説明

空気清浄装置

【課題】 空気清浄装置の吸引風速を大きくして、空間の浮遊塵埃粒子を広い範囲から吸引すると共に、排気風による床面などに堆積した塵埃粒子等を巻き上げ、空間に拡散させるなど排気風による周囲への影響を減らすことができるようにする。
【解決手段】
フィルタと送風ファンを備え装置上面部より吸引し装置側面のほぼ全周から排気する空気清浄装置において、フィルタに汚染空気を導く送風手段を装置本体の下部に備え、装置本体上面に吸引口を設け、装置本体の側壁のほぼ全周にわたり排気口を設け、吸入口から反対側のフィルタ端面を送風手段に連結し、吸入口からフィルタに空気を導く吸気管を装置本体の側壁とフィルタとの間に設け、送風手段の送風口が吸引管と装置本体の側壁との間に向けて開口した構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は室内空間の空気浄化を行う空気清浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気清浄装置の能力は、設置空間に漂う汚染物質の浄化性能とその浄化効率により評価がなされている。浄化性能については、空気清浄装置に搭載するフィルタの性能に依存するものであるが、浄化効率は、空気清浄装置の送風能力と空間空気の循環作用に浄化性能とを合わせた効果に依存するといわれている。従来の空気清浄装置の吸引口は、装置の使用部材の中で最も大きな面積を占めるフィルタ通気面の大きさにほぼ一致する形状とし、空気清浄装置のほぼ1平面に配されている。一方、排気口は送風ファンを収納する送風手段の送風口付近に配され、吸引方向に対して垂直方向へと排気するようになっている。この方法によると、吸引風量に対して吸引口面積が大きく、吸い込み風速が小さいので、タバコの煙など広い範囲から効率良く吸引できないことや、排気風速が非常に大きいために、空気清浄装置付近の汚染空気を空間へ拡散させてしまうなどの課題があった。それらの課題に対して、特開2002−186662にあるように、空気浄化装置本体の吸引口を前記空気清浄装置本体の外壁のほぼ全面に渡って設けて、汚染空気を装置本体の外壁のほぼ全面から吸引させ、空気清浄装置の設置空間の隅部分に存在する汚染空気がその近傍に留まることを防ぎ、空間内の除去率を均一化させ、汚染空気が存在する空間全体の汚染物質の吸引を速やかに行い、空間全体としての除去効果を増大させる工夫等がなされている。
【特許文献1】特開2002−186662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、先の発明によると装置近傍の臭気ガスなどの除去率を均一化し、その除去効果を高めることは期待できるが、床面付近に配される排気口は床面に堆積した塵埃粒子や花粉、床面に多く見られるダニ等のアレルゲン物質を空間に巻き上げ拡散させてしまう問題があった。この排気口は小さな開口面積であるため、排気風の風速が大きいので、その影響は更に大きくなる。また、室内で使用する場合には排気風が周りの人に不快感を与えることがあり、装置の設置場所を制限させてしまうという問題があった。
【0004】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、タバコの煙などを広範囲から効率よく装置内に吸引するとともに、床面に堆積した塵埃粒子や花粉、床面に多く見られるダニ等のアレルゲン物質を空気中に巻き上げることなく空間の浄化効率を高めるとともに、メンテナンス性を高めた空気清浄装置を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したのである。
請求項1の発明は、フィルタに汚染空気を導く送風手段を装置本体の下部に備え、装置本体上面に吸引口を設け、装置本体の側壁のほぼ全周にわたり排気口を設けた空気清浄装置において、吸入口から反対側のフィルタ端面は送風手段に連結され、吸入口からフィルタに空気を導く吸気管を装置本体の側壁とフィルタとの間に設け、送風手段の送風口が吸引管と装置本体の側壁との間に向けて開口した構成としている。
請求項2の発明は、フィルタの閉塞された端面を上に凸の通気性のない部材で閉塞するものである。
請求項3の発明は、送風手段の送風口を、送風手段から送風路を経て前記排気路の下部へ延伸して配するものである。
