説明

空気調和機の制御基板

【課題】省スペースで安価な基板構成の空気調和機の制御基板を提供し、また、圧力異常か漏電かを明確に識別して検知することができるようにする。
【解決手段】電源回路21と、圧力異常検知回路22と、漏電検知回路23と、これらの回路22,23の検知出力信号をそれぞれ別個に入力ポートに入力可能なマイクロコンピュータ20とを備えた制御基板とする。圧力異常検知回路22、漏電検知回路23、マイクロコンピュータ20、及び、電源回路21の直流電圧側を含む弱電部Lと、電源回路21の交流電圧側を含む強電部Hとは、基板上で互いの領域が分かれており、また、弱電部Lはさらに、マイクロコンピュータ20等、第1制御電圧を使用する第1回路群L1と、第1制御電圧より高い第2制御電圧を使用する第2回路群L2(圧力異常検知回路22,漏電検知回路23)とが、基板上で互いの領域が分かれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機における主たる制御機能を搭載した制御基板に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機には、冷媒の圧力異常を検知して圧縮機を停止させるための、圧力異常検知スイッチ(HPS)が設けられている。この圧力異常検知スイッチは、冷媒の配管上に設けられている。通常、圧力異常検知スイッチはB接点であり、圧力正常時は閉じていて、圧力異常時に開く接点である。従来、商用電源から圧力異常検知スイッチ、ダイオード、限流抵抗、及び、フォトカプラの入力側にある発光ダイオードを、直列に含む閉回路が構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
圧力正常時は、圧力異常検知スイッチは閉じており、従って、フォトカプラはオンの状態となっている。圧力異常時は、圧力異常検知スイッチが開き、フォトカプラはオフの状態となる。このように、フォトカプラがオンからオフに転じることで、フォトカプラの出力側に構成される回路は、圧力異常が発生したことを検知することができる。圧力異常検知スイッチを含むフォトカプラの入力側は、いわゆる強電部であり、フォトカプラの出力側は、直流の制御電圧で動作するいわゆる弱電部である。フォトカプラにより、強電部と弱電部とは、互いに絶縁されている。弱電部は、空気調和機における主たる制御機能を搭載する制御基板に設けられる。また、圧力異常検知スイッチを除く強電部も、制御基板に搭載されている。
【0004】
一方、零相変流器(ZCT)の出力に基づいて漏電検知を行う漏電検知回路は、制御基板とは別個の基板(以下、漏電検知基板と言う。)として設けられ、その検知出力の接点(B接点)は、圧力異常検知スイッチと直列に上記閉回路に挿入された状態で使用される。圧力異常検知スイッチと同様に、漏電検知出力接点は、正常時には閉じており、漏電を検知すると開く。漏電検知出力接点は、漏電検知基板に設けられるリレーの接点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−286238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような従来の構成では、制御基板とは別に、漏電検知基板が必要である。また、漏電検知基板の漏電検知出力接点が制御基板の強電部に組み入れられるため、漏電検知基板にも強電部が存在する。従って、制御基板及び漏電検知基板のどちらにおいても、強電部と弱電部とを互いに絶縁するリレー等が必要であり、また、強電部の配線と弱電部の配線との間では、互いの絶縁距離も相応に必要である。従って、各基板に要する面積の合計が大きくなり、それに伴って、コストも高くなるという問題点があった。
また、圧力異常検知スイッチと漏電検知接点とは互いに直列のB接点であるから、どちらが開いても結果は同じであり、異常原因の識別ができなかった。
【0007】
かかる従来の問題点に鑑み、本発明は、省スペースで安価な基板構成の空気調和機の制御基板を提供することを目的とする。また、圧力異常か漏電かを明確に識別して検知することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、空気調和機における主たる制御機能を搭載した空気調和機の制御基板であって、商用電源から供給される交流電圧を、直流の複数の制御電圧に変換する電源回路と、冷媒の圧力異常を検知する無電圧信号を外部から受け取って、いずれかの前記制御電圧下で、圧力異常を検知する圧力異常検知回路と、地絡電流を検知するための信号を外部から受け取って、いずれかの前記制御電圧下で、漏電を検知する漏電検知回路と、いずれかの前記制御電圧下で動作し、前記圧力異常検知回路及び前記漏電検知回路の検知出力信号をそれぞれ別個に、入力ポートに入力可能なマイクロコンピュータと、を備え、前記圧力異常検知回路、前記漏電検知回路、前記マイクロコンピュータ、及び、前記電源回路の直流電圧側を含む弱電部と、前記電源回路の交流電圧側を含む強電部とは、基板上で互いの領域が分かれており、前記弱電部はさらに、前記マイクロコンピュータ及びこれと同一の第1制御電圧を使用する第1回路群と、当該第1制御電圧より高い第2制御電圧を使用する第2回路群とが、基板上で互いの領域が分かれている、ことを特徴とするものである。
【0009】
