説明

空気浄化ユニット及び空気調和装置

【課題】塵埃を帯電させて集塵する空気浄化ユニット(1)において、集塵手段(41)で捕集しきれずに室内に排出された塵埃によって室内が汚れるのを防止する。
【解決手段】ケーシング(11)内に形成される空気通路(15)には、空気浄化ユニット(1)が配置される。空気浄化ユニット(1)は、イオンを発生させて空気中の塵埃を帯電させるための放電ユニット(30)と、該帯電した塵埃を捕集するための静電フィルタ(41)とを備えている。放電ユニット(30)は、プラス放電を行うユニット(31)と、マイナス放電を行うユニット(32)とからなる。放電ユニット(30)は、プラスイオンとマイナスイオンとが同量、発生するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理空気の清浄化を行う空気浄化ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、室内の塵埃をマイナス若しくはプラスに帯電させて、該帯電した塵埃を室内に放出し、室内空気を吸い込んだ際にフィルタなどの集塵手段によって塵埃を除去するようにした空気浄化ユニットが知られている。
【0003】
また、空気調和装置などの吸込口において、室内の空気中の塵埃をプラス若しくはマイナスに帯電させて、帯電した塵埃を静電フィルタなどによって除去するようにした電気集塵方式の空気浄化ユニットも知られている。
【0004】
これ以外にも、塵埃を帯電させて集塵するものとして、例えば特許文献1に開示されるように、マイナス電極によって人体に付着した塵埃をマイナスに帯電させて、該マイナスに帯電した塵埃をプラス電極の配設された外壁の内側に付着させることで、塵埃を除去するようにしたものなどがある。
【特許文献1】特開平8−131881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の各従来例のように塵埃を帯電させて集塵する場合、集塵手段によって塵埃を100%捕集するのは困難であるため、該集塵手段で捕集しきれなかった塵埃は、そのマイナス若しくはプラスの電荷によって室内の壁面や床、カーテンなどに付着するとともに、その帯電した塵埃に多くの塵埃が集まり、室内を却って汚してしまうという問題があった。
【0006】
特に、集塵手段で捕集しきれずに室内へ戻った塵埃の極性が、室内のイオンバランスをマイナス若しくはプラスのどちらかへ大きく崩すような極性であった場合、すなわち同じ極性で帯電した塵埃が室内で増加する場合には、帯電した塵埃は中和されることなく室内に堆積し、室内の他の塵埃を集塵して、空気浄化を行う前よりも室内を汚してしまう場合がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、塵埃を帯電させて集塵する空気浄化ユニットにおいて、集塵手段で捕集しきれずに室内に排出された塵埃によって室内が汚れるのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明に係る空気浄化ユニット(1,101)では、イオンを発生させて塵埃を帯電させるイオン化手段(30,130)を、プラスイオン及びマイナスイオンの両方を発生可能にした。
【0009】
具体的には、第1の発明では、空気通路(15)を流れる被処理空気中の塵埃を帯電させるためのイオンを発生するイオン化手段(30,130)と、該帯電した塵埃を捕集する集塵手段(41)と、を備えた空気浄化ユニット(1,101)を対象とする。そして、上記イオン化手段(30,130)は、プラスイオン及びマイナスイオンの両方を発生可能に構成されているものとする。
【0010】
この構成により、空気通路(15)を流れる被処理空気中の塵埃は、イオン化手段(30,130)で発生するプラスイオン若しくはマイナスイオンによって、プラス若しくはマイナスに帯電する。すなわち、上記被処理空気中には、プラスに帯電した塵埃とマイナスに帯電した塵埃とが存在することになる。このように、すべての塵埃を一方の極性だけでなく、プラス及びマイナスにそれぞれ帯電させることで、装置内の集塵手段(41)によって塵埃が完全に捕集されずに室内へ排出された場合でも、プラスに帯電されたものとマイナスに帯電されたものとが互いに中和されて、該排出された塵埃によって室内のイオンバランスが大きく崩れるのを防止できる。