請求項4の発明は、吸気管の閉塞された端面をフィルタと着脱可能なアダプタで閉塞し、アダプタは送風手段に面した前記フィルタの開口部と略同一形状の開口を持ち、フィルタおよび送風手段の吸込み口周縁部と気密を保てる程度に嵌合可能で、前記フィルタと前記送風手段の吸込み口周縁との間に押圧されて気密を保って装着され、アダプタの外周縁の形状が前記吸引管の内壁または前記送風手段の吸込み口周縁と接触する形状となっているものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によると、排気口から出る排気風が床面を直接掃気しないので、床面に堆積した塵埃粒子や花粉、床面に多く見られるダニ等のアレルゲン物質を空間に拡散させずに排気をすることができる。
【0007】
請求項2に記載の発明によると、空気清浄装置内に吸引された吸引風が、フィルタ上部を通過する際に、上に凸状となっているフィルタ上部により乱流を抑制して、フィルタ上部から受ける空気抵抗を小さくでき、流路内の吸引抵抗を小さくすることができる。また、乱流の発生を抑えることで柱状フィルタ上部の気流の流れを安定させ、フィルタに流入する空気の偏流を小さくし、フィルタへの吸気流の流入分布を均等にすることができ、フィルタを効率良く使用することができる。
【0008】
請求項3に記載の発明によると、送風手段15から排気口5の開口したスリットの最下部付近に位置した送風口7まで延伸された送風路21により、送風ファンからの排気風を整流し排気抵抗を小さくすることができ、送風ファンの特性を高めて使用することができる。
【0009】
請求項4記載の発明によると、装置内にフィルタを装着と交換をする際に、連結アダプタを介してフィルタと送風手段の連結時の位置決めを簡単に行うことができるので、その作業性を大幅に改善することができる。また、アダプタはフィルタおよび送風手段と気密を保てるので、フィルタと送風手段の連結不備によるリークを防止することもでき、フィルタと吸気管の内壁間に形成される吸気路の距離を適正に保つこともできる。さらに、アダプタの一部がフィルタと間隙を設けて配される吸気管の内壁と、あるいは送風手段の吸込み口周縁と一致する形状となっているが密着はしていないので、フィルタを引き抜くとアダプタも一緒に引き抜かれ、フィルタ交換の際にフィルタ表面に付着した埃やゴミ等がフィルタと隔壁の間に落下したとしても、フィルタとともにアダプタにより装置外へと持ち出すことができるので、装置のメンテナンス性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0011】
図1(a)は、本発明の空気清浄装置の構造を示す横方向断面図面であり、図1(b)は上方より見た断面図である。図1(a)に示す装置の上部には、空間空気の導入口である吸引口3があり、フィルタ12と一定の距離を空けて配される吸気管10の内壁とで形成される空間は、吸気路11として装置内に吸引された吸引風6の流路となり、吸気管10の外壁と装置の側面部4との間に形成される空間は、送風口7より装置外へと排気風8を導く排気路9となる。吸気管10は、送風手段15上に形成される吸い込み口14と送風口7との間に、フィルタ12と一定の間隙を設けて配され、送風手段15に嵌合され装着される。吸引風6を浄化するフィルタ12は、上部が通気性の無い中空の円筒状となっており、下部は吸い込み口14と一致する形状の開口部13となっている。そして、開口部13と吸い込み口14とを密着して嵌合し送風手段15に装着されている。排気風8を装置外に排気する排気口5は、空気清浄装置2の側面部全周に渡って開口しており、大きな開口面積となっている。空気清浄装置2の送風手段は、送風ファンである多翼ファン16とモータ17とからなり装置の下部に設置されている。
【0012】
本実施例によれば、吸引風6は空気清浄装置2下部に配してある送風手段15内にモータ17と共に収納された多翼ファン16により吸引され、吸気管10とフィルタ12から形成される吸気路11に侵入しその後、吸気路11から円筒状のフィルタ12の中空部へと吸引され濾過される。フィルタ12は上部が閉鎖された円筒状の中空となっており、その全側面が浮遊塵埃等を捕集する集塵用濾材と活性炭等の脱臭剤や除菌抗菌性を持つ不織布部材等いずれも通気性のある部材を積層し構成されている。本実施例では、フィルタ12を中空の円筒形状としているが、中空で柱状の形状であれば多角形や楕円形であってもよい。
【0013】
フィルタ12により濾過され清浄空気となった吸引風6は、フィルタ12の開口部13から送風手段15の吸い込み口14へと侵入し、多翼ファン16を経て送風手段15の送風口7へと導かれる。多翼ファン16は、高い送風能力を持つシロッコファンやターボファンであり、装置の接地面と平行して配してあり、3.0m3/min程度の処理能力を持った装置としている。
【0014】