上記のように構成された制御基板では、圧力異常検知回路及び漏電検知回路がそれぞれ制御電圧下で動作するいわゆる弱電の回路構成とすることにより、これらの回路を、単一の制御基板上に搭載することができる。また、弱電部と強電部とで互いの領域が分かれていることにより、領域間境界での相互絶縁にのみ、十分な絶縁距離を確保すれば良いので、各領域内で回路を集約することができる。弱電部内ではさらに、電圧が共通か又は電圧が近い回路を、同一の回路群として集約することができる。
【0010】
こうして、弱電部全体としても、また、基板全体としても、回路をコンパクトに集約することができ、その結果として省スペースで安価な基板構成とすることができる。
また、マイクロコンピュータに対して、圧力異常検知回路及び漏電検知回路の検知出力信号がそれぞれ別個に入力ポートに入力されることによって、マイクロコンピュータは、圧力異常か漏電かを明確に識別して検知することができる。
【0011】
また、上記の空気調和機の制御基板において、圧力異常検知回路の入出力端子及び、漏電検知回路の入力端子は、弱電部の領域内の、基板外縁領域の一部に集約して設けられていることが好ましい。
この場合、外部とのケーブル接続が容易である。また、各端子は、強電部からのノイズ等の影響を受けにくい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の空気調和機の制御基板によれば、回路をコンパクトに集約することができ、その結果として省スペースで安価な基板構成とすることができる。また、マイクロコンピュータは、圧力異常か漏電かを明確に識別して検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】空気調和機の室外機における基板及び機器の接続図(主要部のみ)である。
【図2】図1における制御基板上の回路配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、空気調和機の例えば室外機における基板及び機器の接続図(主要部のみ)である。図において、室外機1内には、制御基板2、インバータ基板3、ファン基板4、インバータ基板3に接続された圧縮機用のモータ5、及び、ファン基板4に接続されたファン用のモータ6が設けられている。インバータ基板3にはモータ5を駆動するためのインバータ装置が搭載され、ファン基板4にはモータ6の駆動回路が搭載されている。制御基板2は、インバータ基板3及びファン基板4の機能以外の、空気調和機における主たる制御機能を搭載している。
【0015】
制御基板2には、商用電源10(例えば3相交流200V)からの電源線PL1が接続されている。また、この電源線PL1の途中から分岐した電源線PL2がノイズフィルタ7を介してインバータ基板3に接続されている。ファン基板4には、インバータ基板3経由で、電源線PL3により、単相の交流電圧が供給される。
【0016】
零相変流器(ZCT)8は、電源線PL1に対して取り付けられ、その出力は制御基板2に与えられる。この出力に基づいて、制御基板2は、地絡電流すなわち漏電を検知することができる。また、制御基板2は、圧力検知スイッチ(HPS)9と接続されている。圧力検知スイッチ9は、冷媒管に設けられており、冷媒の圧力異常を検知することができる。異常検知に関わるHPS接点入力は、例えば、異常が無いときは閉路しているB接点信号であり、設定された圧力を検知すると、閉から開に状態が変化する無電圧信号である。従って、このHPS接点入力は、直流電圧で使用することができる。
【0017】
なお、図1では1つの圧力検知スイッチ9のみを示しているが、通常、3つの圧力検知スイッチが設けられており、それぞれからHPS接点入力が提供される。
また、制御基板2は、室内機(図示せず。)と通信可能であり、例えば室内機に対して運転信号等の送受を行うことができる。
【0018】
インバータ基板3は、制御基板2からインバータ装置の運転信号及び、HPS接点出力を受けることができる。通常は、運転信号に応じた速度でモータ5を回転させるように、インバータ装置が駆動される。ファン基板4は、インバータ基板3から運転信号を受けて、モータ6を駆動する。
【0019】
図2は、制御基板2上の回路配置例を示す図である。
図において、制御基板2は、制御の中枢部であるマイクロコンピュータ20の他、電源回路(スイッチング電源回路)21、圧力異常検知回路(HPS回路)22、漏電検知回路23、及び、通信回路24を備えている。電源回路21は、交流電圧から安定した複数種類の直流電圧を生成して出力する。これらの直流電圧とは、例えば5V,13.5V,16Vである。電源回路21は、電源入力端子25を経由して電源入力を受け取る。電源入力端子25には、電源線PL1(図1)が接続される。
【0020】
圧力異常検知回路22は、冷媒の圧力異常を検知すれば閉から開に変わるHPS接点入力を、入力端子26を経由して受け取る。圧力異常検知回路22内では、3つのHPS接点入力が互いに直列に接続されている。そして、この直列体を介して例えばトランジスタを駆動する回路が構成されており、この回路電圧として例えば16Vが使用される。3つのHPS接点入力のうち、どれか1つでも開になれば、トランジスタはオフとなり、圧力異常検知の状態となる。圧力異常検知信号は、マイクロコンピュータ20の入力ポートP1に入力される。また、圧力異常検知の接点出力は、出力端子27を介して、外部に出力することができる。図2では、3つのHPS接点出力が外部に提供される。
【0021】
