媒温度の異常高温を招くことなく、かつ余分な熱量を消費することなく、必要最小限のエネルギーでデフロスト運転を行なうことができる。また、膨張機出口側の空気冷媒温度を0℃近傍のプラス温度にしてデフロスト運転を終えることで、通常冷凍モードに復帰する時、復帰に要する時間とエネルギー(駆動モータの動力)とが無駄に消費されることがなくなる。
【発明の効果】
【0033】
本発明方法によれば、駆動装置の単一出力軸に連結された圧縮機及び膨張機と、圧縮機吐出側空気冷媒を冷却する冷却器と、冷却された空気冷媒を被冷却室から出た戻り空気冷媒と熱交換する熱回収器とを備え、熱回収後の空気冷媒を膨張機で減圧し、被冷却室に供給する空気冷媒式冷凍装置のデフロスト方法において、圧縮機吸入圧、圧縮機出口の空気冷媒温度、及び膨張機出口側の着霜区域の空気冷媒温度を監視する工程と、圧縮機吸入圧が設定圧以下になった時、空気冷媒を冷却器出口側から膨張機入口側にバイパスさせると共に、空気冷媒を膨張機出口側から被冷却室出口側にバイパスさせるデフロスト運転を行ない、冷却器への冷却媒体の供給を遮断又は加減することにより、圧縮機及び膨張機の損失動力に相当するエンタルピー熱量の全量又は一部を用いて着霜を融解させるデフロスト工程と、からなり、圧縮機出口の空気冷媒温度を許容温度以下の設定温度に維持しながら、膨張機出口側の着霜区域の空気冷媒温度が0℃近傍のプラス温度の着霜融解終了温度となった時、デフロスト工程を終了するようにしたので、圧縮機吐出側温度を許容温度以下に維持しながら、デフロスト運転時の空気冷媒温度を必要以上に昇温させることなく、圧縮機及び膨張機の損失動力に相当するエンタルピー熱量のみを利用したデフロスト運転が可能になり、余分な動力を消費しない省エネ化された効率の良いデフロスト運転を実現できる。そのため、膨張機出口側の着霜区域に、必ずしもフロストトラップを設ける必要がなくなる。
【0034】
また、本発明装置によれば、駆動装置の単一出力軸に連結された圧縮機及び膨張機と、圧縮機吐出側空気冷媒を冷却する冷却器と、冷却された空気冷媒を被冷却室から出た戻り空気冷媒と熱交換する熱回収器とを備え、熱回収後の空気冷媒を膨張機で減圧し、被冷却室に供給する空気冷媒式冷凍装置において、圧縮機吸入圧を検出する圧力センサと、圧縮機出口側の空気冷媒温度を検出する第1温度センサと、膨張機出口側の着霜区域の空気冷媒温度を検出する第2温度センサと、冷却器出口側の空気冷媒を膨張機入口側にバイパスさせる弁介装の第1バイパス路と、膨張機出口側の空気冷媒を被冷却室出口側にバイパスさせる弁介装の第2バイパス路と、圧縮機吸入圧が設定圧以下になった時、空気冷媒を前記第1バイパス路及び第2バイパス路に通してデフロスト運転を行ない、圧縮機出口の空気冷媒温度を許容温度以下の設定温度に維持しながら、膨張機出口側の着霜区域の空気冷媒温度が0℃近傍のプラス温度の融解終了温度となった時、デフロスト工程を終了させるコントローラと、を備えているので、前記本発明方法と同様の作用効果を得ることができるのに加え、前記コントローラによって、このデフロスト運転を自動化できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明方法及び装置の第1実施形態に係る空気冷媒式冷凍装置の系統図である。
【図2】前記第1実施形態の制御装置のブロック線図である。
【図3】本発明方法及び装置の第2実施形態に係る空気冷媒式冷凍装置の系統図である。
【図4】従来の一般的な空気冷媒式冷凍装置の系統図である。
【図5】空気冷媒式冷凍装置における理想的な逆ブレートンサイクルを示す線図である。
【図6】空気冷媒式冷凍装置における実際の逆ブレートンサイクルを示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0037】
(実施形態1)
