説明

空気分離モジュール及びブランケット

【課題】加熱により空気分離モジュールの空気分離処理の効率を向上するコスト効果の高い手法を提供する。
【解決手段】空気入口24と酸素出口25と窒素出口26とを有する空気分離モジュール20は、空気から酸素を分離する空気分離要素を有し、分離された酸素を酸素出口25へ供給するとともに、残りの窒素を窒素出口26へ供給するタンクを備える。少なくとも一つのタンクの周囲に断熱用のブランケット22を設ける。ブランケット22と空気分離モジュール20との間に、加熱用抵抗素子を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気分離モジュールに組み込まれて加熱されるブランケットに関する。
【背景技術】
【0002】
空気分離モジュールは、特に、航空機の分野で用いられる。空気分離モジュールでは、空気が分離タンク内へ入る。分離タンクの一つのタイプにおいては、チューブシートが互いに離間して設けられ、両者が中空ファイバーによって接続されている。中空ファイバーは、酸素がファイバーを透過してファイバーの周囲のチャンバーに排出可能に構成されている。窒素はファイバーを通って下流のチャンバーへ供給される。窒素は、火災を防止するように燃料タンク内に不活性な状況を生じさせるために用いることができる。酸素は乗客やパイロットへの空気の供給に用いることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような公知のタイプの空気分離モジュールでは、加熱によって処理の効率が更に向上する。現状では、加熱のために、空気を送り込む空気圧縮機を高速で作動させて、空気分離モジュールへ到達する空気が高温となるようにしている。しかしながら、高速での圧縮機の作動は、システム全体の効率を低下させる。つまり、加熱のための圧縮機の速度の増加は、加熱におけるコスト効果の高い手法とはいえない。
【0004】
他の加熱の手法も提案されてきた。しかしながら、一般に、それらは例えばバルブのような追加の構成を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の空気分離モジュール及びブランケットは、空気入口と酸素出口と窒素出口とを有する空気分離モジュールを備える。少なくとも一つのタンクは、空気から酸素を分離する分離要素を備え、分離された酸素(酸素濃度の高い空気)を酸素出口へ供給し、窒素(窒素濃度の高い空気)を窒素出口へ供給する。加熱用抵抗素子は、ブランケットと空気分離モジュールとの間に配置される。更に、この空気分離モジュールに用いられる進歩的なブランケットについても記載されている。
【0006】
これらの特徴や他の特徴は、後述する詳細な説明や図面からよく理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】空気分離モジュール及びこれを覆うブランケットを示す図。
【図2】上記ブランケットを省略して上記空気分離モジュールを示す斜視図。
【図3A】空気分離モジュール用のタンクを示す断面図。
【図3B】上記空気分離モジュールに用いられるチューブシートとファイバーの一部を示す図。
【図4】被覆するブランケットを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1を参照して、空気分離モジュール20は、このモジュールを覆うブランケット22を備えている。図示のように、空気入口ポート(空気入口)24はブランケット内に延在している。酸素出口管(酸素出口)25は、パイロット又は乗客室への空気の供給のように酸素を利用するものに接続しており、あるいは単に大気解放であってもよい。窒素の出口26は、航空機の燃料タンクのように窒素を用いるものに接続される。
【0009】
ブランケット22は、公知であり、モジュール20内の保温用に用いられる。後述するように、モジュールのタンク内が高い温度に維持されているときに、空気の分離処理が最も効率良く行われる。断熱用のブランケットは、外側がゴム(の層)、内側表面が断熱用ポリマーからなる公知のものであっても良い。なお、上述したように、典型的には、空気分離処理が最も効率良く行われるように加熱が要求される。仮想線で図示するように、ブランケット22は、空気入口ポート24の部分にわたって延在させることができる。更に、この明細書で用いられる”ブランケット”とは、空気入口24の部分や他の部分を覆う個別のブランケット部分を含む。
【0010】
図2に空気分離タンク30の詳細が示されている。エアフィルター29は、空気入口24の下流側に接続されており、空気を入口マニホールド28へ供給し、その空気をタンク30へ導く。
【0011】
図3Aに示すように、タンク30には、チューブシート40及び44が設けられ、両者間にファイバー42が延在している。図3Aでは1本のファイバーが示されているが、実際には、図3Bから解るように、数百本のファイバー42がチューブシート40と44の間に延在している。この構造は公知であり、カールトン・ライフ・サポート・システム社により供給されるような空気分離モジュールを用いることができる。当然のことながら、本発明は他のタイプの空気分離モジュールにも適用可能である。
【0012】
酸素は、中空ファイバー42を通して外側へ透過し、ファイバーの周囲のチャンバー46へ排出される。この酸素が酸素出口(管)25へ供給されることとなる。一方、窒素は、ファイバーを透過することなくファイバーを通り抜けて、窒素出口26へ供給される。
【0013】
