説明

空気浄化装置

【課題】分子吸着性粒子が空気中に飛散するのを防ぐことのできる空気浄化装置を提供する。
【解決手段】空気浄化装置本体内に、吸込口1と吹出口2とを有し、ファン4が設置された通風路3が形成される。通風路3の下方に洗浄液タンク5が設けられ、洗浄液タンク5内には、水中に、分子吸着性粒子である活性炭粒子6aが分散された洗浄液6が充填される。供給管9とポンプ10とから構成された散水手段8が設けられ、洗浄液タンク5内の洗浄液6をポンプ作用により汲み上げ、通風路3内に液体と共に分子吸着性粒子6aを散水する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の有害物質を除去する空気浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、室内環境を快適にしたいという要望に応えるために、フィルターや吸着剤などを用いた空気浄化技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、汚れた空気中の臭気成分を分解して脱臭するコロナ放電電極と、臭気成分を吸着して脱臭する活性炭フィルターとの組み合わせにより、空気浄化を可能とした空気清浄機が開示されている。
【0004】
図4は特許文献1に示された空気清浄機の要部の概略図である。図4において、14は内部に風路15を有する空気清浄機本体、16は吸込み口、17は吹出し口である。また、風路15には、吸込み口16からの塵埃や臭気を含む、汚れた空気を除塵する集塵フィルター18と、集塵フィルター18の下流側に対向して設けられ、汚れた空気の臭気成分を分解して脱臭するコロナ放電電極19と、コロナ放電電極19の下流側に対向して設けられ、活性炭により臭気成分を吸着して脱臭する活性炭フィルター20と、活性炭フィルター20と吹出し口17との間に設けられ、風路15内に汚れた空気を導入し清浄化された空気を排出する送風ファン21とが配設されている。
【0005】
活性炭フィルター20は、活性炭繊維もしくは有機繊維に活性炭の粉末を接着させて形成した第1のフィルター部20aと、破砕炭またはペレット状等の粒状の活性炭により形成された第2のフィルター部20bとの2層構造となっている。
【0006】
このように、活性炭フィルター20を、吸着効率の高い第1のフィルター部20aと吸着量の多い第2のフィルター部20bとから構成することにより、第1のフィルター部20aで汚れた空気中の臭気成分を素早く吸着できるとともに、第2のフィルター部20bで多量の臭気成分を吸着でき、フィルターの長寿命化が可能となる。
【特許文献1】特開2001−353212公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のような活性炭を用いるフィルター方式においては、小型で性能を上げるためには、活性炭の粉末を微細化し、活性炭表面積を上げる方法が適当であるが、粉末の微粒子化やそれに伴う粒子数の増大等により、粉末が剥離しやすくなり、吹き出し口から空気中に活性炭が飛散する可能性があった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、分子吸着性粒子が空気中に飛散するのを防ぐことのできる空気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、分子吸着性粒子を液体と共に用いたものである。具体的には、本発明は、空気の吸込口から吹出口に至る通風路へ、散水手段によって、液体と共に分子吸着性粒子を放散させたことを特徴とする空気浄化装置である。この構成によれば、液体によって分子吸着性粒子の自重が大きくなるため、分子吸着性粒子が外部に放散されるのを防ぐことができる。
【0010】
分子吸着性粒子は、空気中の粉塵、臭気または化学物質等の被除去物を捕捉できる固形物であれば特に限定されるものではなく、被除去物に対して、ファンデルワールス力等の物理的な吸着性や、イオン結合等の化学的な吸着性を有する粒子を含む概念である。分子吸着性粒子としては、多孔性の粒子が好ましく、例えば、活性炭が挙げられるがこれに限定されるものではなく、その他には、ゼオライト、二酸化マンガン、シリカ、イオン交換樹脂、活性アルミナ、ケイ酸アルミニウム、多孔質ガラス、シリカゲル、活性白土、多孔性粘土鉱物等を挙げることができる。