本発明方法及び装置の第1実施形態を図1及び図2に基づいて説明する。図1において、本実施形態の空気冷媒式冷凍装置10Aは、冷媒循環路12に冷凍サイクル構成機器類が介設されている。駆動モータ14の単一の出力軸14aに圧縮機16と膨張機18とが連結され、圧縮機16と膨張機18とは、同軸で駆動される。圧縮機16から吐出された高圧高温の空気冷媒は、一次冷却器22で一次冷却される。一次冷却器22には冷却水循環路20が接続されている。冷却水循環路20では、冷却水ポンプ26と流量調整可能な通水弁28とが設けられ、冷却水ポンプ26によって矢印方向に冷却水が循環される。冷却水は、冷却塔24で冷却され、一次冷却器22で空気冷媒と熱交換し空気冷媒を冷却する。
【0038】
一次冷却器22で冷却された空気冷媒は、熱回収器30で、被冷却室32から戻る空気冷媒と熱交換され、さらに冷却される。熱回収器30で冷却された空気冷媒は、膨張機18で膨張し、低圧低温空気となって、被冷却室32内の空気吹出口320に供給される。被冷却室32は、例えば冷凍庫やフリーザ等で構成される。被冷却室32内に貯蔵された被冷却品の冷凍に供した後の空気冷媒は、空気取入口322から吸入され、フロストトラップ34で、空気冷媒に含まれる微細氷の一部が捕集される。フロストトラップ34を出た空気冷媒は、熱回収器30で一次冷却器22の出口側空気冷媒と熱交換され、該出口側空気冷媒を冷却し、その後、圧縮機16に送られる。
【0039】
また、熱回収器30をバイパスして一次冷却器22の出口側と膨張機18の入口側とを接続する第1バイパス路36と、被冷却室32をバイパスして膨張機18の出口側とフロストトラップ34の入口側とを接続する第2バイパス路38が設けられている。圧縮機16の入口には、吸入圧を調整する吸入圧力調整弁160が設けられている。熱回収器30出口側冷媒循環路12にドレン弁300が設けられ、膨張機18の入口側及び出口側の冷媒循環路12に、夫々ドレン弁12a及び12bが設けられている。また、フロストトラップ34の下部にドレン弁340が設けられている。冷媒循環路12には、止め弁40,入口弁42及び出口弁44が介設され、第1バイパス路36にはバイパス弁46が介設され、第2バイパス路38にはバイパス弁48が介設されている。
【0040】
また、圧縮機16の出口側冷媒圧力を検出する圧力センサ50と、圧縮機16の出口側冷媒温度を検出する温度センサ52と、膨張機18の出口側冷媒温度を検出する温度センサ54とが設けられている。なお、温度センサ54は、膨張機出口側ではなく、フロストトラップ34内に設けられてもよい。即ち、温度センサ54は、過去の運転結果等から、最後まで着霜が残りそうな場所に設置するとよい。
【0041】
また、図2に示すように、空気冷媒式冷凍装置10Aの運転を制御するコントローラ56が設けられている。コントローラ56は、圧力センサ50、温度センサ52及び54の検出値を入力し、これらの検出値に基づいて、駆動モータ14及び冷却水ポンプ26の回転数を制御すると共に、流量調整可能な通水弁28の開度を制御し、開閉弁40,42、44,46及び48の開閉動作を制御するものである。
【0042】
かかる構成において、圧力センサ50によって圧縮機出口冷媒圧力を検出し、この検出値が設定値Pcsまで低下した時点で、通常冷凍運転を停止し、デフロスト運転を開始する。デフロスト運転では、まず、圧縮機出口冷媒温度が設定値Tcsとなるように、駆動モータ14の回転数を制御する。次に、バイパス弁48を全開し、被冷却室32の入口弁42及び出口弁44を全閉する。さらに、バイパス弁46を全開し、止め弁40を全閉する。その後、冷却水ポンプ26を停止させ、通水弁28を閉鎖する。
【0043】
通水弁28を閉鎖すると、一次冷却器22出口の冷媒温度は、圧縮機16出口の冷媒温度と一致する。この冷却されていない高温の空気冷媒を第1バイパス路36を通して直接膨張機18に導入する。この膨張行程は、図6中、膨張行程(b→g)で示される。膨張機18出口の空気冷媒は、状態gとなる。膨張機18出口の高温の空気冷媒を第2バイパス路38を通して直接フロストトラップ34の入口側にバイパスさせる。これによって、膨張機18の翼車付近及び出口側配管、フロストトラップ34、熱回収器30の低温側着霜域及びこれら装置が介設された低温側冷媒循環路12の着霜の融解が進行する。
【0044】
