説明

空気袋のための空気栓

【課題】空気袋について使用でき、空気の出入が早く行えて、どんな場合にも大きく突出することがなく、邪魔にならない空気栓を提供すること。
【解決手段】空気室12内への空気供給の際に使用される給気筒21と、この給気筒21が取り付けられる栓本体22と、この栓本体22を支持する支持部23とを備えたものとするとともに、支持部23を、栓本体22を支持する底部23aと、この底部23aから立ち上がって給気筒21全体を包囲する包囲部23bと、この包囲部23bの上縁に一体化されて、可撓性シート11が取り付けられるフランジ部23cとを備えたものとしたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気栓に関し、特に、可撓性シートによって形成した空気袋のための空気栓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
可撓性シートによって形成した空気袋としては、例えば、浮き輪や浮き板、空気枕あるいはエアマットのようなものがあり、当然、これらの空気袋は空気が出入される空気室を有している。そして、この種の空気袋については、空気室内への空気の出入を行うための空気栓が設けられている。
【0003】
このような空気袋のための空気栓としては、例えば、特許文献1や特許文献2において、既に種々なものが提案されている。
【0004】
特許文献1には、「バッグに対して外部から大きな衝撃が加わっても水注入口からの水漏れを無くし、またバッグ内からの空気抜き作業を使用者でも容易に行なえるようにする」ことを目的とした「ウオーターベッド用バッグの水注入口の構造」が提案されている。
【0005】
この特許文献1の「ウオーターベッド用バッグの水注入口の構造」は、図10にも示すように、「熱可塑性ポリエステルエラストマーを材料としてブロー成形により袋状に作られたウオーターベッド用バッグ2に水注入口3を設け、この水注入口3に外ケース10と、この外ケース10に取り付けられた内ケース15と、外ケース10の底部中央の孔部9を開閉する弁体11を持つワッシャ12と、このワッシャ12の弁体11を外ケース10の底部との間で挟着すべく前記内ケース15に螺合される筒状の軸体18とからなる口栓8を挿入し、前記軸体18により弁体11を外ケース10の底部との間で挟着した状態で水注入口3にキャップ4を螺合させて締め付けるように構成」したものであり、これにより、「使用時において水注入口3からの水漏れを確実に防止する」ものと考えられる。
【0006】
しかしながら、この特許文献1の「ウオーターベッド用バッグの水注入口」は、図10にも示すように、その大部分が「ウオーターベッド用バッグ2」から大きく外側に突出するものであり、これが使用時の邪魔になると考えられる。
【0007】
同様な問題のあることが、図11に示す、特許文献2にて提案されている「携帯用枕」についても言える。つまり、この特許文献2の「携帯用枕」では、図11に示すように、「空気栓4」が「軟質ポリ塩化ビニル樹脂シート製外袋2」から外側に大きく突出していて、この「空気栓4」が就寝時において邪魔になると考えられるのである。
【特許文献1】特開平6−304048号公報、要約、代表図
【特許文献2】特開2001−87107号公報、要約、代表図
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、この種の空気袋の空気栓については、空気の注入が早く行えて、しかも空気室内の空気の排出も早く行えるようにする要望がある。この点については、上記特許文献1のそれは十分解決されていると思われるが、上述した問題が残っている。
【0009】
そこで、本発明者等は、この種の空気袋の空気栓について、空気の出入が早く行えて、しかも空気袋の使用時は勿論、空気を抜いて小さくした場合にも、空気栓が邪魔にならないようにするにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0010】
すなわち、本発明の目的とするところは、空気袋について使用でき、空気の出入が早く行えて、どんな場合にも大きく突出することがなく、邪魔にならない空気栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する最良形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「可撓性シート11によって空気室12を形成した空気袋10に取り付けられて、空気室12内への空気の出入を許容する空気栓20であって、