【0011】
また、分子吸着性粒子の大きさは、散水手段によって放散できる程度の大きさであれば限定されるものではないが、表面積を大きくして被除去物との吸着性を向上させるためには、1〜1000μm、好ましくは1〜100μm、さらに好ましくは約10μmとするのがよい。
【0012】
液体としては、水、硫酸、水酸化ナトリウム等、被除去物に応じて使用することができる。
【0013】
また、本発明のより具体的な例としては、空気の吸込口から吹出口に至る通風路と、通風路へ洗浄液を散水する散水手段と、散水された洗浄液を貯水し、かつ、洗浄液を散水手段に供給する洗浄液タンクとを備え、洗浄液タンク内の洗浄液は分子吸着性粒子が分散された液体であり、洗浄液タンク内に、洗浄液を撹拌する撹拌部材が設けられたことを特徴とする空気浄化装置としてもよい。この構成によれば、洗浄液中の液体によって分子吸着性粒子の自重が大きくなるため、分子吸着性粒子が空気浄化装置外へ放散されるのを防ぐことができる。また、洗浄液タンク内の洗浄液が撹拌されるので、液体中において分子吸着性粒子が凝集せず、空気中の被除去物と分子吸着性粒子とを効果的に接触させ、吸着させることができる。
【0014】
また、散水手段から放散された液体は、洗浄液タンク開口における、洗浄液の上澄み部分に流入するように配されるのが好ましい。散水手段から放散される液体を直接洗浄液タンク内に流入させることができる。
【0015】
なお、洗浄液は、散水手段から散水された後、洗浄液タンクに溜められ、再び散水手段に送られるといったように、散水手段と洗浄液タンクとの間を循環するが、分子吸着性粒子については、液体と共に散水手段と洗浄液タンクとの間を循環させる形態としてもよいし、循環させずに洗浄液タンク内に留めておく形態としてもよい。
【0016】
分子吸着性粒子を循環させずに洗浄液タンク内に留めておく形態として、具体的には、散水手段に、洗浄液タンクと散水口とを連通する供給管を備え、供給管の洗浄液タンク側開口が、洗浄液の上澄み部分に配されるようにすればよい。分子吸着性粒子は自重により洗浄液タンク下方へ沈殿するので、供給管を洗浄液の上澄み部分に配すれば、分子吸着性粒子をほとんど含まない液体を、散水手段の散水口に供給することができる。この構成によれば、散水口から放散される液体中に、分子吸着性粒子が含まれないので、空気浄化装置外に分子吸着性粒子が吹出されるのを防止することができる。また、分子吸着性粒子を循環させずに洗浄液タンク内に留めておく別の形態としては、供給管の洗浄液タンク側開口にフィルターを設ける等して、濾過する形態としてもよい。
【0017】
また、分子吸着性粒子を循環させずに洗浄液タンク内に留めておく別の形態として、洗浄液タンクは、その上方に隔壁を設けて左右の区画室に区画し、一方の第一区画室に散水手段から散水された洗浄液を流入させ、他方の第二区画室に供給管の洗浄液タンク側開口を配するようにしてもよい。第一区画室と第二区画室とは上方で分離されているが下方で連続しており、洗浄液は下方を通じて両室内を移動可能である。この構成によれば、第二区画室は、第一区画室と上方が区画されているので、第一区画室に流入する洗浄液による影響をほとんど受けないですむ。したがって、第二区画室内の洗浄液は、ほぼ平静な状態を保つことができ、分子吸着性粒子を沈殿させた状態を保つことができる。その第二区画室に配された供給管は、分子吸着性粒子の含有量の少ない洗浄液を吸込むことができる。
【0018】
このとき、撹拌部材は、第1区画室内に設けるのが好ましい。第一区画室では分子吸着性粒子と被除去物との吸着を促進することができる。なお、第二区画室は、隔壁があるので撹拌部材による影響を受けないですむ。また、第二区画室の上方より散水する液体の送出を行う配管を配置することにより、引力により分子吸着性粒子を分離した液体を散水できるため、ポンプや配管が詰まることがなく装置の長寿命化が可能になる。
【0019】
また、通風路内の散水手段の散水口よりも上流側に、放電部を設けるのが好ましい。放電により生成されたラジカル、イオン、プラズマ及び/又はオゾンなどにより、吸込口から吸込まれた空気中に含まれる被除去物の洗浄液との反応性を高めることができる。したがって、空気浄化性能を高めることができる。