図6中、熱回収器30の低温側出口aの冷媒温度(圧縮機入口温度)は、デフロスト運転の進行と共に、徐々に上昇する。即ち、冷却水循環路20の通水は遮断状態であるため、デフロスト運転中、冷媒循環路12の外部への放熱は零である。そのため、駆動モータ14から常時エンタルピー差(ΔH=Hg−Ha)に相当する熱量が、空気冷媒から、膨張機18出口からフロストトラップ34を経て熱回収器30に亘る着霜区域に投入される。従って、圧縮機入口の冷媒温度は徐々に上昇する。
【0045】
圧縮機入口の冷媒温度が上昇すれば、圧縮機出口bの冷媒温度及び膨張機出口eの冷媒温度も上昇する。換言すれば、デフロスト運転時の冷凍サイクル全体が高温側へ移行することになる。圧縮機出口の冷媒温度は、許容温度以下に抑える必要がある。そのため、許容温度以下に設定される圧縮機出口冷媒温度設定値Tcsを設定しておき、コントローラ56によって、圧縮機16の出口側空気冷媒温度が設定値Tcs以下に維持されるように、空気冷媒式冷凍装置10Aの運転を制御する。
【0046】
この制御方法は、まず一次冷却器22に供給する冷却水量を制御し、一次冷却器22への冷却水量を最大としても、圧縮機出口冷媒温度設定値Tcsを超える場合には、圧縮機16の回転数を減少させて、圧縮機16の出口冷媒温度を設定値Tcs以下にするものである。夏期以外は、冷却水量の調整で十分であり、夏期においても、冷却水量の調整と圧縮機16の回転数制御とを併用することで、圧縮機16の出口冷媒温度を設定値Tcs以下に制御できる。
【0047】
なお、特許文献2及び3に開示されたデフロスト手段、即ち、圧縮機出口の空気冷媒を膨張機を通さないで着霜区域に導入するデフロスト方法では、デフロスト運転の進行と共に、圧縮機出口の冷媒温度が異常に上昇し、空気冷媒の温度制御が困難になる。その結果、デフロスト運転の継続が困難になるおそれがある。
【0048】
デフロスト運転により、着霜区域の全着霜が最終的に完全融解する場所と温度を、過去の試験等から得られた知見を基に予め設定しておく。温度センサ54はこの場所に設置するのがよい。この融解終了温度設定値Ttsは0℃近傍のプラス温度とする。デフロスト工程の進行とともにデフロスト負荷が減少するため、圧縮機入口側冷媒温度が上昇し、膨張機出口側冷媒温度も上昇する。温度センサ54の検出値をこの設定値Ttsに到達させるためには、一次冷却器22の冷却水通水量を漸増させる自動制御が必要である。膨張機出口側冷媒温度が設定値Ttsに到達した時点をもって、全着霜の融解終了時点と定める。
【0049】
全着霜の終了と同時に、一次冷却器22に冷却水の通水を開始する。冷却水の通水を開始し、温度センサ54の検出値(膨張機出口側冷媒温度)が設定値Ttsに収束するように通水量を制御する。即ち、図6中のサイクル(g→b→c→g→g)を形成させる。そして、温度センサ54の検出値が設定値Ttsに安定するようにこの収束運転を続行する。
【0050】
デフロスト運転の終了状態における圧縮膨張サイクルは、図6の(g→b→c→g)となる。デフロスト負荷が零であるから、圧縮機入口点と膨張機出口点は点gで一致する。即ち、圧縮機入口点の冷媒温度、膨張機出口点の冷媒温度及び設定値Ttsの三点の温度は一致する。デフロスト運転開始時点における膨張機入口点bは、デフロスト運転終了時点で点bに移る。同様に圧縮機入口点aは点gに移り、膨張機出口点gは点gに移行する。なお、図6中膨張行程(c→g)は、膨張機出口冷媒温度が0℃となる膨張行程を示す。
【0051】
このように、収束運転を行なうことにより、通常冷凍運転への復帰時に、復帰に要する時間とエネルギー(駆動モータ14の動力)が無駄に消費されることを防止できる。夏期において、一次冷却器22の出口冷媒温度が高い温度になり、膨張機出口冷媒温度が0℃よりかなり高い温度となったとき、無駄なデフロストエネルギーを消費することになる。この場合、一次冷却器22への通水量を最大にして無駄を最小限に抑えるようにする。
【0052】
膨張機出口冷媒温度が0℃近傍に制御されると、圧縮機出口冷媒温度も低下する。圧縮機出口冷媒温度が設定値Tcsより低下すると、コントローラ56により圧縮機回転数を増加させ、圧縮機出口冷媒温度を設定値Tcsになるようにする。
【0053】