この空気栓20を、空気室12内への空気供給の際に使用される給気筒21と、この給気筒21が取り付けられる栓本体22と、この栓本体22を支持する支持部23とを備えたものとするとともに、
支持部23を、栓本体22を支持する底部23aと、この底部23aから立ち上がって給気筒21全体を包囲する包囲部23bと、この包囲部23bの上縁に一体化されて、可撓性シート11が取り付けられるフランジ部23cとを備えたものとしたことを特徴とする空気栓20」
である。
【0012】
すなわち、本発明に係る空気栓20は、例えば図1に示すような空気袋10である浮き袋や、図11に示したような空気枕に適用されるもので、図1及び図2に示すような、空気室12内に空気を入れたり、この空気室12内の空気を抜くために使用されるものである。
【0013】
勿論、この空気栓20が適用される空気袋10は、適宜形成に裁断した可撓性シート11を溶着や接着することによって、例えば、図1に示すような浮き輪に形成されるものであり、これによって図1及び図2に示すような空気室12を内部に形成するものである。そして、この空気室12に対する空気の出入を、本発明に係る空気栓20によって行うものである。
【0014】
この空気栓20は、図2〜図9に示すように、まず、上記空気袋10の空気室12内への空気供給の際に使用される給気筒21と、この給気筒21が取り付けられる栓本体22と、この栓本体22を支持する支持部23とを備えている。後述する最良形態の空気栓20では、図3に示すように、第1キャップ25aを外した給気筒21の開口端から、図示しない空気ポンプによって空気の注入を行い、図4にて示すように、この給気筒21を栓本体22から外すことにより、空気室12内の空気を早急に排出できるようにするものである。
【0015】
栓本体22は、図2及び図9に示すように、上述した給気筒21を螺着できるようにしたものであるが、支持部23に一体化したものである。この一体化は、溶着や接着でもよいが、後述する最良形態では、栓本体22の底部を支持部23の底部23a内にモールドすることによって行っている。
【0016】
支持部23は、上記栓本体22を支持する底部23aと、この底部23aから立ち上がって給気筒21全体を包囲する包囲部23bと、この包囲部23bの上縁に一体化されて、前述した可撓性シート11が取り付けられるフランジ部23cとを備えたものである。この支持部23の底部23aは、上述したように栓本体22を一体化しなければならないから、図2に示すように、肉厚なものとしてあるが、この底部23aの周縁から立ち上がる包囲部23bについては、底部23aよりも肉薄なものとしてある。
【0017】
この支持部23の包囲部23bは、図2及び図9に示すように、支持部23の底部23a外周から立ち上がって前述した給気筒21全体を包囲するものであり、当該空気栓20全体が空気袋10の可撓性シート11表面から突出しないようにするものである。そのために、この包囲部23bの上端縁にはフランジ部23cが一体化してあり、このフランジ部23cは、空気袋10を構成している可撓性シート11の内面側に溶着または接着手段によって取り付けられるものである。勿論、このフランジ部23cが取り付けられる可撓性シート11の該当部分には、図2にも示すように開口が形成してあって、この開口から当該空気栓20の上面が露出することになるものである。
【0018】
また、この支持部23の包囲部23bは、給気筒21全体を包囲するにあたって、図3及び図4に示すように、当該給気筒21と包囲部23bとの間に手指を入れるのに十分な空間を形成するものである。何故なら、この空気栓20を使用して空気の出入を行うための操作、例えば後述する第1キャップ25aや第2キャップ25bの取り外し操作をし易くするためである。
【0019】
従って、この請求項1に係る空気栓20によれば、空気袋10について使用でき、空気の出入が早く行えて、どんな場合にも大きく突出することがなく、空気袋10を使用するに当たって邪魔にならないものとなっているのである。
【0020】
また、上記課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、上記請求項1に記載の空気栓20について、
「少なくとも包囲部23bに補強リブ24を設けたこと」
である。
【0021】
すなわち、この請求項2の空気栓20では、図3及び図4に示すように、支持部23を構成している包囲部23bに補強リブ24を設けたものであり、これにより、この包囲部23bの強度を高めたものである。
【0022】