【0011】
上述の構成において、上記イオン化手段(30)は、プラス放電によってプラスイオンを発生するプラス放電部(31)と、マイナス放電によってマイナスイオンを発生するマイナス放電部(32)と、を備えているものとする(第2の発明)。これにより、イオン化手段(30)のプラス放電部(31)若しくはマイナス放電部(32)を通過する塵埃を、それぞれ、プラス若しくはマイナスに確実に帯電させることができ、上述の第1の発明の作用を確実に得ることができる。
【0012】
また、上記プラス放電部(31)及びマイナス放電部(32)は、プラスイオン発生量とマイナスイオン発生量とが同等になるように構成されているのが好ましい(第3の発明)。こうすることで、イオン化手段(30)を通過した塵埃は、ほぼ同じ量がプラス及びマイナスにそれぞれ帯電されることになり、装置内の集塵手段(41)によって捕集しきれなかった塵埃もプラスとマイナスとでほぼ同じ量になると考えられる。このことにより、室内へ排出される塵埃同士は中和されて、室内に供給される空気中ではイオンバランスがとれているため、排出される塵埃によって室内のイオンバランスが大きく崩れるのを確実に防止できる。
【0013】
上述のように決まった割合でプラスイオン及びマイナスイオンを発生するのではなく、室内のイオンバランスに基づいてプラスイオン及びマイナスイオンの発生量を変更可能に構成してもよい。具体的には、空気浄化ユニット(1)は、室内の空気中のイオンバランスを計測する計測手段(160)と、上記計測手段(160)の計測結果に基づいて上記イオン化手段(130)におけるイオンの発生を制御する制御手段(150)と、をさらに備えていてもよい(第4の発明)。
【0014】
これにより、計測手段(160)によって計測された空気中のイオンバランスに応じて塵埃をプラス若しくはマイナスに帯電させるように、イオン化手段(130)でプラスイオン及びマイナスイオンを発生させることが可能になる。そのため、室内のイオンバランスが大きく崩れるのを防止することも可能になる。
【0015】
すなわち、上記制御手段(150)を、室内のイオンバランスがニュートラルになるように上記イオン化手段(130)を制御可能に構成し(第5の発明)、塵埃を帯電させれば、集塵手段(41)によって捕集できなかった塵埃が室内へ戻った場合でも、その塵埃によって室内のイオンバランスをニュートラルにすることができ、室内が帯電した塵埃によって汚れるのを確実に防止することができる。
【0016】
具体的には、上記イオン化手段(130)は、プラス放電及びマイナス放電の両方の放電を行えるように構成されていて、上記制御手段(150)は、上記イオン化手段(130)におけるプラス放電量及びマイナス放電量の少なくとも一方の放電量を変更可能に構成されているものとする(第6の発明)。これにより、イオン化手段(130)を通過する塵埃を所定の割合でプラス若しくはマイナスに帯電させることができ、室内のイオンバランスをコントロールすることができる。
【0017】
特に、上記制御手段(150)を、上記イオン化手段(130)の少なくとも一部の放電極性を変更可能に構成するのが好ましい(第7の発明)。こうすれば、一つのイオン化手段(130)内で放電極性を変更できるので、プラス放電用及びマイナス放電用のイオン化手段を別々に設けて制御するよりもコストを低減できる。
【0018】
また、以上の構成において、上記イオン化手段(30,130)は、上記集塵手段(41)よりも上流側に配設されるのが好ましい(第8の発明)。これにより、プラス若しくはマイナスに帯電した塵埃を出来る限り集塵手段(41)で捕集することができ、帯電した塵埃が室内へ排出されるのを極力防止することができる。
【0019】
さらに、上述のような構成の空気清浄ユニット(1)を空気調和装置(10)内に設けるようにしてもよい。すなわち、空気調和装置(10)が、被処理空気の流れる空気通路(15)上に配設された熱交換器(20)と、上記空気通路(15)の熱交換器(20)上流側に配設された、上記請求項1〜8のいずれか一つに記載の空気浄化ユニット(1)と、を備えていてもよい(第9の発明)。