デフロスト工程の終了と同時に、排水・乾燥工程を開始する。排水・乾燥工程は、まず、ドレン弁12a,12b、300及び340を開いて、融解水を系外に排出し、融解水の排除確認後、全ドレン弁を閉鎖する。次に、冷媒循環路12及び第2バイパス路38に空気冷媒を巡回させ、冷媒循環路12を乾燥させる。乾燥確認後、排水・乾燥工程を終了する。排水終了及び乾燥終了の確認方法は、事前実験等によりやり方を決める。例えば、事前設定された排水時間及び乾燥時間を用いた時間制限方法を用いればよい。
【0054】
排水・乾燥工程が終了した時点で、通常の冷凍運転に復帰するための準備行程として、デフロスト工程中の温度が上昇した部分を予冷する冷凍復帰工程を行なう。冷凍復帰工程を省略すると、膨張機出口の高温冷媒が被冷却室32に供給されてしまう。デフロスト工程同様に、冷凍復帰工程をできるだけ短時間に完了させて、速やかに通常冷凍運転に移行することが望ましい。
【0055】
冷凍復帰工程では、止め弁40を全開、バイパス弁46を全閉とし、バイパス弁48はそのまま全開状態とする。圧縮機回転数は定格回転数とし、一次冷却器22の通水弁28は全開とする。一次冷却器22の出口冷媒を熱回収器30に導入し、その後膨張機18に導入する。次に、膨張機出口冷媒を第2バイパス路38を通し、被冷却室32をバイパスさせる。冷凍復帰工程により膨張機出口冷媒温度は次第に低下していき、温度センサ54の検出値が冷凍運転時の定格温度に達した時点で、冷凍復帰工程を終了する。
【0056】
冷凍復帰工程後、通常冷凍運転を開始する。通常冷凍運転では、バイパス弁46及び48を閉、止め弁40、入口弁42及び出口弁44を開とする。
【0057】
本実施形態のデフロスト工程は、図6中のデフロスト行程(a→b→g→a)における行程(g→a)に相当するエンタルピー熱量ΔHを利用するものである。圧縮機16及び膨張機18の断熱効率及び機械効率を83%程度とすると、圧縮動力の30%前後がデフロストに利用可能である。そのため、従来の電熱ヒータによるデフロスト法と比較して、十分な熱量を確保できる。従って、電熱ヒータのような特段の設備を必要とすることなく、駆動モータ14の動力を利用してデフロストが可能になる。また、電熱ヒータのように設置場所周辺のデフロストだけでなく、低温側冷媒循環路12の着霜区域全域を一挙にデフロストできる。
【0058】
また、本実施形態によれば、圧力センサ50の検出値を監視し、その検出値が設定値を以下となった時、コントローラ56によって自動的にデフロスト運転を開始できる。また、デフロスト運転時、一次冷却器22への冷却水量の調整と、圧縮機16の回転数制御とを併用することで、圧縮機16の出口冷媒温度を許容温度以下の設定値Tcs以上にならないように運転できる。さらに、膨張機18の出口冷媒温度が0℃近傍のプラス温度の融解終了温度設定値Ttsになった時、速やかに着霜融解を終了し、その後、該融解終了温度に収束する運転を行なうようにしているので、デフロスト運転でエネルギーやモータ動力を無駄に消費することなく、かつ次行程の冷凍復帰工程に速やかに移行できる。
【0059】
デフロスト運転時、空気冷媒を膨張機18を通すことによって、膨張機18の翼車近傍及び出口配管まで含め、冷媒循環路12の低温域にある着霜区域全域を隈なく除霜できる。さらに、通常冷凍運転への移行時に、膨張機18の出口冷媒温度は被冷却室温度と同一になっているから直ちに被冷却室に冷媒供給が可能となる。
また、本実施形態によれば、デフロスト運転時間を短縮できるので、デフロスト運転の頻度を上げることができ、これによって、場合によっては、フロストトラップ34の設置を不要とすることも可能になる。
【0060】
(実施形態2)
次に、本発明方法及び装置の第2実施形態を図3に基づいて説明する。本実施形態の空気冷媒式冷凍装置10Bは、被冷却室として、ブライン冷却装置60を用いた場合の例である。ブライン冷却装置60は、蛇行形状のブライン通路602が、ブライン冷却装置60のケーシング600の外部から内部に貫通配置されている。ブライン通路602の入口にはブライン入口弁604が介設され、ブライン通路602の出口にはブライン出口弁606が介設されている。また、ケーシング600の下方位置で、冷媒循環路12にドレン弁608が設けられている。ブライン冷却装置60以外の構成は、第1実施形態と同一であり、同一の機器又は部材に同一符号を付している。