この空気栓20を取り付けた空気袋10の空気室12からの空気を抜いた後には、図9に示すように、空気室12を構成していた上下の可撓性シート11が近接し合った状態に折り畳まれる。つまり、この空気栓20の上下には、言わば薄い可撓性シート11しか存在しない状態になることがあり、このような状態で空気栓20上に人や物が乗せられたり乗ったりすると、包囲部23bに大きな力が加わるが、各補強リブ24はこれに対抗して包囲部23bの破損を防止することになるのである。
【0023】
従って、この請求項2の空気栓20は、上記請求項1のそれと同様な機能を発揮する他、補強リブ24によって強度が高められていて、空気袋10を折り畳んだときの包囲部23bの破損を防止し得るものとなっているのである。
【発明の効果】
【0024】
以上の結果、本発明においては、
「可撓性シート11によって空気室12を形成した空気袋10に取り付けられて、空気室12内への空気の出入を許容する空気栓20であって、
この空気栓20を、空気室12内への空気供給の際に使用される給気筒21と、この給気筒21が取り付けられる栓本体22と、この栓本体22を支持する支持部23とを備えたものとするとともに、
支持部23を、栓本体22を支持する底部23aと、この底部23aから立ち上がって給気筒21全体を包囲する包囲部23bと、この包囲部23bの上縁に一体化されて、可撓性シート11が取り付けられるフランジ部23cとを備えたものとしたこと」
にその構成上の主たる特徴があり、これにより、空気袋10について使用でき、空気の出入が早く行えて、どんな場合にも大きく突出することがなく、邪魔にならない空気栓20を提供することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、上記のように構成した各請求項に係る発明を、図面に示した最良の形態である空気栓20について説明するが、この最良形態の空気栓20は、上記各請求項に係る発明の全てを実質的に含むため、以下では、この最良形態の空気栓20を中心に説明することとする。
【0026】
図1には、本発明に係る空気栓20を取り付けた空気袋10が示してあって、この最良形態での空気袋10は浮き輪であるが、その他に浮き板、空気枕あるいはエアマットのようなものがこの空気袋10の対象となることは言うまでもない。この空気袋10は、図1、図2及び図9に示したように、可撓性シート11によって形成したものであり、その内部には、本発明に係る空気栓20を通して空気の出入がなされる空気室12が形成してある。
【0027】
空気栓20は、図2〜図9に示したように、まず、空気室12内への空気供給の際に使用される給気筒21と、この給気筒21が取り付けられる栓本体22と、この栓本体22を支持する支持部23とを備えたものである。
【0028】
給気筒21は、図示しない空気ポンプの給気口を差し込んで空気を空気室12内に給気するための空気穴をその中心に形成したもので、この空気穴の上端は、図3に示したように、第1キャップ25aによって覆われるものである。また、この給気筒21の下端には、図4にも示したように、開閉自在な弁体26が取り付けられるものであり、この弁体26は、空気室12内の内圧によって当該給気筒21の下端に圧接されて空気漏れを防止するとともに、空気ポンプを使用して空気を入れる場合には空気室12側に開放されるものである。なお、本最良形態では、この給気筒21の下端に、図2及び図9に示したように、空気穴21aを複数設けた底板が設けられる。
【0029】
そして、この最良形態の給気筒21は、図2等で示したように、その下端部にて栓本体22に螺着されている。栓本体22は、その空気室12側端部に排出口22aを有するものであり、この排出口22aは、栓本体22から給気筒21を外したとき、空気袋10の空気室12内を外部に開放することになって、空気室12内の空気を早急に排出できるものである。なお、本合最良形態の栓本体22は、次に述べる支持部23内にモールドされて、この支持部23に一体化されている。
【0030】
支持部23は、図2〜図9に示したように、栓本体22を支持する底部23aと、この底部23aから立ち上がって給気筒21全体を包囲する包囲部23bと、この包囲部23bの上縁に一体化されて、可撓性シート11が取り付けられるフランジ部23cとを備えたものである。この支持部23を構成している各部分は、合成樹脂を材料として一体成形したものであり、本最良形態では、さらに、包囲部23bの外周に縦方向(包囲部23bの高さ方向)の補強リブ24を複数形成して、主として包囲部23bの剛性を高めるようにしている。
【0031】