【0020】
このように、空気調和装置(10)内の熱交換器(20)よりも上流側に上述のような空気浄化ユニット(1)を設けることで、帯電した塵埃は熱交換器(20)よりも上流側で捕集されて、該熱交換器(20)にはほとんど付着しないため、熱交換器(20)に塵埃が付着して該熱交換器(20)と被処理空気との熱交換率が低下するのを防止できる。
【発明の効果】
【0021】
以上より、本発明に係る空気浄化ユニット(1)によれば、空気通路内を流れる被処理空気中の塵埃を帯電させるためのイオン化手段(30,130)を、マイナスイオン及びプラスイオンの両方を発生可能に構成したため、該イオン化手段(30,130)によって帯電した塵埃が集塵手段(41)によって捕集されずに室内へ排出された場合でも、該塵埃によって室内のイオンバランスが大きく崩れるのを防止できる。これにより、帯電した塵埃によって室内が汚れるのを防止できる。特に第2の発明によれば、上記イオン化手段(30)は、プラス放電を行うプラス放電部(31)とマイナス放電を行うマイナス放電部(32)とを備えているため、これらの放電部(31,32)を通過した塵埃を確実に帯電させることができる。そして、第3の発明によれば、上記放電部(31,32)は、マイナスイオンの発生量とプラスイオンの発生量とが同等になるように構成されているため、空気浄化ユニット(1)から排出された塵埃によって室内のイオンバランスが大きく崩れるのを確実に防止することができ、該塵埃によって室内が汚れるのを確実に防止できる。
【0022】
また、上記第4の発明によれば、室内の空気中のイオンバランスを計測する計測手段(160)と、該計測手段(160)の計測結果に基づいてイオン化手段(130)におけるイオンの発生を制御する制御手段(150)と、を備えているため、イオンバランスに応じてイオン発生量を制御することができ、これにより、集塵手段(41)によって捕集されずに室内へ戻る塵埃によって、室内のイオンバランスを制御することが可能になる。特に、第5の発明によれば、上記制御手段(150)は、室内のイオンバランスがニュートラルになるようにイオン化手段(130)を制御するので、室内のイオンのバランスを適切なものにすることができ、帯電した塵埃によって室内が汚れるのを防止できる。
【0023】
さらに、第6の発明によれば、制御手段(160)がイオン化手段(130)の放電量を変更可能に構成されているため、プラス放電及びマイナス放電の放電量の増減によって空気中のイオンバランスの制御が可能になる。特に、第7の発明によれば、上記制御手段(150)はイオン化手段(130)の少なくとも一部の放電極性を変更可能に構成されているため、一つのイオン化手段(130)によってイオン発生量のバランスを自由に変更でき、プラス放電用及びマイナス放電用の2つのイオン化手段を設けることなく、空気中のイオンバランスを適切なものにすることができる。したがって、帯電した塵埃によって室内が汚れるのを低コストな構成により防止できる。
【0024】
また、第8の発明によれば、イオン化手段(30,130)は集塵手段(41)よりも上流に設けられているため、イオン化手段(30,130)で帯電した塵埃をその下流側に位置する集塵手段(41)で効率良く捕集することができ、帯電した塵埃が室内に多量に排出されるのを防止できる。したがって、帯電した塵埃によって室内が汚れるのを防止できる。
【0025】
さらに、第9の発明によれば、上述のような構成の空気浄化ユニット(1)を空気調和装置(10)内の熱交換器(20)よりも上流に設けることで、空気中の塵埃を効率良く捕集することができ、熱交換器(20)に塵埃が付着して被処理空気と該熱交換器(20)との熱交換率が低下するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0027】
(実施形態1)
−全体構成−
本実施形態に係る空気浄化ユニット(1)を備えた空気調和装置(10)は、図1に示すように、室内の壁に取り付けられる、いわゆる壁掛け式のルームエアコンによって構成されている。この空気調和装置(10)は、被処理空気としての室内空気の空気調和と清浄とを同時に行うものである。なお、上記空気浄化ユニット(1)は、本実施形態のような壁掛け式のルームエアコンに限らず、例えば床置き式のエアコンに設けてもよいし、空気調和装置ではなく空気清浄のみを行う空気清浄装置内に設けてもよい。