図1(b)に示すように送風手段15の送風口7は2口あり、吸い込み口14と同じように、送風手段15の上面に上方向を向き開口しているが、送風手段15の上面に装着されている吸気管10により、吸い込み口14と送風口7はそれぞれ分離されている。送風口7は吸気管10の外壁と、装置の側面部4との間に形成される排気路9に開口している。送風口7は製品形状や大きさ、装置の処理風量に合わせて、1口でも複数でもよい。送風口7より排気される排気風8は、吸気管10と側面部4との間に形成され上部が閉鎖されている排気路9の下部から上部へと導かれ、空気清浄装置2の側面部全周に渡って開口し、複数のスリットにより形成された排気口5より装置外へと排気される。本実施例においては、空気清浄装置2の外郭形状を円筒形状としているが、柱状の楕円形や多角形であってもよい。
【0015】
ここで、本実施例における空気清浄装置2の簡単なスペックについて説明すると、製品の大きさは、側面部4がφ160mmの円形で、高さが500mmであり、処理風量は3.0m/minである。この時の吸引口3の風速は、吸引口3の開口面積がφ124mmなのでその通風断面積は0.0121mであり、空気清浄装置2の処理風量を3.0m/minとした場合、4.1m/sと非常に大きくすることができ、空間空気中に漂い拡散してゆくタバコの煙等を広範囲から効率よく吸引することができる。一方、排気口5の開口面積は、開口している高さを370mm程度とすると0.1860mとなる。排気口5の開口形状がスリット形状であり、開口率が70%なので、その排気風8の風速は0.38m/sとなり極めて小さくすることができるので、排気風により床面に堆積した塵埃粒子や花粉、床面に多く見られるダニ等のアレルゲン物質を空間に拡散させることもなく、また周囲の人や物などに影響を与えることも無い。排気風8については、空気清浄装置2の処理風量や、目的に合わせて排気路9の上部の閉鎖する位置や、排気口5の開口しているスリットの大きさや位置、配置を変えて最適化することが望ましい。
【実施例2】
【0016】
図2は第2実施例の構成を示す図である。図2(a)は空気清浄装置2に使用するフィルタ12を円柱形状とし、その上部を通気性のない円錐状部19としたものである。また、図2(b)はフィルタ12を多角形状とし、その上部を同様に通気性の無い錐形状としたものである。このような形状にすることで、空気清浄装置2に吸引された空間空気1が、フィルタ12の上部を通過する際に、錐形状部19により乱流を抑制して、空気抵抗を小さくでき、流路内の通風抵抗を小さくすることができる。また、乱流の発生を抑えることで柱状フィルタ上部の気流の流れを安定させ、フィルタに流入する空気の偏流を小さくし、フィルタへの吸引風6の流入分布を均等にすることができるので、フィルタを効率良く使用することができる。また、フィルタ12の形状を柱状で中空の楕円形や別形状とした場合でも、上部の錐形状部19をフィルタ12の形状に合わせた錐形状とすることで、同様の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0017】
図3(a)は第3実施例を示す斜視図である。送風手段15上に形成される送風口7を、送風手段15上面から排気方向に延伸して形成される送風路21を経て設けている。図3(b)に示すように、送風口7は排気路9の下部に位置しており、送風路21を経て送風口7より排出された排気風8は、吸気管10の外壁と側面部4とで形成される排気路9を通り、排気口5より装置外へと排出される。送風路21の高さは30mm以上が望ましく、本実施例では50mmとしている。この高さは、風量や送風口7の開口面積とその形状により最適化をすることが望ましい。
【0018】
本実施例によれば、送風手段15から排気口5の開口したスリットの最下部付近に位置した送風口7まで形成された送風路21により、送風ファンからの排気風を整流し排気抵抗を小さくすることができ、送風ファンの特性を高めて使用することができる。
【実施例4】
【0019】
図4(a)は第4の実施例を示す断面図であり、図4(b)はその斜視図である。空気清浄装置2の筒状で中空のフィルタ12を送風手段15に装着するための連結のアダプタ23に、送風手段15のベルマウス18を形成する吸い込み口14を持ち、その外周部にはフィルタ12の内径とを嵌合させうる構造のフィルタ装着部22があり、アダプタ23の外周部は吸気管10の内壁と一致する形状の吸気管接触部24となっている。アダプタ23の吸い込み口14は、送風手段15内に収納される多翼ファン16の中心とが一致するように形成されており、フィルタ12および送風手段15と密着して嵌合し装着される。
【0020】
