説明

空気浄化式集合建屋及び集合建屋の空気浄化方法

【課題】各部屋は押込み換気により、静粛で生活臭が廊下等に洩れることがなく、建屋全体の空気の浄化と生活臭の除去の一元管理が可能で、また外気の湿気や有機化合物を除去して健康で快適な生活環境の形成と、建屋全体の温度調節を一元管理する。
【解決手段】建屋本体1内に、ホール5に通じる廊下6に面する複数の部屋7からなる生活空間Aを形成し、天井部5B、6B、7Bを介して生活空間Aの上方に天井裏空間Bを画成してある。屋根裏空間Bに配置した浄化換気装置12は、外気導入口10から吸入する外気をフィルターボックス14により浄化して屋根裏空間Bに放出する。多孔吸着体16に接触した浄化空気は天井部5Bの空気吹出し孔11からホール5に吹出され、廊下6を介して各部屋7内に押込まれることにより換気する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば老人ホーム等の福祉施設、病院、校舎、寄宿舎等のように廊下に面して複数の部屋を有する集合建屋内の空気の浄化、生活臭及び有害な化学物質の除去を効果的に行うことで生活環境を改質することができる空気浄化式集合建屋及び集合建屋の空気浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば老人ホーム等の福祉施設、病院、校舎等のように廊下に面して複数の部屋が並び、各部屋で人々が生活、療養、学習等を行う建屋では、利用者が多人数であることから建屋内での空気の汚染、生活臭が問題になる。この汚染空気や生活臭が存在することは生活環境として望ましいことでないのは勿論であるが、各部屋のみならず廊下に通じる共有部分のホールに停滞するため、来訪者にとっては空気の淀みや生活臭を強く感じるものであり、施設のイメージ低下に繋がるという問題もある。
【0003】
また、複数階に構成からなる建屋では、各階のホールが階段を介して連通している構造が殆どであり、階段通路が流路となって汚染空気や生活臭が下階から上階に上昇し、上階に行くほど空気の汚染や生活臭が強くなるという問題がある。
【0004】
従来の集合建屋における換気方式は、各部屋に設けた換気扇による部屋毎の排気型が一般的であるが、建築基準法に沿った計算による換気計画で換気を行っても、臭いの強さ、発生量、継続時間等、多くの不確定要素があるため、現実には換気が十分でなく、施設内に停滞しているのが現状である。また、居住者によっては換気扇の作動音を気にして止めてしまう場合もある。更に、暖房の必要な季節には、各部屋の暖気が換気扇によって排出されて室内の温度が低下するために暖房費が嵩むという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平4−103539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
集合建屋の換気・空調装置として、各部屋4に排気口5を設け、各排気口5をループダクト8に連通させると共に、ループダクト8の一端を排気装置14と連通させ、ホール11や廊下12に外気を導入する給気装置13を設け、外気をホール11や廊下12側から各部屋4に流入させ、ループダクト8を介して排気装置14で外部へと排気するように構成したものが提案されている(特許文献1)。
【0007】
特許文献1に示す先行技術は、ループダクト8の上流側に給気装置13を設置し、下流側に排気装置14を接続し、ループダクト8に各部屋4の排気口5を連通した構成からなるもので、給気装置13、排気装置14及びダクト設置工事のための設備費が嵩む、給気装置13と排気装置14を稼動するために稼働費が嵩む、保守作業にコストが掛る等多くの欠点があるし、給気装置13により導入した外気を排気装置14により強制排気することで室温の管理が面倒であるという欠点がある。
【0008】
本発明は従来技術の諸欠点に鑑みなされたもので、各部屋は換気扇を設けない押出し換気によるので静粛な生活環境を形成でき、部屋の生活臭が共有スペースに漏洩しないので、集合建屋全体の空気の浄化と生活臭の除去を一元的に管理することができ、また外気の湿度や有機化合物を除去することで健康で快適な生活環境を形成し、しかも集合建屋全体の温度調節を一元管理できる空気浄化式集合建屋及び集合建屋の空気浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために構成した請求項1に係る本発明の手段は、建屋本体に、ホールに通じる廊下及び該廊下に面して設けた複数の部屋により形成される生活空間と、天井部を介して該生活空間の上方に画成した天井裏空間とを構成してなる集合建屋において、前記屋根裏空間に連通する外気導入口を前記建屋本体に設け、前記ホール及び/又は廊下の天井部に空気吹出し孔を配設し、前記外気導入口から吸入する外気をフィルタにより浄化して該屋根裏空間に放出する浄化換気装置を前記屋根裏空間に設置し、該浄化換気装置による浄化空気を前記屋根裏空間に設置する多孔吸着体に接触させて前記空気吹出し孔から前記ホール及び/又は廊下に放出し、該廊下から前記各部屋に押込むことにより該部屋内の空気を屋外に排出するようにしたものからなる。