【0020】
放電部の放電電極からは、正および負からなる荷電粒子を放出するのが好ましい。正または負に荷電した粒子としては、H(HO)(mは任意の自然数)等の正イオン、O(HO)(nは任意の自然数)等の負イオン、プラズマ、ラジカル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような構成によれば、放電により帯電した空気中の被除去物等を除電でき、通風路の壁面に付着するのを防止できる。またさらに、上記ラジカルまたはイオン、プラズマ、オゾンなどが液体の放散部で液体に取り込まれ、空間に放出される前に濃度が低下するので、空間に存在する生物や物品への安全性を向上させることができる。したがって、洗浄液に高効率で接触でき、安全性を確保しながら、空気浄化能を上げることが可能になる。
【0021】
洗浄液タンクを、装置本体に着脱可能に設けるのが好ましい。この構成により、汚染された溶液のみを交換することができ、空気浄化装置全体を洗浄することなく、簡単に空気浄化を継続することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、分子吸着性粒子を液体と共に用いることにより、分子吸着性粒子の自重が大きくなり、吹出口から外部に拡散されるのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
[第一の実施形態]
図1は第一の実施形態に係る空気浄化装置の要部の概略図である。本空気浄化装置には、ケーシング(図示せず)内に、吸込口1と吹出口2とを連通する通風路3が形成されている。通風路3内には、ファン4が設置され、吸込口2から外部の空気を取り込み、清浄化された空気を吹出口2から外部へ放出する。図中の矢印は、空気の流れを示す。通風路3は、断面積が約80cmの大きさであり、ファン4の直径は約10cm、風速は約1m/秒である。また、ケーシング内には、ファン4、後述する撹拌機7及びポンプ10の動作を制御する制御部(図示せず)が設けられている。
【0025】
通風路3を構成する壁面の下方の一部に開口が形成され、その開口に容器状の洗浄液タンク5がはめ込まれる。洗浄液タンク5内には、洗浄液6が充填される。洗浄液6としては、水中に、分子吸着性粒子である活性炭粒子6aが分散された液体が使用される。また、活性炭粒子6aとしては、約10μm程度の大きさに粉砕したものを利用する。
【0026】
また、洗浄液タンク5内の底面には、撹拌部材である撹拌機(ファン)7が設けられる。撹拌機7は、洗浄液6を攪拌することにより、洗浄液6に取り込まれた化学物質であるホルムアルデヒド等の被除去物と、分子吸着性粒子6aとの反応を促進する働きを有する。
【0027】
散水手段8は、供給管9と、その途中に設けられたポンプ10とから構成され、洗浄液タンク5内の洗浄液6をポンプ作用により汲み上げ、通風路3内に上方から散水する。ポンプ10は、1秒あたり30cmの洗浄液6を送出するように設定されている。
【0028】
詳しくは、供給管9の洗浄液タンク側は、洗浄液タンク5の側壁に設けられた開口に挿通され、先端が洗浄液タンク5の洗浄液6内に配される。この構成により、供給管9の洗浄液タンク側開口9aから洗浄液6を吸込むことができる。
【0029】
また、供給管9の散水口9b側は、通風路3を構成する壁面の上方に設けられた開口に挿通され、通風路3及び洗浄液タンク5に向かって開口する。供給管9の散水口9bには、洗浄液6を散水可能なノズル(図示せず)が設けられる。この構成により、吸い上げられた洗浄液6を、通風路3を通る空気に向かって散水することができる。そして、散水された洗浄液6は、直接または通風路3の壁面を伝って洗浄液タンク5内に回収される。なお、ノズルとしては、洗浄液6をミスト状に噴霧可能な噴霧ノズルが好ましい。洗浄液6の空気との接触面を大きくすることができる。
【0030】
上記構成において、吸込口1から取り込まれた空気は、散水手段8から噴霧される洗浄液6と接触し、空気中の被除去物が洗浄液6内に取り込まれる。洗浄液6には分子吸着性粒子6aが分散されているので、被除去物は分子吸着性粒子6aに吸着し、浄化能が向上する。その後、清浄化された空気は、吹出口2より外部に放出される。この構成によれば、洗浄液6中の液体によって分子吸着性粒子6aの自重が大きくなるため、分子吸着性粒子6aが空気と共に外部に放散されるのを防ぐことができる。