図4は、本発明の特徴的な一態様を示している。ブランケット22には、モジュール20の少なくとも一部(100)に沿って配置された加熱用抵抗素子60が設けられる。図4において、加熱用抵抗素子60は、構成部分つまり要素100に対応して設けられている。要素100は、空気入口24、マニホールド28、エアフィルター29又はタンク30の一部であってもよい。これらの各部は、加熱の適用が可能な部位である。ある場合には、加熱が適用される部位を更に上流側とすることで、その潜在的な効率が更に向上する。当然のことながら、加熱部位を2箇所以上とすることもできる。
【0014】
端子62及び64は電圧装置に接続されており、加熱用抵抗素子60内の抵抗により、要素100の近傍の温度が上昇し、これにより空気分離処理の効率が向上する。更に、抵抗素子は、タンク30の一部分に沿ってのみ延在させても良く、あるいは、タンク30の全長に沿って延在させてもよい。加熱される領域の長さが増えるほど、達成される効率が向上することとなる。
【0015】
一般に、抵抗素子は、ブランケット22の内壁と、空気分離モジュールの外側の表面と、の間のあらゆる部位に配置することが可能である。
【0016】
以上のように本発明の実施例について説明してきたが、当業者であれば本発明の範囲内での幾つかの変更・改良を認めるであろう。
【符号の説明】
【0017】
20…空気分離モジュール
22…ブランケット
24…空気入口
25…酸素出口
26…窒素出口
28…入口マニホールド
29…エアフィルター
30…空気分離タンク
40,44…チューブシート
42…中空ファイバー
46…チャンバー
60…加熱用抵抗素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入口と酸素出口と窒素出口とを有する空気分離モジュールと、
空気から酸素を分離する空気分離要素を有し、分離された酸素を上記酸素出口へ供給するとともに、残りの窒素を上記窒素出口へ供給する少なくとも一つのタンクと、
上記少なくとも一つのタンクの周囲に設けられた断熱用のブランケットと、
上記ブランケットと上記空気分離モジュールとの間に配置された加熱用抵抗素子と、
を有することを特徴とするブランケット付き空気分離モジュール。
【請求項2】
上記加熱用抵抗素子が、上記少なくとも一つの空気分離用のタンクに沿って配置されていることを特徴とする請求項1に記載のブランケット付き空気分離モジュール。
【請求項3】
上記少なくとも一つのタンクが、互いに離間する一対のチューブシートを有し、これら一対のチューブシートは、複数の中空ファイバーによって接続されており、上記中空ファイバーは、この中空ファイバーを通して酸素が透過可能に構成されて、酸素が上記酸素出口へ供給されることを特徴とする請求項1に記載のブランケット付き空気分離モジュール。
【請求項4】
上記加熱用抵抗素子は、上記少なくとも一つの空気分離用のタンクに沿って配置されていることを特徴とする請求項3に記載のブランケット付き空気分離モジュール。
【請求項5】
上記加熱用抵抗素子は、上記空気入口のポートに沿って配置されていることを特徴とする請求項1に記載のブランケット付き空気分離モジュール。
【請求項6】
上記加熱用抵抗素子は、上記空気入口の下流側に設けられたエアフィルターに沿って配置されていることを特徴とする請求項1に記載のブランケット付き空気分離モジュール。
【請求項7】
上記加熱用抵抗素子は、上記空気入口の下流側に設けられた入口マニホールドに沿って配置されていることを特徴とする請求項1に記載のブランケット付き空気分離モジュール。
【請求項8】
上記ブランケットは、複数の上記タンクを覆っていることを特徴とする請求項1に記載の空気分離モジュール。
【請求項9】
更に、上記ブランケットは、入口マニホールド及びエアフィルターを覆っていることを特徴とする請求項8に記載の空気分離モジュール。
【請求項10】
上記ブランケットが、ゴムの層を有していることを特徴とする請求項1に記載の空気分離モジュール。
【請求項11】
空気分離モジュールに用いられるブランケットであって、
内側表面が空気分離モジュールを覆って上記空気分離モジュールを断熱し、断熱材料により形成されるブランケットと、
上記ブランケット内に収容された上記空気分離モジュールへ熱を与えるように、上記ブランケットの内側に配置される加熱用抵抗素子と、
を有することを特徴とするブランケット。
【請求項12】
上記加熱用抵抗素子は、上記空気分離モジュールのタンクの外側に位置するように、上記ブランケットの内側に配置されており、上記タンクは上記ブランケットに覆われる上記空気分離モジュールの一部を構成していることを特徴とする請求項11に記載のブランケット。
【請求項13】
上記ブランケットが複数の上記タンクを覆っていることを特徴とする請求項11に記載のブランケット。
【請求項14】
更に、上記ブランケットが入口マニホールドとエアフィルターとを覆っていることを特徴とする請求項13に記載のブランケット。
【請求項15】
上記ブランケットがゴムの層を有していることを特徴とする請求項11に記載のブランケット。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−247147(P2010−247147A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56853(P2010−56853)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(500107762)ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション (165)
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
【住所又は居所原語表記】One Hamilton Road, Windsor Locks, CT 06096−1010, U.S.A.
【Fターム(参考)】