【0010】
そして、前記建屋本体は、複数の前記居住空間及び天井裏空間によって複数階に構成したものでもよい。
【0011】
また、前記多孔吸着体は、通気性を有する複数の容器と、該各容器内に充填した微多孔質材によって複数個構成し、前記屋根裏空間に配置するとよい。
【0012】
更に、前記浄化換気装置の下流側に空気を加温するヒーターを配設し、建屋内の温度調節を一元管理するようにするとよい。
【0013】
また、請求項5に係る本発明を構成する手段は、建屋本体に、ホールに通じる廊下及び該廊下に面して設けた複数の部屋により形成される生活空間と、天井部を介して該生活空間の上方に画成した天井裏空間とを構成した集合建屋において、前記屋根裏空間に配置した浄化換気装置により、前記建屋本体に設けた外気導入口から吸入する外気をフィルタにより浄化して該屋根裏空間に放出し、多孔吸着体に接触させた浄化空気を前記天井部に形成した空気吹出し孔から前記ホール及び/又は廊下に吹出し、該廊下を介して前記各部屋内に押込み、該部屋内の空気を屋外に排出するようにしたことにある。
【0014】
そして、前記浄化換気装置の下流側にヒーターを配設し、該浄化換気装置から吹出される浄化空気を加温するようにするとよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は叙上の如く構成したから、下記の諸効果を奏する。
(1)外気を浄化換気装置により浄化した浄化空気を、建屋本体のホール及び/又は廊下を経て各部屋に押込むことにより換気するので、従来の換気扇による換気と比して静粛であるし、暖気が抜かれて室温が低下することも無い。
(2)押込式換気を採用したから、各部屋の生活臭その他の異臭が廊下やホールの共有スペースに漏洩する事態を確実に防止し、来訪者に不快感を与えることの無い施設にできる。
(3)浄化換気装置を屋根裏空間に配置し、建屋内の全体に均等に浄化空気を送るようにしたから、換気と生活臭の除去を一元的かつ計画的に管理することができる。
(4)複数の居住空間及び天井裏空間によって構成される複数階の建屋においても、各階の生活空間の空気浄化を図ることにより、階段等から上る生活臭による上階の生活空間の汚染を防止し、建屋全体の空気浄化を効率的に行うことができる。
(5)屋根裏空間に多数の多孔吸着体を配置し、吸引した外気の湿気を除去し、また屋外からの及び建屋本体内の有害な有機化合物を除去するから、快適かつ健康にも好適な集合建屋にできる。
(6)浄化換気装置の下流側にヒーターを設け、浄化空気を適温に加温して生活空間に送り出すことにより、建屋内全体の温度調節を一元管理できる。
(7)従来技術における建屋内にダクトを配設し、ダクトに連通して各部屋に換気口を設ける工事は必要ないから、施工費は極めて低額で足りる。また、ダクト内の清掃といった作業が不要であり、維持管理が容易である。
(8)既設の建屋でも屋根裏空間を整備し、浄化換気装置を設置するだけで多大な費用も掛けずに空気浄化式集合建屋に改装することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る集合建屋の部分間取り図である。
【図2】空気浄化式集合建屋内の浄化空気の流れを示す説明図である。
【図3】浄化換気装置を設置した屋根裏空間の説明図である。
【図4】変形例に係る空気浄化式集合建屋内の浄化空気の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳述する。図1は例えば老人ホームを構成する建屋本体1の間取り図を示す。該建屋本体1は図示しない土台、柱2A、梁2B等により組成した躯体2と、該躯体2に設けた外壁3、内壁4及び屋根(図示せず。)によって一般的な集合棟に構成したものからなる。5は建屋本体1内の略中央に床部5A、内壁4及び複数の天井板からなる天井部5Bによって画成したホールで、該ホール5は玄関5Cを備えることで来訪者との面会場所にもなっている。6、6は建屋本体1内に設けた左右の廊下で、該各廊下6は床部6A、内壁4及び天井部6Bによって画成してあり、前記ホール5に連通している。
【0018】