【0028】
ここで、以下の実施形態では、空気調和装置(10)の幅方向(図1における紙面手前側及び奥側)を単に「左右方向」、該空気調和装置(10)の前後方向(図1における左右方向)を単に「前後方向」、該空気調和装置(10)の上下方向(図1における上下方向)を単に「上下方向」ともいう。
【0029】
図1に示すように、上記空気調和装置(10)は、横長で略半円筒形状のケーシング(11)を備えている。該ケーシング(11)には、室内空気をケーシング(11)内に取り込むための空気導入口としての吸込口(12)と、空気調和装置(10)で処理した空気をケーシング(11)内から室内空間へ供給する空気供給口としての吹出口(13)とが形成されている。上記吸込口(12)は、ケーシング(11)の前面(図1において左側)から上面に亘って、該ケーシング(11)の上側略半分に形成されている。
【0030】
上記ケーシング(11)の内部には、上記吸込口(12)から上記吹出口(13)までの間に被処理空気の流れる空気通路(15)が形成されている。この空気通路(15)には、空気の流れの上流側から下流側に向かって順に、プレフィルタ(40)、空気浄化ユニット(1)、熱交換器(20)、及びファン(14)が配置されている。
【0031】
上記プレフィルタ(40)は、被処理空気中に含まれる比較的大きな塵埃を捕集するためのフィルタである。このプレフィルタ(40)は、上記吸込口(12)に沿うように、ケーシング(11)内部の吸込口(12)近傍に設けられている。すなわち、上記プレフィルタ(40)は、吸込口(12)全体をケーシング(11)内部から覆うように配置されている。
【0032】
上記空気浄化ユニット(1)は、イオンを発生させるためにコロナ放電を行う放電ユニット(30)と、該放電ユニット(30)によって発生したイオンにより帯電した塵埃を捕集する静電フィルタ(41)と、を備えている。
【0033】
上記放電ユニット(30)は、プレフィルタ(40)を通過した比較的小さな塵埃を帯電させるものであり、本発明のイオン化手段を構成している。この放電ユニット(30)は、上記プレフィルタ(40)よりもケーシング(11)内部側で、該フィルタ(40)に沿うように側方断面視で概略コの字状に配置されている。また、上記放電ユニット(30)は、図3に示すように、前面から見て左右2つに分かれて配置されている。前面から見て左側の放電ユニット(31)は、電源(25)によってプラスの電圧が印加されることによりプラス放電が行われるものであり、右側の放電ユニット(32)は、電源(26)によってマイナスの電圧が印加されることによりマイナス放電が行われるものである。このように、プラス放電用及びマイナス放電用の放電ユニット(31,32)を設けることで、プラスイオン及びマイナスイオンを確実に発生させることができ、これにより、塵埃をそれぞれプラス及びマイナスに帯電させることが可能となる。
【0034】
さらに、上記放電ユニット(31,32)は、それぞれ、プラス放電及びマイナス放電によってほぼ同量のプラスイオン及びマイナスイオンを発生させることができるように、同じ構造を有している。これにより、上記放電ユニット(30)を通過する塵埃は、プラスの電荷を帯びたものとマイナスの電荷を帯びたものとがほぼ同量になって、下流側の静電フィルタ(41)で捕集しきれなかった塵埃もプラスとマイナスとのイオンバランスがとれて中和されるため、室内のイオンバランスを大きく崩すことはない。したがって、帯電した塵埃によって室内が汚れるのを確実に防止することができる。
【0035】
なお、本実施形態では、左側の放電ユニット(31)がプラス放電を行い、右側の放電ユニット(32)がマイナス放電を行うように構成しているが、これに限らず、左側の放電ユニット(31)がマイナス放電を行い、右側の放電ユニット(32)がプラス放電を行うように構成してもよい。また、本実施形態では、左右の放電ユニット(31,32)を同じ構造にしているが、この限りではなく、プラスイオン発生量とマイナスイオン発生量とがほぼ同じであれば、両者は違う構造であってもよい。