【0031】
次に、図2に、上記構成の空気浄化装置に、ホルムアルデヒドガスを0.08ppm含ませた空気を取り込ませた場合の処理後の空気中のホルムアルデヒド濃度を調べたデータを示す。横軸は経過時間、縦軸は処理後(空気浄化装置通過後)の空気中のホルムアルデヒド濃度である。処理後の空気中のホルムアルデヒド濃度は、通風路3の吹出口2で計測した値である。
【0032】
0〜1分においては、ファン4は駆動させるが、洗浄液タンク5へ水を入れずに、散水手段8から洗浄液6を散水していない。この場合、導入された空気中のホルムアルデヒド濃度は変化せずそのまま排出される。
【0033】
1分後、洗浄液タンク5内に水を入れ、散水手段8より水を噴霧し、導入した空気に接触させる(図中A部)。すると、空気に含まれるホルムアルデヒドガスは水に取り込まれ、処理後の空気中のホルムアルデヒド濃度は0.02ppmまで低下する。しかしながら、水に溶け込むホルムアルデヒド濃度が飽和状態となるにつれて除去性能は低下して、処理後の空気中のホルムアルデヒド濃度が上昇し、2時間後にはおよそ0.04ppまで上昇する。
【0034】
3分後、洗浄液タンク5の水の中に活性炭粒子を入れ、撹拌機7によって拡散する(図中B部)。すると、空気中のホルムアルデヒドは一旦水に取り込まれ、さらに活性炭に吸着されるため、空気中から大量に除去される。このため、処理後の空気中のホルムアルデヒド濃度はおよそ0.008ppmまで低下し、長期間の除去性能が維持される。本例では、およそ1000時間まで排出ガス濃度が0.02ppm以下の状態を保つという性能を得ることができた。
【0035】
以上から、本空気浄化装置は、高除去率、かつ、長期間の空気浄化機能を実現することが示された。
【0036】
[第二の実施形態]
図3は本発明の第二の実施形態に係る空気浄化装置の要部の概略図である。図3に示すように、空気浄化装置には、第一の実施形態と同様に、吸込口1と吹出口2とを有し、ファン4が設置された通風路3が形成され、通風路3の下方に洗浄液タンク5が設けられる。洗浄液タンク5内には、水に、分子吸着性粒子である活性炭粒子6aが分散された洗浄液6が充填される。また、供給管9とポンプ10とから構成された散水手段8が設けられ、洗浄液タンク5内の洗浄液6をポンプ作用により汲み上げ、通風路3内に散水する。
【0037】
さらに、本実施形態における空気浄化装置は、通風路3内において、散水手段8の散水口9bとファン4との間に設置された放電部としてのラジカル発生部11と、ラジカル発生に必要な高圧を発生する高圧発生部12と、高圧発生部を制御する制御部(図示せず)を備える。
【0038】
ラジカル発生部11は、誘電体と、この誘電体の両面に対向するように設けられた放電電極及び対向電極を有する。高圧発生部12は、両電極間に高電圧を印加することによりラジカルを発生させる。この構成により、吸込口1から取り込まれた空気中に含まれる被除去物は、ラジカル発生部11によって励起され、洗浄液6との反応性が高められる。例えば、空気中に含まれるホルムアルデヒドなどのガス成分は、ラジカル発生部11の放電により分解され、不安定な粒子となるため、洗浄液6中の液体および分子吸着性粒子6aに取り込まれやすくなる。したがって、排出される空気の純度が高くなる。このようにして清浄化された空気は吹出口2より外部に放出される。
【0039】
また発生したラジカルやイオン、プラズマ、オゾンなどは液体に捕捉され、空間に放出される前に濃度が低下するため、空間に存在する生物や物品への影響が低下し、安全性を高めることができるという特徴を有する。
【0040】
さらに、ラジカル発生部11は、正イオン及び負イオンの荷電粒子を放出する。通風路3内の空間のイオン濃度が、正イオン及び負イオンそれぞれ10,000個/cm3程度になるように設定されている。このような構成とすることにより、取り込まれた空気中に含まれる粉塵等の被除去物が除電され、通風路3の壁面に付着するのを防止でき、散水手段8から噴霧される洗浄液6に効率的に接触させることができる。
【0041】