この支持部23の包囲部23bは、図2及び図9に示したように、支持部23の底部23a外周から立ち上がって前述した給気筒21全体を包囲するものであり、当該空気栓20全体が空気袋10の可撓性シート11表面から突出しないようにする高さを有しているものである。
【0032】
また、この包囲部23bの上端縁には、図3及び図4に示したように、フランジ部23cが一体化してあり、このフランジ部23cは、図2及び図9に示したように、空気袋10を構成している可撓性シート11の内面側に溶着または接着手段によって取り付けられる。勿論、このフランジ部23cが取り付けられる可撓性シート11の該当部分には、図2にも示したように開口が形成してあって、この開口から当該空気栓20の上面が露出することになる。
【0033】
また、この支持部23の包囲部23bは、給気筒21全体を包囲するにあたって、図3及び図4に示したように、当該給気筒21と包囲部23bとの間に手指を入れるのに十分な空間を形成するものであり、この空間は、空気栓20を使用して空気の出入を行うための操作、例えば後述する第1キャップ25aや第2キャップ25bの取り外し操作をし易くするためのものである。
【0034】
第1キャップ25aは、図2等に示したように、給気筒21の上端に螺合されるものであり、一方、第2キャップ25bは、給気筒21の上部外周に一体化したものである。そして、これらの第1キャップ25a及び第2キャップ25bは、栓本体22に一体化した一本の連結帯で連結してあり、これにより、給気筒21から外された第1キャップ25aや、栓本体22から外された給気筒21が当該空気栓20に連結されたままとなるようにしてある。
【0035】
なお、本最良形態では、図2及び図9に示したように、支持部23を構成してる底部23aの底面側(空気室12側になる面)に給排気補助部27が一体成形してある。この給排気補助部27は、図9にも示すように、底部23aとこれに近接した可撓性シート11との間に空気の流れ出る隙間を形成するものであり、これにより、空気の排出の最終段階での空気の排出と、空気を入れる時の初期段階での空気の流れを、可撓性シート11に邪魔されることなく行えるようにしたものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る空気栓を適用した空気袋の斜視図である。
【図2】同空気袋の、図1中の1−1線に沿って見た部分拡大断面図である。
【図3】同空気栓において、第1キャップを取り外した状態を示す拡大斜視図である。
【図4】同空気栓において、第2キャップを第1キャップとともに取り外した状態を示す拡大斜視図である。
【図5】同空気栓の平面図である。
【図6】同空気栓の正面図である。
【図7】同空気栓の底面図である。
【図8】同空気栓の側面図である。
【図9】同空気栓の、図5中の2−2線に沿ってみた断面図である。
【図10】従来例を示す部分拡大断面図である。
【図11】従来の他の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
10 空気袋
11 可撓性シート
12 空気室
20 空気栓
21 給気筒
21a 空気穴
22 栓本体
22a 排出口
23 支持部
23a 底部
23b 包囲部
23c フランジ部
24 補強リブ
25a 第1キャップ
25b 第2キャップ
26 弁体
27 給排気補助部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性シートによって空気室を形成した空気袋に取り付けられて、前記空気室内への空気の出入を許容する空気栓であって、
この空気栓を、前記空気室内への空気供給の際に使用される給気筒と、この給気筒が取り付けられる栓本体と、この栓本体を支持する支持部とを備えたものとするとともに、
前記支持部を、前記栓本体を支持する底部と、この底部から立ち上がって前記給気筒全体を包囲する包囲部と、この包囲部の上縁に一体化されて、前記可撓性シートが取り付けられるフランジ部とを備えたものとしたことを特徴とする空気栓。
【請求項2】
少なくとも前記包囲部に補強リブを設けたことを特徴とする請求項1に記載の空気栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−137586(P2009−137586A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−312195(P2007−312195)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(398063825)株式会社ヒオキ (9)
【Fターム(参考)】