【0036】
本実施形態では、上記左右の放電ユニット(31,32)は、構成は同じで印加される電圧の符号が逆になるだけなので、以下では、左側の放電ユニット(31)の構成についてのみ説明する。上記放電ユニット(31)は、図2にも示すように、断面略コの字状の凹凸が上下に連なるとともに、全体として側面視で概略コの字状に形成された波形部材(33)と、該波形部材(33)の凹凸のうち前方に向かって開放された前側開放部(34)内で、該開放部(34)に沿って左右方向に延びるイオン化線(35)と、を備えている。
【0037】
上記イオン化線(35)は、線状ないし棒状に形成された部材であり、上記各前側開放部(34)内のほぼ中央位置で、上記波形部材(33)の両端部間に張架されている。このイオン化線(35)は、塵埃を帯電させるコロナ放電の基端となる放電極を構成している。
【0038】
上記イオン化線(35)の側方に位置し、該イオン化線(35)の軸方向に沿って延びる上記波形部材(33)の前側開放部(34)の側面部分は、コロナ放電の終端である対向極としての電極板(36)を構成している。すなわち、この電極板(36)は、上記イオン化線(35)の外周面に対峙するように該イオン化線(35)に対して略平行に配置されている。なお、特に図示しないが、上記波形部材(33)には、図2に白抜き矢印で示すように流入する空気が厚み方向に通過できるような開口が多数設けられている。
【0039】
上記静電フィルタ(41)は、放電ユニット(30)の下流側に配置される本発明の集塵手段を構成している。この静電フィルタ(41)は、プラスの電荷を帯びた繊維とマイナスの電荷を帯びた繊維とによって構成されたもので、熱交換器(20)の上流側を覆うように且つ上記プレフィルタ(40)とほぼ同じ範囲に広がるように配置されている。この静電フィルタ(41)により、上記放電ユニット(30)によってプラス及びマイナスに帯電した比較的小さな塵埃を捕集することができる。
【0040】
上記熱交換器(20)は、図示しない室外機と接続されており、冷媒が循環して冷凍サイクルを行う冷媒回路の一部を構成している。この熱交換器(20)は、いわゆるフィンアンドチューブ式の空気熱交換器を構成している。図1に示すように、空気通路(15)には、3台の熱交換器(21,22,23)が側面視で概略コの字状に配置されている。すなわち、第1熱交換器(21)は、前後方向に延びて且つ後方側が前方側よりも上方に位置するように配置されていて、第2熱交換器(22)は、空気通路(15)の前面寄りで、吸込口(12)の下端部近傍に配置されている。第3熱交換器(23)は、空気通路(15)の後面寄りで、吸込口(12)の上端部近傍に配置されている。
【0041】
−運転動作−
次に、本実施形態の空気調和装置(10)の運転動作について説明する。なお、以下では空気調和装置(10)の冷房運転動作を例示して説明する。
【0042】
図1に示すように、空気調和装置(10)の運転時には、ファン(14)が運転状態となり、室内空気がケーシング(11)内の空気通路(15)を流通する(図中の白抜き矢印)。この状態において、放電ユニット(30)へは、電源(25,26)によりそれぞれ電圧が印加される。ここで、図3において、プラス放電を行う左側の放電ユニット(31)へは電源(25)からプラスの電圧が印加され、マイナス放電を行う右側の放電ユニット(32)へは電源(26)からマイナスの電圧が印加される。さらに、熱交換器(20)の内部には低圧の液冷媒が流通し、この熱交換器(20)が蒸発器として機能する。
【0043】
ケーシング(11)内に導入された室内空気は、まずプレフィルタ(40)を通過する。このプレフィルタ(40)では、室内空気中の比較的大きな塵埃が除去される。その後、室内空気は、放電ユニット(31,32)へと流れる。
【0044】
上記放電ユニット(31,32)では、各イオン化線(35)から該イオン化線(35)の両側に位置する電極板(36,36)に向かってコロナ放電が行われる。つまり、放電ユニット(31,32)では、空気調和装置(10)の幅方向全体に亘って空気の流れと直交する方向にプラス放電及びマイナス放電が行われる。その結果、室内空気中の比較的小さな塵埃がプラス若しくはマイナスに帯電する。このようにして帯電した塵埃は、室内空気が静電フィルタ(41)を通過する際、この静電フィルタ(41)に捕集される。