【0061】
かかる構成において、ブライン通路602を流れるブラインは、ケーシング600の内部で、空気冷媒と熱交換し冷却され、冷却されたブラインは、使用先(冷凍負荷側)に送られる。圧力センサ50の検出値が設定値Pcsとなった時点で、通常冷凍運転は終了し、デフロスト運転が開始される。
【0062】
デフロスト運転時には、入口弁42及び出口弁44を全開状態としたまま、まず、ブライン入口弁604及びブライン出口弁606を閉鎖する。次に、圧縮機16の出口冷媒温度が設定値Tcsに維持されるように、圧縮機16の回転数を制御する。次に、バイパス弁46を全開した後、止め弁40を全閉にし、次に、冷却水ポンプ26を停止し、通水弁28を閉鎖する。バイパス弁46が開いた時点でデフロスト運転が開始される。デフロスト運転により、膨張機18の低温部位から熱回収器30の低温側着霜域、及びこれらの間の冷媒循環路12で着霜の融解が進行する。
【0063】
温度センサ54の検出値が融解終了温度に達した時点で、冷却水循環路20の通水を開始し、温度センサ54の検出値が膨張機18の出口冷媒温度が設定値Tcsに収束するように、冷却水の通水量を制御する。膨張機出口冷媒温度が設定値Tcsに収束した時点でデフロスト運転を終了する。
【0064】
次工程の排水・乾燥工程では、ドレン弁12a,300、340及び608を開いて、融解水を外部に排出する。排出終了後に、これらのドレン弁を閉じた状態で空気冷媒の巡回運転を行い、低温側冷却水循環路20及び、ケーシング600内のブライン通路602を含め、該低温側冷却水循環路20に介設された機器類に付着している融解水を乾燥させる。これで排水・乾燥工程を終了する。
【0065】
次工程の冷凍復帰工程では、まず、通水弁28を全開する。次に、止め弁40を全開すると共に、バイパス弁46を全閉し、駆動モータ14の回転数を定格回転数とする。この状態で、膨張機出口冷媒温度は次第に低下していき、膨張機出口冷媒温度が通常冷凍運転の定格温度に達した時点で冷凍復帰工程を終了する。
【0066】
通常冷凍運転では、ブライン入口弁604及びブライン出口弁606を閉鎖した状態で、通常冷凍運転を開始し、温度センサ54の検出値が定格温度となった時点で、ブライン入口弁604及びブライン出口弁606を全開し、ブライン通路602に介設されたブラインポンプ(図示省略)を起動させる。なお、温度センサ54は、ケーシング600内部のブライン通路602の外壁に設けてもよい。
【0067】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができることに加え、ブライン冷却装置60のケーシング600内部に配設されたブライン通路602のデフロストを同時に行なうことができ、ブライン通路602だけのデフロスト工程を設ける必要がない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によれば、空気冷媒式冷凍装置において、省エネ化された効率の良いデフロスト運転を可能にする。
【符号の説明】
【0069】
10A、10B 空気冷媒式冷凍装置
12,102 冷媒循環路
12a、12b ドレン弁
14,104 駆動モータ
14a、104a 出力軸
16,106 圧縮機
160 吸入圧力調整弁
18,108 膨張機
20,110 冷却水循環路
22,112 一次冷却器
24、114 冷却塔
26,116 冷却水ポンプ
28,118 通水弁
30,120 熱回収器
300 ドレン弁
32、122 被冷却室
320 空気吹出口
322 空気取入口
34,124 フロストトラップ
340 ドレン弁
36 第1バイパス路
38 第2バイパス路
40 止め弁
42 入口弁
44 出口弁
46,48 バイパス弁
50 圧力センサ
52,54 温度センサ
56 コントローラ
60 ブライン冷却装置
600 ケーシング
602 ブライン通路
604 ブライン入口弁
606 ブライン出口弁
608 ドレン弁
Pcs 圧縮機出口冷媒圧力設定値
Tcs 圧縮機出口冷媒温度設定値