また、高圧発生部12に導電性のリード線12aを介して電気的に接続された電極(図示せず)が、散水手段8の供給管9の散水口9b付近に固定されている。散水手段8から噴霧される洗浄液6の電位は、接地若しくは接地を基準として荷電粒子よりも低い電位となるようにすることが望ましく、本例では、供給管9を電極にて電位調整し、おおよそラジカル発生部11から生成された正イオンおよび負イオンの間の電位になるよう、接地電位としている。このような電位調整を行うことにより、たとえ空気中の粉塵等が正イオンおよび負イオンにより十分除電されず、電荷を有していない場合であっても、粉塵は洗浄液6の電位に反発し壁面に付着することなく、散水手段8から散水されるミスト中に導入され、洗浄液6に補足されることが可能になる。
【0042】
なお、本例において放電により生成される活性な粒子はラジカルであっても、イオンであっても良い。また、オゾンなどの反応性の高い分子種であってもよく、空気中の不純物等と反応し、変性や分解作用を有する粒子であれば本発明の目的に供することが可能である。
【0043】
洗浄液タンク5には、隔壁13が設けられる。隔壁13は、通風路3の壁面からL字状に延設され、その先端が洗浄液タンク5上方から垂下するように設けられる。この隔壁13によって洗浄液タンク5内は、左右の区画室に区画される。なお、隔壁13の下端は、洗浄液タンク5の底面よりも上方に位置しており、この下方の隙間から第一区画室13aと第二区画室13bとの間での洗浄液6の行き来が可能である。
【0044】
第一区画室13a側には、散水手段8より散水された洗浄液6が流入する。また、第一区画室13aの底面に撹拌機7が設けられる。洗浄液タンク5中の洗浄液6が撹拌されることにより、被除去物と洗浄液6中の分子吸着性粒子6aとの接触が促進され、被除去物は分子吸着性粒子6aに吸着する。
【0045】
第二区画室13b側には、供給管9の洗浄液タンク側開口9aが配される。ここで、洗浄液6中の分子吸着性粒子6aは、自重により洗浄液タンク5下方へ沈降するので、洗浄液6の上方には上澄み部分が形成される。この上澄み部分に、供給管9の洗浄液タンク側開口9aが配される。また、第二区画室13b内は、第一区画室13aと区画されているので、第一区画室13a内に流入する洗浄液6による影響を受けないですむ。したがって、第二区画室13b内の洗浄液6は、ほぼ平静な状態を保つことができ、分子吸着性粒子6aを沈殿させた状態を保つことができる。このような構成により、散水手段8は、分子吸着性粒子6aをほとんど含まない液体を吸い込むことができる。散水口9bから放散される液体中に、分子吸着性粒子6aが含まれないので、外部に分子吸着性粒子6aが吹出されるのを防止することができる。
【0046】
また、洗浄液タンク5は、上下に分離され、下部5aが上部5bに対して着脱可能とされる。上部5bと下部5aとの着脱の形態としては、一方に設けた凸部を、他方に設けた凹部又は穴に嵌合させる形態としてもよいし、螺合溝により両者を螺合させる形態としてもよい。このような構成により、洗浄液タンク5の下部5aを取り外して、洗浄液6の交換をすることができる。洗浄液6を入れ替えることにより、わずかなメンテナンス作業で空気浄化装置としての機能を再開できる。また、供給管9中には分子吸着性粒子6aの残留は少ないため、洗浄液タンク5の交換により、大半の活性炭を交換可能となり、装置全体を初期状態に近い状態に復帰させることができる。
【0047】
上記構成において、吸込口1から取り込まれた空気は、ラジカル発生部11によって励起され、洗浄液6との反応性が高められる。また、ラジカル発生部11から発生する正負両イオンにより、被除去物が除電され、通風路3の壁面に付着するのを防止する。そして、空気は散水手段8から噴霧される洗浄液6と接触し、空気中の被除去物が洗浄液6内に取り込まれ、残りの清浄化された空気は、吹出口2より外部に放出される。
【0048】
被除去物を取り込んだ洗浄液6は、洗浄液タンク5の第一区画室13a内に流入する。第一区画室13a内で撹拌されることにより、洗浄液タンク5中の分子吸着性粒子6aに吸着する。洗浄液タンク5内は、第一区画室13aと第二区画室13bとに区画されており、第二区画室13b内では分子吸着性粒子6aが沈降した状態となる。散水手段8は、第二区画室13b内において分子吸着性粒子6aを含まない上澄み部分を吸い込み、通風路3内に散水する。