7、7、・・・は該各廊下6に面して仕切り壁8で画成することにより列設した複数の部屋で、該各部屋7は床部7A、外壁3、仕切り壁8及び天井部7Bからなり、廊下6とはドア7Cを有する出入り口7Bで連通し、外壁3に排気口9を設けた構成からなる。その他、図示しないが建屋本体1内には、管理室、職員休憩室、調理場、食堂、入浴場等の老人ホームとして必要なスペース、部屋、施設が設けてある。
【0019】
かくして、建屋本体1は、天井部5B、6B及び7Bから下側がホール5及び廊下6の共有スペースと、廊下6に面する複数の部屋7とからなる生活空間Aに、上側が天井裏空間Bになっている。そして、該天井裏空間Bに臨んで建屋本体1の外壁3にはゴミや虫の侵入を阻止する網10Aを有する外気導入口10が設けてある。
【0020】
また、11、11、・・はホール5の天井部5Aに形成することにより、天井裏空間Bと生活空間Aを連通する複数の空気吹出し孔を示す。なお、該空気吹出し孔11は既存の穴あきボードを天井板に用いることにより空気吹出し孔としてもよいし、ホール5上に位置する屋根裏点検口の蓋を穴明き板にしてもよい。
【0021】
12はホール5の上方近傍に位置して天井裏空間Bに設置した浄化換気装置を示す。該浄化換気装置12は送風機13と、該送風機13の吸入口13Aに配置したフィルターボックス14とから構成してあり、送風機13を駆動して外気導入口10から吸入した外気に混入している塵埃をフィルターボックス14により除去し、浄化空気を吹出口13Bから放出する。15は浄化換気装置12の吹出口13B側に配置した電気ヒーターを示し、該電気ヒーター15は浄化換気装置12から吹出される浄化空気を加熱することにより生活空間Aの温度を適温にする。なお、電気ヒーター15は、管理室で温度の設定や始動を制御するようにしてある。
【0022】
16、16、・・・は屋根裏空間Bに全面的に配置した多数の多孔吸着体で、該多孔吸着体16は通気性のある素材からなる収容袋16Aと、該収容袋16Aに収納した木炭、竹炭等からなる微多孔質の吸着材16Bとから構成してある。多孔吸着体16は、外気に含まれ或いは建屋本体の建材に含まれて屋根裏空間Bに流入する人体に有害な有機化合物を吸着し、また外気中の水分を吸着して生活空間Aの湿度が上昇するのを抑制するものである。
【0023】
本実施の形態は上述の構成からなり、浄化換気装置12によって外気導入口10から外気を吸入し、フィルターボックス14によって外気中の塵埃を除去した浄化空気は、寒冷季には電気ヒーター15によって適温に加温して屋根裏空間Bに放出する。浄化空気は屋根裏空間Bに配置した多数の多孔吸着体16に接触することで、大気中に混入し、或いは既設の建屋本体1から発生している有機化合物を速やかに吸着する。これにより、入居者や来訪者がシックハウス症候群等のアレルギーに罹ることの無い健康的な施設として機能することができる。
【0024】
上記の如くして塵埃及び有機化合物を除去した浄化空気は、躯体2を構成する柱2A、梁2B、外壁3、内壁4等に当って複数の空気吹出し孔11、11、・・・からホール5に放出される。そして、浄化空気は廊下6を流動して出入り口7Aとドア7Bとの隙間から部屋7に押込まれ、これにより各部屋7内の空気は排気口9から屋外に排出される。このように、押込み型換気を採用することで、換気扇を使用しない静粛な換気を可能にしてある。しかも各部屋7内の生活臭が廊下6やホール5の共有スペースに流入する事態を確実に防止することができるから、訪問者に臭いの不快感を与えることもない。
【0025】
また、浄化換気装置12に付設する電気ヒーター15は、管理室で一元管理できるから、集合建屋内の全体を好適な温度に調整する作業を容易に効率的に行うことができる。
【0026】
図4は、変形例に係る空気浄化式集合建屋内の浄化空気の流れを示す。なお、実施の形態の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して援用し、その説明は省略する。図において、21は建屋本体で、該建屋本体21は図示しない土台、柱22A、梁22B等により組成した躯体22と、該躯体22に設けた外壁23、内壁24及び屋根(図示せず。)によって構成してある。そして、後述するホール26と廊下27を仕切って天井裏空間Bに通じる内壁24には通気穴25が形成してある。
【0027】
上記の構成からなる建屋本体21内には、略中央に床部26A、内壁24及び複数の天井板からなる天井部26Bによって画成したホール26、床部27A、内壁24及び天井部27Bによって該ホール26の左右に連通する廊下27、27が画成してある。そして、ホール26の天井部26B及び廊下27の天井部27Bを構成する天井板には複数の空気吹出し孔28、28、・・が形成してある。