Tts 膨張機出口側冷媒温度設定値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置の単一出力軸に連結された圧縮機及び膨張機と、圧縮機吐出側空気冷媒を冷却する冷却器と、冷却された空気冷媒を被冷却室から出た戻り空気冷媒と熱交換する熱回収器とを備え、熱回収後の空気冷媒を膨張機で減圧し、被冷却室に供給する空気冷媒式冷凍装置のデフロスト方法において、
圧縮機吸入圧、圧縮機出口の空気冷媒温度、及び膨張機出口側の着霜区域の空気冷媒温度を監視する工程と、
圧縮機吸入圧が設定圧以下になった時、空気冷媒を冷却器出口側から膨張機入口側にバイパスさせると共に、空気冷媒を膨張機出口側から被冷却室出口側にバイパスさせるデフロスト運転を行ない、冷却器への冷却媒体の供給を遮断又は加減することにより、圧縮機及び膨張機の損失動力の全量又は一部に相当するエンタルピー熱量を用いて前記着霜区域の着霜を融解させるデフロスト工程と、からなり、
圧縮機出口側空気冷媒温度を許容温度以下の設定温度に維持しながら、着霜区域の空気冷媒温度が0℃近傍のプラス温度の着霜融解終了温度となった時、デフロスト工程を終了することを特徴とする空気冷媒式冷凍装置のデフロスト方法。
【請求項2】
前記着霜区域の空気冷媒温度が前記着霜融解終了温度となった時、冷却器で冷却媒体の供給を開始し、該空気冷媒温度が着霜融解終了温度に収束した時、デフロスト工程を終了することを特徴とする請求項1に記載の空気冷媒式冷凍装置のデフロスト方法。
【請求項3】
前記デフロスト工程時に、冷却器への冷却媒体の供給を最大としても、圧縮機出口側空気冷媒温度が許容温度を超えるとき、圧縮機の回転数を減少させて圧縮機出口側空気冷媒温度を許容温度以下の設定値に維持するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の空気冷媒式冷凍装置のデフロスト方法。
【請求項4】
前記デフロスト工程時に、周囲環境によって前記着霜区域の空気冷媒温度が設定温度を越えた時、冷却器への冷却媒体の供給を開始し、該冷却媒体の供給量を制御して膨張機出口側空気冷媒温度を設定温度に維持するようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の空気冷媒式冷凍装置のデフロスト方法。
【請求項5】
駆動装置の単一出力軸に連結された圧縮機及び膨張機と、圧縮機吐出側空気冷媒を冷却する冷却器と、冷却された空気冷媒を被冷却室から出た戻り空気冷媒と熱交換する熱回収器とを備え、熱回収後の空気冷媒を膨張機で減圧し、被冷却室に供給する空気冷媒式冷凍装置のデフロスト装置において、
圧縮機吸入圧を検出する圧力センサと、
圧縮機出口側の空気冷媒温度を検出する第1温度センサと、
膨張機出口側の着霜区域の空気冷媒温度を検出する第2温度センサと、
冷却器出口側の空気冷媒を膨張機入口側にバイパスさせる弁介装の第1バイパス路と、
膨張機出口側の空気冷媒を被冷却室出口側にバイパスさせる弁介装の第2バイパス路と、
圧縮機吸入圧が設定圧以下になった時、空気冷媒を前記第1バイパス路及び第2バイパス路に通してデフロスト運転を行ない、圧縮機出口の空気冷媒温度を許容温度以下の設定温度に維持しながら、前記着霜区域の空気冷媒温度が0℃近傍のプラス温度の着霜融解終了温度となった時、デフロスト工程を終了させるコントローラと、を備えていることを特徴とする空気冷媒式冷凍装置のデフロスト装置。
【請求項6】
デフロスト運転時に、前記着霜区域の空気冷媒温度が前記着霜融解終了温度となった時、コントローラによって冷却器で冷却媒体の供給を開始し、前記第2温度センサの検出値が着霜融解終了温度に収束した時、デフロスト工程を終了するように制御させることを特徴とする請求項5に記載の空気冷媒式冷凍装置のデフロスト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−137218(P2012−137218A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288919(P2010−288919)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)