【0045】
以上のように、プレフィルタ(40)、放電ユニット(30)、及び静電フィルタ(41)を経て清浄化された空気は、熱交換器(20)を流通する。該熱交換器(20)では、空気から冷媒の蒸発熱が奪われ、被処理空気の冷却が行われる。このようにして清浄化及び温調された空気は、吹出口(13)から室内空間へ供給される。
【0046】
−実施形態1の効果−
上記実施形態では、放電ユニット(30)として、プラス放電を行うための放電ユニット(31)とマイナス放電を行うための放電ユニット(32)とを設けている。そのため、放電ユニット(30)を通過する空気中の塵埃をプラス若しくはマイナスに確実に帯電させることができる。これにより、下流側に位置する静電フィルタ(41)によって全ての塵埃を捕集することができずに、室内側に供給される空気中に塵埃が残留している場合でも、該塵埃同士のイオンバランスがプラス若しくはマイナスに大きく崩れることはなく、室内中のイオンバランスが大きく崩れるのを防止できる。したがって、帯電した塵埃が室内中に増えて、該塵埃によって室内が汚れるのを防止することができる。
【0047】
特に、上記放電ユニット(31,32)の放電によるプラスイオン発生量とマイナスイオン発生量とが同等になるように構成することで、静電フィルタ(41)によって捕集されなかった塵埃において、プラスに帯電したものとマイナスに帯電したものとの間でイオンバランスをとることができる。このように、空気調和装置(10)から室内中へ供給される空気中において、イオンバランスがとれているため、室内に戻った塵埃によって室内中のイオンバランスが崩れて室内が汚れるのを確実に防止することができる。
【0048】
また、上記実施形態では、放電ユニット(30)を静電フィルタ(41)よりも上流側に設けたので、該放電ユニット(30)によって帯電した塵埃を効率良く静電フィルタ(41)で捕集することができ、帯電した多量の塵埃が室内に放出されるのを確実に防止することができる。
【0049】
さらに、上記放電ユニット(30)及び静電フィルタ(41)を備えた空気浄化ユニット(1)を空気調和装置(10)の熱交換器(20)よりも上流側に配置することで、該空気浄化ユニット(1)によって塵埃が効率良く除去されるため、熱交換器(20)に塵埃が付着して該熱交換器(20)と被処理空気との熱交換率が低下するのを防止することができる。
【0050】
(実施形態2)
本発明の実施形態2に係る空気浄化ユニット(101)は、図4に示すように、実施形態1の空気浄化ユニットにおいて、放電ユニットを1つのユニットによって構成するとともに、室内空気中のイオンバランスを計測するイオン計測部(計測手段)を設けて、該計測部の計測結果に基づいて放電ユニットにおけるプラスイオン発生量及びマイナスイオン発生量を制御するようにしたものであり、その他の部分は実施形態1とほぼ同じ構造になっている。したがって、上記実施形態1と同一の部位については、同一符号を付し、実施形態1と異なる点についてのみ以下で詳しく説明する。
【0051】
具体的には、本発明のイオン化手段を構成する上記空気浄化ユニット(101)の放電ユニット(130)は、上述の実施形態1と同様、ケーシング(11)の前面から上面に亘って形成された吸込口(12)を該ケーシング(11)内側から覆うように、側方断面視で略コの字状に配置されているが、図4に示すように、上述の実施形態1とは異なり、前面から見て空気調和装置(110)の幅方向に延びる一つの放電ユニットにより構成されている。
【0052】
すなわち、本実施形態における上記放電ユニット(130)は、側面視で略コの字状の凹凸が上下に連なり且つ空気調和装置(110)の幅方向に亘って延びる波形部材(133)と、該波形部材(33)の前側開放部(34)内で該開放部(34)に沿うように空気調和装置(110)の幅方向全体に亘って延びるイオン化線(135)と、を備えている。
【0053】