【0028】
上述の構成からなる空気浄化式集合建屋にあっては、浄化換気装置12によって外気導入口10から外気を吸入し、フィルターボックス14によって外気中の塵埃を除去した浄化空気は、寒冷季には電気ヒーター15によって適温に加温して屋根裏空間Bに放出する。浄化空気は屋根裏空間Bに配置した多数の多孔吸着体16に接触することで、大気中に混入し、或いは既設の建屋本体1から発生している有機化合物を速やかに吸着する。これらの作用は、上述した実施の形態と同様である。
【0029】
上記の如くして塵埃及び有機化合物を除去した浄化空気は、躯体22を構成する柱22A、梁22B、外壁23、内壁24等に当って複数の空気吹出し孔28、28、・・・からホール26に放出される。また、浄化空気の一部は内壁24に形成した通気穴25を通って廊下27の天井部27B上に流入し、空気吹出し孔28、28、・・から廊下27に吹出され、廊下27を流動して出入り口7Aとドア7Bとの隙間から部屋7に押込まれ、これにより各部屋7内の空気は排気口9から屋外に排出される。
【0030】
以上詳述した本発明によれば、浄化空気は天井裏空間Bからホール5(26)に吹出して廊下6(27)から各部屋7に押込む構成にしてもよいし、浄化空気をホール5(26)及び/又は廊下6(27)に吹出して各部屋7に押込む構成にしてもよいものであり、要は浄化空気を廊下6(27)から各部屋7に押込んで換気する作用を可能にすればよいものである。
【符号の説明】
【0031】
1、21 建屋本体
5、26 ホール
5B、26B 天井部
6、27 廊下
27B 天井部
7 部屋
10 外気導入口
11、28 空気吹出し孔
12 浄化換気装置
13 送風機
14 フィルターボックス
15 電気ヒーター
16 多孔吸着体
16A 通気性袋(通気性容器)
16B 微多孔性吸着材
A 生活空間
B 屋根裏空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋本体に、ホールに通じる廊下及び該廊下に面して設けた複数の部屋により形成される生活空間と、天井部を介して該生活空間の上方に画成した天井裏空間とを構成してなる集合建屋において、前記屋根裏空間に連通する外気導入口を前記建屋本体に設け、前記ホール及び/又は廊下の天井部に空気吹出し孔を配設し、前記外気導入口から吸入する外気をフィルタにより浄化して該屋根裏空間に放出する浄化換気装置を前記屋根裏空間に設置し、該浄化換気装置による浄化空気を前記屋根裏空間に設置する多孔吸着体に接触させて前記空気吹出し孔から前記ホール及び/又は廊下に放出し、該廊下から前記各部屋に押込むことにより該部屋内の空気を屋外に排出するようにしてなる空気浄化式集合建屋。
【請求項2】
前記建屋本体は、複数の前記生活空間及び天井裏空間によって複数階に構成したものである請求項1記載の空気浄化式集合建屋。
【請求項3】
前記多孔吸着体は、通気性を有する複数の容器と、該各容器に充填した微多孔質材とによって複数個構成し、前記屋根裏空間に配置してあることを特徴とする請求項1記載の空気浄化式集合建屋。
【請求項4】
前記浄化換気装置の下流側に空気を加温するヒーターを配設し、建屋内の温度調節を一元管理するようにしてあることを特徴とする請求項1記載の空気浄化型集合建屋。
【請求項5】
建屋本体に、ホールに通じる廊下及び該廊下に面して設けた複数の部屋により形成される生活空間と、天井部を介して該生活空間の上方に画成した天井裏空間とを構成した集合建屋において、前記屋根裏空間に配置した浄化換気装置により、前記建屋本体に設けた外気導入口から吸入する外気をフィルタにより浄化して該屋根裏空間に放出し、多孔吸着体に接触させた浄化空気を前記天井部に形成した空気吹出し孔から前記ホール及び/又は廊下に吹出し、該廊下を介して前記各部屋内に押込み、該部屋内の空気を屋外に排出するようにした集合建屋の空気浄化方法。
【請求項6】
前記浄化換気装置の下流側にヒーターを配設し、該浄化換気装置から吹出される浄化空気を加温するようにしてあることを特徴とする請求項5記載の集合建屋の空気浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−172858(P2012−172858A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32164(P2011−32164)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(500407466)株式会社ホーム企画センター (6)
【Fターム(参考)】