本実施例によると、フィルタ12と送風手段15との装着時において、フィルタ12とアダプタ23を別途装着した後に、アダプタ23を吸気管接触部24と吸気管10の内壁を沿わせて送風手段15に装着させることができるので、フィルタ12の交換作業性を大幅に改善することができる。また、フィルタ12と送風手段15の連結不備によるリークを防止でき、またフィルタ12と吸気管10の内壁間に形成される吸気路11の距離を適正に保つこともできる。さらに、アダプタの一部がフィルタ12と間隙を設けて配される吸気管の内壁と、あるいは送風手段の吸込み口周縁と一致する形状となっているが密着はしていないので、フィルタを引き抜くとアダプタも一緒に引き抜かれ、フィルタ12の交換時にフィルタ12の表面に付着した埃やゴミ等がフィルタ12と吸気管10の内壁の間に落下したとしても、フィルタ12とともにアダプタ23により装置外へと持ち出すことができるので、装置のメンテナンス性を高めることができる。本実施例では、フィルタ12を中空の円筒形状としているが、柱状で中空の楕円形や多角形とした場合はアダプタ23のフィルタ装着部22の形状をそれらと同一形状にし、吸気管10が楕円や多角形状である場合にはアダプタ27の吸気管接触部24は吸気管10の内壁形状と一致する形状とすることで同様の効果を得ることができる。また、本実施例ではアダプタ23がフィルタ12の内壁と嵌合しているが、フィルタ12の外壁あるいはその両方と嵌合してもよい。さらに送風手段15との押圧も送風手段15の吸込み口14の端面でも上面でよく、吸気管10内でのフィルタの固定方法は任意でよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)本発明の第1実施例を示す空気清浄装置の側断面図、(b)本発明の第1実施例を示す空気清浄装置の上方よりの平断面図
【図2】(a)第2の実施例を示すフィルタの斜視図、(b)第2の実施例を示す他のフィルタの斜視図
【図3】(a)第3の実施例を示す送風手段の斜視図、(b)第3の実施例を示す空気清浄装置の側断面図
【図4】(a)第4の実施例を示すアダプターの側断面図、(b)第4の実施例を示すアダプター取り付け位置の斜視図
【図5】従来の空気清浄装置の側断面図
【符号の説明】
【0022】
1 空間空気
2 空気清浄装置
3 吸引口
4 側面部
5 排気口
6 吸引風
7 送風口
8 排気風
9 排気路
10 吸気管
11 吸気路
12 フィルタ
13 開口部
14 吸い込み口
15 送風手段
16 多翼ファン
17 モータ
18 ベルマウス
19 錐形状部
20 多角形フィルタ
21 送風路
22 フィルタ装着部
23 アダプタ
24 吸気管接触部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染空気を浄化する任意断面形状の筒状フィルタと、前記フィルタを収容する空気清浄装置本体を備え、前記フィルタに汚染空気を導く送風手段を前記空気清浄装置本体の下部に備え、前記空気清浄装置本体上面に吸引口を設け、前記空気清浄装置本体の側壁のほぼ全周にわたり排気口を設けた空気清浄装置において、
前記フィルタの前記吸入口側の端面は閉塞され、前記フィルタの前記吸入口から反対側の端面は前記送風手段に連結され、前記吸入口から前記フィルタに空気を導く吸気管を前記空気清浄装置本体の側壁と前記フィルタとの間に設け、前期吸気管の前記吸入口から反対側の端面は前記フィルタの略外径まで閉塞され、前記送風手段の送風口が前記吸引管と前記空気清浄装置本体の側壁との間の排気路に向けて開口したことを特徴とする空気清浄装置。
【請求項2】
前記フィルタの閉塞された端面は上に凸の通気性のない部材で閉塞されたことを特徴とする請求項1記載の空気清浄装置。
【請求項3】
前記送風手段の前記送風口が、前記送風手段から送風路を経て前記排気路の下部へ延伸して配されていることを特徴とする請求項1記載の空気清浄装置。
【請求項4】
前期吸気管の閉塞された端面は、フィルタと着脱可能なアダプタで閉塞され、該アダプタは前記送風手段に面した前記フィルタの開口部と略同一形状の開口を持ち、前記フィルタと気密を保てる程度に嵌合可能で、前記フィルタと前記送風手段の吸込み口周縁との間に押圧されて気密を保って装着され、前記アダプタの外周縁の形状が前記吸引管の内壁または前記送風手段の吸込み口周縁と接触する形状となっていることを特徴とする請求項1記載の空気清浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−222815(P2007−222815A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−48660(P2006−48660)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】