一方、零相変流器8の出力(アナログ出力信号)は、入力端子28を介して、漏電検知回路23に入力される。漏電検知回路23は、漏電を検出すると、漏電検知信号をマイクロコンピュータ20の入力ポートP2に提供する。従って、マイクロコンピュータ20は、圧力異常と、漏電とを、異なる事象として互いに識別して検知することができる。漏電検知回路23は、回路電圧として例えば13.5Vを使用する。
【0022】
また、マイクロコンピュータ20は、回路電圧として5Vを使用し、インバータ基板4、ファン基板4及び、室内機へ、運転信号や制御信号を送る。マイクロコンピュータ20と室内機とは通信回路24を介して相互に動作制御に関する通信を行うことができる。通信回路24は、回路電圧として5Vを使用する。
【0023】
電源回路21の内部は、電圧変換前の交流電圧(200V)が印加されている強電部としての交流電圧側の一次回路部21aと、電圧変換後の、直流電圧側の弱電部としての二次回路部21bとに分かれている。また、基板全体を見ても、図の点線で示す境界線で、強電部Hと、弱電部Lとに領域が分かれている。すなわち、電源回路21の一次回路部21a及び電源入力端子25は、強電部Hに属する。電源回路21の二次回路部21b、圧力異常検知回路22、漏電検知回路23、マイクロコンピュータ20、通信回路24は、弱電部Lに属する。
【0024】
また、弱電部Lはさらに、マイクロコンピュータ20及びこれと同一の第1制御電圧(5V)を使用する第1回路群L1と、この第1制御電圧より高い第2制御電圧(13.5V,16V)を使用する第2回路群L2とが、基板上で互いの領域が分かれている。
【0025】
上記のように構成された制御基板2によれば、圧力異常検知回路22及び漏電検知回路23がそれぞれ上記の制御電圧下で動作する弱電の回路構成とすることにより、これらの回路を、単一の制御基板2上に搭載することが可能となっている。
また、弱電部Lと強電部Hとで互いの領域が分かれていることにより、領域間境界での相互絶縁にのみ、十分な絶縁距離を確保すれば良い。従って、各領域内で回路を集約することができる。弱電部L内ではさらに、電圧が共通の回路若しくは電圧が近い回路を、同一の回路群(L1及びL2)として集約することができる。
【0026】
こうして、弱電部L全体としても、また、基板全体としても、回路をコンパクトに集約することができ、その結果として省スペースで安価な基板構成とすることができる。
また、マイクロコンピュータ20に対して、圧力異常検知回路22及び漏電検知回路23の検知出力信号がそれぞれ別個に入力ポートP1,P2に入力されることによって、マイクロコンピュータ20は、圧力異常か漏電かを明確に識別して検知することができる。
【0027】
さらに、圧力異常検知回路22の入力端子26,出力端子27、及び、漏電検知回路23の入力端子28は、弱電部Lの領域内の、基板外縁領域の一部(図2における基板の左上)に集約して設けられている。従って、外部とのケーブル接続が容易である。また、各端子26〜28は、強電部Hからのノイズ等の影響を受けにくい。
【0028】
なお、上記実施形態における弱電部Lの制御電圧(5V,13.5V,16V)は例示であり、これらの数値や、これらの種類には限定されない。
【符号の説明】
【0029】
2:制御基板
20:マイクロコンピュータ
21:電源回路
22:圧力異常検知回路
23:漏電検知回路
26:入力端子
27:出力端子
28:入力端子
H:強電部
L:弱電部
L1:第1回路群
L2:第2回路群
P1,P2:入力ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気調和機における主たる制御機能を搭載した空気調和機の制御基板(2)であって、
商用電源(10)から供給される交流電圧を、直流の複数の制御電圧に変換する電源回路(21)と、
冷媒の圧力異常を検知する無電圧信号を外部から受け取って、いずれかの前記制御電圧下で、圧力異常を検知する圧力異常検知回路(22)と、
地絡電流を検知するための信号を外部から受け取って、いずれかの前記制御電圧下で、漏電を検知する漏電検知回路(23)と、
いずれかの前記制御電圧下で動作し、前記圧力異常検知回路(22)及び前記漏電検知回路(23)の検知出力信号をそれぞれ別個に、入力ポート(P1,P2)に入力可能なマイクロコンピュータ(20)と、を備え、
前記圧力異常検知回路(22)、前記漏電検知回路(23)、前記マイクロコンピュータ(20)、及び、前記電源回路(21)の直流電圧側を含む弱電部(L)と、前記電源回路(21)の交流電圧側を含む強電部(H)とは、基板上で互いの領域が分かれており、
前記弱電部(L)はさらに、前記マイクロコンピュータ(20)及びこれと同一の第1制御電圧を使用する第1回路群(L1)と、当該第1制御電圧より高い第2制御電圧を使用する第2回路群(L2)とが、基板上で互いの領域が分かれている、ことを特徴とする空気調和機の制御基板。
【請求項2】
前記圧力異常検知回路(22)の入出力端子(26,27)及び、前記漏電検知回路(23)の入力端子(28)は、前記弱電部(L)の領域内の、基板外縁領域の一部に集約して設けられている請求項1記載の空気調和機の制御基板。

【図1】
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【図2】
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