【0049】
このように、散水手段8から噴霧される洗浄液6中に分子吸着性粒子6aが含まれない構成としているため、分子吸着性粒子6aが空気と共に外部に放散されるのを防ぐことができる。また、被除去物は、一旦水に取り込まれ、洗浄液タンク5内で活性炭と反応し除去されるので、高い除去性能を保つことができる。
【0050】
本実施の形態の空気浄化装置では、本装置に取り込まれるホルムアルデヒド濃度が約0.08ppmの場合、排出空気において約0.004ppm以下となっており、1000時間まで排出ガス中のホルムアルデヒドガス濃度を0.008ppm以下に抑えることができた。
【0051】
なお、本発明は上記第一及び第二の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正及び変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記の実施形態では、分子吸着性粒子6aとして活性炭粒子を用いたが、他の化学吸着剤、例えばゼオライトや二酸化マンガンなどでも吸着作用のある物質を用いてもよく、また、反応により被除去物を分解する機能を有する物質を使用しても本発明と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】第一の実施形態に係る空気浄化装置の要部の概略図
【図2】本発明のガス除去性能を示す図
【図3】第二の実施形態に係る空気浄化装置の要部の概略図
【図4】従来の空気浄化装置の要部の概略図
【符号の説明】
【0053】
1 吸込口
2 吹出口
3 通風路
4 ファン
5 洗浄液タンク
6 洗浄液
6a 分子吸着性粒子
7 撹拌機
8 散水手段
9 供給管
9a 洗浄液タンク側開口
9b 散水口
10 ポンプ
11 ラジカル発生部
12 高圧発生部
13 隔壁
13a 第一区画室
13b 第二区画室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の吸込口から吹出口に至る通風路へ、散水手段によって、液体と共に分子吸着性粒子を放散させたことを特徴とする空気浄化装置。
【請求項2】
空気の吸込口から吹出口に至る通風路と、該通風路へ洗浄液を散水する散水手段と、散水された洗浄液を貯水し、かつ、洗浄液を前記散水手段に供給する洗浄液タンクとを備え、前記洗浄液タンク内の洗浄液は、分子吸着性粒子が分散された液体であり、洗浄液タンク内に、洗浄液を撹拌する撹拌部材が設けられたことを特徴とする空気浄化装置。
【請求項3】
前記分子吸着性粒子が、活性炭を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の空気浄化装置。
【請求項4】
前記散水手段から放散された液体が、前記洗浄液タンク開口における、洗浄液の上澄み部分に流入するように配されたことを特徴とする請求項2又は3に記載の空気浄化装置。
【請求項5】
前記散水手段は、前記洗浄液タンクと散水口とを連通する供給管を備え、前記洗浄液タンクは、その上方に設けられた隔壁により左右の区画室に区画され、第一区画室に前記散水手段より散水された洗浄液が流入し、第二区画室に前記供給管の洗浄液タンク側開口が配されたことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の空気浄化装置。
【請求項6】
前記通風路内の前記散水手段の散水口よりも上流側に放電部が設けられ、活性な空気を放出することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の空気浄化装置。
【請求項7】
前記放電部は、正および負からなる荷電粒子を放出することを特徴とする請求項6に記載の空気浄化装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−330292(P2007−330292A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−161950(P2006−161950)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】