そして、上記各イオン化線(135)には電源(125)が繋がっていて、該各イオン化線(135)にプラス若しくはマイナスの電圧を印加できるように構成されている。該電源(125)から各イオン化線(135)に印加される電圧は、制御手段としてのコントローラ(150)によって制御される。このコントローラ(150)に後述するイオン計測部(160)からの信号が入力されると、その信号に応じて上記電源(125)を制御するための制御信号を出力し、該電源(125)から所定の電圧を上記各イオン化線(135)に印加する。
【0054】
図4に示すように、上記放電ユニット(130)よりも上流側の空気通路(15)には、空気中のイオンバランスを計測するイオン計測部(160)が設けられている。このイオン計測部(160)は、いわゆるマイナスイオンチェッカーと呼ばれるもので、空気中のマイナスイオン量を計測することができる。該イオン計測部(160)の計測結果は、出力信号として上記コントローラ(150)に送られる。
【0055】
上記コントローラ(150)は、イオン計測部(160)からの計測結果に基づいて上記電源(125)が各イオン化線(135)に印加する電圧を制御するように構成されている。具体的には、上記イオン計測部(160)によって、空気中のマイナスイオン量が少ないことが検出された場合には、複数のイオン化線(135)のうち、マイナスの電圧を印加するイオン化線(135)の割合を増やして、マイナスイオンを多量に発生させるようにする。一方、上記イオン計測部(160)によって空気中のマイナスイオン量が多いことが検出された場合には、プラスの電圧を印加するイオン化線(135)の割合を増やして、プラスイオンを多量に発生させるようにする。
【0056】
なお、本実施形態では、マイナスイオン若しくはプラスイオンの発生量を増やすために、マイナス若しくはプラスの電圧を印加するイオン化線の割合を増減しているが、この限りではなく、マイナス放電若しくはプラス放電の放電量を増減させればよいので、マイナス若しくはプラスの電圧を印加するイオン化線の割合はそのままで印加する電圧を増減させることによりマイナスイオン発生量及びプラスイオン発生量を制御するようにしてもよい。
【0057】
−実施形態2の効果−
上記実施形態では、空気中のイオンバランスを計測するためのイオン計測部(160)を空気通路(15)に設けて、該イオン計測部(160)の計測結果に基づいて放電ユニット(130)でプラス放電及びマイナス放電を制御するようにしたため、室内のイオンバランスに応じてプラスイオンの発生量及びマイナスイオンの発生量を制御することができる。特に、室内のイオンのバランスがとれるように上記放電ユニット(130)で所定量のプラスイオン若しくはマイナスイオンを発生し、塵埃をプラス若しくはマイナスに帯電させれば、静電フィルタ(41)によって捕集できずに室内に戻った塵埃によって、室内のイオンのバランスがとれて、室内で帯電している塵埃を減らすことができる。これにより、帯電した塵埃によって室内が汚れるのを確実に防止することができる。
【0058】
また、コントローラ(150)及び電源(125)によって、プラス若しくはマイナスの電圧を印加するイオン化線(135)の割合を変更したり、プラス若しくはマイナスの電圧を印加するイオン化線(135)の割合はそのままで印加する電圧を変更したりすることにより、一つの放電ユニット(130)によってプラスイオン発生量及びマイナスイオン発生量を変化させることが可能になる。これにより、プラス放電用及びマイナス放電用の放電ユニットをそれぞれ設ける場合に比べてコストの低減を図れる。
【0059】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0060】
上記実施形態では、空気中の塵埃を捕集する捕集手段として、プレフィルタ(41)を設けている。しかしながら、これに代わって電気集塵装置やこれ以外の集塵装置を配置するようにしてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、空調手段として被処理空気の温調のみを行う熱交換器(20)を設けている。しかしながら、これ以外の空調手段として、空気中の水分を吸脱着する吸着剤や、空気へ水分を付与する加湿器等を設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上説明したように、本発明は、被処理空気の清浄化を行うための空気浄化ユニット及び該ユニットを備えた空気調和装置に関し、特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施形態1に係る空気調和装置の全体構成を示す垂直断面図である。
【図2】実施形態1に係る空気調和装置の放電ユニットの一部を拡大して側方から視た概略断面図である。
【図3】実施形態1に係る空気調和装置の放電ユニットの概略構成を示す正面図である。
【図4】実施形態2に係る図3相当図である。
【符号の説明】
【0064】
1,101 空気浄化ユニット
10 空気調和装置
15 空気通路
20 熱交換器
30,130 放電ユニット(イオン化手段)
31 放電ユニット(プラス放電部)
32 放電ユニット(マイナス放電部)
41 静電フィルタ(集塵手段)
150 コントローラ(制御手段)
160 イオン計測部(計測手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気通路(15)を流れる被処理空気中の塵埃を帯電させるためのイオンを発生するイオン化手段(30,130)と、該帯電した塵埃を捕集する集塵手段(41)と、を備えた空気浄化ユニット(1,101)であって、
上記イオン化手段(30,130)は、プラスイオン及びマイナスイオンの両方を発生可能に構成されていることを特徴とする空気浄化ユニット。
【請求項2】
請求項1において、
上記イオン化手段(30)は、プラス放電によってプラスイオンを発生するプラス放電部(31)と、マイナス放電によってマイナスイオンを発生するマイナス放電部(32)と、を備えていることを特徴とする空気浄化ユニット。
【請求項3】
請求項2において、
上記プラス放電部(31)及びマイナス放電部(32)は、プラスイオン発生量とマイナスイオン発生量とが同等になるように構成されていることを特徴とする空気浄化ユニット。
【請求項4】
請求項1において、
室内の空気中のイオンバランスを計測する計測手段(160)と、
上記計測手段(160)の計測結果に基づいて上記イオン化手段(130)におけるイオンの発生を制御する制御手段(150)と、
をさらに備えていることを特徴とする空気浄化ユニット。
【請求項5】
請求項4において、
上記制御手段(150)は、室内のイオンバランスがニュートラルになるように上記イオン化手段(130)を制御することを特徴とする空気浄化ユニット。
【請求項6】
請求項4または5のいずれか一つにおいて、
上記イオン化手段(130)は、プラス放電及びマイナス放電の両方の放電が行えるように構成されていて、
上記制御手段(150)は、上記イオン化手段(130)におけるプラス放電量及びマイナス放電量の少なくとも一方の放電量を変更可能に構成されていることを特徴とする空気浄化ユニット。
【請求項7】
請求項6において、
上記制御手段(150)は、上記イオン化手段(130)の少なくとも一部の放電極性を変更可能に構成されていることを特徴とする空気浄化ユニット。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つにおいて、
上記イオン化手段(30,130)は、上記集塵手段(41)よりも上流側に配設されていることを特徴とする空気浄化ユニット。
【請求項9】
被処理空気の流れる空気通路(15)上に配設された熱交換器(20)と、
上記空気通路(15)の熱交換器(20)上流側に配設された、上記請求項1〜8のいずれか一つに記載の空気浄化ユニット(1,101)と、
を備えていることを特徴とする空気調和装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−301463(P2007−301463A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−131801(P2006−131801)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】